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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A01G
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A01G
管理番号 1127888
審判番号 無効2004-80187  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2005-07-07 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-13 
確定日 2005-10-20 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3556213号発明「育苗ポット及び表示板付育苗ポット」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3556213号の請求項1ないし14に係る発明についての出願は、平成16年2月25日(優先権主張平成15年11月28日、特願2003-398521号)に出願され、平成16年5月21日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、株式会社東海化成より請求項1ないし14に係る発明についての特許を無効とする旨の無効審判が請求され、平成16年12月31日に被請求人より答弁書と共に訂正請求書が提出され、平成17年3月2日に請求人より弁駁書が提出されたものである。

2.訂正の適否の判断
(1)被請求人が求める訂正の内容
被請求人が求める訂正の内容は、本件特許発明の明細書及び図面を以下のaないしdのとおりに訂正することを求めるものである(下線部は訂正個所である。)。
訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1を
「【請求項1】
底壁と、その底壁の縁部から上方に向かって立設する側壁と、その側壁と前記底壁とで囲まれる空間であって苗や培土を収納する収納空間と、その収納空間に培土や苗を入れるために前記側壁の上縁部により形成される開口面とを備えた育苗ポットにおいて、
前記側壁の一部であって、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分に他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪み、前記収納空間に前記培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となる第1凹部と、
その第1凹部の前記開口面を臨む部分に開口され、前記収納空間に収納される苗に関する情報が表示された表示板を差込む差込み口とを備えていることを特徴とする育苗ポット。」と訂正する。
訂正事項b
発明の詳細な説明の段落【0011】を
「この目的を達成するために請求項1記載の育苗ポットは、底壁と、その底壁の縁部から上方に向かって立設する側壁と、その側壁と前記底壁とで囲まれる空間であって苗や培土を収納する収納空間と、その収納空間に培土や苗を入れるために前記側壁の上縁部により形成される開口面と、前記側壁の一部であって、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分に他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪み、前記収納空間に前記培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となる第1凹部と、その第1凹部の前記開口面を臨む部分に開口され、前記収納空間に収納される苗に関する情報が表示された表示板を差込む差込み口とを備えていることを特徴とする育苗ポット。」と訂正する。
訂正事項c
発明の詳細な説明の段落【0012】を
「この請求項1に記載の育苗ポットによれば、苗に関する情報が表示された表示板は差込み口に差込まれることで育苗ポットに取付けられる。ここで、この差込み口は第1凹部の開口面を臨む部分に開口されているので、収納空間に培土を収納した後に、開口面からは差込み口を把握することはできない。一方、差込み口が開口されている第1凹部は、側壁の一部であって他の側壁の外面よりも収納空間側に窪んだ部分であるので、その第1凹部を目印とすることで、差込み口の位置は、育苗ポットの側壁側から把握される。また、第1凹部は、側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分であって、収納空間に培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となるように設けられているので、その所定間隔を空けた部分では、差込み口に差込まれた表示板は、側壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされる。」と訂正する。
訂正事項d
発明の詳細な説明の段落【0026】を
「請求項1記載の育苗ポットによれば、差込み口が開口されている第1凹部は、側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分であって、収納空間に培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となるように設けられているので、差込み口に差込まれた表示板は、側壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされる。よって、表示板を育苗ポットに対して略直立した状態で固定することができるという効果がある。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否についての当審の判断
上記訂正事項aは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「収納空間側に窪む第1凹部」について、「収納空間側に窪み、前記収納空間に前記培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となる第1凹部」と、より具体的に限定するものであり、この限定は特許明細書の段落【0068】、及び図1の記載に基くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。また、上記訂正事項bないしdは、上記特許請求の範囲の減縮に伴って、減縮された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張しまたは変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成15年改正特許法(以下、単に「特許法」という。)第134条の2第5項において準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
特許第3556213号の請求項1ないし14に係る発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、以下a.ないしG.のように分説して記載することができる。
「【請求項1】
a.底壁と、その底壁の縁部から上方に向かって立設する側壁と、その側壁と前記底壁とで囲まれる空間であって苗や培土を収納する収納空間と、その収納空間に培土や苗を入れるために前記側壁の上縁部により形成される開口面とを備えた育苗ポットにおいて、
b.前記側壁の一部であって、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分に他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪み、前記収納空間に前記培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となる第1凹部と、
c.その第1凹部の前記開口面を臨む部分に開口され、前記収納空間に収納される苗に関する情報が表示された表示板を差込む差込み口とを備えている
d.ことを特徴とする育苗ポット。
【請求項2】
e.前記第1凹部は、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた位置から前記底壁側に向かって帯状に延びて形成されている
f.ことを特徴とする請求項1に記載の育苗ポット。
【請求項3】
g.前記側壁の一部であって、他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪み、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた位置から前記底壁側に向かって帯状に延びる少なくとも1以上の第2凹部を備え、
h.その第2凹部と第1凹部とは、その外観形状を異にするように構成されている
i.ことを特徴とする請求項2に記載の育苗ポット。
【請求項4】
j.前記第1凹部と前記側壁の上縁部との間に開けられる所定間隔は、前記第2凹部と前記側壁の上縁部との間に開けられる所定間隔よりも広く開けられて構成されている
k.ことを特徴とする請求項3に記載の育苗ポット。
【請求項5】
l.前記第1凹部と第2凹部との各々は、前記側壁の全周を略等分するように配置されている
m.ことを特徴とする請求項3又は4に記載の育苗ポット。
【請求項6】
n.前記第1凹部の底壁側または前記第2凹部の底壁側に隣設され、前記側壁から底壁に亘って断面視略L字型に開口する開口部を備えている
o.ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の育苗ポット。
【請求項7】
p.前記開口部は前記第1凹部と前記第2凹部との間および隣合う第2凹部の間に各々配置されている
q.ことを特徴とする請求項6に記載の育苗ポット。
【請求項8】
r.請求項1から7のいずれかに記載の育苗ポットと、
s.その育苗ポットに備えられた差込み口に差し込まれ、前記育苗ポットに収納されている苗に関する情報が表示されている表示板とを備えている
t.ことを特徴とする表示板付育苗ポット。
【請求項9】
u.前記第1凹部は前記側壁に複数備えられており、その各々に前記差込み口が開口されている
v.ことを特徴とする請求項1又は2に記載の育苗ポット。
【請求項10】
w.前記第1凹部の各々は、前記側壁の全周に対して略等間隔に配置されている
x.ことを特徴とする請求項9に記載の育苗ポット。
【請求項11】
y.前記側壁は平面視多角形に形成されており、前記第1凹部は、その側壁を形成する各面の各々に少なくとも1つ以上配置されている
z.ことを特徴とする請求項9又は10に記載の育苗ポット。
【請求項12】
A.前記第1凹部の底壁側に隣設され、前記側壁から底壁に亘って断面視略L字型に開口する開口部を備えている
B.ことを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の育苗ポット。
【請求項13】
C.前記開口部は隣合う2つの第1凹部の間に各々配置されている
D.ことを特徴とする請求項12に記載の育苗ポット。
【請求項14】
E.請求項9から13のいずれかに記載の育苗ポットと、
F.その育苗ポットに備えられた差込み口に差し込まれ、前記育苗ポットに収納されている苗に関する情報が表示されている表示板とを備えている
G.ことを特徴とする表示板付育苗ポット。」
(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明14」という。)

4.当事者の主張
(1)請求人の主張
(1-1)請求人が主張する請求理由
請求人は、証拠方法として下記の甲第1号証ないし甲第12号証を提出するとともに、審判請求書において、以下の請求理由を挙げている。
a.特許法第29条第1項第1号、第2号違反
(ただし、上記の法条は、審判請求書第1頁「7 請求の理由」における、「1)請求の理由の要約」の項に記載されているのみであり、当該法条を請求理由とする具体的な根拠については、審判請求書のその他の箇所には全く記載されていない。)
b.特許法第29条第1項第3号違反
(ただし、上記の法条は、審判請求書第1頁「7 請求の理由」における、「1)請求の理由の要約」の項には列記されておらず、審判請求書第16頁第17行-第17頁第4行における、「ア)」及び「イ)」の記載の中で、「・・・本件請求項1、2、8〜11の発明の発明特定事項と、甲第5号証又は甲第6号証に記載された発明特定事項とに相異は認められず、本件請求項1、2、8〜10の発明は甲第5号証又は甲第6号証に記載された発明である(特許法第29条第1項第3号)。」と記載されている。)
c.特許法第29条第2項違反
(上記の法条は、審判請求書第1頁「7 請求の理由」における、「1)請求の理由の要約」の項及び審判請求書第17頁第5-23行における、「ウ)」及び「エ)」の記載の中で、以下の具体的な理由とともに主張されている。)
(c-1)請求項1、2、8〜11に係る発明は、甲第1号証、及び、甲第2号証〜甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたものである。
(c-2)請求項3〜7、12〜14に係る発明は、甲第1号証〜甲第12号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたものである。

証拠方法
甲第1号証:意匠登録第1171874号公報
甲第2号証:実公平7-46128号公報
甲第3号証:実公平7-33640号公報
甲第4号証:特開2002-45046号公報
甲第5号証:特開2003-230320号公報
甲第6号証:特開2004-16009号公報
甲第7号証:特開2004-49032号公報
甲第8号証:特開平11-196677号公報
甲第9号証:特開平10-203247号公報
甲第10号証:特開平10-94330号公報
甲第11号証:実開平5-43838号公報
甲第12号証:実公平4-8752号公報

(1-2)請求人が審判請求書に列記した請求理由に対する被請求人の対応
被請求人は、「請求人が主張する請求の理由は、根拠条文が一致しておらず、不明確である。」としつつも、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の無効理由に対して実質的に答弁をしている。

(1-3)弁駁書において請求人が追加した請求理由
請求人は、弁駁書とともに証拠方法としてさらに甲第13号証ないし甲第20号証を提示し、新たに以下の理由を主張している。
d.特許法第29条第1項柱書違反
e.特許法第36条第6項第2号違反
f.特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第5項違反
しかし、これらdないしfの請求理由及び証拠方法は、審判請求当初の無効審判請求書に請求理由として記載されていた理由とは異なる新たな請求理由及び新たな証拠方法であり、これらの請求理由及び証拠方法を追加する請求理由の補正は、請求理由の要旨を変更する補正であるから、特許法第131条の2第1項の規定により、許可することができない。

(1-4)請求人が主張する請求理由についての当審の判断
以上のとおりであるので、当審においては、請求人が主張する以下の請求理由について審理を行う。
1.本件の請求項1、2、8ないし11に係る発明は甲第5号証又は甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。(以下、「無効理由1」という。)
2.本件の請求項1ないし14に係る発明は、以下の(1)及び(2)により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。(以下、「無効理由2」という。)
(1)本件の請求項1、2、8ないし11に係る発明は、甲第1号証、及び、甲第2号証ないし甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたものである。
(2)本件の請求項3ないし7、12ないし14に係る発明は、甲第1号証ないし甲第12号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたものである。
(2)被請求人の主張
被請求人は、証拠方法として乙第1号証を提出して、請求人が主張する無効理由に対して、以下の主張をしている。
(2-1)本件の請求項1ないし14に係る発明は、甲第1号証ないし甲第12号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項各号に該当するものではない。
したがって、本件の請求項1ないし14に係る発明は無効にされるべきではない。
(2-2)本件の請求項1ないし14に係る発明は、甲第1号証ないし甲第12号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができた発明ではなく、特許法第29条第2項に該当するものではない。
したがって、本件の請求項1ないし14に係る発明は無効にされるべきではない。

証拠方法
乙第1号証:平成16年3月29日付けの「早期審査に関する事情説明書」

5.無効理由1及び2に対する当審の判断
(1)特許法第29条第1項第3号及び第2項の規定の適用についての本件発明の出願日について
本件特許に係る出願は、特許法第41条に基く優先権主張を伴い平成16年2月25日(優先日、平成15年11月28日(特願2003-398521号))に出願されたものである。ところが、上記において分説した本件発明1ないし14に係る発明特定事項aないしGのうち、u、w、x、y、z、B、C、D、Fについては、優先権主張の基礎とされた出願(特願2003-398521号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていない。そうすると、本件発明1ないし8の各発明については優先権主張が認められるから、特許法第29条第1項第3号及び第2項の規定の適用についての出願日は、優先日である平成15年11月28日とみなされる。一方、優先権主張の基礎とされた出願に記載されていない上記の発明特定事項を含む本件発明9ないし14の各発明については優先権主張が認められず、その出願日は現実の出願日である平成16年2月25日である。
(2)甲号各証に記載された発明
甲号各証のうち、甲第1号証ないし甲第5号証並びに甲第8号証ないし甲第12号証は本件の優先日前に頒布された刊行物であり、また甲第6号証及び甲第7号証は、本件の優先日後であって、現実の出願日前に頒布された刊行物である。そして、甲号各証には以下の発明または技術的事項が記載されていると認められる。
甲第1号証(意匠登録第1171874号公報)
甲第1号証は「苗ポット」に関する登録意匠公報であり、「意匠に係る物品の説明」には、「植物を種から育てる場合、ポットに土を入れ、その中に種をまく。二葉が育つまでの間育成し、その後畑へ移植する。成型したポットには水はけ用の穴を3ヶ所あけている。」と記載されている。
上記の記載と、特に参考斜視図、平面図、左右の側面図、背面図、底面図、A-A及びB-Bの断面図等とを総合すると、甲第1号証には、次の発明が実質的に記載されていると認められる。
「側壁に、土等を収納する空間に向かって窪む3個の凹部が等間隔に設けられており、前記凹部はポットの上縁部から所定長さ下がった位置から底部に向かって連続して形成されており、それぞれの凹部には、水はけ用の穴があけられている苗ポット。」

甲第2号証(実公平7-46128号公報)
甲第2号証には以下の記載が認められる。
2-a.「【請求項1】苗育成用の容器であって、容器本体部と、この容器本体部に設けられた鍔部と、この鍔部に形成された孔と、この孔に差し込まれた育成苗に関する情報が表示される表示板とを具備してなることを特徴とする容器。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)

甲第3号証(実公平7-33640号公報)
甲第3号証には以下の記載が認められる。
3-a.「【請求項1】 苗育成用の容器であって、容器本体部と、この容器本体部に設けられた鍔部と、この鍔部に形成された孔と、この孔に差し込まれ、前記苗に関する情報が表示される表示板とを具備してなり、前記表示板の下部両側には上方に開口する切欠きが設けられてなることを特徴とする容器。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)

甲第4号証(特開2002-45046号公報)
甲第4号証には以下の記載が認められる。
4-a.「通常の場合、育苗ポットに収容した土壌で生育される種苗の種類を明示するため、種苗の名前や、特性、生育方法、生育したときの花等の絵や写真等を明記した薄い硬質樹脂板のラベルが育苗ポットの土壌に差し込まれる。」(段落【0004】(第2頁第2欄第24-28行))
4-b.「本発明の目的は、ラベルが土壌中の種苗を傷付けることなく簡単に取り付けられ、かつ、簡単には外れないようにした、特に店頭販売に適した柔軟な樹脂容器の育苗ポットを提供することにある。」(段落【0007】)
4-c.「育苗ポット1aにおいて、角筒状側壁部3の上端開口縁は略正方形で、その一辺の中央部分に1条の直線状スリットSが形成される。例えば、略角筒状側壁部3の一辺の中央部に側壁部3内面側に凹む凹壁部4を側壁部3と連続させて一体に成形し、凹壁部4の上端開口にこの上端開口を塞いで側壁部3の上端開口縁の一部を形成する天縁部5を一体に成形して、この天縁部5にスリットSを形成する。」(段落【0020】)
4-d.「ラベル20は図5に示すようなプラスチック等の薄い硬質板で、育苗ポット1aで生育される種苗の名前、特性、生育後の写真等が明記されたラベル本体20aと、ラベル本体20aから一体に延在するくさび形状の差し込み部20bを有する。」(段落【0023】(第4頁第5欄第26-30行))
上記の記載より、甲第4号証には次の発明が記載されていると認められる。
「ラベルが土壌中の種苗を傷付けることなく簡単に取り付けられ、かつ、簡単には外れないようにした、特に店頭販売に適した柔軟な樹脂容器の育苗ポットであって、角筒状側壁部3の上端開口縁を略正方形とした育苗ポット1aにおいて、略角筒状側壁部3の一辺の中央部に側壁部3内面側に凹む凹壁部4を側壁部3と連続させて一体に成形し、凹壁部4の上端開口にこの上端開口を塞いで側壁部3の上端開口縁の一部を形成する天縁部5を一体に成形して、この天縁部5にスリットSを形成し、プラスチック等の薄い硬質板で、育苗ポット1aで生育される種苗の名前、特性、生育後の写真等が明記されたラベル本体20aと、ラベル本体20aから一体に延在するくさび形状の差し込み部20bを有するラベル20を上記のスリットSに差し込むようにした、育苗ポット。」

甲第5号証(特開2003-230320号公報)
甲第5号証には以下の記載が認められる。
5-a.「従来のラベルとしては、脚部を有する立札形状に形成されたものがあり、各ポット内の培土に脚部を直接挿し込むか・・・」(段落【0003】(第2頁第2欄第6-8行))
5-b.「本発明・・・の目的とするところは、構造が簡単で廉価に製造でき、別体のラベルを簡単に取着することができる一方、簡単には取り外しできない植栽用ポットを提供せんとするものである。」(段落【0009】)
5-c.「植栽用ポット1は、排水孔11を有する底壁10と、該底壁10の外周縁部から上方に向かって拡径し上端開口部21で終端する傾斜周壁20と、別体ラベル30の切込み孔33に係止させる舌状片25を天井面23に形設したラベル差し段部22とを具備しており、前記上端開口部21から外方向に延出する部分はカール状に屈曲され補強口縁21aを構成している。」(段落【0034】)
5-d.「なお、この植栽用ポット1は、傾斜周壁20の横断面がほぼ正方形に形成されているが、その外観形状はこれに限定されるものではない。例えば、底壁(底の底壁の周縁から若干立ち上がった直後からほぼ正方形をなすものであっても良いし、円形の底壁の周縁から若干立ち上がった部分まで円形でそこから上端開口部までほぼ正方形をなすものであっても構わない。」(段落【0035】)
5-e.「ラベル差し段部22は、傾斜周壁20の一部を構成するものであり、・・・」(段落【0036】(第4頁第5欄第43-44行))
5-f.「この植栽用ポット1において、前記傾斜周壁20とラベル差し段部22には、下端部から底壁10に亘る複数の縦リブ13が形成されており、これによっても、各植栽用ポットの変形防止が図れ、かつ、伸長した植物根の根巻き防止を図るようになっている。」(段落【0040】)
5-g.「ポット1の傾斜周壁20とラベル差し段部22に、軸線方向に補強用の縦リブ13を形設すると、植栽用ポット1の変形や座屈等の変形を防止するとともに、ポット1の内面に到達した植物根がポットの内面に沿って伸長し根巻き現象の防止を図れる。」(段落【0043】(第4頁第6欄第36-40行))
5-h.「ラベル30は、ポリエチレンシートを抜き成形して製造したものであり、植物名、原産地、栽培方法等の情報を印刷表示した表示部31と、脚部32とからなる立札形状をなしている。」(段落【0046】(第5頁第7欄第9-12行))
上記の記載より、甲第5号証には次の発明が記載されていると認められる。
「構造が簡単で廉価に製造でき、別体のラベルを簡単に取着することができる一方、簡単には取り外しできない植栽用ポットであって、排水孔11を有する底壁10と、該底壁10の外周縁部から上方に向かって拡径し上端開口部21で終端する傾斜周壁20と、別体ラベル30の切込み孔33に係止させる舌状片25を天井面23に形設したラベル差し段部22とを具備しており、該ラベル差し段部22は傾斜周壁20の一部を構成するもので、前記上端開口部21から外方向に延出する部分はカール状に屈曲され補強口縁21aを構成しており、ポット1の傾斜周壁20とラベル差し段部22に、軸線方向に補強用の縦リブ13を形設すると、植栽用ポット1の変形や座屈等の変形を防止するとともに、ポット1の内面に到達した植物根がポットの内面に沿って伸長し根巻き現象の防止を図ることができ、ラベル30は、ポリエチレンシートを抜き成形して製造したものであり、植物名、原産地、栽培方法等の情報を印刷表示した表示部31と、脚部32とからなる立札形状をなしている、植栽用ポット。」

甲第6号証(特開2004-16009号公報)
甲第6号証には以下の記載が認められる。
6-a.「2は、容器本体1の周壁11に形成されたスリットであり、植物の名前や写真等を明示した表示体を挿し込むためのものである。このスリット2は、上方部(例えば、上端縁から周壁11の高さの10%〜30%程度の範囲)において、リブ14に沿って設けられている。このスリット2の形状は、如何なる形状であっても良い。・・・又、スリット2は前後左右の計4個設けられているが、その数は幾つ有っても良い。」(段落【0023】)
6-b.「3は植物の名前や写真等を明示した表示体であり、例えば薄いプラスチックシート等から構成されている。表示体3には、図2に示した通り、上方に開口する切込み部4a,4bが下方部に設けられており、この切込み部4a,4bによって挿込用の舌片部5が形成される。・・・そして、表示体3の先端(下端)が周壁11の外側から内側に向けてスリット2に挿し込まれる。尚、この時、表示体3に表示されている各種情報が内側になるように挿し込まれる。」(段落【0024】)
6-c.「6は容器本体1内に充填された土壌である。」(段落【0025】)
6-d.「上記のように構成していると、スリット2から内側に挿し込まれた表示体3は、容器本体内に充填された土壌6によって圧力を受け、この圧力により周壁11内面に押し付けられて抜け難くなる。すなわち、スリット2と表示体3の切込み部4a,4bとの掛止力のみで表示体3を支持する場合に比べて、土壌の圧力による支持が更に加わるから、抜け難く、かつ、強固に支持される。更には、表示体3は周壁11内面に押し付けられているから、その姿勢は周壁11によって規制を受け、フラフラし難く、表示体3が苗側に倒れ、苗を傷つけることも無い。・・・」(段落【0026】)
6-f.「又、上記実施の形態では、容器本体1の外側から内側に表示体3を挿し込んでいるが、例えば表示体3が容器本体1内の苗の前に有るように、容器本体1の内側から外側に向けて表示体3をスリット2に挿し込んでも良い。但し、この場合、前記実施の形態の場合よりも、高い位置まで土壌を充填することが要請される。」(段落【0028】)
上記の記載より、甲第6号証には次の発明が記載されていると認められる。
「容器本体1の周壁11に形成されたスリット2に、周壁11の外側から内側に向けて、植物の名前や写真等を明示した表示体3を挿し込み、スリット2から内側に挿し込まれた表示体3は、容器本体内に充填された土壌6によって圧力を受け、この圧力により周壁11内面に押し付けられて抜け難くなるよう構成し、あるいは、表示体3が容器本体1内の苗の前に有るように、容器本体1の内側から外側に向けて表示体3をスリット2に挿し込むように構成した苗育成用容器であり、容器本体1の内側から外側に向けて表示体3をスリット2に挿し込む場合には、外側から内側に向けて挿し込む場合よりも高い位置まで土壌を充填することが要請される、苗育成用容器。」

甲第7号証(特開2004-49032号公報)
甲第7号証には以下の記載が認められる。
7-a.「【請求項1】底壁の外周縁部から上方に立ち上がり上端が開口する周壁に、水平方向の切込み溝Aの両端から連続する上下方向に対して内方向斜めの切込み溝Bを設けてなるラベル差し部が形成されていることを特徴とするラベル差しポット。」(特許請求の範囲の請求項1)
7-b.「ラベル20の脚部22を、ポット10の周壁に設けたラベル差し部15の切込み溝Aからポット10内面と培土間に脚部22の下端側を挿し込むと、脚部22の止着部25の位置まで差し込みでき、それ以上は挿し込めないように取り付けできる(図3参照)。水平方向の切込み溝Aの長さ(m)と、止着部25を設けた位置の脚部22の巾寸法(m)が同一に構成されているからである。」(段落【0033】)

甲第8号証(特開平11-196677号公報)
甲第8号証には以下の記載が認められる。
8-a.「【請求項1】 野菜や花、樹木などの苗を適当な大きさになるまで育てるのに利用される育苗用ポットに、宣伝を目的とした内容の文字や絵、写真などを直接印刷又は宣伝を目的とした内容の印刷物を取り付けた広告媒体機能を持った育苗用ポット。」(特許請求の範囲の請求項1)
8-b.「図4と図8は、図12の広告が印刷されたラベルの下部に2箇所縦に切り目を入れ、育苗用ポットの縁に差し込んだものである。」(段落【0007】)
8-c.「図5と図9は、図13の広告が印刷され下部が楔形になっているラベルを、育苗用ポットの上部に2本切れ目を入れて差し込んだものである。」(段落【0008】)

甲第9号証(特開平10-203247号公報)
甲第9号証には以下の記載が認められる。
9-a.「【請求項1】 クッションフレームとクッション本体からなるシートクッションと、このクッションフレームの後端部に装着されたシートバックで自動車用シートを構成し、上記シートクッションのクッション本体を前端部を中心に前方に向けて回動可能に上記クッションフレームに装着し、該クッション本体の下部側空間部に、収納容器を脱着可能に取付けた自動車の物品収納装置において、上記収納容器の少なくとも両側部の上端に、上記クッションフレームの両側部上端に係合するフランジ部を設け、該フランジ部を上記クッションフレームの両側部上端に係合させて収納容器を吊り下げるとともに上記収納容器の両側内側面にそれぞれ一端部を支持された取っ手を装着し、該取っ手を収納容器の前後方向壁面の内側に入り込む長さに形成し、かつ該取っ手の握り部に圧接して取っ手を保持するラップ代を上記収納容器の内壁面に形成したことを特徴とする自動車の物品収納装置。」(特許請求の範囲の請求項1)
9-b.「収納容器27は、周囲にフランジ部28が設けられた四角形の容器で、取っ手29によって持ち運びができるようになっている。この収納容器27のフランジ部28は、上端両側部および前後部に外方に向けて湾曲したフランジ部28b,28a,28cが形成されている。このフランジ部28a,28b,28cのうち両側部のフランジ部28bを、上記クッションフレーム4のサイドフレーム7,7の上端フレーム部7aに係合させ、前部のフランジ部28aを、前部パイプ8に係合させ、さらに、後部のフランジ部28cを後部パイプ9に係合させて収納容器27がクッションフレーム4に取り付けられている。この収納容器27には、図7および図8に示すように、両側内側面の上端部に、樹脂製の取っ手29の両端が回動可能に装着されており、この取っ手29は、収納容器27の内側に入り込む長さに形成されている。この取っ手29が回動する収納容器27の前後の内側面には、内側に向けて突出部27a,27bが形成されており、この突出部27a,27bの上面に取っ手29を係止する受け部30が設けられている。」(段落【0013】(第4頁第5欄第7-26行))
上記の記載より、甲第9号証には次の発明が記載されていると認められる。
「自動車用シートにおけるシートクッションの、クッション本体の下部側空間部に収納容器を脱着可能に取付けた自動車の物品収納装置において、上記収納容器の両側内側面の上端部に、樹脂製の取っ手29の両端が回動可能に装着されており、この取っ手29は、収納容器27の内側に入り込む長さに形成されており、この取っ手29が回動する収納容器27の前後の内側面には、内側に向けて突出部27a,27bが形成されており、この突出部27a,27bの上面に取っ手29を係止する受け部30が設けられている、自動車の物品収納装置。」

甲第10号証(特開平10-94330号公報)
甲第10号証には以下の記載が認められる。
10-a.「【請求項1】 底面から上方へ向かって拡径する傾斜周壁を有し、該傾斜周壁には水および根を下方へ誘導するための段部が縦方向に形成されているとともに、傾斜周壁の下部部位から前記底面に亘り排水用のスリット孔が形成されていることを特徴とする植木鉢。」(特許請求の範囲の請求項1)
10-b.「底面7から傾斜周壁4の下部部位に亘りスリット孔8が形成され、このスリット孔8は水の流下方向を横切る方向に切込み形成されたものであるため、底面7および傾斜周壁4の下部に表面張力によって付着する停留水をも確実に排水させることができ、底面7周辺に停留水が生ずることがなく、前記側根12,12,12の先端の成長点は良好な好気状態で十分な酸素が供給される条件下で成長し、十分な酸素が供給される条件下のため次第に側根12の成長点は短い細胞組織となって、短い細胞組織への変化に伴い健康な状態を維持しつつ自然に成長を停止することとなり、このように健康な状態で側根12の成長が自然停止されると図5に示すように、前記主根11から多数の心根(けん引根)13が分根し成長してくるものであり、分根された多数の心根13,13,13は、傾斜周壁4が下方側に向かって面積を狭めた傾斜状であるため、心根13は下方側に向かうにつれてその密度を高めて集束状態で成長する。」(段落【0009】(第3頁第3欄第12-29行))

甲第11号証(実開平5-43838号公報)
甲第11号証には以下の記載が認められる。
11-a.「【請求項1】 上端側において開口縁で終端する筒状の側壁と、前記側壁における軸方向下端側に連続していて、中央部に排水孔を備えた底壁とを有し、前記側壁および底壁によって適宜横断面形状の育苗土壌収容室を区画し、単一の鉢体として形成される育苗用ポットであって、
前記側壁と前記底壁に対し、前記側壁の上端開口縁近傍から前記底壁の中央部排水孔近傍にかけて連続してのびる複数条のスリットを設けてなることを特徴とする育苗用ポット。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)
11-b.「この考案になる育苗用ポットは、ポット壁に複数条のスリットを設けたことにより、苗根に対する空気流通がよく、培土中に根がよく張り詰め、根巻き現象を抑制することができる点、定植後は活着がよくしかも根の生育がよくて深層まで伸長する理想的な育苗を可能とする点、・・・等において、極めて実効性の高いものであるといえる。」(段落【0011】(第8頁第11-17行))

甲第12号証(実公平4-8752号公報)
甲第12号証には以下の記載が認められる。
12-a.「底面と周壁下部との連接部に亘るスリット穴を複数条放射状に穿設したことを特徴とする植木鉢。」(実用新案登録請求の範囲)
12-b.「本案は停留水の滞留を抑止するので、鉢内の限られた用土の隅部まで空気の呼吸作用を助け、根腐れや、ルーピングを生ずることなく、正常な分根化を促進し鉢付植物に優れた育成効果を有するものである。」(第2頁第4欄第16-20行)

(3)無効理由1について
(3-1)本件発明1、2、8ないし11と甲第5号証に記載された発明との対比検討
(3-1-1)本件発明1に対して
本件発明1と甲第5号証に記載された発明(以下、「甲第5号証の発明」という。)とを対比すると、甲第5号証の発明における「植栽ポット」は、その機能に照らすと本件発明1における「育苗ポット」に対応し、同様に、「底壁の外周縁部から上方に向かって拡径する傾斜周壁」は「底壁と、その底壁の縁部から上方に向かって立設する側壁」に、「(傾斜周壁が)終端」する「上端開口部」は「側壁の上縁部により形成される開口面」に、「植物名、原産地、栽培方法等の情報を印刷表示した表示部(からなる)ラベル」は「収納空間に収納される苗に関する情報が表示された表示板」にそれぞれ対応し、さらに、甲第5号証の発明について次のことがいえる。
(i)甲第5号証の発明は、「傾斜周壁」と「底壁」とで囲まれる空間を備えており、該空間には苗や培土が収納されることが明らかであるから、実質上、苗や培土を収納する収納空間を備えているといえるとともに、「収納」は「上端開口部」より行うこともまた明らかである。そうすると、同甲第5号証の発明は、本件発明1を特定する「その側壁と前記底壁とで囲まれる空間であって苗や培土を収納する収納空間と、その収納空間に培土や苗を入れるために前記側壁の上縁部により形成される開口面(とを備えた)」の事項に対応する構成を実質的に備えている。
(ii)甲第5号証の発明は、「傾斜周壁20の一部を構成するラベル差し段部22」を備えており、甲第5号証の図面、特に図4、図8を参照すると、上記「ラベル差し段部22」は「上端開口部21」まで延設され、さらに該「上端開口部21から外方向に延出」する「補強口縁21a」(摘記事項5-c)とは逆向きに、すなわち、「上端開口部21」から内方向に向けて形成されているものであり、「傾斜周壁20」から内方向に窪む窪み部、すなわち、凹部であるということができるから、「傾斜周壁20」の一部に、他の「傾斜周壁20」の外面よりも収納空間側に窪む凹部であるといえる。
一方、本件発明1が備える「第1凹部」も「凹部」であるから、本件発明1と甲第5号証の発明とは、「前記側壁の一部であって」、「他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪」む「凹部」を備えている点で共通しているといえる。
(iii)甲第5号証の発明は、「ラベル30の切込み孔33に係止させる舌状片25を天井面23に形設したラベル差し段部22を具備」(摘記事項5-c)しており、上記(ii)に記載したとおり、「ラベル差し段部22」は「凹部」であるということができるから、「凹部」に形設され、「ラベル30」を係止する「舌状片25」を備えているといえる。一方、本件発明1は、「凹部」である「第1凹部」の「前記開口面を臨む部分に開口され、前記収納空間に収納される苗に関する情報が表示された表示板を差込む差込み口」を備えているから、両者は、凹部に開口され、表示板を差込む差込み口を備えている点で共通しているといえる。
そうすると、本件発明1と甲第5号証の発明とは、次の点で一致し、また相違していると認められる。
一致点;
底壁と、その底壁の縁部から上方に向かって立設する側壁と、その側壁と前記底壁とで囲まれる空間であって苗や培土を収納する収納空間と、その収納空間に培土や苗を入れるために前記側壁の上縁部により形成される開口面とを備えた育苗ポットにおいて、前記側壁の一部に、他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪む凹部と、その凹部に開口され、前記収納空間に収納される苗に関する情報が表示された表示板を差込む差込み口とを備えている育苗ポット、である点。
相違点;
(イ)「凹部」が、本件発明1では、側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分であって、前記収納空間に培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となる第1凹部であるのに対して、甲第5号証の発明では、傾斜周壁の上端開口部の開口面まで延設したラベル差し段部であり、該ラベル差し段部は傾斜周壁の上端開口部との間に所定間隔を空けて形成されてはおらず、傾斜周壁と底壁とで囲まれる収納空間に培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となるものではない点。
(ロ)「凹部に開口される差込み口」が、本件発明1では、第1凹部の開口面を臨む部分に開口される差込み口であるのに対して、甲第5号証の発明では、傾斜周壁の上端開口部の開口面まで延設されたラベル差し段部の天井面に形設したラベル係止用の舌状片である点。
以上のとおり、本件発明1と甲第5号証の発明とは上記(イ)及び(ロ)の点で相違しており、これらの相違点に係る技術事項は本件発明1の出願の時点において周知または慣用の技術であったとすることもできないから、本件発明1は甲第5号証に記載された発明であるとすることはできず、本件発明1の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものではない。

(3-1-2)本件発明2、8ないし11に対して
本件発明2、8ないし11は、いずれも本件発明1を直接または間接に引用して記載されているところ、本件発明1については、「(3-1-1)本件発明1に対して」に記載したとおり、甲第5号証に記載された発明であるとすることはできない。そうすると、本件発明1をさらに限定した発明である本件発明2、8ないし11についても、本件発明1に対する理由と同様の理由により、甲第5号証に記載された発明であるとすることはできないから、本件発明2、8ないし11の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものではない。

(3-2)本件発明1、2、8ないし11と甲第6号証に記載された発明との対比検討
(3-2-1)本件発明1、2、8に対して
上記したように、本件発明1、2、8は優先権主張が認められ、甲第6号証は本件の優先日前に頒布された刊行物ではないから、本件発明1、2、8の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものではない。

(3-2-2)本件発明9ないし11に対して
上記したように、本件発明9ないし11は優先権主張が認められず、甲第6号証は本件の現実の出願日前に頒布された刊行物である。
そこで本件発明9ないし11と甲第6号証に記載された発明(以下、「甲第6号証の発明」という。)とを対比すると、本件発明9ないし11は「第1凹部」を「側壁に複数備え」ることを発明特定事項とするものであるのに対して、甲第6号証の発明は側壁に凹部を備えておらず、まして複数の凹部を備えてはいないから、本件発明9ないし11は甲第6号証に記載された発明であるとすることはできず、その特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものではない。

(3-3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1、2、8ないし11の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものではなく、請求人の主張する無効理由1には理由がない。

(4)無効理由2について
(4-1)本件発明1、2、8ないし11と甲第1号証ないし甲第9号証に記載された発明との対比検討
(4-1-1)本件発明1に対して
本件発明1と甲第1号証に記載された発明(以下、「甲第1号証の発明」という。)とを対比すると、甲第1号証の発明における「苗ポット」は、その機能に照らすと本件発明1における「育苗ポット」に対応し、さらに、甲第1号証の発明について次のことがいえる。
(iv)甲第1号証の特に参考斜視図、平面図、左右の側面図、背面図、底面図、A-A及びB-Bの断面図等を参酌すると、甲第1号証の発明は、本件発明1を特定する、「底壁と、その底壁の縁部から上方に向かって立設する側壁と、その側壁と前記底壁とで囲まれる空間であって苗や培土を収納する収納空間と、その収納空間に培土や苗を入れるために前記側壁の上縁部により形成される開口面とを備えた育苗ポット」の事項に対応する構成を実質的に備えているといえる。
(v)甲第1号証の発明は、その側壁に、土等を収納する空間に向かって窪む3個の凹部が等間隔に設けられており、前記凹部はポットの上縁部から所定長さ下がった位置から底部に向かって連続して設けられているものである。
一方、本件発明1が備える「第1凹部」も「凹部」であるから、本件発明1と甲第1号証の発明とは、「凹部」を備えている点で共通しており、さらに甲第1号証の発明における「凹部」は、本件発明1を特定する、「側壁の一部であって、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分に他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪」む「凹部」に実質的に相当しているということができる。
そうすると、本件発明1と甲第1号証の発明とは、次の点で一致し、また相違していると認められる。
一致点;
底壁と、その底壁の縁部から上方に向かって立設する側壁と、その側壁と前記底壁とで囲まれる空間であって苗や培土を収納する収納空間と、その収納空間に培土や苗を入れるために前記側壁の上縁部により形成される開口面とを備えた育苗ポットにおいて、前記側壁の一部であって、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分に他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪む凹部を備えている育苗ポット、である点。
相違点;
「凹部」が、本件発明1では、収納空間に前記培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となる第1凹部であり、その第1凹部の開口面を臨む部分に開口され、前記収納空間に収納される苗に関する情報が表示された表示板を差込む差込み口を備えているのに対して、甲第1号証の発明では、収納空間に培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となるか否か明らかでなく、表示板を差込む差込み口を備えていない点。
上記の相違点についてさらに具体的にみると、本件発明1における第1凹部は培土によって埋没した状態となるものであるため、該第1凹部が側壁の上縁部との間に所定間隔を開けた部分では、差込み口に差込まれた表示板は、側壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされるものである。
そこで上記の相違点について甲第2号証ないし甲第5号証並びに甲第8号証及び甲第9号証を検討すると、これらの甲号各証のいずれにも上記の相違点の構成は記載されていない。
すなわち、甲第2号証及び甲第3号証には上縁鍔部に表示板を差し込むための孔を設けた苗育成用の容器が記載されているが、これらの苗育成用の容器は側壁の一部に収納空間側に窪む凹部を備えてはおらず、表示板を差し込むための孔は凹部に設けられるわけではなく、まして培土に埋没した状態となる凹部に設けられるわけでもない。そして、表示板を差し込むための操作及び表示板を差し込んだ後の表示板の保持は、培土を介在することなく行われ、表示板は側壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされるものではないので、これら甲第2号証及び甲第3号証は上記相違点の構成を開示も示唆もするものではない。
甲第4号証には、側壁部3内面側に凹む凹壁部の上端開口に形成した天縁部のスリットにラベルを差込むようにした育苗ポットが記載されているが、上記凹壁部は上端開口との間に所定間隔を空けて形成されておらず、培土によって埋没した状態となるものではなく、天縁部のスリットも開口面を臨む部分に開口されるものではない。そして、ラベルを差し込むための操作及びラベルを差し込んだ後のラベルの保持は、育苗ポットの側壁の外側で行われ、ラベルは培土と接触することがなく、側壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされるものではないので、甲第4号証は上記相違点の構成を開示も示唆もするものではない。
甲第5号証には、傾斜周壁の上端開口部の開口面まで届くラベル差し段部の天井面にラベル係止用の舌状片を形設した植栽用ポットが記載されているが、上記ラベル差し段部は上端開口との間に所定間隔を空けて形成されておらず、培土によって埋没した状態となるものではなく、天井面に形設したラベル係止用の舌状片も開口面を臨む部分に開口されるものではない。そして、ラベルを差し込むための操作及びラベルを差し込んだ後のラベルの保持は、植栽用ポットの傾斜周壁の外側で行われ、ラベルは培土と接触することがなく、傾斜周壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされるものではないので、甲第5号証は上記相違点の構成を開示も示唆もするものではない。
そして、甲第4号証に記載された「凹壁部の上端開口に形成した天縁部のスリット」または甲第5号証に記載された「ラベル差し段部の天井面に形設したラベル係止用の舌状片」に関する技術事項を甲第1号証の発明が実質的に備える「側壁の一部であって、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分に他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪」む「凹部」に適用しようとしても、甲第1号証にはラベルを差すという技術思想が開示されてはおらず、甲第1号証の発明における前記「凹部」は、培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となるか否か不明であり、しかも甲第4号証及び甲第5号証の発明におけるラベルの保持手段が培土を全く介在することなく行われるものであり、側壁(傾斜周壁)と培土とによって挟まれた状態でラベルを保持するという技術思想が存在していないので、上記技術事項を甲第1号証の発明に直ちに適用することができず、また適用してみても直ちに上記相違点に係る構成が得られるとはいえない。
甲第8号証には、広告が印刷されたラベルを側壁の上縁部に差し込んだ育苗用ポットが記載されているが、該育苗用ポットは側壁の一部に収納空間側に窪む凹部を備えてはおらず、ラベルを差し込むための差し込み部は凹部に設けられるわけではなく、まして培土に埋没した状態となる凹部に設けられるわけでもないので、同甲第8号証は上記相違点の構成を開示も示唆もするものではない。
甲第9号証には自動車の物品収納装置に関する発明が記載されており、「収納容器27」の周壁を内方向に窪ませて「突出部27a,27b」を形成し、天井面である「突出部27a,27bの上面」に「取っ手29を係止する受け部30」を設けることで「取っ手29」を係止可能とし、また、図7によれば、「取っ手29の両端が回動可能に装着」される装着部も「収納容器27」の周壁を内方向に窪ませて突出部とされているが、上記収納空間は培土を収納するための空間ではなく、まして突出部は培土に埋没されるものではなく、苗に関する情報が表示された表示板の差込み口を備えてもいないので、甲第9号証に係る発明から直ちに上記相違点の構成が導き出せるものではない。
そして、例えば甲第1号証の発明における「凹部」に、甲第9号証の発明が開示する上記技術手段を適用しようとしても、上記「凹部」に表示板を差込む差込み口を設け、さらに培土を収納した場合に、「凹部」が培土によって埋没した状態となるように「凹部」を設ける構成が直ちに得られるものではなく、また例えば甲第4号証に記載された「凹壁部」または甲第5号証に記載された「ラベル差し段部」に、甲第9号証の発明が開示する上記技術手段を適用しようとしても、側壁の上端開口まで延設されている上記「凹壁部」または「ラベル差し段部」が培土によって埋没した状態となり、「天縁部のスリット」または「ラベル差し段部の天井面に形設したラベル係止用の舌状片」に差込まれた表示板が側壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされる構成が直ちに得られるものではない。
また上記したように、本件発明1は優先権主張が認められ、甲第6号証及び甲第7号証は本件の優先日前に頒布された刊行物ではないから、これらの甲号各証に特許法第29条第2項の規定を適用することはできはない。なお、本件発明1はこれら甲第6号証及び甲第7号証に記載された発明と同一であるとすることもできないから、本件発明1は特許法第29条の2の規定に該当するものでもない。
なお、さらに甲第10号証ないし甲第12号証を検討しても、甲第10号証には傾斜周壁に段部を形成した植木鉢が記載されているが、該段部は培土に埋没されるように構成されていないとともに、表示板の差込み口を備えてもおらず、甲第11号証及び甲第12号証に係るポットまたは植木鉢は、側壁に凹部を備えておらず、まして表示板の差込み口が開口された凹部を備えてはいないから、これら甲第10号証ないし甲第12号証からも上記相違点の構成が導き出せるものではない。
そして本件発明1は、上記の相違点に係る発明特定事項を備えることにより、本件の特許明細書に記載された、「請求項1記載の育苗ポットによれば、差込み口が開口されている第1凹部は、側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分に設けられているので、その所定間隔を空けた部分では、差込み口に差込まれた表示板は、側壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされる。よって、表示板を育苗ポットに対して略直立した状態で固定することができる」という作用効果を奏するものであるから、本件発明1は甲第1号証ないし甲第5号証並びに甲第8号証ないし甲第12号証に係る発明に基いて当業者が容易に想到することができたとすることはできず、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。

(4-1-2)本件発明2、8に対して
本件発明2、8は、本件発明1を直接または間接に引用して記載されているところ、本件発明1については、「(4-1-1)本件発明1に対して」に記載したとおり、甲第1号証ないし甲第5号証並びに甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたとすることはできず、さらに、甲第10号証ないし甲第12号証を検討しても当業者が容易に想到することができたとすることはできない。また、甲第6号証及び甲第7号証は、本件の優先日前に頒布された刊行物ではないから、これらの甲号各証に特許法第29条第2項の規定を適用することはできはない。
そうすると、本件発明1をさらに限定した発明である本件発明2、8についても、本件発明1に対する理由と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第5号証並びに甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたとすることはできず、さらに、甲第10号証ないし甲第12号証を検討しても当業者が容易に想到することができたとすることはできないから、本件発明2、8の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。また、甲第6号証及び甲第7号証は、本件の優先日前に頒布された刊行物ではないから、これらの甲号各証に特許法第29条第2項の規定を適用することはできない。

(4-1-3)本件発明9ないし11に対して
本件発明9ないし11は、本件発明1を直接または間接に引用して記載されているので、甲第1号証ないし甲第5号証並びに甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたとすることはできず、さらに、甲第10号証ないし甲第12号証を検討しても当業者が容易に想到することができたとすることはできない。
ところで、本件発明9ないし11は優先権主張が認められず、甲第6号証及び甲第7号証は、本件の現実の出願日前に頒布された刊行物である。
そこで本件発明9ないし11と甲第6号証の発明及び甲第7号証に記載された発明(以下、「甲第7号証の発明」という。)とを以下に対比する。
甲第6号証には、容器本体の周壁に形成されたスリットに、周壁の外側から内側に向けて、または内側から外側に向けて表示体を挿し込み、前記表示体は、容器本体内に充填された土壌によって圧力を受け、この圧力により周壁内面に押し付けられて抜け難くなるよう構成した苗育成用容器が記載されているが、該苗育成用容器は側壁の一部に培土等の収納空間側に窪む凹部を備えてはおらず、まして本件発明9ないし11が共通して発明特定事項とする複数の凹部を備えてはおらず、さらに表示板を差し込むためのスリットは容器の周壁に設けられるものであって、凹部に設けられるわけではない。
また、甲第7号証には、底壁の外周縁部から上方に立ち上がり上端が開口する周壁に、水平方向の切込み溝Aの両端から連続する上下方向に対して内方向斜めの切込み溝Bを設けてなるラベル差し部が形成されているラベル差しポットが記載されているが、該ラベル差しポットは周壁の一部に培土等の収納空間側に窪む凹部を備えてはおらず、まして本件発明9ないし11が共通して発明特定事項とする複数の凹部を備えてはおらず、さらにラベルを差し込むための切込み溝はポットの周壁に設けられるものであって、凹部に設けられるわけではない。
したがって、甲第6号証及び甲第7号証を検討しても、本件発明9ないし11は当業者が容易に想到することができたものではない。
そして本件発明9ないし11は、本件の特許明細書に記載された作用効果を奏するものであるから、本件発明9ないし11は甲第1号証ないし甲第12号証に係る発明に基いて当業者が容易に想到することができたとすることはできず、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。

(4-2)本件発明3ないし7、12ないし14と甲第1号証ないし甲第12号証に記載された発明との対比検討
(4-2-1)本件発明3ないし7に対して
本件発明3ないし7は、本件発明1を直接または間接に引用して記載されているところ、本件発明1については、「(4-1-1)本件発明1に対して」に記載したとおり、甲第1号証ないし甲第5号証並びに甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたとすることはできず、さらに、甲第10号証ないし甲第12号証を検討しても当業者が容易に想到することができたとすることはできない。また、甲第6号証及び甲第7号証は本件の優先日前に頒布された刊行物ではないから、これらの甲号各証に特許法第29条第2項の規定を適用することはできない。そうすると、本件発明1をさらに限定した発明である本件発明3ないし7についても、本件発明1に対する理由と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第5号証並びに甲第8号証ないし甲第12号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたとすることはできないから、本件発明3ないし7の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。また、甲第6号証及び甲第7号証は、本件の優先日前に頒布された刊行物ではないから、これらの甲号各証に特許法第29条第2項の規定を適用することはできない。

(4-2-2)本件発明12ないし14に対して
本件発明12ないし14は、本件発明1を直接または間接に引用して記載されているので、本件発明1に対する理由と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第5号証並びに甲第8号証ないし甲第12号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたとすることはできない。
ところで、本件発明12ないし14は優先権主張が認められず、甲第6号証及び甲第7号証は本件の現実の出願日前に頒布された刊行物である。
そこで本件発明12ないし14と甲第6号証の発明及び甲第7号証の発明とを対比すると、上記したように、甲第6号証の発明及び甲第7号証の発明に係る苗育成用容器(ラベル差しポット)は、周壁の一部に培土等の収納空間側に窪む凹部を備えてはおらず、まして本件発明12ないし14が共通して発明特定事項とする複数の凹部を備えてはおらず、さらに表示板(ラベル)を差し込むためのスリット(切込み溝)は容器(ポット)の周壁に設けられるものであって、凹部に設けられるわけではない。
したがって、甲第6号証及び甲第7号証を検討しても、本件発明12ないし14は当業者が容易に想到することができたとすることはできない。
そして本件発明12ないし14は、本件の特許明細書に記載された作用効果を奏するものであるから、本件発明12ないし14は甲第1号証ないし甲第12号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたとすることはできず、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。

(4-3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし14の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、請求人の主張する無効理由2には理由がない。

6.請求人の主張について
請求人は、「この種の育苗ポットにおいて、第1凹部の開口面を臨む部分に表示板の差込み口を備えることは、例えば、甲第9号証に、収納容器(育苗ポットに相当)の周壁を内方向に窪ませ、その天井面又はその近傍に別体の取っ手(表示板に相当)の一端を装着する旨記載されているように、本件発明の出願前に当業者に周知、常套手段であり、当該発明特定事項は、甲第9号証に記載された技術内容から、甲第9号証の頒布時における技術常識を参酌することにより容易に導き出せる事項である」と主張するが、甲第9号証には、自動車の物品収納装置あるいは一般的な容器の取っ手の装着手段が開示されているにすぎず、甲第9号証における「収納容器」と培土を収納する育苗ポットとの間に共通性を見い出すことができず、甲第9号証が開示する上記技術事項を甲号各証に記載された発明に適用しようとしても本件発明1ないし14が直ちに得られるものではないことは上記したとおりであるので、請求人の主張には理由がない。

7.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1ないし14の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
育苗ポット及び表示板付育苗ポット
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗に関する情報が表示された表示板を育苗ポットに対して略直立した状態で固定することができると共に、育苗ポット内に培土が収納されている状態であっても、その表示板を取付けるための位置を外部から容易に把握することができる育苗ポット及び表示板付育苗ポットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、草花や野菜等の苗を育苗するためにポリエチレンやポリプロピレン等の軟質合成樹脂で構成された育苗ポットが使用されている。この育苗ポットで育苗される苗は、育苗ポットごと運搬され、店頭にて展示販売される。店頭での展示販売の際には、消費者のために、育苗ポットに苗の名称、栽培方法、成長後の様子を表す図形や写真等の苗に関する情報が表示された表示板が取付けられる。
【0003】
育苗ポットに取付けられる表示板は、苗に関する情報を表示する表示部と、その表示部から延びる脚部とから構成されているものが多い。この表示板を育苗ポットに取付ける方法としては、表示板の脚部を育苗ポット内に収納されている培土に直接に差込んだり、表示板の脚部を育苗ポットにホッチキス等の締結具によって直接に締結させたりする方法が採られている。
【0004】
しかし、表示板を直接に培土に差込む方法では、表示板を育苗ポットから簡単に引く抜くことができるため、例えば、運搬時の衝撃や消費者のいたずら行為等によって、表示板が引き抜かれれてしまうと、特に、苗が幼苗である場合には、元の育苗ポットに表示板を正しく差戻すことができないという問題点があった。
【0005】
また、ホッチキス等の締結具によって締結する方法では、表示板が育苗ポットから簡単に引き抜かれることはないものの、その締結作業に非常に手間が掛かるという問題点があった。
【0006】
そこで、上述した問題点を解決すべく、特許文献1には、育苗ポットの上縁部に設けた鍔部と、その鍔部に表示板を差込むための孔とを備えた育苗ポットが開示されている。この育苗ポットによれば、表示板は鍔部に設けた孔に差込まれ、その孔と係合した状態で育苗ポットに取付けられる。よって、育苗ポットから表示板を引き抜かれ難くすることができると共に、表示板の取り付け作業を簡単にすることができる。
【特許文献1】実公平7-46128号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載した方法では、表示板を孔の部分だけで支持しているため表示板がぐらつき易く、風、運搬時の衝撃、自重等の影響により、ある育苗ポットに取付けた表示板は右に傾いたり、別の育苗ポットに取付けた表示板は前のめりになったりする等、表示板を育苗ポットに対して略直立した状態で固定することができないという問題点があった。
【0008】
一方で、本出願人は、かかる問題点を解決すべく、孔を鍔部ではなく、育苗ポットの側壁に設けることを試みた。この場合、孔に差込まれた表示板は、育苗ポットの側壁と培土とによって挟み込まれる状態になるので、特許文献1に記載された方法に比べて表示板のぐらつきが少なく、表示板を育苗ポットに対して略直立した状態で固定することができた。
【0009】
しかし、表示板は育苗ポットに培土を収納した後に取付けられるので、本出願人が試みた方法では、孔に表示板を差込む際には、孔は培土に埋もれ、育苗ポットの開放面からは孔の位置を把握することができず、また、この孔は一直線状の切込みで形成されているので、育苗ポットの側面からも孔の位置を把握するのが困難であるという問題点があった。
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、苗に関する情報が表示された表示板を育苗ポットに対して略直立した状態で固定することができると共に、育苗ポット内に培土が収納されている状態であっても、その表示板を取付けるための位置を外部から容易に把握することができる育苗ポット及び表示板付育苗ポットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために請求項1記載の育苗ポットは、底壁と、その底壁の縁部から上方に向かって立設する側壁と、その側壁と前記底壁とで囲まれる空間であって苗や培土を収納する収納空間と、その収納空間に培土や苗を入れるために前記側壁の上縁部により形成される開口面と、前記側壁の一部であって、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分に他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪み、前記収納空間に前記培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となる第1凹部と、その第1凹部の前記開口面を臨む部分に開口され、前記収納空間に収納される苗に関する情報が表示された表示板を差込む差込み口とを備えていることを特徴とする育苗ポット。
【0012】
この請求項1に記載の育苗ポットによれば、苗に関する情報が表示された表示板は差込み口に差込まれることで育苗ポットに取付けられる。ここで、この差込み口は第1凹部の開口面を臨む部分に開口されているので、収納空間に培土を収納した後に、開口面からは差込み口を把握することはできない。一方、差込み口が開口されている第1凹部は、側壁の一部であって他の側壁の外面よりも収納空間側に窪んだ部分であるので、その第1凹部を目印とすることで、差込み口の位置は、育苗ポットの側壁側から把握される。また、第1凹部は、側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分であって、収納空間に培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となるように設けられているので、その所定間隔を空けた部分では、差込み口に差込まれた表示板は、側壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされる。
【0013】
請求項2記載の育苗ポットは、請求項1記載の育苗ポットにおいて、前記第1凹部は、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた位置から前記底壁側に向かって帯状に延びて形成されている。
【0014】
請求項3記載の育苗ポットは、請求項2に記載の育苗ポットにおいて、前記側壁の一部であって、他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪み、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた位置から前記底壁側に向かって帯状に延びる少なくとも1以上の第2凹部を備え、その第2凹部と第1凹部とは、その外観形状を異にするように構成されている。
【0015】
請求項4記載の育苗ポットは、請求項3に記載の育苗ポットにおいて、前記第1凹部と前記側壁の上縁部との間に開けられる所定間隔は、前記第2凹部と前記側壁の上縁部との間に開けられる所定間隔よりも広く開けて構成されている。
【0016】
請求項5記載の育苗ポットは、請求項3又は4に記載の育苗ポットにおいて、前記第1凹部と第2凹部との各々は、前記側壁の全周を略等分するように配置されている。
【0017】
請求項6記載の育苗ポットは、請求項1から5のいずれかに記載の育苗ポットにおいて、前記第1凹部の底壁側または前記第2凹部の底壁側に隣設され、前記側壁から底壁に亘って断面視略L字型に開口する開口部を備えている。
【0018】
請求項7記載の育苗ポットは、請求項6に記載の育苗ポットにおいて、前記開口部は前記第1凹部と前記第2凹部との間および隣合う第2凹部の間に各々配置されている。
【0019】
請求項8記載の表示板付育苗ポットは、請求項1から7のいずれかに記載の育苗ポットと、その育苗ポットに備えられた差込み口に差し込まれ、前記育苗ポットに収納されている苗に関する情報が表示されている表示板とを備えている。
【0020】
請求項9記載の育苗ポットは、請求項1又は2に記載の育苗ポットにおいて、前記第1凹部は前記側壁に複数備えられており、その各々に前記差込み口が開口されている。
【0021】
請求項10記載の育苗ポットは、請求項9に記載の育苗ポットにおいて、前記第1凹部の各々は、前記側壁の全周に対して略等間隔に配置されている。
【0022】
請求項11記載の育苗ポットは、請求項9又は10に記載の育苗ポットにおいて、前記側壁は平面視多角形に形成されており、前記第1凹部は、その側壁を形成する各面の各々に少なくとも1つ以上配置されている。
【0023】
請求項12記載の育苗ポットは、請求項9から11のいずれかに記載の育苗ポットにおいて、前記第1凹部の底壁側に隣設され、前記側壁から底壁に亘って断面視略L字型に開口する開口部を備えている。
【0024】
請求項13記載の育苗ポットは、請求項12に記載の育苗ポットにおいて、前記開口部は隣合う2つの第1凹部の間に各々配置されている。
【0025】
請求項14記載の育苗ポットは、請求項9から13のいずれかに記載の育苗ポットと、その育苗ポットに備えられた差込み口に差し込まれ、前記育苗ポットに収納されている苗に関する情報が表示されている表示板とを備えている。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の育苗ポットによれば、差込み口が開口されている第1凹部は、側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分であって、収納空間に培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となるように設けられているので、差込み口に差込まれた表示板は、側壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされる。よって、表示板を育苗ポットに対して略直立した状態で固定することができるという効果がある。
【0027】
また、差込み口が開口されている第1凹部は、側壁の一部であって他の側壁の外面よりも収納空間側に窪んだ部分であるので、収納空間に培土を収納し、差込み口が培土に埋もれ、開口面から差込み口の位置を把握することができなくなったとしても、第1凹部を目印とすることで、育苗ポットの側壁側から差込み口の位置を把握することができるという効果がある。
【0028】
請求項2記載の育苗ポットによれば、請求項1に記載の育苗ポットの奏する効果に加え、第1凹部は、側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた位置から底壁側に向かって帯状に延びて形成されているので、苗の根が根巻き状態になるのを防止して、苗の根を底壁側に導くことができるという効果がある。
【0029】
育苗ポットで育苗されている苗は、育苗ポットの略中央部に植えられる。苗の根は、育苗ポットの中央部から側壁に向かって延び、更に、側壁に当たる位置まで延びると、側壁の周方向に沿って延びてゆき、所謂根巻き状態になる。根巻き状態になると、培土中の水分が不均一になったり、根に供給される酸素流通が阻害されたり、根の健全な育成が阻害される。しかし、この育苗ポットによれば、側壁の周方向に沿って延びる苗の根は、第1凹部に当たり、底壁側に延びる第1凹部に沿って底壁側に延びていくので、根巻きの発生を防止し、根の健全な育成を促進させることができるという効果がある。
【0030】
請求項3記載の育苗ポットによれば、請求項2に記載の育苗ポットの奏する効果に加え、側壁の一部であって、他の側壁の外面よりも収納空間側に窪み、側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた位置から底壁側に向かって帯状に延びる少なくとも1以上の第2凹部を備えているので、第1凹部に加え、この第2凹部に当たった根も、第2凹部に沿って底壁側に延びてゆくので、より効率的に根巻き状態になるのを防止することができる。
【0031】
また、第2凹部と第1凹部とは、その外観形状を異にするように構成されているので、たとえ、第2凹部を備えている場合であっても、第2凹部と第1凹部とを区別でき、第1凹部を目印として、第1凹部に開口する差込み口の位置を簡単に把握することができるという効果がある。
【0032】
請求項4記載の育苗ポットによれば、請求項3に記載の育苗ポットの奏する効果に加え、第1凹部と側壁の上縁部との間に開けられる所定間隔は、第2凹部と側壁の上縁部との間に開けられる所定間隔よりも広く開けて構成されているので、側壁の上縁部との間に開けられた所定間隔を比べることで、第1凹部と第2凹部とを一見して区別することができるという効果がある。
【0033】
請求項5記載の育苗ポットによれば、請求項3又は4に記載の育苗ポットの奏する効果に加え、第1凹部と第2凹部との各々は、側壁の全周を略等分するように配置されているので、苗の根を略均等に底壁側に導くことができるという効果がある。
【0034】
請求項6記載の育苗ポットによれば、請求項1から5のいずれかに記載の育苗ポットの奏する効果に加え、第1凹部の底壁側または第2凹部の底壁側に隣設され、側壁から底壁に亘って断面視略L字型に開口する開口部を備えているので、第1凹部や第2凹部に沿って底壁側に延びる根を開口部を介して外部に導くことができる。よって、第1凹部や第2凹部に沿って底壁側に延びた根が、底壁において根巻き状態になるのを防止することができるという効果がある。
【0035】
請求項7記載の育苗ポットによれば、請求項6に記載の育苗ポットにおいて、開口部は第1凹部と第2凹部との間および隣合う第2凹部の間に各々配置されているので、第1凹部や第2凹部に沿って底壁側に延びた根を略均等に開口部から外部に導くことができる。よって、開口部が根によって詰まることが抑制され、開口部から根を円滑に外部に導くことができるという効果がある。
【0036】
請求項8記載の表示板付育苗ポットによれば、請求項1から7のいずれかに記載の育苗ポットと同様な効果を奏することができる。
【0037】
請求項9記載の育苗ポットによれば、請求項1又は2に記載の育苗ポットの奏する効果に加え、第1凹部は側壁に複数備えられ、その各々に差込み口が開口されているので、例えば、苗として花の咲いた苗が植えられている場合に、その花の正面が向く方向に対応した位置に配置されている差込み口に表示板を差し込むことで、花の正面と、苗に関する情報が表示されている表示板の面とが同一方向に向くように表示板を育苗ポットに取り付けることができる。よって、その方向を消費者側に向けて販売することで、見た目にも美しく、消費者の購買意欲を喚起させることができるという効果がある。
【0038】
請求項10記載の育苗ポットによれば、請求項9に記載の育苗ポットの奏する効果に加え、第1凹部の各々は、側壁の全周に対して略等間隔に配置されているので、苗の根を略均等に底壁側に導くことができるという効果がある。
【0039】
請求項11記載の育苗ポットは、請求項9又は10に記載の育苗ポットの奏する効果に加え、側壁は平面視多角形に形成されており、第1凹部は、その側壁を形成する各面の各々に少なくとも1つ以上配置されているので、側壁の所定の面を消費者に向けて販売する場合にその面には必ず第1凹部が形成されており、その第1凹部に開口する差込み口に表示板を差込むことで、表示板を消費者に向けて取り付けることができるという効果がある。
【0040】
請求項12記載の育苗ポットによれば、請求項9から11のいずれかに記載の育苗ポットの奏する効果に加え、第1凹部の底壁側には、側壁から底壁に亘って断面視略L字型に開口する開口部を備えているので、第1凹部に沿って底壁側に延びる根を開口部を介して外部に導くことができる。よって、第1凹部に沿って底壁側に延びた根が、底壁において根巻き状態になるのを防止することができるという効果がある。
【0041】
請求項13記載の育苗ポットは、請求項12に記載の育苗ポットの奏する効果に加え、開口部は隣合う2つの第1凹部の間に各々配置されているので、第1凹部に沿って底壁側に延びた根を、略均等に開口部から外部に導くことができる。よって、開口部が根によって詰まることが抑制され、開口部から根を円滑に外部に導くことができるという効果がある。
【0042】
請求項14記載の表示板付育苗ポットによれば、請求項9から13のいずれかに記載の育苗ポットと同様な効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の好ましい実施例について添付図面を参照して説明する。本発明の実施例における育苗ポット1は、苗Nに関する情報が表示された表示板2を育苗ポット1に対して略直立した状態で固定することができると共に、育苗ポット1内に培土Bが収納されている状態であっても、表示板2を取付けるための位置を外部から容易に把握することができるものである。
【0044】
図1は、育苗ポット1の斜視図である。育苗ポット1は、ポリエチレンPEやポリプロピレンPP等の軟質合成樹脂製で、上面に略矩形状の開口面6を有する略中空箱型に形成されている。育苗ポット1で育苗される苗Nは、培土Bと共に育苗ポット1内に収納されて育苗され、育苗ポット1ごと店頭にて展示販売される。
【0045】
育苗ポット1には、育苗ポット1で育苗される苗Nに関する情報が表示された表示板2が取付けられている。表示板2には、苗Nに関する情報として、苗Nの名称、栽培方法、成長後の様子を表す図形や写真等が表示されている。消費者は、この表示板2を見ることで、たとえ苗Nが幼苗であっても、苗Nの種類等を把握することができる。
【0046】
図2(a)は育苗ポット1の平面図であり、図2(b)は図2(a)のII-II線における育苗ポット1の断面図である。
【0047】
育苗ポット1は、底壁3と、その底壁3の縁部から上方に向かって立設する側壁4と、その側壁4と底壁3とで囲まれる空間であって苗Nや培土Bを収納する収納空間5と、その収納空間5に苗Nや培土Bを入れるために側壁4の上縁部により形成される開口面6とを備えている。
【0048】
底壁3は、1辺aが略8.5cmの略正方形であって、その四隅部が曲線状に形成されている。側壁4は、底壁3から開口面6に向かって拡径し開口面6で終端し、その高さh1は略12.0cmで形成されている。収納空間5は、略1.1リットルの収納容量を有している。開口面6は、1辺bが略12.0cmの略正方形であって、その四隅部が曲線状に形成されている。
【0049】
また、側壁4には、他の側壁4の外面よりも収納空間5側に窪み、側壁4の上縁部との間に所定間隔を空けた位置から底壁3まで帯状に延びる1つの第1凹部7と3つの第2凹部8とが形成されている。
【0050】
第1凹部7と第2凹部8とは、所謂根巻きの発生を防止するためのものである。育苗ポット1で育苗されている苗Nは、育苗ポット1の略中央部に植えられる。苗Nの根は、育苗ポット1の中央部から側壁4に向かって延び、更に、側壁4に当たる位置まで延びると、側壁4の周方向に沿って延びてゆき、所謂根巻き状態になる。苗Nの根が根巻き状態になると、培土B中の水分が不均一になったり、根に供給される酸素流通が阻害されたり、根の健全な育成が阻害される。
【0051】
しかし、本実施例の育苗ポット1によれば、側壁4の周方向に沿って延びる苗Nの根は、第1凹部7や第2凹部8に当たり、底壁3側に延びる第1凹部7や第2凹部8に沿って底壁3側に延びていくので、苗Nの根が根巻き状態になるのを防止して、根の健全な育成を促進させることができる。
【0052】
また、第1凹部7と第2凹部8とは、側壁4を構成する4つの面の略中央部に各々配置されている。即ち、第1凹部7と第2凹部8とは側壁4の全周を略等分するように配置されているので、苗Nの根を略均等に底壁3側に導くことができる。
【0053】
このように、第1凹部7と第2凹部8とは、苗Nの根が根巻き状態になるのを防止する機能を有する点で共通するが、一方で、第1凹部7には、表示板2を差込むための差込み口9を設ける部位としての機能をも有し、そのため、第1凹部7と第2凹部8とでは、次の2点において、その構成を異にする。
【0054】
第1に、第1凹部7は、側壁4の上縁部との間に形成される所定間隔が、第2凹部8のそれより広く形成されている点で異なる。逆に言えば、第1凹部7の底壁3から高さh2(=6.5cm)は、第2凹部8の底壁からの高さh3(=9.5cm)より低く形成されている点で異なる。これにより、側壁4の上縁部からの所定間隔や、底壁3からの高さに着目すれば、側壁4の外面を観察することにより、簡単に第1凹部7と第2凹部8とを区別することができる。
【0055】
第2に、第1凹部7の開口面6を臨む部分には、表示板2を差込む差込み口9が一直線状に開口されている点で異なる。表示板2は、この差込み口9に差込まれることによって育苗ポット1に固定される。
【0056】
尚、この差込み口9は、第1凹部7の開口面6を臨む部分において、側壁4の内面側に出来るだけ隣接させて配置することが望ましい。この位置に差込み口9を配置することにより、差込み口9に表示板2を差込む場合には、側壁4の内面に沿って表示板2を差込めば、表示板2を差込み口9に到達させ易くすることができる。
【0057】
この第1凹部7や第2凹部8の他にも、底壁3の四隅部には、側壁4から底壁3に亘って断面視略L字型に開口する開口部10形成されている。換言すれば、開口部10は第1凹部7と第2凹部8との間および隣合う第2凹部8の間に各々配置されている。
【0058】
開口部10は、水を外部に排出したり、第1凹部7や第2凹部8に沿って底壁3側に延びる苗Nの根を外部に導いたりするためのものである。第1凹部7や第2凹部8に沿って底壁3側に延びた苗Nの根は、この開口部10から外部に導かれるので、底壁3側に延びた根が、底壁3において上述したような根巻き状態になるのを防止することができる。
【0059】
また、開口部10は第1凹部7と第2凹部8との間および隣合う第2凹部8の間に各々配置されているので、第1凹部7にや第2凹部8に沿って底壁3側に延びた根を略均等に開口部10から外部に導くことができる。よって、開口部10が根によって詰まることが抑制され、開口部10から根を円滑に外部に導くことができる。
【0060】
図3(a)は、表示板2の拡大図であり、(b)は表示板2を差込み口9に差込んだ状態を示す育苗ポット1の正面図である。
【0061】
表示板2は、苗に関する情報が表示された表示部2aと、その表示部2aから延びる脚部2bと、脚部2bの途中において脚部2bの両側から内側に向けて切欠かれた切欠き部2cとで構成されている。
【0062】
また、表示部2aから切欠き部2cまでの高さh4は、側壁4の上縁部から第1凹部7までの所定間隔h5よりも高く形成され、切欠き部2cの幅cは、差込み口10の幅dより僅かに幅広に形成されている。
【0063】
このように構成された表示板2は、切欠き部2cより下側の脚部2bが差込み口9に差込まれて育苗ポット1に固定される。この場合、表示部2aから切欠き部2cまでの高さh4は、側壁4の上縁部から第1凹部7までの所定間隔h5よりも高く形成されているので、表示部2aが側壁4に隠れることを防止でき、表示部2aの全面を消費者に見せることができる。
【0064】
また、切欠き部2cの幅cは、差込み口9の幅dより僅かに幅広に形成されているので、表示板2を差込み口に差込む場合には、切欠き部2cは差込み口9によって圧縮された状態で差込まれ、差込み口9を通過すると元の状態に復帰することになる。
【0065】
よって、差込み口9に差し込まれた表示板2を引き抜こうとする場合には、切欠き部2cが差込み口9に当たるので、表示板2を育苗ポット1から簡単に引き抜くことができなくなる。従って、例えば、苗Nが幼苗である場合に、消費者等のいたずら行為等によって表示板2が引き抜かれ、元の育苗ポット1に表示板2を正しく差戻すことができなくなるという弊害が生ずるのを防止することができる。
【0066】
尚、表示板2の材質は、特に限定されるものではないが、表面に印刷ができ撥水性を有することが好ましい。また、成形性やコストの観点からは、ポリエチレンPE、ポリプロピレンPP等の合成樹脂で製造することが好ましい。
【0067】
次に、図4を参照して、育苗ポット1に表示板2を取り付ける場合の動作について説明する。(a)は、第1凹部7を手前側とした育苗ポット1の斜視図であり、(b)は第1凹部7を背面側とした育苗ポット1の斜視図である。尚、図4では、図面の理解を容易にすべく、培土Bや苗Nの図示は省略してある。
【0068】
通常、表示板2は、育苗ポット1に培土Bを収納した後に差込み口9に差込まれ、育苗ポット1に取付けられる。また、培土Bは第1凹部7よりも高い位置になるまで収納される。よって、育苗ポット1に培土Bを収納した後には、差込み口9は、培土Bに埋まり、開口面6からは、差込み口9の位置を把握することができない。
【0069】
一方、側壁4の外面側からは、側壁4の外面から窪む第1凹部7と第2凹部8との位置は簡単に把握でき、更に、側壁4の上縁部からの所定間隔や底壁3からの高さに注目すれば、第1凹部7の位置は簡単に把握することができる。即ち、差込み口9は、第1凹部7の開口面6を臨む位置に配置されているので、第1凹部7の位置を把握できれば、差込み口9の位置も把握することができる。
【0070】
こうして、第1凹部7の位置を把握した後は、表示板2を脚部2b側から、第1凹部7に沿うように側壁4の内面と培土Bとの間に差込む。すると、脚部2bの切欠き部2cより下方の部分が、差込み口9に差込まれ、表示板2が育苗ポット1に取付けられる。
【0071】
この状態で、表示板2の脚部2bにおいて切欠き部2cより上方の部分は、側壁4の内面と培土Bとに挟まれた状態となるので、従来と比べて、表示板2を育苗ポット1に対して直立した状態で固定することができる。
【0072】
次に、図5を参照して第2実施例の育苗ポット100について説明する。図5(a)は育苗ポット100の平面図であり、図5(b)は図5(a)のV-V線における育苗ポット100の断面図である。尚、図5は図2に対応する図であり、第1実施例の育苗ポット1と共通する構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0073】
第2実施例の育苗ポット100は、第1実施例の育苗ポット1において側壁4の3つ面の各々に配置されていた3つの第2凹部8に代えて、その側壁4の3つの面の各々に第1凹部7を配置して構成され、また、その第1凹部7の各々には差込み口9が開口されている。即ち、第2実施例の育苗ポット100は、側壁4の各面に差込み口9が開口された第1凹部7が配置された育苗ポットである。
【0074】
図6は、第2実施例の育苗ポット100に表示板2を差込む状況を示す育苗ポット100の斜視図である。
【0075】
花Fの咲いた状態の苗Nを育苗ポットごと販売する場合には、花Fの正面を消費者側に向けると共に、その花Fの手前側において苗Nに関する情報が表示されている面が消費者側に向くように表示板2を育苗ポットに取り付けることがこの好ましい。
【0076】
しかし、花Fが何れの方向に向いて咲くのかは、花Fが咲いてみない限り不明であるため、花Fの向いている方向と同じ方向に、苗Nに関する情報が表示されている表示板2の面を向けるには、花Fが咲いた後に、その花Fの向きに合わせて表示板2を育苗ポット100に取り付ける必要がある。
【0077】
ところが、上述した第1実施例の育苗ポット1では、差込み口9が開口された第1凹部7は側壁4の1つの面にしか配置されていないため、たまたま花Fが第1凹部7が配置された面に向いて咲いたり、第1凹部7が配置された面に花Fの正面が向くように苗Nを植え替えたりしない限り、花の正面と、苗Nに関する情報が表示されている表示板2の面とを同一方向に向けるこはできない。
【0078】
一方、第2実施例の育苗ポット100によれば、側壁4の各面に差込み口9が開口された第1凹部7が配置されているので、例えば、花Fの正面が矢印A方向に向いている場合には、その花Fの正面が向いている方向に対応した第1凹部7の差込み口9に表示板2を差込み(図中の実線参照)、また、花の正面が矢印B方向に向いている場合には、その花の正面が向いている方向に対応した第1凹部7の差込み口9に表示板2を差込むことで(図中の点線参照)、苗Nに関する情報が表示されている表示板2の面が、花Fの正面と同じ方向に向くように、表示板2を育苗ポット100に取り付けることができる。よって、花Fの正面と、苗Nに関する情報が表示されている表示板2の面とを消費者側に向けて販売することができ、見た目の美しさから消費者の購買意欲を喚起させることができる。
【0079】
また、第1実施例の育苗ポット1のように、側面4に形成された凹部が第1凹部7であるか第2凹部8であるかを判断する必要はなく、側面4に形成された凹部は全て第1凹部7であり、その第1凹部7には差込み口9が開口されているので、収納空間5に培土Bによって差込み口9が埋もれ、差込み口9の位置を外部から把握できなくても、第1凹部7の窪みを目印とすることで、表示板2を差込む位置を外部から容易に判断することができる。
【0080】
以上、上記実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものでなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0081】
例えば、上記実施例においては、第1凹部7と第2凹部8とを区別する方法として、側壁4の上縁部からの所定間隔の違いや、底壁3からの高さの違いにより区別する方法を説明した。しかしながら、第1凹部7と第2凹部8とを区別する方法としては、かかる方法に限定されるものではない。例えば、帯状に形成される第1凹部7と第2凹部8との幅を異にするようにしても良く、第1凹部7と第2凹部8との外観形状を異にし、第1凹部7と第2凹部8とを区別可能であれば良い。
【0082】
また、上記実施例では、第1凹部7に、差込み口9を設けるための部位としての機能と、苗Nの根を底壁3側に導くための機能との2つの機能を持たせる場合について説明した。しかしながら、第1凹部7には、苗Nの根を底壁3側に導く機能を持たせず、差込み口9を設けるための部位としての機能だけを持たせるようにしても良い。かかる場合、第1凹部7は、本実施例のように帯状に形成する必要はなく、例えば、えくぼ的に収納空間5側に窪むように形成していも良い。
【0083】
また、上記実施例では、第1凹部7と第2凹部8とは、側壁4の外面から収納空間5側に窪むように形成する場合について説明した。しかしながら、第1凹部7と第2凹部8とは、側壁4の内面から収納空間5側に突出するように形成しても良い。但し、かかる場合には、側壁4の外面には、差込み口9の位置を示すような目印を設ける必要がある。
【0084】
また、上記実施例では、第1凹部7だけに差込み口9を設けると共に、3つの第2凹部8は全て略同様に構成する場合について説明した。しかしながら、第1凹部7と3つの第2凹部8との各々に関し、底壁3から延びる高さを異にすると共に、第1凹部7と3つの第2凹部8との全てに差込み口9を設けるように構成しても良い。かかる場合には、側壁4の上縁部から各凹部7,8までの所定間隔が異なり、表示板2の表示部2aから切欠き部2cまでの長さが異なる種々の表示板2を、その所定間隔に応じた凹部に差込むことができる。
【0085】
また、上記実施例では、中空箱状の育苗ポット1について具体的な数値を上げて説明したが、育苗ポット1の形状や大きさは、かかるものに限定されるものではなく、形状は円筒状や多角形状のものであっても良く、大きさも上記実施例のものよりも大きくても、小さくても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】育苗ポットの斜視図である。
【図2】(a)は育苗ポットの平面図であり、(b)は(a)のII-II線における育苗ポットの断面図である。
【図3】(a)は表示板の拡大図であり、(b)は表示板を差込み口に差込んだ状態を示す育苗ポットの正面図である。
【図4】(a)は、第1凹部を手前側とした育苗ポット1の斜視図であり、(b)は第1凹部を背面側とした育苗ポットの斜視図である。
【図5】(a)は第2実施例の育苗ポットの平面図であり、(b)は(a)のV-V線における第2実施例の育苗ポットの断面図である。
【図6】図6は、第2実施例の育苗ポットに表示板を差込む状況を示す育苗ポットの斜視図である。
【符号の説明】
【0087】
1,100 育苗ポット
2 表示板
3 底壁
4 側壁
5 収納空間
6 開口面
7 第1凹部
8 第2凹部
9 差込み口
10 開口部
N 苗
B 培土
F 花
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、その底壁の縁部から上方に向かって立設する側壁と、その側壁と前記底壁とで囲まれる空間であって苗や培土を収納する収納空間と、その収納空間に培土や苗を入れるために前記側壁の上縁部により形成される開口面とを備えた育苗ポットにおいて、
前記側壁の一部であって、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた部分に他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪み、前記収納空間に前記培土を収納した場合に、その培土によって埋没した状態となる第1凹部と、
その第1凹部の前記開口面を臨む部分に開口され、前記収納空間に収納される苗に関する情報が表示された表示板を差込む差込み口とを備えていることを特徴とする育苗ポット。
【請求項2】
前記第1凹部は、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた位置から前記底壁側に向かって帯状に延びて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の育苗ポット。
【請求項3】
前記側壁の一部であって、他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪み、前記側壁の上縁部との間に所定間隔を空けた位置から前記底壁側に向かって帯状に延びる少なくとも1以上の第2凹部を備え、
その第2凹部と第1凹部とは、その外観形状を異にするように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の育苗ポット。
【請求項4】
前記第1凹部と前記側壁の上縁部との間に開けられる所定間隔は、前記第2凹部と前記側壁の上縁部との間に開けられる所定間隔よりも広く開けられて構成されていることを特徴とする請求項3に記載の育苗ポット。
【請求項5】
前記第1凹部と第2凹部との各々は、前記側壁の全周を略等分するように配置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の育苗ポット。
【請求項6】
前記第1凹部の底壁側または前記第2凹部の底壁側に隣設され、前記側壁から底壁に亘って断面視略L字型に開口する開口部を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の育苗ポット。
【請求項7】
前記開口部は前記第1凹部と前記第2凹部との間および隣合う第2凹部の間に各々配置されていることを特徴とする請求項6に記載の育苗ポット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の育苗ポットと、
その育苗ポットに備えられた差込み口に差し込まれ、前記育苗ポットに収納されている苗に関する情報が表示されている表示板とを備えていることを特徴とする表示板付育苗ポット。
【請求項9】
前記第1凹部は前記側壁に複数備えられており、その各々に前記差込み口が開口されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の育苗ポット。
【請求項10】
前記第1凹部の各々は、前記側壁の全周に対して略等間隔に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の育苗ポット。
【請求項11】
前記側壁は平面視多角形に形成されており、前記第1凹部は、その側壁を形成する各面の各々に少なくとも1つ以上配置されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の育苗ポット。
【請求項12】
前記第1凹部の底壁側に隣設され、前記側壁から底壁に亘って断面視略L字型に開口する開口部を備えていることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の育苗ポット。
【請求項13】
前記開口部は隣合う2つの第1凹部の間に各々配置されていることを特徴とする請求項12に記載の育苗ポット。
【請求項14】
請求項9から13のいずれかに記載の育苗ポットと、
その育苗ポットに備えられた差込み口に差し込まれ、前記育苗ポットに収納されている苗に関する情報が表示されている表示板とを備えていることを特徴とする表示板付育苗ポット。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-08-23 
結審通知日 2005-08-26 
審決日 2005-09-07 
出願番号 特願2004-49086(P2004-49086)
審決分類 P 1 113・ 113- YA (A01G)
P 1 113・ 121- YA (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 渡部 葉子
白樫 泰子
登録日 2004-05-21 
登録番号 特許第3556213号(P3556213)
発明の名称 育苗ポット及び表示板付育苗ポット  
代理人 兼子 直久  
代理人 伊藤 愛  
代理人 橋本 努  
代理人 橋本 務  
代理人 兼子 直久  
代理人 伊藤 愛  
代理人 廣江 武典  

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