• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C03B
管理番号 1127294
異議申立番号 異議2003-70976  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-11-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-15 
確定日 2005-09-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3335291号「ガラス板の製造方法及び製造装置」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3335291号の訂正後の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 1.訂正の適否
1-1.訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
(1)訂正事項a
請求項5を削除して、請求項6の項番を繰り上げ、特許請求の範囲を、
「【請求項1】溶融ガラスを流下させ成形体で板状に成形し、成形された板状ガラスを引っ張りローラで挟持しつつ下方に引き抜くディスプレイガラス基板用のガラス板の製造方法において、成形体の下方にガラス板の両端を挟持する冷却ローラを設けるとともに、この冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度よりも小さくして冷却ローラとガラス板端部の接触時間を長くすることによって前記ガラス板端部の冷却を高めるとともに、前記板状に成形されたガラスに、横方向と縦方向とに張力を加えた状態でガラス板を固化させることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】請求項1記載のガラス板の製造方法において、冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度の30〜90%としたことを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項3】請求項1記載のガラス板の製造方法において、冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度の40〜80%としたことを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項4】請求項1〜3記載のガラス板の製造方法を用いてディスプレイ用ガラス基板を製造することを特徴とするディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項5】溶融ガラスを板状に成形する成形体と、この成形体の下方向に配置され、成形された板状ガラスを挟持しつつ下方に引き抜く引っ張りローラと、を備えたガラス板の製造装置において、成形体の下方にガラス板の両端を挟持する冷却ローラを設けるとともに、この冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度よりも小さくする手段を設けたことを特徴とするディスプレイ基板用のガラス基板を製造するガラス板の製造装置。」と訂正する。
1-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
上記訂正事項aは、詳細にみるとa-1.請求項5を削除し、請求項6を請求項5とする、a-2.請求項1の「ガラス板の製造方法において」の前に「ディスプレイガラス基板用の」を挿入する、a-3.請求項1の「引っ張りローラーの周速度よりも小さくし」を、「引っ張りローラーの周速度よりも小さくして冷却ローラとガラス板端部の接触時間を長くすることによって前記ガラス板端部の冷却を高めるとともに」と訂正する、a-4.請求項1の「加えた(働いた)状態で」を、「加えた状態で」と訂正する、a-5.請求項6(訂正後の請求項5)の「ガラス板の製造装置」の前に「ディスプレイ基板用のガラス基板を製造する」を挿入するというものである。
上記訂正事項a-1.は、請求項の削除であるから特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記訂正事項a-2.、a-5.は、それぞれディスプレイガラス基板用という用途を限定したものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、またこの用途は本件特許明細書に記載(本件特許掲載公報第5頁第9欄第15行)されているから願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記訂正事項a-3.は、周速度を小さくすることをさらに限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、またこのことは本件特許明細書に記載(本件特許掲載公報第3頁第5欄第40〜45行)されているから願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記訂正事項a-4.は、「(働いた)」という記載を削除し、明りょうにしたのであるから明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
1-3.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項、第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
2.本件訂正発明
特許権者が請求した上記訂正は、上述したとおり、認容することができるから、訂正後の本件請求項1〜5に係る発明は訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜5(上記1-1.(1))に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、「本件訂正発明1〜5」という)。
3.特許異議申立てについて
3-1.取消理由通知の概要
当審の取消理由通知の概要は、請求項1〜6に係る発明は刊行物1〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜6に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものであるというものである。
3-2.刊行物の記載内容
(1)刊行物1:「ガラス製造技術講演会-最近の新しいガラスの製造方法と開発動向-1991」(1991年2月13日のガラス製造技術講演会(主催 社団法人 日本セラミックス協会ガラス部会)で配布された資料)第7〜19頁:特許異議申立人竹野哲雄(以下、「申立人」という)が提出した甲第1号証
(a)「最近になって、薄膜トランジスタ(TFT)や薄膜ダイオード(TFD)を使用したアクティブ・マトリックス液晶ディスプレイ(AM-LCD)がディスプレイ用パネルとして最も有望な技術であると認識されるようになり、以来、コーニング社のフュージョンダウンドロー方式による薄板ガラス成形技術は、溶融からの連続工程で精密な板ガラスを製造することができる唯一の板ガラス成形工程として、エレクトロニクス業界の中で注目を集めている。本レポートでは、スロットダウンドロー工程の簡単な説明の後、コーニング社におけるフュージョン法の開発の歴史と技術的局面について述べる。」(第7頁第5〜14行 訳文 以下同じ)
(b)「IIIフュージョンダウンドロー工程・・・スロットダウンドロー工程においては、ガラスの表面がスロットにて成形されるため、光学的な表面品位を得るのが非常に難しい。この欠点を解消するためにフュージョン法による成形工程が開発された。溶融ガラスはスロットから流し出されるかわりに、フュージョン管のトラフへと供給されるのだ。図2に示されるように、管の両側面からオーバーフローしたガラスは管の根元で融合し、何ものにも触れられていない表面をもつ板ガラスへと成形される。」(第8頁第6〜17行)
(c)「(3)フュージョンドローイング機 管の根元で新たに成形された板ガラスの端は、引っ張り中の板幅の収縮を最小限にするために、エッジロールで支えられ、冷却される。まだやわらかい板ガラスは次に移行ゾーンを通り抜け、そこで急速に冷却される。このゾーンは板ガラス成形工程中で重要な部分の一つである。というのも、このゾーンで板の形状が固定されるからである。次に板ガラスは、第一ローラーにより下方へ引っ張られ、アニーラーへと進む。」(第10頁第10〜17行)
(d)「フュージョン法の最大の長所は、平面精度が高くしかもまっさらな表面を作り出すことができるということである。・・・そういうわけで、フュージョンガラスは、TFT/TFD基板の用途に最も適しているのである。」(第11頁第21行〜 第12頁第14行)
(e)第15頁の第1図「スロットダウンドロー工程の概略図」の注に「ガラスは、縁が均一な冷たさをもつスロットに近づく。」、「端が冷たいために、ガラスは板幅が収縮することなしに、薄く引かれる。」と記載されている。
(2)刊行物2:小川晋永他編「ガラス製造の現場技術 第3巻 ガラス製品と成形技術」社団法人日本硝子製品工業会 第309〜311頁(1993年6月3日):申立人が提出した甲第2号証
(a)「下引き法の技術的ポイントは、巾の維持とも言える。耳部の冷却を主体に様々な工夫が行われている。」(第311頁第11〜12行)
(3)刊行物4:特公平2-60618号公報:申立人の提出した甲第4号証
(a)「こうして合流したガラス素地20は、ナールロール21により巾がせまくなる事を防止されながらひきぬきロール22の引張り力により薄板化され、クーラー23によって冷却固化される。」(第1頁第2欄第27行〜第2頁第3欄第3行)
(b)「こうして形成されたガラス板11は下方よりの引っ張り力により薄板に伸ばされながら冷却部12に導かれる。同時にガラス板の両端は、表面に凹凸のある1対の回転ロール14(ナールロール)にはさまれてガラス板の巾が狭くなっていく事が防止されている。ガラス板11は十分に冷却され変形をおこさなくなった部分で引張りロール15により下方へ引っ張られている。」(第2頁第4欄第20〜29行)
(4)刊行物5:成瀬省著「ガラス工学」共立出版株式会社 第162〜163頁(昭和52年12月25日):申立人の提出した甲第5号証
(a)「Colburn法・・・素地面から引き上げられた直後に、板ガラスの両端は、第10・14図のようなナールロール(Knurl roll)と称する1対の冷却ローラーによってはさまれる。ナールロールは絶えず適当な速度で回転していて、板の両端部のガラスを常に一様に冷却するので、この部分のガラスだけが硬くなり、表面張力による板幅の縮小は全く防止される。ナールロールはガラスの冷却のみでなく、それ自体の冷却も行うために、中空軸を通じて先端まで冷却水を流通させている。なおローラーの面には多数の細かい溝が刻まれて、その作動が確実に続けられるように工夫されている。」(第162頁第16行〜第163頁第3行)
(5)刊行物6:特公昭46-18037号公報:申立人の提出した甲第6号証
(a)「シートの幅と厚みとはシートが成形される時にシートの端縁の温度いかんによって左右されるので、シートの端縁の温度を制御するための一層正確な方法が必要であることが明らかにされてきた。」(第2頁第4欄第4〜8行)
(b)「前述の実施例に対するさらに改変した例としては、端縁の温度が望ましい温度から変化するときに、端縁の温度を調節するための手段として水冷の溝付きロールを用いることである。引抜き室においては水冷の溝付きロールはシートの端縁と係合してこれを冷却する。溝付きロールの回転速度を変化することによって冷却の有効速度を増加又は減少させることができる。溝付きロールの速度を増加させると、冷却速度を減少させ、シートの端縁はその熱エネルギを保有している。溝付きロールの速度の減少は冷却の有効速度を増加させる。」(第7頁第13欄第19〜29行)
(c)「シートが成形されるときシートの幅がシートの端縁の温度に左右されるようになっており、且つガラスの溶融バスの表面から予め決定された幅のガラスシートを引抜き、溶融ガラスの表面の近くに置かれた部材に設けたみぞ孔内をシートの端縁が通過するようにし、このみぞ付き部材はガラスと接触し且つシートの端縁の側方の動きを制限するようにしたガラスシートの製造方法において、・・・」(第8頁第16欄第16〜23行)
(6)刊行物7:特公昭47-50205号公報:申立人の提出した甲第7号証
(a)「二対の引張ロールは成形ロールを出た板状ガラスに張力を与え、ガラスの厚みを減少させると同時に長手方向の平面度を改善する。その為に引張ロールには成形ロールの周速よりも大なる周速を与える。本実施例ではこれら引張ロールの成形ロールに対する周速における比は約1.2〜1.4である。」(第2頁第4欄第2〜8行)
(7)刊行物8:特開平8-231233号公報:申立人の提出した甲第8号証
(a)「従来より磁気ディスク(ハードディスク)、光ディスク、液晶ディスプレイなどの基板として薄板ガラス基板が用いられているが、・・・通常、これらの薄板ガラス基板は、ダウンドロー法、フロート法などの製法で得られた板ガラス素材を所定の寸法に加工後、表面研磨して製造される。」(第2頁第1欄第31〜39行)
3-3.対比・判断
(1)本件訂正発明1について
フュージョンダウンドロー工程によって板ガラスを製造する際に、刊行物1の上記(1)(b)には、「溶融ガラスはスロットから流し出されるかわりに、フュージョン管のトラフへと供給されるのだ。図2に示されるように、管の両側面からオーバーフローしたガラスは管の根元で融合し、何ものにも触れられていない表面をもつ板ガラスへと成形される」と記載されており、また上記(1)(c)には、「管の根元で新たに成形された板ガラスの端は、引っ張り中の板幅の収縮を最小限にするために、エッジロールで支えられ、冷却される。まだやわらかい板ガラスは次に移行ゾーンを通り抜け、そこで急速に冷却される。このゾーンは板ガラス成形工程中で重要な部分の一つである。というのも、このゾーンで板の形状が固定されるからである。次に板ガラスは、第一ローラーにより下方へ引っ張られ、アニーラーへと進む」と記載されている。
そして、上記(1)(a)(d)には、この板ガラスが「液晶ディスプレイ(AM-LCD)用パネル」として、「TFT/TFD基板」の用途に使用されることが記載されている。
これら記載を本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には「溶融ガラスを管からオーバーフローさせ、管の根元で板ガラスに成形され、成形された板ガラスを第一ローラーで挟持しつつ下方へ引っ張る液晶ディスプレイパネル用TFT/TFD基板を用途とする板ガラスの製造方法において、管の根元で新たに成形された板ガラスの端は、引っ張り中の板幅の収縮を最小限にするために、エッジロールで支えられ、冷却される板ガラスの製造法」という発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると云える。
そこで本件訂正発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「管」、「管の根元で新たに成形された板ガラス」、「第一ローラー」、「液晶ディスプレイパネル用TFT/TFD基板を用途とする板ガラス」は、本件訂正発明1の「成形体」、「成形された板状ガラス」、「引っ張りローラ」、「ディスプレイガラス基板用のガラス板」にそれぞれ相当する。
また、刊行物1発明の「エッジロール」は「端」を「引っ張り中の板幅の収縮を最小限にするために、支え」ているのであるから、板ガラスの「片端」ではなく「両端」を挟持していることは明らかである。このことは、引っ張り中に板幅が収縮しないようにするには、刊行物4のようにロールが板ガラスの両端を挟持していると考えるのが普通であることからそう云える。
そして、上記したとおり、エッジロールが板ガラスの両端を挟持して板幅の収縮を最小限にし、かつ第一ローラーが縦方向に引っ張っているのであるから、刊行物1発明において、横方向、縦方向の張力を加えた状態で板ガラスを固化させていることも明らかである。
また、刊行物1の「The edges of・・・are held and cooled by edge rolls」(第10頁第11〜13行)の記載から、エッジロールが板ガラスの端を冷却していることも明らかであるから、「エッジロール」は、本件訂正発明1の「冷却ローラ」に相当する。
してみると、両者は「溶融ガラスを流下させ成形体で板状に成形し、成形された板状ガラスを引っ張りローラで挟持しつつ下方に引き抜くディスプレイガラス基板用のガラス板の製造方法において、成形体の下方にガラス板の両端を挟持する冷却ローラを設けるとともに、板状に成形されたガラスに、横方向と縦方向とに張力を加えた状態でガラス板を固化させるガラス板の製造方法」という点で一致し、次の点で相違していると云える。
相違点:本件訂正発明1では、「冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度よりも小さくして冷却ローラとガラス板端部の接触時間を長くすることによってガラス板端部の冷却を高める」のに対して、刊行物1発明では、その点が不明である点
次にこの相違点を検討する。
一般に、引き抜きによるガラス板の製造において、ガラス板の両端部のガラスを冷却することにより、この部分のガラスを硬くし、表面張力による板幅の縮小を防止することは普通に知られていたことである(必要ならば、刊行物5参照)。
刊行物1には、引抜き法であるダウンドロー法の一種であるスロットダウンドロー法において、「ガラスは、縁が均一な冷たさをもつスロットに近づく」、「端が冷たいために、ガラスは板幅が収縮することなしに、薄く引かれる」と記載されており(上記(1)(e))、ダウンドロー法において、端を冷たくすることが板幅を収縮させないために必要であることが記載されている。
このことは、刊行物2にも、「下引き法の技術的ポイントは、巾の維持とも言える。耳部の冷却を主体に様々な工夫が行われている」とされていることからも明らかである(上記(2)(a))。
してみると、ダウンドロー法において、ガラス板両端を冷却することが、板幅の維持するために必要であることが普通に知られていたと云える。
そして、ガラス板を引抜く際に、ガラス板両端のロールの速度を減少させること(すなわちロールとガラス板両端との接触時間を長くすること)により冷却の有効速度を増加させることは知られているから(刊行物6)、上記相違点の「冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度よりも小さくして冷却ローラとガラス板端部の接触時間を長くすることによってガラス板端部の冷却を高める」ことは当業者が容易に想到し得ることであり、その効果も予測される範囲を出ないものと云える。
また、刊行物1発明において、エッジロールの付近と第一ローラーの付近とのガラス板の厚みは、薄いガラス板を製造するのであるから、エッジロールの付近の方が厚いと解される。その際、厚いガラス板に接するロールの周速度が薄いガラス板に接するロールの周速度より小さいことは自明であり(必要ならば、刊行物7参照)、かつエッジロールは挟持するという役目から云ってスリップしないと解されるので、エッジロールの周速度を第一ローラの周速度よりも小さく設計することは当業者が容易に想到し得る設計事項であると云える。
以上のことから、本件訂正発明1は、刊行物1、2、4〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件訂正発明2、3について
本件訂正発明2、3は、それぞれ請求項1を引用しさらに「冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度の30〜90%とした」、「冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度の40〜80%とした」と周速度の数値範囲を限定したものである。しかしながら、ガラス板を薄く製造するという点からみてガラス板の両端の冷却を行うことは上記(1)で述べたように知られていたのであるから、冷却を適切に行うために、上記数値範囲を採用することは、当業者が実際の操業上、容易に採用し得るものであると云える。
また、上記数値範囲自体、刊行物7の引っ張りロールと成形ロールの周速度の関係からみても、格別のものとは云えない。
してみると、本件訂正発明2、3は、上記(1)と同じ理由で、刊行物1、2、4〜7に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件訂正発明4について
本件訂正発明4は、少なくとも請求項1を引用し、さらに「請求項1記載のガラス板の製造方法を用いてディスプレイ用ガラス基板を製造することを特徴とするディスプレイ用ガラス基板の製造方法」と限定したものであるが、ダウンドロー法で製造されたガラス板でディスプレイ用ガラス基板の製造を行うことは知られているから(刊行物8)、本件訂正発明4は、上記(1)と同じ理由で、刊行物1、2、4〜8に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件訂正発明5について
刊行物1の記載を本件訂正発明5の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には「溶融ガラスを板状に成形する管と、成形された板ガラスを挟持しつつ下方に引抜く第一ローラーと、を備えた板ガラスの製造装置において、管の根元で新たに成形された板ガラスの端を挟持するエッジロールを設ける液晶ディスプレイパネル用TFT/TFD基板を用途とするガラス基板を製造する板ガラスの製造装置」という発明(以下、「刊行物1装置発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明5と刊行物1装置発明とを対比すると、両者は「溶融ガラスを板状に成形する成形体と、この成形体の下方向に配置され、成形された板状ガラスを挟持しつつ下方に引き抜く引っ張りローラと、を備えたガラス板の製造装置において、成形体の下方にガラス板の両端を挟持する冷却ローラを設けるディスプレイ基板用のガラス基板を製造するガラス板の製造装置」という点で一致し、次の点で相違している。
相違点:本件訂正発明5では、「冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度よりも小さくする手段を設けて」いるのに対して、刊行物1装置発明ではその点が不明である点
次にこの相違点を検討すると、上記(1)で述べた理由と同じことが云えるから、本件訂正発明5は、刊行物1、2、4〜8に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、訂正後の本件請求項1〜5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、訂正後の本件請求項1〜5に係る発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ガラス板の製造方法及び製造装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】溶融ガラスを流下させ成形体で板状に成形し、成形された板状ガラスを引っ張りローラで挟持しつつ下方に引き抜くディスプレイガラス基板用のガラス板の製造方法において、
成形体の下方にガラス板の両端を挟持する冷却ローラを設けるとともに、この冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度よりも小さくして冷却ローラとガラス板端部の接触時間を長くすることによって前記ガラス板端部の冷却を高めるとともに、前記板状に成形されたガラスに、横方向と縦方向とに張力を加えた状態でガラス板を固化させることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】請求項1記載のガラス板の製造方法において、冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度の30〜90%としたことを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項3】請求項1記載のガラス板の製造方法において、冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度の40〜80%としたことを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項4】請求項1〜3記載のガラス板の製造方法を用いてディスプレイ用ガラス基板を製造することを特徴とするディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項5】溶融ガラスを板状に成形する成形体と、
この成形体の下方向に配置され、成形された板状ガラスを挟持しつつ下方に引き抜く引っ張りローラと、を備えたガラス板の製造装置において、
成形体の下方にガラス板の両端を挟持する冷却ローラを設けるとともに、この冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度よりも小さくする手段を設けたことを特徴とするディスプレイ基板用のガラス基板を製造するガラス板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス板の製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス板の製造方法は各種知られているが、溶融ガラスの進行方向の観点から大別すると、引き上げ法、水平状態で製造する方法、下方に流下させて製造する方法等に分類できる。
【0003】
このうち、溶融ガラスを下方に流下させ、ガラス板を垂直下方へ引き抜いてガラス板を製造する方法として、ダウンドロー法が知られている。
【0004】
ダウンドロー法としては、例えば、溶融ガラスを断面がくさび状の成形体の表裏面に沿って流下させ成形体の下端部で合流させて板状とし、これを一対の引っ張りローラによって下方に引き抜きつつ冷却してガラス板を製造する方法等が知られている。この際、成形体を離れたガラス板が幅方向に収縮する(幅が狭くなる)のを防止するため、成形体の両端部の下方にそれぞれガラス板の両端を挟持しつつガラスの進行方向に回転するロールを設ける技術が開発されている(実開昭62-21034号公報等)。
【0005】
なお、ダウンドロー法によって作られるガラス板は、他の方法によって作られるガラス板に比べ薄いものが得られるので、各種ディスプレイ用ガラス基板や各種情報記録媒体用ガラス基板として利用されているが、その成形方法の特性により、ガラス板の平坦性はフロート法などによって作られたガラス板より悪くなる場合がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
成形体を離れた後のガラス板の幅方向の収縮が大きいと、有効に利用できるガラス板の幅が小さくなり好ましくない。
【0007】
また、液晶ディスプレイなどの各種ディスプレイ用ガラス基板では、大型の基板であっても反りの非常に少ない高度な反り品質(高い平坦性)が望まれるが、上述した方法では反りの品質が十分であるとは言えなかった。
【0008】
なお、成形時に生じたガラス板の反りは、その後、アニール等の工程を経ることによってある程度軽減することができるが、最終的に反りの非常に少ない高度な反り品質を達成するためには、成形の際に可能な限り反りを小さくしておく必要がある。
【0009】
本発明は上述した背景の下になされたものであり、成形体を離れた後のガラス板の幅方向の収縮がより小さく、かつ、ガラス板の反りを大幅に改善できるガラス板の製造方法及び製造装置の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載のガラス板の製造方法は、溶融ガラスを流下させることにより板状に成形するガラス板の製造方法において、板状に成形されたガラスに、横方向と縦方向とに張力を加えることを特徴とする構成としてある。
【0012】
請求項2記載のガラス板の製造方法は、溶融ガラスを流下させ成形体で板状に成形し、成形された板状ガラスを引っ張りローラで挟持しつつ下方に引き抜くガラス板の製造方法において、成形体の下方にガラス板の両端を挟持する冷却ローラを設けるとともに、この冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度よりも小さくしたことを特徴とする構成としてある。
【0013】
請求項3記載の発明は、上記請求項2記載のガラス板の製造方法において、冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度の30〜90%としたことを特徴とする構成としてある。
【0014】
請求項4記載の発明は、上記請求項2記載のガラス板の製造方法において、冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度の40〜80%としたことを特徴とする構成としてある。
【0015】
請求項5記載の発明は、上記請求項1〜4記載のガラス板の製造方法を用いてディスプレイ用ガラス基板を製造することを特徴とする構成としてある。
【0016】
請求項6記載の発明は、上記請求項1〜4記載のガラス板の製造方法を用いて情報記録媒体用ガラス基板を製造することを特徴とする構成としてある。
【0017】
請求項7記載のガラス板の製造装置は、溶融ガラスを板状に成形する成形体と、この成形体の下方向に配置され、成形された板状ガラスを挟持しつつ下方に引き抜く引っ張りローラと、を備えたガラス板の製造装置において、成形体の下方にガラス板の両端を挟持する冷却ローラを設けるとともに、この冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度よりも小さくする手段を設けたことを特徴とする構成としてある。
【0018】
【作用】
本発明では、冷却ローラの周速度が、引っ張りローラーの周速度よりも小さいので、冷却ローラで止められた溶融ガラスは、冷却ローラとの接触時間が長くなり、この結果、ガラス板の端部の冷却がより大きくなる。このため、ガラス板の幅方向の収縮をより小さくすることができる。
【0019】
さらに、ガラス板の端部がガラス板の中央部より先に冷却されるため、ガラス板の幅方向に張力が働く。また、冷却ローラと引っ張りローラとの間で強い引っ張りの力が働くため、ガラス板の長さ方向にも張力が働く。このように、幅方向と長さ方向に張力が働いた状態でガラス板が固化するため、幅方向及び長さ方向共にガラス板の反りを大幅に改善できる。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明のガラス板の製造方法では、溶融ガラスを流下させ板状に成形する。
【0022】
ここで、溶融ガラスを流下させ板状に成形する方法は、特に制限されず、細部の製造条件も含め公知の方法を採用できる。
【0023】
例えば、溶融ガラスを流下させる方法、溶融ガラスの温度及び粘度等、成形体の使用の有無、成形体の形状、構造、材質及び温度、各種温度条件等は適宜選択できる。
【0024】
溶融ガラスを流下させる方法としては、例えば、成形体の頂部に形成したスリットから溶融ガラスを流出(オーバーフロー)させ成形体の表面に沿って流下させ成形体の下端部から流下させる方法や、ガラス溶融槽の底部に設けられたスリットから溶融ガラスを流下させる方法等が挙げられる。
【0025】
なお、成形体は、板状に流下する溶融ガラスの厚さ、幅、均一性等を制御する役割を果たすものであればよく、スリットや、厚さや幅等の制御板なども含まれる。本発明では成形体を使用しない態様も含まれる。
【0026】
溶融ガラスを流下させ成形体で板状に成形する方法としては、例えば、ダウンドロー法などが挙げられる。ここで、ダウンドロー法は、一般的には溶融ガラスを流下させ成形体で成形し、これを垂直下方に引き抜いてガラス板を製造する方法である。ダウンドロー法の一例としては、例えば、溶融ガラスを断面がくさび状の成形体の表裏面に沿って流下させ成形体の下端部で合流させて板状とし、これを引張りローラで下方に引き抜きつつ冷却しながらガラス板を製造する方法等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、ガラスの材質、サイズ、厚さ等は特に制限されない。
ガラスの材質としては、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
【0028】
本発明では、上記のようにして成形された板状ガラスを引っ張りローラで挟持しつつ引き抜く。
この際、成形体の下方にガラス板の両端を挟持する冷却ローラを設けるとともに、この冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度よりも小さくする。
このように、冷却ローラの周速度を引っ張りローラーの周速度(ガラスの引っ張り速度)よりも小さくすることで、冷却ローラで止められた溶融ガラスは、冷却ローラとの接触時間が長くなり、この結果、ガラス板の端部の冷却がより大きくなる。このため、ガラス板の幅方向の収縮をより小さくすることができる。
さらに、ガラス板の端部がガラス板の中央部より先に冷却されるため、ガラス板の幅方向に張力が働く。また、冷却ローラと引っ張りローラとの間で引っ張りの力が働くため、ガラス板の長さ方向にも張力が働く。このように、幅方向と長さ方向に張力が働いた状態でガラス板が固化するため、幅方向及び長さ方向共にガラス板の反りを大幅に改善できる。
【0029】
冷却ローラ及び引っ張りローラの材質、形状、構造等は特に制限されない。
冷却ローラは、ステンレス、耐熱鋼、セラミックス等で形成することができる。また、冷却ローラ中に気体や液体などの冷媒を通すこともできる。冷却ローラは、通常成形されたガラス板の両端部だけを挟持する態様とすればよいが、引っ張りローラと同様にガラス板を挟持する態様とすることもできる。冷却ローラは、上下に複数設けたり、あるいは、ガラス板に対し斜め方向に設けることもできる。
【0030】
冷却ローラ及び引っ張りローラの間隔及び設置位置は、上記作用及び製品品質等を考慮し、適宜調整できる。例えば、冷却ローラは、上記作用及び冷却効果等を考慮して、成形体の下方に近接して設けるとよい。
【0031】
溶融ガラスを流下させ成形体で板状に成形されたガラス板は、成形体を離れた直後から、冷却され、しだいに固化する。冷却方法としては、成形体を離れた直後の冷却ローラによる冷却の他に、任意の位置における、放熱による自然冷却、送風による冷却、冷却ローラーや冷却器などを用いた冷却方法等を併用できる。冷却速度や徐冷スケジュール等の冷却条件は適宜制御できる。
【0032】
特に、本発明では、冷却ローラと引っ張りローラとの間で、ガラス板の長さ方向に張力が働きつつ冷却されるようにすべく、これらのローラ間のガラスの温度、冷却速度等を制御することが好ましい。
【0033】
本発明では、冷却ローラの周速度を、引っ張りローラーの周速度の30〜90%とすることが好ましい。その理由は、90%よりも大きいと上述した作用が小さくなり、逆に、30%よりも小さいとガラス板と冷却ローラとの間でスリップが生じガラスの流下速度が一定になりにくく、また、冷却ローラの摩耗が激しくなる傾向があるためである。
【0034】
同様の観点から、冷却ローラの周速度は、引っ張りローラーの周速度の40〜80%とすることがより好ましい。
【0035】
本発明では、一対で一組の引っ張りローラを複数組配置することができる。これにより、例えば、各引っ張りローラにかかるガラス重量が減り、挟持圧力が下げられるため、ガラスが割れにくくなるとともに、滑落しにくくなる。
【0036】
本発明では、上記本発明方法を用いて製造されたガラス板を平坦度の高い圧縮板で挟み、加圧しつつ加熱、徐冷してガラス板をさらに平坦化処理することもできる。
【0037】
なお、上記本発明方法を用いて製造された板ガラス素板は、通常、所定の寸法に加工後、必要に応じ研磨等を施して各種ガラス基板とされる。
【0038】
本発明方法を用いて製造されたガラス板の用途は特に制限されないが、例えば、平坦性や薄さ等を要求される、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどのディスプレイ用ガラス基板や、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスクなどの情報記録媒体用ガラス基板として好適に使用できる。また、各種電子光学用ガラス基板や、電気・電子部品用のガラス基板としても好適に使用できる。
【0039】
次に、本発明のガラス板の製造装置について説明する。
【0040】
本発明のガラス板の製造装置は、溶融ガラスを板状に成形する成形体と、この成形体の下方向に配置され、成形された板状ガラスを挟持しつつ下方に引き抜く引っ張りローラと、を備えたガラス板の製造装置において、成形体の下方にガラス板の両端を挟持する冷却ローラを設けるとともに、この冷却ローラの周速度を引っ張りローラーの周速度よりも小さくする手段を設けたことを特徴とする。
この装置によれば、上述した本発明方法を容易に実現できる。
【0041】
本発明装置において冷却ローラの周速度を制御する手段としては、冷却ローラの駆動手段及び回転速度の制御手段を設ける方法等が挙げられる。引っ張りローラの回転速度を制御する手段は特に制限されない。回転速度の制御は高精度であることが好ましい。
【0042】
本発明装置における他の部分については特に制限されない。例えば、溶融ガラスの供給手段、溶融ガラスの流下手段、温度制御手段(加熱、冷却手段等)、ローラの形状、構造、材質等や、成形体の形状、構造、材質等は適宜選択できる。
【0043】
本発明では、反りが少なく高い平坦性を有する薄板ガラスを容易かつ安価に製造できる。さらに、平坦性の向上を目的とする研磨量を小さくできる。
また、大型の基板であっても反りの非常に少ない薄板ガラスを容易かつ安価に得ることができるので、各種ディスプレイ用ガラス基板の製造方法として優れる。
【0044】
【実施例】
以下、実施例にもとづき本発明をさらに具体的に説明する。
【0045】
実施例1
図1はダウンドロー方式のガラス板製造装置の縦断面を概略的に示す図、図2は図1の装置内部を図1のI-I線の方向から見た正面図である。
【0046】
これらの図面において、1は耐火レンガからなる炉壁、2は断面がほぼくさび状の成形体である。図示の成形体2は溶融ガラス3を収容する凹部2aを有するいわゆるフィーディングセルと称されるものであるが、他の種類のものを用いても良い。成形体2の凹部2aは、図2に示すように溶融ガラス供給管4に接続されている。この溶融ガラス供給管4から凹部2aに溶融ガラスが供給され、凹部2aの上側のスリット状開口から溶融ガラスが溢れ、成形体2の両側面に沿って流下し、成形体2の下端部で合流する。合流した溶融ガラス3は炉室5内で直ちに冷却されてガラス板3’となり、成形体2の下方に配置された一対の引っ張りローラ6によって下方に引き抜かれる。
また、成形体2のすぐ下には、ガラス板3’の両端を冷却するために、ステンレス製の冷却ローラ7が配設されている。
【0047】
本実施例においては、引っ張りローラの周速度は62cm/分とし、冷却ローラ7の周速度は31cm/分とした。
【0048】
上記装置を用いて得られたガラス板は、全板幅520mm、幅方向中央部の厚みが1.1mmであって、厚みが1.1mm±0.1mmの範囲に収まる有効幅は330mm程度であった。また、得られたガラス板の反りは、縦・横方向共に0.05%程度であった。反りは、図4に示すように、反り=(t/l)×100%で算出した。
【0049】
比較例1
比較として、引っ張りローラの周速度及び冷却ローラ7の周速度を共に同じ62cm/分としたこと以外は上記実施例1と同様にしてガラス板を製造した。
その結果、全板幅490mm、幅方向中央部の厚みが1.1mmであって、厚みが1.1mm±0.1mmの範囲に収まる有効幅は250mm程度であった。また、得られたガラス板の反りは、縦・横方向共に0.2%程度以上であった。
【0050】
評価
上記実施例1及び比較例1から、本発明では、成形体を離れた後のガラス板の幅方向の収縮が小さく有効に利用できるガラス板の幅が大きいこと、及び、ガラス板の反りを大幅に改善できることがわかる。このように本実施例の有効性、特に冷却ローラの有効性が確認された。
【0051】
実施例2
実施例1で得られたガラス板を所定の大きさに切断し、端面を面取りして液晶ディスプレイ用ガラス基板を作製した。得られた液晶ディスプレイ用ガラス基板は平坦であり、また表面が滑らかであるため、基板表面の研磨は必要なかった。
【0052】
以上好ましい実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施例に限定されるものではない。
【0053】
例えば、冷却ローラの周速度、及び引っ張りローラの周速度等は、ガラス種やその粘度等に応じて適宜調整できる。
【0054】
また、図3に示すように、冷却ローラを、上下方向に複数個設けたり、あるいは、ガラス板に対し斜め方向に設けることもできる。これにより、横方向と縦方向の張力をさらに調整できる。
【0055】
なお、本発明は板状に成形されたガラスに横方向と縦方向とに張力を加えることを特徴とするものであり、その手段は冷却ローラに限られない。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、成形体を離れた後のガラス板の幅方向の収縮が小さく、したがって有効に利用できるガラス板の幅を大きくできるとともに、ガラス板の反りを大幅に改善できるガラス板の製造方法及び製造装置を提供できる。
【0057】
本発明では、反りが少なく高い平坦性を有する薄板ガラスを容易かつ安価に製造できる。また、反りを少なくすることができる。さらに、平坦性の向上を目的として研磨が必要な場合にもその研磨量を小さくできる。
【0058】
また、大型の基板であっても反りの非常に少ない薄板ガラスを容易かつ安価に得ることができるので、各種ディスプレイ用ガラス基板の製造方法として優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
ダウンドロー方式のガラス板製造装置の縦断面を概略的に示す図である。
【図2】
図1の装置内部を図1のI-I線の方向から見た正面図である。
【図3】
冷却ローラの配置の態様を説明するための正面図である。
【図4】
反りの測定方法を説明するための正面図である。
【符号の説明】
1 炉壁
2 成形体
2a 凹部
3 溶融ガラス
4 溶融ガラス供給管
5 炉室
6 引っ張りローラ
7 冷却ローラ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-01-26 
出願番号 特願平9-114347
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C03B)
最終処分 取消  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 野田 直人
金 公彦
登録日 2002-08-02 
登録番号 特許第3335291号(P3335291)
権利者 HOYA株式会社 日本板硝子株式会社
発明の名称 ガラス板の製造方法及び製造装置  
代理人 藤村 康夫  
代理人 和田 成則  
代理人 藤村 康夫  
代理人 藤村 康夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ