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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1125807
異議申立番号 異議2003-72300  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-04-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-17 
確定日 2005-09-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3386532号「熱可塑性樹脂組成物」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3386532号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3386532号の請求項1ないし3に係る発明は、平成5年10月15日に出願され、平成15年1月10日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、萩原昭宏より、請求項1ないし3に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年12月15日に特許異議意見書とともに訂正請求書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
2.1 訂正の内容
(訂正事項a)特許請求の範囲において、請求項3を削除する。
(訂正事項b)特許明細書(段落0009)において、「より好ましくは、…45モル%の範囲である。」を削除する。

2.2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、請求項3を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当するものである。
訂正事項bは、前記訂正事項aに対応して、特許明細書の記載の整合性をとるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。
そして、訂正事項a,bとも、特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

2.3 まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
3.1 申立ての理由の概要
申立人は、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、甲1号証ないし甲5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許を取り消すべきであると主張している。

3.2 訂正特許明細書の請求項1ないし2に係る発明
訂正特許明細書の請求項1ないし2に係る発明(以下、各々「本件発明1」ないし「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】 重量平均粒子径が0.2〜0.6μmであり、かつ0.15〜0.8μmの範囲の粒子を60重量%以上含有するガラス転移温度が-30℃以下であるゴム状重合体に芳香族ビニルとシアン化ビニルとをモル比で40〜60:60〜40の割合でグラフトした、グラフト率が20〜100%であるグラフト共重合体(A)と、マレイミドが5〜30モル%で且つマレイミドとシアン化ビニルの合計量が40〜60モル%、芳香族ビニル60〜40モル%からなり、極限粘度が0.4〜1.5dl/gである共重合体(B)とを、前記ゴム状重合体が5〜35重量%になるように混合してなる熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】 ゴム状重合体が、重量平均粒子径が0.25〜0.5μmであり、0.2〜0.7μmの範囲の粒子を70重量%以上含有し、かつ0.3〜0.5μmの範囲の粒子を30重量%以上含有するものである請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。」

3.3 甲号証記載の発明
甲1号証(特開昭61-101547号公報)の特許請求の範囲及び5頁第1表、第2表には、芳香族ビニル系単量体、不飽和ニトリル系単量体等の単量体成分とゴム状重合体とからなるグラフト重合体であって、グラフト率が20〜70%であるグラフト重合体(A)と、マレイミド系単量体および芳香族ビニル系単量体、不飽和ニトリル系単量体等の単量体成分からなり、固有粘度が0.4〜1.3である共重合体(B)とからなる樹脂組成物の発明が記載されている。
そして、甲2号証(特開昭60-11514号公報)の特許請求の範囲及び4頁右上欄3行〜左下欄3行には、ゴム質重合体の存在下で芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物からなる樹脂質構成成分を重合してなる耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物において、ゴム質重合体ラテックスとして、粒子径が1730Å〜4400Åのものが70重量%以上存在するものを用いた場合成形品表面光沢、加工性、耐ストレスクラック性が良好であり、また、粒子径が4400Å以上に50重量%以上存在するものを用いた場合、耐衝撃性が良好であることが記載されている。
また、甲3号証(特開昭62-11713号公報)の特許請求の範囲、5頁左下欄下6行〜右下欄下3行及び8頁下欄表-1には、ブタジエン系重合体ラテックスの存在下、ビニル芳香族化合物及びビニルシアン化合物を主成分とする単量体を乳化グラフト重合してなる熱可塑性樹脂において、ブタジエン系重合体ラテックスとして、平均粒子径2500Å、粒子径分布巾として平均粒子径の0.6〜1.4倍の粒子含率が85%である「ポリブタジエンA-1」が、甲4号証(特開昭62-11714号公報)の特許請求の範囲及び8頁下欄表-2には、同様なブタジエン系重合体ラテックスとして、平均粒子径が2500Åでその0.7〜1.5倍(1750〜3750Å)の範囲の粒子含有率が88%である「ポリブタジエンF」が、それぞれ記載されている。
さらに、甲5号証(特開平2-196849号公報)には、耐熱性、耐衝撃性樹脂組成物としてマレイミド系共重合体とゴム強化樹脂とを含んでなるものが記載されている。

3.4 対比・判断
(1)本件発明1について
甲1号証に記載の発明は、前記のとおり、ゴム状重合体に芳香族ビニルとシアン化ビニルとをグラフトしたグラフト共重合体を含むものであるが、ゴム状重合体の重量平均粒子径及び粒子径の分布については何ら記載も示唆もされていない。
そして、甲2号証の前記記載から、熱可塑性樹脂組成物に含まれるゴム状重合体の粒子径分布については、(a)0.173〜0.44μmの範囲の粒子が70重量%以上存在すると成形品表面光沢、加工性、耐ストレスクラック性が良好であり、また(b)0.44μm以上の粒子が50重量%以上存在すると耐衝撃性が良好であることが示されているものの、(a)は耐衝撃性の向上を示唆してはおらず、また(b)は単に0.44μm以上の粒子が50重量%以上存在するというだけであって、粒子径分布の上限は示されていない。そうすると、両者を総合したとしても、甲2号証が、本件発明1のような耐衝撃性の向上を図る観点において、0.15〜0.8μmの範囲の粒子を60重量%以上とすることを示唆するものとすることはできない。
また、甲3号証ないし甲4号証における前記記載は、いずれも、ゴム状重合体の粒子径が本件発明1よりも小径であってかつ所定の粒子径分布を有するものを含む点に特徴を有する発明の比較例として示されるものであり、また、樹脂組成物としても、本件発明1の共重合体(B)に相当する成分を含むものではない。そうすると、甲3号証ないし甲4号証に本件発明1の粒子径及び粒子径分布と重複する記載があるとしても、そのことのみをもって、甲3号証ないし甲4号証が本件発明1と共通の技術思想を示すものとまでいうことはできず、耐衝撃性の向上を図る観点において0.15〜0.8μmの範囲の粒子を60重量%以上とすることまで示唆するものとはいえない。
さらに、甲5号証は、マレイミド系共重合体とゴム強化樹脂とを含む耐熱性、耐衝撃性樹脂組成物について記載するに止まり、ゴム状重合体に対応するゴム強化樹脂の粒子径及び粒径分布については、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1号証ないし甲5号証を総合的に勘案しても、熱可塑性樹脂組成物を構成するグラフト共重合体の原料であるゴム状重合体として、重量平均粒子径が0.2〜0.6μmであり、かつ、0.15〜0.8μmの範囲を60重量%以上含有するものを用いることが、記載ないし示唆されているものとすることはできない。
そして、本件発明1は、係る特定の重量平均粒子径及び粒子径分布を有するゴム状重合体を用いることにより、熱可塑性樹脂組成物が優れた耐衝撃性を有するという、本件特許明細書に記載のとおりの顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1が甲1号証ないし甲5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の粒子径分布を更に技術的に特定したものであるから、前記と同様に、甲1号証ないし甲5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.当審取消理由についての判断
前記3.のほか、当審が平成16年10月7日付け取消理由通知で指摘した本件特許明細書の記載不備(請求項3のマレイミド、シアン化ビニル、芳香族ビニルの組成比は実際に採り得ない数値を含み、その記載が不明瞭である点)は、前記2.のとおり請求項3が削除されたことにより、解消した。

5.むすび
以上のとおりであるから、申立人が主張する特許異議申立ての理由、証拠方法及び当審が指摘した取消理由によっては、本件発明1ないし2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
熱可塑性樹脂組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】重量平均粒子径が0.2〜0.6μmであり、かつ0.15〜0.8μmの範囲の粒子を60重量%以上含有するガラス転移温度が-30℃以下であるゴム状重合体に芳香族ビニルとシアン化ビニルとをモル比で40〜60:60〜40の割合でグラフトした、グラフト率が20〜100%であるグラフト共重合体(A)と、マレイミドが5〜30モル%で且つマレイミドとシアン化ビニルの合計量が40〜60モル%、芳香族ビニル60〜40モル%からなり、極限粘度が0.4〜1.5dl/gである共重合体(B)とを、前記ゴム状重合体が5〜35重量%になるように混合してなる熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】ゴム状重合体が、重量平均粒子径が0.25〜0.5μmであり、0.2〜0.7μmの範囲の粒子を70重量%以上含有し、かつ0.3〜0.5μmの範囲の粒子を30重量%以上含有するものである請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は優れた耐衝撃性、耐熱変形性を有し、かつ表面外観に優れた成形品を提供するとともに、成形加工性にも優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ABS系樹脂は耐衝撃性、耐熱変形性、成形加工性をバランス良く備えているため、自動車、電子・電気部品等の広汎な用途に供されている。近年、これらの用途での小型化、軽量化に伴い、ますます物性、成形性のバランスの向上が求められている。物性と成形性のバランスを向上させる方法は従来から種々提案されているが、未だ満足できるものは提案されていない。例えば耐熱変形性を向上させる目的でα-メチルスチレンを共重合させる方法では成形加工性が低下し、マレイミドを共重合させる方法では耐衝撃性が低下し、いずれも充分なものではない。更に、これらの欠点を補う目的で、エチレン-アクリレート系共重合体を添加する方法等も検討されているが、満足できるものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、物性及び成形加工性をバランス良く備えた熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる課題を克服すべく鋭意検討した結果、特定の粒子径分布を有するゴム状重合体を用いたグラフト共重合体と、特定量のマレイミドを含有する単量体混合物を共重合させた共重合体と混合することにより耐衝撃性、耐熱変形性、成形加工性をバランス良く備えた樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は重量平均粒子径が0.2〜0.6μmであり、0.15〜0.8μmの範囲の粒子が60重量%以上であり、ガラス転移温度が-30℃以下であるゴム状重合体に芳香族ビニル及びシアン化ビニルを特定の割合でグラフトしたグラフト共重合体(A)と、特定量のマレイミドを含有する、マレイミド及びシアン化ビニルと、芳香族ビニルとからなる共重合体(B)とを混合してなる熱可塑性樹脂組成物を内容とするものである。
本発明における重量平均粒子径は、超薄膜切片(500〜1000Å)による透過型電子顕微鏡により測定された値である。
【0005】
グラフト共重合体(A)に用いられるゴム状重合体は、超薄膜切片(500〜1000Å)による透過型電子顕微鏡による測定で、重量平均粒子径が0.2〜0.6μmであり、0.15〜0.8μmの範囲の粒子の割合が60重量%以上である。好ましくは重合平均粒子径が0.25〜0.5μmであり、0.2〜0.7μmの範囲の粒子の割合が70重量%以上であり、かつ0.3〜0.5μmの範囲の粒子の割合が30重量%以上である。ゴム状重合体のガラス転移温度は-30℃以下であり、好ましくは-50℃以下である。ゴム状重合体の重量平均粒子径、粒子径分布が上記の範囲外では耐衝撃性が低下したり、剛性が低下する。ガラス転移温度が-30℃より高くなると耐衝撃性が低下する。ゴム状重合体のゲル含有量は特に限定されないが、60〜90重量%の範囲のものが好ましい。
【0006】
ゴム状重合体の具体的な例としては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)、ブチルアクリレート-ブタジエン共重合体等のジエン系ゴム、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)等のオレフィン系ゴム、ポリブチルアクリレート、ポリ2-エチルヘキシル等のアクリル系ゴムが示され、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0007】
グラフト共重合体(A)のグラフト枝組成は、芳香族ビニル40〜60モル%、シアン化ビニル60〜40モル%の範囲であり、好ましくは芳香族ビニル49〜60モル%、シアン化ビニル51〜40モル%の範囲である。グラフト枝組成が上記の範囲外では耐衝撃性が低下したり、熱安定性が低下したり、着色を生じる。
芳香族ビニルの具体例としてはスチレン、α-メチルスチレン、メチルスチレン、クロルスチレン等が示され、シアン化ビニルの具体例としてはアクリロニトリル、メタクリルニトリル等が示され、これらはそれぞれ単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0008】
グラフト率〔(グラフト枝の重量/ゴム状重合体の重量)×100〕は20〜100%であり、好ましくは30〜70%である。グラフト率が上記の範囲外では耐衝撃性が低下したり、剛性が低下したり、成形加工性が低下する。
未グラフトポリマーの極限粘度(N,Nジメチルホルムアミド溶液、30℃)は特に限定されないが、0.3〜1.0dl/gの範囲が好ましい。
グラフト共重合体(A)の製造法としては、通常の乳化重合、乳化-懸濁重合、懸濁重合、乳化-塊状重合、溶液重合等により可能であり、特に限定されない。
【0009】
本発明に用いられる共重合体(B)は、マレイミドが5〜30モル%で且つマレイミドとシアン化ビニルの合計量が40〜60モル%、芳香族ビニルが60〜40モル%の範囲である。上記範囲外では耐衝撃性が低下したり、耐熱変形性や成形加工性が低下したり、熱安定性が悪くなったり、着色が生じる。
使用されるマレイミドの具体例としては、フェニルマレイミド、N-マレイミド、シクロヘキシルマレイミド等が示され、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。芳香族ビニル、シアン化ビニルの具体例としては、グラフト共重合体(A)で例示したものが示される。
【0010】
共重合体(B)のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度(N,Nジメチルホルムアミド溶液、30℃)は0.4〜1.5dl/gの範囲であり、好ましくは0.5〜0.9dl/gの範囲である。この範囲外では耐衝撃性が低下したり、耐薬品性が低下したり、成形加工性が低下する。
共重合体(B)の製造法は特に限定されるものではなく、グラフト共重合体(A)で例示された方法で製造できる。
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂の耐衝撃性、耐熱変形性、成形加工性等は、グラフト共重合体(A)と共重合体(B)の各々の組成のみならず、それぞれの混合比率によっても影響される。従って、所望の物性値に応じて混合比率を決定すればよいが、本発明を好適に達成するためには混合後の組成において、ゴム状重合体が5〜35重量%になるように混合する。混合は、公知の方法で行えばよい。例えば乳化重合で得たグラフト共重合体(A)と共重合体(B)のラテックスを混合し、塩折し、凝固したものを乾燥させてから使用してもよい。また、グラフト共重合体(A)と共重合体(B)の各々粉末あるいはペレットをロール、スクリュー、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練した後、使用に供してもよい。
尚、必要に応じ、混合に際し、安定剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、UV吸収剤、顔料、充填剤等を添加することも可能である。
更に、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等を混合することも可能である。
【0012】
【実施例】
以下、実施例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
実施例1〜8及び比較例1〜8
(イ)グラフト共重合体(A)の製造
水 280(重量部)
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.2( 〃 )
硫酸第一鉄 0.0025( 〃 )
エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム 0.01( 〃 )
上記物質及び表1に示すゴム状重合体ラテックスを攪拌機つき反応器に仕込んだ。脱酸素後、窒素気流中で60℃で加熱攪拌したのち、表1に示す単量体混合物を10重量部/1時間の割合で連続的に滴下し、同時にロジン酸カリを0.2重量部/単量体混合物10重量部の割合で連続的に滴下し、滴下終了後さらに60℃で1時間攪拌を続けた後、重合を終了した。得られたラテックスを用い、ガスクロマトグラフィー、遠心分離、元素分析により重合転化率、グラフト率、グラフト枝組成、未グラフトポリマー組成を測定した。結果を表1に示す。
【0013】
【表1】

(注)
スケール量:重合反応後の反応混合物ラテックスを100メッシュの篩に通し、通過しないものを乾燥させ、固形分に対する割合で示す。
【0014】
尚、表1中の略号は下記を表すものである。
PBD:ポリブタジエン
SBR:スチレン-ブタジエン共重合体
AN:アクリロニトリル
St:スチレン
CHP:キュメンハイドロパーオキサイド
【0015】
(ロ)共重合体(B)の製造
攪拌機付反応器に次の物質を仕込んだ。
水 250(重量部)
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 2( 〃 )
過硫酸カリウム 0.2( 〃 )
脱酸素後、窒素気流中で70℃に加熱攪拌した後、表2に示した単量体混合物を7時間かけて連続的に滴下し、滴下終了後、1時間攪拌を続け重合を終了させた。得られたラテックスを用い、ガスクロマトグラフィー、元素分析を行い、溶液粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0016】
【表2】

PMI:フェニルマレイミド
AN:アクリロニトリル
St:スチレン
tDM:ターシャリードデシルメルカプタン
【0017】
(ハ)熱可塑性樹脂組成物の製造
上記(イ)、(ロ)の如く製造したグラフト共重合体(A)と共重合体(B)をラテックス状態で表3に示す割合で混合し、フェノール系酸化防止剤を加え、塩化カルシウムで凝固した後、水洗、濾過、乾燥しパウダーを得た。得られたパウダーをベント式押出機でペレット化し、物性の測定に供した。測定結果を表3に示す。
【0018】
尚、物性は下記の方法により測定した。
アイゾット衝撃値(kg・cm/cm):ASTM D-256、23℃
落錘強度(kg・m):長さ150mm、幅100mm、厚み3mmの試験片を用い、半数破壊高×錘の重量、23℃
熱変形温度(℃):ASTM D-56、18.6kg/cm2
抗張力(kg/cm2):ASTM D-636、23℃
スパイラルフロー値:3オンス射出成形機を用い、ノズル温度250℃、射出圧力1000kg/cm2、金型温度40℃で測定
【0019】
【表3】

【0020】
【発明の効果】
表3に示したように、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、優れた耐衝撃性、耐熱変形性を有するとともに、良好な成形加工性を有する。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-08-25 
出願番号 特願平5-281725
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 邦彦  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 平塚 政宏
石井 あき子
登録日 2003-01-10 
登録番号 特許第3386532号(P3386532)
権利者 テクノポリマー株式会社
発明の名称 熱可塑性樹脂組成物  
代理人 棚井 澄雄  

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