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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1125845
異議申立番号 異議2003-72259  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-07-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-10 
確定日 2005-08-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3384899号「気相成長方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3384899号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
特許3384899号の請求項1〜3に係る発明は、平成7年1月6日に特許出願され、平成14年12月27日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許の請求項1〜3に係る発明について、本田 弘子(以下、「異議申立人」という。)より特許異議の申立てがなされた。
そして、平成17年4月7日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年6月17日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1)訂正事項a
請求項1中の「反応ガスが導びかれる反応炉」を、「反応ガスが導かれる反応炉」と訂正する。
(2)訂正事項b
請求項1中の「前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記基板の裏面の前記座グリ面に接触しない範囲のみに設けて」を、「前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記座グリ面に接触する範囲を除いて、前記基板の裏面全面に設けて」と訂正する。
(3)訂正事項c
請求項2中の「反応ガスが導びかれる反応炉」を、「反応ガスが導かれる反応炉」と訂正する。
(4)訂正事項d
請求項2中の「前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記基板の裏面の前記座グリ面に接触しない範囲のみに設けると共に」を、「前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記座グリ面に接触する範囲を除いて、前記基板の裏面全面に設けると共に、」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項a,cは、「導びかれる」という記載の送りがなを正しく、「導かれる」としたもので、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。
また、訂正事項bは、請求項1において、酸化膜あるいは窒化膜の設ける範囲を、「前記基板の裏面の前記座グリ面に接触しない範囲のみ」とあるのを、「前記座グリ面に接触する範囲を除いて、前記基板の裏面全面に設けて」と特定するものであり、その点は、願書に添付された明細書の【0003】に、前提となる従来技術の記載として、「この裏面被膜bは、基板aの裏面全面に施されている。」と記載され、【0024】の図3に関する記載、及び図3で、段部5Aに基板が接触しない裏面全面に裏面被膜が形成されていることから裏付けられており、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
また、訂正事項dは、請求項2において、酸化膜あるいは窒化膜の設ける範囲を、「前記基板の裏面の前記座グリ面に接触しない範囲のみ」とあるのを、「前記座グリ面に接触する範囲を除いて、前記基板の裏面全面に設ける」と特定するものであり、その点は、願書に添付された明細書の【0003】に、前提となる従来技術の記載として、「この裏面被膜bは、基板aの裏面全面に施されている。」と記載され、【0029】の図4に関する記載、及び図4で、シリコン被膜を形成した段部5Aに基板が接触しない裏面全面に裏面被膜が形成されていることから裏付けられており、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
そして、上記訂正事項a〜dは、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立てについて
1.本件の請求項1〜3に係る発明
上記II.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1〜3に係る発明(以下、「本件発明1〜3」という。)は、平成17年6月17日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載される次のとおりのものである。

「【請求項1】反応ガスが導かれる反応炉内に配設されたサセプタの表面に座グリ面を設け、該座グリ面で、裏面に酸化膜あるいは窒化膜を施した基板の裏面外周部を保持して気相成長する気相成長方法において、
前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記座グリ面に接触する範囲を除いて、前記基板の裏面全面に設けて気相成長を行なうことを特徴とする気相成長方法。
【請求項2】反応ガスが導かれる反応炉内に配設されたサセプタの表面に座グリ面を設け、該座グリ面で、裏面に酸化膜あるいは窒化膜を施した基板の裏面外周部を保持して気相成長する気相成長方法において、
前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記座グリ面に接触する範囲を除いて、前記基板の裏面全面に設けると共に、サセプタの基板を載置する面にシリコン被膜を形成した状態で気相成長を行なうことを特徴とする気相成長方法。
【請求項3】反応ガスにSiHCl3を用いることを特徴とする請求項2記載の気相成長方法。」

2.取消理由の概要
本件特許の訂正前の請求項1に係る発明は、刊行物1(特開昭62-128520号公報,甲第2号証)、及び刊行物2(実願昭60-41605号(実開昭61-158945号公報)のマイクロフィルム,甲第1号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の訂正前の請求項2,3に係る発明は、刊行物1、刊行物2、及び刊行物3(特開平6-188198号公報,甲第3号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1〜3に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3.刊行物の記載事項
(1)刊行物1:特開昭62-128520号公報
(1-1)「1.その周縁部を除く裏面にオートドープ防止用のブロッキング膜を備えることを特徴とする半導体ウエーハ。
2.前記オートドープ防止用のブロッキング膜が、シリコンの酸化膜、窒化膜、又は酸化膜と窒化膜の複合二重構造よりなる膜である特許請求の範囲第1項記載の半導体ウエーハ。」(特許請求の範囲第1項、第2項)
(1-2)「[発明が解決しようとする問題点]・・・ブロッキング膜2を有するウエーハ1を用いてその主面上にシリコンのエピタキシャル成長を行うと、たしかにウエーハ1の主面にエピタキシャル層3が形成されていく過程ではウエーハ1の周面及び裏面にはブロッキング膜2が形成されているため、ウエーハ1からエピタキシャル層3へのオートドープは著しく抑制され、エピタキシャル層3自体の品質の向上は図れる。・・・しかし反面においては第7図(ニ)からも明らかなようにウエーハ1の主面へのエピタキシャル成長過程で、反応ガス中のシリコンがポリシリコンとしてブロッキング膜2、特にウエーハ1の周面部上に多数塊粒状に生成され、この塊粒状シリコン3aが半導体デバイス(製品)の製造過程でブロッキング膜の表面から脱落し、エピタキシャル層3表面等に付着して汚染の原因となり、歩留を低下させるという問題があった。・・・周面のブロッキング膜表面にはSiの塊粒状物が多数生成されている。[問題点を解決するための手段]・・・Siの塊粒状物が周面のブロッキング膜上に形成されることに着目して、ウエーハの周面、更にはオートドープの影響が許容できる範囲内で裏面のブロッキング膜を可及的に広範囲に除去することによってSi塊粒状物の生成が殆どなく、これに起因する汚染を防止出来て、歩留の大幅な向上を図り得るようにした半導体ウエーハ及びその製造方法を提供するにある。」(2頁右上欄18行〜右下欄20行)
(1-3)第1図には、半導体ウェーハ裏面の外周部のブロッキング膜を除去したものが示されている。

(2)刊行物2:実願昭60-41605号(実開昭61-158945号公報)の
マイクロフィルム
(2-1)「シリコンなどの半導体を気相成長法によりエピタキシャル成長させるには、第2図に一例の断面図を示した縦型エピタキシャル成長装置が従来から使用されている。この図において10はベルジャー、11はウエハ(半導体基板)で、エピタキシャル成長を行なう基板である。ウエハ11はサセプタ12上に置かれる。」(2頁4〜10行)
(2-2)「第1図は本考案を実施したサセプタの構成例を示す断面図であるが、ガス吹出ノズル5を中心としてサセプタ2の半分のみ示してある。・・・ウエハ1はそれぞれの座ぐりの上にのせられる。5はノズルで原料ガスとキヤリアガスの混合ガスが矢印の方向に吹出されるが、サセプタ2以外の部分の配置は従来の装置と同一である。」(5頁11行〜6頁2行)
(2-3)第3-1図、第3-2図には、ウエハの裏面最外周部分で、座ぐり面に対して保持されていることが示されている。

(3)刊行物3:特開平6-188198号公報
(3-1)「【請求項1】低比抵抗の半導体ウエハ表面に半導体結晶層を成長させるエピタキシャル成長法であって、(a)低比抵抗の半導体ウエハを載置するサセプタの該半導体ウエハの載置場所にポリシリコン膜を設け、(b)該サセプタ上に前記半導体ウエハを載置して高温の水素ガス雰囲気下で前記半導体ウエハの少なくとも裏面に前記ポリシリコン膜の一部を付着させ、(c)引き続き成長ガスを導入して前記半導体ウエハの表面に半導体結晶層をエピタキシャル成長せしめることを特徴とするエピタキシャル成長法。」(【特許請求の範囲】)
(3-2)「【作用】本発明によれば、エピタキシャル成長装置のサセプタに、あらかじめポリシリコン膜を設け、その上に半導体ウエハを載置して、高温の水素ガス雰囲気下で前記半導体ウエハの裏面に前記ポリシリコン膜の一部を付着させることにより、エピタキシャル成長装置内部で簡単にアウトドープ防止用の膜を半導体ウエハの裏面などに選択的に形成することができる。」(【0008】)
(3-3)「つぎに、1130℃に保ちながら半導体ウエハ4の表面に半導体結晶層9をエピタキシャル成長させる・・・たとえばシリコン結晶層をエピタキシャル成長するには、成長ガスであるトリクロルシラン(SiHCl3)ガス・・・を・・・石英ベルジャ7の内部に導入し、化学反応させ堆積させることにより、半導体ウエハ4の表面上に、・・・半導体結晶層9がエピタキシャル成長される。」(【0017】)

4.対比・判断
4-1.本件発明1について
上記摘記事項(1-1)(1-2)(1-3)の記載を総合すると、刊行物1には、「その周縁部を除く裏面に酸化膜、窒化膜のオートドープ防止用のブロッキング膜を備える半導体ウェーハを用いてエピタキシャル成長を行う方法。」(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。
そこで、本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「半導体ウェーハ」「周縁部」「酸化膜、窒化膜のオートドープ防止用のブロッキング膜」「エピタキシャル成長を行う方法」は、それぞれ、本件発明1の「基板」「外周部」「酸化膜あるいは窒化膜」「気相成長を行なうことを特徴とする気相成長方法」に相当しており、両者は、「その外周部を除く裏面に酸化膜あるいは窒化膜を施した基板に気相成長を行なう気相成長方法」という点で一致し、以下の点で相違する。
相違点:本件発明1は、反応ガスが導びかれる反応炉内に配設されたサセプタの表面に座グリ面を設け、該座グリ面で、裏面に酸化膜あるいは窒化膜を施した基板の裏面外周部を保持して気相成長する気相成長方法において、前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記座グリ面に接触する範囲を除いて、前記基板の裏面全面に設けて気相成長を行なうと特定しているのに対して、刊行物1発明では、酸化膜あるいは窒化膜の形成範囲を、基板の外周部を除いてと特定されている点で相違している。
そこで、上記相違点について検討する。

相違点について
刊行物2には、シリコンなどを気相成長法によりエピタキシャル成長させる場合に、原料ガスとキャリアガスの混合ガスを吹き出すベルジャー内の座ぐり面を設けたサセプタ上に基板を裏面最外周部分で保持することは示されているものの、酸化膜あるいは窒化膜を、前記座グリ面に接触する範囲を除いて、前記基板の裏面全面に設ける点については、記載がなく、座ぐり面を設けたサセプタ上に、ウエハのスリップ抑制のために、ウエハの裏面最外周部分を保持したもので、酸化膜あるいは窒化膜の形成範囲と基板座グリ面に接触する範囲との関係については、何ら示唆されていない。
また、刊行物3には、半導体ウエハ表面に半導体結晶層を成長させるエピタキシャル成長法において、半導体ウエハを載置するサセプタの該半導体ウエハの載置場所にポリシリコン膜を設けることの記載はあるものの、座グリ面で、裏面に酸化膜あるいは窒化膜を施した基板の裏面外周部を保持して気相成長する気相成長方法において、前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記座グリ面に接触する範囲を除いて、前記基板の裏面全面に設ける点については、記載も示唆もされていない。
したがって、刊行物1発明において、刊行物2、3に記載された発明を考慮しても、サセプタの表面に座グリ面を設け、裏面に酸化膜あるいは窒化膜を施した基板を保持して気相成長する方法において、前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記座グリ面に接触する範囲を除いて、前記基板の裏面全面に設けて行なうとすることは、当業者といえども容易に想到し得ないものである。
そして、本件発明1は、上記構成を採用することにより、オートドープを抑制するとともに、裏面被膜のサセプタと接触する部分に特定して発生する針状の突起物であるノジュールの発生を特別の手段を用いることなく防止できるという刊行物1〜3の記載からは予測することのできない顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4-2.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成を全て含むとともに、さらに「サセプタの基板を載置する面にシリコン被膜を形成した状態で・・・行なう」点を追加したものであるから、4-1.で検討したように、本件発明1が、刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2は、刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4-3.本件発明3について
本件発明3は、請求項2を引用する発明であって本件発明2の構成を全て含むとともに、さらに「反応ガスにSiHCl3を用いる」点を追加したものであるから、本件発明2が、刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明3は、刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、異議申立人の提出した、その他の証拠である甲第4号証(特開昭50-12971号公報)、甲第5号証(特開昭59-50095号公報)、甲第6号証(特開昭62-4315号公報)、甲第7号証(特開昭63-244613号公報)にも、サセプタの表面に座グリ面を設け、該座グリ面で、裏面に酸化膜あるいは窒化膜を施した基板の裏面外周部を保持して気相成長する気相成長方法において、前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記座グリ面に接触する範囲を除いて、前記基板の裏面全面に設ける点は、何ら記載も示唆もされておらず、その他の異議申立の理由及び証拠は、本件発明1〜3を取り消すべき理由として採用することはできない。

V.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
気相成長方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】反応ガスが導かれる反応炉内に配設されたサセプタの表面に座グリ面を設け、該座グリ面で、裏面に酸化膜あるいは窒化膜を施した基板の裏面外周部を保持して気相成長する気相成長方法において、
前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記座グリ面に接触する範囲を除いて、前記基板の裏面全面に設けて気相成長を行なうことを特徴とする気相成長方法。
【請求項2】反応ガスが導かれる反応炉内に配設されたサセプタの表面に座グリ面を設け、該座グリ面で、裏面に酸化膜あるいは窒化膜を施した基板の裏面外周部を保持して気相成長する気相成長方法において、
前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記座グリ面に接触する範囲を除いて、前記基板の裏面全面に設けると共に、サセプタの基板を載置する面にシリコン被膜を形成した状態で気相成長を行なうことを特徴とする気相成長方法。
【請求項3】反応ガスにSiHCl3を用いることを特徴とする請求項2記載の気相成長方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体デバイスを製作するに必要なエピタキシャル用半導体基板への気相成長方法に係り、詳しくは針状に異常成長する突起物であるノジュールの発生を防止し得るようにした気相成長方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、基板(ウエーハ)aの表面に半導体被膜を気相成長させる場合、この気相成長(エピタキシャル成長)中に、基板aの裏面から基板a中のドーパント剤による不純物が反応炉内に浮遊しないように、図6の如く基板aの裏面に酸化膜あるいは窒化膜からなる裏面被膜bを約3000オングストロームの厚さで被膜して気相成長するようにしている。
【0003】なお、この裏面被膜bは、基板aの裏面全面に施されている。ベベル面(円弧又は面取りした面を含む外周面)B部は、表面研磨時、チッピィング(小さなヒビ割れ)を防止するため削り落とされている。
【0004】一方、厚膜層を必要とする場合には、生産性を考慮し、原料ガスとしては気相成長率の高いSiHCl3が好んで用いられる。しかし、そのような原料ガスは気相成長段階でHClあるいはCl2を生長させ、基板aをエッチングする作用があり基板a内のドーパント剤を反応炉内部に供給し、これが成長層に取り込まれ、成長層を汚す問題、いわゆるオートドープがあるため、前記裏面被膜bが大切となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、裏面被膜bを形成してエピタキシャル成長すると、図7に示すように、裏面被膜bのサセプタcにより保持される部分に針状のシリコンの突起物であるノジュールdが成長する。
【0006】この現象は基板aの周辺部、すなわちサセプタcによって保持される部分が反応ガスと接触するために、図8に示す如く、裏面被膜bを形成する粒子e…の不連続な例えば空孔個所に反応ガスが進入して、針状にシリコンが成長すると考えられている。
【0007】このようなシリコンの異常成長によるノジュールdが発生すると、後工程であるリソグラフィーで非合焦、あるいはマスクとの接触によるマスクの損傷等の問題を提起する。特に裏面被膜bが、50μm〜100μmと厚膜になると顕著で、ノジュールdの長さは50〜60μmとなる。
【0008】現状は、発生したノジュールdを研削除去しており、コスト高を招くなどの問題があった。また、研削する前に、取り扱いが悪いと、基板aの割れなどの破壊を誘発する問題が内在している。
【0009】本発明は上記実情に鑑みなされたもので、裏面被膜の特定個所に発生するシリコンの針状の突起物であるノジュール発生を、特別の手段を用いることなく防止することができ、生産性の向上を可能とした気相成長方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、課題を解決するための第1の手段として、反応ガスが導びかれる反応炉内に配設されたサセプタの表面に座グリ面を設け、該座グリ面で、裏面に酸化膜あるいは窒化膜を施した基板の裏面外周部を保持して気相成長する気相成長方法において、前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記基板の裏面の前記座グリ面に接触しない範囲のみに設けて気相成長を行なうようにしたものである。
【0011】また、第2の手段として、反応ガスが導びかれる反応炉内に配設されたサセプタの表面に座グリ面を設け、該座グリ面で、裏面に酸化膜あるいは窒化膜を施した基板の裏面外周部を保持して気相成長する気相成長方法において、前記酸化膜あるいは窒化膜を、前記基板の裏面の前記座グリ面に接触しない範囲のみに設けると共にサセプタの基板を載置する面にシリコン被膜を形成した状態で気相成長を行なうようにしたものである。
【0012】
【作用】
上記第1の手段の気相成長方法によれば、サセプタと接触する部分には、酸化膜あるいは窒化膜等の裏面被膜を設けない状態で気相成長するようにしたから、裏面被膜のサセプタと接触する部分に特定して発生する針状のシリコンの突起物であるノジュールの発生を、特別の手段を用いることなく防止することができ、生産性の向上が図れる。
【0013】また、第2の手段の気相成長方法によれば、サセプタと接触する部分には、酸化膜あるいは窒化膜等の裏面被膜を設けないと共にサセプタの基板を載置する面にシリコン被膜を形成した状態で気相成長するようにしたから、裏面被膜のサセプタと接触する部分に特定して発生する針状のシリコンの突起物であるノジュールの発生を、特別の手段を用いることなく防止することができ、生産性の向上が図れ、また、サセプタおよび基板が加熱され状態となるとシリコン被膜が基板側に移動して基板に被膜が形成され、ドーパント剤による不純物の反応炉への拡散を防止することができる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図1ないし図3を参照して説明する。まず、図1および図2を参照して、本発明の気相成長方法を実施する気相成長装置の反応部の構成を説明する。
【0015】基台であるベースプレート1の上部には密封容器としての石英ベルジャ2が載置され、気密な反応炉3が構成されているとともに、この反応炉3には、サセプタ4が設けられている。
【0016】このサセプタ4の上面には、図2に示すように、複数個の座グリ面5…が形成されていて、これら座グリ面5…に基板(ウエーハ)6…が載置されるようになっている。
【0017】このサセプタ4は、サセプタ支え7によって支持されており、サセプタ支え7はサセプタ回転駆動部(図示しない)によって回転駆動され、前記サセプタ4が一体に回転するようになっている。
【0018】サセプタ4の下方には、高周波加熱コイル8が配置され、サセプタ4を加熱するようになっている。さらに、サセプタ4の中央部を貫通する状態にノズル9が設けられ、反応炉3内にキャリヤガスに混合された反応ガス10を噴出するようになっている。
【0019】ノズル9は、石英ガラスで構成され、反応ガス噴出孔11…が複数個(複数段)設けられており、反応ガス10は水平方向(矢印方向)に噴出されるようになっている。
【0020】また、サセプタ4と高周波加熱コイル8との間には、高周波加熱コイル8を覆う構造をした石英製品からなるコイルカバー12が設けられており、高周波加熱コイル8を反応ガス10より隔離している。
【0021】また、反応炉3内の反応ガス10は、ベースプレート1に形成された排気口13を介して排気経路14に導出されるようになっている。また、座グリ面5…は、図3に示すように、基板6の周縁部の下面を支持する段部5Aと、これよりも深く形成された平坦状の底部5Bを有する形状となっている。
【0022】しかして、気相成長に当たっては、サセプタ4を回転させると共に高周波加熱コイル8によりサセプタ4を加熱し、基板6…を所要温度に加熱する。一方、このとき、ノズル9を回転させながらSiHCl3等の反応ガス10を噴出させる。これにより、基板6…の表面に半導体の膜が気相成長されることになる。
【0023】なお、このとき、気相成長(エピタキシャル成長)中に、基板6の裏面から基板6中のドーパント剤による不純物が反応炉3内に浮遊しないように、基板6の裏面に酸化膜あるいは窒化膜からなる裏面被膜15を約3000オングストロームの厚さで被膜して気相成長するようにしている。
【0024】本発明の気相成長方法は、図3に示す如く、サセプタ4の保持部、すなわち、段部5Aと接触する部分には存在しない状態で裏面被膜15を形成したもの、すなわち、ベベル面(円弧又は面取りした面を含む外周面)B部からさらに内側へ約2mm削り落としたものをサセプタ4の座グリ面5…部にセットし気相成長するようにしている。
【0025】この様にして、100μmのエピタキシャル成長を行なったところ、従来発生していた針状のシリコンの突起物であるノジュールd(図7および図8参照)の発生をなくすことができた。
【0026】なお、裏面被膜15の形成領域は、従来よりもL2-L1分だけ少なくなるため、基板6の下面周縁部分はその分余計に反応炉3内に晒されることになり、この部分よりドーパント剤による不純物が反応炉3内へ拡散される心配があったが、この個所に反応ガス10が介在することによって基板6の表面程の成長率でないが成膜がなされて完全に当該面が覆われた状態となり問題とならなかった。
【0027】以上の如く、本発明の気相成長方法によれば、現状の裏面被膜15の周縁部を削り落して該裏面被膜15がサセプタ4に接触しないようにすることによって、基板6の裏面の針状のシリコンの突起物であるノジュールd(図7、図8参照)の生成を防止することができる。
【0028】したがって、ノジュールd(図7、図8参照)を研削除去する工程が不要となり、生産性が上がり経済的である。また、原料ガスとして気相成長率の高いSiHC13を用いてもオートドープの問題がなく、生産性の向上が図れる。
【0029】また、基板6が、特にAs高濃度ドープ基板の場合には次のようにすることが好ましい。すなわち、図4の第1の変形例で示すように、サセプタ4の上面および座グリ面5…の段部5Aにシリコン被膜16を形成したものである。
【0030】この様にすると、サセプタ4および基板6が加熱された状態となると前記シリコン被膜16が基板6側に移動して基板6に被膜(図示しない)が形成され、ドーパント剤による不純物の反応炉3への拡散を防止することができる。
【0031】特に、反応ガスにSiHCl3を用いる場合には所定温度で反応ガスの分解によりHClの濃度が上がり基板6をエッチングし、ドーパント剤による不純物の発生が顕著となるため、シリコン被膜16の効果は大きい。
【0032】なお、図5に示す第2の変形例で示すように、中央部が傾斜下端となる斜面を有する円錐状底部5Cを有する座グリ面5′の場合についても同様に、裏面被膜15の寸法L3で示す領域を削り落とすことによって、前記裏面被膜15がサセプタ4と接触するのを防止することができ、同様の効果が得られる。なお、本発明は上記一実施例に限るものでなく、本発明の要旨を変えない範囲で種々変形実施可能なことは勿論である。
【0033】
【発明の効果】
以上の如く、本発明の気相成長方法によれば、次のような効果を奏する。請求項1記載の気相成長方法によれば、サセプタと接触する部分には、酸化膜あるいは窒化膜等の裏面被膜を設けない状態で気相成長するようにしたから、裏面被膜のサセプタと接触する部分に特定して発生する針状のシリコンの突起物であるノジュールの発生を、特別の手段を用いることなく防止することができ、生産性の向上が図れる。
【0034】また、請求項2記載の気相成長方法によれば、サセプタと接触する部分には、酸化膜あるいは窒化膜等の裏面被膜を設けないと共にサセプタの基板を載置する面にシリコン被膜を形成した状態で気相成長するようにしたから、裏面被膜のサセプタと接触する部分に特定して発生する針状のシリコンの突起物であるノジュールの発生を、特別の手段を用いることなく防止することができ、生産性の向上が図れ、また、サセプタおよび基板が加熱され状態となるとシリコン被膜が基板側に移動して基板に被膜が形成され、ドーパント剤による不純物の反応炉への拡散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の気相成長方法を実施する気相成長装置の反応部の構成を概略的に示す断面図。
【図2】図1に示す装置の要部の一部を示す平面図。
【図3】本発明の要部である基板保持部の状態を示す断面図。
【図4】本発明の異なる実施例を示す基板保持部の状態を示す断面図。
【図5】本発明のさらに異なる実施例を示す基板保持部の状態を示す断面図。
【図6】従来の基板保持部の状態を示す断面図。
【図7】従来の方法により針状シリコンが異常成長したノジュールの発生状態を示す図。
【図8】図7のノジュールを拡大して示す図。
【符号の説明】
3…反応炉、4…サセプタ、5,5′…座グリ面、6…基板(ウエーハ)、9…ノズル、10…反応ガス、11…反応ガス噴出孔、15…裏面被膜(酸化膜あるいは窒化膜)、16…シリコン被膜、d…ノジュール、B…ベベル面。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-08-04 
出願番号 特願平7-578
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 瀬良 聡機
市川 裕司
登録日 2002-12-27 
登録番号 特許第3384899号(P3384899)
権利者 東芝機械株式会社
発明の名称 気相成長方法  
代理人 市原 卓三  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 市原 卓三  
代理人 中村 誠  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 河野 哲  

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