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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1127071
審判番号 不服2004-4085  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-01 
確定日 2005-12-01 
事件の表示 平成 6年特許願第206966号「圧縮符号化データの蓄積または転送装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月22日出願公開、特開平 8- 79295〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年8月31日の出願であって、平成16年1月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年3月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成16年3月31日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年3月31日付けの手続補正についての検討
[結論]
平成16年3月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(2-1)補正後の本願請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】伝送路の誤りから圧縮符号化データを保護するための伝送路符号が付加されたデータを受信する受信手段と、前記受信手段により受信された、伝送路符号が付加された前記データを復号して前記データから蓄積や転送にとって不必要な前記伝送路符号を取り除くと共に、前記伝送路符号よりも規模の小さな誤り訂正符号を付加するデータ加工手段と、前記データ加工手段により前記伝送路符号が取り除かれると共に、前記規模の小さな誤り訂正符号が付加された圧縮符号化データを蓄積または転送する手段とを備えることを特徴とする圧縮符号化データの蓄積または転送装置。」と補正された。
上記補正は、「前記受信手段により受信された、伝送路符号が付加された前記データを復号して前記データから蓄積や転送にとって不必要な前記伝送路符号を取り除くデータ加工手段」に「前記伝送路符号よりも規模の小さな誤り訂正符号を付加する」との限定を付加し、「前記データ加工手段により前記伝送路符号を取り除かれて得られた圧縮符号化データ」に、「前記規模の小さな誤り訂正符号が付加された」との限定を付加したものであるから、特許請求の範囲の請求項1は、減縮を目的とするものに該当し、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内になされたものであるから、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に適合している。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-2)引用例に記載された発明
原審の拒絶の理由に引用された特開平3-237660号公報(以下、「引用例」という。)には、次のような記載がある。

イ)「2.特許請求の範囲
(1)主情報符号、誤り訂正符号及び前記主情報符号及び前記誤り訂正符号の各ブロック内での位置を示す同期識別符号を含むブロック単位で伝送された符号列を記録する装置であって、前記誤り訂正符号及び前記同期識別符号を検出するとともに、これらを削除して記録することを特徴とする符号記録装置。」(第1頁左欄第4行〜第11行)

ロ)「[産業上の利用分野]
本発明は符号記録装置及び記録再生装置に関し、特に伝送路を介して受信された情報符号を記録する符号記録装置及び記録再生装置に関するものである。
[従来の技術]
近年、所謂高品位テレビジョン信号(以下単にHDTV信号と称する)は、走査線数が多く、画像が緻密でちらつきが極めて少ないことから、静止画像の伝送、例えば、絵画などの芸術作品、アニメ、医療用静止画、商品カタログなどの伝送形態としても期待されている。
上述の如き静止画を放送波として伝送する場合には静止画はその相関性を利用して、画質を低下させない程度に圧縮され、更に同期符号及び誤り訂正符号(以下単にECCと称する。)などを付加して伝送することが考えられる。また、受信側においてこの静止画を記憶する媒体としては様々なものが考えられるが、一般にはランダムアクセスが可能なディスク状記録媒体が適しているといえよう。」(第1頁右欄第10行〜第2頁左上欄第10行)

ハ)「[発明が解決しようとしている課題]
上述の如きシステムを想定した場合に、静止画情報符号には放送波としての伝送に必要な様々な符号が付加されている。従って、このような伝送符号をディスク状記録媒体に記録しようとした場合には、一般に、少数の静止画を記録する場合にも大容量の記録媒体が必要であった。
本発明は斯かる背景下になされたものであって、伝送符号を記録媒体に記録するにあたり、比較的小容量の記録媒体に多くの情報符号を記録できるようにした符号記録装置及び記録再生装置を提供することを目的とする。

[課題を解決するための手段]
斯かる目的下にいて、本発明によれば主情報符号、誤り訂正符号及び前記主情報符号及び前記誤り訂正符号の各ブロック内での位置を示す同期識別符号を含むブロック単位で伝送された符号列を記録する装置において、前記誤り訂正符号及び前記同期識別符号を検出するとともに、これらを削除して記録すること構成としている。」(第2頁左下欄第6行〜右下欄第5行)

上記記載を総合すると、引用例には、
「静止画情報符号に誤り訂正符号が付加された符号列を受信し、誤り訂正符号を削除した静止画情報符号を記録する符号記録装置」の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例に記載された発明」という。)

例えば、特開平3-194775号公報(以下、「周知例1」という。)には、次のような記載がある。

イ)「2.特許請求の範囲
1.アクセスする位置の半径に応じて誤り統計値が変化するディスクに誤り訂正コードを変化するディスクに誤り訂正コードを付与する方法であって、
データ・バイトと冗長バイトとを有するリード・ソロモン・コードと、予想される最悪の場合の誤りに対して保護できるだけの誤り訂正能力とを選択するステップと、
ディスクのそれぞれの同心範囲にデータを記録するステップと、
上記範囲の誤り統計値に従ってディスクのそれぞれの同心範囲において、上記コードの冗長バイトの数を連続的に減少させて、それにより、訂正可能な誤りの数を減少させ、それにより、誤り訂正能力の必要性の減少に応じて訂正可能な誤りの数を連続的に減少させるステップとを備えたことを特徴とするディスクの誤り訂正コード付与方法。」(第1頁左欄第4行〜第20行)

例えば、特開平6-6757号公報(以下、「周知例2」という。)には、次のような記載がある。

イ)「【請求項1】 時間的にデータ発生量が異なる画像データをそのデータ量が所定フィールド単位毎に略一定となるように符号化する符号化手段と、
上記符号化手段により符号化された画像データに誤り訂正符号による訂正能力の範囲内で既知のデータを付加してパリティ計算を行い、設定目標データ量の画像データに誤り訂正符号を付加する誤り訂正符号付加手段と、
上記誤り訂正符号付加手段により誤り訂正符号が付加された設定目標データ量の画像データを記録媒体に記録する記録手段とを備えて成る画像データ記録装置。」(第2頁第1欄第2行〜第11行)

周知例1、2によれば、「データに誤り訂正符号を付加して蓄積すること」は周知である。

例えば、特開平6-29959号公報(以下、「周知例3」という。)には、次のような記載がある。

イ)「【0007】劣悪な回線品質における無線通信では,誤り訂正技術を駆使する必要があり,実現にあっては誤り訂正の為の冗長なデータを付加する必要がある。
【0008】 従来の誤り訂正方式では,劣悪な回線品質または平均的な回線品質を想定して固定的に採用していたために,本来誤り訂正を必要としない高品質の通信回線においても誤り訂正の為の冗長なデータを付加し通信速度の低下を招いていた。
【0009】また,平均的な回線品質を想定して誤り訂正方式を決定した無線通信においては,平均的な回線では性能を発揮するが,高品質の環境下では必要のない誤り訂正の為の冗長データの付加により通信速度が遅くなり,また劣悪な回線品質の環境下では,誤り訂正の訂正能力が不足して通信できなくなるという欠点がある。
【0010】本発明の目的は上述した欠点を除去し,誤り訂正を必要としない高品質の通信回線を利用する場合の冗長データの付加を排して通信速度の低下を抑止し,劣悪な通信回線でも誤り訂正能力の不足を生じない無線データ通信における適応型自動データ品質維持方式を提供することにある。」(第2頁第2欄第15行〜第34行)

ロ)「【0015】また本発明の別の無線データ通信における適応型自動データ品質維持方式は,回線情報を分析し,その分析データに対応して誤り訂正における訂正能力を誤り率に対応して変更して一定のデータ品質を適応的に確保する構成を有する。」(第3頁第3欄第14行〜第18行)

例えば、特開平5-336080号公報(以下、「周知例4」という。)には、次のような記載がある。

イ)「【請求項1】回線中のデータ誤りの保護を行うために誤り制御能力を可変できる方法を備えた装置1と、回線中のデータの誤り状態を測定する方法を備えた装置2と、前記装置2の結果から前記装置1の誤り制御能力を決定する装置3とを具備し、前記装置2の回線状態の結果から、前記装置3が、回線状態に合った最適な誤り制御を前記装置1から選択することを特徴とする誤り制御システム。」(第2頁第1欄第2行〜第9行)

上記周知例3、4によれば、「伝送状態に応じて、誤り訂正能力を変更した誤り訂正符号を付加する」ことは、周知である。

(2-3)対比
a.引用例に記載された発明の「誤り訂正符号」、「符号列」、「符号記録装置」は、本願補正発明の「伝送路符号」、「データ」、「蓄積装置」に相当する。
b.静止画情報を圧縮して、伝送したり、記録したりすることは当業者の技術常識であり、引用例に記載された発明の「静止画情報符号」が、圧縮された符号化データであることは記載されているに等しい事項であるから、引用例に記載された発明の「静止画情報符号」は、本願補正発明の「圧縮符号化データ」に相当する。
c.引用例に記載された発明の「誤り訂正符号」は、伝送路の誤りから静止画情報符号を保護するための符号であり、a.、b.を考慮すると、引用例に記載された発明の「静止画情報符号に誤り訂正符号が付加された符号列」は、本願補正発明の「伝送路の誤りから圧縮符号化データを保護するための伝送路符号が付加されたデータ」に相当する。
d.引用例に記載された発明の「符号記録装置」は、符号列を受信しており、受信するためには、何らかの受信手段が必要であるから、引用例に記載された発明は、「受信手段」を有している。
e.引用例に記載された発明の「符号記録装置」は、誤り訂正符号を削除する時、符号列を復号して、誤り訂正符号を取り除いており、誤り訂正符号は、蓄積するのに不必要であるから、a.を考慮すると、引用例に記載された発明の「誤り訂正符号を削除する」ことは、本願補正発明の「伝送路符号が付加されたデータを復号してデータから蓄積にとって不必要な伝送路符号を取り除く」ことに相当する。
f.引用例に記載された発明の「符号記録装置」が「静止画情報符号を記録する」機能を有することは自明であるから、引用例の「符号記録装置」は、前記b.を考慮すると、圧縮符号化データを蓄積する手段を有している。
してみれば、本願補正発明と引用例に記載された発明を比較すると、両者は、「伝送路の誤りから圧縮符号化データを保護するための伝送路符号が付加されたデータを受信する受信手段と、前記受信手段により受信された、伝送路符号が付加された前記データを復号して前記データから蓄積にとって不必要な前記伝送路符号を取り除く手段と、前記取り除く手段により前記伝送路符号が取り除かれると共に、取り除かれた前記データを蓄積する手段とを備える圧縮符号化データの蓄積装置」の点で、一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、「データ加工手段」が、「伝送路符号を取り除くと共に、伝送路符号よりも規模の小さな誤り訂正符号を付加」しているのに対して、引用例に記載された発明では、伝送路符号を取り除いているが、伝送路符号よりも規模の小さな誤り訂正符号を付加していない点。

[相違点2]
本願補正発明は、圧縮符号化データを蓄積、または、転送するのに対して、引用例に記載された発明では、記録(蓄積)するとの記載である点。

(2-4)判断
[相違点1について]
周知例1、2に示されるように「データに誤り訂正符号を付加して蓄積すること」は周知であり、周知例3、4に示されるように、「伝送状態に応じて、誤り訂正能力を変更した誤り訂正符号を付加する」ことは、周知であり、誤り訂正符号を付加して蓄積する際、伝送路に送信するよりも、伝送路誤りが生じないならば、誤り訂正能力の低い、すなわち、規模の小さな誤り訂正符号を付加すれば良いことは明らかであるから、引用例に記載された発明において、伝送路符号を取り除くと共に、伝送路符号よりも規模の小さな誤り訂正符号を付加するデータ加工手段を有するようにすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。

[相違点2について]
引用例に記載された発明では、圧縮符号化データの蓄積を行っており、この点で、本願発明と相違するものではないが、データの蓄積とデータの転送は、データの移動という点で、同様な技術であるので、引用例に記載された発明において、圧縮符号化データの転送を行うことも、当業者が容易になし得ることと認められる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例及び周知例1〜4に示される周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例及び周知例1〜4に示される周知技術に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
(1)本願発明について
平成16年3月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年1月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】伝送路の誤りから圧縮符号化データを保護するための伝送路符号が付加されたデータを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された、伝送路符号が付加された前記データを復号して前記データから蓄積や転送にとって不必要な前記伝送路符号を取り除くデータ加工手段と、
前記データ加工手段により前記伝送路符号を取り除かれて得られた圧縮符号化データを蓄積または転送する手段と、
を備えることを特徴とする圧縮符号化データの蓄積または転送装置。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用例に記載された発明
引用例に記載された発明は、前記「2.(2-2)」に記載したとおりのものである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「データ加工手段」の限定事項である「伝送路符号よりも規模の小さな誤り訂正符号を付加する」を省き、「圧縮された符号化データ」の限定事項である「規模の小さな誤り訂正符号が付加された」を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加した構成を有する本願補正発明が、前記「2.(2-4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知例1〜4に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知例1〜4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知例1〜4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-27 
結審通知日 2005-01-28 
審決日 2005-02-08 
出願番号 特願平6-206966
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 紀和  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 衣鳩 文彦
望月 章俊
発明の名称 圧縮符号化データの蓄積または転送装置および方法  
代理人 外川 英明  

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