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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1125833
異議申立番号 異議2003-73082  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-06-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-15 
確定日 2005-08-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3427047号「窒化物系半導体素子、窒化物系半導体の形成方法および窒化物系半導体素子の製造方法」の請求項5〜15、17〜21、23、24に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3427047号の請求項5〜15、17〜23に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続の経緯
特許3427047号に係る発明は、平成12年9月22日(優先権主張平成11年9月24日)に特許出願され、平成15年5月9日に特許権の設定登録がなされ、その後、中島順より特許異議の申立てがなされ、平成17年5月10日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年7月15日に訂正請求がなされたものである。

【2】平成17年7月15日の訂正請求に対する適否判断

[1]訂正事項
訂正事項a;特許請求の範囲の請求項6を、「半導体基板上に窒化物系半導体層を成長させる窒化物系半導体の形成方法において、前記半導体基板は、格子定数が前記窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII-V族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板の表面に2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンを形成し、前記凹凸パターン上の凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層を成長させ、前記バッファ層上に前記窒化物系半導体層を成長させることを特徴とする窒化物系半導体の形成方法。」と訂正する。

訂正事項b;特許請求の範囲の請求項8を、「基板の表面に2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンを形成し、前記凹凸パターン上の凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸バターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層を成長させ、前記 バッファ層上に窒化物系半導体層を表面がほぼ平坦になるまで成長させることを特徴とする窒化物系半導体の形成方法。」と訂正する。

訂正事項c;特許請求の範囲の請求項9を、「前記凹凸パターンは、ストライプ状に延びる凹部および凸部を有することを特徴とする請求項5又は請求項7のいずれかに記載の窒化物系半導体の形成方法。」と訂正する。

訂正事項d;特許請求の範囲の請求項10を、「前記凹凸パターンは2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有することを特徴とする請求項5又は請求項7のいずれかに記載の窒化物系半導体の形成方法。」と訂正する。

訂正事項e;特許請求の範囲の請求項18を、「半導体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、前記半導体基板は、格子定数が前記窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII-V族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板の表面に2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンが形成され、前記凹凸パターンの凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸バターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層が形成され、前記バッファ層上に素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。」と訂正する。

訂正事項f;特許請求の範囲の請求項20を、「基板の表面に2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンが形成され、前記凹凸パターンの凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸バターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層が形成され、前記バッファ層上に少なくとも部分的にほぼ平坦な表面を有する第1の窒化物系半導体層が形成され、前記第1の窒化物系半導体層の前記平坦な表面に、素子領域を含む第2の窒化物系半導体層が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。」と訂正する。

訂正事項g:特許請求の範囲の請求項24に記載されている「前記絶縁体基板基板上に」を「前記絶縁体基板上に」に訂正する。

訂正事項h:特許請求の範囲の請求項に付されている番号のうち、請求項23を請求項22,請求項24を請求項23に訂正する。

[2]請求の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存在

上記訂正事項a,bは、特許請求の範囲の請求項6の従属項となっている請求項10と、請求項8の従属項となっている請求項10を各々独立項とし、訂正前の請求項6、8と置換えたものである。

上記訂正事項cは、上記訂正事項a,bの訂正により特許請求の範囲の請求項6と請求項8が従属項から独立項への変更に伴い、特許請求の範囲の請求項9において引用する請求項のうち、請求項6、8に係る発明を削除したものである。

上記訂正事項dは、特許請求の範囲の請求項10において引用する請求項のうち、請求項6、8に係る発明を削除したものである。

上記訂正事項eは、特許請求の範囲の請求項18に記載された「凹凸パターン」をより下位概念である「2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターン」として発明特定事項を限定したものである。

上記訂正事項fは、特許請求の範囲の請求項20に記載された「凹凸パターン」をより下位概念である「2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターン」として発明特定事項を限定したものである。

上記訂正事項gは、「前記絶縁体基板基板上に」と、「基板」を繰り返してタイプミスしたものを訂正したものである。

上記訂正事項hは、特許請求の範囲の請求項に付された番号のうち、22が抜け落ちていたので、請求項23、請求項24の項数を繰り上げ、訂正前の請求項23を請求項22に、請求項24を請求項23に訂正したものである。

ここで、上記訂正事項a〜fは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記訂正事項g,hは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記訂正事項e,fにおいて、「2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターン」という当該発明特定事項は、明細書の特許請求の範囲の請求項10の記載、発明の詳細な説明の段落【0037】、【0140】〜【0150】、及び図 6(b)の記載に基づくものであるから裏付けられている。
よって、上記訂正事項a〜hは願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

[3]まとめ
上述のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する同法第126条第2項ないし第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】本件特許発明
本件については、上記【2】の[1]段落で示したとおりの訂正がなされ、かつその訂正が容認されるものであるから、本件の請求項5〜15,17〜23に係る発明は、上記の平成17年7月15日付け訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項5〜15,17〜23に記載される次のとおりのものである(以下、「訂正発明5〜15,17〜23」といい、これに対応する訂正前の発明を「本件発明5〜15,17〜23」という。)。

「【請求項5】 半導体基板上に窒化物系半導体層を成長させる窒化物系半導体の形成方法において、前記半導体基板は、IV族半導体、IV-IV族半導体またはII-VI族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板の表面に凹凸パターンを形成し、前記凹凸パターン上の凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層を成長させ、前記バッファ層上に前記窒化物系半導体層を成長させることを特徴とする窒化物系半導体の形成方法。
【請求項6】 半導体基板上に窒化物系半導体層を成長させる窒化物系半導体の形成方法において、前記半導体基板は、格子定数が前記窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII -V族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板の表面に2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンを形成し、前記凹凸パターン上の凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層を成長させ、前記バッファ層上に前記窒化物系半導体層を成長させることを特徴とする窒化物系半導体の形成方法。
【請求項7】 絶縁体基板上に窒化物系半導体層を成長させる窒化物系半導体の形成方法において、前記絶縁体基板の表面に凹凸パターンを形成し、前記凹凸パターン上の凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層を成長させ、前記バッファ層上に前記窒化物系半導体層を成長させることを特徴とする窒化物系半導体の形成方法。
【請求項8】 基板の表面に2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンを形成し、前記凹凸パターン上の凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層を成長させ、前記バッファ層上に窒化物系半導体層を表面がほぼ平坦になるまで成長させることを特徴とする窒化物系半導体の形成方法。
【請求項9】 前記凹凸パターンは、ストライプ状に延びる凹部および凸部を有することを特徴とする請求項5又は請求項7のいずれかに記載の窒化物系半導体の形成方法。
【請求項10】 前記凹凸パターンは、2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有することを特徴とする請求項5又は請求項7のいずれかに記載の窒化物系半導体の形成方法。
【請求項11】 半導体基板上に窒化物系半導体層を成長させ、該窒化物系半導体層上に素子領域を形成する窒化物系半導体素子の製造方法において、前記半導体基板は、IV族半導体、IV-IV族半導体、またはII-VI族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板上にエッチングにより間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層を形成して該複数のバッファ層の間に前記半導体基板を露出させ、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、前記半導体基板の露出した領域上および前記複数のバッファ層上に窒化物系半導体層を形成し、前記窒化物系半導体層上の前記半導体基板の露出した領域上のうち中央部を除く領域に素子領域を形成することを特徴とする窒化物系半導体素子の製造方法。
【請求項12】 半導体基板上に窒化物系半導体層を成長させ、該窒化物系半導体層上に素子領域を形成する窒化物系半導体素子の製造方法において、前記半導体基板は、格子定数が前記窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII -V族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板上にエッチングにより間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層を形成して該複数のバッファ層の間に前記半導体基板を露出させ、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、前記半導体基板の露出した領域上および前記複数のバッファ層上に窒化物系半導体層を形成し、前記窒化物系半導体層上の前記半導体基板の露出した領域上のうち中央部を除く領域に素子領域を形成することを特徴とする窒化物系半導体素子の製造方法。
【請求項13】 絶縁体基板に窒化物系半導体層を成長させ、該窒化物系半導体層上に素子領域を形成する窒化物系半導体素子の製造方法において、前記絶縁体基板上にエッチングにより間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層を形成して該複数のバッファ層の間に前記絶縁体基板を露出させ、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、前記絶縁体基板の露出した領域上および前記複数のバッファ層上に窒化物系半導体層を形成し、前記窒化物系半導体層上の前記絶縁体基板の露出した領域上のうち中央部を除く領域に素子領域を形成することを特徴とする窒化物系半導体素子の製造方法。
【請求項14】 前記複数のバッファ層は、ストライプ状に配置されることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の窒化物系半導体素子の製造方法。
【請求項15】 前記複数のバッファ層は、2次元的に分散配置されることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の窒化物系半導体素子の製造方法。
【請求項17】 半導体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、前記半導体基板は、IV族半導体、IV-IV族半導体またはII-IV族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板の表面に凹凸パターンが形成され、前記凹凸パターンの凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層が形成され、前記バッファ層上に素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項18】 半導体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、前記半導体基板は、格子定数が前記窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII -V族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板の表面に2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンが形成され、前記凹凸パターンの凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層が形成され、前記バッファ層上に素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項19】 絶縁体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、前記絶縁体基板の表面に凹凸パターンが形成され、前記凹凸パターンの凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層が形成され、前記バッファ層上に素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項20】 基板の表面に2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンが形成され、前記凹凸パターンの凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層が形成され、前記バッファ層上に少なくとも部分的にほぼ平坦な表面を有する第1の窒化物系半導体層が形成され、前記第1の窒化物系半導体層の前記平坦な表面に、素子領域を含む第2の窒化物系半導体層が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項21】 半導体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、前記半導体基板は、IV族半導体、IV-IV族半導体またはII-VI族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板上に間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層が形成され、該複数のバッファ層の間で前記半導体基板が露出され、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、前記半導体基板の露出した領域上および前記複数のバッファ層上に窒化物系半導体層が形成され、前記窒化物系半導体層上の前記半導体基板の露出した領域上のうち中央部を除く領域に素子領域が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項22】 半導体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、前記半導体基板は、格子定数が前記窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII -V族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板上に間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層が形成され、該複数のバッファ層の間で前記半導体基板が露出され、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、前記半導体基板の露出した領域上および前記複数のバッファ層上に窒化物系半導体層が形成され、前記窒化物系半導体層上の前記半導体基板の露出した領域上のうち中央部を除く領域に素子領域が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項23】 絶縁体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、前記絶縁体基板上に間隔Xで分散的に幅Yのバッファ層が形成され、該複数のバッファ層の間で前記半導体基板が露出され、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、前記絶縁体基板の露出した領域上および前記複数のバッファ層上に窒化物系半導体層が形成され、前記窒化物系半導体層上の前記半導体基板の露出した領域上のうち中央部を除く領域に素子領域が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。」

【4】特許異議申立の理由の概要
特許異議申立人 中島順は、次の甲第1〜5号証及び添付資料1を提示し、本件の請求項5,7,17,19に係る発明は、甲第1,2号証から容易に発明し得たものであり、請求項6,8,9,18,20に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、請求項10に係る発明は、甲第1,3号証から容易に発明し得たものであり、請求項11,21に係る発明は、甲第2,4,5号証から容易に発明し得たものであり、請求項12、13,23,24に係る発明は、甲第4号証に記載されているか、もしくは甲第4,5号証から容易に発明し得たものであり、請求項14,15に係る発明は、甲第4号証に記載された発明、もしくは甲第5号証に記載された発明である。
したがって、 本件の請求項5〜15,17〜21,23,24に係る発明は、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定に該当し、その発明に係る特許は同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである、と主張している。
甲第1号証;特開平8-264901号公報
(以下、「刊行物1」という。)
甲第2号証;特開平9-321381号公報
(以下、「刊行物2」という。)
甲第3号証;特開昭56-60076号公報
(以下、「刊行物3」という。)
甲第4号証;特開平11-238687号公報
(以下、「刊行物4」という。)
甲第5号証;特開平11-219910号公報
(以下、「刊行物5」という。)
添付資料;「半導体大事典」、株式会社工業調査会、
1999年12月20日発行、第557頁
(以下、「参考資料」という。)

【5】刊行物1〜5及び参考資料の記載内容

[1]刊行物1の記載内容
(1-a)段落【0001】には、
「この発明は、エピタキシャルウェハおよびそれを用いた半導体レーザ素子ならびにその製造方法に関するものであり、特に、導波路に設けた周期的な回折格子により導波光を反射する現象を利用した半導体レーザ素子およびそれに用いられるエピタキシャルウェハならびにその製造方法に関するものである。」
と記載され、
(1-b)段落【0022】には、
「請求項1の発明によるエピタキシャルウェハは、その表面に回折格子が形成された、GaAsおよびInPからなる群から選ばれる化合物半導体基板と、基板上に形成された、厚さが10nm〜80nmのGaNからなるバッファ層と、バッファ層上に形成された、GaNを含むエピタキシャル層と、バッファ層とエピタキシャル層との界面に位置する不整合面とを含んでいる。」
と記載され、
(1-c)段落【0048】には、
「この第1のバッファ層の厚さは、10nm〜80nmである。10nmより薄いと、第2のバッファ層(GaNエピタキシャル層)を形成するための昇温中に第1のバッファ層が部分的に途切れ、この上に形成された第2のバッファ層(GaNエピタキシャル層)が剥がれてしまうからである。一方、80nmより厚いと、フラットな第1のバッファ層の低温成長に核成長が混ざり、この核を中心にピラミッド状に第2のバッファ層(GaNエピタキシャル層)が成長してしまうからである。」
と記載され、
(1-d)段落【0053】には、
「このGaNからなる第1のバッファ層を形成する際の温度は300℃〜700℃が好ましい。300℃より低いと、GaNからなる第1のバッファ層が成長しないからである。一方、700℃より高いと、基板が熱ダメージを受けて、この上に形成されたエピタキシャル層が剥がれてしまうからである。」
と記載され、
(1-d)段落【0058】には、
「まず、GaAs(100)面基板上に、0.1μm以下の厚みのポジ型レジストを塗布した後、干渉露光装置を用いて、0.5μmピッチで回折格子パターンを形成した。格子パターンは<011>方向に平行となるように形成した。次に、これを、フッ酸と過酸化水素水と水とを混合したエッチング液によりエッチングして、(100)面から54.7°の傾斜を有する(111)B面が露出するような回折格子を形成した。」と記載され、
(1-e)段落【0061】〜【0064】には、
「図2を参照して、まず、石英からなる反応チャンバ54内に、上述のようにして回折格子を形成したn型GaAs(100)面基板1を設置した。
次に、抵抗加熱ヒータ55により外部からチャンバ内全体を加熱して、基板1を500℃に保持した状態で、第1のガス導入口51からIII族原料としてトリメチルガリウム(TMGa)および塩化水素(HCl)、さらにn型ドーパントとしてシラン(SiH4 )ガスを導入し、一方、第2のガス導入口52からはV族原料としてアンモニアガス(NH3 )を導入した。なお、このときの原料ガスのV/III比は200であった。このような条件でエピタキシャル成長させ、厚さ30nmのGaNからなる第1のバッファ層2を形成した。
次に、このようにGaNからなる第1のバッファ層2が形成された基板1の温度を、抵抗加熱ヒータ55により800℃まで昇温した後、TMGa、HCl、NH3 およびn型ドーパントとしてSiH4 を導入して、エピタキシャル成長させた。なお、このときの原料ガスのV/III比は200であった。
その結果、GaNからなる第1のバッファ層2上に、厚さ2μmの非常に平坦な第2のバッファ層としてのGaNエピタキシャル層3が成長し、格子の段差は埋込まれた。」と記載され、
(1-f)段落【0068】には、
「その結果、非常に平坦なGaNエピタキシャル層が成長し、格子の段差は埋込まれた。また、エピタキシャル層のドメインは、0.5μmピッチの回折格子状となり、ドメイン制御のできた膜がInP基板上に形成できた。なお、GaNからなるエピタキシャル層は、六方晶の結晶構造を有していた。」
と記載され、
(1-g)段落【0071】には、
「その結果、非常に平坦なGaNエピタキシャル層が成長し、格子の格差は埋込まれた。また、エピタキシャル層のドメインは、0.5μmピッチの回折格子状となり、ドメイン制御のできた膜がGaAs基板上に形成できた。なお、GaNからなるエピタキシャル層は、立方晶の結晶構造を有していた。」
と記載され、
(1-h)段落【0074】〜【0085】には、
「その結果、非常に平坦なGaNエピタキシャル層が成長し、格子の格差は埋込まれた。また、エピタキシャル層のドメインは、0.5μmピッチの回折格子状となり、ドメインの制御のできた膜がInP基板上に形成できた。なお、GaNからなるエピタキシャル層は、立方晶の結晶構造を有していた。
(2) 半導体レーザ素子の作成・・・
DFB構造
図3は、本発明による半導体レーザ素子の一例の構造を示す断面図である。なお、この半導体レーザ素子は、キャビティの内部に屈折率分布を持たせるように周期的な回折格子を配し、これにより導波光を反射する現象を利用したDFB構造の半導体レーザ素子である。
図3を参照して、この半導体レーザ素子は、その表面に回折格子9が形成されたn型GaAs(100)B面基板1と、基板1上に形成された厚さが30nmのGaNからなる第1のバッファ層2と、第1のバッファ2上に形成された厚さが1μmのn型GaNからなる第2のバッファ層3と、第2のバッファ層3上に形成された厚さが0.3μmのn型Al0.3 Ga0.7 Nからなるn型クラッド層4と、n型クラッド層4上に形成された厚さが0.1μmのノンドープGaNからなる活性層5と、活性層5上に形成された厚さが0.3μmのp型Al0.3 Ga0.7 Nからなるp型クラッド層6と、p型クラッド層6上に形成されたp型GaNからなるコンタクト層7とを含んでいる。
また、第1のバッファ層2と第2のバッファ層3との界面には、不整合面8が位置していた。さらに、コンタクト層7上および基板1の裏面には、それぞれ電極が形成されている。
次に、このように構成される半導体レーザ素子の製造方法について、以下に説明する。
まず、n型GaAs(100)面基板1上に、0.1μm以下の厚みのポジ型レジストを塗布したのち、干渉露光装置を用いて、0.5μmピッチの回折格子パターンを形成した。次に、これを、フッ酸と過酸化水素水と水とを混合したエッチング液によりエッチングして、(111)B面が露出するような回折格子9を形成した。
次に、このように表面に回折格子9が形成された基板1上に、第1のバッファ層2および第2のバッファ層3を、有機金属クロライド気相エピタキシ成長法を用いて形成した。各層の成長条件を以下に示す。〜次に、この第2のバッファ層3上に、第1のクラッド層4、活性層5、第2のクラッド層6およびコンタクト層7を、OMVPE法を用いて形成した。各層の成長条件を以下に示す。〜このようにして各層を成長させた後、N2 雰囲気中600℃で30分間のアニール処理を行ない、p型ドーパントのMgを活性化させて、半導体レーザ素子用エピタキシャル結晶を完成させた。
このようにして作製されたエピタキシャル結晶を用いて、活性領域構造がDH(ダブルヘテロ)型で、デバイス構造がストライプ型の半導体レーザ素子を、以下のように通常のデバイスプロセスにて作製した。
まず、プラズマCVDによってSi3 N4 絶縁膜を形成し、通常のフォトリソグラフィと化学エッチングにより、10μm幅のストライプを形成した。その上に、Niからなるp型上部電極を蒸着法にて形成した。
つづいて、基板側にn型電極Au-Ge-Niを蒸着法にて形成した。このエピタキシャル結晶を、チップ化した。キャビティ長は1mmとした。このようにしてできたチップを、熱伝導性の良いCu-W合金からなるステムにマウントし、通電動作を試みた。このデバイスは、350nmを中心とした単一モードであり、安定に室温で発振した。」
と記載されている。

[2]刊行物2の記載内容
(2-a)段落【0001】には、
「本発明は、窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)よりなるレーザ素子に関する。」
と記載され、
(2-b)段落【0021】、【0022】には、
「サファイアのA面を主面とする基板1を用意し、この基板1をMOVPE装置の反応容器内に設置した後、原料ガスにTMG(トリメチルガリウム)と、アンモニアを用い、温度500℃でサファイア基板1の表面にGaNよりなるバッファ層を200オングストロームの膜厚で成長させる。バッファ層は、基板と窒化物半導体との格子不整合を緩和する作用があり、他にAlN、AlGaN等を成長させることも可能である。このバッファ層を成長させることにより、基板の上に成長させるn型窒化物半導体の結晶性が良くなることが知られているが、成長方法、基板の種類等によりバッファ層が成長されない場合もあるので、図1には特に図示していない。基板にはサファイアA面の他、R面、C面を主面とするサファイアも使用でき、またこの他、スピネル(MgAl2O4、111面)、SiC、MgO、Si、ZnO、GaN等の単結晶よりなる従来より知られている基板が用いられる。
続いて温度を1050℃に上げ、原料ガスにTMG、アンモニア、ドナー不純物としてSiH4(シラン)ガスを用いて、SiドープGaNよりなるn型コンタクト層2を4μmの膜厚で成長させる。n型コンタクト層2はInXAlYGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)で構成することができ、特にSiをドープしたGaNで構成することにより、キャリア濃度の高いn型層が得られ、また負電極と好ましいオーミック接触が得られるので、レーザ素子のしきい値電流を低下させることができる。負電極の材料としてはAl、Ti、W、Cu、Zn、Sn、In等の金属若しくは合金が好ましいオーミックが得られる。」
と記載されている。

[3]刊行物3の記載内容
(3-a)第1頁左欄5〜14行には、
「(1)半導体または絶縁体の単結晶基板上に、導電性窒化ガリウム層、半絶縁性窒化ガリウム層を形成してなる窒化ガリウム発光素子において、前記単結晶基板表面の一部に設けられた凹凸領域と、この凹凸領域に対応し導電性及び半絶縁性窒化ガリウム層を貫通して表面に達する、導電性窒化ガリウム層と同導電型で高導電率を示す高導電性領域とを有し、前記半絶縁性窒化ガリウム層と高導電性領域に電極を設けたことを特徴とする窒化ガリウム発光素子」と記載され、
(3-b)第2頁左下欄12〜19行には、
「また、強いn型導電性領域の形成は、サファイア基板11に、スクライバ等におり凹凸領域を形成すれば良く、従来に比して簡単に形成でき、電極の取り出しが容易になる利点がある。
上記の説明では、凹凸部91をストライプ上に設けた例を掲げたが、凹凸部91の形状がこれに限定されるものでないことはもちろんであり、必要ならば円形にすることもできる。」
と記載されている。

[4]刊行物4の記載内容
(4-a)段落【0001】には、
「本発明は、GaN系化合物半導体から構成される半導体基板、および、DVD用,CD用,プリンタ用の光源などに利用可能な半導体発光素子に関する。」
と記載され、
(4-b)段落【0010】、【0011】には、
「図26は選択成長用のマスクパターンを示す図であり、図27(a)乃至(e)は、図26のマスクパターンの作製方法を説明するための図である。なお、図27(a)乃至(e)は図26のA-A’線における断面で見たものである。
図27を参照すると、まず、図27(a)の工程でサファイア基板151上に核発生層としてGaN薄膜152を積層し、次いで、図27(b)の工程で核発生層152上に、7μmピッチで1〜4μm幅のストライプパターンが開いたSiO2からなる選択成長用マスク153を形成する。このストライプパターンはGaN薄膜152の〈11-20〉方向に沿って形成される(図26を参照)。」
と記載され、
(4-c)段落【0029】には、
「図1,図2,図3,図4,図5,図6を参照すると、この半導体基板は、図3,図4に示すように、サファイア,GaAs等の単結晶基板11の一主面上に、選択成長の核発生層となる結晶層12が形成され、この結晶層(核発生層)12上に、選択成長用マスク13が形成されている。」
と記載され、
(4-d)段落【0032】には、
「この半導体基板の最大の特徴は、選択成長用マスク13のマスクパターンが、周期的に並んで(例えば格子状に)配置された円形パターンとなっていることにある。」と記載され、
(4-e)段落【0037】には、
「次に、図1〜図6の半導体基板の作製工程例を説明する。この作製工程例では、半導体基板としてφ2インチ,厚さ300μmの(0001)面サファイア基板11上に、選択成長の核発生層としてのGaN層12、選択成長用マスクとしてのSiO2層13、n-GaN単結晶層15を順次に形成するようになっている。ここで、選択成長用マスクとしてのSiO2層13には、直径3μmの円形パターンの穴14が、7μmのピッチで格子状に開けられたものを用い、その円形パターンの穴14を通して、GaN層12の表面から、n-GaN単結晶層15を選択成長させ、厚さ200μmのGaN単結晶層を形成するようにしている。」
と記載され、
(4-f)段落【0060】には、
「また、上述の各例(図1〜図6の例,図7〜図12の例,図13〜図18の例)では、円形パターンの穴14が開けられた選択成長用マスク13を結晶層(核発生層)12を介して単結晶基板11上に形成したが、選択成長用マスク13を単結晶基板11上に直接形成することもできる。この場合、円形パターンの穴14から露出した単結晶基板11の表面からGaN系化合物半導体結晶15を結晶成長させることができる。また、この場合、選択成長用マスク13は、穴14を通して単結晶基板11に優先的にGaN単結晶の結晶成長が生じる材料からなるのが良い。」
と記載され、
(4-g)段落【0076】には、
「図22は本発明に係る半導体発光素子の構成例を示す斜視図である。図22の半導体発光素子は、例えば図1,図2、または、図7,図8の半導体基板50(11,12,13,15)上に形成された少なくとも一つのp-n接合を含むGaN系化合物半導体積層構造からなる発光素子となっている。」 と記載されている。

[5]刊行物5の記載内容
(5-a)段落【0001】には、
「本発明は基板となり得るような結晶欠陥の少ない窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)の成長方法と、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、太陽電池、光センサー等の発光素子、受光素子、あるいはトランジスタ、パワーデバイス等の電子デバイスに使用される窒化物半導体素子に関する。」
と記載され、
(5-b)段落【0029】〜【0031】には、
「2インチφ、C面を主面とするサファイアよりなる異種基板1をMOVPE反応容器内にセットし、温度を500℃にして、キャリアガスに水素、反応ガスにTMG(トリメチルガリウム(Ga(CH3)3:TMG)及びアンモニア(NH3)を用い、GaNよりなるバッファ層(図示せず)を200オングストロームの膜厚で成長させる。バッファ層成長後、温度を1050℃にして、同じくGaNよりなる第1の窒化物半導体層2を5μmの膜厚で成長させる。第1の窒化物半導体層2はAl混晶比X値が0.5以下のAlXGa1-XN(0≦X≦0.5)を成長させることが望ましい。0.5を超えると、結晶欠陥というよりも結晶自体にクラックが入りやすくなってしまうため、結晶成長自体が困難になる傾向にある。また膜厚はバッファ層よりも厚い膜厚で成長させて、10μm以下の膜厚に調整することが望ましい。基板はサファイアの他、SiC、ZnO、スピネル、GaAs等、窒化物半導体を成長させるために知られている、窒化物半導体と異なる材料よりなる基板を用いることができる。
第1の窒化物半導体層2成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、この第1の窒化物半導体層2の表面に、ストライプ状のフォトマスクを形成し、CVD装置によりストライプ幅10μm、ストライプ間隔(窓部)2μmのSiO2よりなる保護膜3を1μmの膜厚で形成する。保護膜の形状としてはストライプ状、ドット状、碁盤目状等どのような形状でも良いが、窓部よりも保護膜の面積を大きくする方が、結晶欠陥の少ない第2の窒化物半導体層3が成長しやすい。保護膜の材料としては、例えば酸化ケイ素(SiOX)、窒化ケイ素(SiXNY)、酸化チタン(TiOX)、酸化ジルコニウム(ZrOX)等の酸化物、窒化物、またこれらの多層膜の他、1200℃以上の融点を有する金属等を用いることができる。これらの保護膜材料は、窒化物半導体の成長温度600℃〜1100℃の温度にも耐え、その表面に窒化物半導体が成長しないか、若しくは成長しにくい性質を有している。
(第2の窒化物半導体層4)保護膜3形成後、ウェーハを再度MOVPEの反応容器内にセットし、温度を1050℃にして、アンモニアを0.27mol/min、TMGを225μmol/min(V/III比=1200)でアンドープGaNよりなる第2の窒化物半導体層4を30μmの膜厚で成長させる。成長後、第2の窒化物半導体層を断面TEMにより観察すると、第1の窒化物半導体層の界面からおよそ5μm程度までの領域は結晶欠陥の数が多く(108個/cm2以上)、5μmよりも上の領域では結晶欠陥が少なく(106個/cm2以下)、十分に窒化物半導体基板として使用できるものであった。また成長後の表面は、保護膜上部にはほとんど結晶欠陥が見られず、窓部上部(ストライプ中央部)にはやや結晶欠陥が表出する傾向があるが、従来の方法(V/III比が2000より大)に比べて結晶欠陥の数は2桁以上少ない。」
と記載され、
(5-c)段落【0043】には、
「アニーリング後、ウェーハを反応容器から取り出し、図7に示すように、RIE装置により最上層のp側コンタクト層18と、p側クラッド層17とをエッチングして、4μmのストライプ幅を有するリッジ形状とする。重要なことはリッジストライプを形成する場合、図8に示すようにリッジストライプ位置を結晶欠陥がやや現れ易い傾向を有するストライプ状の窓部中央部を避ける位置とする。このように結晶欠陥がほとんどない位置にストライプを形成すると、結晶欠陥が活性層まで伸びてこなくなる傾向にあるため、素子の長寿命とすることができ、信頼性が向上する。」
と記載されている。

[6]参考資料の記載内容
(6-a)第557頁右欄8〜20行には
「バッファ層
buffer layer
良質な薄膜を得るためにに基板との間に設けバッファ(緩衝)となる層をいう。本来は基板(または薄膜)と薄膜の格子不整合性を緩和するために基板と薄膜のいずれにも格子整合性の良い材料による膜を間に挟み、その膜をバッファ層(緩衝層)と呼ぶ。最近では、もう少し広い範囲で使われるようになっている。たとえば基板と薄膜の応力緩和や相互拡散防止などに用いる中間層バッファ層と呼ぶ場合がある。」
と記載されている。

【6】特許異議申立てに対する当審の判断

[訂正発明5]
特許異議申立人は、刊行物1に記載された発明において、基板材料として刊行物2に記載された基板材料を採用することで本件発明5とすることは、当業者であれば容易に想到し得たと主張する。
以下、この主張について検討する。
刊行物1に記載された発明は、GaAsやInP等のIII -V化合物半導体基板を対象とするものであるのに対して、刊行物2に記載された発明はサファイア、スピネル、SiC、MgO、Si、ZnO、GaN等の異なる基板材料を対象としている。
そして、結晶成長技術において、基板材料がその後に形成する半導体層に与える影響は、格子整合のミスマッチ等多大なものであり、特定の基板技術に用いられている技術を、単純に他の基板材料に置きかえて利用することは技術的に困難であることは当業者にとって技術常識である。
したがって、訂正発明5は、刊行物1と刊行物2によって容易に想到し得た発明とはいえない。

[訂正発明6]
特許異議申立人は、本件発明6は、刊行物1に記載された発明であると主張する。
以下、この主張について検討する。
訂正発明6の「2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンを形成する」工程を有する点については、刊行物1には記載も示唆もない。
そして、訂正発明6の窒化物系半導体の形成方法は、この点により、基板の表面に複数の凹部を分散配置した場合においては、基板の凹部上の窒化物系半導体層において、横方向成長を行うことができ、一方、基板の表面に複数の凸部を分散配置した場合においては、基板の凸部の間の領域上の窒化物系半導体層において、横方向成長を行うことができるという効果を奏する。
したがって、訂正発明6は、刊行物1に記載された発明とはいえない。

[訂正発明7]
特許異議申立人は、刊行物1に記載された発明において、基板材料として刊行物2に記載された基板材料を採用することで本件発明7とすることは、当業者であれば容易に想到し得たと主張する。
以下、この主張について検討する。
訂正発明5で述べた理由と同様に、半導体材料の結晶成長技術において、基板材料がその後に形成する半導体層に与える影響は、格子整合のミスマッチ等多大なものであり、特定の基板技術に用いられている技術を、単純に他の基板材料に置きかえて利用することは技術的に困難であることは当業者にとって技術常識である。
したがって、訂正発明7は、刊行物1と刊行物2によって容易に想到し得た発明とはいえない。

[訂正発明8]
特許異議申立人は、本件発明8は、刊行物1に記載された発明であると主張する。
以下、この主張について検討する。
訂正発明8は、上記訂正発明6と同様に「2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンを形成する」工程を有する点については、刊行物1には記載も示唆もない。
したがって、訂正発明8は、刊行物1に記載された発明とはいえない。

[訂正発明9]
特許異議申立人は、本件発明9は、刊行物1に記載された発明であると主張する。
以下、この主張について検討する。
訂正発明9は、訂正発明5又は訂正発明7を引用し、さらに凹凸パターンの構成について限定を加えたものである。
また、訂正発明5及び訂正発明7は、上述のように訂正発明5及び訂正発明7は刊行物1に記載された発明でないことを前提に、刊行物1の記載と刊行物2の記載の組み合わせを検討している。
したがって、訂正発明9は、刊行物1に記載された発明とはいえない。

[訂正発明10]
特許異議申立人は、本件発明10は、刊行物3に刊行物1の記載を組み合わせることによって、当業者であれば容易に想到し得たと主張する。
以下、この主張について検討する。
刊行物1に記載された発明は、GaAsやInP等のIII -V化合物半導体基板を対象とするものであるのに対して、刊行物3に記載された発明はサファイア、スピネル、SiC等の異なる基板材料を対象としている。
そして、結晶成長技術において、基板材料がその後に形成する半導体層に与える影響は、格子整合のミスマッチ等多大なものであり、特定の基板技術に用いられている技術を、単純に他の基板材料に置きかえて利用することは技術的に困難であることは当業者にとって技術常識である。
したがって、訂正発明10は、刊行物1と刊行物3によって容易に想到し得た発明とはいえない。

[訂正発明11]
特許異議申立人は、本件発明11は、刊行物4に記載された発明で用いられる基板にかえて、刊行物2に記載された基板を用い、さらに、刊行物5に記載された窒化物半導体層における結晶欠陥の偏在に関する技術課題を考慮して、結晶欠陥が少ない特定の位置に素子領域を設定することは、当業者であれば容易に想到し得たと主張する。
以下、この主張について検討する。
特許異議申立人は、刊行物4におけるSiO2 からなる選択成長用のストライプパターンマスク層について、参考資料のバッファ層に関する記載を根拠に、当該マスク層もバッファ層に含まれるものと認定し、当該マスク層は訂正発明11のバッファ層と差異が無いことを前提として議論を進めているが、SiO2 からなる選択成長用のストライプパターンマスク層は、パターン形成時のマスクとして用いることを主目的としていることから、バッファ層とは異なり、当該認定は、相違点を看過している。
また、当該相違点について、刊行物2及び刊行物5には、記載も示唆もない。
そして、訂正発明11は、当該マスク層を用いず、半導体基板上に間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層を、該複数のバッファ層の間で前記半導体基板が露出するように形成することから、次工程においてGaNの結晶成長を行う際、転位を低減することが可能となるという顕著な効果を奏する。
したがって、訂正発明11は、刊行物2,4,5によって容易に想到し得た発明とはいえない。

[訂正発明12]
特許異議申立人は、本件発明12は、刊行物4に記載された発明、又は刊行物4に刊行物5の記載を組み合わせることによって、当業者であれば容易に想到し得たと主張する。
以下、この主張について検討する。
ここで、上述訂正発明11のように、特許異議申立人は、刊行物4におけるSiO2 からなる選択成長用のストライプパターンマスク層について、参考資料のバッファ層に関する記載を根拠に、当該マスク層もバッファ層に含まれるものと認定し、当該マスク層は訂正発明12のバッファ層と差異が無いことを前提として議論を進めているが、SiO2 からなる選択成長用のストライプパターンマスク層は、パターン形成時のマスクとして用いることを主目的としていることから、バッファ層とは異なり、当該認定は、相違点を看過している。
また、当該相違点について、刊行物5には、記載も示唆もない。
そして、訂正発明12は、当該マスク層を用いず、半導体基板上に間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層を、該複数のバッファ層の間で前記半導体基板が露出するように形成することから、次工程においてGaNの結晶成長を行う際、転位を低減することが可能となるという顕著な効果を奏する。
したがって、訂正発明12は、刊行物4に記載された発明、又は刊行物4及び刊行物5によって容易に想到し得た発明とはいえない。

[訂正発明13]
特許異議申立人は、本件発明13は、刊行物4に記載された発明、又は刊行物4に刊行物5の記載を組み合わせることによって当業者であれば容易に想到し得たと主張する。
以下、この主張について検討する。
ここで、上述訂正発明11又は上述訂正発明12のように、特許異議申立人は、刊行物4におけるSiO2 からなる選択成長用のストライプパターンマスク層について、参考資料のバッファ層に関する記載を根拠に、当該マスク層もバッファ層に含まれるものと認定し、当該マスク層は訂正発明12のバッファ層と差異が無いことを前提として議論を進めているが、SiO2 からなる選択成長用のストライプパターンマスク層は、パターン形成時のマスクとして用いることを主目的としていることから、バッファ層とは異なり、当該認定は、相違点を看過している。
また、当該相違点について、刊行物5には、記載も示唆もない。
そして、訂正発明13は、当該マスク層を用いず、半導体基板上に間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層を、該複数のバッファ層の間で前記半導体基板が露出するように形成することから、次工程においてGaNの結晶成長を行う際、転位を低減することが可能となる、という顕著な効果を奏する。
したがって、訂正発明13は、刊行物4に記載された発明、又は刊行物4及び刊行物5によって、容易に想到し得た発明とはいえない。

[訂正発明14]
特許異議申立人は、本件発明14は、刊行物4に記載された発明、又は刊行物5に記載された発明であると主張する。
以下、この主張について検討する。
訂正発明14は、訂正発明11〜13を引用し、さらに複数のバッファ層の形状を限定するものである。
ここで、訂正発明11は、刊行物4に記載された発明でないことを前提に刊行物4の記載と刊行物2、5の記載の組み合わせを検討し、訂正発明12及び訂正発明13は、刊行物4に記載された発明でないことは上述の訂正発明12及び訂正発明13の説明のとおりである。
したがって、訂正発明14は、刊行物4に記載された発明ではない。
また、刊行物5におけるSiO2 からなる保護膜をストライプパターンマスク層について、参考資料のバッファ層に関する記載を根拠に、当該マスク層もバッファ層に含まれるものと認定しているが、SiO2 からなる選択成長用のストライプパターンマスク層は、パターン形成時のマスクとして用いることを主目的としていることから、バッファ層とは異なる層である。
したがって、訂正発明14は、刊行物5に記載された発明ではない。
よって、訂正発明14は、刊行物4に記載された発明又は刊行物5に記載された発明とはいえない。

[訂正発明15]
特許異議申立人は、本件発明15は、刊行物4に記載された発明又は刊行物5に記載された発明であると主張する。
以下、この主張について検討する。
訂正発明15は、訂正発明11〜13を引用し、さらに複数のバッファ層の形状を限定するものである。
ここで、訂正発明11は、刊行物4に記載された発明でないことを前提に刊行物4の記載と刊行物2、5の記載の組み合わせを検討し、訂正発明12及び訂正発明13は、刊行物4に記載された発明でないことは上述の訂正請求12及び訂正発明13の説明のとおりである。
したがって、訂正発明14は、刊行物4に記載された発明ではない。
また、刊行物5におけるSiO2 からなる保護膜をストライプパターンマスク層について、参考資料のバッファ層に関する記載を根拠に、当該マスク層もバッファ層に含まれるものと認定しているが、SiO2 からなる選択成長用のストライプパターンマスク層は、パターン形成時のマスクとして用いることを主目的としていることから、バッファ層とは異なる層である。
したがって、訂正発明15は、刊行物5に記載された発明ではない。
よって、訂正発明15は、刊行物4に記載された発明又は刊行物5に記載された発明とはいえない。

[訂正発明17]
特許異議申立人は、刊行物1に記載された発明において、基板材料として刊行物2に記載された基板材料を採用することで本件発明17とすることは、当業者であれば容易に想到し得たと主張する。
以下、この主張について検討する。
訂正発明17は、訂正発明5に記載された窒化物系半導体の形成方法により形成された半導体素子に関する発明である。
したがって、訂正発明5と同様な理由により、訂正発明17は刊行物1と刊行物2によって容易に想到し得た発明とはいえない。

[訂正発明18]
特許異議申立人は、本件発明18は、刊行物1に記載された発明であるとの主張する。
以下、この主張について検討する。
訂正発明18は、訂正発明6に記載された窒化物系半導体の形成方法により形成された半導体素子に関する発明である。
したがって、訂正発明6と同様な理由により、訂正発明18は、刊行物1に記載された発明とはいえない。

[訂正発明19]
特許異議申立人は、刊行物1に記載された発明において、基板材料として刊行物2に記載された基板材料を採用することで本件発明19とすることは、当業者であれば容易に想到し得たと主張する。
以下、この主張について検討する。
訂正発明19は、訂正発明7に記載された窒化物系半導体の形成方法により形成された半導体素子に関する発明である。
したがって、訂正発明7と同様な理由により、訂正発明19は、刊行物1と刊行物2によって容易に想到し得た発明とはいえない。

[訂正発明20]
特許異議申立人は、本件発明20は、刊行物1に記載された発明であるとの主張する。
以下、この主張について検討する。
訂正発明20は、訂正発明8に記載された窒化物系半導体の形成方法により形成された半導体素子に関する発明である。
したがって、訂正発明8と同様な理由により、訂正発明20は、刊行物1に記載された発明とはいえない。

[訂正発明21]
特許異議申立人は、本件発明21は、刊行物4に記載された発明で用いられる基板にかえて、刊行物2に記載された基板を用い、さらに、刊行物5に記載された窒化物半導体層における結晶欠陥の偏在に関する技術課題を考慮して、結晶欠陥が少ない特定の位置に素子領域を設定することは、当業者であれば容易に想到し得たと主張する。
以下、この主張について検討する。
訂正発明21は、訂正発明11に記載された窒化物系半導体の形成方法により形成された半導体素子に関する発明である。
したがって、訂正発明11と同様な理由により、訂正発明21は、刊行物2,4,5によって容易に想到し得た発明とはいえない。

[訂正発明22]
特許異議申立人の請求項23に係る特許に対する特許異議申立の主張は、訂正後の訂正発明22に対するものと認められるので、以下、請求項23に係る特許に対する特許異議申立の主張は、訂正発明22に対する主張として検討する。
特許異議申立人は、本件発明22(訂正発明22に対応)は、刊行物4に記載された発明、又は刊行物4に刊行物5の記載を組み合わせることによって、当業者であれば容易に想到し得たと主張する。
以下、この主張について検討する。
訂正発明22は、訂正発明12に記載された窒化物系半導体の形成方法により形成された半導体素子に関する発明である。
したがって、訂正発明12と同様な理由により、訂正発明22は、刊行物4に記載された発明、又は刊行物4に刊行物5の記載を組み合わせることによって、当業者であれば容易に想到し得たとはいえない。

[訂正発明23]
特許異議申立人の請求項24に係る特許に対する特許異議申立の主張は、訂正後の訂正発明23に対するものと認められるので、以下、請求項24に係る特許に対する特許異議申立の主張は、訂正発明23に対する主張として検討する。
特許異議申立人は、本件発明23(訂正発明23に対応)は、刊行物4に記載された発明、又は刊行物4に刊行物5の記載を組み合わせることによって当業者であれば容易に想到し得たと主張する。
以下、この主張について検討する。
訂正発明23は、訂正発明13に記載された窒化物系半導体の形成方法により形成された半導体素子に関する発明である。
したがって、訂正発明13と同様な理由により、訂正発明23は、刊行物4に記載された発明である、又は刊行物4に刊行物5の記載を組み合わせることによって、当業者であれば容易に想到し得たと発明とはいえない。

よって、特許異議申立の理由によって、訂正発明5〜15,17〜23に係る特許は取り消すことはできない。

【7】当審における取消理由通知

[取消理由]
本件発明6,8,18,20は、刊行物1に記載された発明、又は、刊行物1に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第1項第3号又は第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は取り消されるべきものである、というものである。

[取消理由についての判断]

(訂正発明6)
訂正発明6において、「2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンを形成する」工程を有する発明特定事項については、刊行物1には記載も示唆もない。
また、当該発明特定事項については、例えば、円形の凹凸パターンという形で、刊行物3の上記摘記事項(3-b)にも記載されているように類似な構成として公知ではあるが、刊行物3において、基板上に2次元的に分散された凹凸パターンを形成する目的は、基板上に成長した結晶層を上部電極とする特定の形状を有する素子において、電極の取り出しを容易にするためであり、特段、素子の構造を限定していない訂正発明6において同様な目的を考慮する必然性は認められない。
さらに、当該発明特定事項を有することにより、訂正発明6は、基板の表面に複数の凹部を分散配置した場合においては、基板の凹部上の窒化物系半導体層において横方向成長を行うことができ、一方、基板の表面に複数の凸部を分散配置した場合においては、基板の凸部の間の領域上の窒化物系半導体層において横方向成長を行うことができるとという効果を奏する。
したがって、訂正発明6は、刊行物1に記載された発明に基づいて容易に発明されたものとは認められない。
よって、訂正発明6は、刊行物1に記載された発明とは認められず、また刊行物1に基づいて容易に発明されたものとも認められない。

(訂正発明8)
訂正発明8は、訂正発明6と同様の発明特定事項を有するので、訂正発明6と同様の理由により、訂正発明8は、刊行物1に記載された発明とは認められず、また刊行物1に基づいて容易に発明されたものとも認められない。

(訂正発明18)
訂正発明18は、訂正発明6の窒化物半導体の形成方法により作成された窒化物半導体素子に関する発明であるから、訂正発明6に示した理由と同様の理由により、訂正発明18は、刊行物1に記載された発明とは認められず、また刊行物1に基づいて容易に発明されたものとも認められない。

(訂正発明20)
訂正発明20は、訂正発明8の窒化物半導体の形成方法により作成された窒化物半導体素子に関する発明であるから、訂正発明8に記載された理由、すなわち訂正発明6に示した理由と同様の理由により、訂正発明20は、刊行物1に記載された発明とは認められず、また刊行物1に基づいて容易に発明されたものとも認められない。

[取消理由の結論]
以上の通りであるから、訂正発明6,8,18,20は、刊行物1に記載された発明、又は刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。

【8】むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び特許取消理由によっては、訂正後の請求項5〜15,17〜23に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の請求項5〜15,17〜23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
窒化物系半導体素子、窒化物系半導体の形成方法および窒化物系半導体素子の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】基板のC面上に第1の窒化物系半導体層を成長させ、前記第1の窒化物系半導体層の表面を研磨することにより前記第1の窒化物系半導体層においてC面から所定の方向に所定の角度傾斜した面を露出させ、前記第1の窒化物系半導体層の前記傾斜した面上に前記第1の窒化物系半導体層よりも単結晶に近い第2の窒化物系半導体層を成長させることを特徴とする窒化物系半導体の形成方法。
【請求項2】基板のC面上に選択成長マスクを用いた選択横方向成長により第1の窒化物系半導体層を平坦化するまで成長させ、前記第1の窒化物系半導体層においてC面から所定の方向に所定の角度傾斜した面を露出させ、前記第1の窒化物系半導体層の前記傾斜した面上に前記第1の窒化物系半導体層よりも単結晶に近い第2の窒化物系半導体層を成長させることを特徴とする窒化物系半導体の形成方法。
【請求項3】前記第1の窒化物系半導体層の表面を研磨することにより前記C面から所定の方向に所定の角度傾斜した面を露出させることを特徴とする請求項2記載の窒化物系半導体の形成方法。
【請求項4】前記第1の窒化物系半導体層を成長させる過程で前記C面から所定の方向に所定の角度傾斜した面を露出させることを特徴とする請求項2記載の窒化物系半導体の形成方法。
【請求項5】半導体基板上に窒化物系半導体層を成長させる窒化物系半導体の形成方法において、前記半導体基板は、IV族半導体、IV-IV族半導体またはII-VI族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板の表面に凹凸パターンを形成し、前記凹凸パターン上の凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層を成長させ、前記バッファ層上に前記窒化物系半導体層を成長させることを特徴とする窒化物系半導体の形成方法。
【請求項6】半導体基板上に窒化物系半導体層を成長させる窒化物系半導体の形成方法において、前記半導体基板は、格子定数が前記窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII-V族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板の表面に2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンを形成し、前記凹凸パターン上の凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層を成長させ、前記バッファ層上に前記窒化物系半導体層を成長させることを特徴とする窒化物系半導体の形成方法。
【請求項7】絶縁体基板上に窒化物系半導体層を成長させる窒化物系半導体の形成方法において、前記絶縁体基板の表面に凹凸パターンを形成し、前記凹凸パターン上の凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層を成長させ、前記バッファ層上に前記窒化物系半導体層を成長させることを特徴とする窒化物系半導体の形成方法。
【請求項8】基板の表面に2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンを形成し、前記凹凸パターン上の凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層を成長させ、前記バッファ層上に窒化物系半導体層を表面がほぼ平坦になるまで成長させることを特徴とする窒化物系半導体の形成方法。
【請求項9】前記凹凸パターンは、ストライプ状に延びる凹部および凸部を有することを特徴とする請求項5又は請求項7のいずれかに記載の窒化物系半導体の形成方法。
【請求項10】前記凹凸パターンは、2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有することを特徴とする請求項5又は請求項7のいずれかに記載の窒化物系半導体の形成方法。
【請求項11】半導体基板上に窒化物系半導体層を成長させ、該窒化物系半導体層上に素子領域を形成する窒化物系半導体素子の製造方法において、前記半導体基板は、IV族半導体、IV-IV族半導体、またはII-VI族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板上にエッチングにより間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層を形成して該複数のバッファ層の間に前記半導体基板を露出させ、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、前記半導体基板の露出した領域上および前記複数のバッファ層上に窒化物系半導体層を形成し、前記窒化物系半導体層上の前記半導体基板の露出した領域上のうち中央部を除く領域に素子領域を形成することを特徴とする窒化物系半導体素子の製造方法。
【請求項12】半導体基板上に窒化物系半導体層を成長させ、該窒化物系半導体層上に素子領域を形成する窒化物系半導体素子の製造方法において、前記半導体基板は、格子定数が前記窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII-V族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板上にエッチングにより間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層を形成して該複数のバッファ層の間に前記半導体基板を露出させ、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、前記半導体基板の露出した領域上および前記複数のバッファ層上に窒化物系半導体層を形成し、前記窒化物系半導体層上の前記半導体基板の露出した領域上のうち中央部を除く領域に素子領域を形成することを特徴とする窒化物系半導体素子の製造方法。
【請求項13】絶縁体基板に窒化物系半導体層を成長させ、該窒化物系半導体層上に素子領域を形成する窒化物系半導体素子の製造方法において、前記絶縁体基板上にエッチングにより間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層を形成して該複数のバッファ層の間に前記絶縁体基板を露出させ、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、前記絶縁体基板の露出した領域上および前記複数のバッファ層上に窒化物系半導体層を形成し、前記窒化物系半導体層上の前記絶縁体基板の露出した領域上のうち中央部を除く領域に素子領域を形成することを特徴とする窒化物系半導体素子の製造方法。
【請求項14】前記複数のバッファ層は、ストライプ状に配置されることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の窒化物系半導体素子の製造方法。
【請求項15】前記複数のバッファ層は、2次元的に分散配置されることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の窒化物系半導体素子の製造方法。
【請求項16】基板のC面上に選択成長マスクを用いた横方向成長により第1の窒化物系半導体層が形成され、前記第1の窒化物系半導体層のC面から所定の方向に所定の角度傾斜した面上に、前記第1の窒化物系半導体層よりも単結晶に近い第2の窒化物系半導体層が形成され、前記第2の窒化物系半導体層上に、素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項17】半導体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、前記半導体基板は、IV族半導体、IV-IV族半導体またはII-IV族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板の表面に凹凸パターンが形成され、前記凹凸パターンの凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層が形成され、前記バッファ層上に素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項18】半導体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、前記半導体基板は、格子定数が前記窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII-V族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板の表面に2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンが形成され、前記凹凸パターンの凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層が形成され、前記バッファ層上に素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項19】絶縁体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、前記絶縁体基板の表面に凹凸パターンが形成され、前記凹凸パターンの凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層が形成され、前記バッファ層上に素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項20】基板の表面に2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有する凹凸パターンが形成され、前記凹凸パターンの凸部上面、凹部底面および凹部側面に該凹凸パターンと同様のパターンを表面に有するバッファ層が形成され、前記バッファ層上に少なくとも部分的にほぼ平坦な表面を有する第1の窒化物系半導体層が形成され、前記第1の窒化物系半導体層の前記平坦な表面に、素子領域を含む第2の窒化物系半導体層が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項21】半導体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、前記半導体基板は、IV族半導体、IV-IV族半導体またはII-VI族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板上に間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層が形成され、該複数のバッファ層の間で前記半導体基板が露出され、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、前記半導体基板の露出した領域上および前記複数のバッファ層上に窒化物系半導体層が形成され、前記窒化物系半導体層上の前記半導体基板の露出した領域上のうち中央部を除く領域に素子領域が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項22】半導体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、前記半導体基板は、格子定数が前記窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII-V族半導体からなる半導体基板であり、前記半導体基板上に間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層が形成され、該複数のバッファ層の間で前記半導体基板が露出され、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、前記半導体基板の露出した領域上および前記複数のバッファ層上に窒化物系半導体層が形成され、前記窒化物系半導体層上の前記半導体基板の露出した領域上のうち中央部を除く領域に素子領域が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【請求項23】絶縁体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、前記絶縁体基板上に間隔Xで分散的に幅Yのバッファ層が形成され、該複数のバッファ層の間で前記半導体基板が露出され、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、前記絶縁体基板の露出した領域上および前記複数のバッファ層上に窒化物系半導体層が形成され、前記窒化物系半導体層上の前記半導体基板の露出した領域上のうち中央部を除く領域に素子領域が形成されたことを特徴とする窒化物系半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、InN(窒化インジウム)、BN(窒化ホウ素)もしくはTlN(窒化タリウム)またはこれらの混晶等のIII-V族窒化物系半導体(以下、窒化物系半導体と呼ぶ)およびこれら混晶にAs、PおよびSbのうち少なくとも1つの元素を含む混晶等のIII-V族窒化物系半導体からなる化合物半導体層を有する窒化物系半導体素子、窒化物系半導体の形成方法および窒化物系半導体素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】今日、GaN系半導体を利用した半導体素子、例えば、発光ダイオード素子等の半導体発光素子、あるいはトランジスタ等の電子素子の開発が盛んに行われている。このようなGaN系半導体素子の製造の際には、GaNからなる基板の製造が困難であるため、サファイア、SiC、Si等からなる基板上にGaN系半導体層をエピタキシャル成長させている。
【0003】この場合、サファイア等の基板とGaNとでは格子定数が異なるため、サファイア等の基板上に成長させたGaN系半導体層においては、基板から上下方向に延びる転位(格子欠陥)が存在しており、その転位密度は109cm-2程度である。このようなGaN系半導体層における転位は、半導体素子の素子特性の劣化および信頼性の低下を招く。
【0004】上記のようなGaN系半導体層における転位を低減する方法として、応用電子物性分科会誌第4巻(1998)の第53頁〜第58頁および第210頁〜第215頁等に選択横方向成長(ELO:Epitaxial Lateral Overgrowth)が示されている。
【0005】図13は従来の選択横方向成長を用いた窒化物系半導体の形成方法の例を示す模式的な工程断面図である。
【0006】図13(a)に示すように、サファイア基板201のC(0001)面上に、MOVPE法(有機金属化学的気相成長法)により、膜厚約1μmのGaN層202を形成する。さらに、GaN層202上に、選択成長マスクとして複数のストライプ状SiO2膜210を形成する。なお、GaN層202中にはc軸方向に伝播する転位が多数存在する。
【0007】図13(b)に示すように、SiO2膜210の形成後、HVPE法(ハライド気相成長法)により、再成長GaN層203を成長させる。ここで、SiO2膜210上においてはGaNが成長しにくいため、成長初期の再成長GaN層203は、ストライプ状SiO2膜210の間で露出したGaN層202上に選択的に成長する。この場合、GaN層202上において、再成長GaN層203は、図中の矢印Yの方向(c軸方向)に成長する。このような成長においては、GaN層202からc軸方向に転位が伝播する。
【0008】以上のようにして、露出したGaN層202上に、三角形のファセット構造を有する再成長GaN層203を成長させる。
【0009】図13(c)に示すように、上記のGaN層202上における再成長GaN層203の成長が進むと、再成長GaN層203は、さらに図中の矢印Xの方向(横方向)にも成長する。このような再成長GaN層203の横方向成長により、SiO2膜210上に再成長GaN層203が形成される。また、再成長GaN層203の表面のC面上の成長においては、ステップフローモードで成長が起こる。このため、再成長GaN層203の横方向成長に伴い、GaN層202からc軸方向に伝播した転位は、横方向すなわちサファイア基板201のC面と平行な方向に折れ曲がる。
【0010】それにより、再成長GaN層203において、c軸方向に伝播する転位を低減することが可能となる。
【0011】図13(d)に示すように、さらに再成長GaN層203を横方向成長させると、ファセット構造の各再成長GaN層203が合体して連続膜となる。このようにして、平坦な再成長GaN層203が形成される。この場合、平坦化された再成長GaN層203の表面付近においては転位が低減されている。
【0012】以上のように、上記の窒化物系半導体の形成方法においては、再成長GaN層203の選択横方向成長を行うことにより、再成長GaN層203において転位の低減を図ることが可能となる。このような転位が低減された再成長GaN層203上に窒化物系半導体層を形成することにより、サファイア基板201上に良好な結晶性を有する窒化物系半導体層を形成することができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】上記の窒化物系半導体の形成方法においては、再成長GaN層203を横方向成長させるため、選択成長マスクとして複数のストライプ状SiO2膜210を形成する。
【0014】ここで、SiO2膜210とGaNとでは熱膨張係数が異なる。このため、再成長GaN層203中に複数のSiO2膜210を形成した場合、再成長GaN層203においてクラックが発生しやすくなる。なお、SiO2膜210の代わりに、選択成長マスクとしてTiO2膜等の絶縁膜やW等の高融点金属の薄膜を用いた場合においても、SiO2膜210を用いた場合と同様、選択成長マスクとGaNとの熱膨張係数の違いから、再成長GaN層203においてクラックが発生しやすくなる。
【0015】また、上記の窒化物系半導体の形成方法においては、図13(d)に示すように、横方向成長したファセット構造の各再成長GaN層203が合体する際、合体部においてボイド215が発生し、このようなボイド215により、再成長GaN層203においてクラックが発生しやすくなる場合もある。
【0016】以上のことから、上記の窒化物系半導体の形成方法により形成した再成長GaN層203上に、素子領域を含む窒化物系半導体層を形成して半導体素子を製造する場合、素子を分離する工程等においてクラックが発生しやすくなる。このようなクラックの発生は、半導体素子において、素子特性の劣化および信頼性の低下を招くとともに、歩留りの低下を招く。
【0017】また、より良好な素子特性および高い信頼性を有する半導体素子を実現するためには、窒化物系半導体においてさらなる格子欠陥の低減を図ることが望まれる。
【0018】本発明の目的は、選択成長マスクを用いることなく、より転位の低減を図ることが可能な窒化物系半導体の形成方法を提供することである。
【0019】本発明の他の目的は、選択成長マスクを用いることなく、より転位の低減が図られかつクラックの発生が防止された半導体素子を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段および発明の効果】(1)第1の発明
第1の発明に係る窒化物系半導体の形成方法は、基板のC面上に第1の窒化物系半導体層を成長させ、第1の窒化物系半導体層においてC面から所定の方向に所定の角度傾斜した面を露出させ、第1の窒化物系半導体層の傾斜した面上に第1の窒化物系半導体層よりも単結晶に近い第2の窒化物系半導体層を成長させるものである。ここで、第2の窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0021】第1の発明に係る窒化物系半導体の形成方法において、第1の窒化物系半導体層の傾斜した面においては、原子オーダの段差が形成されている。
【0022】このような原子オーダの段差を有する第1の窒化物系半導体層の傾斜した面に第2の窒化物系半導体層を成長させると、主として、ステップフローモードで成長が起こる。このため、第1の窒化物系半導体層から縦方向に伝播した転位は、第2の窒化物系半導体層のステップフロー成長に伴って横方向に折れ曲がる。それにより、第2の窒化物系半導体層において縦方向に伝播する転位を低減することが可能となる。したがって、第2の窒化物系半導体層の表面において良好な結晶性が実現される。
【0023】また、上記の窒化物系半導体の形成方法によれば、選択成長マスクを用いることなく第2の窒化物系半導体層をステップフロー成長させることができる。このため、第2の窒化物系半導体層においては、選択成長マスクと窒化物系半導体との熱膨張係数の差によるクラックの発生が防止されるとともに、ボイドの発生が防止される。
【0024】第1の窒化物系半導体層の表面を研磨することによりC面から所定の方向に所定の角度傾斜した面を露出させてもよい。この場合、研磨により露出させた第1の窒化物系半導体層の傾斜した面においては、所定の方向にストライプ状に延びる微小な階段状の段差が形成される。
【0025】また、基板上に第1の窒化物系半導体層を成長させる過程でC面から所定の方向に所定の角度傾斜した面を露出させてもよい。この場合、例えば膜厚の不均一な第1の窒化物系半導体層を成長させることにより、C面から所定の方向に所定の角度傾斜した面を第1の窒化物系半導体層において露出させることができる。このようにして露出させた第1の窒化物系半導体層の表面においては、所定の方向にストライプ状に延びる微小な階段状の段差が形成されている。
【0026】(2)第2の発明
第2の発明の一局面に係る窒化物系半導体の形成方法は、半導体基板上に窒化物系半導体層を成長させる窒化物系半導体の形成方法において、半導体基板は、IV族半導体、IV-IV族半導体またはII-VI族半導体からなる半導体基板であり、半導体基板の表面に凹凸パターンを形成し、凹凸パターン上に窒化物系半導体層を成長させるものである。ここで、窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0027】第2の発明の他の局面に係る窒化物系半導体の形成方法は、半導体基板上に窒化物系半導体層を成長させる窒化物系半導体の形成方法において、半導体基板は、格子定数が窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII-V族半導体からなる半導体基板であり、半導体基板の表面に凹凸パターンを形成し、凹凸パターン上に窒化物系半導体層を成長させるものである。ここで、窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0028】第2の発明のさらに他の局面に係る窒化物系半導体の形成方法は、絶縁体基板上に窒化物系半導体層を成長させる窒化物系半導体の形成方法において、絶縁体基板の表面に凹凸パターンを形成し、凹凸パターン上に窒化物系半導体層を成長させるものである。ここで、窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0029】第2の発明のさらに他の局面に係る窒化物系半導体の形成方法は、基板の表面に凹凸パターンを形成し、凹凸パターン上にバッファ層を成長させ、凹凸パターン上およびバッファ層上に窒化物系半導体層を表面がほぼ平坦になるまで成長させるものである。ここで、窒化物系半導体層は略単結晶であり、バッファ層は非単結晶である。
【0030】第2の発明に係る窒化物系半導体の形成方法においては、成長初期段階で、基板の段差を起源として、基板の段差の付近に窒化物系半導体層の段差が形成される。
【0031】さらに窒化物系半導体層の成長が進むと、段差側面の窒化物系半導体層における横方向の成長が支配的となる。それにより、窒化物系半導体層において凹部が徐々に埋められ、平坦な表面を有する窒化物系半導体層が形成される。なお、このような窒化物系半導体層の横方向成長においては、ボイドの発生を抑制することも可能である。
【0032】ここで、上記のように窒化物系半導体層が横方向に成長するため、基板付近で発生した縦方向に伝播する転位は、窒化物系半導体層の横方向成長に伴って横方向に折れ曲がる。それにより、窒化物系半導体層において、縦方向に伝播する転位を低減することが可能となる。したがって、窒化物系半導体層の表面において良好な結晶性が実現される。
【0033】また、上記の窒化物系半導体の形成方法によれば、選択成長マスクを用いることなく窒化物系半導体層を横方向成長させることができる。このため、窒化物系半導体層においては、選択成長マスクと窒化物系半導体との熱膨張係数の差によるクラックの発生が防止される。また、場合によってはボイドの発生を防止することも可能である。
【0034】さらに、上記の窒化物系半導体の形成方法によれば、1回の窒化物系半導体の成長により、転位が低減された窒化物系半導体層を容易に形成することができる。
【0035】特に、表面の加工が容易である基板を上記の窒化物系半導体の形成方法に用いた場合においては、基板の表面に容易に凹凸パターンを形成することができるため、転位が低減された窒化物系半導体層をさらに容易に形成することができる。
【0036】凹凸パターンは、ストライプ状に延びる凹部および凸部を有してもよい。この場合、基板に形成された凹部上の窒化物系半導体層において、横方向成長を行うことができる。
【0037】また、凹凸パターンは、2次元的に分散配置された複数の凹部または凸部を有してもよい。基板の表面に複数の凹部を分散配置した場合においては、基板の凹部上の窒化物系半導体層において、横方向成長を行うことができる。一方、基板の表面に複数の凸部を分散配置した場合においては、基板の凸部の間の領域上の窒化物系半導体層において、横方向成長を行うことができる。
【0038】
【0039】(3)第3の発明
第3の発明の一局面に係る窒化物系半導体の形成方法は、半導体基板上に窒化物系半導体層を成長させる窒化物系半導体の形成方法において、半導体基板は、IV族半導体、IV-IV族半導体、またはII-VI族半導体からなる半導体基板であり、半導体基板上にエッチングにより間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層を形成し、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、半導体基板上および複数のバッファ層上に窒化物系半導体層を成長させるものである。ここで、窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0040】第3の発明の他の局面に係る窒化物系半導体の形成方法は、半導体基板上に窒化物系半導体層を成長させる窒化物系半導体の形成方法において、半導体基板は、格子定数が窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII-V族半導体からなる半導体基板であり、半導体基板上にエッチングにより間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層を形成し、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、半導体基板上および複数のバッファ層上に窒化物系半導体層を成長させるものである。ここで、窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0041】第3の発明のさらに他の局面に係る窒化物系半導体の形成方法は、絶縁体基板上に窒化物系半導体層を成長させる窒化物系半導体の形成方法において、絶縁体基板上にエッチングにより間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層を形成し、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、絶縁体基板上および複数のバッファ層上に窒化物系半導体層を成長させるものである。ここで、窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0042】第3の発明に係る窒化物系半導体の形成方法においては、基板と窒化物系半導体とでは格子定数が異なるため、バッファ層を介することなく窒化物系半導体層を基板上に成長させるのは困難である。このため、窒化物系半導体層は、成長初期において、複数のバッファ層上に選択的に成長する。この場合、窒化物系半導体層は、バッファ層上において縦方向に成長する。
【0043】上記の窒化物系半導体層の縦方向の成長が進むと、バッファ層上に成長した窒化物系半導体層はさらに横方向に成長する。それにより、複数のバッファ層の間で露出した基板上に、窒化物系半導体層が形成される。このような窒化物系半導体層の横方向成長により、平坦な表面を有する連続膜の窒化物系半導体層が形成される。なお、このような窒化物系半導体層の横方向成長においては、ボイドの発生を抑制することも可能である。
【0044】ここで、上記のように窒化物系半導体層が横方向に成長するため、基板付近で発生した縦方向に伝播する転位は、窒化物系半導体層の横方向成長に伴って横方向に折れ曲がる。それにより、窒化物系半導体層において、縦方向に伝播する転位を低減することが可能となる。したがって、窒化物系半導体層の表面において良好な結晶性が実現される。
【0045】また、上記の窒化物系半導体の形成方法によれば、選択成長マスクを用いることなく窒化物系半導体層を横方向成長させることができる。このため、窒化物系半導体層においては、選択成長マスクと窒化物系半導体との熱膨張係数の差によるクラックの発生が防止される。また、場合によってはボイドの発生を防止することも可能である。
【0046】さらに、上記の窒化物系半導体の形成方法によれば、1回の窒化物系半導体の成長により、転位の低減された窒化物系半導体層を容易に形成することができる。
【0047】また、非単結晶のバッファ層は加工が容易であることから、上記の窒化物系半導体の形成方法においては、複数のバッファ層を容易に形成することができる。したがって、転位の低減された窒化物系半導体層をさらに容易に形成することができる。
【0048】また、この場合、バッファ層の間隔Xおよび幅Yが上記の関係を満足するため、エッチングにより容易にバッファ層のパターニングを行うことができるとともに、バッファ層上に形成する窒化物系半導体層の平坦化を容易に行うことが可能となる。したがって、この場合においては、容易に窒化物系半導体層を形成することが可能となる。
【0049】複数のバッファ層は、ストライプ状に配置されてもよい。この場合、複数のストライプ状のバッファ層の間で露出した基板上の窒化物系半導体層において、横方向成長を行うことができる。
【0050】また、複数のバッファ層は、2次元的に分散配置されてもよい。この場合、2次元的に分散配置された複数のバッファ層の間で露出した基板上の窒化物系半導体層において、横方向成長を行うことができる。
【0051】(4)第4の発明
第4の発明に係る窒化物系半導体素子は、基板のC面上に第1の窒化物系半導体層が形成され、第1の窒化物系半導体層のC面から所定の方向に所定の角度傾斜した面上に、第1の窒化物系半導体層よりも単結晶に近い第2の窒化物系半導体層が形成され、第2の窒化物系半導体層上に、素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されたものである。ここで、第2の窒化物系半導体層は略単結晶であり、素子領域を含む窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0052】第4の発明に係る窒化物系半導体素子の第1の窒化物系半導体層の傾斜した面は、原子オーダの段差を有する。このような原子オーダの段差を有する第1の窒化物系半導体層の傾斜した面に第2の窒化物系半導体層を成長させると、主として、ステップフローモードで成長が起こる。このため、基板から縦方向に伝播した転位は、第2の窒化物系半導体層のステップフロー成長に伴って横方向に折れ曲がる。それにより、第2の窒化物系半導体層においては、縦方向に伝播する転位が低減される。したがって、第2の窒化物系半導体層の表面においては、良好な結晶性が実現される。
【0053】上記の窒化物系半導体素子においては、このように転位が低減された第2の窒化物系半導体層上に、素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されている。このため、窒化物系半導体層においては、良好な結晶性が実現される。それにより、窒化物系半導体素子において、素子特性および信頼性の向上が図られる。
【0054】また、上記の窒化物系半導体素子の第2の窒化物系半導体層においては、選択成長マスクを用いることなくステップフロー成長が行われるため、選択成長マスクと窒化物系半導体との熱膨張係数の差によるクラックの発生が防止されるとともに、ボイドの発生が防止される。それにより、上記の窒化物系半導体素子においては、製造時の素子分離工程等におけるクラックの発生が防止され、高い歩留りが実現される。
【0055】(5)第5の発明
第5の発明の一局面に係る窒化物系半導体素子は、半導体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、半導体基板は、IV族半導体、IV-IV族半導体またはII-IV族半導体からなる半導体基板であり、半導体基板の表面に凹凸パターンが形成され、凹凸パターン上に素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されたものである。ここで、窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0056】第5の発明の他の局面に係る窒化物系半導体素子は、半導体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、半導体基板は、格子定数が窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII-V族半導体からなる半導体基板であり、半導体基板の表面に凹凸パターンが形成され、凹凸パターン上に素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されたものである。ここで、窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0057】第5の発明のさらに他の局面に係る窒化物系半導体素子は、絶縁体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、絶縁体基板の表面に凹凸パターンが形成され、凹凸パターン上に素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されたものである。ここで、窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0058】第5の発明のさらに他の局面に係る窒化物系半導体素子は、基板の表面に凹凸パターンが形成され、凹凸パターン上にバッファ層が形成され、凹凸パターン上およびバッファ層上に少なくとも部分的にほぼ平坦な表面を有する第1の窒化物系半導体層が形成され、第1の窒化物系半導体層の平坦な表面に、素子領域を含む第2の窒化物系半導体層が形成されたものである。ここで、第1の窒化物系半導体層および第2の窒化物系半導体層は略単結晶であり、バッファ層は非単結晶である。
【0059】第5の発明に係る窒化物系半導体素子においては、成長初期段階で、基板の段差を起源として、基板の段差の付近に窒化物系半導体層の段差が形成される。
【0060】さらに窒化物系半導体層の成長が進むと、段差側面の窒化物系半導体層における横方向の成長が支配的となる。それにより、窒化物系半導体層において凹部が徐々に埋められ、平坦な表面を有する窒化物系半導体層が形成される。
【0061】ここで、上記のように窒化物系半導体層が横方向に成長するため、基板付近で発生した縦方向に伝播する転位は、窒化物系半導体層の横方向成長に伴って横方向に折れ曲がる。それにより、窒化物系半導体層においては、縦方向に伝播する転位が低減される。したがって、窒化物系半導体層の表面においては、良好な結晶性が実現される。
【0062】上記の窒化物系半導体素子においては、このように転位が低減された窒化物系半導体層上に、素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されている。このため、窒化物系半導体層においては、良好な結晶性が実現される。それにより、窒化物系半導体素子において、素子特性および信頼性の向上が図られる。
【0063】また、上記の窒化物系半導体素子の窒化物系半導体層においては、選択成長マスクを用いることなく横方向成長が行われるため、選択成長マスクと窒化物系半導体との熱膨張係数の差によるクラックの発生が防止される。また、場合によってはボイドの発生を防止することが可能である。それにより、上記の窒化物系半導体素子においては、製造時の素子分離工程等におけるクラックの発生が防止され、高い歩留りが実現される。
【0064】さらに、上記の窒化物系半導体素子においては、1回の窒化物系半導体の成長により転位の低減された窒化物系半導体層が容易に形成される。したがって、このような窒化物系半導体素子は製造が容易である。
【0065】特に、表面の加工が容易である基板が用いられている場合においては、基板の表面に容易に凹凸パターンが形成されるため、窒化物系半導体素子の製造はさらに容易である。
【0066】また、凹凸パターンの凹部の中央を除く領域に素子領域を含む第2の窒化物系半導体層が形成されることが好ましい。この場合においては、素子領域を含む第2の窒化物系半導体層において、より良好な結晶性が実現できる。それにより、窒化物系半導体素子において、素子特性および信頼性の向上がさらに図られる。
【0067】(6)第6の発明
第6の発明の一局面に係る窒化物系半導体素子は、半導体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、半導体基板は、IV族半導体、IV-IV族半導体またはII-VI族半導体からなる半導体基板であり、半導体基板上に間隔Xで分散的に幅Yの複数のバッファ層が形成され、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、半導体基板上および複数のバッファ層上に窒化物系半導体層が形成されたものである。ここで、窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0068】第6の発明の他の局面に係る窒化物系半導体素子は、半導体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、半導体基板は、格子定数が窒化物系半導体層の格子定数と異なるIII-V族半導体からなる半導体基板であり、半導体基板上に間隔Xで分散的に幅Yのバッファ層が形成され、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、半導体基板上および複数のバッファ層上に窒化物系半導体層が形成されたものである。ここで、窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0069】第6の発明のさらに他の局面に係る窒化物系半導体素子は、絶縁体基板上に窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体素子において、絶縁体基板上に間隔Xで分散的に幅Yのバッファ層が形成され、間隔X[μm]および幅Y[μm]がY[μm]≦-X[μm]+40[μm]かつY[μm]≧1[μm]かつX[μm]≧1[μm]の関係を満足し、絶縁体基板上および複数のバッファ層上に窒化物系半導体層が形成されたものである。ここで、窒化物系半導体層は略単結晶である。
【0070】第6の発明に係る窒化物系半導体素子においては、基板上に複数のバッファ層が分散配置されている。ここで、基板と窒化物系半導体とでは格子定数が異なるため、バッファ層の間で露出した基板上に窒化物系半導体を成長させることは困難である。このため、成長初期の窒化物系半導体層は、複数のバッファ層上に選択的に成長する。この場合、窒化物系半導体層は、バッファ層上において縦方向に成長する。
【0071】上記の窒化物系半導体層の縦方向の成長が進むと、バッファ層上に成長した窒化物系半導体層は、さらに横方向に成長する。それにより、バッファ層の間で露出した基板上に窒化物系半導体層が形成される。このようにして、平坦な表面を有する連続膜の窒化物系半導体層が形成される。なお、このような窒化物系半導体層の横方向成長においては、ボイドの発生を抑制することも可能である。
【0072】ここで、上記のように窒化物系半導体層が横方向に成長するため、基板付近で発生した縦方向に伝播する転位は、窒化物系半導体層の横方向成長に伴って横方向に折れ曲がる。それにより、窒化物系半導体層において、縦方向に伝播する転位が低減される。したがって、窒化物系半導体層の表面においては、良好な結晶性が実現される。
【0073】上記の窒化物系半導体素子においては、このように転位が低減された窒化物系半導体層上に、素子領域を含む窒化物系半導体層が形成されている。このため、窒化物系半導体層においては、良好な結晶性が実現される。それにより、窒化物系半導体素子において、素子特性および信頼性の向上が図られる。
【0074】また、上記の窒化物系半導体素子の窒化物系半導体層においては、選択成長マスクを用いることなく横方向成長が行われるため、選択成長マスクと窒化物系半導体との熱膨張係数の差によるクラックの発生が防止される。また、場合によってはボイドの発生を防止することも可能である。
【0075】それにより、上記の窒化物系半導体素子においては、製造時の素子分離工程等におけるクラックの発生が防止され、高い歩留りが実現される。
【0076】さらに、上記の窒化物系半導体素子においては、1回の窒化物系半導体の成長により転位の低減された窒化物系半導体層が容易に形成される。また、低温で成長した結晶性の悪いバッファ層の加工が容易であることから、複数のバッファ層は容易に形成される。したがって、このような窒化物系半導体素子は、製造が容易である。
【0077】また、この場合においては、バッファ層の間隔Xおよび幅Yが上記の関係を満足するため、バッファ層のパターニングの際にエッチングを容易に行うことができるとともに、バッファ層上に形成される窒化物系半導体層を容易に平坦化することが可能となる。したがって、このような窒化物系半導体素子は製造が容易である。
【0078】
【発明の実施の形態】図1および図2は、第1の発明の一実施例における窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【0079】図1(a)に示すように、基板温度を600℃に保った状態でMOVPE法(有機金属化学的気相成長法)により、直径50.8mmのサファイア基板1のC面上に、アンドープのAlGaNからなる膜厚約15nmのAlGaN第1バッファ層2を形成する。さらに、基板温度を1150℃に保った状態でMOVPE法により、アンドープのGaNからなる膜厚約0.5μmのGaN第2バッファ層3を形成する。
【0080】続いて、図1(b)に示すように、基板温度を1150℃に保った状態でHVPE法(ハライド気相成長法)により、アンドープのGaNからなる膜厚約600μmの第1GaN層4を形成する。第1GaN層4の形成時においては、サファイア基板1を回転させながらアンドープのGaNを成長させる。それにより、全体にわたって均一な膜厚を有する第1GaN層4を形成することが可能となる。
【0081】上記のように第1GaN層4を成長させた後、図中のA-A線上の第1GaN層4を研磨して除去する。それにより、第1GaN層4において、サファイア基板1のC面から所定の方向(以下、オフ方向と呼ぶ)に所定の角度(以下、オフ角度と呼ぶ)Bだけ傾斜した面(以下、オフ面と呼ぶ)を露出させる。
【0082】以上のようにして、図1(c)に示すように、第1GaN層4にオフ面が形成されたGaNオフ基板25を作製する。この場合、GaNオフ基板25の表面、すなわち第1GaN層4のオフ面は、原子オーダの段差が形成されている。なお、図1(c)、図2(d),(e)は原子オーダの段差を高さ方向に誇張して描いた模式図である。また、GaN第2バッファ層3におけるサファイア基板1付近で発生した転位が、GaN第2バッファ層3と第1GaN層4をc軸方向に伝播している。
【0083】続いて、図2(d)から(e)に示すように、基板温度を1150℃に保った状態でMOVPE法により、第1GaN層4のオフ面に、アンドープのGaNからなる第2GaN層5を成長させる。この場合、主として、ステップフローモードで成長が起こる。このため、サファイア基板1からc軸方向に伝播した転位は、第2GaN層5のステップフロー成長に伴って、横方向(矢印Xの方向)すなわち第2GaN層5の(0001)面に平行な方向に折れ曲がる。それにより、第2GaN層5において、c軸方向に伝播する転位が低減される。
【0084】このようにして形成された第2GaN層5の表面においては、転位が低減されており、良好な結晶性が得られる。
【0085】以上のような窒化物系半導体の形成方法によれば、第1GaN層4のオフ面の原子オーダの段差を利用することにより、SiO2膜等の選択成長マスクを用いることなく第2GaN層5を横方向成長させ、転位を低減することが可能となる。したがって、GaNオフ基板25上に、良好な結晶性を有する第2GaN層5を形成することができる。
【0086】上記の窒化物系半導体の形成方法においては、選択成長マスクを用いないため、選択成長マスクとGaNとの熱膨張係数の差によるクラックの発生を防止できる。また、第2GaN層5におけるボイドの発生を防止することができる。
【0087】以上のことから、第2GaN層5上に素子領域を含む窒化物系半導体層を形成して半導体素子を製造した場合、第2GaN層5上に形成した窒化物系半導体層において良好な結晶性が得られるとともに、素子の分離工程等におけるクラックの発生を防止することができる。それにより、良好な素子特性を有しかつ高い信頼性を有する半導体素子が得られる。
【0088】上記の窒化物系半導体の形成方法において、第1GaN層4のオフ面のオフ角度Bは、特に限定されるものではない。
【0089】ここで、例えば第1GaN層4のオフ面のオフ角度Bを、0.02°、0.05°、0.1°、0.2°、0.5°、1°、2°および5°とした場合の各第2GaN層5について、X線回折ロッキングカーブの半値幅等により結晶性を評価すると、第1GaN層4のオフ面のオフ角度Bが大きい程、オフ面に形成した第2GaN層5の結晶性が向上するという結果が示される。
【0090】また、第1GaN層4のオフ面の傾斜方向すなわちオフ方向は、特に限定されるものではない。
【0091】ここで、例えば第1GaN層4のオフ方向を、[1-100]方向、[1-100]方向から[1-210]方向側に10°ずれた方向、[1-210]方向から[1-100]方向側に10°ずれた方向、および[1-210]方向とした場合の各第2GaN層5について、上記と同様の方法により結晶性を評価すると、第1GaN層4のオフ方向が[1-100]方向に近い程、オフ面に形成した第2GaN層5の結晶性が向上するという結果が示される。
【0092】なお、上記においては、第1GaN層4の成長時に基板を回転させて均一な膜厚の第1GaN層4を形成した後、第1GaN層4を研磨してオフ面を形成しているが、成長時に基板を回転させずに第1GaN層4を成長させて膜厚の不均一な第1GaN層4を形成し、この膜厚の不均一な第1GaN層4の表面をオフ面としてもよい。
【0093】このようにして形成した第1GaN層4においては、最も厚い部分の膜厚が例えば約700μmとなり、最も薄い部分の膜厚が例えば約500μmとなる。したがって、このような第1GaN層4の表面は、第1GaN層4の(0001)面に対して平均して約0.2°傾斜している。それにより、第1GaN層4において、表面を研磨することなくオフ面を形成することができる。
【0094】また、この第1GaN層4上に、基板を回転させて均一な膜厚の窒化物系半導体層を形成することができるので、成長を中断することなく、1回の窒化物系半導体層の成長により、転位が低減された窒化物系半導体層を容易に形成することができる。
【0095】さらに、上記においてはサファイア基板1を用いているが、スピネル等の絶縁体の基板を用いてもよい。あるいはSi、Ge等のIV族半導体、SiC等のIV-IV族半導体あるいはZnSe等のII-VI族半導体からなる半導体基板や、半導体基板の格子定数が窒化物系半導体層の格子定数と異なる、GaAs、InP、GaP等のIII-V族半導体からなる半導体基板を用いてもよい。半導体基板としては、絶縁性、n型、p型のいずれの基板を用いてもよい。上記のように基板の格子定数が窒化物系半導体層の格子定数と異なる基板を用いた場合には、基板付近で窒化物系半導体層に転位が多数発生し、この転位を低減する本発明の効果は大きい。
【0096】さらに、上記の窒化物系半導体層の形成方法に、選択成長マスクを用いた従来の選択横方向成長を適用してもよい。この場合について以下に説明する。
【0097】図3は第1の発明の他の実施例における窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【0098】この場合、図3(a)に示すように、図1および図2に示す窒化物系半導体の形成方法と同様の方法により、サファイア基板1のC面上に、膜厚15nmのAlGaN第1バッファ層2および膜厚0.5μmのGaN第2バッファ層3を順に成長させる。
【0099】その後、GaN第2バッファ層3上の所定領域に、GaNの[11-20]方向に延びる膜厚約0.5μmのストライプ状SiO2膜15を選択成長マスクとして形成する。なお、この場合のSiO2膜15の間隔は、後述するように、図12に示す従来の選択横方向成長におけるSiO2膜210の間隔に比べて大きくしてもよい。したがって、GaN第2バッファ層3上に形成されるSiO2膜15の数は、従来の選択横方向成長におけるSiO2膜210の数に比べて少なくしてもよい。
【0100】続いて、図3(b)に示すように、基板温度を1150℃に保った状態でサファイア基板1を回転させながら、HVPE法により、GaN第2バッファ層3上およびSiO2膜15上にアンドープのGaNからなる第1GaN層4を成長させる。
【0101】ここで、SiO2膜15上においてはGaNが成長しにくいため、成長初期の第1GaN層4aは、SiO2膜間で露出したGaN第2バッファ層3上に選択的に成長する。
このとき、第1GaN層4aは、図中の矢印Yの方向(c軸方向)に成長する。このような第1GaN層4aの成長においては、GaN第2バッファ層3からc軸方向に転位が伝播する。
【0102】上記のGaN第2バッファ層3上における第1GaN層4aの成長が進むにつれて、GaN第2バッファ層3上に形成した第1GaN層4aは、さらに矢印Xの方向(横方向)にも成長する。それにより、SiO2膜15上に第1GaN層4aが形成される。
【0103】ここで、SiO2膜15上における第1GaN層4aが横方向に成長するため、サファイア基板1付近で発生したc軸方向に伝播する転位は、第1GaN層4aの横方向成長に伴い、横方向(矢印Xの方向)すなわち第1GaN層4aの(0001)面に平行な方向に折れ曲がる。それにより、第1GaN層4aにおいて、c軸方向に伝播する転位の低減が図られる。
【0104】さらに、図3(c)に示すように、平坦化するまで第1GaN層4aを成長させ、膜厚600μmの第1GaN層4aを形成する。その後、図1および図2の窒化物系半導体層の形成方法と同様の方法により、図中のA-A線上の第1GaN層4aを研磨して除去する。
【0105】以上のようにして、図3(d)に示すように、所定のオフ方向で所定のオフ角度Bを有するオフ面が第1GaN層4aに形成されてなるGaNオフ基板26を作製する。
【0106】また、GaNオフ基板26においては、第1GaN層4aが選択横方向成長により形成されている。このため、GaNオフ基板26の第1GaN層4aは、GaNオフ基板25の第1GaN層4に比べて転位が低減されており、結晶性の向上が図られている。
【0107】上記の第1GaN層4aのオフ面に、GaNオフ基板25の場合と同様の方法により、アンドープのGaNからなる第2GaN層5aを成長させる。この場合、GaNオフ基板25の第1GaN層4上における第2GaN層5の成長過程と同様の過程を経て、第1GaN層4a上に第2GaN層5aが形成される。このようにして形成された第2GaN層5aの表面においては、さらに転位が低減されており、良好な結晶性が得られる。
【0108】以上のような窒化物系半導体の形成方法によれば、GaNオフ基板26のオフ面の原子オーダの段差を利用することにより、選択成長マスクを用いることなく第2GaN層5aを横方向成長させ、転位を低減することが可能となる。したがって、GaNオフ基板26上に、さらに良好な結晶性を有する第2GaN層5aを形成することができる。
【0109】また、このようにして形成した第2GaN層5aにおいては、選択成長マスクとGaNとの熱膨張係数の差によるクラックの発生が防止されるとともに、ボイドの発生が防止される。
【0110】ここで、GaNオフ基板26においては、前述のようなSiO2膜15を用いた選択横方向成長により、第1GaN層4aの転位が低減されている。このため、このような第1GaN層4a上に形成した第2GaN層5aにおいては、GaNオフ基板25の第1GaN層4上に形成した第2GaN層5に比べて、より転位が低減されており、より良好な結晶性が実現される。
【0111】上記の窒化物系半導体の形成方法においては、SiO2膜15を用いた第1GaN層4aの選択横方向成長、および第1GaN層4aにおけるオフ面の形成の2段階により、第2GaN層5aにおいて転位の低減が図られる。このため、上記の窒化物系半導体の形成方法においては、第1GaN層4aの選択横方向成長による転位の低減効果が小さくてもよい。したがって、前述のように、本例においてはSiO2膜15の数を、従来の選択横方向成長時に形成するSiO2膜の数よりも少なくすることが可能となる。それにより、第1GaN層4aにおいて、SiO2膜15とGaNとの熱膨張係数の差によるクラックの発生を防止できるとともに、SiO2膜15上におけるボイドの発生を防止することができる。
【0112】以上のことから、第2GaN層5a上に素子領域を含む窒化物系半導体層を形成して半導体素子を製造した場合、第2GaN層5a上に形成した窒化物系半導体層においてより良好な結晶性が得られるとともに、素子の分離工程等におけるクラックの発生を防止することができる。それにより、より良好な素子特性および高い信頼性を有する半導体素子が得られる。
【0113】なお、上記においては、選択成長マスクとしてSiO2膜15を用いているが、TiO2膜等の絶縁膜、またはW等の高融点金属からなる薄膜を選択成長マスクとして用いてもよい。
【0114】また、上記においては、GaNオフ基板26として選択成長により、転位を低減した基板を用いたが、転位の少ないバルクのGaN基板を研磨等によりオフ基板とし、これを基板として用いた場合においても、さらなる結晶性の向上が図れる。
【0115】加えて、第1の発明において、窒化物系半導体のオフ基板の裏面のサファイア等の基板は、オフ基板上に窒化物系半導体を形成する前に、除去してももちろんよく、同様の効果が得られる。
【0116】図4および図5は、第2の発明の一実施例における窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【0117】まず、図4(a)に示すように、C面を基板表面とするサファイア基板11の所定領域を、RIE法(反応性イオンエッチング法)等によりエッチングする。このようにして、所定の方向に延びる複数のストライプ状の凹部が形成されたサファイア基板11を作製する。
【0118】この場合、凹部の幅wは、数μm〜数十μmとするのが好ましく、凸部の幅bは数百nm〜数十μmとするのが好ましく、凹部の深さdは、数nm〜数μmとするのが好ましい。例えば、本例においては凹部の幅wを約29μmとし、凸部の幅bを2μmとし、凹部の深さdを約1μmとしている。
【0119】また、サファイア基板11のC面に対する凹部側面の角度は、特に限定されるものではない。例えば、本例においては凹部側面がサファイア基板11のC面に対してほぼ垂直である。
【0120】さらに、ストライプ状の凹部を形成する方向は、特に限定されるものではない。例えば、本例においては[1-100]方向にストライプ状の凹部を形成する。なお、これ以外に、例えば[11-20]方向にストライプ状の凹部を形成してもよい。
【0121】続いて、図4(b)に示すように、基板温度を600℃に保った状態でMOVPE法により、サファイア基板11の凸部上面、凹部底面および凹部側面に、アンドープのAlGaNからなる膜厚約15nmのAlGaNバッファ層12を成長させる。この場合、AlGaNバッファ層12は、サファイア基板11の凸部上面、凹部底面および凹部側面において、図中の矢印Yの方向(c軸方向)および矢印Xの方向(横方向)に成長する。このようにして形成されたAlGaNバッファ層12の表面には、サファイア基板11と同様の凹凸パターンが形成される。
【0122】続いて、図5(c)に示すように、基板温度を1150℃に保った状態でMOVPE法により、AlGaNバッファ層12上に、アンドープのGaNからなるGaN層13を成長させる。この場合、成長初期のGaN層13は、AlGaNバッファ層12の凸部上面、凹部底面および凹部側面において、図中の矢印Yの方向(c軸方向)に成長し、その後矢印Xの方向(横方向)にも成長する。このような成長初期のGaN層13の表面には、AlGaNバッファ層12と同様の凹凸パターンが形成される。
【0123】図5(d)に示すように、矢印Yの方向におけるGaN層13の成長が進むにつれて、矢印Xの方向におけるGaN層13の成長が支配的となる。この場合、凹部底面のGaN層13上において、凸部上面および凹部側面のGaN層13がさらに横方向に成長する。それにより、GaN層13の凹部が徐々に埋められていく。
【0124】ここで、上記のようなGaN層13が横方向に成長するため、サファイア基板11付近で発生したc軸方向に伝播した転位は、GaN層13の横方向成長に伴って、横方向(矢印Xの方向)すなわちサファイア基板11のC面に平行な方向に折れ曲がる。それにより、GaN層13において、c軸方向に伝播する転位が一様に低減される。さらに、中央部を除く凹部上に転位密度の特に低減された領域が形成される。なお、この場合においては、サファイア基板11の凹部上に形成されたGaN層13の中央部の領域において、転位が集中する部分が線状に発生し、比較的転位密度の高い領域が形成される。
【0125】図5(e)に示すように、平坦化するまでGaN層13を成長させ、膜厚10μmのGaN層13を形成する。このようにして形成したGaN層13の表面においては、転位が低減されており、良好な結晶性が得られる。また、このようなGaN層13においてはボイドが発生しにくい。
【0126】以上のような窒化物系半導体の形成方法によれば、ストライプ状の凹部が形成されたサファイア基板11を用いることにより、選択成長マスクを用いることなくGaN層13を横方向成長させ、転位を低減することが可能となる。したがって、良好な結晶性を有するGaN層13を形成することができる。
【0127】この場合、GaNを成長させる工程は、GaN層13を形成する際の1回のみである。このように、上記の窒化物系半導体の形成方法によれば、1回のGaNの成長により、転位が低減されたGaN層13が容易に得られる。
【0128】上記の窒化物系半導体の形成方法においては、選択成長マスクを用いないため、GaN層13において、選択成長マスクとGaNとの熱膨張係数の差によるクラックの発生を防止できる。また、GaN層13におけるボイドの発生を防止することができる。なお、ボイドが残っていてもよい。
【0129】以上のことから、GaN層13上に素子領域を含む窒化物系半導体層を形成して半導体素子を製造した場合、GaN層13上に形成した窒化物系半導体層において良好な結晶性が得られるとともに、素子の分離工程等におけるクラックの発生を防止することができる。それにより、良好な素子特性および高い信頼性を有する半導体素子が得られる。
【0130】なお、前述のように、GaN層13の転位は一様に低減されるが、サファイア基板11の凹部上のGaN層13の中央部の領域において、比較的転位密度の高い領域が形成される。このため半導体素子の製造の際には、サファイア基板11の凹部上の中央部を除く領域に素子領域を形成することが好ましい。さらに、中央部を除く凹部上に転位密度の特に低減された領域が形成されるため、サファイア基板11の凹部上の中央部を除く凹部上の領域に素子領域を形成することがさらに好ましい。
【0131】また、上記においてはサファイア基板11を用いているが、スピネル等の絶縁体の基板を用いてもよい。あるいはSi、Ge等のIV族半導体、SiC等のIV-IV族半導体あるいはZnSe等のII-VI族半導体からなる半導体基板や、半導体基板の格子定数が窒化物系半導体層の格子定数と異なる、GaAs、InP、GaP等のIII-V族半導体からなる半導体基板を用いてもよい。半導体基板としては、絶縁性、n型、p型のいずれの基板を用いてもよい。特に、Si、GaAsまたはSiCからなる基板は、GaNに比べてエッチングが容易である。したがって、Si、GaAsまたはSiCからなる基板を用いた場合、エッチングにより基板に容易にストライプ状の凹部を形成することができる。それにより、転位が低減されたGaN層13を容易に形成することが可能となる。
【0132】例えば、(0001)面を基板表面とするn型6H-SiC基板の表面の所定領域をRIE法等によりエッチングし、幅が約14μm、高さが約1μmでありかつ[11-20]方向に延びるストライプ状の凹部を形成する。それにより、表面にストライプ状の凹部を有するn型6H-SiC基板を作製する。あるいは、(111)面を基板表面とするn型Si基板の表面の所定領域をウエットエッチング等により除去し、幅が約22μm、高さが約2μmでありかつ[1-10]方向に延びるストライプ状の凹部を形成する。この場合、凹部側面は、(110)面および(001)面から構成される。それにより、表面にストライプ状凹部を有するn型Si基板を作製する。
【0133】さらに、上記においては基板上にストライプ状の凹凸パターンを形成しているが、基板上に形成する凹凸パターンは、ストライプ状以外であってもよい。
【0134】上記のようなストライプ状の凹部を有するn型6H-SiC基板またはn型Si基板上に、図4および図5に示す窒化物系半導体の形成方法によりAlGaNバッファ層12およびGaN層13を形成する場合、まず、基板温度1150℃に保った状態でMOVPE法により、基板上にn-Al0.09Ga0.91Nからなる膜厚約0.05μmの単結晶のAlGaNバッファ層12を形成する。さらに、基板温度を1150℃に保った状態でMOVPE法により、AlGaNバッファ層12上にn-GaNからなる膜厚約10μmのGaN層13を形成する。
【0135】以上のように、図4および図5に示す窒化物系半導体の形成方法においてn型6H-Si基板またはn型Si基板を用いた場合、サファイア基板11を用いた場合において前述した効果と同様の効果が得られる。
【0136】なお、Si、Ge等のIV族半導体、SiC等のIV-IV族半導体あるいはZnSe等のII-VI族半導体からなる半導体基板や、半導体基板の格子定数が窒化物系半導体層の格子定数と異なる、GaAs、InP、GaP等のIII-V族半導体からなる半導体基板の場合、上記のようにAlGaNバッファ層12として単結晶のバッファ層を形成してもよいが、例えば、約600℃で非単結晶のバッファ層を形成しても同様の効果がある。
【0137】さらに、凹凸の形状は上記の形状に限られるものではない。図6(a)は、図4および図5に示す窒化物系半導体の形成方法に用いる基板の他の例を示す模式的断面図である。
【0138】図6(a)に示すように、基板21においては、表面に鋸歯状の凹凸パターンが形成されている。例えば、鋸歯状の凹凸パターンを有するサファイアからなる基板21においては、凹部側面がR面すなわち(1-101)面と等価な面から構成される。
【0139】このような基板21を用いた場合においては、前述のストライプ状の凹凸パターンを有するサファイア基板11を用いた場合と同様の効果が得られる。なお、この場合において、基板21の凹部上に形成されたGaN層13の領域において、転位が集中する部分が線状に発生する。
【0140】また、円形、六角形、三角形等の形状を有する複数の凹部または凸部が分散配置された基板であってもよい。この場合について、以下に説明する。
【0141】図6(b)は、図4および図5に示す窒化物系半導体の形成方法に用いる基板のさらに他の例を示す平面図である。
【0142】図6(b)に示すように、基板31においては、表面に六角形の凹部または凸部が形成されている。
【0143】このような基板31を用いた場合においては、前述のストライプ状の凹凸パターンを有するサファイア基板11を用いた場合と同様に、GaN層の転位が一様に低減されるという効果が得られる。
【0144】さらに、六角形の凹部が形成された基板31を用いた場合においては、中央部を除く凹部上に転位密度の特に低減された領域が形成される。なお、この場合においては、基板31の六角形の凹部上に形成されたGaN層の中央部において、転位が集中する部分が発生し、比較的転位密度の高い領域が形成される。
【0145】一方、六角形の凸部が形成された基板31を用いた場合においては、凸部間の凹部上の中央部を除いて、凹部上に転位密度の特に低減された領域が形成される。なお、この場合においては、基板31の六角形の凸部の間の凹部上に形成されたGaN層の中心部の領域において、転位が集中する部分が線状に発生し、比較的転位密度の高い領域が形成される。
【0146】なお、前述のように、GaN層の転位は一様に低減されるが、基板31の六角形の凹部上に形成されたGaN層の中央部の領域または基板31の六角形の凸部間の凹部上に形成されたGaN層の中心部の領域において、比較的転位密度の高い領域が形成される。このため、半導体素子の製造の際には、基板31の六角形の凹部上の中央部を除く領域または基板31の六角形の凸部間の凹部上の中心部を除く領域に素子領域を形成することが好ましい。さらに、中央部を除く六角形の凹部上または六角形の凸部間の中心部を除く凹部上に転位密度の特に低減された領域が形成されるため、基板31の六角形の凹部上の中央部を除く凹部上の領域または基板31の六角形の凸部間の凹部上の中心部を除く凹部上の領域に素子領域を形成することがさらに好ましい。
【0147】また、基板31としては、サファイア基板を用いてもよいが、スピネル等の絶縁体の基板を用いてもよい。あるいはSi、Ge等のIV族半導体、SiC等のIV-IV族半導体あるいはZnSe等のII-VI族半導体からなる半導体基板や、半導体基板の格子定数が窒化物系半導体層の格子定数と異なる、GaAs、InP、GaP等のIII-V族半導体からなる半導体基板を用いてもよい。半導体基板としては、絶縁性、n型、p型のいずれの基板を用いてもよい。特に、Si、GaAsまたはSiCからなる基板は、GaNに比べてエッチングが容易である。したがって、Si、GaAsまたはSiCからなる基板を用いた場合、エッチングにより基板に容易にストライプ状の凹部を形成することができる。それにより、転位が低減されたGaN層13を容易に形成することが可能となる。
【0148】なお、円形、三角形等の六角形以外の凹部または凸部が形成された基板を用いた場合においても、六角形の凹部または凸部を有する基板31を用いた場合と同様に、転位の集中する部分がGaN層において発生する。
【0149】なお、図6(b)に示すような六角形の凹凸パターンを有する基板31を作製する場合、あるいは三角形の凹凸パターンを有する基板を作製する場合において、六角形または三角形の各辺を形成する方向は、基板のいかなる結晶方位と一致してもよい。
【0150】なお、(0001)面を基板表面とするサファイア基板またはSiC基板に六角形または三角形の凹凸パターンを形成する場合、各辺が[1-100]方向または[11-20]方向と等価な方向に一致するように六角形または三角形の凹凸パターンを形成することが好ましい。一方、(111)面を基板表面とするSi基板に六角形または三角形の凹凸パターンを形成する場合、各辺が[1-10]方向または[11-2]方向と等価な方向に一致するように六角形または三角形の凹凸パターンを形成することが好ましい。
【0151】図7および図8は、第2の発明の参考例を示す窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【0152】図7(a)に示すように、サファイア基板41のC面から所定の方向に所定の角度傾斜したオフ面を、RIE法等によりエッチングする。それにより、サファイア基板41のオフ面に所定の方向にストライプ状に延びる階段状の段差を形成する。この場合、サファイア基板41の段差の底面においては、C面が露出している。
【0153】エッチングにより形成された段差は、サファイア基板41のオフ面に本来的に存在する原子オーダの段差に比べて大きなサイズを有する。サファイア基板41において、段差の底面の幅は数μm〜数十μmとすることが好ましく、段差の高さは数nm〜数μmとすることが好ましい。例えば、本例においては段差の底面の幅を約29μmとし、段差の高さを約1μmとする。
【0154】また、段差を形成する方向は、特に限定されるものではない。例えば、本例においては、C面から[11-20]方向に2°傾斜したサファイア基板のオフ面をエッチングすることにより、[1-100]方向にストライプ状に延びる階段状の段差を形成する。なお、これ以外に、例えば[11-20]方向にストライプ状に延びる階段状の段差を形成してもよい。
【0155】図7(b)に示すように、サファイア基板41の段差の底面および側面に、基板温度を600℃に保った状態でMOVPE法により、アンドープのAlGaNからなる膜厚15nmのAlGaNバッファ層42を形成する。この場合、AlGaNバッファ層42は、サファイア基板41の段差の底面および側面において、図中の矢印Yの方向(c軸方向)および矢印Xの方向(横方向)に成長する。このようにして成長したAlGaNバッファ層42の表面は、サファイア基板41と同様のストライプ状に延びる階段状の段差を有する。
【0156】続いて、図7(c)に示すように、基板温度1150℃に保った状態でMOVPE法により、AlGaNバッファ層42の段差の底面および側面に、アンドープのGaNからなるGaN層43を成長させる。この場合、成長初期のGaN層43は、AlGaNバッファ層42の段差の底面および側面において、矢印Yの方向に成長し、その後矢印Xの方向にも成長する。このような成長初期のGaN層43の表面は、AlGaNバッファ層42と同様のストライプ状に延びる階段状の段差を有する。
【0157】図8(d)に示すように、図中の矢印Yの方向におけるGaN層43の成長が進むにつれて、矢印Xの方向におけるGaN層43の成長が支配的となる。この場合、段差の各段の底面のGaN層43上において、上段の底面および上段の側面のGaN層43が横方向成長する。それにより、GaN層43の表面の段差は徐々に埋められていく。なお、このようなGaN層43の成長においては、ボイドが発生しにくい。なお、ボイドが残っていてもよい。
【0158】ここで、上記のGaN層43が横方向に成長するため、サファイア基板41付近で発生したc軸方向に伝播した転位は、GaN層43の横方向成長に伴って、横方向(矢印Xの方向)すなわちGaN層43の(0001)面に平行な方向に折れ曲がる。それにより、GaN層43において、c軸方向に伝播する転位が低減される。
【0159】図8(e)に示すように、さらにGaN層43の成長が進むと、GaN層43の表面が平坦化される。このようにして形成されたGaN層43の表面においては、転位が低減され、良好な結晶性が得られる。
【0160】以上のような窒化物系半導体の形成方法によれば、サファイア基板41に形成した階段状の段差を利用することにより、選択成長マスクを用いることなくGaN層43を横方向成長させ、転位を低減することが可能となる。したがって、良好な結晶性を有するGaN層43を形成することができる。
【0161】上記の窒化物系半導体の形成方法においては、選択成長マスクを用いないため、GaN層43において、選択成長マスクとGaNとの熱膨張係数の差によるクラックの発生を防止することができる。また、場合によってはボイドの発生を防止することも可能である。
【0162】以上のことから、GaN層43上に素子領域を含む窒化物系半導体層を形成して半導体素子を製造した場合、GaN層43上に形成した窒化物系半導体層において良好な結晶性が得られるとともに、素子の分離工程等におけるクラックの発生を防止することができる。それにより、良好な素子特性および高い信頼性を有する半導体素子が得られる。
【0163】なお、上記においては、サファイア基板41を用いているが、スピネル等の絶縁体の基板を用いてもよい。あるいはSi、Ge等のIV族半導体、SiC等のIV-IV族半導体あるいはZnSe等のII-VI族半導体からなる半導体基板や、半導体基板の格子定数が窒化物系半導体層の格子定数と異なる、GaAs、InP、GaP等のIII-V族半導体からなる半導体基板を用いてもよい。半導体基板としては、絶縁性、n型、p型のいずれの基板を用いてもよい。特にSi、GaAs、SiCからなる基板は、GaNに比べて容易にエッチングされる。したがって、上記のような階段状の段差を有する基板を容易に作製することができる。
【0164】例えば、n型6H-SiC基板の(0001)面から[1-100]方向に4°傾斜したオフ面をRIE法によりエッチングする。このようにして、n型6H-SiC基板のオフ面に、底面の幅が約14μmであり段差の高さが約1μmでありかつ[11-20]方向にストライプ状に延びる階段状の段差を形成してもよい。あるいは、[11-00]方向にストライプ状に延びる階段状の段差をn型6H-SiC基板に形成してもよい。
【0165】さらに、n型Si基板の(111)面から[11-2]方向に5°傾斜したオフ面をウェットエッチングする。このようにして、n型SiC基板のオフ面に、底面の幅が約22μmであり段差の高さが約2μmでありかつ[1-10]方向にストライプ状に延びる階段状の段差を形成してもよい。あるいは、[11-2]方向にストライプ状に延びる階段状の段差をn型Si基板に形成してもよい。
【0166】上記のようなストライプ状の凹部を有するn型6H-SiC基板またはn型Si基板上に、図7および図8に示す窒化物系半導体の形成方法によりAlGaNバッファ層42およびGaN層43を形成する場合、まず、基板温度1150℃に保った状態でMOVPE法により、基板上にn-Al0.09Ga0.91Nからなる膜厚約0.05μmのAlGaNバッファ層42を形成する。さらに、基板温度を1150℃に保った状態でMOVPE法により、AlGaNバッファ層42上にn-GaNからなる膜厚約10μmのGaN層43を形成する。
【0167】このようにn型6H-SiC基板またはn型SiC基板を図7および図8に示す窒化物系半導体の形成方法に用いた場合、サファイア基板41を用いた場合において前述した効果と同様の効果が得られる。
【0168】図9は第3の発明の一実施例における窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【0169】図9(a)に示すように、サファイア基板51のC面上に、基板温度を600℃に保った状態でMOVPE法により、アンドープのAlGaNからなる膜厚15nmのAlGaNバッファ層52を形成する。
【0170】続いて、図9(b)に示すように、AlGaNバッファ層52の所定領域をRIE法等によりエッチングする。AlGaNバッファ層52をエッチングする幅w[μm]は1〜40μm程度が好ましく、エッチングをぜすに残すAlGaNバッファ層52の幅b[μm]は1〜40μm程度が好ましい。例えば、本実施例においてはw[μm]=8μm、b[μm]=4μmとする。それにより、所定間隔で複数のストライプ状のAlGaNバッファ層52aを形成するとともに、AlGaNバッファ層52aの間にサファイア基板51を露出させる。
【0171】ここで、特に図10に示すように、エッチングするAlGaNバッファ層52の幅wおよび残すAlGaNバッファ層52の幅b[μm]はb[μm]≦-w[μm]+40[μm]とb[μm]≧1[μm]とw[μm]≧1[μm]とで囲まれた範囲内の値であることが好ましい。エッチングするAlGaNバッファ層52の幅w[μm]が1μmより小さい場合および残すAlGaNバッファ層52の幅b[μm]が1μmより小さい場合においては、エッチングによるAlGaNバッファ層52のパターニングが困難となる。一方、エッチングするAlGaNバッファ層52の幅w[μm]および残すAlGaNバッファ層52の幅b[μm]がb[μm]>-w[μm]+40[μm]の関係を満足する場合においては、パターニングにより形成されたAlGaNバッファ層52a上に成長させる後述のGaN層53の平坦化が困難となる傾向にある。
【0172】上記のようにAlGaNバッファ層52aを形成した後、図9(c)に示すように、基板温度を1150℃に保った状態でMOVPE法により、アンドープのGaNからなるGaN層53を成長させる。ここで、GaNとサファイア基板51とでは格子定数が異なるため、AlGaNバッファ層52aを介さなければ、GaNはサファイア基板51上に成長しにくい。したがって、成長初期において、GaN層53はAlGaNバッファ層52a上に選択的に成長する。この場合、GaN層53は図中の矢印Yの方向(c軸方向)に成長し、ファセット構造となる。この部分には、サファイア基板51の付近で発生した転位が多数存在する。
【0173】図9(d)に示すように、矢印Yの方向のGaN層53の成長が進むにつれて、AlGaNバッファ層52a上に成長したGaN層53は、矢印Xの方向(横方向)にも成長する。それにより、AlGaNバッファ層52aの間で露出したサファイア基板51上に、GaN層53が形成される。
【0174】ここで、上記のようなGaN層53が横方向に成長するため、図9(c)のAlGaNバッファ層52a上に発生したGaN層53中の転位は、GaN層53の横方向に伴って、横方向(矢印Xの方向)すなわちGaN層53の(0001)面に平行な方向に折れ曲がる。それにより、GaN層53において、c軸方向に伝播する転位が一様に低減される。さらに、露出したサファイア基板51上に形成されたGaN層53の中央部を除く領域において転位密度の特に低減された領域が形成される。なお、この場合においては、露出したサファイア基板51上に形成されたGaN層53の中央部の領域において、転位が集中する部分が線状に発生し、比較的転位密度の高い領域が形成される。
【0175】図9(e)に示すように、GaN層53がさらに成長すると、ファセット構造の各GaN層53が合体して連続膜となり、平坦化された膜厚約10μmのGaN層53が形成される。このようにして形成されたGaN層53の表面においては、転位が低減されており、良好な結晶性が得られる。また、この場合においては、横方向から成長してきたGaN層53の合体部においてボイドが発生しにくい。なお、ボイドが残っていてもよい。
【0176】以上のような窒化物系半導体の形成方法によれば、サファイア基板51上に形成した複数のストライプ状のAlGaNバッファ層52aを用いることにより、選択成長マスクを用いることなくGaN層53を横方向成長させ、転位を低減することが可能となる。したがって、良好な結晶性を有するGaN層53を形成することができる。
【0177】この場合、AlGaNバッファ層52は低温で成長するため非単結晶である。したがって、AlGaNバッファ層52は、GaNに比べて容易にエッチングできる。また、上記の窒化物系半導体の形成方法においては、GaNを成長させる工程はGaN層53を形成する際の1回のみである。したがって、上記の窒化物系半導体の形成方法によれば、転位が低減されたGaN層53を容易に形成することができる。
【0178】また、上記の窒化物系半導体の形成方法においては、選択成長マスクを用いないため、GaN層53において、選択成長マスクとGaNとの熱膨張係数の差によるクラックの発生を防止することができるとともに、ボイドの発生を防止することができる。なお、ボイドが残っていてもよい。
【0179】以上のことから、GaN層53上に素子領域を含む窒化物系半導体層を形成して半導体素子を製造した場合、GaN層53上に形成した窒化物系半導体層において良好な結晶性が得られるとともに、素子の分離工程等におけるクラックの発生を防止することができる。それにより、良好な素子特性および高い信頼性を有する半導体素子が得られる。
【0180】なお、前述のように、GaN層53の転位は一様に低減されるが、サファイア基板51の露出した領域上のGaN層53の中央部の領域において、比較的転位密度の高い領域が形成される。このため半導体素子の製造の際には、サファイア基板51の露出した領域上の中央部を除く領域に素子領域を形成することが好ましい。さらに、サファイア基板51の露出した領域のうち中央部を除く領域上に転位密度の特に低減された領域が形成されるため、サファイア基板11の露出した領域上の領域のうち中央部を除く領域に素子領域を形成することがさらに好ましい。
【0181】また、上記においてはサファイア基板51を用いているが、スピネル等の絶縁体の基板を用いてもよい。あるいはSi、Ge等のIV族半導体、SiC等のIV-IV族半導体あるいはZnSe等のII-VI族半導体からなる半導体基板や、半導体基板の格子定数が窒化物系半導体層の格子定数と異なる、GaAs、InP、GaP等のIII-V族半導体からなる半導体基板を用いてもよい。半導体基板としては、絶縁性、n型、p型のいずれの基板を用いてもよい。
【0182】例えば、SiC基板またはSi基板を図9に示す窒化物系半導体の形成方法に用いた場合、基板温度1150℃に保った状態でMOVPE法により、SiC基板またはSi基板上にn-Al0.09Ga0.91Nからなる膜厚約0.05μmのAlGaNバッファ層52を形成する。続いて、サファイア基板51を用いた場合と同様の方法によりAlGaNバッファ層52をエッチングし、複数のストライプ状のAlGaNバッファ層52aを形成する。そして、基板温度を1150℃に保った状態でMOVPE法により、n-GaN層からなるGaN層53をAlGaNバッファ層52a上に成長させるとともに、GaN層53を横方向成長させて露出したSiC基板またはSi基板上にGaN層53を成長させる。このようにして、平坦化された膜厚約10μmのGaN層53を形成する。
【0183】このようにSiC基板またはSi基板を図9に示す窒化物系半導体の形成方法に用いた場合、サファイア基板51を用いた場合において前述した効果と同様の効果が得られる。
【0184】なお、Si、Ge等のIV族半導体、SiC等のIV-IV族半導体あるいはZnSe等のII-VI族半導体からなる半導体基板や、半導体基板の格子定数が窒化物系半導体層の格子定数と異なる、GaAs、InP、GaP等のIII-V族半導体からなる半導体基板の場合、上記のようにAlGaNバッファ層52として単結晶のバッファ層を形成してもよいが、例えば、約600℃で非単結晶のバッファ層を形成しても同様の効果がある。
【0185】また、上記においては基板上に所定間隔で複数のストライプ状のAlGaNバッファ層52aを形成しているが、基板上に形成するAlGaNバッファ層52aのパターンは、ストライプ状に限定されるものではない。
【0186】例えば、基板上に、円形、六角形、三角形等の形状を有する複数のAlGaNバッファ層52aを形成してもよい。それにより、GaN層53において、c軸方向に伝播する転位が一様に低減される。さらに、AlGaNバッファ層52a間の露出した基板上の中央部を除いて、露出した基板上に転位密度の特に低減された領域が形成される。なお、この場合、AlGaNバッファ層52a間の露出した基板上の中央部上に形成されたGaN層53の領域において、転位が集中する部分が線状に発生し、比較的転位密度の高い領域が形成される。
【0187】なお、前述のように、GaN層53の転位は一様に低減されるが、AlGaNバッファ層52a間の露出した基板上の中央部上に形成されたGaN層53の領域において、比較的転位密度の高い領域が形成される。このため、半導体素子製造の際には、AlGaNバッファ層52a間の露出した基板上の中央部を除く領域に素子領域を形成することが好ましい。さらに、AlGaNバッファ層52a間の露出した基板上の中央部を除いて、露出した基板上に転位密度の特に低減された領域が形成されるため、AlGaNバッファ層52a間の露出した基板上の中央部を除いた、露出した基板上の領域に素子領域を形成することが好ましい。
【0188】あるいは、基板上に形成したAlGaNバッファ層52において、円形、六角形、三角形等の形状を有する複数の領域をエッチングにより除去し、円形、六角形、三角形等の形状を有する複数の開口部をAlGaNバッファ層52に形成してもよい。なお、この場合、円形、六角形、三角形等の形状を有する複数の開口部内で露出した基板の中央部上に形成したGaN層53の領域において、転位が集中する部分が発生し、比較的転位密度の高い領域が形成される。
【0189】なお、前述のように、GaN層53の転位は一様に低減されるが、基板の露出した領域上のGaN層53の中央部の領域において、比較的転位密度の高い領域が形成される。このため半導体素子の製造の際には、基板の露出した領域上の中央部を除く領域に素子領域を形成することが好ましい。
さらに、基板の露出した領域のうち中央部を除く領域上に転位密度の特に低減された領域が形成されるため、基板の露出した領域上の領域のうち中央部を除く領域に素子領域を形成することがさらに好ましい。
【0190】また、基板としてサファイア基板を用いることができるが、スピネル等の絶縁体の基板を用いてもよい。あるいはSi、Ge等のIV族半導体、SiC等のIV-IV族半導体あるいはZnSe等のII-VI族半導体からなる半導体基板や、半導体基板の格子定数が窒化物系半導体層の格子定数と異なる、GaAs、InP、GaP等のIII-V族半導体からなる半導体基板を用いてもよい。半導体基板としては、絶縁性、n型、p型のいずれの基板を用いてもよい。
【0191】続いて、第1〜第3の発明に係る窒化物系半導体の形成方法を用いて製造した半導体素子について説明する。なお、この場合においては、半導体素子の例として半導体レーザ素子について説明する。
【0192】第4の発明に係る半導体レーザ素子は、第1の発明に係る窒化物系半導体の形成方法を用いて製造した半導体レーザ素子である。
【0193】図11は第4の発明の一実施例における半導体レーザ素子を示す模式的斜視図である。
【0194】図11に示すように、半導体レーザ素子500においては、図1および図2に示す窒化物系半導体の形成方法により、サファイア基板1上にAlGaN第1バッファ層2、アンドープのGaNからなるGaN第2バッファ層3、アンドープのGaNからなる第1GaN層4およびアンドープのGaNからなる第2GaN層5が順に形成されている。
【0195】さらに、MOVPE法、HVPE法、またはトリメチルアルミニウム、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、NH3、SiH4(シランガス)、CpMg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を原料ガスとして用いるガスソースMBE法等により、第2GaN層5上に、n-GaNからなる膜厚4μmのn-GaNコンタクト層104、n-AlGaInNからなる膜厚約0.1μmのn-AlGaInNクラック防止層105、n-AlGaNからなる膜厚0.45μmのn-AlGaN第2クラッド層106、n-GaNからなる膜厚約50nmのn-GaN第1クラッド層107、InGaNからなる多重量子井戸(MQW)発光層108、p-GaNからなる膜厚約40nmのp-GaN第1クラッド層109が順に積層されている。p-GaN第1クラッド層109上のストライプ状の領域にp-AlGaNからなる膜厚0.45μmのp-AlGaN第2クラッド層110が形成されている。それにより、p-AlGaN第2クラッド層110からなるリッジ部が形成されるとともに、p-GaN第1クラッド層109からなる平坦部が形成される。
【0196】なお、リッジの延伸する方向は、第1GaN層4のオフ方向と垂直方向に形成することが好ましい。
【0197】なお、この場合のMQW発光層108は、膜厚約4nmの5つのアンドープGaN障壁層と膜厚約4nmの4つの圧縮歪みのアンドープInGaN井戸層とが交互に積層された多重量子井戸構造を有する。
【0198】p-GaN第1クラッド層109上およびp-AlGaN第2クラッド層110の側面に、n-GaNからなる膜厚約0.2μmのn-GaN電流狭窄層111が形成されている。この場合、p-AlGaN第2クラッド層110の上面にn-GaN電流狭窄層111のストライプ状の開口部が形成されている。n-GaN電流狭窄層111の上面および側面、ならびにp-AlGaN第2クラッド層110上に、p-GaNからなる膜厚3〜5μmのp-GaNコンタクト層112が形成されている。
【0199】p-GaNコンタクト層112からn-GaNコンタクト層104までの一部領域がエッチングされ、n-GaNコンタクト層104の所定領域が露出している。この露出したn-GaNコンタクト層4の所定領域上にn電極113が形成されている。また、p-GaNコンタクト層112上の所定領域にp電極114が形成されている。なお、露出したp-GaNコンタクト層112からn-GaN第1コンタクト層104までの側面およびn-GaNコンタクト層104の上面に、SiO2膜115が形成されている。
【0200】上記の半導体レーザ素子500においては、図1および図2に示す窒化物系半導体の形成方法により形成された第2GaN層5上に、各層104〜112が形成されている。ここで、図1および図2において前述したように、第2GaN層5の表面においては転位が低減されているため、第2GaN層5上に形成された各層104〜115においては、良好な結晶性が実現される。それにより、半導体レーザ素子500は、良好な素子特性を有するとともに高い信頼性を有する。
【0201】また、この場合においては、前述のように選択成長マスクを用いることなく第2GaN層5において転位の低減を図ることができるため、第2GaN層5において、選択成長マスクとGaNとの熱膨張係数の差によるクラックの発生が防止されるとともに、ボイドの発生が防止される。
【0202】したがって、半導体レーザ素子500の製造時において、素子の分離工程等におけるクラックの発生が防止される。それにより、高い歩留りが実現できる。
【0203】なお、上記において、サファイア基板1の代わりに、サファイア以外の絶縁体からなる基板を用いてもよい。
【0204】図12は第4の発明の他の実施例における半導体レーザ素子を示す模式的斜視図である。
【0205】図12に示すように、半導体レーザ素子501は、以下の点を除いて、図11の半導体レーザ素子500と同様の構造を有する。
【0206】この場合においては、サファイア基板1に代えて、n-Si基板1A上に、図1および図2に示す窒化物系半導体の形成方法により、n-AlGaNからなるAlGaN第1バッファ層2、n-GaNからなるGaN第2バッファ層3、n-GaNからなる第1GaN層4およびn-GaNからなる第2GaN層5が順に形成されている。
【0207】また、この場合においては、p-GaNコンタクト層112がn-GaN電流狭窄層111およびp-AlGaN第2クラッド層110上に形成されている。n-Si基板1Aの裏面にn電極113が形成され、p-GaNコンタクト層112のリッジ部の上面にp電極114が形成されている。
【0208】このような半導体レーザ素子501においては、図1および図2に示す窒化物系半導体の形成方法により形成された第2GaN層5において、転位の低減が図られるとともに、クラックの発生およびボイドの発生が防止される。このため、半導体レーザ素子501においては、半導体レーザ素子500において前述した効果と同様の効果が得られる。
【0209】なお、上記において、n-Si基板1Aの代わりに、Si以外の半導体からなる基板を用いてもよい。
【0210】さらに、半導体レーザ素子500,501においては、基板1,1A上にn型半導体層およびp型半導体層が順に形成されているが、基板1,1A上にp型半導体層およびn型半導体層を順に形成してもよい。
【0211】さらに、半導体レーザ素子500,501においては、図1および図2に示す窒化物系半導体の形成方法により基板1,1A上に各層2〜5を形成しているが、図3に示す窒化物系半導体の形成方法により基板1,1A上に各層2,3,4a,5aを形成してもよい。この場合、製造された半導体レーザ素子においては、半導体レーザ素子500,501において前述した効果と同様の効果が得られる。
【0212】ここで、図3に示す窒化物系半導体の形成方法により形成された図3の第2GaN層5aにおいては、SiO2膜15を用いた図3の第1GaN層4aの選択横方向成長により、さらに転位の低減が図られている。したがって、このような図3の第2GaN層5a上に形成された図11または図12の各層104〜112においては、より結晶性の向上が図られる。それにより、この場合の半導体レーザ素子においては、さらに素子特性および信頼性の向上が図られる。
【0213】第5の発明に係る半導体レーザ素子は、第2の発明に係る窒化物系半導体の形成方法を用いて製造された半導体レーザ素子である。この場合について以下に説明する。
【0214】第5の発明の一実施例における半導体レーザ素子は、以下の点を除いて、図11の半導体レーザ素子500と同様の構造を有する。
【0215】この場合、図4および図5に示す窒化物系半導体の形成方法により、図4および図5に示すように、サファイア基板11上に、アンドープのAlGaNからなるAlGaNバッファ層12およびアンドープのGaNからなるGaN層13が順に形成されている。このGaN層13上に、図11の各層104〜112が形成されている。なお、サファイア基板11の代わりに、サファイア以外の絶縁体からなる基板を用いてもよい。
【0216】本例の半導体レーザ素子において、図4および図5に示す窒化物系半導体の形成方法により形成された図5のGaN層13は、転位の低減が図られておりかつクラックの発生およびボイドの発生が防止されている。このため、図5のGaN層13上に図11の各層104〜112が形成された本例の半導体素子においては、半導体レーザ素子500において前述した効果と同様の効果が得られる。なお、ボイドが残っていてもよい。
【0217】ここで、本例においては、図4および図5に示すように、AlGaNバッファ層12上に1回GaNを成長させることにより、転位の低減されたGaN層13が形成される。したがって、本例の半導体レーザ素子は製造が容易である。
【0218】第5の発明の他の実施例における半導体レーザ素子は、以下の点を除いて、図12の半導体レーザ素子501と同様の構造を有する。
【0219】この場合、図4および図5に示す窒化物系半導体の形成方法により、n-Si基板上に、図4および図5に示すように、n-AlGaNからなるAlGaNバッファ層12およびn-GaNからなるGaN層13が形成されている。この図5のGaN層13上に図12の各層105〜112が形成されている。なお、n-Si基板の代わりに、Si以外の半導体からなる基板を用いてもよい。
【0220】本例の半導体レーザ素子において、図4および図5に示す窒化物系半導体の形成方法により形成された図5のGaN層13は、転位の低減が図られておりかつクラックの発生およびボイドの発生が防止されている。このため、図5のGaN層13上に図12の各層105〜112が形成された本例の半導体レーザ素子においては、半導体レーザ素子501において前述した効果と同様の効果が得られる。なお、ボイドが残っていてもよい。
【0221】ここで、本例においては、図4および図5に示すように、AlGaNバッファ層12上に1回GaNを成長させることにより、転位の低減されたGaN層13が形成される。したがって、本例の半導体レーザ素子は製造が容易である。
【0222】特に、本例においては、エッチングの容易なn-Si基板が用いられているため、図4に示すような凹部をエッチングにより容易に形成することができる。したがって、本例の半導体レーザ素子は、より製造が容易である。
【0223】上記の第5の発明の2つの実施例における半導体レーザ素子においては、図4および図5で前述したように、転位が一様に低減されるので、基板上の窒化物系半導体層のいかなる部分に素子領域(発光部)を形成しても前述した効果が得られる。しかしながら、基板の凹部上の窒化物系半導体層の中央部の領域において、比較的転位密度の高い領域が形成される。このため、半導体レーザ素子において、基板の凹部上の中央部を除く領域に素子領域(発光部)を形成することが好ましい。さらに、中央部を除く凹部上に転位密度の特に低減された領域が形成されるため、基板の凹部上の中央部を除いた、凹部上の領域に素子領域(発光部)を形成することが好ましい。
【0224】また、上記の第5の発明のさらに他の実施例における半導体レーザ素子として、図7および図8に示す窒化物系半導体の形成方法により、図7および図8に示すように基板上にAlGaNバッファ層42およびGaN層43が順に形成され、この図8のGaN層43上に図11または図12の各層104〜112が形成された半導体レーザ素子であってもよい。このような半導体レーザ素子においても、図4および図5に示す窒化物系半導体の形成方法により図4および図5に示すAlGaNバッファ層12およびGaN層13が形成された上記の2つの実施例の半導体レーザ素子において前述した効果と同様の効果が得られる。
【0225】第6の発明に係る半導体レーザ素子は、第3の発明に係る窒化物系半導体の形成方法を用いて製造した半導体レーザ素子である。この場合について以下に説明する。
【0226】第6の発明の一実施例における半導体レーザ素子は、以下の点を除いて、図11の半導体レーザ素子500と同様の構造を有する。
【0227】この場合、図9に示す窒化物系半導体の形成方法により、図9に示すように、サファイア基板51上に、アンドープのAlGaNからなる複数のストライプ状のAlGaNバッファ層52aが形成されている。さらに、AlGaNバッファ層52a上およびAlGaNバッファ層52aの間で露出したサファイア基板51上に、アンドープのGaNからなるGaN層53が形成されている。この図9のGaN層53上に、図10の各層104〜112が形成されている。なお、サファイア基板51の代わりに、サファイア以外の絶縁体からなる基板を用いてもよい。
【0228】本例の半導体レーザ素子において、図9に示す窒化物系半導体の形成方法により形成された図9のGaN層53は、転位の低減が図られるとともにクラックの発生およびボイドの発生が防止されている。このため、図9のGaN層53上に図11の各層104〜112が形成された本例の半導体レーザ素子においては、半導体レーザ素子500において前述した効果と同様の効果が得られる。なお、ボイドが残っていてもよい。
【0229】ここで、本例においては、図9に示すように、AlGaNバッファ層52a上に1回GaNを成長させることにより、転位の低減されたGaN層53が得られる。また、本例においては、低温で成長させたAlGaNバッファ層52のエッチングが容易であることから、複数のストライプ状のAlGaNバッファ層52aを容易に形成することができる。したがって、本例の半導体レーザ素子は、製造が容易である。
【0230】第6の発明の他の実施例における半導体レーザ素子は、以下の点を除いて、図12の半導体レーザ素子501と同様の構造を有する。
【0231】この場合、図9に示す窒化物系半導体の形成方法により、図9に示すように、n-Si基板上に、n-AlGaNからなる複数のストライプ状のAlGaNバッファ層52aが形成されている。さらに、AlGaNバッファ層52a上およびAlGaNバッファ層52aの間で露出したn-Si基板上に、n-GaNからなるGaN層53が形成されている。この図9のGaN層53上に、図12の各層105〜112が形成されている。なお、Si基板の代わりに、Si以外の半導体からなる基板を用いてもよい。
【0232】本例の半導体レーザ素子において、図9に示す窒化物系半導体の形成方法により形成された図9のGaN層53は、転位の低減が図られるとともにクラックの発生およびボイドの発生が防止されている。このため、図9のGaN層53上に図12の各層105〜112が形成された本例の半導体レーザ素子においては、半導体レーザ素子501において前述した効果と同様の効果が得られる。なお、ボイドが残っていてもよい。
【0233】ここで、本例においては、図9に示すように、AlGaNバッファ層52a上に1回GaNを成長させることにより、転位の低減されたGaN層53が得られる。また、本例においては、低温で成長させたAlGaNバッファ層52のエッチングが容易であることから、複数のストライプ状のAlGaNバッファ層52aを容易に形成することができる。したがって、本例の半導体レーザ素子は、製造が容易である。
【0234】上記の第6の発明の2つの実施例における半導体レーザ素子においては、図9で前述したように、転位は一様に低減されるので、基板上の窒化物系半導体層のいかなる部分に素子領域(発光部)を形成しても前述した効果が得られる。しかしながら、基板の露出した領域上の窒化物系半導体層の中央部の領域において、比較的転位密度の高い領域が形成される。このため、半導体レーザ素子において、基板の露出した領域上の中央部を除く領域に素子領域(発光部)を形成することが好ましい。さらに、中央部を除く基板の露出した領域上に転位密度の特に低減された領域が形成されるため、基板の露出した領域上の中央部を除いた、基板の露出した領域上の領域に素子領域(発光部)を形成することが好ましい。
【0235】上記においては、第1〜第3の発明に係る窒化物系半導体の形成方法を用いて製造した半導体レーザ素子について説明したが、第1〜第3の発明に係る窒化物系半導体の形成方法は、半導体レーザ素子以外の半導体素子、例えば発光ダイオード等の半導体発素子、フォトダイオード等の受光素子、トランジスタ等の電子素子の製造に適用することも可能である。
【0236】第1〜第6の発明において、各層は、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、InN(窒化インジウム)、BN(窒化ホウ素)もしくはTlN(窒化タリウム)またはこれらの混晶等のIII-V族窒化物系半導体およびこれら混晶にAs、PおよびSbのうち少なくとも1つの元素を含む混晶等のIII-V族窒化物系半導体から構成されていればよい。
【0237】また、第2、3、5および6の発明において、半導体の結晶構造はウルツ鉱型であってもよく、あるいは閃亜鉛鉱型であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明の一実施例における窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【図2】第1の発明の一実施例における窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【図3】第1の発明の他の実施例における窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【図4】第2の発明の一実施例における窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【図5】第2の発明の一実施例における窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【図6】図4および図5に示す窒化物系半導体の形成方法に用いる基板の他の例を示す図である。
【図7】第2の発明の参考例における窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【図8】第2の発明の参考例における窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【図9】第3の発明の一実施例における窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【図10】図9の実施例におけるエッチングするバッファ層の幅wと残すバッファ層の幅bとの好ましい範囲を示す図である。
【図11】第4の発明の一実施例における半導体レーザ素子を示す模式的斜視図である。
【図12】第4の発明の他の実施例における半導体レーザ素子を示す模式的斜視図である。
【図13】従来の選択横方向成長を用いた窒化物系半導体の形成方法を示す模式的工程断面図である。
【符号の説明】
1,11,21,31,51,201 サファイア基板
2,12,42,52,52a AlGaNバッファ層
4,4a 第1GaN層
5,5a 第2GaN層
13,43,53 GaN層
104 n-GaNコンタクト層
105 n-AlGaInNクラック防止層
106 n-AlGaN第2クラッド層
107 n-GaN第1クラッド層
108 MQW発光層
109 p-GaN第1クラッド層
110 p-AlGaN第2クラッド層
111 n-GaN電流狭窄層
112 p-GaNコンタクト層
500,501 半導体レーザ素子
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-08-04 
出願番号 特願2000-288155(P2000-288155)
審決分類 P 1 652・ 113- YA (H01L)
P 1 652・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加藤 浩一  
特許庁審判長 池田 正人
特許庁審判官 瀬良 聡機
大嶋 洋一
登録日 2003-05-09 
登録番号 特許第3427047号(P3427047)
権利者 三洋電機株式会社
発明の名称 窒化物系半導体素子、窒化物系半導体の形成方法および窒化物系半導体素子の製造方法  
代理人 寺山 啓進  
代理人 寺山 啓進  

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