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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E04F |
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管理番号 | 1124335 |
異議申立番号 | 異議2003-73808 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2000-12-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-26 |
確定日 | 2005-09-20 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3458072号「ユニットタイル」の請求項1に係る発明についての特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3458072号の請求項1に係る発明についての特許を取り消す。 |
理由 |
第一 手続の経緯 本件特許第3458072号の請求項1に係る発明は、平成11年6月15日に特許出願された特願平11-168312号の特許出願に係り、平成15年8月1日にその発明についての特許の設定登録がなされ、その後、請求項1に係る発明の特許に対して、若園英彦(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成16年8月9日付けで請求項1に係る発明に対する取消理由を通知し、特許権者に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたところ、特許権者から前記取消理由に対する平成16年9月30日付けの意見書が提出されたものである。 第二 特許異議の申立てについて 1.本件発明 本件特許第3458072号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。 「【請求項1】複数並列されたタイルの裏面同士を、接着媒体が配合されたアクリル樹脂プラスチゾルで連結したユニットタイル」 2.取消理由の概要 当審が通知した取消理由は、本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平11-71884号公報(以下、「引用刊行物1」という。申立人が提示した甲第3号証を参照)及び同特開平5-148401号公報(以下、「引用刊行物2」という。同甲第5号証を参照)を引用し、本件発明は、上記引用刊行物1及び引用刊行物2にそれぞれ記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当するから、取消されるべきものである、というものである。 3.各引用刊行物の記載事項 (1)当審が取消理由に引用した引用刊行物1〔特開平11-71884号公報〕には、「タイルシート」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。 「【請求項1】タイルを複数枚連結したタイルシートにおいて、該タイルの側面の幅方向及び厚さ方向の一部に塗布され、隣接する該タイルの側面同士でつくる空間の一部を装架する接着剤によって、隣接する該タイル同士が相互に連結されていることを特徴とするタイルシート。 【請求項2】タイルを複数枚連結したタイルシートにおいて、該タイルの裏面の一部に塗布され、隣接する該タイルの側面同士でつくる空間の一部を横架する接着剤によって、隣接する該タイル同士が相互に連結されていることを特徴とするタイルシート。 【請求項3】タイルを複数枚連結したタイルシートにおいて、該タイルの裏面の一部に接着剤を塗布するための溝である接着剤塗布溝を設け、該接着剤塗布溝に塗布され、隣接する該タイルの側面同士でつくる空間の一部を装架する接着剤によって、隣接する該タイル同士が相互に連結されていることを特徴とするタイルシート。 【請求項4】請求項1記載のタイルシートにおいて、該タイルが、複数の該タイルを整列させると同時に、接着剤の塗布される範囲が該タイルの側面の幅方向及び厚さ方向の一部で、隣接する該タイルの側面同士でつくる空間の一部を装架する領域に規制される枠に、裏面を上にして配置され、塗布された接着剤によって隣接する該タイル同士が相互に連結されていることを特徴とする請求項1記載のタイルシート。 【請求項5】請求項2記載のタイルシートにおいて、該タイルが、複数の該タイルを整列させると同時に、接着剤の塗布される範囲が該タイルの裏面の一部で、隣接する該タイルの側面同士でつくる空間の一部を横架する領域に規制される枠に、裏面を上にして配置され、塗布された接着剤によって隣接する該タイル同士が相互に連結されていることを特徴とする請求項2記載のタイルシート。 【請求項6】請求項3記載のタイルシートにおいて、該タイルが、複数の該タイルを整列させると同時に、接着剤の塗布される範囲が、該タイルの裏面に設けられた接着剤塗布溝の部分であり、隣接する該タイルの側面同士でつくる空間の一部を装架する領域に規制される枠に、裏面を上にして配置され、塗布された接着剤によって複数枚の該タイルが相互に連結されていることを特徴とする請求項3記載のタイルシート。」 「【0036】 なお、以上の説明での接着剤としては、合成ゴム、ブチルゴム及びクロロプレンゴムなどのゴム材並びにウレタンフォームなどの合成樹脂並びにゴム系、アクリル系及びホットメルトなどの接着剤並びに接着性のあるプラスチックなどが使用可能である。」 そうしてみると、引用刊行物1の記載事項及び図面の図示からみて、「アクリル系の接着剤」並びに「接着性のあるプラスチック」が、隣接するタイル同士を相互に連結させる機能を具備する「接着剤」として使用されることが引用刊行物1に明記されているから、引用刊行物1には、「複数枚並列されたタイルの裏面同士を、アクリル系接着剤又は接着性のあるプラスチックで相互に連結したタイルシート」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (2)当審が取消理由に引用した引用刊行物2〔特開平5-148401号公報〕には、「アクリル酸エステル系共重合体プラスチゾル組成物」に関し、次の事項が記載されている。 「【請求項1】(A)主構成単位が(a)アルキル基の炭素数が1〜8のアクリル酸アルキルエステル単位及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単位98〜50重量%と(b)ジエン系単量体単位2〜50重量%とから成る共重合体粒子及び(B)可塑剤とを含有して成るアクリル酸エステル系共重合体プラスチゾル組成物。 【請求項2】(A)主構成単位が(a)アルキル基の炭素数が1〜8のアクリル酸アルキルエステル単位及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単位98〜50重量%と(b)ジエン系単量体単位2〜50重量%とから成る共重合体粒子、(B)可塑剤及び(C)加硫剤を含有して成るアクリル酸エステル系共重合体プラスチゾル組成物。 【請求項3】可塑剤が少なくともフタル酸エステル系可塑剤を含有するものである請求項1又は2記載のアクリル酸エステル系共重合体プラスチゾル組成物。」(特許請求の範囲) 「【0007】該共重合体には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望に応じ前記単量体と共重合可能な他の単量体単位を含有させてもよい。この場合、他の単量体単位の含有量は、通常共重合体中に10重量%以下となるように選ばれる。この共重合可能な他の単量体としては、例えばプラスチゾル組成物の接着性などを向上させるための官能基含有不飽和単量体、具体的には……などのエポキシ基を有する重合性不飽和化合物、……などのカルボキシル基を有する重合性不飽和化合物、……などのアミノ基含有重合性不飽和化合物、……などの水酸基含有重合性不飽和化合物などが挙げられる。これらの官能基含有不飽和単量体は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」 「【0008】本発明においては、前記(A)成分の共重合体はペースト加工用樹脂の製造において慣用されている乳化重合法又は播種乳化重合法により製造するのが好ましい……」 「【0016】本発明のプラスチゾル組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、従来塩化ビニル樹脂プラスチゾルに慣用されている他の添加成分、例えば充填剤、発泡剤、発泡促進剤、界面活性剤、増粘剤、接着性付与剤、顔料、希釈剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、補強剤、その他樹脂などを含有させることができる。」 「【0017】……接着性をさらに向上させるために用いられる接着性付与剤としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、シラン系やチタネート系のカップリング剤などが挙げられる。……」 「【0020】……このようにして得られた本発明のアクリル酸エステル系共重合体プラスチゾル組成物は、……例えば床材、壁装材、玩具、自動車内装材、塗装鋼板、制振鋼板、合わせガラス、シーリング材、発泡体などの素材として好適に用いられる。」 「【0021】【実施例】次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。 なお、プラスチゾルの粘度及び物性は次のようにして評価した。 (1)プラスチゾルの粘度 ブルックフィールド型回転粘度計を用いて温度25℃、湿度60%の条件で測定した。経時変化はプラスチゾルを30℃に保存した際の7日目の粘度を初日の粘度で除した値である。……」 「【0022】実施例1 メチルメタクリレート85重量部とブタジエン15重量部とから得られた共重合体粉末100重量部とジ-2-エチルヘキシルフタレート100重量部を用いてプラスチゾルを調製した。 このプラスチゾルは、容易に塗布加工できる粘度を有し、またこのゾルを加熱処理して得たシートはブリードを起こすことなく可塑化されており、軟質の塗布剤として使用する場合に十分な機械的強度を有していた。さらに、このシートは透明で、引張試験で引き伸ばしても白化を呈することはなかった。」 「【0025】実施例4 メチルメタクリレート50重量部とエチルアクリレート20重量部とブタジエン30重量部とから得られた共重合体粉末を用い、実施例1と同様にプラスチゾルを調製した。このプラスチゾルは初期粘度が高く、経時変化がやや大きいが、成形品は伸びが大きい特徴を有していた。このプラスチゾルは押出し成形加工に向くが、高速塗布やスプレー加工には不適と思われる。 【0026】実施例5 実施例1において、可塑剤としてジ-2-エチルヘキシルフタレートの代わりに、分子量の大きなジイソデシルフタレートを用いた以外は、実施例1と同様にして実施したところ、実施例1と同様にブリードのないシートが得られた。 なお、同様に分子量の小さなジヘプチルフタレートでも使用可能であったが、さらに分子量の小さいフタル酸エステル系可塑剤を用いた場合はプラスチゾルの初期粘度は上昇傾向を示した。」 4.当審の判断 (1)対比及び一致点・相違点 本件発明と、引用発明とを対比すると、引用発明の「タイルシート」が、本件特許の「ユニットタイル」に相当する。 また、引用発明の「アクリル系接着剤又は接着性のあるプラスチック」は、本件発明の「接着媒体が配合されたアクリル樹脂プラスチゾル」とともに、タイルの裏面同士を連結するための「接着剤」である点で共通しているといえる。 そうすると、本件発明と引用発明の両者は、「複数並列されたタイルの裏面同士を、接着剤で連結したユニットタイル」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点:接着剤が、本件発明では「接着媒体が配合されたアクリル樹脂プラスチゾル」であるのに対し、引用発明では「アクリル系接着剤又は接着性のあるプラスチック」である点で相違する。 (2)相違点の検討 引用刊行物2には、上記「3.各引用刊行物の記載事項」欄の(2)に摘記したように、「プラスチゾルの粘度」について記載されていて、粘度のある物質を「接着剤」として使用することは、経験的にみて周知慣用技術である。 また、引用刊行物2には、「プラスチゾル組成物の接着性などを向上させるための官能基含有不飽和単量体からなる、共重合可能な他の単量体単位を含有させてもよい」こと、及び「接着性をさらに向上させるために用いられる接着性付与剤としてのポリエチレンイミンを含有させたアクリル樹脂プラスチゾル」が記載されていて、引用刊行物2に記載の前記「接着性付与剤としてのポリエチレンイミン」が、本件発明の「接着媒体」に対応するものといえる。 さらに、引用刊行物2には、「制振鋼板、合わせガラス」の用途も記載されていて、引用刊行物2に記載の「接着性をさらに向上させるために用いられる接着性付与剤としてのポリエチレンイミンを含有させたアクリル樹脂プラスチゾル」が、鋼板と鋼板の間に充填され、鋼板同士を貼り合わせる機能を有する接着剤として、また、ガラスとガラスの間に充填され、ガラス同士を貼り合わせる機能を有する接着剤としての用途に使用されることが明記されている。 してみると、引用刊行物2の上記記載事項からみて、引用刊行物2には、「接着性をさらに向上させるために用いられる接着性付与剤としてのポリエチレンイミンを含有させたアクリル樹脂プラスチゾル」が、接着剤の用途に使用されることが記載されているといえるから、前記「接着性をさらに向上させるために用いられる接着性付与剤としてのポリエチレンイミンを含有させたアクリル樹脂プラスチゾル」が、接着性を有し、接着剤の用途に使用されることは、引用刊行物2にもとより記載されていた事項であるということができる。 そうしてみると、接着剤の用途として、引用発明の「アクリル系接着剤又は接着性のあるプラスチック」に代えて、引用刊行物2に記載された「接着性付与剤としてのポリエチレンイミンを含有させたアクリル樹脂プラスチゾル」を採用して、本件発明の前記相違点に係る「接着媒体が配合されたアクリル樹脂プラスチゾル」とすることにより、本件発明の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本件発明の奏する作用効果は、上記引用刊行物1及び引用刊行物2にそれぞれ記載された発明から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。 (3)まとめ 以上のとおりであり、本件発明は、上記引用刊行物1及び引用刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおり、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-10-18 |
出願番号 | 特願平11-168312 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Z
(E04F)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 高橋 三成 |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
新井 夕起子 佐藤 昭喜 |
登録日 | 2003-08-01 |
登録番号 | 特許第3458072号(P3458072) |
権利者 | 株式会社コバヤシ |
発明の名称 | ユニットタイル |
代理人 | 峯 唯夫 |