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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C03B |
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管理番号 | 1125826 |
異議申立番号 | 異議2003-73154 |
総通号数 | 72 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-03-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-22 |
確定日 | 2005-09-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3419151号「ガラスセラミックスグリーンシートの製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3419151号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 特許第3419151号の請求項1に係る発明についての出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成7年6月21日(優先日:平成6年6月28日)の出願であって、平成15年4月18日にその特許権の設定登録がなされ、その後、山崎早苗により特許異議の申立がなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成16年8月24日付けで訂正請求がなされたものである。 II.訂正の適否についての判断 II-1.訂正事項 平成16年8月24日付け訂正請求は、本件明細書について、訂正請求書に添付された訂正明細書に記載される通りの以下のア.〜サ.の訂正を求めるものである。 以下、訂正前の明細書を「特許明細書」といい、訂正請求書に添付された訂正明細書を「訂正明細書」という。 ア.特許明細書の請求項1の記載について、「・・・有機バインダーの存在下または不存在下・・・」とあるのを、「・・・有機バインダーの不存在下・・・」と訂正する。 イ.特許明細書の段落【0012】の「・・・有機バインダーの存在下または不存在下・・・」を、「・・・有機バインダーの不存在下・・・」と訂正する。 ウ.特許明細書の段落【0016】の「・・・バインダーの不存在下で実施することが好ましいが、有機バインダーの存在下でも実施することができる。有機バインダーがアルコールを含有する場合には、有機バインダーの存在下で湿式粉砕を行う。」を、「・・・バインダーの不存在下で実施することが好ましい。」と訂正する。 エ.特許明細書の段落【0020】の「・・・酢酸ブチル等のエステル類、エタノール、・・・のアルコール類などが挙げられる。」を、「・・・エステル類などが挙げられる。」と訂正する。 オ.特許明細書の段落【0021】の「これらの有機溶媒のうちアルコールは、」を、「ところで、湿式粉砕用の有機溶媒としてアルコールを用いた場合、アルコールは、」と訂正する。 カ.特許明細書の段落【0022】、【0023】の内容を削除する。 キ.特許明細書の段落【0024】の「有機溶媒が、・・・好ましいが、所望により・・・湿式粉砕も行うことができる。」を、「一方、有機溶媒がアルコールを含有しない場合には、湿式粉砕をバインダーの存在下で行う必要はなく、その方が粉砕効率の点で好ましい。」と訂正する。 ク.特許明細書の段落【0026】の内容を削除する。 ケ.特許明細書の段落【0030】の「・・・スラリー化する。湿式粉砕を・・・同様スラリー化すればよい。」を、「・・・スラリー化する。」に訂正する。 コ.特許明細書の段落【0057】の「・・・湿式粉砕を行った場合には、本発明に従って、有機バインダーをを添加して粉砕すると、」を、「・・・湿式粉砕を行った場合には、有機バインダーを添加して粉砕すると、」に訂正する。 サ.特許明細書の段落【0060】の内容を削除する。 II-2.訂正の適否の判断 II-2-1.訂正の目的の適否 上記ア.の訂正は、特許明細書の請求項1に択一的に記載された2つの条件のうち「有機バインダーの存在下」を削除し、「有機バインダーの不存在下」という条件に限定するものである。 したがって、この訂正は、特許法第120条の4第2項但し書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的にするものに該当する。 上記イ.乃至サ.の訂正は上記ア.の訂正に発明の詳細な説明の記載を整合し、内容を明瞭にするためのものである。 したがって、これらの訂正は、特許法第120条の4第2項但し書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に該当する。 II-2-2.新規事項の有無 上記ア.の訂正は、単に、請求項1に記載された択一的条件のうち一方を削除するというもので、特許明細書の記載に基づかないということはできない。 そして、上記イ.乃至サ.の訂正は発明の詳細な説明の記載内容を明瞭にするためのものであるから、特許明細書の記載に基づいてなされたものであることは明らかである。 したがって、上記ア.乃至サ.の訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でなされるものであり、新規事項の追加には当たらない。 II-2-3.拡張・変更の存否 上記ア.の訂正は、単に、請求項1に記載された択一的条件のうち一方を削除するというものであり、上記イ.乃至サ.の訂正は発明の詳細な説明の記載内容を明瞭にするためのものであるから、特許請求の範囲の減縮と不明瞭な記載の釈明に該当し、訂正によっても請求項1に係る発明は、特許明細書に記載した解決しようとする課題の範囲に留まり、特許請求の範囲を拡張または変更するものに該当しないことは明らかである。 II-2-4.訂正の適否の結論 よって、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項、及び第3項において準用する特許法第126条第2乃至4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.本件発明 本件明細書は、前記の通り、平成16年8月24日付けで訂正請求がなされ、その請求通り訂正されたものであって、訂正後の本件特許第3419151号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、訂正明細書の特許請求の範囲に記載される以下の通りである。 【請求項1】B2O3含有 ガラス粉末を含む原料粉末を所定粒径まで湿式粉砕した後、少なくとも結合剤を含む有機溶媒中にスラリー化し、シート成形することからなるガラスセラミックスグリーンシートの製造方法であって、前記湿式粉砕をアルコールを含有しない有機溶媒中で有機バインダーの不存在下に行うことを特徴とするガラスセラミックスグリーンシートの製造方法。 IV.特許異議申立及び取消通知の概要 IV-1.特許異議申立の概要 IV-1-1.特許異議申立人:山崎早苗(以下、「申立人A」という)の主張 本件特許発明は、甲第1号証に記載されているか、あるいは、甲第1号証及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件特許は特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。 甲第1号証:特開昭60-240135号公報(以下、「引用例1」という) 甲第2号証:特開昭61-274399号公報(以下、「引用例2」という) IV-2.取消理由通知の理由 IV-2-1.平成16年6月16日付け取消理由通知 特許異議の申立と同じ理由及び証拠により、本件特許は、取り消されるべきものであるというものである。 V.証拠の記載内容 V-A.引用例1(特開昭60-240135号公報)には、以下のことが記載されている。 (A-1)「実施例1 アルミナ粉末、硼珪酸ガラス粉末および窒化ボロン粉末をボールミルに入れ、さらに溶剤、可塑剤、樹脂のバインダーを加えて48時間ミリングしてスラリーとする。このスラリーの組成を第1表に示す。 第1表 成 分 重 量 比 アルミナ 33.6 硼珪酸ガラス 33.3 100部 窒化ボロン 33.3 アクリル酸樹脂 10部 ブチルフタレート 3.7部 メチルエチルケトン 53.7部 アセトン 13.7部 このスラリーをドクターブレード法によって厚さ0.34mmのグリーンシートに成形する。」旨(第2頁左下欄下から第3行〜右下欄下から第7行) V-B.引用例2(特開昭61-274399号公報)には、以下のことが記載されている。 (B-1)B2O3 を含むガラス組成原料を湿式粉砕する際、溶剤としてアルコール、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、トリクロールエチレンこれらの混合物等の有機溶剤や水等を用いることができることが記載されている(第1頁特許請求の範囲、及び第5頁左上欄3行〜8行)。 VI当審の判断 VI-1.特許異議申立の理由について 上記記載事項(A-1)乃至(A-4)を総合すると、引用例1には、「バインダーとしてアクリル樹脂を加えた硼珪酸ガラス粉末を含む原材料に溶剤を加えミリングするに際して溶剤として、メチルエチルケトン及びアセトンを使用してミリングしスラリーとし、グリーンシートに成形する」発明が記載されている(以下、「引用例1の発明」という)。 そこで、本件発明と引用例1の発明とを対比する。 引用例1の発明では、本件発明と同じように、その溶剤にはアルコールが含まれず、また、そのガラス粉末にはB2O3が含有されるものである。 そして、引用例1の発明の「溶剤を加えたミリング」、「樹脂のバインダー」、「溶剤」は、本件発明の「湿式粉砕」、「結合材」又は「有機バインダー」、「有機溶剤」に、それぞれ、相当する。 よって、両者は、 「 B2O3含有ガラス粉末を含む原料粉末を所定粒径まで湿式粉砕、スラリー化し、シート成形することからなるガラスセラミックスグリーンシートの製造方法であって、前記湿式粉砕をアルコールを含有しない有機溶媒中で行う、ガラスセラミックスグリーンシートの製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:該スラリー化処理が、本件発明では、「湿式粉砕後に、少なくとも結合剤を含む有機溶媒中に」行われることとしているのに対して、引用例1の発明では、ミリング前に樹脂のバインダーを加え、そこでのミリングと同時にスラリー化するものであって、当該構成を具備しない点 相違点2:該湿式粉砕を、本件発明では、「有機バインダーの不存在下に」行うこととしているのに対して、引用例1の発明では、そこでのミリング前に樹脂のバインダーを加えられ、当該ミリングを溶剤中で樹脂のバインダーの存在下に行うものであって、当該構成を具備しない点 以下、上記相違点のうち、相違点2につき検討する。 引用例1に記載の発明においては、「本発明の目的は、十分なバインダー抜きが行なわれ・・・半導体装置実装用多層基板であるセラミック多層回路基板を提供することである。」(引用例1第2頁右上欄第9〜12行)と記載されるように、そこでのガラスセラミックスグリーンシートにはバインダー(樹脂のバインダー)を含有させることを前提に発明が構成されているものであって、樹脂のバインダーの不存在下にミリングないしは湿式粉砕を実施することにつき示唆するものは何もない。 次に、特許異議申立人が引用する引用例2の記載をみても、その前記摘示(B-1)においては湿式粉砕する場合に用いる溶剤につき説明されるだけであり、また、その実施例1〜9の記載においても当該粉砕時に有機バインダーを存在させる例が示されるだけであり、このように、引用例2に記載のものからは、上記相違点2に関する構成を容易に導き出すことはできない。 そして、本件明細書の記載によれば、ガラスセラミックスグリーンシートの製造方法において、上記相違点に関する構成を具備することにより、その余の構成と相俟って、ガラス粉末からのB2O3の溶出を抑制してガラス粉末の多孔質化や比表面積の増大を抑制し、少量のバインダーで伸び率の高いガラスセラミックスグリーンシートを効率よく製造することができたという有用な作用・効果を奏するものであるところ、当該作用・効果につき引用例1及び2で示唆するものは何もない。 してみれば、引用例1の発明において、上記相違点2に係る構成を採択することが、当業者といえども容易に想到できるものではない。 したがって、上記相違点1については検討するまでもなく、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明でなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 VI-2.取消理由通知の理由について 平成16年6月16日付け取消理由通知の理由については、上記VI-1で説示したとおりであるから、これ以上審及しない。 VII.まとめ 特許異議申立の理由及び証拠によっては、訂正後の本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、他に訂正後の本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論の通り決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ガラスセラミックスグリーンシートの製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 B2O3含有ガラス粉末を含む原料粉末を所定粒径まで湿式粉砕した後、少なくとも結合剤を含む有機溶媒中にスラリー化し、シート成形することからなるガラスセラミックスグリーンシートの製造方法であって、前記湿式粉砕をアルコールを含有しない有機溶媒中で有機バインダーの不存在下に行うことを特徴とするガラスセラミックスグリーンシートの製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、電子部品を搭載するためのガラスセラミックス配線基板の製造に用いられるガラスセラミックスグリーンシートの製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、LSIや各種電子部品を搭載する配線基板(プリント配線板)は、高密度化、信頼性等の要求から、従来のプラスチック基板に代わって、セラミックス基板、中でもセラミックス多層基板が急速に普及している。セラミックス多層基板の製造方法としては、焼成セラミックス板またはグリーンシート上に導体ペーストと絶縁ペーストを交互に印刷した後、焼成する多層印刷法と、必要により導体ペーストが充填されたビアホール(スルーホールともいう)と導体ペーストの回路パターンとを形成した複数のグリーンシートを積層し、導体ペーストとグリーンシートを同時焼成するグリーンシート積層法がある。グリーンシート積層法の方がより高度の多層化が容易で、回路の精密度にも優れているため、グリーンシート積層法が主流になっている。 【0003】 セラミックス基板用のセラミックス材料としては、電気絶縁性、高温耐熱性、材料コストを考慮して、従来よりアルミナが主に用いられてきた。アルミナは焼成温度が約1550℃と高いため、グリーンシート積層法あるいはグリーンシートを用いる多層印刷法では、導体ペーストに用いる導電粉(配線材料)として融点が高いWまたはMoを使用する必要がある。しかし、WやMoは電気抵抗率が比較的高い金属であるため、配線を微細化すると電気抵抗値が過大となり、伝送損失が大きくなるといった問題がある。 【0004】 このような点から、1000℃以下の温度で焼結可能で、Ag、Cu等の低抵抗の配線材料と同時焼成を行うことができる低温焼成セラミックス多層配線基板の開発が進められてきた。中でも、従来のアルミナ基板と同等の絶縁性や耐熱性を備え、アルミナより誘電率が低く伝送損失の低減が可能であって、熱膨張率がシリコンに近いためフリップチップの実装が可能な、ガラスセラミックス基板が注目されている。一般的なガラスセラミックス基板は、ホウ珪酸系ガラス、MgO-Al2O3-SiO2-B2O3系ガラス、CaO-Al2O3-SiO2-B2O3系ガラス等のガラスに骨材としてアルミナなどのセラミックスを配合した複合材料が原料となる。 【0005】 このガラスセラミックス多層配線基板の製造方法を簡単に説明すると、まずガラスセラミックスの原料となるガラス粉末と骨材となるセラミックス粉末とをボールミルに投入し、グリーンシートの形成に適した所定の粒径(例、平均粒径1〜5μm程度)になるまで湿式粉砕して、粉末の粉砕と混合を行う。市販のガラス粉末およびセラミックス粉末はいずれも平均粒径が5〜100μm程度であるので、まず原料粉末の粉砕工程が必要であり、この粉砕にはボールミルによる水中での湿式粉砕が採用されてきた。この後、粉末を回収し、乾燥して水分を除去した後、所定粒径に粉砕された原料粉末を解砕処理し、次いでバインダー、分散剤、可塑剤、有機溶媒等を添加して湿式混合して、スリップとも呼ばれるスラリーを調製する。次に、このスラリーをドクターブレード法等によりシート状に成形し、乾燥して大部分の有機溶媒を除去すると、ガラスセラミックスグリーンシートが製造される。 【0006】 こうして製造された複数のガラスセラミックスグリーンシートに必要によりビアホール等を形成し、配線用の導体ペーストを印刷するとともに、ビアホール部分に導体ペーストを充填し、次いでこれらのシートを積層して積層体を形成し、通常は脱脂工程(低温加熱で有機物を除去する工程)を経た後、1000℃以下(通常は900〜1000℃)で焼成して、導体ペーストとグリーンシートの焼結を同時に行うと、ガラスセラミックス多層配線基板が得られる。 【0007】 なお、高温焼成のアルミナ質セラミックスグリーンシートの製造において、粉砕した原料粉末の解砕工程とその後のバインダー等の添加剤との混合工程を、有機溶媒中での湿式ボールミル処理により行うことは、例えば特開昭59-195573号公報より公知であり、また特に混合工程においては普通に採用されてきた。しかし、これらは原料粉末の粉砕工程ではない。原料粉末の粉砕工程は、ガラスセラミックスグリーンシートおよび通常のセラミックスグリーンシートのいずれの場合も、従来は水を媒質とする湿式ボールミル処理により行ってきた。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 最近では、LSIの高集積化、多層配線基板の更なる小型化のため、セラミックス基板に形成されるビアホールの高密度化が要求され、そのためグリーンシートに形成するビアホールの微細化とビアホール間ピッチの縮小とが求められている。 【0009】 一般にセラミックスグリーンシートにおいて、ビアホール微細化を図るにはビアホール打ち抜きの際にボロを発生させないことが重要であり、ビアホール間ピッチを縮小するにはビアホール間に亀裂を発生させないことが重要であるが、このような特性を有するセラミックスグリーンシートを得るためには、その伸び率を向上させることが有利である。 【0010】 セラミックスグリーンシートの伸び率の向上は、グリーンシート中の原料粉末の表面をバインダーで完全に覆って、原料粉末間の接着性を高めることにより確保できる。しかし、上述した従来の方法で製造されたガラスセラミックスグリーンシートでは、バインダーの添加量を増大させないと原料粉末の表面をバインダーで完全に覆うことができず、伸び率の高いガラスセラミックスグリーンシートを得ることができないことがしばしば経験されてきた。伸び率の向上のためにバインダー添加量を増加させると、製造コストが上昇する上、焼成時にバインダーが炭素として残留し易くなり、基板が灰色に着色するばかりか、基板の絶縁性が低下するという問題がある。 【0011】 本発明は、ガラスセラミックス基板のビアホールの微細化と高密度化を達成するために、少量のバインダーの添加で高い伸び率を有するガラスセラミックスグリーンシートを製造することができるガラスセラミックスグリーンシートの製造方法を提供することを目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】 上記目的は、下記の本発明により達成される。 (1)B2O3含有ガラス粉末を含む原料粉末を所定粒径まで湿式粉砕した後、少なくとも結合剤を含む有機溶媒中にスラリー化し、シート成形することからなるガラスセラミックスグリーンシートの製造方法であって、前記湿式粉砕をアルコールを含有しない有機溶媒中で有機バインダーの不存在下に行うことを特徴とするガラスセラミックスグリーンシートの製造方法。 【0013】 【作用】 以下、本発明の構成をその作用とともに説明する。ガラスセラミックスグリーンシートでは多量のバインダーを添加しないと伸び率が向上しない原因について本発明者らが調査した結果、原料ガラス粉末を水を粉砕媒体として湿式粉砕する間に、原料粉末の成分が一部溶出することによって多孔質化し、その比表面積が大きくなることを究明した。原料ガラス粉末の見掛けの粒度が同じであっても、粉末が多孔質で比表面積が大きくなると、伸び率向上のために表面をバインダーで完全に被覆するには、バインダー添加量を増加させなければならない。そのため、バインダー添加量を増大させないと伸び率の高いガラスセラミックスグリーンシートが得られなかったものと考えられる。 【0014】 この原料ガラス粉末の多孔質化の原因は次のように推測される。ガラスセラミックス基板は、前述したように、ホウ珪酸系ガラス、MgO-Al2O3-SiO2-B2O3系ガラス、CaO-Al2O3-SiO2-B2O3系ガラス等のB2O3を含有するガラスの粉末を原料とする。このB2O3は、低温焼成を可能にするための軟化点調整剤として、低温焼成を目的とするガラスセラミックス基板には必要な成分である。B2O3それ自体は水溶性であるが、他成分と一緒に溶融させてガラス化したB2O3は、他成分と均一に混合され、ガラス中に均一に分布していれば、水中には溶解しない。しかし、一般にB2O3含有ガラスにおいてB2O3は一様には分布せず、B2O3濃度の高い分相域を形成している。そして、このB2O3濃度が高い分相域に存在するB2O3はある程度の水溶性があり、湿式粉砕中に水中に溶解する。また、粉砕により新たに表面が生ずると、この表面がすぐに水と接触し、この表面に現れたB2O3濃度の高い分相域中のB2O3が溶解する。これらが繰り返されて、粉砕で得られたガラス粉末は、表面が多孔質化し、その比表面積が著しく増大する。 【0015】 本発明では、原料粉末の粉砕を、有機溶媒を媒質とする湿式粉砕により行うことで、ガラス粉末の多孔質化と比表面積増大を防止し、それにより少量のバインダーで伸び率の高いガラスセラミックスグリーンシートを製造することが可能となる。なお、有機溶媒がアルコールを含有しない場合には、湿式粉砕はバインダーの不存在下で実施することが好ましい。 【0016】 本発明のガラスセラミックスグリーンシートの製造方法で使用する原料粉末はB2O3含有ガラス粉末を含む。B2O3含有ガラスとしては、ホウ珪酸系ガラス、MgO-Al2O3-SiO2-B2O3系ガラス、CaO-Al2O3-SiO2-B2O3系ガラス等が挙げられる。これらのガラスはさらにアルカリ金属酸化物などの追加の酸化物成分を少量含有していてもよい。また、B2O3を含有しないガラス粉末も、B2O3含有ガラス粉末と一緒に使用することができる。原料ガラス粉末中のB2O3含有量は通常は約5〜30重量%である。 【0017】 原料粉末は、上記のB2O3含有ガラス粉末の他に、一般に骨材としてセラミックス粉末を含有する。骨材のセラミックス粉末としては、アルミナが代表的であるが、その他コージエライト、窒化アルミニウム、石英、ムライトなどもアルミナと一緒に、またはアルミナに代えて使用することができる。ガラス粉末とセラミックス粉末の割合は特に制限されないが、通常はガラス粉末:セラミックス粉末の重量比で90:10〜30:70、好ましくは80:20〜50:50の範囲である。 【0018】 前述したように、普通に入手した未粉砕のガラス粉末とセラミックス粉末はいずれも粗大で粒径が大きすぎるため、まずガラス粉末とセラミックス粉末と一緒に湿式粉砕して、所定の粒径まで粉末を微細化すると同時に、ガラス粉末とセラミックス粉末を均一に混合する。本発明では、この湿式粉砕の媒質として、従来のように水を使用するのではなく、有機溶媒を使用する。 【0019】 この湿式粉砕用の有機溶媒としては、ガラス粉末やセラミックス粉末に悪影響を及ぼさない限り任意の有機溶媒が使用できる。好ましい有機溶媒は、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル類などが挙げられる。有機溶媒は1種類単独でもよく、或いは2種以上の混合溶媒であってもよい。 【0020】 ところで、湿式粉砕用の有機溶媒としてアルコールを用いた場合、アルコールは、B2O3を含有するガラス粉末中に存在するB2O3濃度が高い分相域と反応してB2O3の溶媒への溶解を引き起こすことがある。溶解したB2O3はアルコールと結合して有機ホウ素化合物を形成する傾向があり、この有機ホウ素化合物におけるホウ素の結合力は非常に強いため、有機ホウ素化合物としてB2O3と結合したアルコールは焼成時において完全に蒸発せず、ガラスセラミックス基板中の残留炭素が増大する可能性がある。それにより、前述したように基板の灰色着色や絶縁性の低下が起こる。 【0021】 一方、有機溶媒がアルコールを含有しない場合には、湿式粉砕をバインダーの存在下で行う必要はなく、その方が粉砕効率の点で好ましい。 【0022】 湿式粉砕に使用する有機溶媒の量は、湿式粉砕を順調に実施するのに十分な量であればよいが、通常は原料粉末合計100重量部に対し30〜150重量部、好ましくは30〜100重量部の範囲である。この有機溶媒はそのままスラリーの生成にも利用できるので、スラリーの調製に必要な有機溶媒の量よりあまりに多量に使用するのは経済的に不利である。 【0023】 有機バインダーおよび可塑剤は、従来よりガラスセラミックスグリーンシートの製造に使用されているものと同様でよい。有機バインダーとしては、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、塩化ビニル樹脂などの有機樹脂が使用できる。好ましいのはアクリル樹脂およびブチラール樹脂である。可塑剤としてはジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)などのフタル酸エステルが好ましいが、トリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類も使用できる。 【0024】 原料粉末の湿式粉砕はボールミルで行うことが好都合であるが、他の湿式粉砕機(例、アトリションミル、ビーズミル等)も使用できる。ボールミルを使用する場合の湿式粉砕は、例えば、次のように実施できる。所定割合のガラス粉末とセラミックス粉末からなる未粉砕の粗大な原料粉末をボールミルに投入し、前述した量で有機溶媒と必要または所望により有機バインダーや可塑剤を添加する。さらに、アルミナ製などのセラミックス製ボールを原料粉末合計100重量部に対して200〜500重量部投入し、グリーンシートの形成に適した所定の粒径(例、平均粒径で1〜5μm、好ましくは1.5〜3.5μm)になるまで湿式粉砕を行う。粉砕時間は一般に10〜100時間程度である。 【0025】 この湿式粉砕後、所定粒度に粉砕された原料粉末を用いて、有機バインダー、可塑剤および分散剤を含有する有機溶媒中に原料粉末が分散したスラリーを調製する。ガラスセラミックスグリーンシートの製造に用いるスラリーは、一般にガラス粉末と骨材のセラミックス粉末からなる原料粉末合計100重量部に対し、有機溶媒30〜150重量部、好ましくは30〜100重量部、有機バインダー5〜30重量部、好ましくは10〜25重量部、可塑剤0.1〜4.0重量部、好ましくは0.5〜3.0重量部、および分散剤0.1〜3.0重量部、好ましくは0.5〜2.0重量部を含有する。可塑剤と分散剤は必要に応じて添加すればよく、必須成分ではない。 【0026】 スラリーの調製には、湿式粉砕で得られた混合物をそのまま利用することが好ましい。即ち、湿式粉砕で得られた混合物は、場合により有機バインダーまたは有機バインダーと可塑剤を含有している有機溶媒中に所定粒径まで粉砕された原料粉末(ガラス粉末とセラミックス粉末との混合物)を含有しているので、これらの有機溶媒および場合により存在する有機バインダーや可塑剤をスラリーの調製に利用する。具体的には、まず有機溶媒の量が多すぎる場合には、蒸発などの手段で溶媒量をスラリーの調製に使用する量まで低減させる。その後、湿式粉砕を有機バインダーの不存在下で実施した場合には、有機バインダー、可塑剤および分散剤を上記の範囲内の量で添加し、適当な混合手段(例、ボールミル、アトリションミル)によりスラリー化する。 【0027】 有機バインダーおよび可塑剤については前述したものが使用できる。分散剤としては、アクリル酸オリゴマー、ソルビタンモノオレエートなどが挙げられる。得られたスラリーは常法により(通常はドクターブレード法)でシート成形し、得られたシートを室温または加熱下に乾燥して溶媒を除去すると、目的とするグリーンシートが得られる。 【0028】 湿式粉砕を水中で行う従来法では、特開昭59-195573号にも記載されているように、スラリーの調製の前に粉砕後の原料粉末の解砕(例、約20時間のボールミル処理)が必要であったが、本発明では湿式粉砕の後、粉砕された原料粉末を乾燥せず、湿式粉砕に用いた有機溶媒をそのまま用いてスラリーを調製するため、長時間の解砕工程が不必要となり、製造に要する時間が大幅に短縮される。 【0029】 本発明によれば、原料ガラス粉末が融点調整剤としてB2O3を含有しているにもかかわらず、湿式粉砕の媒質として、原料粉末中のB2O3を溶解する恐れのある水に代わって有機溶媒を使用するため、湿式粉砕中に原料粉末が多孔質化することが避けられる。その結果、平均粒径が1.5〜3.5μm程度となるように原料粉末を微細化した場合で、比表面積が1.5〜5.0m2/g程度の原料粉末が得られる。これに対し、従来法に従って水中で湿式粉砕を行うと、原料粉末の多孔質化が起こって、同じ平均粒径まで粉砕した時で比表面積は5〜10倍も増大する。 【0030】 その結果、従来法により湿式粉砕した原料粉末では有機バインダーの量を多くしないと伸び率の大きなガラスセラミックスグリーンシートを製造することができなかったが、本発明の方法に従って湿式粉砕した原料粉末では、より少ないバインダー量でガラス粉末の表面が完全に被覆され、伸び率の高いガラスセラミックスグリーンシートが製造できる。 【0031】 こうして製造されたガラスセラミックスグリーンシートは、高い伸び率を有するため、径の小さいビアホールを狭いピッチで形成しても、ボロが発生することがなく、ビアホール間にひび割れを生じることもない。それにより、ガラスセラミックス多層配線基板のビアホールの径とピッチを縮小でき、LSIの高集積化や基板の小型化が容易となる。また、有機バインダー量が少なくてすむため、製造コストが低減する上、焼成後の残留炭素分が少ないので、焼成された基板の灰色着色が防止され、絶縁性の低下も低下も避けられる。 【0032】 本発明の方法により製造されたガラスセラミックスグリーンシートは、グリーンシート積層法によるガラスセラミックス多層配線基板の作製に特に適しているが、未焼成ガラスセラミックス板を使用する多層印刷法或いは単層ガラスセラミックス基板の作製にも利用できることは当然である。 【0033】 【実施例】 以下、実施例により本発明を例示する。実施例中、部および%は特に指定のない限り重量部および重量%である。 【0034】 (実施例1)原料粉末として、MgO-Al2O3-SiO2-B2O3-R2O系ガラス粉末(R:アルカリ金属、B2O3含有量18%、平均粒径12μm)ならびにアルミナ粉末(平均粒径10μm)と少量のコージエライト粉末(平均粒径10μm)からなるセラミックス骨材粉末を使用した。これらの粉末はいずれも市販品を粉砕せずに使用した。 【0035】 ボールミルに上記ガラス粉末100部をアルミナ粉末25部およびコージエライト粉末7部と一緒に投入し、表1に示す有機溶媒(または混合有機溶媒)50〜150重量部を加えた後、アルミナ製ボール(直径15mm)400部を投入し、平均粒径が2μmになるまで約48時間湿式粉砕した。なお、有機溶媒の添加量は、原料粉末の総重量と同重量の水の体積と同体積となるようにした。 【0036】 湿式粉砕の後、得られた粉砕粉末の比表面積をBET法により測定するため、一旦加熱して有機溶媒を蒸発させた。比表面積の測定は、島津製作所製マイクロティクスアキュソープ2100を用い、脱気200℃、60分、吸着ガスKrの条件により行った。結果を表1に併記する。 【0037】 次に、湿式粉砕した原料粉末100部に、有機溶媒(兼粘度調製剤)としてキシレン40部、可塑剤としてDOPを2部、有機バインダーとしてアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート)17部、および分散剤としてアクリル酸オリゴマー1部を添加し、湿式混合を12時間行ってスラリー化した。得られたスラリーを用いて、ドクターブレード法により、厚さが200μmのグリーンシートを形成し、80℃で乾燥させた。 【0038】 こうして作製したガラスセラミックスグリーンシートについて、その破断強度、伸び率、パンチング打ち抜き性を次のようにして調べた。これらの試験結果も表1に併せて示す。 【0039】 破断強度の測定は、引張試験機(ロードセル5kg)を用い、引張速度:20mm/min、試料形状:10×20mmの条件で測定した。伸び率は、破断強度測定の際の引張初期から破断に到るまでのシートの延伸量から求めた。 【0040】 パンチング打ち抜き性は、NCパンチャーを用い、直径3.5mmのパンチ孔400個を4mmピッチで縦横20列づつ形成し、顕微鏡観察によりパンチ孔近傍にボロの発生が認められず、さらにパンチ孔間にひび割れも認められないものを良好とし、ボロやひび割れの発生が認められたものを不良と評価した。 【0041】 比較のために、有機溶媒の代わりに原料粉末の総重量と同重量の水を使用した以外は上記と同様にして湿式粉砕、スラリー化およびグリーンシートの作製を行った。 【0042】 【表1】 【0043】 表1から明らかなように、本発明にかかる試験No.1〜10では、原料粉末の湿式粉砕後の比表面積がいずれも4.0m2/g付近と小さく、また強度および伸び率のバランスのとれたガラスセラミックスグリーンシートが得られており、パンチング打ち抜き性も良好である。 【0044】 一方、湿式粉砕を従来のように水中で行った試験No.11の比較例では、湿式粉砕後の原料粉末の比表面積が約35m2/gと著しく大きくなっており、高強度ではあるが、伸び率は著しく低く、パンチング打ち抜き性も不良で、多層配線基板のビアホール形成工程に耐えられないことがわかる。 【0045】 なお、本実施例では、比表面積の測定のために湿式粉砕後に一旦乾燥を行ったが、湿式粉砕で得られた混合物をそのままスラリー化に使用しても、上と同様の結果が得られる。 【0046】 (参考例)実施例1で使用したのと同じガラス粉末、アルミナ粉末およびコージエライト粉末を未粉砕のまま原料粉末に使用した。ボールミルにガラス粉末100部をアルミナ粉末25部およびコージエライト粉末7部と一緒に投入した。次いで、有機溶媒としてアルコール(ブタノール、プロパノールまたはペンタノール)をキシレンとの混合溶媒として、合計70部加え、これと同時に有機バインダーとしてアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート)またはブチラール樹脂(ポリビニルブチラール)1〜10部および可塑剤としてDOPを1部添加した。さらにアルミナ製ボール(直径15mm)400部を投入し、平均粒径が2μmになるまで約48〜100時間湿式粉砕した。 【0047】 本例では、有機バインダーの存在下で湿式粉砕を行ったため、粉砕された原料粉末の表面が有機バインダーで覆われており、比表面積を正確に測定することができないため、比表面積の測定は行わなかった。 【0048】 この粉砕された原料粉末と有機溶媒とからなる混合物に、原料粉末100部当たり、分散剤としてアクリル酸オリゴマー1.0部、有機バインダーとして湿式粉砕に使用したのと同じ有機バインダー(アクリル樹脂またはブチラール樹脂)を湿式粉砕時の添加量と合わせて15部になる量で添加し、湿式混合を12時間行ってスラリー化した。得られたスラリーを用いて、ドクターブレード法により、厚さが200μmのグリーンシートを形成し、80℃で乾燥させた。このグリーンシートは、表1に示したものに匹敵する伸び率およびパンチ打ち抜き性を示した。 【0049】 その後、グリーンシートを大気中900℃で焼成してガラスセラミックス基板を作製した。作製したガラスセラミックス基板について、灰色着色の有無を目視でにより判定した。その結果を、湿式粉砕に使用したアルコールの種類と有機溶媒中の割合(重量%)、湿式粉砕時に添加した有機バインダーの量(原料粉末100部当たりの部)と共に、表2(バインダーがブチラール樹脂の場合)および表3(バインダーがアクリル樹脂の場合)にそれぞれ示す。 【0050】 比較のために、有機バインダーの不存在下でアルコールを含有する有機溶媒中で湿式粉砕した以外は上記と同様にグリーンシートの作製と焼成を行った場合の結果も併記した。 【0051】 【表2】 【0052】 【表3】 【0053】 表2および表3から明らかなように、アルコールを含有する有機溶媒中で湿式粉砕を行った場合には、有機バインダーを添加して湿式粉砕すると、作製されたグリーンシートの焼成後に得られたガラスセラミックス基板は白色であり、灰色着色は認められなかった。一方、有機バインダーを添加せずにアルコールを含有する有機溶媒中で湿式混合した比較例では、グリーンシートを焼成して得られたガラスセラミックス基板に灰色着色が認められた。 【0054】 【発明の効果】 以上詳述したように、本発明にかかるガラスセラミックスグリーンシートの製造方法にあっては、1000℃以下での低温焼成を可能にするため原料粉末がB2O3を含有するガラス粉末を含有しているが、粗大な原料粉末を有機溶媒中で湿式粉砕することにより、従来の水中での湿式粉砕の際に認められたガラス粉末中のB2O3の溶解による比表面積の増大が防止され、少ないバインダー量で伸び率の高いガラスセラミックスグリーンシートを製造することができる。 【0055】 その結果、このグリーンシートの穴あけ加工時に小径のビアホールを狭いピッチで形成しても、ボロの発生やビアホール間のひび割れが起こりにくくなり、ピッチおよび径とも小さいビアホールが形成されたガラスセラミックス多層配線基板を容易に作製することが可能となり、LSIの高集積化、多層配線基板の一層の小型化が達成される。また、グリーンシート中の有機バインダー量が少なくてすむため、焼成後に得られるガラスセラミックス基板の残炭量が少なく、灰色着色や導電性の低下が避けられる。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-08-18 |
出願番号 | 特願平7-154992 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(C03B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 山崎 直也 |
特許庁審判長 |
松本 貢 |
特許庁審判官 |
多喜 鉄雄 野田 直人 |
登録日 | 2003-04-18 |
登録番号 | 特許第3419151号(P3419151) |
権利者 | 株式会社村田製作所 |
発明の名称 | ガラスセラミックスグリーンシートの製造方法 |
代理人 | 西澤 均 |
代理人 | 西澤 均 |