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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B01D
管理番号 1127372
異議申立番号 異議2003-71615  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-24 
確定日 2005-10-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3359687号「濾過膜モジュールの洗浄方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3359687号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯

本件特許第3359687号は、平成5年2月17日に特許出願され、平成14年10月11日に特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人鈴木明(以下「申立人A」という)及び木平ゆう子(以下「申立人B」という)より、特許異議の申立てがなされ、取消通知がなされ、その指定期間内の平成16年7月20日付けで訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否

2-1.訂正の内容

本件訂正の内容は、本件特許明細書を、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正すること、即ち、下記訂正事項(a)ないし(d)のとおりに訂正しようとするものである。

訂正事項(a)
【特許請求の範囲】の【請求項1】の
「通常運転時の運転圧力の実質上1.0倍以上3倍以下の圧力で間欠的に行い」

「通常運転時の運転圧力の実質上1.0倍以上1.5倍以下の所定の圧力で逆洗用ポンプを用いて間欠的に行い」
に訂正する。

訂正事項(b)
【0010】の
「膜モジュールを利用した水の膜浄化処理システムにおいて」

「膜モジュールを利用した表流水の膜浄化処理システムにおいて」
に訂正する。

訂正事項(c)
【0012】【課題を解決するための手段】の
「通常運転時の運転圧力の実質上1.0倍以上3倍以下の圧力で間欠的に行い」

「通常運転時の運転圧力の実質上1.0倍以上1.5倍以下の所定の圧力で逆洗用ポンプを用いて間欠的に行い」
に訂正する。

訂正事項(d)
【0014】の
「また、前記逆洗時の前記所定圧は、前記通常運転時の運転圧の実質上1.0倍以上3倍以下とすることが必須である。更に好ましくは1.3倍以上3倍以下である。」

「また、前記逆洗時の前記所定圧は、前記通常運転時の運転圧の実質上1.0倍以上1.5倍以下とすることが必須である。更に好ましくは1.3倍以上1.5倍以下である。」
に訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否

上記訂正事項(a)は、訂正前【請求項1】の逆洗圧力を通常運転時の運転圧の「実質上1.0倍以上3倍以下」から「実質上1.0倍以上1.5倍以下」と訂正することはその範囲を減縮するものであり、逆洗用ポンプの採用は、逆洗圧力の負荷手段の特定化であるから、上記訂正事項(a)は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
上記訂正事項(b)は、【0010】の「水」を「表流水」と訂正するものであり、【請求項1】の記載に整合させるために行うものであるから、明りようでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。
上記訂正事項(c)及び(d)は、上記訂正事項(a)にかかる【請求項1】の訂正に整合させるためであって、明りようでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。
そして、上記訂正事項(a)、(c)及び(d)は、段落【0027】、【0028】、【図3】及び【図4】の記載に基づくものであり、上記訂正事項(a)ないし(d)は、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-3.まとめ

以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断

3-1.本件発明

訂正後の本件請求項1〜5に係る発明(以下、「本件発明1〜5」という)は、上記2.で示したように、上記訂正が認められるから、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲請求項1〜5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(上記2-1.の訂正事項参照)

「【請求項1】
表流水を限外または精密濾過膜モジュールを用いてクロスフロー濾過により浄化しながら濾過膜モジュールを洗浄する方法において、通常運転においては原水流入量に対し循環量がゼロを越え6倍以下で、かつ膜面線速が0.005m/sec以上0.5m/sec未満でクロスフローを行いながら全量濾過し、前記濾過膜モジュールの逆洗に際しては、前記濾過膜モジュールからの透過水または別途供給される清浄水により、30分ないし1時間の定時間間隔で30〜60秒間通常運転系統を停止し、通常運転時の運転圧力の実質上1.0倍以上1.5倍以下の所定の圧力で逆洗用ポンプを用いて間欠的に行い、かつ該逆洗時に前記濾過膜モジュールに供給する前記透過水または清浄水には殺菌剤を含有させ、透過水の流量をP、逆洗水の排出量をCとしたときの回収率、100×(P-C)/P(%)を実質的に90%以上99%以下とすることを特徴とする濾過膜モジュールの洗浄方法。
【請求項2】
膜面線速が0.1m/sec以下である請求項1に記載の濾過膜モジュールの洗浄方法。
【請求項3】
請求項1に記載の濾過膜モジュールの洗浄方法において、前記濾過膜モジュールは、その膜材質が酢酸セルロースであることを特徴とする濾過膜モジュールの洗浄方法。
【請求項4】
請求項1に記載の濾過膜モジュールの洗浄方法において、前記濾過膜モジュールは中空糸型であり、かつクロスフロー濾過は内圧方式であることを特徴とする濾過膜モジュールの洗浄方法。
【請求項5】
請求項1に記載の濾過膜モジュールの洗浄方法において、前記殺菌剤は、次亜塩素酸ソーダ、塩素、過酸化水素およびオゾンから選ばれる酸化性殺菌剤であることを特徴とする濾過膜モジュールの洗浄方法。」

3-2.特許異議の申立ての理由の概要

3-2-1.申立人Aの主張

申立人Aは、証拠として甲第1ないし6号証を提示し、訂正前の請求項1〜5に係る発明は、前記各甲号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件請求項1〜5に係る特許を取り消すべきであると主張している。

甲第1号証:「第43回全国水道研究発表会講演集」(平成4年4月20日 社団法人 日本水道協会 発行)表紙、目次、310頁〜3 12頁、奥付(刊行物1)
甲第2号証:特開昭56-62589号公報(刊行物3)
甲第3号証:「化学装置 1997年2月号」83頁〜87頁
甲第4号証:「化学工学 第45巻 第6号(1981)」26頁〜32頁
甲第5号証:「Journal AWWA DECEMBER 1991」81頁〜91頁
甲第6号証:特開平4-260422号公報

3-2-2.申立人Bの主張

申立人Bは、証拠として甲第1ないし4号証を提示し、訂正前の請求項1〜5に係る発明は、前記各甲号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件請求項1〜5に係る特許を取り消すべきであると主張している。

甲第1号証:「第42回全国水道研究発表会講演集」(平成3年4月25日 社団法人 日本水道協会 発行)表紙、100頁〜102頁 、奥付
甲第2号証:「第43回全国水道研究発表会講演集」(平成4年4月20日 社団法人 日本水道協会 発行)表紙、310頁〜312頁 、奥付(刊行物1)
甲第3号証:「水道協会雑誌 第61巻 第11号」(平成4年11月発行 )表紙、目次、19頁〜26頁(刊行物2)
甲第4号証:「Journal AWWA Vol. 81, No. 11 November 1989」目次 、68頁〜75頁

3-2-3.取消理由の概要

訂正前の本件請求項1〜5に係る発明は、上記刊行物1〜3の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件請求項1〜5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

刊行物1:申立人Aの甲第1号証、申立人Bの甲第2号証
刊行物2:申立人Bの甲第3号証
刊行物3:申立人Aの甲第2号証

3-3.刊行物等の記載

3-3-1.上記刊行物1には、下記の事項が記載されている。
(a)「河川水を限外ろ過膜で直接ろ過し、透過流束(膜1m2、1日当りの透過水量m3)や処理水質を調べ、分画分子量や材質の異なる膜を比較すると共に、逆洗や薬洗方法について検討を行った。」(第310頁「1.はじめに」の項第5〜7行)
(b)「限外ろ過はクロスフロー方式で行い、循環流量は100〜300L/h、膜面流速0.03〜0.10m/sとし、限外ろ過圧力・・・は、約1kgf/cm2とした。・・・1)の蓄圧フラッシングでは、蓄圧時には、モジュールの外にある2.5Lの蓄圧タンクに1.0〜2.3kgf/cm2で透過水を貯め、フラッシング時にバルブを開放して貯った水により逆洗した。2)の水道水逆洗では、圧力を2.3kgf/cm2とした水道水で逆洗した。」(第311頁第2〜8行)
(c)「膜Bで蓄圧フラッシング逆洗と水道水逆洗の比較実験を行った結果を図4に示す。逆洗間隔はいずれの逆洗の場合も30分毎に行った。」(第311頁下から3行〜第312頁第1行)
(d)第310頁の「表1 膜モジュール仕様」をみると、膜Bの有効膜面積(内径基準)は「2.2m2」であり、第311頁の「図3 膜の種類による透過流束の違い」をみると、膜Bの透過流束は「約0.8〜5.2m3/m2/d」であるから、1日当たりの透過水量は約1.8〜11.4m3/d、即ち約75〜475L/hとなる。また、第310頁の「図1 実験膜処理システム」をみると、循環水は一部サンプリングされる以外は全て送液ポンプに戻されているところから、実質的には全て循環されていると解され、クロスフローしながら原水は全量濾過されて透過水量は原水流入量と等しいことになる。したがって、濾過膜モジュールBの場合には、原水流入量(=透過水量:75〜475L/h)に対して循環流量(100〜300L/h)は約0.25〜4.75倍の範囲に入ることになる。
(e)第311頁の「表2 薬液洗浄方法」の「薬洗法番号5」の薬液として「100ppmNaClO溶液」と記載されている。

3-3-2.上記刊行物2には、下記の事項が記載されている。
(a)刊行物2は「中空糸UF膜による河川水の処理」についての報文であり、第20頁の「図-1 パイロットプラントのフローチャート」には、原水がUF膜で処理され、膜透過水を用いて逆圧洗浄ポンプでUF膜を逆洗し、その際に逆洗水に塩素水を添加する構成が記載されている。
(b)第20頁の「表-1 使用膜とモジュールの性質」には、クロスフロー流速(=膜面線速)が「0.75〜0.90m/s」と記載されている。
(c)「このような逆圧洗浄条件の下では、図-4にみられるように、透過水回収率を原水量の87〜93%に保つことができた。」(第21頁右欄第15〜17行)

3-3-3.上記刊行物3には、下記の事項が記載されている。
(a)「一般にろ過継続時間約5〜120分・・・に1回の割合で逆洗浄を実施し、また1回の逆洗浄は約5〜60秒・・・で行なうことにより、上記不都合を回避しつつ確実な洗浄効果を得、処理能率を損わずに円滑なろ過処理を継続することができる。」(第3頁左上欄第5〜10行)
(b)「上記ろ過処理において、ろ過継続時間20分毎に逆洗浄(1回の洗浄時間20秒)を施こした。逆洗浄水圧は0.6kg/cm2、操作圧力(モジュール内入出水圧力の平均値)は1.0kg/cm2である。」(第4頁左上欄第14〜17行)

3-4.当審における判断

3-4-1.取消理由について

3-4-1-1.本件発明1について

上記刊行物1には、記載(a)に「河川水を限外濾過する」ことが記載されており、記載(b)に「限外ろ過はクロスフロー方式でろ過膜モジュールを用いておこなう」ことが記載されており、同じく記載(b)に「ろ過膜モジュールの逆洗に際しては、透過水を用い蓄圧タンクによるフラッシングにより圧力2.3kgf/cm2を最大圧として圧力が低減する条件で逆洗するかまたは水道水ラインを用い圧力2.3kgf/cm2の条件で逆洗する」ことが記載され、記載(d)からして「原水流入量に対する循環量」は「約0.25〜4.75倍」であり、同じく記載(b)に「膜面流速0.03〜0.1m/sでクロスフローを行いながら全量濾過」することが記載されており、さらに、記載(c)に「濾過膜モジュールの逆洗を30分毎に行う」ことが記載されていることからして、刊行物1の記載を本件発明1に沿って整理すると、「河川水を限外濾過膜モジュールを用いてクロスフロー濾過により浄化しながら濾過膜モジュールを洗浄する方法において、通常運転においては原水流入量に対し循環量を0.25〜4.75倍で、かつ膜面流速が0.03〜0.1m/secでクロスフローを行いながら全量濾過し、前記ろ過膜モジュールの逆洗に際しては、前記ろ過膜モジュールからの透過水を用い蓄圧タンクによるフラッシングにより圧力2.3kgf/cm2を最大圧として圧力が低減する条件で逆洗するかまたは水道水ラインを用い圧力2.3kgf/cm2の条件で逆洗し、30分毎に通常運転系統を停止し、間欠的に逆洗を行うことを特徴とする濾過膜モジュールの洗浄方法。」(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると云える。
そこで、本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の処理対象の「河川水」は、本件発明1の「表流水」に相当し、刊行物1発明の「原水流入量に対する循環量」は「約0.25〜4.75倍」となるところから、本件発明1の「ゼロを越え6倍以下」の範囲に入り、刊行物1発明では「膜面流速0.03〜0.1m/sでクロスフローを行いながら全量濾過」しており、この記載における膜面流速は本件発明1における膜面線速と同義と認められるので、本件発明1の「膜面線速0.005m/sec以上0.5m/sec未満でクロスフローを行いながら全量濾過」する範囲に入り、濾過膜モジュールの逆洗についてみると、刊行物1発明では「30分毎」に行うのに対し、本件発明1の「30分〜1時間の間隔で30〜60秒間」の範囲に入るので、両者は
「表流水を限外濾過膜モジュールを用いてクロスフロー濾過により浄化しながら濾過膜モジュールを洗浄する方法において、通常運転においては原水流入量に対し循環量を0.25〜4.75倍で、かつ膜面線速が0.03〜0.1m/secでクロスフローを行いながら全量濾過し、前記ろ過膜モジュールの逆洗に際しては、前記過膜モジュールからの透過水または別途供給される清浄水により、30分毎に通常運転系統を停止し、間欠的に行うことを特徴とする濾過膜モジュールの洗浄方法。」
である点で一致するが、

本件発明1では、過膜モジュールからの透過水または別途供給される清浄水を「逆洗ポンプを用い」て、「逆洗圧力を運転圧力の1.0〜1.5倍の所定の圧力」として、透過水の流量をP、逆洗水の排出量をCとしたときの回収率、100×(P-C)/P(%)を実質的に90〜99%とするのに対して、刊行物1発明では、過膜モジュールからの透過水を用い蓄圧タンクによるフラッシングにより圧力2.3kgf/cm2を最大圧として圧力が低減する条件で逆洗するかまたは別途供給される清浄水である水道水ラインを用い圧力2.3kgf/cm2の条件で逆洗する蓄圧タンクまたは水道水ラインを使用して逆洗圧力を運転圧力の2.3倍としており、その回収率が明らかでない点(相違点1)、
本件発明1では、透過水又は清浄水に殺菌剤を添加して逆洗を行っているのに対して、刊行物1発明では、逆洗と薬洗を別の工程で行う点(相違点2)、
本件発明1では、逆洗時間が30〜60秒間隔であるのに対して、刊行物1発明では、このことについて明示的な記載がない点(相違点3)、
で相違している。

以下、相違点について検討する。

(相違点1について)

刊行物2の方法は限外濾過法についてのものであり回収率87〜93%と本件発明1と同様の数値が具体的に記載されているが、該限外濾過法は限外濾過の膜面線速が0.75〜0.90m/secと高く、刊行物1発明とはその膜面における流速と大きく異なるものであるから、係る回収率の数値を刊行物1発明に直ちに適用できるといえるものではなく、また、逆洗ポンプを用いるものではあるが、逆洗圧力と運転圧力の比などの逆洗条件が何も特定されていないものであるから、上記相違点1の逆洗ポンプと逆洗圧と回収率の組み合わせの構成については記載も示唆もされていない。
刊行物3には、上記3-3-3.に記載したように、海水やかん水を対象とした逆浸透法の前処理における限外濾過法が記載され、逆洗サイクルや逆洗時間は本件発明1と同様の数値が具体的に記載されているが、上記相違点1の逆洗ポンプと逆洗圧と回収率のいずれについても記載されておらず、したがって、逆洗ポンプと逆洗圧と回収率の組み合わせの構成については記載も示唆もされていない。
してみると、刊行物1〜3を組み合わせても、上記相違点1の構成は当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。

そして、本件発明1は、上記の(相違点1)の構成を採用することにより、「実質的に全量濾過に近い方式で無駄に排出される水量が非常に少なく、高回収率が達成でき、クロスフローを行うためのポンプモ小型ノモノデヨク、ポンプの電力消費量を大幅に減らすことができ、従来の大循環量によるクロスフローニ比し、ランニングコストを低減化することができる」という明細書記載の効果を効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、相違点2、3について検討するまでもなく、刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3-4-1-2.本件発明2ないし5について

本件発明2ないし5は、本件発明1を引用しさらに限定した発明であるから、上記3-4-1-1.と同じ理由で、刊行物1〜3の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3-4-2.申立人Aのその余の主張について

ア.申立人Aの提出した甲第3〜6号証の記載事項

申立人Aの甲第3号証には、逆洗ポンプを用いることと限外濾過法において逆洗を30〜60分に1分の割合で自動的におこなうことが記載されている。

申立人Aの甲第4号証には、限外濾過法において逆洗を30分毎に30秒間おこなうことが記載されている。

申立人Aの甲第5号証には、逆洗時に殺菌剤として次亜塩素酸ソーダを添加することが記載されている。

申立人Aの甲第6号証には、逆洗時に殺菌剤として塩素を添加することが記載されている。

イ.対比・判断

申立人Aの提出した甲第3〜6号証には相違点1の過膜モジュールからの透過水または別途供給される清浄水を「逆洗ポンプを用い」て、「逆洗圧力を運転圧力の1.0〜1.5倍の所定の圧力」として、透過水の流量をP、逆洗水の排出量をCとしたときの回収率、100×(P-C)/P(%)を実質的に90〜99%とする構成についてはなにも記載されておらず示唆もされていない。
したがって、これらの証拠を参酌しても、本件発明1ないし5は上記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3-4-3.申立人Bのその余の主張について

ア.申立人Bの提出した甲第1、4号証の記載事項

申立人Bの甲第1号証には、刊行物1と同様の事項が記載されている。

申立人Bの甲第4号証には、限外濾過法において逆洗時に逆洗ポンプを用いることと殺菌剤として次亜塩素酸ソーダを添加することと逆洗時間が1分であることが記載されている。

イ.対比・判断

申立人Bの提出した甲第1、4号証には相違点1の過膜モジュールからの透過水または別途供給される清浄水を「逆洗ポンプを用い」て、「逆洗圧力を運転圧力の1.0〜1.5倍の所定の圧力」として、透過水の流量をP、逆洗水の排出量をCとしたときの回収率、100×(P-C)/P(%)を実質的に90〜99%とする構成についてはなにも記載されておらず示唆もされていない。
したがって、これらの証拠を参酌しても、本件発明1ないし5は上記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

4.まとめ

以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1〜5についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
濾過膜モジュールの洗浄方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】表流水を限外または精密瀘過膜モジュールを用いてクロスフロー瀘過により浄化しながら濾過膜モジュールを洗浄する方法において、通常運転においては原水流入量に対し循環量がゼロを越え6倍以下で、かつ膜面線速が0.005m/sec以上0.5m/sec未満でクロスフローを行いながら全量瀘過し、前記瀘過膜モジュールの逆洗に際しては、前記濾過膜モジュールからの透過水または別途供給される清浄水により、30分ないし1時間の定時間間隔で30〜60秒間通常運転系統を停止し、通常運転時の運転圧力の実質上1.0倍以上1.5倍以下の所定の圧力で逆洗用ポンプを用いて間欠的に行い、かつ該逆洗時に前記瀘過膜モジュールに供給する前記透過水または清浄水には殺菌剤を含有させ、透過水の流量をP、逆洗水の排出量をCとしたときの回収率、100×(P-C)/P(%)を実質的に90%以上99%以下とすることを特徴とする濾過膜モジュールの洗浄方法。
【請求項2】膜面線速が0.1m/sec以下である請求項1に記載の濾過膜モジュールの洗浄方法。
【請求項3】請求項1に記載の濾過膜モジュールの洗浄方法において、前記濾過膜モジュールは、その膜材質が酢酸セルロースであることを特徴とする濾過膜モジュールの洗浄方法。
【請求項4】請求項1に記載の濾過膜モジュールの洗浄方法において、前記瀘過膜モジュールは中空糸型であり、かつクロスフロー瀘過は内圧方式であることを特徴とする濾過膜モジュールの洗浄方法。
【請求項5】請求項1に記載の濾過膜モジュールの洗浄方法において、前記殺菌剤は、次亜塩素酸ソーダ、塩素、過酸化水素およびオゾンから選ばれる酸化性殺菌剤であることを特徴とする濾過膜モジュールの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、河川水や湖沼水等の表流水を膜浄化しながら濾過膜モジュールを洗浄する方法に関し、特に限外または精密瀘過膜モジュールを利用し表流水を膜浄化しながら濾過膜モジュールを洗浄する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、河川水や湖沼水等の表流水から水道水を得るための浄水処理システムとしては、凝集-沈澱-砂濾過-塩素滅菌工程を経るのが一般的である。このような工程を実現するためには、凝集池、沈澱池、砂濾過池、塩素滅菌設備が必要であり、大きな設置スペースを要するという問題点がある。加えて、近年河川等の水源の汚濁が進んでいるため、これに対する新しい高度浄水処理システムの開発が求められ、上記工程に活性炭処理システムやオゾン処理システムを付加することが提案されている。
【0003】しかしながら、従来の浄水処理システムに上述した活性炭処理システムやオゾン処理システムを付加することは、設置スペースの更なる増加を招き、複雑な計測制御技術をも必要とする新たな問題点が生ずる。
【0004】これに対し、限外又は精密濾過膜と呼ばれる新しい材料の利用技術が多方面にわたって提案されており、その一例として中空糸型限外又は精密濾過膜モジュールを使用した浄水処理システムの実用化が検討されている。
【0005】その一例を図7を参照して説明する。図7において、逆止弁30を経て導入された河川水等の原水は、ポンプ31により昇圧されて中空糸型限外瀘過膜モジュール(以下、UFモジュールと呼ぶことがある)32に供給される。UFモジュール32は、簡単に言えば、中空糸状の限外瀘過膜を多数集合させたものであり、この中空糸膜の内側に濁質成分を含む原水を供給すると、濁質成分を除去された透過水が中空糸膜外に得られる。このようにして、UFモジュール32では、限外瀘過膜の瀘過作用により濁質成分を除去した透過水を、透過水自動弁33を通して次段の処理施設に供給する。
【0006】ところで、UFモジュール32内では中空糸膜の内側表面に透過されない濁質成分が蓄積し、詰まって処理能力の低下、ひいては運転停止の原因となるので、これを排出する処理が必要である。これは、UFモジュール32の中空糸膜に供給する水流を高速とすることで実現されている。すなわち、中空糸膜の内表面に糸の長さ方向と平行に高速の水流(クロスフロー)を与えることで中空糸膜の内表面に付着している濁質成分を、いわばはぎとるものである。
【0007】このため、UFモジュール32内における中空糸膜の内側に連通する出口には、濁質成分を大量に含んだ濃縮水を濃縮水排出自動弁34を通してその一部を常時排出する経路35と、高速の水流を得るためにUFモジュール32に供給された原水をポンプ31のサクション側に戻すための循環経路36が接続される。ポンプ31のサクション側に戻される循環流量は、逆止弁30を経て供給される原水の流量に比べて通常10倍程度以上とはるかに多い。このようにしてUFモジュール32からポンプ31のサクション側に原水を戻す処理方式はクロスフロー方式と呼ばれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このようなクロスフローのため、ポンプ31の容量は、同程度の処理能力を持つ従来の凝集ー沈澱ー砂濾過による浄水処理システムにおけるポンプの容量に比べてはるかに大きく、従って電力消費量も従来方式のポンプの電力消費量に比べてはるかに多く、ランニングコストが高くなるという問題点がある。加えて、濃縮水の排出は連続して行われており、例えば原水の流入量を1としたとき、透過水を0.3得る場合は、濃縮水の割合は0.7となり、水の大部分を捨てていることになるので、回収率は30%と悪いという問題点もある。なお、ここでは透過水の流量をP、濃縮水の排出流量をCとすると、回収率は100×P/(P+C)(%)で表される。
【0009】更に、UFモジュールの材料は原水中の微生物により侵され、瀘過膜が破れることがあるので、微生物の殺菌処理が必要となる。
【0010】それゆえ、本発明の課題は限外または精密瀘過膜モジュールを利用した表流水の膜浄化処理システムにおいてランニングコストの低減化を図ると共に、全量濾過に近い回収率が得られ、しかも原水中の微生物の殺菌処理を効果的に行うことのできる濾過膜モジュールの洗浄方法を提供することにある。
【0011】なお、特開平4-260422号公報にはモジュールの中の内側スキン層の管形フィルター膜(管形フィルター膜は中空糸膜のことと思われる。)の束を逆流洗浄する方法において、特定の濾過装置において、特定モードの濾過と特定の二つの逆流洗浄段階とで行う方法が開示されている。そして、逆流洗浄の効果を改善するため、逆洗浄水に塩素処理剤を加えてもよい旨が記載されている。しかし、後記する本発明の特定の濾過方法および逆洗において殺菌剤を使用することについては、示唆はない。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、表流水を限外または精密瀘過膜モジュールを用いてクロスフロー瀘過により浄化しながら濾過膜モジュールを洗浄する方法において、通常運転においては原水流入量に対し循環量がゼロを越え6倍以下で、かつ膜面線速が0.005m/sec以上0.5m/sec未満でクロスフローを行いながら全量瀘過し、前記瀘過膜モジュールの逆洗に際しては、前記濾過膜モジュールからの透過水または別途供給される清浄水により、30分ないし1時間の定時間間隔で30〜60秒間通常運転系統を停止し、通常運転時の運転圧力の実質上1.0倍以上1.5倍以下の所定の圧力で逆洗用ポンプを用いて間欠的に行い、かつ該逆洗時に前記瀘過膜モジュールに供給する前記透過水または清浄水には殺菌剤を含有させ、透過水の流量をP、逆洗水の排出量をCとしたときの回収率、100×(P-C)/P(%)を実質的に90%以上99%以下とすることを特徴とする濾過膜モジュールの洗浄方法が提供される。
【0013】なお、前記濾過膜モジュールはその膜材質が酢酸セルロースであるのが最適であり、その形状としてはプレート・アンド・フレーム型、プリーツ型、スパイラル型、チューブラー(管状)型、中空糸型等が挙げられるが、中空糸型が好ましい。また、中空糸型瀘過膜モジュールを用いる場合は、中空糸膜の内側に原水を流入させる内圧方式が好ましい。
【0014】また、前記逆洗時の前記所定圧は、前記通常運転時の運転圧の実質上1.0倍以上1.5倍以下とすることが必須である。更に好ましくは1.3倍以上1.5倍以下である。
【0015】更に、前記殺菌剤は、次亜塩素酸ソーダ、塩素、過酸化水素、オゾン等の酸化性殺菌剤であれば殺菌とともに膜面付着物の分解・洗浄効果もあることから、これらを用いることが好ましい。
【0016】逆洗に用いられる水は、膜透過水であってもよく、あるいはまた最終的に得られる水道水等の清浄水を別途供給してもよい。逆洗は30分ないし1時間の定時間間隔で30〜60秒間通常運転系統を停止して行われる。本発明において透過水の流量をP、洗浄水の排出流量をCとすると、回収率は100×(P-C)/P(%)で表され、本発明によれば、回収率90%以上99%以下で運転することが可能である。
【0017】
【作用】本発明において、前述の課題は通常運転中は膜モジュールへ戻すクロスフローの水量(循環量)は極限まで減らし、瀘過膜表面に付着した濁質成分の除去は主に定時間間隔で行われる逆洗によって実現される。すなわち、逆洗により、瀘過膜表面に付着した濁質成分は中空糸膜の外面側からの逆水流により洗浄されることになる。そして、この逆洗時に逆洗のための透過水または清浄水に含有させた殺菌剤により瀘過膜表面に対する殺菌処理が行われる。また、通常運転中は濃縮水を排出せず、見かけ上の全量瀘過とし、逆洗時のみ一定量の洗浄水をシステム外に排出する。従って、本発明を用いた水を膜浄化しながら濾過膜モジュールの洗浄方法は、水の濾過の点では低循環量のクロスフロー瀘過方式を併用した見かけ上の全量瀘過方式といえるものである。
【0018】
【実施例】以下に、UFモジュールを用いた場合の本発明の一実施例について、図面を参照して説明するが、精密瀘過膜モジュールを用いても同様に行うことができる。
【0019】図1は本発明による濾過膜モジュールの洗浄方法を実施するためのシステムの構成を示す模式図であり、従来と同様の逆止弁10、ポンプ11、UFモジュール12、透過水自動弁13、洗浄水排出自動弁14の構成に加えて、透過水を蓄積するための透過水タンク17と、蓄積された透過水をUFモジュール12の出口側に戻して逆洗を行うためのポンプ18、逆洗自動弁19を含む逆洗経路20と、この逆洗経路20に殺菌剤を注入する手段として薬剤タンク21、薬注ポンプ22、逆止弁23を含む殺菌剤注入経路24とを設けている。
【0020】殺菌剤は、原水中に含まれる微生物によりUFモジュール12の透過膜が侵されて破れるのを防ぐために微生物を殺菌するものであり、次亜塩素酸ソーダ、塩素、過酸化水素、オゾン等の酸化性殺菌剤であれば、これに加えて膜面付着物への分解効果も期待できる。
【0021】この処理システムの運転は次のようにして行われる。通常運転に際しては、透過水自動弁13を開とし、濃縮水排出自動弁14および逆洗自動弁19は共に閉とし、ポンプ18を停止状態におく。このようにして、逆止弁10を経て導入された河川水等の原水は、ポンプ11により昇圧されてUFモジュール12に供給される。UFモジュール12では、限外瀘過膜の瀘過作用により濁質成分を除去した透過水を、透過水自動弁13を通して透過水タンク17に蓄積する。なお、この通常運転の間、循環経路16を通して原水の流入量に対してゼロを越え6倍以下程度の量のクロスフローが行われるが、透過水量は原水量に等しい。
【0022】逆洗は、例えば30分ないし1時間程度の定時間間隔で30〜60秒の間行われる。この場合、原水の供給を停止すると共に透過水自動弁13を閉とし、洗浄水排出自動弁14および逆洗自動弁19は共に開とし、ポンプ11を停止状態とし、ポンプ18と薬注ポンプ22とを運転する。このようにして、透過水タンク17に蓄積された透過水の一部を利用してUFモジュール12に対する逆洗と殺菌が行われ、逆洗により中空糸膜の内表面からはぎとられた濁質成分は、洗浄水として洗浄水排出自動弁14を通してシステム外に排出される。逆洗水量は洗浄水排出水量に等しい。
【0023】以上の結果、この例で示すように、UFモジュール12に供給される逆洗用の透過水に殺菌剤注入経路24から殺菌剤が注入され、逆洗と共にUFモジュール12の透過膜に付着した微生物に対する殺菌処理が行われる。
【0024】なお濁質成分を含む洗浄水は前記洗浄水排水自動弁14を通して排出してもよいが、UFモジュールの原水供給経路に分岐して設置した排出経路より排出してもよい。またUFモジュールの透過水出口(逆洗のための透過水入口)経路をUFモジュールの原水側入口の近傍および非透過水出口の近傍の二個所に設け、そのいずれか一方を使用し、片方を封止しておいてもよい。その場合、通常運転および逆洗の際一方のみを使用する場合は、前記非透過水出口に近接した位置に設けられたものを使用することが好ましい。
【0025】以下、図1の膜浄化装置を用いて行った各種の測定結果を参照しながら説明する。図2〜5は逆洗の効果を調べる参考例であり、薬注は行わなかった。図2は横軸の運転日数、縦軸のフラックスとも称される単位面積・時間当たりの流量(以下、単に「流束」と略す、単位はリットル/m2・h、但し25℃、1kg/cm2換算)変化との関係を示した図で、運転条件としては、UFモジュール12の材質に分画分子量30000のポリエーテルスルホンを使用し、膜面積は2.2m2、平均運転圧は1kg/cm2とした。
【0026】図2から明らかなように、比較参考例として示すクロスフローなしの通常の全量濾過方式で運転した場合(図中、白丸印の曲線イ)には、逆洗を行っても濁質成分の除去が不十分で目詰りを生じ時間経過と共に流束の低下が著しい。また1m/secの膜面線速(原水流入量に対する循環量の倍率約8倍)でクロスフローを行う従来法(回収率20%で運転)で、逆洗はなしの場合(図中、黒三角印の曲線ハ)は、曲線イより流束低下は改善される。これに対し0.01m/secの遅い膜面線速(前記循環倍率約0.4倍)でもクロスフローを行いながら定周期で逆洗も行う場合(図中、白三角の曲線ロ)、曲線イよりは流束の低下は抑制される。更に、逆洗を行いながら0.1m/secの線速(前記循環倍率約4倍)でクロスフローを行うと(図中、黒丸印の曲線ニ)、曲線ハよりも流束低下が改善される。このような結果から本発明においても、逆洗の効果がより発揮されることが理解できる。
【0027】図3は運転日数(横軸)と流束(縦軸、15℃で測定)との関係に及ぼす回収率の影響を示した図で、運転条件としては、UFモジュール12の材質に酢酸セルロースを使用し、膜面積は1.3m2、平均運転圧は1kg/cm2、原水の流入量は100リットル/h、膜循環水量は300リットル/h、逆洗圧は1.5kg/cm2とした。回収率を98%とすると、これは逆洗時に排出される洗浄水中の濁質成分は50倍程度に濃縮されることを意味し、回収率を95%とすると、これは逆洗時に排出される洗浄水の濁質成分は20倍程度に濃縮されることを意味する。回収率を高め、逆洗時に排出される洗浄水中の濁質成分の濃度を高めて排水量を少なくすることがより好ましいが、回収率を上げると流束低下が早まるので、バランス上回収率はある限界値を定めてこの値に維持することが必要であり、図3より、回収率は95%程度が好ましいことがわかる。この値は図7で説明した方式に比べて、濃縮水として無駄に排出される水量が大幅に少なくて済むことを表わしている。
【0028】図4は運転日数(横軸)と流束(縦軸、15℃で測定)との関係に及ぼす逆洗圧の影響を示した図で、運転条件としては、UFモジュール12の材質に酢酸セルロースを使用し、膜面積は1.3m2、平均運転圧は1kg/cm2、原水の流入量は100リットル/h、膜循環水量は300リットル/h、回収率は94〜95%とした。本結果により、逆洗圧は高いほうが流束の経時的低下が低く、しかも平均運転圧より高い方が良いことが理解できる。逆洗圧は1.5kg/cm2程度が最適で、1.3kg/cm2程度でも十分な効果が期待でき、従って平均運転圧の1.3倍以上とするのが好ましい。
【0029】図5は、運転日数(横軸)とUFモジュール12の膜素材による流束(縦軸、15℃で測定)の変化との関係を示した図である。運転条件としては、UFモジュール12の平均運転圧は1kg/cm2、原水の流入量は100リットル/h、膜循環水量は300リットル/h、逆洗圧は1.0kg/cm2とした。図から明らかなように、分画分子量150000の酢酸セルロース(CA)が最も流束が大きく、経時的低下も低いことが理解できる。
【0030】図6は運転日数(横軸)と殺菌剤の注入による流束(縦軸、単位はリットル/m2・h、但し25℃、1kg/cm2換算)の変化の関係を示した図である。ここでは、殺菌剤として塩素を5ppm(有効塩素)注入した場合であり(図中の黒丸印)、塩素を注入せずに逆洗のみを行った場合(白丸印)に比べて透過水流束の低下が小さくなることが理解できる。ここで、殺菌剤を透過水タンク17において注入することも考えられるが、逆洗は一回あたり30秒程度であるので、殺菌剤を常時注入するのは無駄があり、しかも殺菌剤の濃度も調整しにくい。従って、図1に示すように、逆洗経路とは別に殺菌剤の注入経路を設けるのが好ましい。また、殺菌剤として次亜塩素酸ソーダを使用すると、ある程度の膜の洗浄効果も期待できる。
【0031】以上、本発明の実施例を説明してきたが、本発明は表流水に効果的に適用される。また、本発明の濾過膜モジュールの洗浄方法によれば、濾過膜を殺菌しつつ濁質成分の除去に特に効果を発揮するが、イオンなどの溶解性物質や低分子有機物を除去するためには、前述した活性炭処理システムやオゾン処理システムを付加することが好ましい。勿論、従来の浄水処理システムに追加するかたちで利用することも出来、この場合大きな増設スペースを必要としない利点がある。
【0032】
【発明の効果】以上UFモジュールを例に説明してきたように、本発明によれば瀘過膜に対する殺菌処理も行うことにより、微生物による瀘過膜の破損も防止しつつ全量瀘過に近い方式で水の膜浄化を行うので、濾過膜を長期間使用でき、かつ無駄に排出される水量が非常に少ない。しかも、本発明を適用した装置は従来のような凝集槽や沈澱槽を必要としない省スペースタイプで設置も容易であり、使用するUFモジュール又は精密瀘過膜モジュールに対するクロスフロー量(循環量)も従来方式に比べてはるかに少なくて済むので、原水を供給しかつクロスフローを行うためのポンプも大容量のものを必要とせず小型のものでもよく、ポンプの電力消費量を大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による濾過膜モジュールの洗浄方法を実施するための浄化装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示された構成において、各種条件を設定して運転した場合の運転日数と流束変化との関係を示した図である。
【図3】図1に示された構成において、各種条件を設定して運転した場合の運転日数と回収率との関係を示した図である。
【図4】図1に示された構成において、各種条件を設定して運転した場合の運転日数と逆洗圧との関係を示した図である。
【図5】図1に示された構成において、各種条件を設定して運転した場合の運転日数とUFモジュール12の膜素材による流束の変化との関係を示した図である。
【図6】図1に示された構成において、運転日数と殺菌剤の注入による流束の変化の関係を示した図である。
【図7】UFモジュール利用による従来の濾過膜モジュールの洗浄方法を実施するための構成を示す模式図である。
【符号の説明】
10、23、30 逆止弁
11、18、31 ポンプ
12、32 UFモジュール
13、33 透過水自動弁
14、34 濃縮水排出自動弁
17 透過水タンク
19 逆洗自動弁
21 薬剤タンク
22 薬注ポンプ
24 殺菌剤注入経路24
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-22 
出願番号 特願平5-51482
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 真々田 忠博  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 岡田 和加子
大黒 浩之
登録日 2002-10-11 
登録番号 特許第3359687号(P3359687)
権利者 ダイセル化学工業株式会社
発明の名称 濾過膜モジュールの洗浄方法  
代理人 義経 和昌  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 古谷 聡  
代理人 義経 和昌  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 持田 信二  
代理人 古谷 聡  
代理人 持田 信二  

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