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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C08F
管理番号 1125802
異議申立番号 異議2003-73014  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-08-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-09 
確定日 2005-08-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3415912号「結晶性ポリプロピレン」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3415912号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 【I】手続きの経緯
特許第3415912号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成6年1月18日に特許出願され、平成15年4月4日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、加藤達也より、特許異議の申立てがなされ、平成17年2月24日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年5月2日に特許異議意見書とともに訂正請求書が提出されたものである。

【II】訂正の適否について
1.訂正の内容
(訂正事項a)
特許請求の範囲の【請求項1】中の「 (ただし、ω0は0.1以上であり、G0は600,000以下である。)」を、「(ただし、ω0は0.1以上であり、G0は600,000以下であり、昇温分別測定は、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流速:1ml/min、冷却条件:140℃から70分かけて40℃まで冷却、昇温条件:100℃以上で2℃刻みで40minずつ保持、して行う。)」と訂正する。
(訂正事項b)
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(訂正事項c)
特許請求の範囲の請求項3中の「(ただし、ω0は0.1以上であり、G0は600,000以下である。)」を、「(ただし、ω0は0.1以上であり、G0は600,000以下であり、昇温分別測定は、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流速:1ml/min、冷却条件:140℃から70分かけて40℃まで冷却、昇温条件:100℃以上で2℃刻みで40minずつ保持、して行う。)」と訂正し、請求項3の番号を繰り上げて請求項2と訂正する。
(訂正事項d-1)
特許明細書の段落【0006】(1ヶ所)及び【0007】(2ケ所)中の「(ただし、ω0は0.1以上であり、G0は600,000以下である。)」を、「(ただし、ω0は0.1以上であり、G0は600,000以下であり、昇温分別測定は、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流速:1ml/min、冷却条件:140℃から70分かけて40℃まで冷却、昇温条件:100℃以上で2℃刻みで40minずつ保持、して行う。)」と訂正する。
(訂正事項d-2)
特許明細書の段落【0008】及び【0035】中の「珪素原子含有複素環式置換基、ラクトン骨格構造を有する置換基、R2は」を、「珪素原子含有複素環式置換基、R2は」と訂正する。
(訂正事項d-3)
特許明細書の段落【0037】中のRV〜RZの式を削除し、段落【0040】中の「;〔RV〕Si(OEt)3 ,〔RW〕Si(OMe)3 ,
〔RX〕Si(OMe)3 ,〔RY〕Si(OEt)3 ,〔RZ〕Si(OMe)3」を削除する。

2.訂正の適否
訂正事項aは、特許明細書の段落【0050】の記載に基づいて昇温分別測定の測定条件を限定するものであるから、願書に添付された明細書の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
訂正事項bは、請求項の削除であるから、願書に添付された明細書の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
訂正事項cのうち、昇温分別測定の測定条件を限定する訂正は、訂正事項aと同様に願書に添付された明細書の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。また、訂正事項cのうち、訂正事項bに伴い請求項の番号を繰り上げる訂正は、願書に添付された明細書の範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的としたものである。
訂正事項d-1〜d-3は、訂正事項a〜cに伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の整合を図るものであるから、願書に添付された明細書の範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的としたものである。
そして、訂正事項a〜d-3は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【III】本件発明
上記の結果、訂正後の本件の請求項1〜2に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明2」という。)は、訂正明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】昇温分別測定から求められる溶出ピーク温度(Tp)と動的溶融粘弾性測定から求められた周波数ω0、弾性率G0とが、
121.0≧Tp≧118.69-0.2858logω0+0.1991logG0
(ただし、ω0は0.1以上であり、G0は600,000以下であり、昇温分別測定は、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流速:1ml/min、冷却条件:140℃から70分かけて40℃まで冷却、昇温条件:100℃以上で2℃刻みで40minずつ保持、して行う。)
なる関係を満足することを特徴とする結晶性ポリプロピレン。
【請求項2】(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須成分とする固体成分を、
(B)有機アルミニウム化合物及び
(C)下記一般式(1)で示される有機珪素化合物の存在下、
(D)オレフィン
と接触させてなるα-オレフィン重合触媒用成分、を用いてプロピレンを重合してなるポリプロピレンであって、昇温分別測定から求められる溶出ピーク温度(Tp)と動的溶融粘弾性測定から求められた周波数ω0、弾性率G0とが、
121.0≧Tp≧118.69-0.2858logω0+0.1991logG0
(ただし、ω0は0.1以上であり、G0は600,000以下であり、昇温分別測定は、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流速:1ml/min、冷却条件:140℃から70分かけて40℃まで冷却、昇温条件:100℃以上で2℃刻みで40minずつ保持、して行う。)
なる関係を満足することを特徴とする結晶性ポリプロピレン。
【化2】

〔但し、R1は環内にエーテル若しくはチオエーテル結合含有環状置換基、環内エーテル結合含有環状置換基のオキシ基、環内ケトン結合含有環状置換基、窒素原子含有複素環式置換基、珪素原子含有複素環式置換基、R2は炭素数1〜10個の炭化水素基、R4O-、R53Si-若しくはR63SiO-、R3はメチル基若しくはエチル基、xは1若しくは2、yは0若しくは1、zは2若しくは3、x+y+z=4であり、R4は炭素数3〜10個の炭化水素基、R5及びR6は炭素数1〜10個の炭化水素基である。〕」

【IV】取消理由の概要
取消理由のうち、理由3の2.と3.の内容は以下のとおりである。
(理由3の2.:特許法36条4項違反について)
訂正前の請求項1〜3には、結晶性ポリプロピレンのTp、ω0 、G0 が 121.0≧Tp≧118.69-0.2858logω0+0.1991logG0 (以下「式A」という。)を満足することが記載されている。
また、訂正前の本件特許明細書の【0006】には、「立体規則性の尺度として昇温分別法での溶出ピーク温度(Tp)を用いた場合、高剛性、高耐熱性を発現するためのTp値は一定値ではなく、ポリプロピレンの動的溶融粘弾性における周波数と弾性率に応じて変化することが判明し、そして、ポリプロピレンの立体規則性を昇温分別法での溶出ピーク温度(Tp)と動的粘弾性測定から求めたω0 、G0 とが式 Tp≧118.69-0.2858logω0 +0.1991logG0なる関係を満足すると、該結晶性ポリプロピレンは高剛性、高耐熱性を発現することを見い出し本願の第1の発明を完成するに至った。」と記載されている。
しかしながら、発明の詳細な説明には、Tpがω0とG0に応じて変化することを示す根拠も、式Aを導き出した過程も記載されていない。また、表3の実施例と比較例のTp、ω0 、G0 の数値から式Aが自明に導き出せるとも認められない。
すると、実施例1〜4以外の式Aを満たす結晶性ポリプロピレンが実施例と同等の作用効果を奏することについての理論的説明あるいは具体的なデータが記載されていないので、式Aを満たすという構成と効果の関係が不明りょうであり、当業者にとってそれが自明であるともいえないので、実施例1〜4以外の訂正前の請求項1〜3に含まれる発明のすべてが、実施例と同等の効果を奏するか否か、当業者にとって明らかではない。
したがって、訂正前の請求項1〜3に係る発明について、当業者が容易に実施可能な程度に発明の目的、構成及び効果が記載されていないので、訂正前の本件特許明細書は、特許法第36条第4項の規定を満たしていない。
(理由3の3.:特許法36条5項第1号及び第6項違反について)
訂正前の請求項1〜3には、結晶性ポリプロピレンが式Aを満足することが記載されており、訂正前の請求項1〜3に係る発明は、式Aを満たすことにより所期の効果を奏することを技術的思想とする発明である。
しかしながら、上記2.において記載したように、発明の詳細な説明には、式Aを満たすことと効果の関連性が理論的あるいは具体的に示されておらず、出願時の技術常識を参酌しても、実施例1〜4から、訂正前の請求項1〜3に係る発明のすべてにまで拡張ないし一般化できるとはいえない。 したがって、訂正前の請求項1〜3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、訂正前の本件特許明細書は、特許法第36条第5項第1号及び第6項の規定を満たしていない。

【V】取消理由に対する特許権者の主張
特許権者は、平成17年5月2日に提出した特許異議意見書の「(4)特許法第36条第4項、第5項第1号、第5項第2号及び第6項について」の欄において下記の6つの項目について主張している。
(i)ω0及びG0の上限または下限が記載してないことに関して
(ii)「レオロジー工学とその応用技術」におけるポリスチレンの説明をポリプロピレンに当てはまる根拠がないという点について
(iii)Tpがω0とG0 に応じて変化する根拠と本件発明の式を導き出した根拠及び本件発明の式と効果の関連性について
(iv)パラメーターから具体的なポリプロピレンが想定できないという点について
(v)ω0、G0 を固定してTpを変化させる方法が記載されていないということに関して
(vi)比較例1、2のC.E.の求め方が不明確である点について

これらの項目のうち、取消理由の上記理由3の2.と3.に対する主張は(iii)の項目であるから、この点についての特許権者の主張を検討する。

特許権者は(iii)の前半部分において「Tp、ω0、G0各パラメータとそれらの間の関係式の持つ意味合いの定性的な解釈」を行っており、その要旨は下記の通りである。
「本件発明の式を変形すると
Tp+0.2858logω0-0.1991logG0≧118.69 式(11)
となり、この式(11)は、下記のア〜イの物性が必要であることを示している。
(ア)Tpは高いほど好ましい、(イ)ω0は大きいほど好ましい、(ウ)G0は小さいほど好ましい。
このうち、(ア)に関して、実施例1〜4のデータを用いた図1(横軸:Tp、縦軸:曲げ弾性率)と図2(横軸:Tp+0.2858logω0-0.1991logG0、縦軸:曲げ弾性率)を対比すると、高剛性化を図るにはいたずらにTpを上昇させても必ずしも有効ではなく、ω0とG0も考慮する必要があることがわかる。
また、(イ)についてはMwを小さくすることにより達成可能であり、Tpが同一の場合には分子量が小さい方が結晶化度が高く、剛性、耐熱性がより向上する。
さらに、(ウ)についてはMw/Mnを大きくすることにより達成可能であり、同一のMwである場合にはMw/Mnが大きい方が、配向結晶化を起こしやすい高分子量成分を多量に含有するため、剛性、耐熱性が向上する。
上記3要素は、何れか一つのみを向上させただけでは限界があり、必要な3要素のバランスを示したのが請求項に記載の式の右側である
Tp≧118.69-0.2858logω0+0.1991logG0 式(10)
である。」

次に、特許権者は(iii)の後半部分において、図3を用いて式Aと効果の関係について主に下記のように主張している。
「請求項記載の式の係数をも含む定量的な関係については理論的に説明できないが、本件発明の実施例と比較例のデータをプロットした図3を見れば、式(11)で示される特定の関係を満たすことが必須であり、Tpを中心に考えれば、高い剛性と耐熱性をもたらすために必要とされるTpがω0とG0に応じて変化することは明らかである。この関係式の妥当性は拒絶理由に対する意見書の中で行った実験報告書のデータによっても補強されており、実施例1〜4以外の式(11)を満たすポリプロピレンが実施例と同等の作用効果を奏することは各パラメータの役割を考察すれば当業者にとって自明である。
また、パラメータ式の傾きは、経験的な依存性から求めたものであり、比較例の2点、意見書で示した追加比較例3をみるとわかるように、同一の触媒系で重合条件を変化させると、同様の傾きで変化することから割り出したものであり、先行技術と区別できるものである。」

【VI】判断
(特許法第36条第5項第1号及び第6項違反について)
特許権者が特許異議意見書の前段で記載した「(ア)Tpは高いほど好ましい、(イ)ω0は大きいほど好ましい、(ウ)G0は小さいほど好ましい。」ことについてのTp、ω0、G0の3つのパラメータの定性的な解釈は、式Aを導き出す過程を示すものではなく、また、式Aを満たすことと効果の関連性を理論的に示すものではない。
また、特許権者が特許異議意見書の後段で記載した図3に関して、特許権者は「そのパラメータ式の傾きは、経験的な依存性から求めた」と記載しているが、具体的にどうやってその傾きを求めたのか説明していない。そして、図3において実施例1〜4を比較例1〜2から区別するためには、特許権者が引いた線以外にも、121.0≧Tp≧120.5という、ω0とG0 には依存しない線等も含め多数の線を引くことができるので、図3の実施例と比較例の6つの点から自ずと特許権者が引いた境界線を引くことができるとはいえない。すると、図3に基づく特許権者の主張も式Aを導き出す過程を示すものではなく、式Aを満たすことと効果の関連性を具体的に示すものでもない。
なお、平成14年6月18日提出の手続補足書の実験成績証明書に記載された実験1〜3のデータは、本件訂正明細書に記載されたものではないので考慮できない。仮に、当該データを追加比較例として考慮しても、式Aを満たすことと効果の関連性を示すには不十分である。
したがって、特許権者の主張を検討しても、発明の詳細な説明に開示された実施例1〜4で示されるポリプロピレンから本件発明1〜2の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。
よって、本件発明1〜2は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、本件訂正明細書は、特許法第36条第5項第1号及び第6項の規定を満たしていない。

(特許法第36条第4項違反について)
上記したように、特許権者の特許異議意見書における主張は、式Aを導き出した過程を説明するものではなく、また、実施例1〜4以外の式Aを満たす結晶性ポリプロピレンが実施例と同等の作用効果を奏することについて理論的に説明するものでもなく、さらに、訂正明細書の実施例と比較例に加えて平成14年6月18日提出の手続補足書の実験成績証明書に記載された実験1〜3のデータを追加比較例として考慮しても、式Aを満たすものと満たさないものとの効果の差を明確に示すためのデータとしては不十分であるから、依然として、本件発明1〜2に記載された式Aを満たすという構成と効果の関連性が不明りょうであり、その関連性が当業者にとって自明であるともいえないので、実施例1〜4以外の本件発明1〜2に含まれる発明の全てが、実施例と同等の効果を奏するか当業者にとって明らかではない。
よって、本件発明1〜2について、当業者が容易に実施可能な程度に、発明の効果が記載されていないので、本件訂正明細書は、特許法第36条第4項の規定を満たしていない。

【VI】むすび
以上のとおり、本件発明1〜2に係る特許は、その明細書の記載が特許請求の範囲第36条第4項、第5項第1号及び第6項の記載を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件発明1〜2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める制令(平成7年制令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
結晶性ポリプロピレン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】昇温分別測定から求められる溶出ピーク温度(Tp)と動的溶融粘弾性測定から求められた周波数ω0、弾性率G0とが、
121.0≧Tp≧118.69-0.2858logω0+0.1991logG0
(ただし、ω0は0.1以上であり、G0は600,000以下であり、昇温分別測定は、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流速:1ml/min、冷却条件:140℃から70分かけて40℃まで冷却、昇温条件:100℃以上で2℃刻みで40minずつ保持、して行なう。)
なる関係を満足することを特徴とする結晶性ポリプロピレン。
【請求項2】(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須成分とする固体成分を、(B)有機アルミニウム化合物及び(C)下記一般式(1)で示される有機珪素化合物の存在下、(D)オレフィンと接触させてなるα-オレフィン重合触媒用成分、を用いてプロピレンを重合してなるポリプロピレンであって、昇温分別測定から求められる溶出ピーク温度(Tp)と動的溶融粘弾性測定から求められた周波数ω0、弾性率G0とが、
121.0≧Tp≧118.69-0.2858logω0+0.1991logG0
(ただし、ω0は0.1以上であり、G0は600,000以下であり、昇温分別測定は、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流速:1ml/min、冷却条件:140℃から70分かけて40℃まで冷却、昇温条件:100℃以上で2℃刻みで40minずつ保持、して行なう。)
なる関係を満足することを特徴とする結晶性ポリプロピレン。
【化2】

〔但し、R1は環内にエーテル若しくはチオエーテル結合含有環状置換基、環内エーテル結合含有環状置換基のオキシ基、環内ケトン結合含有環状置換基、窒素原子含有複素環式置換基、珪素原子含有複素環式置換基、R2は炭素数1〜10個の炭化水素基、R4O-、R53Si-若しくはR63SiO-、R3はメチル基若しくはエチル基、xは1若しくは2、yは0若しくは1、zは2若しくは3、x+y+z=4であり、R4は炭素数3〜10個の炭化水素基、R5及びR6は炭素数1〜10個の炭化水素基である。〕
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、結晶性ポリプロピレンに関し、より詳しくは、剛性、耐熱性の優れた結晶性ポリプロピレンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンは耐熱性、耐薬品性、電気的性質に優れており、更に剛性、引張り強度、光学的特性、加工性が良好であり射出成形、フィルム成形、シート成形、ブロー成形等に利用され、また、ポリプロピレンは軽比重であり、容器、包装材料等の分野で広く用いられている。しかしながら、用途によってはこれらの性質が十分満足されている訳ではなく、使用が制限されている場合が多々あった。
【0003】
上記した性能のうち、とりわけ、剛性、耐熱性において、ポリプロピレンは、ポリスチレン、ABS樹脂に比べて劣っている。したがって、剛性、耐熱性が要求される成形品を製造するための材料としては、ポリプロピレンを使用することはできず、剛性、耐熱性が要求される成形品の材料として、前記ポリスチレンやABS樹脂の代りに、敢えてポリプロピレンを使用する場合、前記性質を満足させるために、肉厚の成形品にしなければならず、このことは成形品の薄肉化を阻み、成形品のコストを上昇させる、つまり、ポリプロピレンまたはポリプロピレン組成物の用途を拡大することを阻止するものである。もし、ポリプロピレンが優れた剛性、耐薬品性、成形性、耐熱性、硬度などを備えているとすれば、そのようなポリプロピレンは、ポリスチレンやABS樹脂の代替として、用途の拡大を図ることができ、しかも、肉薄の成形品に仕上ることができるから、省資源、コストの低減を期待することもできる。
【0004】
結晶性ポリプロピレンの剛性を向上させるための公知技術としては例えばパラターシャリーブチル安息香酸アルミニウム塩や1,8-2,4-ジベンジリデンソルビトール等の有機造核剤を添加して成形する方法があるが、コストが高く経済的でない上、該添加により光沢、衝撃強度、引張り伸び等が大巾に低下する欠点がある。剛性向上の他の手段としては、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、硫酸バリューム、アスベスト、ケイ酸カルシウム等の各種無機充填剤を使用する方法があるが、ポリプロピレンの特徴である軽量性、透明性を損う上、衝撃強度、光沢、引張り伸び、加工性等が低下する欠点がある。そこで、ポリプロピレンの剛性、耐熱性を高めるため結晶性の高いポリプロピレンの開発が必要とされ、重合触媒、重合方法の工夫により結晶性ポリプロピレンの開発が試みられてきたが、それらは剛性が多少改善されているものの、まだ不十分であり、透明性も不十分であったり、アイソタクテイシイテイの高いポリプロピレンの開発を目指しても、該アイソタクテイシイテイはいまだ従来技術の範囲内にあり成形品の剛性向上効果は未だ不充分である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、結晶性の向上によって、剛性、耐熱性が向上し、高硬度であり、そして、疲労特性、耐摩耗性、寸法安定性、耐薬品性、成形性などにも優れた新規なプロピレン単独重合体を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、ポリプロピレンの剛性、耐熱性を高めるためには立体規則性を向上させることが必要であるが、立体規則性は昇温分別測定による溶出温度に依存し、該立体規則性の尺度として昇温分別法での溶出ピーク温度(Tp)を用いた場合、高剛性、高耐熱性を発現するためのTp値は一定値ではなく、ポリプロピレンの動的溶融粘弾性における周波数と弾性率に応じて変化することが判明し、そして、ポリプロピレンの立体規則性を昇温分別法での溶出ピーク温度(Tp)と動的粘弾性測定から求めたω0、G0とが式
121.0≧Tp≧118.69-0.2858logω0+0.1991logG0
(ただし、ω0は0.1以上であり、G0は600,000以下であり、昇温分別測定は、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流速:1ml/min、冷却条件:140℃から70分かけて40℃まで冷却、昇温条件:100℃以上で2℃刻みで40minずつ保持、して行なう。)
なる関係を満足すると、該結晶性ポリプロピレンは高剛性、高耐熱性を発現することを見い出し本願の第1の発明を完成するに至った。
更に、該結晶性ポリプロピレンは種々の重合触媒、重合手段により製造し得るが、本発明者らが先に発明した特定の立体規則性重合触媒を使用すると該結晶性ポリプロピレンを容易に製造し得ることを見い出し本願の第2の発明を完成するに至った。
【0007】
発明の要旨
すなわち、本発明の要旨は、
昇温分別測定から求められる溶出ピーク温度(Tp)と動的溶融粘弾性測定から求められた周波数ω0、弾性率G0とが、
121.0≧Tp≧118.69-0.2858logω0+0.1991logG0
(ただし、ω0は0.1以上であり、G0は600,000以下であり、昇温分別測定は、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流速:1ml/min、冷却条件:140℃から70分かけて40℃まで冷却、昇温条件:100℃以上で2℃刻みで40minずつ保持、して行なう。)
なる関係を満足することを特徴とする結晶性ポリプロピレン、であり、また、
(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須成分とする固体成分を、
(B)有機アルミニウム化合物及び
(C)下記一般式(1)で示される有機珪素化合物の存在下、
(D)オレフィン
と接触させてなるα-オレフィン重合用触媒成分、を用いてプロピレンを重合してなるポリプロピレンであつて、昇温分別測定から求められる溶出ピーク温度(Tp)と動的溶融粘弾性測定から求められた周波数ω0、弾性率G0とが、
121.0≧Tp≧118.69-0.2858logω0+0.1991logG0
(ただし、ω0は0.1以上であり、G0は600,000以下であり、昇温分別測定は、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流速:1ml/min、冷却条件:140℃から70分かけて40℃まで冷却、昇温条件:100℃以上で2℃刻みで40minずつ保持、して行なう。)
なる関係を満足することを特徴とする結晶性ポリプロピレン、である。
【0008】
【化3】

〔但し、R1は環内にエーテル若しくはチオエーテル結合含有環状置換基、環内エーテル結合含有環状置換基のオキシ基、環内ケトン結合含有環状置換基、窒素原子含有複素環式置換基、珪素原子含有複素環式置換基、R2は炭素数1〜10個の炭化水素基、R4O-、R53Si-若しくはR63SiO-、R3はメチル基若しくはエチル基、xは1若しくは2、yは0若しくは1、zは2若しくは3、x+y+z=4であり、R4は炭素数3〜10個の炭化水素基、R5及びR6は炭素数1〜10個の炭化水素基である。〕
【0009】
ここで、本発明における昇温分別測定から求められる溶出ピーク温度(Tp)とは、カラム内に試料溶液を導入し、試料をカラム内の充填剤に吸着させて後、カラムの温度を昇温させていき、各温度で溶出したポリマーの濃度を検出することにより測定されるものであり、各温度とポリマーの濃度との分析チャートを作成し、最も大きいピークがあらわれたときのピーク位置の温度である。
また、本発明でのポリプロピレンの粘弾性測定における弾性率G0と周波数ω0とは次の如き方法で求められた値である。
【0010】
動的溶融粘弾性測定装置、例えば、レオメトリクス社製:RMS-800粘弾性測定装置を用いて、測定温度:200℃、歪:γ=15%、周波数:0.01〜100rad/sec、プレート:パラレルプレート、サンプル:厚さ2mm、直径25mmのプレス成型品を測定温度で安定させてから1.5mmに圧縮して測定、等の測定条件で、一定範囲の周波数ωに対する貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”の応答を測定し、得られた応答値を縦軸に弾性率G、横軸に周波数ωとした図にプロットし、G’-ω曲線、G”-ω曲線を描き、これら曲線の交点の座標(G0、ω0)を弾性率G0、周波数ω0と定義する。図1にG0、ω0測定法の模式図を示す。
【0011】
そして、本発明でのポリプロピレンは、周波数ω0が0.1以上、弾性率G0が600,000以下である。ω0が0.1未満、G0が600,000を超えると、得られたポリプロピレンの成形性が低下する。また、本発明のポリプロピレンのTpと周波数ω0、弾性率G0との関係が、Tp<118.69-0.2858logω0+0.1991logG0では剛性、耐熱性が不十分であり、好ましくは121.0≧Tp≧118.94-0.2858logω0+0.1991logG0、更に好ましくは121.0≧Tp≧119.19-0.2858logω0+0.1991logG0、である。
本発明で用いられる重合触媒については、以下のとおりのものである。
【0012】
固体成分
本発明で用いられる固体成分(以下、成分Aという)は、マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須成分とするが、このような成分は通常マグネシウム化合物、チタン化合物及び電子供与性化合物、更に前記各化合物がハロゲンを有しない化合物の場合は、ハロゲン含有化合物を、それぞれ接触することにより調製される。
(1)マグネシウム化合物
マグネシウム化合物は、一般式MgR1R2で表わされる。式において、R1及びR2は同一か異なる炭化水素基、OR′基(R′は炭化水素基)、ハロゲン原子を示す。より詳細には、R1及びR2の炭化水素基としては、炭素数1〜20個のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルアルキル基が、OR′基としては、R′が炭素数1〜12個のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルアルキル基が、ハロゲン原子としては塩素、臭素、ヨウ素、弗素等が挙げられる。
【0013】
それら化合物の具体例を下記に示すが、化学式において、Me:メチル、Et:エチル、Pr:プロピル、Bu:ブチル、He:ヘキシル、Oct:オクチル、Ph:フェニル、cyHe:シクロヘキシルをそれぞれ示す。MgMe2,MgEt2,Mgi-Pr2,MgBu2,MgHe2,MgOct2,MgEtBu,MgPh2,MgcyHe2,Mg(OMe)2,Mg(OEt)2,Mg(OBu)2,Mg(OHe)2,Mg(OOct)2,Mg(OPh)2,Mg(OcyHe)2,EtMgCl,BuMgCl,HeMgCl,i-BuMgCl,t-BuMgCl,PhMgCl,PhCH2MgCl,EtMgBr,BuMgBr,PhMgBr,BuMgI,EtOMgCl,BuOMgCl,HeOMgCl,PhOMgCl,EtOMgBr,BuOMgBr,EtOMgI,MgCl2,MgBr2,MgI2。
【0014】
上記マグネシウム化合物は、成分Aを調製する際に、金属マグネシウム又はその他のマグネシウム化合物から調製することも可能である。その一例として、金属マグネシウム、ハロゲン化炭化水素及び一般式XnM(OR)m-nのアルコキシ基含有化合物〔式において、Xは水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20個の炭化水素基、Mは硼素、炭素、アルミニウム、珪素又は燐原子、Rは炭素数1〜20個の炭化水素基、mはMの原子価、m>n≧0を示す。〕を接触させる方法が挙げられる。
【0015】
該アルコキシ基含有化合物の一般式のX及びRの炭化水素基としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(Pr)、i-プロピル(i-Pr)、ブチル(Bu)、i-ブチル(i-Bu)、ヘキシル(He)、オクチル(Oct)等のアルキル基、シクロヘキシル(cyHe)、メチルシクロヘキシル等のシクロアルキル基、アリル、プロペニル、ブテニル等のアルケニル基、フェニル(Ph)、トリル、キシリル基のアリール基、フェネチル、3-フェニルプロピル等のアルアルキル等が挙げられる。これらの中でも、特に炭素数1〜10個のアルキル基が望ましい。以下、アルコキシ基含有化合物の具体例を挙げる。
【0016】
(i)Mが炭素の場合の化合物
式C(OR)4に含まれるC(OMe)4,C(OEt)4,C(OPr)4,C(OBu)4,C(Oi-Bu)4,C(OHe)4,C(OOct)4:式XC(OR)3に含まれるHC(OMe)3,HC(OEt)3,HC(OPr)3,HC(OBu)3,HC(OHe)3,HC(OPh)3,MeC(OMe)3,MeC(OEt)3,EtC(OMe)3,EtC(OEt)3,cyHeC(OEt)3,PhC(OMe)3,PhC(OEt)3,CH2ClC(OEt)3,MeCHBrC(OEt)3;MeCHClC(OEt)3;ClC(OMe)3,ClC(OEt)3,ClC(Oi-Bu)3,BrC(OEt)3;式X2C(OR)2に含まれるMeCH(OMe)2,MeCH(OEt)2,CH2(OMe)2,CH2(OEt)2,CH2ClCH(OEt)2,CHCl2CH(OEt)2,CCl3CH(OEt)2,CH2BrCH(OEt)2,PhCH(OEt)2等が挙げられる。
【0017】
(ii)Mが珪素の場合の化合物
式Si(OR)4に含まれるSi(OMe)4,Si(OEt)4,Si(OBu)4,Si(Oi-Bu)4,Si(OHe)4,Si(OOct)4,Si(OPh)4:式XSi(OR)3に含まれるHSi(OEt)3,HSi(OBu)3,HSi(OHe)3,HSi(OPh)3;MeSi(OMe)3,MeSi(OEt)3,MeSi(OBu)3,EtSi(OEt)3,PhSi(OEt)3,EtSi(OPh)3;ClSi(OMe)3,ClSi(OEt)3,ClSi(OBu)3,ClSi(OPh)3,BrSi(OEt)3;式X2Si(OR)2に含まれるMe2Si(OMe)2,Me2Si(OEt)2,Et2Si(OEt)2;MeClSi(OEt)2;CHCl2SiH(OEt)2;CCl3SiH(OEt)2;MeBuSi(OEt)2:X3SiORに含まれるMe3SiOMe,Me3SiOEt,Me3SiOBu,Me3SiOPh,Et3SiOEt,Ph3SiOEt等が挙げられる。
【0018】
(iii)Mが硼素の場合の化合物
式B(OR)3に含まれるB(OEt)3,B(OBu)3,B(OHe)3,B(OPh)3等が挙げられる。
(iv)Mがアルミニウムの場合の化合物
式Al(OR)3に含まれるAl(OMe)3,Al(OEt)3,Al(OPr)3,Al(Oi-Pr)3,Al(OBu)3,Al(Ot-Bu)3,Al(OHe)3,Al(OPh)3等が挙げられる。
(v)Mが燐の場合の化合物
式P(OR)3に含まれるP(OMe)3,P(OEt)3,P(OBu)3,P(OHe)3,P(OPh)3等が挙げられる。
【0019】
更に、前記マグネシウム化合物は、周期表第II族又は第IIIa族金属(M)の有機化合物との錯体も使用することができる。該錯体は一般式MgR1R2・n(MR3m)で表わされる。該金属としては、アルミニウム、亜鉛、カルシウム等であり、R3は炭素数1〜12個のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルアルキル基である。又、mは金属Mの原子価を、nは0.1〜10の数を示す。MR3mで表わされる化合物の具体例としては、AlMe3,AlEt3,Ali-Bu3,AlPh3,ZnMe2,ZnEt2,ZnBu2,ZnPh2,CaEt2,CaPh2等が挙げられる。
【0020】
(2)チタン化合物
チタン化合物は、三価及び四価のチタン化合物であり、それらを例示すると、四塩化チタン、四臭化チタン、トリクロルエトキシチタン、トリクロルブトキシチタン、ジクロルジエトキシチタン、ジクロルジブトキシチタン、ジクロルジフェノキシチタン、クロルトリエトキシチタン、クロルトリブトキシチタン、テトラブトキシチタン、三塩化チタン等を挙げることができる。これらの中でも、四塩化チタン、トリクロルエトキシチタン、ジクロルジブトキシチタン、ジクロルジフェノキシチタン等の四価のチタンハロゲン化物が望ましく、特に四塩化チタンが望ましい。
【0021】
(3)電子供与性化合物
電子供与性化合物としては、カルボン酸類、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル類、カルボン酸ハロゲン化物、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミン類、アミド類、ニトリル類、アルデヒド類、アルコレート類、有機基と炭素もしくは酸素を介して結合した燐、ヒ素およびアンチモン化合物、ホスホアミド類、チオエーテル類、チオエステル類、炭酸エステル等が挙げられる。これのうちカルボン酸類、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル類、カルボン酸ハロゲン化物、アルコール類、エーテル類が好ましく用いられる。
【0022】
カルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、ピバリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の脂肪族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、酒石酸等の脂肪族オキシカルボン酸、シクロヘキサンモノカルボン酸、シクロヘキセンモノカルボン酸、シス-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、シス-4-メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等の脂環式カルボン酸、安息香酸、トルイル酸、アニス酸、p-第三級ブチル安息香酸、ナフトエ酸、ケイ皮酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタル酸、トリメリト酸、ヘミメリト酸、トリメシン酸、ピロメリト酸、メリト酸等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられる。カルボン酸無水物としては、上記のカルボン酸類の酸無水物が使用し得る。
【0023】
カルボン酸エステルとしては、上記のカルボン酸類のモノ又は多価エステルを使用することができ、その具体例として、ギ酸ブチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、ピバリン酸プロピル、ピバリン酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソブチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジイソブチル、グルタル酸ジエチル、グルタル酸ジブチル、グルタル酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジイソブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジイソブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソブチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、酒石酸ジイソブチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、p-トルイル酸メチル、p-第三級ブチル安息香酸エチル、p-アニス酸エチル、α-ナフトエ酸エチル、α-ナフトエ酸イソブチル、ケイ皮酸エチル、フタル酸モノメチル、フタル酸モノブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ2-エチルヘキシル、フタル酸ジアリル、フタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジイソブチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジブチル、ナフタル酸ジエチル、ナフタル酸ジブチル、トリメリト酸トリエチル、トリメリト酸トリブチル、ピロメリト酸テトラメチル、ピロメリト酸テトラエチル、ピロメリト酸テトラブチル等が挙げられる。
【0024】
カルボン酸ハロゲン化物としては、上記のカルボン酸類の酸ハロゲン化物を使用することができ、その具体例として、酢酸クロリド、酢酸ブロミド、酢酸アイオダイド、プロピオン酸クロリド、酪酸クロミド、酪酸ブロミド、酪酸アイオダイド、ピバリン酸クロリド、ピバリン酸ブロミド、アクリル酸クロリド、アクリル酸ブロミド、アクリル酸アイオダイド、メタクリル酸クロリド、メタクリル酸ブロミド、メタクリル酸アイオダイド、クロトン酸クロリド、マロン酸クロリド、マロン酸ブロミド、コハク酸クロリド、コハク酸ブロミド、グルタル酸クロリド、グルタル酸ブロミド、アジピン酸クロリド、アジピン酸ブロミド、セバシン酸クロリド、セバシン酸ブロミド、マレイン酸クロリド、マレイン酸ブロミド、フマル酸クロリド、フマル酸ブロミド、酒石酸クロリド、酒石酸ブロミド、シクロヘキサンカルボン酸クロリド、シクロヘキサンカルボン酸ブロミド、1-シクロヘキセンカルボン酸クロリド、シス-4-メチルシクロヘキセンカルボン酸クロリド、シス-4-メチルシクロヘキセンカルボン酸ブロミド、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、p-トルイル酸クロリド、p-トルイル酸ブロミド、p-アニス酸クロリド、p-アニス酸ブロミド、α-ナフトエ酸クロリド、ケイ皮酸クロリド、ケイ皮酸ブロミド、フタル酸ジクロリド、フタル酸ジブロミド、イソフタル酸ジクロリド、イソフタル酸ジブロミド、テレフタル酸ジクロリド、ナフタル酸ジクロリドが挙げられる。又、アジピン酸モノメチルクロリド、マレイン酸モノエチルクロリド、マレイン酸モノメチルクロリド、フタル酸ブチルクロリドのようなジカルボン酸のモノアルキルハロゲン化物も使用し得る。
【0025】
アルコール類は、一般式R4OHで表わされる。一般式においてR4は炭素数1〜12個のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルアルキルである。その具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、p-ターシャリーブチルフェノール、n-オクチルフェノール等である。
【0026】
エーテル類は、一般式R5OR6で表わされる。一般式においてR5,R6は炭素数1〜12個のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルアルキルであり、R5とR6は同じでも異ってもよい。その具体例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジ-2-エチルヘキシルエーテル、ジアリルエーテル、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール、エチルフェニルエーテル等である。
【0027】
成分Aの調製法としては、
(i)マグネシウム化合物(成分1)、チタン化合物(成分2)及び電子供与性化合物(成分3)をその順序に接触させる、
(ii)成分1と成分3を接触させた後、成分2を接触させる、
(iii)成分1、成分2及び成分3を同時に接触させる、等の方法が採用し得る。又、成分2を接触させる前にハロゲン含有化合物と接触させることもできる。ハロゲン含有化合物としては、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン含有アルコール、水素-珪素結合を有するハロゲン化珪素化合物、周期表第IIIa族、IVa族、Va族元素のハロゲン化物(以下、「金属ハライド」という。)等を挙げることができる。
【0028】
ハロゲン化炭化水素としては、炭素数1〜12個の飽和又は不飽和の脂肪族、脂環式及び芳香族炭化水素のモノ及びポリハロゲン置換体である。それら化合物の具体的な例は、脂肪族化合物では、メチルクロライド、メチルブロマイド、メチルアイオダイド、メチレンクロライド、メチレンブロマイド、メチレンアイオダイド、クロロホルム、ブロモホルム、ヨードホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、四沃化炭素、エチルクロライド、エチルブロマイド、エチルアイオダイド、1,2-ジクロルエタン、1,2-ジブロムエタン、1,2-ジヨードエタン、メチルクロロホルム、メチルブロモホルム、メチルヨードホルム、1,1,2-トリクロルエチレン、1,1,2-トリブロモエチレン、1,1,2,2-テトラクロルエチレン、ペンタクロルエタン、ヘキサクロルエタン、ヘキサブロモエタン、n-プロピルクロライド、1,2-ジクロルプロパン、ヘキサクロロプロピレン、オクタクロロプロパン、デカブロモブタン、塩素化パラフィン等が挙げられ、脂環式化合物では、クロロシクロプロパン、テトラクロルシクロペンタン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、ヘキサクロルシクロヘキサン等が挙げられ、芳香族化合物では、クロルベンゼン、ブロモベンゼン、o-ジクロルベンゼン、p-ジクロルベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサブロモベンゼン、ベンゾトリクロライド、p-クロロベンゾトリクロライド等が挙げられる。これらの化合物は、一種のみならず二種以上用いてもよい。
【0029】
ハロゲン含有アルコールとしては、一分子中に一個又は二個以上の水酸基を有するモノ又は多価アルコール中の、水酸基以外の任意の一個又は二個以上の水素原子がハロゲン原子で置換された化合物である。ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素、弗素原子が挙げられるが、塩素原子が望ましい。
【0030】
それら化合物を例示すると、2-クロルエタノール、1-クロル-2-プロパノール、3-クロル-1-プロパノール、1-クロル-2-メチル-2-プロパノール、4-クロル-1-ブタノール、5-クロル-1-ペンタノール、6-クロル-1-ヘキサノール、3-クロル-1,2-プロパンジオール、2-クロルシクロヘキサノール、4-クロルベンズヒドロール、(m,o,p)-クロルベンジルアルコール、4-クロルカテコール、4-クロル-(m,o)-クレゾール、6-クロル-(m,o)-クレゾール、4-クロル-3,5-ジメチルフェノール、クロルハイドロキノン、2-ベンジル-4-クロルフェノール、4-クロル-1-ナフトール、(m,o,p)-クロルフェノール、p-クロル-α-メチルベンジルアルコール、2-クロル-4-フェニルフェノール、6-クロルチモール、4-クロルレゾルシン、2-ブロムエタノール、3-ブロム-1-プロパノール、1-ブロム-2-プロパノール、1-ブロム-2-ブタノール、2-ブロム-p-クレゾール、1-ブロム-2-ナフトール、6-ブロム-2-ナフトール、(m,o,p)-ブロムフェノール、4-ブロムレゾルシン、(m,o,p)-フロロフェノール、p-イオドフェノール:2,2-ジクロルエタノール、2,3-ジクロル-1-プロパノール、1,3-ジクロル-2-プロパノール、3-クロル-1-(α-クロルメチル)-1-プロパノール、2,3-ジブロム-1-プロパノール、1,3-ジブロム-2-プロパノール、2,4-ジブロムフェノール、2,4-ジブロム-1-ナフトール:2,2,2-トリクロルエタノール、1,1,1-トリクロル-2-プロパノール、β,β,β-トリクロル-tert-ブタノール、2,3,4-トリクロルフェノール、2,4,5-トリクロルフェノール、2,4,6-トリクロルフェノール、2,4,6-トリブロムフェノール、2,3,5-トリブロム-2-ヒドロキシトルエン、2,3,5-トリブロム-4-ヒドロキシトルエン、2,2,2-トリフルオロエタノール、α,α,α-トリフルオロ-m-クレゾール、2,4,6-トリイオドフェノール:2,3,4,6-テトラクロルフェノール、テトラクロルハイドロキノン、テトラクロルビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール、2,3,5,6-テトラフルオロフェノール、テトラフルオロレゾルシン等が挙げられる。
【0031】
水素-珪素結合を有するハロゲン化珪素化合物としては、HSiCl3,H2SiCl2,H3SiCl,H(CH3)SiCl2,H(C2H5)SiCl2,H(t-C4H9)SiCl2,H(C6H5)SiCl2,H(CH3)2SiCl,H(i-C3H7)2SiCl,H2(C2H5)SiCl,H2(n-C4H9)SiCl,H2(C6H4CH3)SiCl,H(C6H5)2SiCl等が挙げられる。金属ハライドとしては、B,Al,Ga,In,Tl,Si,Ge,Sn,Pb,As,Sb,Biの塩化物、弗化物、臭化物、ヨウ化物が挙げられ、特にBCl3,BBr3,BI3,AlCl3,AlBr3,GaCl3,GaBr3,InCl3,TlCl3,SiCl4,SnCl4,SbCl5,SbF5等が好適である。
【0032】
成分1、成分2及び成分3、更に必要に応じて接触させることのできるハロゲン含有化合物との接触は、不活性媒体の存在下、又は不存在下、混合攪拌するか、機械的に共粉砕することによりなされる。接触は40〜150℃の加熱下で行うことができる。不活性媒体としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の飽和脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が使用し得る。
【0033】
本発明における成分Aの望ましい調製法は、特開昭63-264607号、同58-198503号、同62-146904号等の公報等に開示されている方法であり、より詳細には、
(i)(イ)金属マグネシウム、(ロ)ハロゲン化炭化水素、(ハ)一般式XnM(OR)m-nの化合物(前記のアルコキシ基含有化合物と同じ)を接触させることにより得られるマグネシウム含有固体を(ニ)ハロゲン含有アルコールと接触させ、次いで(ホ)電子供与性化合物及び(ヘ)チタン化合物と接触させる方法(特開昭63-264607号公報)、
(ii)(イ)マグネシウムジアルコキシドと(ロ)水素-珪素結合を有するハロゲン化珪素化合物を接触させた後、(ハ)ハロゲン化チタン化合物を接触させ、次いで(ニ)電子供与性化合物と接触させ(必要に応じて更にハロゲン化チタン化合物と接触させる)る方法(特開昭62-146904号公報)、
(iii)(イ)マグネシウムジアルコキシドと(ロ)水素-珪素結合を有するハロゲン化珪素化合物を接触させた後、(ハ)電子供与性化合物と接触させ、次いで(ニ)チタン化合物と接触させる方法(特開昭58-198503号公報)、である。これらの中でも特に(i)の方法が最も望ましい。
上記のようにして成分Aは調製されるが、成分Aは必要に応じて前記の不活性媒体で洗浄してもよく、更に乾燥してもよい。
【0034】
有機アルミニウム化合物
有機アルミニウム化合物(以下、成分Bという。)の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム等が挙げられる。
【0035】
有機珪素化合物
本発明の触媒の一成分である有機珪素化合物(以下、成分Cという。)は、前記一般式(1)で表わされる。該式において、R1は環内にエーテル若しくはチオエーテル結合含有環状置換基、環内エーテル結合含有環状置換基のオキシ基、環内ケトン結合含有環状置換基、窒素原子含有複素環式置換基、珪素原子含有複素環式置換基、R2は炭素数1〜10個の炭化水素基、R4O-、R53Si-若しくはR63SiO-、R3はメチル基若しくはエチル基、xは1若しくは2、yは0若しくは1、zは2若しくは3、x+y+z=4であり、R4は炭素数3〜10個の炭化水素基、R5及びR6は炭素数1〜10個の炭化水素基である。R1の具体例を挙げる。以下夫々の基をRA,RB・・・等という。
【0036】
【化3】

【0037】
【化4】

【0038】
成分Cの前記一般式におけるR2は、炭素数1〜10個の炭化水素基、R4O、R53Si又はR63SiOを示し、R4は炭素数3〜10個の炭化水素基、R5及びR6は炭素数1〜10個の炭化水素基を示す。これらの炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アルアルキル基等が挙げられる。
【0039】
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、アミル、i-アミル、t-アミル、ヘキシル、オクチル、2-エチルヘキシル、デシル基等が、アルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、1-ヘキセニル、1-オクテニル、1-デケニル、1-メチル-1-ペンチニル、1-メチル-1-ヘプテニル等が、シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル基等が、シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、メチルシクロヘキセニル基等が、シクロアルカジエニル基としては、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、インデニル基等が、アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル基等が、アルアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、3-フェニルプロピル基等が挙げられる。
【0040】
以下、成分Cを例示する。下記において、〔RA〕,〔RB〕・・・等の符号は、成分Cの一般式(1)におけるR1の前記の符号に相当し、Meはメチル、Etはエチル、Prはプロピル、Buはブチル,CyPeはシクロペンチル、CyHeはシクロヘキシル基をそれぞれ示す。〔RA〕2Si(OMe)2,〔RA〕(i-PrO)Si(OMe)2,〔RB〕(i-PrO)Si(OMe)2,〔RD〕(t-Bu)Si(OMe)2,〔RD〕(Me3SiO)Si(OMe)2;〔RA〕(Me3SiO)Si(OEt)2,〔RA〕(i-Pr)Si(OEt)2,〔RC〕(i-PrO)Si(OEt)2,〔RD〕(Me3SiO)Si(OEt)2,〔RD〕(t-Bu)Si(OEt)2;〔RA〕Si(OMe)3,〔RD〕Si(OMe)3,〔RE〕Si(OMe)3;〔RA〕Si(OEt)3,〔RD〕Si(OEt)3,〔RB〕Si(OEt)3;〔RD〕MeSi(OMe)2,〔RF〕MeSi(OMe)2,〔RF〕(i-PrO)Si(OMe)2,〔RF〕(t-Bu)Si(OMe)2,〔RG〕MeSi(OMe)2,〔RG〕(CyPe)Si(OMe)2,〔RG〕(CyHe)Si(OMe)2,〔RH〕(CyHe)Si(OMe)2;〔RI〕(i-PrO)Si(OMe)2,〔RJ〕Si(OEt)3,〔RK〕Si(OMe)3,〔RL〕(i-Pr)Si(OEt)2;〔RM〕Si(OMe)3,〔RM〕Si(OSiMe3)(OMe)2,〔RN〕Si(OMe)3,〔RN〕Si(OSiMe3)(OMe)2,〔RO〕Si(OEt)3,〔RP〕Si(OEt)3,〔RQ〕Si(OSiMe3)(OMe)2;〔RR〕Si(OEt)3;〔RS〕Si(OEt)3,〔RT〕Si(OEt)3,〔RU〕Si(OMe)3 。
【0041】
予備重合固体成分(成分A)の予備重合は、有機アルミニウム化合物(成分B)及び有機珪素化合物(成分C)の存在下、オレフィン(成分D)と接触させることによりなされる。また、必要に応じて電子供与性化合物(以下、成分Eという。)を成分B、成分Cとともに、成分Aの予備重合時に加えるのが好ましい。電子供与性化合物としては、有機珪素化合物からなる電子供与性化合物や、窒素、イオウ、酸素、リン等のヘテロ原子を含む電子供与性化合物も使用可能であるが、中でも有機珪素化合物が好ましい。有機珪素化合物としては、アルキル基及びアルコキシ基が合計4個珪素原子に結合したものが好ましく、これらのアルキル基及びアルコキシ基は鎖状でもよく、また一部がO,N,S等のヘテロ元素で置換されていてもよい。
【0042】
有機珪素化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラ(p-メチルフェノキシ)シラン、テトラベンジルオキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、ブチルトリフェノキシシラン、イソブチルトリイソブトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジメチルジヘキシルオキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジブチルジイソプロポキシシラン、ジブチルジブトキシシラン、ジブチルジフェノキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジイソブチルジイソブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、ジビニルジフェノキシシラン、ジアリルジプロポキシシラン、ジフェニルジアリルオキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、クロロフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
ヘテロ原子を含む電子供与性化合物の具体例としては、窒素原子を含む化合物として、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、2,6-ジエチルピペリジン、2,6-ジイソプロピルピペリジン、2,6-ジイソブチル-4-メチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、2,2,5,5-テトラメチルピロリジン、2,5-ジメチルピロリジン、2,5-ジエチルピロリジン、2,5-ジイソプロピルピロリジン、1,2,2,5,5-ペンタメチルピロリジン、2,2,5-トリメチルピロリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジイソプロピルピリジン、2,6-ジイソブチルピリジン、1,2,4-トリメチルピペリジン、2,5-ジメチルピペリジン、ニコチン酸メチル、ニコチン酸エチル、ニコチン酸アミド、安息香酸アミド、2-メチルピロール、2,5-ジメチルピロール、イミダゾール、トルイル酸アミド、ベンゾニトリル、アセトニトリル、アニリン、パラトルイジン、オルトトルイジン、メタトルイジン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、テトラメチレンジアミン、トリブチルアミン等が、イオウ原子を含む化合物として、チオフェノール、チオフェン、2-チオフェンカルボン酸エチル、3-チオフェンカルボン酸エチル、2-メチルチオフェン、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ジエチルチオエーテル、ジフェニルチオエーテル、ベンゼンスルフォン酸メチル、メチルサルファイト、エチルサルファイト等が、酸素原子を含む化合物として、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、2-エチルテトラヒドロフラン、2,2,5,5-テトラエチルテトラヒドロフラン、2,2,5,5-テトラメチルテトラヒドロフラン、2,2,6,6-テトラエチルテトラヒドロピラン、2,2,6,6-テトラメチルテトラヒドロピラン、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール、アセトフェノン、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、o-トリル-t-ブチルケトン、メチル-2,6-ジt-ブチルフェニルケトン、2-フラル酸エチル、2-フラル酸イソアミル、2-フラル酸メチル、2-フラル酸プロピル等が、リン原子を含む化合物として、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスファイト、トリベンジルホスファイト、ジエチルホスフェート、ジフェニルホスフェート等が挙げられる。
【0044】
これら電子供与性化合物は、二種以上用いてもよい。又、これら電子供与性化合物は、有機アルミニウム化合物を触媒成分と組合せて用いる際に用いてもよく、予め有機アルミニウム化合物と接触させた上で用いてもよい。オレフィンとしては、エチレンの他、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンが使用し得る。予備重合は、前記の不活性媒体の存在下で行うのが望ましい。予備重合は、通常100℃以下の温度、望ましくは-30℃〜+30℃、更に望ましくは-20℃〜+15℃の温度で行われる。重合方式としては、バッチ式、連続式のいずれでもよく、又二段以上の多段で行ってもよい。多段で行う場合、重合条件をそれぞれ変え得ることは当然である。成分Bは、予備重合系での濃度が10〜500ミリモル/リットル、望ましくは30〜200ミリモル/リットルになるように用いられ、又成分A中のチタン1グラム原子当り、1〜50,000モル、望ましくは2〜1,000モルとなるように用いられる。成分Cは、予備重合系での濃度が5〜1000ミリモル/リットル、望ましくは10〜200ミリモル/リットルになるように用いられる。予備重合により成分A中にオレフィンポリマーが取り込まれるが、そのポリマー量を成分A1g当り0.1〜200g、特に0.5〜50gとするのが望ましい。
上記のようにして調製された本発明の触媒成分は、前記の不活性媒体で希釈或いは洗浄することができるが、触媒成分の保存劣化を防止する観点からは、特に洗浄するのが望ましい。洗浄後、必要に応じて乾燥してもよい。又、触媒成分を保存する場合は、出来る丈低温で保存するのが望ましく、-50℃〜+30℃、特に-20℃〜+5℃の温度範囲が推奨される。
【0045】
本重合上記のようにして得られた触媒成分は、有機金属化合物、更には必要に応じて電子供与性化合物(ただし、一般式(1)で示される有機珪素化合物を除く)と組み合せてプロピレンの単独重合又は他のモノオレフィンとの共重合などの本重合を行い、昇温分別測定から求められる溶出ピーク温度(Tp)と動的溶融粘弾性測定から求められた周波数ω0、弾性率G0との関係が前記式で示される結晶性ポリプロピレンを得ることができる。用い得る有機金属化合物は、周期表第I族ないし第III族金属の有機化合物である。該化合物としては、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛及びアルミニウムの有機化合物が使用し得る。これらの中でも特に、有機アルミニウム化合物が好適である。用い得る有機アルミニウム化合物としては、一般式R7nAlX’3-n(但し、R7はアルキル基又はアリール基、X’はハロゲン原子、アルコキシ基又は水素原子を示し、nは1≦n≦3の範囲の任意の数である。)で示されるものであり、例えばトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムモノハライド、モノアルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、ジアルキルアルミニウムモノアルコキシド及びジアルキルアルミニウムモノハイドライドなどの炭素数1ないし18個、好ましくは炭素数2ないし6個のアルキルアルミニウム化合物又はその混合物若しくは醋化合物が特に好ましい。
【0046】
具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムモノハライド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジアイオダイド、イソブチルアルミニウムジクロリドなどのモノアルキルアルミニウムジハライド、メチルアルミニウムセスキクロリドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジプロピルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシドなどのジアルキルアルミニウムモノアルコキシド、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライドが挙げられる。これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが、特にトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが望ましい。又、これらトリアルキルアルミニウムは、その他の有機アルミニウム化合物、例えば、工業的に入手し易いジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムハイドライド又はこれらの混合物若しくは醋化合物等と併用することができる。
【0047】
又、酸素原子や窒素原子を介して2個以上のアルミニウムが結合した有機アルミニウム化合物も使用可能である。そのような化合物としては、例えば
【化5】

等を例示できる。
【0048】
アルミニウム金属以外の金属の有機化合物としては、ジエチルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、ジエチル亜鉛等の他LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4等の化合物が挙げられる。本発明の触媒成分に対する有機金属化合物の使用量は、該触媒成分中のチタン1グラム原子当り、通常1〜2,000グラムモル、特に20〜500グラムモルが望ましい。又、電子供与性化合物を用いる場合、有機金属化合物と電子供与性化合物の比率は、電子供与性化合物1モルに対して有機金属化合物がアルミニウムとして0.1〜40、好ましくは1〜25グラム原子の範囲で選ばれる。
【0049】
プロピレン重合反応は、気相、液相のいずれでもよく、液相で重合させる場合は、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素中及び液状モノマー中で行うことができる。重合温度は、通常-80℃〜+150℃、好ましくは40〜120℃の範囲である。重合圧力は、例えば1〜60気圧でよい。又、得られる重合体の分子量の調節は、水素若しくは他の公知の分子量調節剤を存在せしめることにより行われる。重合反応は、連続又はバッチ式反応で行い、その条件は通常用いられる条件でよい。又、重合反応は一段で行ってもよく、二段以上で行ってもよい。
【0050】
【実施例】
本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。なお、例におけるパーセント(%)は特に断らない限り重量による。昇温分別測定から求められる溶出ピーク温度(Tp)は、下記の条件で、カラム内に試料溶液を140℃で導入し、70分かけて40℃まで冷却し、安定させた後、昇温を開始し、各温度で溶出したポリマー濃度を検出する、という測定手順で測定し、最も溶出濃度の高い位置の温度をTpとした。
溶媒:オルトジクロロベンゼン
流速:1ml/min
昇温条件:100℃以上で2℃刻み、40minずつ保持
検出器:液クロ用赤外検出器
検出波長:3.42μm
カラム:4mmφ×250mm
充填剤:ガラスビーズ
試料濃度:4mg/ml
注入量:0.5ml
カラム温度分布:0.1℃以内
【0051】
(実施例1)
成分Aの調製還流冷却器をつけた1リットルの反応容器に、窒素ガス雰囲気下、チップ状の金属マグネシウム(純度99.5%、平均粒径1.6mm)8.3g及びn-ヘキサン250mlを入れ、68℃で1時間攪拌後、金属マグネシウムを取出し、65℃で減圧乾燥するという方法で予備活性化した金属マグネシウムを得た。次に、この金属マグネシウムに、n-ブチルエーテル140ml及びn-ブチルマグネシウムクロリドのn-ブチルエーテル溶液(1.75モル/リットル)を0.5ml加えた懸濁液を55℃に保ち、更にn-ブチルエーテル50mlにn-ブチルクロライド38.5mlを溶解した溶液を50分間で滴下した。攪拌下70℃で4時間反応を行った後、反応液を25℃に保持した。
【0052】
次いで、この反応液にHC(OC2H5)355.7mlを1時間で滴下した。滴下終了後、60℃で15分間反応を行い、反応生成固体をn-ヘキサン各300mlで6回洗浄し、室温で1時間減圧乾燥し、マグネシウムを19.0%、塩素を28.9%を含むマグネシウム含有固体31.6gを回収した。還流冷却器、攪拌機及び滴下ロートを取付けた300mlの反応容器に、窒素ガス雰囲気下マグネシウム含有固体6.3g及びn-ヘプタン50mlを入れ懸濁液とし、室温で攪拌しながら2,2,2-トリクロルエタノール20ml(0.02ミリモル)とn-ヘプタン11mlの混合溶液を滴下ロートから30分間で滴下し、更に80℃で1時間攪拌した。得られた固体を濾別し、室温のn-ヘキサン各100mlで4回洗浄し、更にトルエン各100mlで2回洗浄して固体成分を得た。
【0053】
上記の固体成分にトルエン40mlを加え、更に四塩化チタン/トルエンの体積比が3/2になるように四塩化チタンを加えて90℃に昇温した。攪拌下、フタル酸ジn-ブチル2mlとトルエン5mlの混合溶液を5分間で滴下した後、120℃で2時間攪拌した。得られた固体状物質を90℃で濾別し、トルエン各100mlで2回、90℃で洗浄した。更に、新たに四塩化チタン/トルエンの体積比が3/2になるように四塩化チタンを加え、120℃で2時間攪拌し室温の各100mlのn-ヘキサンにて7回洗浄して成分5.5gを得た。
【0054】
予備重合攪拌機を取付けた500mlの反応器に、窒素ガス雰囲気下、上記で得られた成分A3.5g及びn-ヘプタン300mlを入れ、攪拌しながら-5℃に冷却した。次にトリエチルアルミニウム(以下「TEAL」と略称する。)のn-ヘプタン溶液(2.0モル/リットル)及びジメトキシメチル-2-オキサシクロヘキシルシランを、反応系におけるTEAL及びジメトキシメチル-2-オキサシクロヘキシルシランの濃度がそれぞれ60ミリモル/リットル及び10ミリモル/リットルとなるように添加し、5分間攪拌した。次いで、系内を減圧した後、プロピレンガスを連続的に供給し、プロピレンを4時間重合させた。重合終了後、気相のプロピレンを窒素ガスでパージし、各100mlのn-ヘキサンで3回、室温にて固相部を洗浄した。更に、固相部を室温で1時間減圧乾燥して、触媒成分を調製した。触媒成分に含まれるマグネシウム量を測定した結果、予備重合量は成分A1g当り1.8gであった。
【0055】
本重合攪拌機を設けた5リットルのステンレス製オートクレーブに、窒素ガス雰囲気下、トリイソブチルアルミニウム(以下「TIBAL」と略称する。)のn-ヘプタン溶液(0.1モル/リットル)6mlとジ(1-メチルブチル)ジメトキシシランのn-ヘプタン溶液(0.01モル/リットル)6mlを混合し5分間保持したものを入れた。次いで、分子量制御剤としての水素ガス5.0リットル及び液体プロピレン3リットルを圧入した後、反応系を70℃に昇温した。上記で得られた触媒成分34.8mgを反応系に装入した後、1時間プロピレンの重合を行った。重合終了後、未反応のプロピレンをパージし、506.3gの白色ポリプロピレン粉末を得た。成分A1g当りのポリプロピレン生成量(CE)は40.7kgであった。このポリプロピレンのω0は240.00、G0は274,400、昇温分別測定による溶出ピーク温度(Tp)は120.5℃、曲げ弾性率は18,000kgf/cm2、熱変形温度は120℃であった。結果を表3に示す。
【0056】
(実施例2〜4)
表1、表2に示した条件で、実施例1と同様に予備重合、本重合を行った。これらのポリプロピレンの重合及び物性測定結果を表3に示す。
(比較例1、2)予備重合を行わなかった以外は表2に示した条件で実施例1と同様に本重合を行った。これらのポリプロピレンの重合及び物性測定結果を表3に示す。表3から明らかなように、溶出ピーク温度(Tp)が本発明の範囲にあるポリプロピレンは、曲げ弾性率、熱変形温度が範囲外にあるものよりも高く、剛性、耐熱性が向上していることがわかる。なお、曲げ弾性率は、JIS K-6758に、熱変形温度は、JIS K-7202に従って測定した。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【発明の効果】
以上、発明の実施例および比較例から明らかなように、溶出ピーク温度(Tp)が本発明の範囲にあるポリプロピレンは、曲げ弾性率、熱変形温度が範囲外にあるものよりも高く、剛性、耐熱性が向上しており、また、成形性、耐衝撃性にも優れており、従って、本発明の結晶性ポリプロピレンは高剛性化したため、従来と同一用途の成形品においては、薄肉化がはかられ、軽量化が可能となり、省資源や生産性の点で有効であり、また剛性、耐熱性の向上により、従来ポリスチレン、ABS樹脂などを用いていた用途への代替が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】
G0、ω0測定法を説明した模式図である。
【図面】

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-06-17 
出願番号 特願平6-16930
審決分類 P 1 651・ 534- ZA (C08F)
P 1 651・ 531- ZA (C08F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小出 直也  
特許庁審判長 一色 由美子
特許庁審判官 石井 あき子
藤原 浩子
登録日 2003-04-04 
登録番号 特許第3415912号(P3415912)
権利者 東燃ゼネラル石油株式会社
発明の名称 結晶性ポリプロピレン  
代理人 河備 健二  
代理人 河備 健二  

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