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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1127293
異議申立番号 異議2003-72601  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-08-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-27 
確定日 2005-09-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3401650号「電磁波干渉抑制体」の請求項1〜11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3401650号の請求項1〜11に係る特許を取り消す。 
理由 1. 手続の経緯
本件特許第3401650号の請求項1〜11に係る発明についての特許は、平成6年1月20日に特許出願され、平成15年2月28日にその発明についての特許の設定登録(請求項の数:11)がされた。これに対して、表記の異議申立人・水沼末吉及び異議申立人・日立金属株式会社より全請求項について特許異議の申立てがあったので取消理由を通知したところ、指定期間内に訂正請求がなされたものである。

2. 訂正の適否について
(1) 訂正の内容
(訂正事項a) 特許請求の範囲の請求項1〜請求項3の「高周波領域に於いて不要電磁波の干渉」を「高周波領域に於いて高周波電子機器類内での電子部品類やプリント配線、部品間や配線基板間、同一配線基板内の不要電磁波の干渉」と訂正する。
(訂正事項b) 特許請求の範囲請求項1及び請求項3の「前記導電性支持体と平行であること」を、「前記導電性支持体と平行であり、前記電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の前記複数の電子部品に沿って配され、かつ前記絶縁性軟磁性体層を前記電子部品側に配置すること」と訂正する。
(訂正事項c) 特許請求の範囲請求項2の「前記誘電体層は誘電体粉末と有機結合剤とを含むこと」を「前記誘電体層は誘電体粉末と有機結合剤とを含み、前記電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の前記複数の電子部品に沿って配され、かつ前記絶縁性軟磁性体層又は前記誘電体層を前記電子部品側に配置すること」と訂正する。
(訂正事項d) 発明の詳細な説明の段落番号【0009】,【0010】,【0011】中の記載について、上記a,b,cと同じ趣旨の訂正をする。
(訂正事項e) 発明の詳細な説明の段落番号【0038】の「実装した状態をを」を、「実装した状態を」と訂正する。

(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(訂正事項a)について
特許請求の範囲に記載された「不要電磁波の干渉による電磁障害の生じる」場所をより具体的な構成に限定しようとするものである。
したがって、上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(訂正事項b、c)について
特許請求の範囲に記載された「電磁波干渉抑制体」の配置場所と配置の形態をより具体的な構成に限定しようとするものである。
したがって、上記訂正事項b、cは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(訂正事項d)について
発明の詳細な説明と特許請求の範囲との整合を図るためのもので、不明瞭な記載の釈明を目的とするものである。
(訂正事項e)について
誤記の訂正を目的とするものである。

また、前記訂正事項a〜eは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内での訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3) むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3. 特許異議の申立てについて
(1) 本件第1〜11発明
前述のとおり、平成16年6月29日付けの訂正請求は認められたので、本件特許の請求項1〜11に係る発明(以下、本件第1〜11発明という)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜11に記載された事項により構成される、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 高周波領域に於いて高周波電子機器類内での電子部品類やプリント配線、部品間や配線基板間、同一配線基板内の不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制する電磁波干渉抑制体であって、導電性支持体と、該導電性支持体の少なくとも一方面に設けられた絶縁性軟磁性体層とを有し、該絶縁性軟磁性体層は金属軟磁性体粉末と有機結合剤を含み、前記金属軟磁性体粉末が偏平状及び/又は針状の粉末であって、尚且つ前記絶縁性軟磁性体層の磁化容易軸方向若しくは磁性粒子配向方向が、前記導電性支持体と平行であり、前記電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の前記複数の電子部品に沿って配され、かつ前記絶縁性軟磁性体層を前記電子部品側に配置することを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項2】 高周波領域に於いて高周波電子機器類内での電子部品類やプリント配線、部品間や配線基板間、同一配線基板内の不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制する電磁波干渉抑制体であって、導電性支持体と、該導電性支持体の少なくとも一方面に設けられた絶縁性軟磁性体層とを有すると共に、該絶縁性軟磁性体層の少なくとも一方面に設けられた誘電体層を有し、前記絶縁性軟磁性体層は偏平状及び/又は針状の金属軟磁性体粉末と有機結合剤とを含み、尚且つ該絶縁性軟磁性体層の磁化容易軸方向若しくは磁性粒子配向方向が、前記導電性支持体と平行であり、前記誘電体層は誘電体粉末と有機結合剤とを含み、前記電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の前記複数の電子部品に沿って配され、かつ前記絶縁性軟磁性体層又は前記誘電体層を前記電子部品側に配置することを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項3】 高周波領域に於いて高周波電子機器類内での電子部品類やプリント配線、部品間や配線基板間、同一配線基板内の不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制する電磁波干渉抑制体であって、導電性支持体と、該導電性支持体の少なくとも一方面に設けられた絶縁性軟磁性体層とを有し、該絶縁性軟磁性体層は、偏平状及び/又は針状の金属軟磁性体粉末、誘電体粉末、及び有機結合剤を含み、尚且つ前記絶縁性軟磁性体層の磁化容易軸方向若しくは磁性粒子配向方向が、前記導電性支持体と平行であり、前記電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の前記複数の電子部品に沿って配され、かつ前記絶縁性軟磁性体層を前記電子部品側に配置することを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項4】 請求項1,2又は3記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性支持体が、導電体板、網目状導電体板、もしくは導電性繊維の織物であることを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項5】 請求項1,2又は3記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性支持体が、絶縁基材と該絶縁基材の少なくとも一方の面に蒸着成膜された導電性膜とからなることを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項6】 請求項1,2又は3記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性支持体が、絶縁基材と該絶縁基材の少なくとも一方面に蒸着成膜された軟磁性金属薄膜からなることを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項7】 請求項5又は6記載の電磁波干渉抑制体であって、前記絶縁基材が請求項1、2又は3記載の前記絶縁性軟磁性体層もしくは、請求項2記載の前記誘電体層で代用されていることを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項8】 請求項1,2又は3記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性支持体が、導電性微粉末と有機結合剤とからなることを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項9】 請求項1,2又は3記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性支持体が、絶縁基材と、該絶縁基材の少なくとも一方の面上に設けられた導電体層とを有し、該導電体層は導電性微粉末と有機結合剤とを含むことを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項10】 請求項1,2又は3記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性支持体が、軟磁性を有する導電性軟磁性支持体であることを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項11】 請求項10記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性軟磁性支持体が、軟磁性金属板、網目状軟磁性金属板、もしくは軟磁性金属繊維の織物であることを特徴とする電磁波干渉抑制体」

(2) 引用刊行物及びその記載事項
当審において通知した取消理由に引用した本件特許出願前に頒布された刊行物
[刊行物1]特開昭55―157300号公報
(水沼末吉提出の甲第1号証)
[刊行物2]特開昭60―57700号公報
(水沼末吉提出の甲第2号証)
[刊行物6]特開昭49―89461号公報
(水沼末吉提出の甲第6号証)
[刊行物7]山田桜編「プラスチックス配合剤―基礎と応用」株式会社
大成社発行、昭和46年7月10日初版第2刷、p.84-87,90,91
(水沼末吉提出の甲第7号証)
[刊行物8]「電磁波の吸収と遮蔽」日経技術図書株式会社発行、
1989年1月10日、p.684,685,694-697,700,701
(水沼末吉提出の甲第8号証)

[刊行物1]
特許請求の範囲には、
「(1) 非導電性粘結物質と導電性箔状粒子との混練成形材であって、上記箔状粒子が成形材表面に平行に配向していることを特徴とする電磁遮へい吸収材。
(6) 非導電性粘結物質と導電性箔状粒子の混練成形材であって、上記箔状粒子が表面に平行に配向している成形材と、金属板との多層構造にしたことを特徴とする電磁遮へい吸収材。
(7) 金属板が高透磁率磁性材であることを特徴とする特許請求の範囲第6項に記載の電磁遮へい吸収材。」と記載されている。
2頁左下欄2行ないし右下欄1行には、
「本発明を以下に詳細に説明する。非導電性の粘結物質としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン《中略》等の物質が使用される。導電性箔状粒子には、フレーク状の黒鉛粉末粒子、《中略》さらに高透磁性磁性材料のパーマロイ、アルパームの箔状粒子、センダストの箔状粒子等が用いられる。」と記載され、
3頁右上欄7行ないし右下欄2行には、
「上記で得られる電磁遮へい吸収材では、第2図に示したように配向した箔状粒子2bが丁度金属薄板を積層したのと同様の積層構造をしているので、高周波に対して渦電流損を生じさせず、しかも箔状粒子2bの導電性により電磁遮へいを可能とするのである。ここで、箔状粒子に黒鉛粉末粒子を用いるとき、黒鉛粉末自体が箔片状であるので箔状にする加工を必要とせず取扱いが仕易い利点がある。また高周波に対して効果的である。あまり高くない周波に対しては、高導電性金属の箔状粒子を用いることができる。さらに磁気の遮へい吸収に重点をおくときには、磁性材、特に高透磁率磁性材の箔状粒子を用いる。
以上説明した非導電性粘結物質と導電性箔状粒子との混練物の電磁遮へい吸収剤は、金属板に比べるとその電気抵抗は高いものといわなければならない。従って、高周波に対する電磁遮へいには有効であるが、低周波に対しては効果が不足する場合がある。このような場合には、第4図に示すように第2図に示した電磁遮へい吸収材2にさらに金属板4を積層し、2層又はそれ以上の多層構造の遮へい吸収材2´とする。さらにこの金属板4として磁性材、特にケイ素鋼板のような高透磁性金属材を用いると、低周波から高周波まで広い周波帯域で電磁波の有効な遮へい吸収ができるものとなる。」と記載されている。

[刊行物2]
特許請求の範囲には、
「(1) 高分子材料にフェライト粒子を混合した複合フェライトの一面に導電性繊維布又は導電性複合材料からなる抵抗体層を設けたことを特徴とする電磁シールド材。」と記載され、
3頁右上欄(発明の効果)には、
「以上説明したように、本発明の電磁シールド材によれば、次のような効果を上げることができる。
(1)放射ノイズ等の入射電波を反射するだけでなく、反射波を減衰させることができる。このため、機器筐体として使用したとき、放射ノイズエネルギーが機器内に蓄積されるのを防止することができる。
(2)磁性層を高分子材料にフェライト粒子を混合した複合フェライトで構成し、抵抗体層を導電性繊維布又は導電性複合材料で構成しているので、任意の形状に成型することが容易であり、軽量でかつ耐久性にも優れている。」と記載されている。
また、第1図に積層された磁性層1と抵抗体層2が示されている。

[刊行物6]
電波吸収壁に関する発明で、特許請求の範囲には、
「導電体板の上に、誘電体粉末を塗布し、その上に磁性体粉末を塗布したことを特徴とする電波吸収壁」と記載され、
1頁右下欄9行ないし下から3行には、
「100メッシュのアルミ粉末と、100〜150メッシュのチタン酸バリウムの混合物2に対して、バインダーとしてポリスチレンとパラフィンの混合物1を加えてさらに混合し加熱したものを用意した。一方Ni-Mn系フェライト3.6に対しレドーム・ペイント1を練り合わせたものも用意した。そしてまず600×500mmの大きさの金属板の上に誘電体の方をは毛で塗布し、その上に磁性体の方をやはりは毛で塗重ねていつた。」と記載されている。

[刊行物7]
91頁1行ないし3行には、充てん剤(通常は粉末)の特性に関し、
「2・2・9 電気特性
高周波特性,耐電圧,絶縁性などの電気特性を向上させるのに,焼成クレーやマイカなどが用いられる。」と記載されている。

[刊行物8]
電磁遮蔽膜(電磁シールド膜)として、
684頁の「[1]導電性プラスチックの欄には、「【特性】金属,カーボンなどの粉,繊維とPP,PS,ABS,PPE,PBTなどの複合材料であり」と記載され、電磁波シールド用複合材料が開示されている。
また、694頁の[2]導電性塗料の欄には、「【特性】シエルトロンEKは,ニッケル粉、銅粉、銅銀複合粉を樹脂中に含有させ、電磁波をシールドする目的で開発された導電性塗料である。《中略》シエルトロンEKは,こういったIC,LSIが内蔵されている電子機器のプラスチック筐体の内面に塗布することで電子機器から放出される電磁波が他の電子機器に影響を及ぼすのを防ぎ」」と記載され、この導電性塗料をIC,LSIが内蔵されている電子機器のプラスチック筐体の内面に塗布することが用途として例示されている。
また、696頁の[2]導電性塗料の欄には、【特性】の欄中段に、「ニッケル系塗料は,その主原料のニッケルパウダが、他の金属フィラーに比べて酸化されにくく《中略》また,透磁率が高い特徴により、広い周波数域で平均的に大きなシールド効果がある」と記載され、軟磁性体金属粉末としてNiを含有する高透磁率導電性塗料が例示されている。
つまりプラスチックにNi含有導電性塗料を塗布した軟磁性を有する導電性軟磁性支持体を実質的に開示している。
また、695頁の【使用目的・利用法】の欄には、「導電性(電磁シールド用)塗料は、導電性プラスチック、金属箔、金属メッキ、蒸着・溶射ともに電磁波障害対策用材料の1つである」との記載があり、導電性塗料以外の電磁波障害対策として、導電性プラスチック、金属箔、金属メッキ、蒸着、溶射を列挙している。
また、700頁の[3]導電性フィルムの欄には、【特性】の冒頭に、「プラスチックフィルムに導電性をもたせるためには、通常、導電性の金属あるいは金属酸化物を蒸着する方法がとられている。その構造を大別すると,
(1) 金属薄膜型……Au,Pd,Alなどの薄膜
(2) 半導体薄膜型……酸化インジウム/酸化すず薄膜など」と記載されている。

[周知例1] 特開昭63―269804号公報
共振周波数調整方法に関する発明で、
2頁左上欄4行ないし14行には、
「〔目的〕
本発明は、上記のような問題点を解決して、作業性の良好な誘電体共振器の共振周波数調整方法を提供することを目的とする。
また、共振周波数の微調整が容易な誘電体共振器の共振周波数調整方法を提供することを目的とするものである。
〔問題点を解決するための技術手段〕
本発明は、誘電体粉末を含んだ接着性樹脂材を誘電体共振器の開放端面に塗布し、硬化させることによつて上記の目的を達成するものである。」と記載され、
2頁左下欄2行ないし8行には、
「次に、実際に誘電体粉末を含む接着性樹脂を塗布して、共振周波数の変化を測定した結果について、第2図を参照して説明する。
接着性樹脂として、チタン酸バリウム系誘電体粉末(ε=500)約90部とエポキシ系樹脂接着剤10部とを均一混合したものを用いた。これは、乾燥、硬化後の見掛比誘電率はおよそε=70であつた。」と記載されている。

[周知例2] 特開平4―211198号公報
携帯用通信装置に関する発明で、その【要約】には、
「【構成】 腕時計型受信機に内蔵される回路組立体5は、液晶表示パネル13、信号処理回路部の形成された第2の回路基板14、ノイズ遮蔽板15、スペ-サ17、受信回路部の形成された第1の回路基板16で構成され、この順序で本体部の表面側から積層されており、パネル枠11および回路ケ-ス体12でサンドイツチ状に挟まれ、組み立てられている。
【効果】 信号処理回路からのノイズを効果的に遮蔽可能なシ―ルド構造を有する腕時計型通信装置などの携帯式の送受信装置を、装置の寸法を大きくすることなく、また、装置の価格の増大もなく提供できる。」と記載され、代表図面の【図3】に示された構成(高周波受信回路26、ノイズ発生源回路37)を勘案すると、周知例2には、
「高周波電子機器類内での電子部品類やプリント配線、部品間や配線基板間、同一配線基板内の」電磁波の干渉を抑制する点及び「電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の複数の電子部品に沿って配され、」の構成が明白に示されている。

[周知例3] 特開平5―335776号公報
誘電複合体に関する発明で、【0003】、【0006】、【0007】及び【0016】には、
「【0003】
これらの複合体の電波吸収作用は、その中を通過する電磁波のエネルギーが熱エネルギーに変換される効果を利用するものである。この現象は単に複合体中で導体を通る電磁波の電磁誘電効果に基く渦電流損失だけでは説明できず、誘電損失に起因するものとして理解されている。それで、上述のような導電材と誘電体との複合材が採用され、あるいは提案されているが、誘電損失が不足で、吸収特性が充分得られない場合が多い。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、本発明の誘電複合体は、高電気抵抗金属合金針状粉末と、導電率の高い球状金属粉末とを誘電体中に概ね同量混合したことを特徴とする。なお、ここに言う「針状」とは、針状、繊維状、フレーク状等アスペクト比の大きい形状を総称したものである。
【0007】
【作用】一般に、高周波域における物質の磁気損失や誘電損失は、この物質の基本的特性を表すものである。前者は、複素透磁率μ* =μ′-jμ″(又は損失角 tanδ=μ″/μ′)、後者については、複素誘電率ε* =ε′-jε″(又は損失角 tanδ=ε″/ε′)で表される事が知られている。複素透磁率、及び複素誘電率が判れば、この物質の反射率(入射電磁波が物質に垂直に入射した場合に物質表面で反射される割合)や表皮深さ(入射電磁波が物質中で1/eに減衰するまでの吸収層の厚み)が求められ、物質の吸収特性を知ることができる。
【0016】
Co系アモルファス合金フレーク(最長軸20mm、最短軸10μm)Aと、直径20μmの球状のCu粉末Bとを作成し、図2に示す如く、AとBとを同量誘電体C中に混合したもの、AだけをC中に混合したもの、BだけをC中に混合したものを夫々体積混合比を数種に変えて10種類の誘電複合体供試体を作成した。これらの各供試体について、100〜3000MHz の周波数帯の電波に対する透磁率μ′、μ″及び誘電率ε′、ε″を測定した。表1に測定周波数200MHz に対する、体積比による透磁率と誘電率との変化を示す。又、表2に No.8の供試体(A、B両粉末の体積比が夫々5%のもの)について透磁率と誘電率との周波数特性を示す。」と記載され、
【表1】のフレークAとμ″との関連を見ると、フレークAの存在によりμ″が大になることが明確に認められる。
よって、周知例3には、アスペクト比の大きな粉末を用いるとμ″が大になることと、この事実が電磁波の吸収に利用できることが明白に示されている。

(3) 対比、当審の判断
[本件第1発明について]
本件第1発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、
特許権者は、本件特許明細書中【0008】において「電磁結合を助長させることがない」ものを「電磁波干渉抑制体」と称している、そして、刊行物1に示された一般的な遮へい吸収材2’も当然最終的には電磁結合を防止するものであるから、刊行物1の遮へい吸収材2’は、本件第1発明の「電磁波干渉抑制体」に含まれるものと認められる。
さらに、刊行物1には、高周波における磁気の遮へい吸収を行うことが明確に示されている(下線部分)。
さらに、刊行物1の箔状粒子と粘結物質は、それぞれ、本件第1発明の金属軟磁性体粉末と有機結合剤に相当し、且つ、箔状粒子は第2図に示したように金属板4と平行に配向している。
よって、刊行物1には「高周波領域に於いて不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制する遮へい吸収材2’(本件第1発明の「電磁波干渉抑制体」に相当している。以下、( )内には、本件第1発明で相当している事項の用語を示す。)であって、金属板4(導電性支持体)と、該金属板4(導電性支持体)の少なくとも一方面に設けられた電磁遮へい吸収材(絶縁性軟磁性体層)とを有し、該電磁遮へい吸収材(絶縁性軟磁性体層)は箔状粒子(金属軟磁性体粉末)と粘結物質(有機結合剤)を含み、前記箔状粒子(金属軟磁性体粉末)が扁平状及び/又は針状の粉末であって、尚且つ前記電磁遮へい吸収材(絶縁性軟磁性体層)の磁化容易軸方向若しくは磁性粒子配向方向が、前記金属板4(導電性支持体)と平行である遮へい吸収材2’(電磁波干渉抑制体)。」が示されていることになる。
すなわち、本件第1発明と刊行物1に記載された発明とでは、
「高周波領域に於いて不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制する電磁波干渉抑制体であって、導電性支持体と、該導電性支持体の少なくとも一方面に設けられた絶縁性軟磁性体層とを有し、該絶縁性軟磁性体層は金属軟磁性体粉末と有機結合剤を含み、前記金属軟磁性体粉末が扁平状及び/又は針状の粉末であって、尚且つ前記絶縁性軟磁性体層の磁化容易軸方向若しくは磁性粒子配向方向が、前記導電性支持体と平行であることを特徴とする電磁波干渉抑制体。」で一致し、次の点で相違するものと認められる。
<相違点1>
本件第1発明においては「高周波電子機器類内での電子部品類やプリント配線、部品間や配線基板間、同一配線基板内の」電磁波の干渉を抑制するのに対し、刊行物1には該構成についての言及がない点
<相違点2>
本件第1発明においては、「電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の(前記)複数の電子部品に沿って配され、」の構成を採用しているのに対し、刊行物1には該構成についての言及がない点
<相違点3>
本件第1発明においては、「絶縁性軟磁性体層を(前記)電子部品側に配置する」構成を採用しているのに対し、刊行物1には該構成についての言及がない点

これらの相違点について検討する。
特許権者は、特許明細書の【0005】及び【0006】前半で、
「【0005】これら高周波電子機器のさらなる小型、軽量化を実現する具体策として、例えば、一枚のプリント配線基板に異なる回路を混在(例えば、電力回路と小信号回路)させたり、回路ごとに小基板化し、それらを重ね合わせて実装するといった手段が取られることが多くなってきている。
【0006】しかし、特に、複数の配線基板を重ね合わせて実装する場合においては、部品間や配線基板間の電磁波干渉に由来する電磁障害の起こりうる可能性が極めて高くなり、何等かの対策が不可欠となる。これらの配線基板間における干渉の対策手段としては、一般に、導電性のシールド材(銅板、アルミニウム板等)を配線基板間に挿入することが行われている。」と記載しており、
出願人自ら<相違点1>の「高周波電子機器類内での電子部品類やプリント配線、部品間や配線基板間、同一配線基板内の」電磁波の干渉を抑制することが本件特許出願前に知られていること、及び<相違点2>の「電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の(前記)複数の電子部品に沿って配され、」の構成が本件特許出願前に知られていることを認めている。
また、当該<相違点1>及び<相違点2>の構成は、前記3(2)の[周知例2]にも示されている技術事項であるから、前記<相違点1>及び<相違点2>である電磁波干渉抑制体を適用する個所の構成としては周知の構成といわざるを得ない。
さらに、<相違点3>の構成に関しては、絶縁性軟磁性体層は不要電磁波を吸収するのであるから、絶縁性軟磁性体層を適用する際、絶縁性軟磁性体層を不要電磁波が生ずる電子部品側に配することは極めて当然のことである。
よって、本件第1発明における前記相違点1〜3の構成は、いずれも当業者であれば容易に想到し得たというべきものである。

[本件第2発明について]
本件第2発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、前記相違点1〜3に加えて「絶縁性軟磁性体層の少なくとも一方面に設けられた誘電体層を有し」と「前記誘電体層は誘電体粉末と有機結合剤とを含む」構成を加入した点で更に相違しているが、誘電体粉末と有機結合剤の層を併用することは当該分野においては慣用の技術手段であり、このことは刊行物6にも示されている。

[本件第3発明について]
本件第3発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、前記相違点1〜3に加えて、絶縁性軟磁性体層に「誘電体粉末」を加えた点で更に相違するが、電気特性を調整するため誘電体粉末を加えることも当該分野においては慣用の技術手段であり、このことは刊行物7及び周知例1にも示されている。

[本件第4〜6,8〜11発明について]
本件第4〜6,8〜11発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、前記相違点1〜3に加えて、導電性支持体が「導電体板、網目状導電体板、もしくは導電性繊維の織物」(第4発明)、「絶縁基材と該絶縁基材の少なくとも一方の面に蒸着成膜された導電性膜」(第5発明)、「絶縁基材と該絶縁基材の少なくとも一方面に蒸着成膜された軟磁性金属薄膜」(第6発明)、「導電性微粉末と有機結合剤」(第8発明)、「絶縁基材と、該絶縁基材の少なくとも一方の面上に設けられた導電体層とを有し、該導電体層は導電性微粉末と有機結合剤」(第9発明)、「軟磁性を有する導電性軟磁性支持体」(第10発明)、「軟磁性金属板、網目状軟磁性金属板、もしくは軟磁性金属繊維の織物」(第11発明)である点でそれぞれ相違するが、
いずれの付加された構成も当該分野では慣用の技術手段であり、導電体板及び軟磁性金属板は刊行物1に、導電性繊維織物は刊行物2に、蒸着膜、絶縁基材に蒸着膜、軟磁性金属薄膜、導電性微粉末、導電性微粉末と有機結合材及び導電性軟磁性支持体は刊行物8に示されている。

[本件第7発明について]
本件第7発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、前記相違点1〜3に加えて、導電性膜を設けることと絶縁基材を誘電体層にすることで更に相違するが、導電性膜も誘電体層を併用することも当該分野では慣用の技術手段であり、このことは刊行物6,8にも示されている。

そして、本件第1〜11発明の効果も、刊行物1に記載の発明、刊行物2,6,7,8に記載の技術事項及び前記周知例1,2で示唆された技術事項から当業者が予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

(4) 特許権者の主張について
特許権者は、取消理由通知に対する意見書の5頁中段から7頁末行にかけて、本件発明は、ノイズを散乱・反射させるのではなく、ノイズを熱に変換するするものである点を教示し、更に、アスペクト比の大きな扁平状もしくは針状の粉末材料によるとμ″が大きくなり、当該材料を用いれば、近傍界においても電磁波干渉を抑制できることを見出したと主張している。
そして、証拠として提出された各刊行物ではμ′を利用しているのに対し、本件発明ではμ″を利用している点を意見書最終頁までに詳述している。
しかしながら、アスペクト比の大きな粉末を用いるとμ″が大になることと、この事実が電磁波の吸収に利用できることは、既に周知例3に示されているように当該分野では周知の事実であって、前記特許権者が新たに見出したものとはいえない。
よって、前記特許権者の主張は当を得ないものである。

(5) むすび
以上のとおり、本件第1〜11発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2,6,7,8に記載された技術事項及び各周知例に示された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件第1〜11発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
したがって、本件第1〜11発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対して特許されたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電磁波干渉抑制体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】高周波領域に於いて高周波電子機器類内での電子部品類やプリント配線、部品間や配線基板間、同一配線基板内の不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制する電磁波干渉抑制体であって、導電性支持体と、該導電性支持体の少なくとも一方面に設けられた絶縁性軟磁性体層とを有し、該絶縁性軟磁性体層は金属軟磁性体粉末と有機結合剤を含み、前記金属軟磁性体粉末が偏平状及び/又は針状の粉末であって、尚且つ前記絶縁性軟磁性体層の磁化容易軸方向若しくは磁性粒子配向方向が、前記導電性支持体と平行であり、前記電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の前記複数の電子部品に沿って配され、かつ前記絶縁性軟磁性体層を前記電子部品側に配置することを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項2】高周波領域に於いて高周波電子機器類内での電子部品類やプリント配線、部品間や配線基板間、同一配線基板内の不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制する電磁波干渉抑制体であって、導電性支持体と、該導電性支持体の少なくとも一方面に設けられた絶縁性軟磁性体層とを有すると共に、該絶縁性軟磁性体層の少なくとも一方面に設けられた誘電体層を有し、前記絶縁性軟磁性体層は偏平状及び/又は針状の金属軟磁性体粉末と有機結合剤とを含み、尚且つ前記絶縁性軟磁性体層の磁化容易軸方向若しくは磁性粒子配向方向が、前記導電性支持体と平行であり、前記誘電体層は誘電体粉末と有機結合剤とを含み、前記電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の前記複数の電子部品に沿って配され、かつ前記絶縁性軟磁性体層又は前記誘電体層を前記電子部品側に配置することを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項3】高周波領域に於いて高周波電子機器類内での電子部品類やプリント配線、部品間や配線基板間、同一配線基板内の不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制する電磁波干渉抑制体であって、導電性支持体と、該導電性支持体の少なくとも一方面に設けられた絶縁性軟磁性体層とを有し、該絶縁性軟磁性体層は、偏平状及び/又は針状の金属軟磁性体粉末、誘電体粉末、及び有機結合剤を含み、尚且つ前記絶縁性軟磁性体層の磁化容易軸方向若しくは磁性粒子配向方向が、前記導電性支持体と平行であり、前記電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の前記複数の電子部品に沿って配され、かつ前記絶縁性軟磁性体層を前記電子部品側に配置することを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項4】請求項1,2又は3記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性支持体が、導電体板、網目状導電体板、もしくは導電性繊維の織物であることを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項5】請求項1,2又は3記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性支持体が、絶縁基材と該絶縁基材の少なくとも一方の面に蒸着成膜された導電性膜とからなることを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項6】請求項1,2又は3記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性支持体が、絶縁基材と該絶縁基材の少なくとも一方面に蒸着成膜された軟磁性金属薄膜とからなることを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項7】請求項5又は6記載の電磁波干渉抑制体であって、前記絶縁基材が、請求項1、2又は3記載の前記絶縁性軟磁性体層もしくは、請求項2記載の前記誘電体層で代用されていることを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項8】請求項1,2又は3記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性支持体が、導電性微粉末と有機結合剤とからなることを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項9】請求項1,2又は3記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性支持体が、絶縁基材と、該絶縁基材の少なくとも一方の面上に設けられた導電体層とを有し、該導電体層は導電性微粉末と有機結合剤とを含むことを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項10】請求項1,2又は3記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性支持体が、軟磁性を有する導電性軟磁性支持体であることを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【請求項11】請求項10記載の電磁波干渉抑制体であって、前記導電性軟磁性支持体が、軟磁性金属板、網目状軟磁性金属板、もしくは軟磁性金属繊維の織物であることを特徴とする電磁波干渉抑制体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は電磁波干渉抑制体に関し、特に高周波領域において不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制するために用いられる電磁波干渉抑制体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタル電子機器をはじめ高周波を利用する電子機器類が普及しており、中でも準マイクロ波帯域を使用する通信機器類の普及がめざましい。例えば、携帯電話に代表される移動体通信機器は、特に小型化・軽量化の要求が顕著であり、高密度実装化が最大の技術課題の一つとなっている。
【0003】
したがって、過密に実装された電子部品類やプリント配線には、信号処理速度の高速化も図られているため、静電及び電磁結合による線間結合の増大化や放射ノイズによる干渉などが生じ、電子機器類の正常な動作を妨げる事態が少なからず生じている。
【0004】
このようないわゆる電磁障害に対して、従来は回路の出力端子毎にローパスフィルタ等を接続し、不要な高周波電流を抑制したり、問題となる回路を遠ざけるような方策を講じる等で電磁障害の原因となる電磁結合、不要輻射や伝導ノイズ等を抑制していた。
【0005】
これら高周波電子機器のさらなる小型、軽量化を実現する具体策として、例えば、一枚のプリント配線基板に異なる回路を混在(例えば、電力回路と小信号回路)させたり、回路ごとに小基板化し、それらを重ね合わせて実装するといった手段が取られることが多くなってきている。
【0006】
しかし、特に、複数の配線基板を重ね合わせて実装する場合においては、部品間や配線基板間の電磁波干渉に由来する電磁障害の起こりうる可能性が極めて高くなり、何等かの対策が不可欠となる。これらの配線基板間における干渉の対策手段としては、一般に、導電性のシールド材(銅板、アルミニウム板等)を配線基板間に挿入することが行われている。配線基板では、部品実装密度が高くなっているために、高周波磁界波はノイズ源に対して低インピーダンスとなっており、配線基板の相互間隔も接近して配置されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した配線基板では、ノイズ源となる一方の配線基板に対向する他方の配線基板に対しての遮蔽効果は期待できるものの、同じ基板面に対しては、不要輻射の反射が生じてしまい、ノイズ源側の同一配線基板内での二次的な電磁結合が助長されるという問題がある。
【0008】
それ故に本発明の課題は、電磁波の透過に対しては、導電性のシールド材と同等の遮蔽効果をもち、電磁波の反射に対しては、少なくとも反射による電磁結合を助長させることのない電磁波干渉抑制体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、高周波領域に於いて高周波電子機器類内での電子部品類やプリント配線、部品間や配線基板間、同一配線基板内の不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制する電磁波干渉抑制体であって、導電性支持体と、該導電性支持体の少なくとも一方面に設けられた絶縁性軟磁性体層とを有し、該絶縁性軟磁性体層は金属軟磁性体粉末と有機結合剤とを含み、前記金属軟磁性体粉末が偏平状及び/又は針状の粉末であって、尚且つ前記絶縁性軟磁性体層の磁化容易軸方向若しくは磁性粒子配向方向が、前記導電性支持体と平行であり、前記電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の前記複数の電子部品に沿って配され、かつ前記絶縁性軟磁性体層を前記電子部品側に配置することを特徴とする電磁波干渉抑制体が得られる。
【0010】
また、本発明によれば、高周波領域に於いて高周波電子機器類内での電子部品類やプリント配線、部品間や配線基板間、同一配線基板内の不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制する電磁波干渉抑制体であって、導電性支持体と、該導電性支持体の少なくとも一方面に設けられた絶縁性軟磁性体層とを有すると共に、該絶縁性軟磁性体層の少なくとも一方面に設けられた誘電体層を有し、前記絶縁性軟磁性体層は、偏平状及び/又は針状の金属軟磁性体粉末と有機結合剤とを含み、尚且つ前記絶縁性軟磁性体層の磁化容易軸方向若しくは磁性粒子配向方向が、前記導電性支持体と平行であり、前記誘電体層は誘電体粉末と有機結合剤とを含み、前記電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の前記複数の電子部品に沿って配され、かつ前記絶縁性軟磁性体層又は前記誘電体層を前記電子部品側に配置することを特徴とする電磁波干渉抑制体が得られる。
【0011】
また、本発明によれば、高周波領域に於いて高周波電子機器類内での電子部品類やプリント配線、部品間や配線基板間、同一配線基板内の不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制する電磁波干渉抑制体であって、導電性支持体と、該導電性支持体の少なくとも一方面に設けられた絶縁性軟磁性体層とを有し、該絶縁性軟磁性体層は、偏平状及び/又は針状の金属軟磁性体粉末、誘電体粉末、及び有機結合剤を含み、尚且つ前記絶縁性軟磁性体層の磁化容易軸方向若しくは磁性粒子配向方向が、前記導電性支持体と平行であり、前記電磁波干渉抑制体は同一面上に複数の電子部品を実装する配線基板の前記複数の電子部品に沿って配され、かつ前記絶縁性軟磁性体層を前記電子部品側に配置することを特徴とする電磁波干渉抑制体が得られる。
【0012】
また、本発明によれば、前記導電性支持体が、導電体板、網目状導電体板、もしくは導電性繊維の織物であることを特徴とする電磁波干渉抑制体が得られる。
【0013】
また、本発明によれば、前記導電性支持体が、絶縁基材と該絶縁基材の少なくとも一方の面に蒸着成膜された導電性膜とからなることを特徴とする電磁波干渉抑制体が得られる。
【0014】
また、本発明によれば、前記導電性支持体が、絶縁基材と該絶縁基材の少なくとも一方面に蒸着成膜された軟磁性金属薄膜とからなることを特徴とする電磁波干渉抑制体が得られる。
【0015】
また、本発明によれば、前記絶縁基材が前記絶縁性軟磁性体層もしくは、前記誘電体層で代用されていることを特徴とする電磁波干渉抑制体が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、前記導電性支持体が、導電性微粉末と有機結合剤とからなることを特徴とする電磁波干渉抑制体が得られる。
【0017】
また、本発明によれば、前記導電性支持体が、絶縁基材と、該絶縁基材の少なくとも一方の面上に設けられた導電体層とを有し、該導電体層は導電性微粉末と有機結合剤とを含むことを特徴とする電磁波干渉抑制体が得られる。
【0018】
また、本発明によれば、前記導電性支持体が、軟磁性を有する導電性軟磁性支持体であることを特徴とする電磁波干渉抑制体が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、前記導電性軟磁性支持体が、軟磁性金属板、網目状軟磁性金属板、もしくは軟磁性金属繊維の織物であることを特徴とする電磁波干渉抑制体が得られる。
【0020】
【作用】
本発明の電磁波干渉抑制体は、導電性基材(導電性支持体)の片面もしくは両面に絶縁性の軟磁性体層が設けられたものを基本構成としている。即ち、複数の配線基板が重ね合って実装されている場合においては、電磁波干渉抑制体を配線基板間に挿入することにより、導電性基材がノイズ源となる一方の配線基板に対向する他方の配線基板に対して遮蔽効果が働き電磁波干渉が抑制される。
【0021】
一方、導電性基材を配線基板間に挿入することにより生じる不要輻射の反射による電磁結合の増大化は、軟磁性体粉末と有機結合剤からなる絶縁性軟磁性体層により抑制される。この絶縁性軟磁性体層は、本来、導電性物質である軟磁性金属を微細粉末化し、絶縁性の有機結合剤と混練・分散することにより絶縁層となっていると共に、誘電体層の存在ないし誘電体粉末の軟磁性層への混合により空間とのインピーダンス整合が図られるため、軟磁性層表面での不要輻射の反射が起こり難くなる。
【0022】
また、軟磁性体粉末の形状が偏平状もしくは針状であるために、形状磁気異方性が出現し、高周波領域にて磁気共鳴に基づく複素透磁率の増大化が生じ、不要輻射成分が効率的に吸収、抑制される。
【0023】
【実施例】
次に、本発明の電磁波干渉抑制体の第1実施例を図1を参照して説明すると、電磁波干渉抑制体Aは、導電性支持体(もしくは軟磁性を有する導電性軟磁性支持体)1と、この導電性支持体1の少なくとも一方面(図1では両面)に設けられた絶縁性軟磁性体層2とを有している。絶縁性軟磁性体層2は偏平状または/および針状の軟磁性体粉末(金属軟磁性体粉末)3と有機結合剤4とを含む。
【0024】
この電磁波干渉抑制体Aにおいて、導電性支持体1を構成要素とする場合には、例えば、導電性支持体1を導電体板、網目状導電体板、もしくは導電性繊維の織物のうちの一つを選択して用いる。また、導電性軟磁性支持体1を構成要素とする場合には、導電性軟磁性支持体1を軟磁性金属板、網目状軟磁性金属板、もしくは軟磁性金属繊維の織物のうちの一つを選択して用いる。
【0025】
第2実施例として本発明の電磁波干渉抑制体Aは、図2に示すように、導電性支持体(もしくは軟磁性を有する導電性軟磁性支持体)1が、絶縁基材5とこの絶縁基材5の少なくとも一方の面に蒸着成膜された導電性薄膜6とを含む。図2では、絶縁基材5の一方の面に蒸着成膜された導電性薄膜6を実施例として示したが、絶縁基材5の両面に導電性薄膜6を蒸着成膜してもよい。なお、図示しないが、この導電性薄膜6上には、図1に示した絶縁性軟磁性体層2と同様な絶縁性軟磁性体層が設けられるものである。
【0026】
第3実施例を図2に基づき本発明の電磁波干渉抑制体Aの例を説明すると、電磁波干渉抑制体Aは、導電性支持体(もしくは軟磁性を有する導電性軟磁性支持体)1が、絶縁基材5とこの絶縁基材5の少なくとも一方面に蒸着成膜された軟磁性金属薄膜7とを含む。図2では、絶縁基材5の一方面に蒸着成膜された軟磁性金属薄膜7を実施例として示したが、絶縁基材5の両面に軟磁性金属薄膜7を蒸着成膜してもよい。なお、図示しないが、この軟磁性金属薄膜7上には、図1に示した絶縁性軟磁性体層2と同様な絶縁性軟磁性体層が設けられるものである。
【0027】
第4実施例として本発明の電磁波干渉抑制体Aは、図3に示すように、導電性支持体1が導電性微粉末8と有機結合剤4とからなる。この導電性支持体1の少なくとも一方面には、図1で示した絶縁性軟磁性体層2と同様な絶縁性軟磁性体層が設けられるものである。
【0028】
第5実施例として本発明の電磁波干渉抑制体Aは、図4に示すように、導電性支持体1が、絶縁基材5とこの絶縁基材5の少なくとも一方の面上に設けられた導電体層9とを有している。この導電性支持体1の少なくとも一方の面には、図1で示した絶縁性軟磁性体層2と同様な絶縁性軟磁性体層が設けられるものである。
【0029】
第6実施例として本発明の電磁波干渉抑制体Aは、図5(a)及び図5(b)に示すように、導電性支持体(もしくは軟磁性を有する導電性軟磁性支持体)1と、導電性支持体1の少なくとも一方面に設けられた絶縁性軟磁性体層2と、絶縁性軟磁性体層2の少なくとも一方面に設けられた誘電体層10とを有している。絶縁性軟磁性体層2は偏平状(もしくは針状)の軟磁性体粉末3と有機結合剤4とを含む。誘電体層10は、誘電体粉末11と有機結合剤4とを含む。即ち、図5(a)の電磁波干渉抑制体Aは、導電性支持体1と誘電体層10との間に絶縁性軟磁性体層2が介在されている。また、図5(b)の電磁波干渉抑制体Aは、導電性支持体1と絶縁性軟磁性体層2との間に誘電体層10が介在されている。
【0030】
第7実施例として本発明の電磁波干渉抑制体Aは、図6に示すように、導電性支持体(もしくは軟磁性を有する導電性軟磁性支持体)と、導電性支持体1の少なくとも一方面に設けられた絶縁性軟磁性体層2とを有している。絶縁性軟磁性体層2は、偏平状(もしくは針状)の軟磁性体粉末3、誘電体粉末11、及び有機結合剤4を含む。
【0031】
本発明の一つの構成要素である導電性支持体(もしくは導電性軟磁性支持体)1としては、銅薄板、ステンレス薄板、アルミニウム薄板等の金属薄板、及びそれらに微細な穴開け加工を施したいわゆるパンチングメタル、或いは薄板に微細な切れ目を施した後に、延伸加工したいわゆるエキスパンドメタル、或いは細線状の導体を網目状に加工した金網等を使用できる。
【0032】
同様の形態にて材質のみが軟磁性を有するパーマロイ或いは鉄-珪素鋼等に代えれば、特に比較的低い周波数での電磁干渉抑制効果の高まりが期待できるので、用途に応じて選択するのが望ましい。
【0033】
本発明の構成要素のもう一つである絶縁性軟磁性層2の形成に用いることのできる偏平状(もしくは針状)の軟磁性体粉末3としては、高周波透磁率の大きな鉄アルミ珪素合金(センダスト)、鉄ニッケル合金(パーマロイ)をその代表的素材として挙げることができ、粉末のアスペクト比は十分に大きい(おおよそ5:1以上)ことが望ましい。
【0034】
絶縁性軟磁性層2の形成に用いる有機結合剤4としては、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルプチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ニトリル-ブタジエン系ゴム、スチレン-ブタジエン系ゴム等の熱可塑性樹脂或いはそれらの共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂等の熱硬化性樹脂等を挙げることができる。
【0035】
また、絶縁基材5として例えば、ポリイミド基材等の片面もしくは両面に金属、磁性金属、導電性カーボン、有機導電体等をスパッタ法、真空蒸着法、化学蒸着(CVD)法等の蒸着法により成膜した導電性基材もしくは導電性磁性基材も本発明の支持体として用いることができる。
【0036】
また銀粉、銅粉等の金属微粉末もしくは導電性カーボンブラック、導電性酸化チタン等を有機結合剤4とともに混練、分散しこれをシート化したもの、或いは直接シート化せずにポリイミド基材等の絶縁基材5の片面もしくは両面にドクターブレード法、グラビアコート法或いはリバースコート法等の手段により成膜したものを導電性支持体(もしくは導電性軟磁性支持体)1として使用できる。
【0037】
さらに、第6実施例で述べた本発明のもう一つの構成要素である誘電体層10、もしくは絶縁性軟磁性体層2の形成に用いることのできる誘電体粉末11としては、高周波領域での誘電率が大きく、かつ誘電率の周波数特性が比較的平坦なものが好ましい。一例として、チタン酸バリウム系セラミック、チタン酸ジルコン酸系セラミック、鉛ペロブスカイト系セラミック等を挙げることができる。
【0038】
次に、本発明の電磁波干渉制御体Aによる抑制効果の測定について以下に検証する。図7は、本発明の電磁波干渉制御体Aの一応用例であり、電磁波干渉制御体Aを互いに対向して配置された2つの配線基板21,23間に実装した状態を示している。
【0039】
配線基板21,23には各々複数個の電子部品24、25、26が実装され、配線基板21,23の電子部品24、25、26同士が向かい合うように配線基板21,23が対向配置されている。配線基板21,23の電子部品24、25、26の間隔は、おおよそ2mm以下である。電磁波干渉抑制体Aは配線基板21,23間に挿入される。本発明の効果を検証するにあたっては、図7に示した電磁環境を想定し、以下の抑制効果評価系を準備した。
【0040】
図8(a)及び図8(b)は電磁波干渉抑制体Aの特性評価系を示す。図8(a)は、透過レベル[dB]を測定するための評価系であり、図8(b)は、結合レベル[dB]を測定するための評価系である。各々の場合とも、電磁界波源用発振器28及び電磁界強度測定器(受信用素子)29には、ループ径2mm以下の電磁界送信用微小ループアンテナ31,電磁界受信用微小ループアンテナ32を用いている。透過レベルもしくは結合レベルの測定にはネットワークアナライザ(図示せず)を使用した。
【0041】
[検証例1]
導電性支持体1として24メッシュのステンレス網を用い、この導電性支持体1の両面に乾燥、硬化後の全厚寸法が1.2mmとなるように下記の<組成1>の配合からなる軟磁性体ペーストをドクターブレード法により塗工し、85℃にて24時間キュアリングを行い評価用試料▲1▼を得た。なお、得られた評価用試料▲1▼を振動型磁力計並びに走査型電子顕微鏡を用いて解析したところ、磁化容易軸及び磁性粒子配向方向は試料面内方向であった。
【0042】
<組成1>
偏平状軟磁性体微粉末 ……90重量部
組 成:Fe-Al-Si合金
平均粒径:10μm
アスペクト比:>5
有機結合剤
ポリウレタン樹脂 ……8重量部
硬化剤(イソシアネート化合物) ……2重量部
溶剤(シクロヘキサノンとトルエンとの混合物) ……40重量部
[検証例2]
導電性支持体1として[検証例1]のステンレス網を用いる代わりに、軟磁性を有する24メッシュのパーマロイ網(52Ni-Fe)を用いた以外は、[検証例1]と同様にして評価用試料▲2▼を得た。
【0043】
[検証例3]
導電性支持体1として75μmのポリイミドフィルムの両面に厚さが3μmのアルミニウムをスパッタ成膜したものを用いた以外は、[検証例1]と同様にして評価用試料▲3▼を得た。
【0044】
[検証例4]
導電性支持体1として75μmのポリイミドフィルムの両面に下記の<組成2>の銀ペーストを乾燥、硬化後の厚さが6μmとなるようにドクターブレード法にて成膜したものを用いた以外は、[検証例1]と同様にして評価用試料▲4▼を得た。
【0045】
<組成2>
銀微粉末 ……95重量部
平均粒径:3μm
有機結合剤
ポリビニルブチラール樹脂 ……4重量部
硬化剤(イソシアネート化合物) ……1重量部
溶剤(エチルセルソルブ) ……35重量部
[検証例5]
導電性支持体として、24メッシュのステンレス網を用い、この両面に乾燥、硬化後の全厚が1.0mmとなるように以下の<組成3>からなる軟磁性体ペーストをドクターブレード法により塗工し、85℃にて24時間キュアリングを行った。その後、得られた軟磁性体層上に以下の<組成4>からなる誘電体ペーストを乾燥、硬化後の厚さが片面当たり100μmとなるようにドクターブレード法により塗工し、85℃にて24時間キュアリングを行い、評価用試料▲5▼を得た。
【0046】
なお、得られた評価用試料▲5▼を振動型磁力計並びに走査型電子顕微鏡を用いて解析したところ、磁化容易軸及び磁性粒子配向方向は試料面内方向であった。
【0047】
<組成3>
偏平状軟磁性体微粉末 ……90重量部
組 成:Fe-Al-Si合金
平均粒径:10μm
アスペクト比:>5
有機結合剤
ポリウレタン樹脂 ……8重量部
硬化剤(イソシアネート化合物) ……2重量部
溶剤(シクロヘキサノンとトルエンとの混合物) ……40重量部
<組成4>
チタン酸バリウム粉末 ……90重量部
平均粒径:7μm
有機結合剤
ポリウレタン樹脂 ……8重量部
硬化剤(イソシアネート化合物) ……2重量部
溶剤(シクロヘキサノンとトルエンとの混合物) ……45重量部
[検証例6]
導電性支持体1として、24メッシュのステンレス網を用い、この両面に乾燥、硬化後の全厚が1.2mmとなるように以下の<組成5>からなる誘電体粉末含有軟磁性体ペーストをドクターブレード法により塗工し、85℃にて24時間キュアリングを行い評価用試料▲6▼を得た。
【0048】
<組成5>
偏平状軟磁性体微粉末 ……70重量部
組 成:Fe-Al-Si合金
平均粒径:10μm
アスペクト比:>5
チタン酸バリウム粉末 ……20重量部
平均粒径:7μm
有機結合剤
ポリウレタン樹脂 ……8重量部
硬化剤(イソシアネート化合物) ……2重量部
溶剤(シクロヘキサノンとトルエンとの混合物) ……45重量部
[比較例1]
厚さが100μmの銅板を比較用試料▲1▼とした。
【0049】
[比較例2]
略球状の形状を有し、平均粒径が30μmの鉄粉80重量部をニトリルゴム20重量部に練り込み、厚さ1.2mmのシート状を形成し、これを比較用試料▲2▼とした。
【0050】
評価用試料▲1▼〜▲6▼及び比較用試料▲1▼及び▲2▼の透過レベル及び結合レベルを図8(a)及び図8(b)に示す評価系にて測定した結果を図9(a)及び図9(b)、図10(a)及び図10(b)に示す。図9(a)及び図9(b)は、比較用試料▲1▼及び▲2▼の電磁波干渉抑制効果の周波数特性を示し、図9(a)は透過レベル[dB]の周波数f[GHz]特性である。ここで、透過レベルの基準は、電磁波干渉抑制体Aがない状態の電磁界強度とした。図9(b)は結合レベル[dB]の周波数f[GHz]特性である。ここで、結合レベルの基準は、電磁波干渉抑制体Aがない状態の電磁界強度とした。
【0051】
図10(a〉及び図10(b)は、評価用試料▲1▼、▲4▼、▲5▼及び▲6▼の電磁波干渉抑制効果の周波数特性を示し、図10(a)は透過レベル[dB]の周波数f[GHz]特性である。ここで、透過レベルの基準は、電磁波干渉抑制体Aがない状態の電磁界強度とした。図10(b)は結合レベル[dB]の周波数f[GHz]特性である。ここで、結合レベルの基準は、電磁波干渉抑制体Aがない状態の電磁界強度とした。図11には、評価用試料▲1▼〜▲6▼及び比較用試料▲1▼及び▲2▼の周波数800MHzにおける透過レベル及び結合レベルを示した。
【0052】
図9(a)及び図9(b)からも判るように、導体(銅箔板)のみの場合[比較例1]では、透過レベルは大幅に低下するものの、結合レベルが増大してしまい問題である。
【0053】
一方、比較例2の軟磁性で形状異方性のほとんどない球状鉄粉をゴムに分散させたものでは、結合レベルが低下する傾向を示しているものの、透過減衰がほとんどなく干渉抑制の効果は極めて薄い。
【0054】
これら従来の電磁波干渉抑制体の結果に対して、本発明の電磁波干渉抑制体A([検証例1]〜[検証例6])においては、図10(a)、図10(b)及び図11からも明白なように、透過レベルが十分低くなっているとともに、結合レベルも増大することがない。
【0055】
したがって、たとえば、図7に示したような複数の電子部品24、25、26を実装する配線基板21、23が重ね合わされるように存在する電子機器等において、各々の配線基板21、23間に挿入することで同一配線基板21、23の電磁波干渉を抑制することが可能となる。
【0056】
【発明の効果】
以上、実施例により説明したように、導電性支持体もしくは導電性軟磁性支持体の少なくとも一方面に、偏平もしくは針状の軟磁性体粉末と有機結合剤からなる絶縁性軟磁性体層を設けてなる電磁波干渉抑制体は、導体を挿入したことにより生じる不要輻射の反射を増大化させることなく透過減衰を大きく確保することができ、移動体通信機器をはじめとする高周波電子機器類内での電磁波干渉を抑止することが可能となる。
【0057】
なお、本発明の電磁波干渉抑制体は、その構成要素からわかるように容易に可撓性を付与することが可能であり、複雑な形状への対応や厳しい耐振動、衝撃要求への対応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の電磁波干渉抑制体の第1実施例を示す一部断面図である。
【図2】
本発明の電磁波干渉抑制体における導電性支持体の第2実施例、及び第3実施例を共通の構成で示す一部断面図である。
【図3】
本発明の電磁波干渉抑制体における導電性支持体の第4実施例を示す一部断面図である。
【図4】
本発明の電磁波干渉抑制体における導電性支持体の第5実施例を示す一部断面図である。
【図5】
本発明の電磁波干渉抑制体の第6実施例を示し、(a)及び(b)は導電性支持体上に設けられる2つの層が互いに逆の関係になるように設けられた状態の例を示す各一部断面図である。
【図6】
本発明の電磁波干渉抑制体の第7実施例を示す一部断面図である。
【図7】
本発明の電磁波干渉抑制体を配線基板間に実装した状態の応用例を示す概略断面図である。
【図8】
電磁波干渉抑制体の特性評価に用いた評価系を示し、(a)は透過レベルを測定するための評価系概略図、(b)は結合レベルを測定するための評価系概略図である。
【図9】
比較用試料を図8(a)及び図8(b)の評価系にて測定した電磁波干渉抑制効果の周波数依存性を示し、(a)は透過レベルの周波数特性グラフ、(b)は結合レベルの周波数特性グラフである。
【図10】
評価用試料を図8(a)及び図8(b)の評価系にて測定した電磁波干渉抑制効果の周波数依存性を示し、(a)は透過レベルの周波数特性グラフ、(b)は結合レベルの周波数特性グラフである。
【図11】
評価用試料及び比較用試料について、周波数800MHzにおける各試料の透過レベル及び結合レベルを示すグラフである。
【符号の説明】
1 導電性支持体(導電性軟磁性支持体)
2 絶縁性軟磁性体層
3 軟磁性体粉末
4 有機結合剤
5 絶縁基材
6 導電性薄膜
7 軟磁性金属薄膜
8 導電性微粉末
9 導電体層
10 誘電体層
11 誘電体粉末
21、23 配線基板
24、25、26 電子部品
28 電磁界波源用発振器
29 電磁界強度測定器
31 電磁界送信用微小ループアンテナ
32 電磁界受信用微小ループアンテナ
A 電磁波干渉抑制体
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-09-01 
出願番号 特願平6-4864
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H05K)
最終処分 取消  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 田々井 正吾
鈴木 久雄
登録日 2003-02-28 
登録番号 特許第3401650号(P3401650)
権利者 NECトーキン株式会社
発明の名称 電磁波干渉抑制体  
代理人 池田 憲保  
代理人 佐々木 敬  
代理人 後藤 洋介  
代理人 山本 格介  
代理人 山本 格介  
代理人 後藤 洋介  
代理人 池田 憲保  
代理人 佐々木 敬  
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