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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1127295
異議申立番号 異議2003-71433  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-01-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-03 
確定日 2005-09-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3351780号「ゲーム機および記録媒体」の請求項1〜12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3351780号の請求項1〜12に係る特許を取り消す。 
理由 第一.手続の経緯
本件特許第3351780号の請求項1〜12(以下「本件発明1〜12」という)に係る発明は、平成12年7月10日に特許出願され、平成14年9月20日にその特許権の設定登録がなされ、平成15年6月3日に特許異議申立がなされ、取消理由通知に対応して訂正請求がなされたものである。

第二.訂正の適否
[1].訂正の内容
(1).訂正事項a
(ア).特許請求の範囲の請求項1の記載を下記のように訂正する。
「ゲーム表示画面の上方向から下方向へと複数落下してくるように表示されるマークが、前記ゲーム画面内に表示された演奏用操作装置表示画像を横切るように表示された基準線に到来したときに、プレイヤーが実際の演奏用操作装置の対応するキーを操作するとスコアが加算される、前記演奏用操作装置を操作した際の正確性を評価するゲームを実行するゲーム機において、
前記ゲーム中の所定時に前記正確性評価対象とは異なる、前記演奏用操作装置表示画像に対する操作パターンを通知するために前記演奏用操作装置表示画像に付加されるガイダンスマークに従って、前記実際の演奏用操作装置を操作するようにした演奏ゲームを開始可能とする演奏制御手段と、
前記演奏の対象となる楽曲の楽譜における部分の位置が分かるように強調表示するガイダンス情報表示手段と、
前記演奏に対する採点を行う採点処理手段とを備えたことを特徴とするゲーム機」
(イ).特許請求の範囲の請求項2の記載を下記のように訂正する。
「請求項1に記載のゲーム機において、 前記採点処理手段は、 前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行に基いて採点を行う手段であることを特徴とするゲーム機。」
(ウ).特許請求の範囲の請求項5の記載を下記のように訂正する。
「請求項1に記載のゲーム機において、 前記採点処理手段は、前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏タイミングに基いて採点を行う手段であることを特徴とするゲーム機。」
(エ).特許請求の範囲の請求項8の記載を下記のように訂正する。
「請求項1に記載のゲーム機において、
前記採点処理手段は、前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行および演奏タイミングに基いて採点を行う手段であることを特徴とするゲーム機。」
(オ).特許請求の範囲の請求項9の記載を下記のように訂正する。
「ゲーム表示画面内の上方向から下方向へと複数落下してくるように表示されるマークが、前記ゲーム画面内に表示された演奏用操作装置表示画像を横切るように表示された基準線に到来したときに、プレイヤーが実際の演奏用操作装置の対応するキーを操作するとスコアが加算される、前記演奏用操作装置を操作した際の正確性を評価するゲーム、を実行するゲーム機の動作制御を行なうためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体において、
前記ゲーム中の所定時に前記正確性評価対象とは異なる、前記演奏用操作装置表示画像に対する操作パターンを通知するために前記演奏用操作装置表示画像に付加されるガイダンスマークに従って、前記実際の演奏用操作装置を操作するようにした演奏ゲームを開始可能とする制御処理と、
前記演奏の対象となる楽曲の楽譜における部分の位置が分かるように強調表示する表示処理と、
前記演奏に対する採点を行う採点処理と、を含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体。」
(カ).特許請求の範囲の請求項10の記載を下記のように訂正する。
「請求項9に記載の記録媒体において、
前記採点処理は、前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行に基いて採点を行う処理であることを特徴とする記録媒体。」
(キ).特許請求の範囲の請求項11の記載を下記のように訂正する。
「請求項9に記載の記録媒体において、
前記採点処理は、前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏タイミングに基いて採点を行う処理であることを特徴とする記録媒体。」
(ク).特許請求の範囲の請求項12の記載を下記のように訂正する。
「請求項9に記載の記録媒体において、
前記採点処理は、前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行および演奏タイミングに基いて採点を行う処理であることを特徴とする記録媒体。」
(2).訂正事項b
明細書の段落【0002】を以下のように訂正する。
「【従来の技術】 近年流行しているゲームの一種に例えばキーボード等の演奏用操作装置を用いてゲームを行なうものがある。この種のゲームにおいては、ゲーム表示画面内にキーボードの表示画像が表示されると共に、このキーボード表示画像に対する操作指示が次々と出される。そして、プレイヤーは、この操作指示に正確に従うように、ゲーム機本体に接続された実際のキーボードのキー操作を行ない、この操作の正確性によって評価がくだされるため、プレイヤーはこの評価が向上するようにゲームに熱中する。
【発明が解決しようとする課題】 確かに、楽器を演奏した経験が無く、ゲームとしてのみプレイするプレイヤーにとってはついつい熱中してしまうゲームである。しかし、演奏経験があるプレイヤーにとっては、操作指示に対する正確な操作を行なうだけでは少なからず物足りなさを感じさせるものであった。」
(3).訂正事項c
明細書の段落【0004】を以下のように訂正する。
「【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、本発明は、ゲーム表示画面内の上方向から下方向へと複数落下してくるように表示されるマークが、前記ゲーム画面内に表示された演奏用操作装置表示画像を横切るように表示された基準線に到来したときに、プレイヤーが実際の演奏用操作装置の対応するキーを操作するとスコアが加算される、前記演奏用操作装置を操作した際の正確性を評価するゲーム、を実行するゲーム機において、 前記ゲーム中の所定時に前記正確性評価対象とは異なる、前記演奏用操作装置表示画像に対する操作パターンを通知するために前記演奏用操作装置表示画像に付加されるガイダンスマークに従って、前記実際の演奏用操作装置を操作するようにした演奏ゲームを開始可能とする演奏制御手段と、
前記演奏の対象となる楽曲の楽譜における部分の位置が分かるように強調表示するガイダンス情報表示手段と、
前記演奏に対する採点を行う採点処理手段とを備えるようにした。」
(4).訂正事項d
明細書の段落【0005】を以下のように訂正する。
「本発明によれば、採点処理手段が、実際の演奏用操作装置を用いたプレイヤーの演奏ゲームにおける演奏に対する採点を行うので、演奏経験のある者に対しても十分に満足させることができ、また、演奏の対象となる楽曲の楽譜における部分を強調表示させて目立たせることによって、どの部分で演奏ゲームにおける演奏が始まるかを演奏ゲーム前に把握させることができる。」

(5).訂正事項e
明細書の段落【0006】を以下のように訂正する。
「採点処理手段は、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行に基いて採点を行うようにすることができる。この際、採点処理手段を、演奏コード進行が予め設定した複数の採点基準コード進行群の内のいずれかに一致する度に、プレイヤーに対する評価を高くするような採点を行うようにすれば、演奏コード進行に応じた採点を行なうことができる。そして、採点基準コード進行群をテーブル化して記憶しておけば、テーブル内容を書き換えることで簡単に採点基準コード進行の設定変更を行なえる。」
(6).訂正事項f
明細書の段落【0007】を以下のように訂正する。
「また、採点処理手段は、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏タイミングに基いて採点を行うようにすることができる。この際、採点処理手段を、演奏タイミングが予め設定した複数の採点基準タイミング群の内のいずれかに一致する度に、プレイヤーに対する評価を高くするような採点を行うようにすれば、演奏タイミングに応じた採点を行なうことができる。そして、採点基準タイミング群をテーブル化して記憶しておけば、テーブル内容を書き換えることで簡単に採点基準タイミングの設定変更を行なえる。また、採点処理手段は、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行および演奏タイミングに基いて行うようにすることもできる。」

(7).訂正事項g
明細書の段落【0008】を以下のように訂正する。
「また、上記ゲーム機において、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏に対するガイダンス情報を表示するガイダンス情報表示手段を備えて、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏をサポートすることができる。ガイダンス情報としては、演奏ゲームにおける演奏対象となる楽曲の進行に応じてプレイヤーが操作すべき操作内容が分かるように演奏用操作装置表示画像を変化させるもの、演奏ゲームにおける演奏対象となる楽曲の楽譜における部分の位置が分かるように楽譜を表示するもの、演奏ゲームにおける演奏対象となる楽曲の正しいコード進行を表示したもの等が挙げられる。」

(8).訂正事項h
明細書の段落【0012】を以下のように訂正する。
「ゲーム表示画面内の上方向から下方向へと複数落下してくるように表示されるマークが、前記ゲーム画面内に表示された演奏用操作装置表示画像を横切るように表示された基準線に到来したときに、プレイヤーが実際の演奏用操作装置の対応するキーを操作するとスコアが加算される、前記演奏用操作装置を操作した際の正確性を評価するゲーム、を実行するゲーム機の動作制御を行なうためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体において、
前記ゲーム中の所定時に前記正確性評価対象とは異なる、前記演奏用操作装置表示画像に対する操作パターンを通知するために前記演奏用操作装置表示画像に付加されるガイダンスマークに従って、前記実際の演奏用操作装置を操作するようにした演奏ゲームを開始可能とする制御処理と、
前記演奏の対象となる楽曲の楽譜における部分の位置が分かるように強調表示する表示処理と、
前記演奏に対する採点を行う採点処理と、を含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体も提案され、コンピュータがプログラムを実行することによって、実際の演奏用操作装置を用いたプレイヤーの演奏ゲームにおける演奏に対する採点処理が実行される。
したがって、自由な演奏を楽しみことができ、演奏経験のある者に対しても十分に満足させることができる。」

(9).訂正事項i
明細書の段落【0013】を以下のように訂正する。
「この採点処理をプレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行に基いて採点を行う処理として演奏コード進行に基いた採点を行なうにしたり、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏タイミングに基いて採点を行うようにしたり、更に、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行および演奏タイミングに基いて行うようにすることもできる。更に、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏に対するガイダンス情報を表示する処理を含めると、プレイヤーに対してガイダンス情報が与えられる。」
(10).訂正事項j
明細書の段落【0053】を以下のように訂正する。
「以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形や変更が可能である。以上説明してきた実施の形態では演奏用操作装置の一例として、キーボードを例にとって説明したきたが、演奏用操作装置はこれには限られず、下のドから上のドまでの音階を出力可能なものなら弦楽器等でも良く、例えばギターであれば弦に音階検出センサを付けたり、またはネック上に音階検出センサを付けて、これを I/Oを介してCPU10が入力可能にすれば全く同様な動作を行なわせることができる。
【発明の効果】 以上説明してきたように、本発明によれば、操作指示に対する正確な操作を楽しむだけでなく、演奏経験があるプレイヤーに対しても十分に満足させることができるという効果が得られる。また、演奏経験のある者に対して掛け合いの楽しさを感じさせることができるという効果も得られる。」
(なお、下線部分は訂正箇所を示す。)

[2].訂正要件充足性の検討
(1).訂正事項a(ア)〜(ク)は、特許請求の範囲の請求項について、「前記演奏用操作装置を操作した際の正確性を評価するゲーム」、及び「演奏ゲームを開始可能とする制御処理」を限定すると共に、「アドリブ演奏」を「演奏ゲーム」に変更するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、限定事項は明細書の段落【0025】、【0012】、及び【0034】、【0035】に記載されているから、当該訂正は減縮を目的とした訂正、明瞭でない記載の釈明に該当し、また、訂正事項b〜jは上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、何れも新規事項の追加には該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2)まとめ
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので当該訂正を認める。



第三.本件の請求項に係る発明
前記「第二.[2]」で示したように前記訂正が認められるものであるから、本件の請求項1〜12に係る発明(以下「本件発明1〜12」という)は、前記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜12に記載されたとおりのものである。



第四.特許異議申立についての判断(特許法第29条第2項について、)
[1].引用刊行物記載事項
当審で通知した取消理由に引用した刊行物、特許第2922509号公報、特開平6-332447号公報、特開平6-318079号公報には、各々以下の事項が記載されている。
(A).特許第2922509号公報(以下「刊行物A」という)
(A-1).「【請求項1】 筐体と、前記筐体の前面に設けられた表示装置と、前記筐体の前面で、かつその前面と向かい合ったプレイヤーからみて手元となる位置に設置された複数の演出操作手段と、音楽およびその音楽に対する演出手順に関するデータをそれぞれ記憶する記憶手段と、前記記憶手段の記憶内容に基づいて前記音楽を演奏する演奏手段と、前記演奏手段による演奏の進行に連動して、前記演出操作手段を用いた演出操作を前記記憶手段の記憶内容に従って前記プレイヤーに前記表示装置を通じて視覚的に指示する演出操作指示手段と、前記プレイヤーによる前記演出操作に応じた演出効果を発生させる演出効果発生手段と、前記記憶手段が記憶する前記演出手順と前記プレイヤーによる前記演出操作との相関関係に基づいて当該演出操作を評価する評価手段と、前記評価手段の評価結果に対応した情報をプレイヤーに対して表示する評価表示手段と、を備え、前記演出操作指示手段は、少なくとも一部の領域が、前記複数の演出操作手段のそれぞれに対応付けられた複数かつ所定方向に延びるトラックに区分可能なインジケータを前記表示装置の画面上に表示させるとともに、前記複数のトラックのそれぞれには、各トラックに対応付けられた前記演出操作手段の操作時期を示すための指示標識を、その指示標識に対応する演出操作手段の操作時期が到来したときに当該指示標識が前記トラックの一定個所に設定された演出操作位置に到達するように、前記トラックに沿って移動させつつ表示させることを特徴とする音楽演出ゲーム機。」(第1頁左下欄第2行〜第2頁左欄第3行)
(A-2).「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、音楽に合わせて演出操作を楽しむゲーム機に関する。」(第5頁左欄第29〜31行)
(A-3).「本発明における音楽の演出は、完成された音楽に対して音や光による演出効果を加える行為のみならず、音楽の一部のパートをプレイヤーが演奏して音楽を完成させる行為も含む。」(第11頁左欄第13〜16行)
(A-4).「【0076】また、本ゲーム機1では各鍵盤キーA〜EおよびアドリブキーA〜Cを操作したときに発生させる効果音をフレーズ毎に変化させる。そのため、補助記憶装置56には、図8に示す効果音の指示テーブルTBが演奏データに対応付けて予め書き込まれる。」(第12頁右欄第32〜36行)
(A-5).「【0079】図9は、ゲームのプレイ中に、画面描画制御装置51を介してモニタ6に表示されるゲーム画面を示すものである。このゲーム画面の中央には主表示部60が設けられ、その主表示部60の上方にはグルーヴゲージ表示部61が、下方には一対のスコア表示部62A,62Bが設けられる。主表示部60には、ゲームの雰囲気を盛り上げるためのビデオその他が表示される。例えば、ゲーム機1にて演奏される音楽に合わせたダンスシーンが表示される。」(第13頁左欄第14〜22行)
(A-6).「【0080】グルーヴゲージ表示部61には、ゲージ枠61aと、プレイの優劣に応じてゲージ枠61aの左端を基準に伸縮するゲージバー(図中のハッチング部)61bとが表示される。スコア表示部62Aには演出操作部12Aの演出操作に対応したゲームのスコア(点数)が表示され、スコア表示部62Bには演出操作部12Bの演出操作に対応したゲームのスコアが表示される。
【0081】主表示部60の左右には、演出操作の時期をプレイヤーに指示するためのインジケータ65A,65Bが表示される。各インジケータ65A,65Bの内容は同一であり、これらを区別する必要のないときはインジケータ65と表記する。インジケータ65には、上下方向に延びる5本の鍵盤トラック66A,66B,66C,66Dおよび66Eと、1本のターンテーブルトラック67とが設けられている。鍵盤トラック66A〜66Eはそれぞれ鍵盤キー15A〜15Eの操作時期を個別に示すために設けられ、ターンテーブルトラック67はスライドディスク23の操作時期を示すために設けられている。
【0082】鍵盤トラック66A〜66Eには鍵盤キー15A〜15Eにそれぞれ対応したアイコン68…が表示され、ターンテーブルトラック67にはスライドディスク23に対応したアイコン69が表示される。これらのアイコン68,69は演奏の進行に伴って鍵盤トラック66A〜66Eまたはトラック67を矢印Vで示したように下方に移動する(トラック66Bに表示された想像線参照)。
【0083】そして、アイコン68,69が各トラック66A〜66E,67の下端に設定された演出操作位置PPに達したとき、そのトラック66A〜66Eまたは67に対応する鍵盤キー15A〜15Eまたはスライドディスク23の操作時期が到来する。演出操作位置PPには、鍵盤キー15A〜15Eをそれぞれ模した鍵盤状アイコン70A〜70Eと、ターンテーブル入力装置14のスライドディスク23を模したターンテーブル状アイコン71とがトラック66A〜66Eおよび67に対応させて表示される。」(第13頁左欄第23行〜同頁右欄第9行)
(A-7).「【0091】次いで、現在の演奏位置と演出手順データとに従って鍵盤キー15またはスライドディスク23の操作時期が到来したか否かを判別し(ステップS5)、時期が到来していれば所定のタイミング表示を行う(ステップS6)。このタイミング表示は、インジケータ65内の演出操作位置PPに達したアイコン68または69の表示色を変化させて行う。また、鍵盤キー15A〜15Eのいずれかの操作時期が到来しているときは、操作すべき鍵盤キー15の表示灯17を点灯または点滅させてどのキーを操作すべきかプレイヤーに指示する。
【0092】タイミング表示後は鍵盤キー15A〜15E、スライドディスク23、押釦スイッチ31A〜31Cのいずれかが操作されたか否かを判別し(ステップS7)、操作ありと判断したときはその操作に対応した演出効果を発生させる(ステップS8)。このときの演出効果には、操作された部材に対応する効果音をスピーカ8A,8B,8Cから出力させる処理、および装飾灯7A,7Bを操作内容に応じて明滅させる処理が含まれる。鍵盤キー15A〜15Eまたは押釦スイッチ31A〜31Cの操作に対する効果音は図8に例示した通りであり、スライドディスク23の操作に対する効果音は上述したスクラッチ効果音である。
【0093】演出効果を発生させた後は、プレイヤーの操作内容と演出手順データにて指定された演出操作時期との一致度、この場合は操作開始時期のずれおよび操作継続時間のずれを所定の計算式に従って演算する(ステップS9)。計算式は、操作開始時期または操作継続時間がずれるほど一致度が小さくなるよう設定される。操作すべき鍵盤キー15またはスライドディスク23とは異なるものが操作されたときには一致度が評価されないか、または負の値として演算される。」(第14頁左欄第35行〜同頁右欄第15行)
(A-8).「【0095】ステップS11で発生させる演出効果は、インジケータ65の指示に対応していない、いわゆるアドリブ操作に基づくものであり、その演出効果をステップS9と同様の一致度にて評価することはできない。そこで、ステップS9の演算式とは異なる演算式を使用して、前記の操作に対応したアドリブ効果値を演算する。この場合の演算式は、例えば操作時点での演奏内容や演出状態からみて適切な効果音が適切なタイミングで重ねられたか否かを評価し、適切と判断されるほどに高い値が得られるように設定する」(第14頁右欄第27〜36行)
(A-9).してみると、刊行物Aには次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「演奏手段による演奏の進行に連動してモニター6のアイコン68を下降させ、当該アイコン68が鍵盤状アイコン70の演出操作位置PPに達したときに、アイコン68の表示色を変化させるとともにランプ表示された鍵盤キー15の押圧を指示する演出操作指示手段と、
当該指示手段による指示の通りの操作か否かを所定の演算式にてゲームスコアとして計算・評価する評価手段と、
前記評価手段の評価結果に対応したスコア等の情報をプレイヤーに対して表示する表示部とを備えた音楽演出ゲーム機において、プレイヤーが楽譜によらずに演奏して音楽を完成させるアドリブ演奏した場合の評価手段として、適切な音が適切なタイミングで重ねられたか否かを所定の演算式にて評価するアドリブ効果値評価手段を備えた音楽演出ゲーム機」

(B).特開平6-332447号公報(以下「刊行物B」という)
(B-1).「【構成】 本発明の電子楽器の表示制御装置は、所定の情報に対応してモード・スケール名を記憶する記憶手段3と、前記記憶手段3の記憶するモード・スケール名を、楽曲の進行に伴って読み出す読取手段41と、該読取手段41の読み取ったモード・スケール名をディスプレイに表示する表示手段42とで構成される。」(第1頁左下欄)
(B-2).「【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、楽曲の進行にともなってモード・スケール名を表示し、電子楽器の使用者が、例えばジャズの自動演奏に合わせて簡単にアドリブ演奏を楽しんだり、初心者がアドリブ演奏を学習する際に容易に音楽的な表現ができ、アドリブ演奏の学習を容易にする電子楽器の表示制御装置を提供することを目的とする。」(第2欄第5〜12行)
(B-3).「【0011】【作用】本発明は、自動演奏をバックに演奏者が、例えばジャズの即興演奏をしたり、アドリブ演奏の学習をする際に、歌詞やコード進行だけでなく、例えばジャズのアドリブ演奏などに有効な情報であるモード・スケール名(イオニアン、ドリアンなど)を楽曲の進行に伴って表示する処理手段1を設けたものである。」(第2欄第34〜40行)
(B-4).「【0012】これにより演奏者は予備知識として次のスケール名を知ることができるので、コード名だけが表示されるより音楽的な演奏が容易になり、アドリブ演奏がし易く、初心者のアドリブの学習にも有効である。」(第2欄第41〜44行)

(C).特開平6-318079号公報(以下「刊行物C」という)
(C-1).「【0003】ところで、そのメロディなども、楽譜を用いて演奏する他に、楽譜に頼らず、アドリブで自由に弾きたい──という要望も多い。
アドリブでメロディ等を弾くには、伴奏音のコード進行を聴いて、そのコードの拠り所となるスケール(アベイラブル・ノート・スケール)、およびそのコードが楽曲の調性その他で果たしている役割を判断することが必要となってくる。」(第2欄第33〜39行)
(C-2).「【0004】【発明が解決しようとする課題】そのため、このような演奏をすることは、コード理論やスケール理論等を熟知し、経験豊かな演奏者ならともかく、それ以外の普通の演奏者、特に初心者にとっては、非常に困難である。」(第2欄第40〜44行)

[2].本件発明1と引用発明との対比・判断
(1).発明特定事項の対応関係
(a)引用発明における「モニタ6」「アイコン68」「鍵盤状アイコン70」、「評価手段」、「鍵盤キー15」は、各々本願発明1における「ゲーム表示画面」、「マーク」、「演奏用操作装置表示画像」、「正確性を評価する」、「キー」に対応する。
(b).引用発明における「アドリブ演奏」と、本願発明1における、「正確性評価対象とは異なる演奏」とは、演奏ゲーム中に当該ゲーム形態とは異なる、即興型演奏ゲームを行わせる点で共通する。
(c).引用発明における「アドリブ効果値を演算する評価手段」は、本願発明1における「採点処理手段」に対応する。
(d).引用発明において、鍵盤状アイコン70の演出操作位置PPに達したときに、「アイコン68の表示色を変化させる」ことと、本願発明1において、演奏用操作装置表示画像を横切るように表示された「基準線」とは、キーを操作するタイミングを示す「所定位置」で共通する。
(2).一致点
ゲーム表示画面の上方向から下方向へと複数落下してくるように表示されるマークが、前記ゲーム画面内に表示された演奏用操作装置表示画像の所定位置に到来したときに、プレイヤーが実際の演奏用操作装置の対応するキーを操作するとスコアが加算される、前記演奏用操作装置を操作した際の正確性を評価するゲーム機において、
前記ゲーム中に前記正確性評価対象とは異なる、即興型演奏ゲームを開始可能とする制御手段と、
前記演奏に対する採点を行う採点処理手段とを備えたことを特徴とするゲーム機」
(3).本件発明1と引用発明との相違点
(a)即興型演奏ゲームに関して、本件発明1では、(i)「所定時」に開始するものであり、(ii)演奏用操作装置表示画像にガイダンスマークが付加されるものであり、(iii)楽譜における即興型演奏部分の位置が強調表示されているのに対し、引用発明では、(i)開始時期については特定されていない点、(iii)即興型演奏を行なう箇所の位置表示がされるものではない点、及び(ii)ガイダンスマークも付加されるものではない点
(b).キーの操作を行うべき所定位置の表示に関して、本件発明1は「基準線」にて表示しているのに対し、引用発明ではアイコンの表示色を変化させている点

(4)相違点の検討
(ア).相違点(a)(i)について
実際の音楽の演奏に際しても、アドリブ演奏する箇所を事前に打ち合わせておくことは通常行われている事項であるから、引用発明においても、楽譜を用いて演奏する箇所と、アドリブ演奏のように楽譜に頼らずに演奏する演奏箇所を実際の演奏に模して、予め特定することは当業者が適宜なし得る程度の事項であり、当該特定による格別の作用効果も認められない。
したがって、当該相違点は格別のものではない。
(イ).相違点(a)(iii)について
演奏の操作が相違する箇所に、当該相違することを報知する為に当該相違する旨の表示をすること、及びその表示箇所として楽譜とすることは、以下の理由により当業者が容易に想到できることである。
すなわち、音楽演奏において、演奏状態等が変化する箇所に当該変化を報知するために、例えば、クレッシェンド(<)等の演奏記号を楽譜に表示することは周知の事項であるから、同様に演奏状体が変化するアドリブ演奏箇所に、当該変化を報知する表示を楽譜に行なうことは当業者が容易に想到できることであり、しかも、表示手段として、強調表示は周知の表示手段であるから、当該表示に際して、強調表示を採用するか否かは単なる設計的事項である。
したがって、当該相違点は格別のものではない。
(ウ).相違点(a)(ii)について
「ガイダンスマーク」の意義は、明細書の段落【0034】の記載から、「アドリブ演奏が開始されると、音階データに対応する鍵盤操作を通知」するものと認められる。
してみると、
引用発明にも、鍵盤キーに対応したアイコンを配設し、鍵盤キーの操作タイミング時には、操作すべき鍵盤キーを表示する鍵盤状アイコンの表示色を変化させることが示されており、このことは、アイコンが操作すべき鍵盤キーを鍵盤状アイコンにて指示していること、及び、操作すべき鍵盤キーの操作タイミングを指示していると言えるものであるから、アドリブ型演奏として周知の、前記刊行物B、Cに示されるようなタイミング指示を省略した演奏の場合、タイミング表示を省略して鍵盤状アイコンに鍵盤キーに対応したアイコン表示とすることは当業者ならば容易に想到できることであり、しかも当該タイミング指示を省略した演奏は周知の演奏形態であるから当該演奏形態とするか否かは単なる設計的事項である。
したがって、当該相違点は格別ものではない。
(エ).相違点(b)について
位置表示手法として「線」を用いることは、例えば「スタートライン」等のように周知の位置表示手法であり、ゲームにおいても、例えば、特開平8-305356号公報に見られるように用いられている事項であるから、引用発明において、キー操作位置の表示手法として、基準線を採用することは当業者が適宜なし得る設計的事項である
したがって、当該相違点は格別のものではない。
(3).まとめ
以上のように、各相違点は格別のものではなく、それらを総合的に勘案しても格別の作用効果は認められないから、本件発明1は、前記刊行物A、B、Cに記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
したがって、本件発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1についての特許は、平成15年改正前の特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

[3].本件発明2と引用発明との対比・判断
(1)本件発明2
「請求項1に記載のゲーム機において、前記採点処理手段は、前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏コード進行に基づいて採点を行う手段であることを特徴とするゲーム機」
(2)本件発明と引用発明との対比・判断
(a).本件発明2において、請求項1を引用している点については前記「第四.[2].本件発明1と引用発明との対比・判断」に記載したとおりである。
(b).本件発明2において、請求項1をさらに限定した点、すなわち、採点処理がプレイヤーの演奏コード進行に基づいて行われる点について以下検討する。
引用発明には、アドリブ演奏において、適切な音と適切なタイミングであるかを演算式にて評価するものであること、及び、音としては、楽器の音、音声等演出に適当な音の使用が示されている。
さらに、アドリブ演奏における音として、コード理論に基づく音とすることが刊行物B、Cに示されるように周知の事項であることを考慮すると、引用発明における音としてコード理論に基づくコードとすることは当業者が適宜選択採用できる設計的事項であり、しかも、評価対象として、タイミング等を含めた複数対象とするか、演奏音のみとするかは、採点処理の負担などを考慮して適宜設定しうる単なる設計的事項である。
(3).まとめ
以上のように、本件発明2は、前記刊行物Aに記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明2についての特許は、平成15年改正前の特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

[4].本件発明3と引用発明との対比・判断
(1)本件発明3
「請求項2に記載のゲーム機において、前記採点処理手段は、前記演奏コード進行が予め設定した複数の採点基準コード進行群の内のいずれかに一致する度に、前記プレイヤーに対する評価を高くするような採点を行なう手段であることを特徴とするゲーム機」
(2)本件発明3と引用発明との対比・判断
(a).本件発明3において、請求項2を引用している点については前記「第四.[3].本件発明2と引用発明との対比・判断」に記載したとおりである。
(b).本件発明3において、請求項2をさらに限定した点、すなわち、複数の採点基準コード進行群の内のいずれかに一致する度に、前記プレイヤーに対する評価を高くするように採点する点について検討する。
アドリブ演奏は、コード理論等に基づいて自由に演奏するものであり、しかも、当該理論に基づくコードの進行による演奏が所謂「良い演奏」として複数の演奏態様が存在することは周知の事項である。
したがって、採点手法として、コード進行に基づく複数の演奏態様のいずれかに一致した場合に評価を高くする手法は、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。
(3).まとめ
以上のように、本件発明3は、前記刊行物Aに記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明3についての特許は、平成15年改正前の特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

[5].本件発明4と引用発明との対比・判断
(1)本件発明4
「請求項3に記載のゲーム機において、前記採点基準コード進行群はテーブル化されて記憶されていることを特徴とするゲーム機」
(2)本件発明4と引用発明との対比・判断
(a).本件発明4において、請求項3を引用している点については前記「第四.[4].本件発明3と引用発明との対比・判断」に記載したとおりである。
(b).本件発明4において、請求項3をさらに限定した点、すなわち、採点基準コード進行群はテーブル化されて記憶されている点について以下検討する。
本件発明において、採点基準となるデータが記憶されるものであることは技術常識であり、しかもデータの記憶形式として、テーブル形記憶形式は周知の記憶形式であるから、当該記憶形式を採用することは、記憶項目等を考慮して決定する設計的事項である。
(3).まとめ
以上のように、本件発明4は、前記刊行物Aに記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明4についての特許は、平成15年改正前の特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

[6].本件発明5と引用発明との対比・判断
(1)本件発明5
「請求項1に記載のゲーム機において、前記採点処理手段は、前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏タイミングに基づいて採点を行う手段であることを特徴とするゲーム機」
(2)本件発明5と引用発明との対比・判断
(a).本件発明5において、請求項1を引用している点については前記「第四.[2].本件発明1と引用発明との対比・判断」に記載したとおりである。
(b).本件発明5において、請求項1をさらに限定した点、すなわち、採点処理は、前記プレイヤーの演奏タイミングに基づいて採点が行われる点について以下検討する。
引用発明には、アドリブ演奏において、適切な音と適切なタイミングであるかを演算式にて評価することが示されている。
したがって、評価対象を音等を含む複数評価とするか、演奏タイミングのみとするかは、採点処理の負担などを考慮して適宜設定しうる単なる設計的事項である。
(3).まとめ
以上のように、本件発明5は、前記刊行物Aに記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明5についての特許は、平成15年改正前の特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

[7].本件発明6と引用発明との対比・判断
(1)本件発明
「請求項5に記載のゲーム機において、前記採点処理手段は、前記演奏タイミングが予め設定した複数の採点基準タイミング群の内のいずれかに一致する度に、前記プレイヤーに対する評価を高くするような採点を行なう手段であることを特徴とするゲーム機」
(2)本件発明6と引用発明との対比・判断
(a).本件発明6において、請求項5を引用している点については前記「第四.[6].本件発明5と引用発明との対比・判断」に記載したとおりである。
(b).本件発明6において、請求項5をさらに限定した点、すなわち、複数の採点基準タイミング群の内のいずれかに一致する度に、前記プレイヤーに対する評価を高くするように採点する点について以下検討する。
アドリブ演奏は、コード理論等に基づいて自由に演奏するものであるから、演奏タイミングが相違する等の複数の演奏態様が存在することは周知の事項である。
したがって、複数の演奏態様の内、如何なる演奏、すなわち如何なる演奏タイミングを如何に評価するかは、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。
(3).まとめ
以上のように、本件発明6は、前記刊行物Aに記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明6についての特許は、平成15年改正前の特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

[8].本件発明7と引用発明との対比・判断
(1)本件発明7
「請求項6に記載のゲーム機において、前記採点基準タイミングはテーブル化されて記憶されていることを特徴とするゲーム機」
(2)本件発明7と引用発明との対比・判断
(a).本件発明7において、請求項6を引用している点については前記「第四.[7].本件発明6と引用発明との対比・判断」に記載したとおりである。
(b).本件発明7において、請求項6をさらに限定した点、すなわち、採点基準タイミングはテーブル化されて記憶されている点について以下検討する。
本件発明において、採点基準となるデータが記憶されるものであることは技術常識であり、しかもデータの記憶形式として、テーブル形記憶形式は周知の記憶形式であるから、当該記憶形式を採用することは、記憶項目等を考慮して決定する設計的事項である。
(3).まとめ
以上のように、本件発明7は、前記刊行物Aに記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明7についての特許は、平成15年改正前の特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

[9].本件発明8と引用発明との対比・判断
(1)本件発明8
「請求項1に記載のゲーム機において、前記採点処理手段は、前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行および演奏タイミングに基づいて採点を行う手段であることを特徴とするゲーム機」
(2)本件発明と引用発明との対比・判断
(a).本件発明8において、請求項1を引用している点については前記「第四.[2].本件発明1と引用発明との対比・判断」に記載したとおりである。
(b).本件発明8において、請求項1をさらに限定した点、すなわち、採点処理がプレイヤーの演奏コード進行および演奏タイミングに基づいて採点を行う点について以下検討する。
引用発明には、アドリブ演奏において、適切な音と適切なタイミングであるかを演算式にて評価するものであること、及び、音としては、楽器の音、音声等演出に適当な音の使用が示されている。
そこで、アドリブ演奏における音として、コード理論に基づく音とすることは、刊行物B、Cに示されるように周知の事項であることをさらに考慮すると、引用発明における音としてコード理論に基づくコードとすることは当業者が適宜選択採用できる設計的事項である。
(3).まとめ
以上のように、本件発明8は、前記刊行物Aに記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明8についての特許は、平成15年改正前の特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

[10].本件発明9と引用発明との対比・判断
(1)本件発明9
「ゲーム表示画面の上方向から下方向へと複数落下してくるように表示されるマークが、前記ゲーム画面内に表示された演奏用操作装置表示画像を横切るように表示された基準線に到来したときに、プレイヤーが実際の演奏用操作装置の対応するキーを操作するとスコアが加算される、前記演奏用操作装置を操作した際の正確性を評価するゲーム、を実行するゲーム機の動作制御を行うためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体において、
前記ゲーム中の所定時に前記正確性を評価対象とは異なる、前記演奏用操作装置表示画像に対する操作パターンを通知するために前記演奏用操作装置表示画像に付加されるガイダンスマークに従って、前記実際の演奏用操作装置を操作するようにした演奏ゲームを開始可能とする制御処理と、
前記演奏の対象となる楽曲の楽譜における部分の位置が分かるように強調表示する表示処理と、
前記演奏に対する採点を行う採点処理と、を含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体」
(2)本件発明9と引用発明との対比・判断
(a).本件発明9は、本件発明1における「手段」、「ゲーム機」を、各々を「処理」、「ゲーム機の動作制御を行うためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の旨の記載に変更して「プログラム等」の記載形式に合致させたものであり、しかも、引用発明のゲーム機もコンピュータプログラムによって制御されることは【図6】から明らかであるから、本件発明9と引用発明との対比・判断は、前記「第三.[2].本件発明1と引用発明との対比・判断」と同様となる。
(3).まとめ
以上のように、本件発明9は、前記刊行物Aに記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明9についての特許は、平成15年改正前の特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

[11].本件発明10〜12と引用発明との対比・判断
(1)本件発明10〜12と引用発明との対比・判断
(a).本件発明10〜12において、請求項9を引用している点については前記「第四.[10].本件発明9と引用発明との対比・判断」に記載したとおりである。
(b).本件発明10〜12において、請求項9をさらに限定する限定事項は、各々本件発明2,5,8において限定している事項と同一であるから、本件発明10〜12における限定事項は、本件発明2,5,8における限定事項の検討と同様の理由により、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
(3).まとめ
以上のように、本件発明10〜12は、前記刊行物Aに記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明10〜12についての特許は、平成15年改正前の特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。


第五.むすび
以上のとおり、本件発明1〜12は、前記刊行物A〜Cに記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反したされたものである。
したがって、本件発明1〜12についての特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ゲーム機および記録媒体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ゲーム表示画面内の上方向から下方向へと複数落下してくるように表示されるマークが、前記ゲーム画面内に表示された演奏用操作装置表示画像を横切るように表示された基準線に到来したときに、プレイヤーが実際の演奏用操作装置の対応するキーを操作するとスコアが加算される、前記演奏用操作装置を操作した際の正確性を評価するゲーム、を実行するゲーム機において、
前記ゲーム中の所定時に前記正確性評価対象とは異なる、前記演奏用操作装置表示画像に対する操作パターンを通知するために前記演奏用操作装置表示画像に付加されるガイダンスマークに従って、前記実際の演奏用操作装置を操作するようにした演奏ゲームを開始可能とする演奏制御手段と、
前記演奏の対象となる楽曲の楽譜における部分の位置が分かるように強調表示するガイダンス情報表示手段と、
前記演奏に対する採点を行う採点処理手段とを備えたことを特徴とするゲーム機。
【請求項2】請求項1に記載のゲーム機において、
前記採点処理手段は、
前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行に基いて採点を行う手段であることを特徴とするゲーム機。
【請求項3】請求項2に記載のゲーム機において、
前記採点処理手段は、
前記演奏コード進行が予め設定した複数の採点基準コード進行群の内のいずれかに一致する度に、前記プレイヤーに対する評価を高くするような採点を行う手段であることを特徴とするゲーム機。
【請求項4】請求項3に記載のゲーム機において、
前記採点基準コード進行群はテーブル化されて記憶されていることを特徴とするゲーム機。
【請求項5】請求項1に記載のゲーム機において、
前記採点処理手段は、
前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏タイミングに基いて採点を行う手段であることを特徴とするゲーム機。
【請求項6】請求項5に記載のゲーム機において、
前記採点処理手段は、
前記演奏タイミングが予め設定した複数の採点基準タイミング群の内のいずれかに一致する度に、前記プレイヤーに対する評価を高くするような採点を行う手段であることを特徴とするゲーム機。
【請求項7】請求項6に記載のゲーム機において、
前記採点基準タイミング群はテーブル化されて記憶されていることを特徴とするゲーム機。
【請求項8】請求項1に記載のゲーム機において、
前記採点処理手段は、
前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行および演奏タイミングに基いて採点を行う手段であることを特徴とするゲーム機。
【請求項9】ゲーム表示画面内の上方向から下方向へと複数落下してくるように表示されるマークが、前記ゲーム画面内に表示された演奏用操作装置表示画像を横切るように表示された基準線に到来したときに、プレイヤーが実際の演奏用操作装置の対応するキーを操作するとスコアが加算される、前記演奏用操作装置を操作した際の正確性を評価するゲーム、を実行するゲーム機の動作制御を行なうためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体において、
前記ゲーム中の所定時に前記正確性評価対象とは異なる、前記演奏用操作装置表示画像に対する操作パターンを通知するために前記演奏用操作装置表示画像に付加されるガイダンスマークに従って、前記実際の演奏用操作装置を操作するようにした演奏ゲームを開始可能とする制御処理と、
前記演奏の対象となる楽曲の楽譜における部分の位置が分かるように強調表示する表示処理と、
前記演奏に対する採点を行う採点処理と、を含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体。
【請求項10】請求項9に記載の記録媒体において、
前記採点処理は、
前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行に基いて採点を行う処理であることを特徴とする記録媒体。
【請求項11】請求項9に記載の記録媒体において、
前記採点処理は、
前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏タイミングに基いて採点を行う処理であることを特徴とする記録媒体。
【請求項12】請求項9に記載の記録媒体において、
前記採点処理は、
前記プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行および演奏タイミングに基いて採点を行う処理であることを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、演奏用操作装置表示画像に対して与えられる操作指示に応じてプレイヤーが実際の演奏用操作装置を操作した際の正確性を評価するゲームを行なうためのゲーム機およびその記録媒体の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年流行しているゲームの一種に例えばキーボード等の演奏用操作装置を用いてゲームを行なうものがある。この種のゲームにおいては、ゲーム表示画面内にキーボードの表示画像が表示されると共に、このキーボード表示画像に対する操作指示が次々と出される。そして、プレイヤーは、この操作指示に正確に従うように、ゲーム機本体に接続された実際のキーボードのキー操作を行ない、この操作の正確性によって評価がくだされるため、プレイヤーはこの評価が向上するようにゲームに熱中する。
【発明が解決しようとする課題】
確かに、楽器を演奏した経験が無く、ゲームとしてのみプレイするプレイヤーにとってはついつい熱中してしまうゲームである。しかし、演奏経験があるプレイヤーにとっては、操作指示に対する正確な操作を行なうだけでは少なからず物足りなさを感じさせるものであった。
【0003】
本発明は、かかる従来の課題を解決するためになされたもので、かかる物足りなさを解消するためにアドリブ演奏を可能にしてこれに対する採点を行なうようにしたゲーム機および記録媒体を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、ゲーム表示画面内の上方向から下方向へと複数落下してくるように表示されるマークが、前記ゲーム画面内に表示された演奏用操作装置表示画像を横切るように表示された基準線に到来したときに、プレイヤーが実際の演奏用操作装置の対応するキーを操作するとスコアが加算される、前記演奏用操作装置を操作した際の正確性を評価するゲーム、を実行するゲーム機において、
前記ゲーム中の所定時に前記正確性評価対象とは異なる、前記演奏用操作装置表示画像に対する操作パターンを通知するために前記演奏用操作装置表示画像に付加されるガイダンスマークに従って、前記実際の演奏用操作装置を操作するようにした演奏ゲームを開始可能とする演奏制御手段と、
前記演奏の対象となる楽曲の楽譜における部分の位置が分かるように強調表示するガイダンス情報表示手段と、
前記演奏に対する採点を行う採点処理手段とを備えるようにした。
【0005】
本発明によれば、採点処理手段が、実際の演奏用操作装置を用いたプレイヤーの演奏ゲームにおける演奏に対する採点を行うので、演奏経験のある者に対しても十分に満足させることができ、また、演奏の対象となる楽曲の楽譜における部分を強調表示させて目立たせることによって、どの部分で演奏ゲームにおける演奏が始まるかを演奏ゲーム前に把握させることができる。
【0006】
採点処理手段は、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行に基いて採点を行うようにすることができる。この際、採点処理手段を、演奏コード進行が予め設定した複数の採点基準コード進行群の内のいずれかに一致する度に、プレイヤーに対する評価を高くするような採点を行うようにすれば、演奏コード進行に応じた採点を行なうことができる。そして、採点基準コード進行群をテーブル化して記憶しておけば、テーブル内容を書き換えることで簡単に採点基準コード進行の設定変更を行なえる。
【0007】
また、採点処理手段は、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏タイミングに基いて採点を行うようにすることができる。この際、採点処理手段を、演奏タイミングが予め設定した複数の採点基準タイミング群の内のいずれかに一致する度に、プレイヤーに対する評価を高くするような採点を行うようにすれば、演奏タイミングに応じた採点を行なうことができる。そして、採点基準タイミング群をテーブル化して記憶しておけば、テーブル内容を書き換えることで簡単に採点基準タイミングの設定変更を行なえる。また、採点処理手段は、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行および演奏タイミングに基いて行うようにすることもできる。
【0008】
また、上記ゲーム機において、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏に対するガイダンス情報を表示するガイダンス情報表示手段を備えて、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏をサポートすることができる。ガイダンス情報としては、演奏ゲームにおける演奏対象となる楽曲の進行に応じてプレイヤーが操作すべき操作内容が分かるように演奏用操作装置表示画像を変化させるもの、演奏ゲームにおける演奏対象となる楽曲の楽譜における部分の位置が分かるように楽譜を表示するもの、演奏ゲームにおける演奏対象となる楽曲の正しいコード進行を表示したもの等が挙げられる。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
ゲーム表示画面内の上方向から下方向へと複数落下してくるように表示されるマークが、前記ゲーム画面内に表示された演奏用操作装置表示画像を横切るように表示された基準線に到来したときに、プレイヤーが実際の演奏用操作装置の対応するキーを操作するとスコアが加算される、前記演奏用操作装置を操作した際の正確性を評価するゲーム、を実行するゲーム機の動作制御を行なうためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体において、
前記ゲーム中の所定時に前記正確性評価対象とは異なる、前記演奏用操作装置表示画像に対する操作パターンを通知するために前記演奏用操作装置表示画像に付加されるガイダンスマークに従って、前記実際の演奏用操作装置を操作するようにした演奏ゲームを開始可能とする制御処理と、
前記演奏の対象となる楽曲の楽譜における部分の位置が分かるように強調表示する表示処理と、
前記演奏に対する採点を行う採点処理と、を含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体も提案され、コンピュータがプログラムを実行することによって、実際の演奏用操作装置を用いたプレイヤーの演奏ゲームにおける演奏に対する採点処理が実行される。したがって、自由な演奏を楽しみことができ、演奏経験のある者に対しても十分に満足させることができる。
【0013】
この採点処理をプレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行に基いて採点を行う処理として演奏コード進行に基いた採点を行なうにしたり、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏タイミングに基いて採点を行うようにしたり、更に、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏の演奏コード進行および演奏タイミングに基いて行うようにすることもできる。更に、プレイヤーの演奏ゲームにおける演奏に対するガイダンス情報を表示する処理を含めると、プレイヤーに対してガイダンス情報が与えられる。
【0014】
【0015】
【0016】
なお、このような記録媒体としては、ROM、半導体IC等の半導体記録媒体、DVDROM、CDROM等の光記録媒体、フレキシブルディスク等の磁気記録媒体、MO等の光磁気記録媒体等のデジタルコンテンツの記録、読み出しが可能な記録媒体が挙げられる
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。先ず、本発明の実施の形態のゲーム機の構成について説明する。
【0017】
(構成)
図2はゲームシステム1の外観図、図1はゲーム機のハードウエア構成図である。このゲームシステム1は、ゲーム機本体200と、これとケーブル58で接続される、表示エリア57を有する表示装置56と、ゲーム機本体200にケーブル81で接続される、鍵盤部82を備えるキーボード80とを有して構成される。
【0018】
このゲーム本体200側は、ゲーム機全体の動作制御を行なうCPU10と、基本ソフト(OS)等が記録されているROM20と、ワークエリアを有するRAM30と、音声合成装置40と、画像表示装置50と、CDドライブ60と、I/O70を介して接続されたキーボード80とを備え、各構成部は互いに所要の情報を送受信可能にバス90で接続されている。
【0019】
音声合成装置40は、音声合成用CPU42を備えて成り、この音声合成用CPU42は、CPU10から送信される音声出力制御信号に応じた効果音をスピーカー44から出力するように構成されている。
【0020】
画像表示装置50は、画像処理用CPU52とフレームバッファ54とを備えて成ると共に、家庭用TV装置等で実現される表示装置56に接続されている。この画像処理用CPU52が、CPU10から送信される表示制御信号に応じた画像データをフレームバッファ54に展開することで、表示装置56の表示エリア57に所望の画像表示が行なわれる。
【0021】
CDROM(記録媒体)100の記憶領域には、ゲーム機の動作制御を行うためのゲームプログラム120が記録されている。このCDROM100をCDROMドライブ60に装着すると、CPU10は、ROM20に記録されたOSにしたがった動作を行い、CDドライブ60がリードしたゲームプログラム120を読み込んで、これをRAM30に展開する。
【0022】
図8に示すように、この実施の形態では、CDROM100には、ゲームプログラム120を記録するプログラム記録エリア130の他に、後に説明するテーブルを記録するテーブル記録エリア131や、楽曲データを記録する楽曲データ記録エリア132が形成されていて、CPU10は、これらテーブル記録エリア131や楽曲データ記録エリア132に記録されているテーブルや楽曲データも読み出してRAM30上に所定のエリアに展開する。
【0023】
CPU10は、このようにしてRAM30に展開されたゲームプログラム120を実行する。その際、CPU10は、適宜、音声合成用CPU42や画像処理用CPU52に制御信号を送信し、これら音声合成用CPU42や画像処理用CPU52は、受信した制御信号に基づいた音声出力制御や表示制御を行なって一連のゲーム機の制御動作が行われる。また、CPU10は、キーボード80からの操作信号を受信し、受信信号に応じた動作制御を適宜行うように音声合成用CPU42や画像処理用CPU52に制御信号を送信する。かくして、ゲーム機での一連の制御動作が行われる。
【0024】
次に、この種のゲームの一般的な動作内容を説明し、次いで本発明の主要部を説明することによって発明理解の容易化を図る。
【0025】
(一般的な動作説明)
図3、図4を参照してこの種のゲームの一般的な動作内容を説明する。先ず、画像処理用CPU52によって、表示装置57の表示エリア57にはキーボード80を表示画像としたキーボード表示画像400と、このキーボード表示画像400の鍵盤画像を横切るように横一直線の基準線404と、プレイヤーのスコアを表示するスコア表示エリア402等が表示される。
【0026】
CPU10は、画像情報処理用CPU52に表示制御信号を送信してマーク表示処理を実行させると(ステップS300)、図4の符号404にて示す三角形状のマーク410が図面上方向から下方向へと複数落下してくるように表示される。これに応答して、基準線404の位置にマーク410が到来した時に、プレイヤーがキーボード80の鍵盤部82の対応するキーを操作すると、マーク410での指示通りの演奏が行なわれた(ステップS310のYes)として、CPU10はスコアを加算し、加算結果をスコア表示エリア402に表示させる。
【0027】
一方、マーク410での指示通りのキー操作が行なわれない場合には(ステップS310のNo)、スコア加算は行なわれない。かかる動作をゲーム終了(ステップS320のYes)となるまで継続する(ステップS320のNo)。かくして、ゲーム表示画面としての表示エリア57内に表示されたキーボード表示画像400に対して与えられるマーク410での操作指示に応じてプレイヤーがキーボード800を操作した際の正確性を評価するゲームが実行される。
【0028】
そして、この発明においては、所定時にこのようなマーク410に完全に囚われた演奏ではなく、コード表示等の演奏操作指示に従いながらも、ある程度の自由度のある演奏ができるアドリブ演奏モードに突入して、このアドリブ演奏に対する採点が行なわれることになる。
【0029】
(第1の実施の形態)
次に、本発明の主要部について説明する。先に図8にて示したCDROM100のテーブル記録エリア131には、図5や図6に示すテーブルが記録されていて、これがCPU10に読み出されてRAM30の所定エリアに展開される。
【0030】
図5に示すコード進行データ用テーブル500は、データ番号とコード進行のデータであるコード進行データとを対応付けて記録している。この例ではデータ番号「1」のコード進行データは「a→b→c→d」となっている。より具体的にはa、b、c、dはCm、C7等の音楽におけるコード(CHORD)であり、このテーブルには代表的なコード進行データ(基準コード進行データ)が複数記憶されている。このようにコード進行データをテーブル化して記憶しているので、データ書き換えによって基準コード進行データを容易に設定変更できる。
【0031】
また、図6に示すタイミングデータ用テーブル600は、データ番号とタイミングデータとを対応付けて記録している。この例ではデータ番号「1」のタイミングデータは「t1、t2、t3、t4、t5、t6、t7」となっている。図7はこのタイミングデータの説明図である。タイミングデータは、1小節を所定数(この場合8個)に分割したと想定した時に、キー操作を行なうタイミングを示すデータである。この例では1小節を8分割しているので、この小節の開始からt1時間経過後にキー操作を行ない、t2後にキー操作を行ない、…となるとタイミングが合っていることになる。このように模範となるタイミングデータ(基準タイミングデータ)をテーブル化して記憶しているので、データ書き換えによって基準タイミングデータを容易に設定変更できる。
【0032】
また、図8に示す楽曲データ記録エリア132には、このゲームに使用する楽曲の音符データ、音階データ、コードデータ、コード進行データ等の所要の楽曲に関する総ての情報(楽曲データ)が記録されている。
【0033】
さて、CPU10が、ゲームプログラム120、テーブル、楽曲データをCDROM100から読み出してRAM30に展開した状態でゲーム開始指示を与えると、上述したゲームが実行される。そして、所定時に、本発明の主要部となるゲーム動作が実行されアドリブ演奏が開始可能になる。なお、この動作例では右手のみでの演奏を想定して説明する。
【0034】
アドリブ演奏が開始されると、CPU10は、プレイヤーに対してのアドリブ演奏操作案内情報であるガイダンス情報を表示エリア57に表示させる(ステップS900)。図10は、その一例の説明図である。CPU10は楽曲データの内の音階データを順次読み出して、この音階データに対応する鍵盤操作パターンを通知すべくキーボード表示画像400にガイダンスマーク420を順次、アドリブ演奏が終了するまで付加していく。なお、このようなマークでなくても、鍵盤をあたかも光っているように表示するようにする等他の手法も考えられる。
【0035】
これに従って、プレイヤーは順次、自分の片手を使ってアドリブ演奏を行なってキー操作を行なって行くので、CPU10は、この音階データやキー操作のタイミングを示すデータを、演奏データとして順にRAM30の所定エリアに格納していく(ステップS910)。
【0036】
そして、アドリブ演奏が終了すると、CPU10は採点処理を行なう(ステップS920)。図13(a)は第1の採点処理を示したものであり、CPU10はこのステップS1300を実行すると、先にRAM30格納しておいた演奏データの音階データを順次把握し、コード進行データ用テーブル500に記憶されているコード進行データと一致した演奏コード進行となっているものを検出してこれを計数する。そして、CPU10は、例えばこの計数値またはこの計数値に所定数を乗じたものをスコアとして、表示エリア57のスコア表示エリア402に表示させる。
【0037】
したがって、CPU10の採点処理によってプレイヤーのアドリブ演奏の演奏コード進行に基いて採点を行うことができる。この例では、CPU10は、演奏コード進行が予め設定した複数の採点基準コード進行群(コード進行データ用テーブル500に記憶した複数のコード進行データ)の内のいずれかに一致する度に、これを計数してスコアとして採点処理を行なうので、演奏コード進行に応じた採点を行なうことができる。
【0038】
また、図13(b)は第2の採点処理を示したものであり、CPU10はこのステップS1310を実行すると、先にRAM30に格納しておいたキー操作のタイミングデータを順次把握し、タイミングデータ用テーブル600に記憶されているタイミングデータと一致した演奏タイミングとなっているものを検出してこれを計数する。そして、CPU10は、例えばこの計数値またはこの計数値に所定数を乗じたものをスコアとして、表示エリア57のスコア表示エリア402に表示させる。
【0039】
したがって、CPU10の採点処理によって、プレイヤーのアドリブ演奏の演奏タイミングに基いて採点を行うことができる。この例では、CPU10は、演奏タイミングが予め設定した複数の採点基準タイミング群(タイミングデータ用テーブル600に記憶した複数のタイミングデータ)の内のいずれかに一致する度に、これを計数してスコアとして採点処理を行なうので、演奏タイミングに応じた採点を行なうことができる。
【0040】
なお、図13(a)、図13(b)にて示した採点処理は別個に採用しても良いし、併用しても良い。また、キーボードを2台(2オクターブくらいしかないもの)または2オクターブ以上ある1台のキーボードを使用して、左手でコード(操作指示通りに弾く)、右手でメロディーを弾くようにしても良い。CPU10は、この場合には右手、左手での演奏に対してコード進行および/またはタイミングに基いた採点を行なうようにすれば良い。
【0041】
また、メロディーをオクターブで弾いたときに(例えば、オクターブの異なる2つのドを同時に弾く)、単音でメロディーを弾いた時の点数の倍になるように採点するようにしても良い。なお、このオクターブ奏法で演奏した場合であっても、CPU10は、右手、左手での演奏に対してコード進行および/またはタイミングに基いた採点を行なうようにすれば良い。
【0042】
また、図9のステップS900においてガイダンス情報を表示する他の例としては、CPU10が楽曲データ中のコードを順次読み出して行って、コード表示エリア403(図10参照)に表示するようにしても良い。
【0043】
また、ガイダンス情報を表示する更に他の例としては、図11のステップS1100に示すように、アドリブ楽譜情報表示が挙げられる。CPU10は、アドリブ演奏に先だって、図12に示すように、楽曲データ中からの楽譜データの中でアドリブ部1200を強調表示させて目立たせることによって、どの部分でアドリブ演奏が始まるかをアドリブ演奏前に把握させることができる。強調表示の態様としては他の部分と異なった表示色での表示等が挙げられる。
【0044】
このように、CPU10はステップS900において、ガイダンス情報の表示を行なうので、プレイヤーのアドリブ演奏をサポートすることができる。なお、以上説明したガイダンス情報の表示手法の内で一つのみを採用しても良いし、複数を一度に採用しても良い。
【0045】
以上説明してきた第1の実施の形態によれば、CPU10が、キーボード80を用いたプレイヤーのアドリブ演奏に対する採点を行うので、自由な演奏を楽しむことができ、演奏経験のある者に対しても十分に満足させることができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
この実施の形態は掛け合いアドリブ演奏に対する採点を行なう点に特徴がある。図14は、この実施の形態のゲーム機のブロック構成図である。図1と異なる点は、プレイヤーAがアドリブ演奏に用いるプレイヤーA用キーボード80aと、プレイヤーBがアドリブ演奏に用いるプレイヤーB用キーボード80bとを備えた点であり、これ以外に変更点は無い。
【0047】
ゲーム開始から所定時までは、最初に説明したようなマーク410に対する演奏を行なっているが、この後、図示しないメッセージ表示等で掛け合いアドリブ演奏が指示されると、プレイヤーAとプレイヤーBとが交互にアドリブ演奏を行なう。この例では1小節交代で交互に、マーク410に拘束されない自由な演奏であるアドリブ演奏を行なって掛け合いアドリブ演奏を開始する。
【0048】
CPU10は、RAM30の所定エリア内にプレイヤー別に、1小節毎の演奏データ(この場合は1小節毎の演奏時間)を格納する(ステップS1600)。次に、CPU10は、掛け合いアドリブ演奏が終了すると、採点処理を行なう(ステップS1610)。図15は、採点基準の説明図である(時間軸は左から右に進み)。プレイヤーA、プレイヤーBの順に交互に1小節のアドリブ演奏を行なっていく場合、プレイヤーAは時間t0〜t1の間に演奏を終了し終えなければ減点となる。同様に、次はプレイヤーBが時間t1〜t2に演奏を終了し終えなければ減点となる。以下同様に許容時間を超えた場合には減点となる。
【0049】
そこで、CPU10は、RAM30に格納しておいた演奏データをプレイヤー別に読み出し、図15の採点基準を参照して、先ず、プレイヤーAのアドリブ演奏が許容時間内に納まっているか否かを判断し、収まっていない回数分だけ満点から減点する。同様に、プレイヤーAのアドリブ演奏が許容時間内に納まっているか否かを判断し、収まっていない回数分だけ満点から減点する。
【0050】
そして、ステップS1620において、CPU10は、プレイヤーAのアドリブ演奏に対する採点結果をエリア58に表示させると共に、プレイヤーBのアドリブ演奏に対する採点結果をエリア59に表示させる。
【0051】
したがって、この第2の実施の形態によれば、CPU10が、キーボードを2台(符号80a、80b)用いた複数のプレイヤーA、Bの掛け合いアドリブ演奏に対する採点を行うので、自由な演奏を楽しむことができ、演奏経験のある者に対して掛け合いの楽しさを感じさせることができる。
【0052】
また、CPU10は、掛け合いアドリブ演奏時間が、プレイヤー毎に予め設定した許容アドリブ演奏時間内に収まらない場合に、そのプレイヤーに対するスコアを減点していくようにして採点ができる。また、CPU10は、各プレイヤーA、Bに対する採点結果が比較して分かるようにエリア58、59にスコアを表示するので、プレイヤー間での採点結果の比較は容易となる。なお、CPU10は、掛け合いをする時間が短くなればなる程、ヒットしたときの点数が高くなるように採点する。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形や変更が可能である。以上説明してきた実施の形態では演奏用操作装置の一例として、キーボードを例にとって説明したきたが、演奏用操作装置はこれには限られず、下のドから上のドまでの音階を出力可能なものなら弦楽器等でも良く、例えばギターであれば弦に音階検出センサを付けたり、またはネック上に音階検出センサを付けて、これをI/Oを介してCPU10が入力可能にすれば全く同様な動作を行なわせることができる。
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、操作指示に対する正確な操作を楽しむだけでなく、演奏経験があるプレイヤーに対しても十分に満足させることができるという効果が得られる。また、演奏経験のある者に対して掛け合いの楽しさを感じさせることができるという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施の形態であるゲーム機のハードウエア構成図である。
【図2】
ゲームシステムの外観図である。
【図3】
本ゲームの動作概要を説明するためのフローチャートである。
【図4】
本ゲームの動作概要を説明するための表示装置56の表示画面の説明図であるる。
【図5】
コード進行データ用テーブル500の説明図である。
【図6】
タイミングデータ用テーブル600の説明図である。
【図7】
タイミングデータの説明図である。
【図8】
CDROM100の記録エリアの模式的説明図である。
【図9】
本発明の実施の形態の動作を説明する説明図である。
【図10】
本発明の実施の形態の動作を説明するための表示装置56の表示画面の説明図である。
【図11】
ガイダンス情報表示例の動作説明図である。
【図12】
ガイダンス情報表示例の説明図である。
【図13】
採点処理の動作説明図である。
【図14】
本発明の他の実施の形態であるゲーム機のハードウエア構成図である。
【図15】
本発明の他の実施の形態の動作説明図である。
【図16】
本発明の他の実施の形態の動作説明図である。
【図17】
本発明の他の実施の形態の動作を説明するための表示装置56の表示画面の説明図である。
【符号の説明】
1 ゲームシステム
10 CPU
20 ROM
30 RAM
40 音声合成装置
42 音声合成用CPU
44 スピーカー
50 画像表示装置
52 描画用CPU
54 フレームバッファ
56 表示装置
57 表示エリア
60 CDドライブ
70 I/O
71 I/O
80、80a、80b キーボード
82、82a、82b 鍵盤部
90 バス
100 CDROM
120 ゲームプログラム
500 コード進行データ用テーブル
600 タイミングデータ用テーブル
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-07-22 
出願番号 特願2000-207621(P2000-207621)
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A63F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 植野 孝郎  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 渡戸 正義
塩崎 進
登録日 2002-09-20 
登録番号 特許第3351780号(P3351780)
権利者 コナミ株式会社
発明の名称 ゲーム機および記録媒体  
代理人 根本 宏  
代理人 根本 宏  

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