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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正する B23C
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する B23C
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する B23C
管理番号 1127894
審判番号 訂正2005-39163  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-19 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-09-15 
確定日 2005-11-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3260984号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3260984号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 I.請求の要旨
本件審判請求の要旨は、特許第3260984号(平成6年8月31日出願、平成13年12月14日設定登録)の明細書(以下、「特許明細書」という。)を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次の訂正事項a〜cのとおりである。
なお、下線は対比の便宜のために当審において付したものである。

(1)訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載を、
「【請求項1】平面視略長方形をなし、すくい面側の長辺全体に横切刃を形成し、且つ短辺の該横切刃と連続する部位にコーナー角90.5°〜93°でもってサラエ刃を形成してなるフライス用サラエ刃付切削インサート。」から、
「【請求項1】平面視略長方形をなし、すくい面側の長辺全体に横切刃を形成し、且つ短辺の該横切刃と連続する部位にコーナー角90.5°〜93°でもってサラエ刃を形成してなり、工具本体の中心軸より高い位置に切刃が位置するように、アキシャルレーキ角をもって工具本体に取り付けられ、且つバックレーキ角をもって工具本体に取り付けられるフライス用サラエ刃付切削インサート。」
と訂正する。

(2)訂正事項b
特許明細書の段落【0005】の記載を、
「【課題を解決するための手段】上記従来技術の課題を解決するため、本発明のフライス用サラエ刃付切削インサートではサラエ刃のコーナー角を90.5°〜93°に設定した。」から、
「【課題を解決するための手段】上記従来技術の課題を解決するため、本発明のフライス用サラエ刃付切削インサートでは、工具本体の中心軸より高い位置に切刃が位置するように、アキシャルレーキ角をもって工具本体に取り付けられ、且つバックレーキ角をもって工具本体に取り付けられるとともに、サラエ刃のコーナー角を90.5°〜93°に設定した。」
と訂正する。

(3)訂正事項c
特許明細書の段落【0019】の記載を、
「【発明の効果】叙上のように本発明は、フライス用サラエ刃切削インサートにおいて、サラエ刃のコーナー角を90.5°〜93°としたことにより、小径のフライスであってもフライスに取りつけた際の真のサラエ刃角が小さくなり、もって加工面の面粗度が向上するという優れた効果を奏するものである。」から、
「【発明の効果】叙上のように本発明は、フライス用サラエ刃付切削インサートにおいて、工具本体の中心軸より高い位置に切刃が位置するように、アキシャルレーキ角をもって工具本体に取り付けられ、且つバックレーキ角をもって工具本体に取り付けられるとともに、サラエ刃のコーナー角を90.5°〜93°としたことにより、小径のフライスであってもフライスに取りつけた際の真のサラエ刃角が小さくなり、もって加工面の面粗度が向上するという優れた効果を奏するものである。」
と訂正する。

II.当審の判断
1.訂正の目的の適否
(1)訂正事項aについて
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の記載において、前提となるインサートの工具本体への取付についての構成を、「工具本体の中心軸より高い位置に切刃が位置するように、アキシャルレーキ角をもって工具本体に取り付けられ、且つバックレーキ角をもって工具本体に取り付けられ」るものに限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)訂正事項b及びcについて
上記訂正事項b及びcは、訂正事項aの特許請求の範囲の訂正に伴い、発明の詳細な説明の欄の記載を、特許請求の範囲の記載との整合をとるために訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

2.新規事項の追加、拡張・変更の存否
特許明細書には、段落【0003】に、「図4〜図8は、上述のような従来の技術を示す概略図であり、図4に示すように工具本体20の中心軸に対し芯高hを上げる場合、切削抵抗を低減するために図5の側面図に示すようにアキシャルレーキ角α°でもって切削インサート21を取付けることとなり、その為、図6に示す如く切刃上部22と切刃下部23での加工径を合わせるべく、図7に示す如くバックレーキ角β°でもって、すなわちサラエ刃のコーナー角が90°の場合には真のサラエ刃角θ=バックレーキ角β°でもって切削インサート21が取付られることとなる。」と記載され、段落【0008】〜【0009】に、「図2は、図1の切削インサート1を工具本体6に取りつけたフライス7の側面図であり、図3は図2のフライス7の端面8を示す概略平面図であり、図3に示すように切削インサート1は工具本体6の中心軸より高い位置に切刃が位置するよう高さhだけ芯高としてあり、これによって工具本体6の先端における工具本体6の厚みtが大きくなるようにし、もって工具本体6の強度を確保できるようにしている。また、図2に示すように切削インサート1をアキシャルレーキ角α°でもって取りつけることにより切削抵抗を低減し、さらに図3に示すように横切刃4の切刃上部9と切刃下部10で加工径が同一となるようバックレーキ角β°でもって切削インサート1を取りつけている。」と記載されている。
上記訂正事項a〜cは、上記記載及び図2の記載に基づくものと認められる。
したがって、上記訂正事項a〜cは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.独立特許要件の判断
そこで、訂正後の特許請求の範囲に記載された発明(以下、「訂正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものかどうかについて検討する。

(1)関連する公知技術
本件に関連する技術を示す文献としては、以下の刊行物が知られている。

刊行物1:特開平4-226828号公報
刊行物2:特開昭60-217011号公報
刊行物3:実願昭63-66043号(実開平1-170512号)のマ イクロフィルム
刊行物4:実願平1-137601号(実開平3-107118号)のマ イクロフィルム

(1-1)刊行物1
刊行物1には、「フライス切削インサート」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
イ.特許請求の範囲の【請求項1】
「円筒形保持器と、少なくとも一つの交換可能な外周に配置された切削インサートとを有する外周回転式フライスにおいて使用され、インサートの切削すくい面と逃げ面の間に規定した少なくとも一つの切削縁が形成された切削インサートにおいて、逃げ面が、該切削縁と該逃げ面の中間部分の間に規定された第1部分と、該中間部分とインサートの基部の間に規定された第2部分とを具備し、該第1部分は、第1逃げフランク角を呈示し、該第2部分は第2逃げフランク角を呈示し、該第1逃げフランク角は、該第2逃げフランク角よりも大きく、該中間部分は、該第1及び第2部分を架橋し、かつ該第1及び第2部分に関して横断して方向付けられることを特徴とする切削インサート。」

ロ.段落【0030】
「図7に見られた如く、切削インサート1は、円筒形保持器16の適切な外周凹部において取り付けられ、切削縁7は、円筒形保持器の軸に関して軸すくい角αを規定する。」

ハ.段落【0033】
「ただ一つ6が図示されている逃げ面の第1対の説明のために、図面の図1と図4を参照する。見られた如く、逃げ面6には、逃げ面11に隣接した側面において突起21を設けてあり、フライス削りが切削縁7によって行われる時ワイパー表面として役立つ研磨用ワイパー表面22を形成され、このワイパー表面22は、切削縁7に関して直角に位置する。」

上記記載事項及び図面の記載からみて、次の発明(以下、「刊行物1に記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「平面視略長方形をなし、すくい面側の長辺全体に切削縁7を形成し、且つ短辺の該切削縁7と連続する部位に切削縁7に関して直角に位置する研磨用ワイパー表面22を形成してなり、軸すくい角αをもって円筒形保持器16に取り付けられるフライス切削インサート。」

(1-2)刊行物2
刊行物2には、「割り出し可能切削用インサート」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
ニ.特許請求の範囲1,2
「1.正方形の基本的形状を有する、切屑形成機械加工用の割り出し可能の切削用インサートであつて、前記インサート(10,10′)が、2つの大体において平行な主面(11,12;11′,12′)と、前記主面に連結する4つの側面(13A,13B,13C;13′)とを具備し、少なくとも1つの主面と複数の側面との間の交差部が複数の主切削刃(14A,14B,14C,14D;14′)を形成し、各主切削刃が切削角部において副切削刃(15A,15B,15C,15D;15′)に変移する切削用インサートにおいて、各主切削刃は、協同する副切削刃を有しこの副切削刃は、協同する主切削刃と大体において平行な方向に突出する突起(15′A,15′B,15′C,15′D;15″)上に正方形の基本的形状よりも外側に配設されていることを特徴とする割り出し可能の切削用インサート。
2.各副切削刃は真直ぐでしかも主切削刃に対して傾斜しそれにより鋭角の角部を形成することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の割り出し可能の切削用インサート。」

(1-3)刊行物3
刊行物3には、「斜め降下切削用の転削工具」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
ホ.実用新案登録請求の範囲
「円柱状をなす工具本体(2)の外周部分には、スローアウェイチップ(7)が取付けられ、しかもこのスローアウェイチップ(7)の外郭稜線部分には、外周刃(11)および内周刃(12)がそれぞれ形成されるようにした斜め降下切削用の転削工具において、
前記外周刃(11)は工具本体(2)の直径方向線に対し、略直角関係となる垂直刃(11a)およびこの垂直刃(11a)の終端側で軸中心側に向かう傾斜稜(11b)または段差を伴う凹み稜(11c)からなっており、
前記内周刃(12)は、水平刃(12a)および傾斜刃(12b)からなり、しかも水平刃(12a)が垂直刃(11a)よりも短めで垂直刃(11a)の始端側に直交し、また前記傾斜刃(12b)が水平刃(12a)に隣設されるとともに、工具本体(2)の直径方向線に対する傾斜角αがα=6°〜20°の範囲内で設定されていることを特徴とする斜め降下切削用の転削工具。」

(1-4)刊行物4
刊行物2には、「さらい刃付き正面フライス」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
ヘ.実用新案登録請求の範囲
「軸心を中心にして回転せしめられるフライス本体の下面周縁部に主切削チップおよびさらい刃チップが設けられたさらい刃付き正面フライスにおいて、
前記さらい刃チップには、その下端に、送り方向に略平行な副切刃が形成されているとともに、該副切刃に沿うすくい面にランド面が形成され、このランド面の軸方向すくい角を-6°以上+6°以下に形成してなることを特徴とするさらい刃付き正面フライス。」

(2)対比・判断
訂正発明と刊行物1に記載の発明とを対比すると、後者の「切削縁7」は前者の「横切刃」に相当し、以下同様に、「研磨用ワイパー表面22」は「サラエ刃」に、「軸すくい角α」は「アキシャルレーキ角」に、「円筒形保持器16」は「工具本体」に、それぞれ相当する。
そうすると、両者は、
「平面視略長方形をなし、すくい面側の長辺全体に横切刃を形成し、且つ短辺の該横切刃と連続する部位にサラエ刃を形成してなり、アキシャルレーキ角をもって工具本体に取り付けられるフライス用サラエ刃付切削インサート。」
である点で一致に、次の点で相違する。
[相違点]
訂正発明では、短辺の該横切刃と連続する部位にコーナー角90.5°〜93°でもってサラエ刃を形成してなり、工具本体の中心軸より高い位置に切刃が位置するように、且つバックレーキ角をもって工具本体に取り付けられるのに対し、刊行物1に記載の発明ではそのように特定されていない点。

上記相違点について検討する。
訂正発明は、訂正明細書の記載によれば、小径フライスにサラエ刃付切削インサートを工具本体の中心軸より芯高を上げてアキシャルレーキ角及びバックレーキ角をもって取り付ける際に、従来のコーナー角が90°の切削インサートを用いる場合には真のサラエ刃角が大きくならざるを得ず、加工面が荒くなるという不具合を解決することを技術的課題とし(訂正明細書段落【0003】〜【0004】参照)、その課題解決のために、上記相違点に係る訂正発明の構成を採用したものと解される。
しかしながら、刊行物2〜4には、上記訂正発明の技術的課題が記載されていないばかりか、刊行物2におけるサラエ刃に相当する副切刃は主切刃に対して鋭角に傾斜しており、また、刊行物3におけるサラエ刃に相当する水平刃(12a)は、垂直刃(11a)の始端側に直交するものであり、さらに、刊行物4におけるサライ刃チップは主切削チップとは別体で設けられるものである。
してみると、刊行物1〜4には、上記相違点に係る訂正発明の構成が記載されておらず、また示唆もされていない。
そして、訂正発明は、上記相違点に係る構成を具備することにより、「小径のフライスであってもフライスに取りつけた際の真のサラエ刃角が小さくなり、もって加工面の面粗度が向上する」という訂正明細書(段落【0019】)に記載された格別の作用効果を奏するものと認められる。

したがって、訂正発明が上記刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることができない。

また、他に訂正発明について特許を受けることができないとするに足る理由を見出すこともできない。

よって、訂正発明(訂正後の特許請求の範囲に記載された発明)が特許出願の際独立して特許を受けることができないとすることはできない。

III.むすび
以上のとおり、本件審判請求に係る訂正は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第126条第1項ただし書き、第2項および第3項の規定に適合するものと認める。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
フライス用サラエ刃付切削インサート
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】平面視略長方形をなし、すくい面側の長辺全体に横切刃を形成し、且つ短辺の該横切刃と連続する部位にコーナー角90.5°〜93°でもってサラエ刃を形成してなり、工具本体の中心軸より高い位置に切刃が位置するように、アキシャルレーキ角をもって工具本体に取り付けられ、且つバックレーキ角をもって工具本体に取り付けられるフライス用サラエ刃付切削インサート。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フライスの工具本体の先端部に交換自在に取りつけられるサラエ刃付の切削インサートに関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来、上記のような切削インサートとしてコーナー角が最大でも90°のサラエ刃を形成したものが用いられてきた。小径フライスにサラエ刃付切削インサートを用いる場合、工具本体の強度向上の為、工具本体の先端の肉厚を確保するべく切削インサートを工具本体の中心軸より芯高を上げて取りつけることがある。
【0003】図4〜図8は、上述のような従来の技術を示す概略図であり、図4に示すように工具本体20の中心軸に対し芯高hを上げる場合、切削抵抗を低減するために図5の側面図に示すようにアキシャルレーキ角α°でもって切削インサート21を取付けることとなり、その為、図6に示す如く切刃上部22と切刃下部23での加工径を合わせるべく、図7に示す如くバックレーキ角β°でもって、すなわちサラエ刃のコーナー角が90°の場合には真のサラエ刃角θ=バックレーキ角β°でもって切削インサート21が取付られることとなる。
【0004】この時、真のサラエ刃角θが大きければ図8に示すように加工面24が粗くならざろう得ず、他方真のサラエ刃角θが小さければ図9に示すように加工面24を滑らかなものとすることができる。しかしながら、従来のサラエ刃のコーナー角が90°の切削インサートを小径のフライスにおいて用いる場合、どうしても大きなバックレーキ角βで取付ざろう得ず、もって加工面24が粗くなるという不具合があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記従来技術の課題を解決するため、本発明のフライス用サラエ刃付切削インサートでは、工具本体の中心軸より高い位置に切刃が位置するように、アキシャルレーキ角をもって工具本体に取り付けられ、且つバックレーキ角をもって工具本体に取り付けられるとともに、サラエ刃のコーナー角を90.5°〜93°に設定した。
【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例を図を用いて説明する。図1は、本実施例の切削インサート1の平面図であり、このインサート1は上下面が各々すくい面3と底面2をなす略長方形プレート状をなし、該すくい面3側の長辺に横切刃4が形成され、また短辺の横切刃4と連続する部位にはサラエ刃5が形成されている。
【0007】このサラエ刃5はコーナー角γが鈍角とされ、且つその角度は90.5°〜93°の範囲にある。
【0008】図2は、図1の切削インサート1を工具本体6に取りつけたフライス7の側面図であり、図3は図2のフライス7の端面8を示す概略平面図であり、図3に示すように切削インサート1は工具本体6の中心軸より高い位置に切刃が位置するよう高さhだけ芯高としてあり、これによって工具本体6の先端における工具本体6の厚みtが大きくなるようにし、もって工具本体6の強度を確保できるようにしている。
【0009】また、図2に示すように切削インサート1をアキシャルレーキ角α°でもって取りつけることにより切削抵抗を低減し、さらに図3に示すように横切刃4の切刃上部9と切刃下部10で加工径が同一となるようバックレーキ角β°でもって切削インサート1を取りつけている。
【0010】前述のように構成される切削インサート1を上述のようなフライス7を取りつけた場合、図1に示すように切削インサート1においてサラエ刃5のコーナー角γを鈍角とし且つその角度を90.5°〜93°としたことにより、図3に示すように小径のフライス7であってもフライス7に取りつけた際の真のサラエ刃角θが小さくなり、もって加工面の面粗度が向上する。
【0011】なお、サラエ刃5のコーナー角が90.5より小さい時には真のサラエ刃角θが過小となり、面粗度向上の効果が小さく、他方93°より大きい時には真のサラエ刃角θが負であって且つ切削抵抗が大きくなる程度に小さくなるので加工面が粗くなる傾向がある。
【0012】例として、横切刃4の長さ約10mmの本実施例の切削インサート1を用いるため表1に示すように加工径の異なるフライス7において上記切削インサート1の横切刃4の全長にわたって加工径が同一となり且つ切削抵抗が小さくなるようにアキシャルレーキ角α°とバックレーキ角β°を設定した値を表1に示す。
【0013】
【表1】

【0014】これらのフライス7において、上記切削インサート1のサラエ刃5のコーナー角γを様々に変えて、斜め沈み加工を行い、その加工面を肉眼で観察した。その結果を表2に示す。
【0015】
【表2】

【0016】表2に示すように、サラエ刃5のコーナー角γを90.5°〜93°の範囲に設定したすべての場合で加工面が非常に滑らかであった。
【0017】これに対して上記コーナー角γが90.5°より小さい時に、加工面が粗くなる場合があり、他方93.0°より大きい時には加工面にビビリが発生する場合があった。
【0018】以上より、サラエ刃5のコーナー角γとして90.5°〜93°の範囲であることを規定した。
【0019】
【発明の効果】叙上のように本発明は、フライス用サラエ刃付切削インサートにおいて、工具本体の中心軸より高い位置に切刃が位置するように、アキシャルレーキ角をもって工具本体に取り付けられ、且つバックレーキ角をもって工具本体に取り付けられるとともに、サラエ刃のコーナー角を90.5°〜93°としたことにより、小径のフライスであってもフライスに取りつけた際の真のサラエ刃角が小さくなり、もって加工面の面粗度が向上するという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例の切削インサートの平面図である。
【図2】図1の切削インサートを取りつけたフライスの側面図である。
【図3】図2のフライスの端面を示す概略平面図である。
【図4】従来より用いられているフライスの端面を示す概略平面図である。
【図5】図4のフライスにおける切削インサートの取付状態を示す、フライスの概略側面図である。
【図6】図4のフライスにおける切削インサートの取付状態を示す、フライスの端面側からの概略正面図である。
【図7】図4のフライスにおける切削インサートの取付状態を示す、切削インサートのすくい面側からの概略側面図である。
【図8】図4のフライスによる加工面の状態を示す、被削材の断面図であり、(a)は真のサラエ刃角θが大きい場合、(b)は真のサラエ刃角θが小さい場合の図である。
【符号の説明】
1 切削インサート
2 底面
3 すくい面
4 横切刃
5 サラエ刃
6 工具本体
7 フライス
8 端面
9 切刃上部
10 切刃下部
h 高さ
t 厚み
α アキシャルレーキ角
β バックレーキ角
γ コーナー角
θ 真のサラエ刃角
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2005-11-02 
出願番号 特願平6-207152
審決分類 P 1 41・ 851- Y (B23C)
P 1 41・ 856- Y (B23C)
P 1 41・ 121- Y (B23C)
最終処分 成立  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 鈴木 孝幸
豊原 邦雄
登録日 2001-12-14 
登録番号 特許第3260984号(P3260984)
発明の名称 フライス用サラエ刃付切削インサート  

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