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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1125516
審判番号 不服2003-9433  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-26 
確定日 2005-10-31 
事件の表示 平成9年特許願第516814号「心拍出量を評価するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成9年5月1日国際公開、WO97/15230、平成11年11月30日国内公表、特表平11-513910〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1996年10月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1995年10月26日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成15年2月12日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月18日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年6月18日付の手続補正について
上記手続補正は、(1)請求項10〜18を削除し、(2)請求項1および9の「患者の身体の流動部位(flow region)を通して血液拍出量を評価する方法であって、」の記載を「システムにおける患者の身体の流動部位(flow region)を通して血液拍出量を計算するための方法であって、」と補正すると共に、(3)請求項1〜9における用語「評価」を「計算」と補正するものである。
上記補正(1)は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものであり、上記補正(2)は、請求項1および9がシステムにおける計算方法であることを明確にするものであり、上記補正(3)は、C)の行程において計算処理を行なうことを明確にしたものであって、原審における拒絶の理由に対して、請求項1〜9記載の発明がそれぞれ診断方法に該当するものではなく、システムの計算方法に関するものであることを明確にしようとするものであるから、上記補正(2)および(3)は、特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
以上のとおりであるから、上記補正は、特許法第17条の2第1項から第4項までの規定に適合する。

3.本願発明
(1)本願請求項1ないし9に係る発明は、平成15年6月18日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである
「 【請求項1】 システムにおける患者の身体の流動部位(flow region)を通して血液拍出量を計算するための方法であって、
A)入力信号プロフィールを有するインジケータ入力信号を提供する工程であって、該インジケータ入力信号は、インジケータを、該入力信号プロフィールを有する該インジケータ入力信号として、該流動部位の上流位置に注入するために使用される、工程と、
B)インジケータ出力信号を得る工程であって、該インジケータ出力信号は、該流動部位の下流位置における該インジケータの存在を感知することによって決定される、工程と、
C)局所計算時間にわたる局所血液拍出量値およびトレンド計算時間にわたるトレンド血液拍出量値の両方を、該入力信号プロフィールおよび該インジケータ出力信号の所定の関数として計算し、該トレンド計算時間が、該局所計算時間よりも長く、それによって、血液拍出量における比較的速いおよび遅い変化の両方に対応する計算された血液泊出量値を提供する工程と、
を包含する方法。」

4.原査定の理由及び請求人の主張
原審において、概略『この出願の請求項1〜8、9、17に係る各方法の発明は、患者の外科手術や疾患の診断等のため医者が利用することを目的とした、患者の心拍出量の評価方法に関する発明であり、また、生体を必須の構成要件とするもの(特に、請求項1、9の各構成要件、A)、B))であるから、「人間を診断する方法」に該当し、「産業上利用することができる発明」であるものとは認められない。したがって、上記各請求項に係る方法の発明は特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。』との拒絶理由を通知し、
拒絶査定では『拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものである。』とした上で、さらに備考欄に『上記補正後の請求の範囲1〜9は「患者の身体の流動部位 (flow region)を通して血液拍出量を評価する方法」であり、依然として「病気の発見、健康状態の認識等の医療目的で、人間の内部若しくは外部の状態、又は、人間の各器官の形状若しくは大きさを計測する方法」、すなわち「人間を診断する方法」に該当している。「人間を診断する方法」は産業上利用することが出来る発明に該当せず、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしていないので、特許を受けることが出来ない。』と記載されている。

これに対して、請求人は、審判請求理由において、『手続補正書に記載された各請求項に記載される本願発明は、医師および医師の指揮下にある人物によってなされるとは限らず、むしろ、アウトソーシングなどによって、その計算を業とする企業によって業として実施され得る発明です。御庁が発行する審査基準では、人間から採取したもの(血液など)を処理する方法、分析等によって各種データを収集する方法は、人間を手術、治療または診断する方法には該当しないとされています。本願発明は、まさしく、収集されたデータをさらに計算する方法であり、その行為自体に医師の行為が必要というわけでなく、医師の技術的または専門的判断を必要とするものでもありません。』と述べ、本願発明が特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしている旨主張している。

5.当審の判断
そこで、本願発明を上記審査基準に沿って検討する。
特許庁が審査・審判における判断の指針として作成し、公表している「特許・実用新案審査基準」の「産業上利用することができる発明の改訂審査基準」(平成17年4月15日公表)の“第II部第1章2.1「産業上利用することができる発明」に該当しないものの類型”には、“(1)人間を手術、治療又は診断する方法”の項に、『人間を手術、治療又は診断する方法は、通常、医師(医師の指示を受けたものを含む。以下同じ。)が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法であって、いわゆる「医療行為」と言われているものである。医療機器、医薬自体は、物であり、「人間を手術、治療又は診断する方法」に含まれないが、医療機器(メス等)を用いて人間を手術する方法や、医薬を使用して人間を治療する方法は、「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当する。医療機器の作動方法は、医療機器自体に備わる機能を方法として表現したものであり、「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当しない。ここでいう医療機器の作動方法には、医療機器内部の制御方法に限らず、医療機器自体に備わる機能的・システム的な作動、例えば、操作信号に従った切開手段の移動や開閉作動あるいは放射線、電磁波、音波等の発信や受信が含まれる。医師の行為(例:機器による患者の特定部位の切開・切除)を含む方法は、ここでいう医療機器の作動方法には該当しない。人間から採取したもの(例:血液、尿、皮膚、髪の毛、細胞、組織)を処理する方法、又はこれを分析するなどして各種データを収集する方法は、「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当しない。』と記載されており、さらに、“3(丸数字)人間を診断する方法”には、『人間を診断する方法には、病気の発見、健康状態の認識等の医療目的で、人間の身体の各器官の構造・機能を計測するなどして各種の資料を収集する方法、及び人間の症状等について判断する方法が含まれる。』が記載されている。

本願発明は、発明の詳細な説明を参酌すると、患者の身体の流動部位を通る血液拍出量を評価するための方法およびシステムを提供するものであって、請求項1に記載の各工程を包含する方法に関するものと把握される。
請求項1には、A)ないしC)の行程が記載されており、このうちC)の行程には、局所計算時間にわたる局所血液拍出量値およびトレンド計算時間にわたるトレンド血液拍出量値の両方を所定の関数として計算することが記載されているものの、A)の行程には、患者の流動部位の上流位置(右心室)にインジケータ入力信号を注入する行程が記載されており、B)の行程には、患者の流動部位の下流位置(肺動脈)におけるインジケータの存在を感知する行程が記載されており、これらのA)およびB)の行程は、患者の身体に直接影響を与えるものであるから、医師または医師の指揮下にある人物によって行われるべきことであることは明らかである。
よって、本願発明は、収集されたデータを計算することのみではなく、前記計算の基となるデータを患者の身体から収集する行程をも包含するものである。
ここで、上記審査基準の「人間から採取したもの(例:血液、尿、皮膚、髪の毛、細胞、組織)を処理する方法、又はこれを分析するなどして各種データを収集する方法」でいうところの「各種データ」とは人間から採取した構成物を分析して得られるデータをいうのであって、本願発明における「インジケータ入力信号」および「インジケータ出力信号」は前記「各種データ」には該当しない。
そして、前記「インジケータ出力信号」は患者の流動部位の下流位置(肺動脈)で計測して得られたデータであるから、上記審査基準でいうところの「人間の身体の各器官の構造・機能を計測するなどして各種の資料を収集する方法」によって得られた資料に該当する。
したがって、本願発明は、血液拍出量を計算するシステムにおける計算方法というものではなく、医療目的で、人間の身体の各器官の構造・機能を計測するなどして各種の資料を収集する方法をも包含するものであるから、前記審査基準でいうところの「医療機器の作動方法」には該当せず、「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当するものと認められる。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、産業上利用することができる発明に該当しないものであるから、特許法第29条第1項柱書の規定を満たさないので特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-07 
結審通知日 2005-06-08 
審決日 2005-06-21 
出願番号 特願平9-516814
審決分類 P 1 8・ 14- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 伸二伊藤 幸仙  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 長井 真一
水垣 親房
発明の名称 心拍出量を評価するためのシステムおよび方法  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
代理人 安村 高明  

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