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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23P
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B23P
管理番号 1128319
審判番号 不服2002-22151  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-05-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-15 
確定日 2005-12-19 
事件の表示 平成9年特許願第309802号「自動ねじ締め機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年5月11日出願公開、特開平11-123621〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本特許出願は、平成9年10月24日の出願であって、平成14年10月9日付けで拒絶をすべき旨の査定がされたのに対して、平成14年11月15日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書(以下、「請求時補正書」という。)が提出された。

第2 補正却下の決定
1.補正却下の決定の結論
平成14年11月15日付けの手続補正を却下する。

2.理由
(1)請求時補正書による補正
請求時補正書による補正(以下、「請求時補正」という。)は、平成14年改正前特許法第17条の2第1項第3号に掲げる場合にされたものであると認められ、同項ただし書きの要件を満たすものであり、その内容は、願書に最初に添付された明細書における次の(α)の特許請求の範囲の記載を、(β)のとおり、補正するものである。

(α)請求時補正前の特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復駆動源と、この往復駆動源の作動を受けて移動可能なドライバ台と、このドライバ台に配置した回転駆動源と、この回転駆動源の駆動を受けて回転するドライバビットとを備えた自動ねじ締め機において、
ねじ本体にワッシャを組み付けたワッシャ組み込みねじの前記ワッシャが嵌合可能なワッシャガイドを前記ドライバビットの先端方向に付勢しかつ常時ドライバビットを内包するように配置し、このワッシャガイドの先端からエアを吸引するように構成したことを特徴とする自動ねじ締め機。
【請求項2】
吸引されたワッシャ組み込みねじのねじ本体の姿勢を矯正する矯正部材をドライバビットの先端側へ付勢して設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動ねじ締め機。
【請求項3】
ドライバビットは多角形状を成すねじの頭部が嵌合可能な係合穴を有し、このドライバビットには係合穴から突出する方向に付勢して矯正部材を配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動ねじ締め機。


(β)請求時補正後の特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復駆動源と、この往復駆動源の作動を受けて移動可能なドライバ台と、このドライバ台に配置した回転駆動源と、この回転駆動源の駆動を受けて回転するドライバビットとを備えた自動ねじ締め機において、
ねじ本体にワッシャを組み付けたワッシャ組み込みねじにおける前記ワッシャが嵌合可能なワッシャガイドを前記ドライバビットの先端方向に付勢しかつ常時ドライバビットを内包するよう配置し、このワッシャガイドの先端からエアを吸引して前記ワッシャ組み込みねじのワッシャを吸着可能に構成する一方、
前記ワッシャガイドにワッシャ組み込みねじのワッシャが吸着された段階で傾こうとするワッシャ組み込みねじのねじ本体の頭部に接する矯正部材を設けたことを特徴とする自動ねじ締め機。」

(2)請求時補正書による補正の目的について
請求人は、審判請求書において、請求時補正の目的について、「なお、当該特許請求の範囲の補正は、補正前の請求項2に係る発明中の発明を特定するための事項の一つである「矯正部材」について限定するものです。しかも、産業上の利用分野は勿論のこと、「ワッシャガイドにワッシャが吸着するのと併せて、ねじ本体の姿勢を正しく矯正する」という補正前の請求項2に係る発明が解決しようとする課題についても変更するものではありません。よって、当該特許請求の範囲の補正は、補正前の請求項2に係る発明の限定的限縮に該当し、適法であると確信します。」(審判請求書第2頁第16-22行)と、主張するので、以下、検討する。
請求人の主張は、要するに、請求時補正後の請求項1が、請求時補正前の請求項2について、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的としたものであるという主張である。
上記特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮は、特許請求の範囲の減縮であることに加え、発明を特定するための必要な事項の限定であること、及び、補正前と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることが、要件とされる。
これに対して、請求時補正前の請求項2は、矯正部材に関して、「吸引されたワッシャ組み込みねじのねじ本体の姿勢を矯正する矯正部材をドライバビットの先端側へ付勢して設けた」ことが特定されているのに対して、請求時補正後の請求項1は、「ワッシャガイドにワッシャ組み込みねじのワッシャが吸着された段階で傾こうとするワッシャ組み立てねじのねじ本体の頭部に接する矯正部材」と、特定されているのであって、少なくとも、補正前の請求項2の構成のうち、「ドライバビットの先端側へ付勢して設けた」という技術的事項が省かれているのであるから、そもそも、特許請求の範囲の減縮に相当せず、よって、請求時補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的としていないことが明らかである。
また、請求時補正について、請求時補正前の請求項1を請求時補正後の請求項1に補正したものとみても、補正前の請求項1が、「矯正部材」を発明を特定するために必要な事項としていないのに対して、補正後の請求項1は、これを、発明を特定するために必要な事項としているのであって、当該補正は、補正前の請求項1の発明を特定するための事項を限定するものにあたらないから、当該補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的としていない。
さらに、請求時補正について、請求時補正前の請求項3を請求時補正後の請求項1に補正したものとみても、特許請求の範囲の減縮にあたらないことが明らかであるから、当該補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的としていると解し得ないことは、いうまでもない。
したがって、請求時補正について、請求項補正前の請求項1ないし3のいずれを請求時補正後の請求項1に補正したものとみても、特許請求の範囲の補正に関して、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とする補正には、該当しない。
また、請求時補正による特許請求の範囲の補正に関して、総合的に見ても、請求項の削除には該当せず、拒絶理由あるいは拒絶査定書の備考欄に示された拒絶に理由に示す事項についてする不明瞭な記載の釈明でもなく、さらには、誤記の訂正でもないから、特許法第17条の2第2項第1号、第3号、及び第4号を目的とする補正に該当しない。
したがって、請求時補正書による補正は、特許法第17条の2第4項に掲げるいずれの事項を目的とするものではなく、同項の規定に違反するものであるから、平成14年改正前特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

なお、請求時補正書による補正が、請求人の主張するとおり、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであるとして、検討しても、拒絶理由通知書で引用された特開平9-174352号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「往復駆動源と、この往復駆動源の作動を受けて移動可能なドライバ台と、このドライバ台に配置した回転駆動源と、この回転駆動源の駆動を受けて回転するドライバビットとを備えた自動ねじ締め機」に対応する技術的思想が記載されており、特開昭61-159339号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「ねじ本体にワッシャを組み付けたワッシャ組み込みねじにおける前記ワッシャが嵌合可能なワッシャガイドを前記ドライバビットの先端方向に付勢しかつドライバビットを内包するよう配置し、このワッシャガイドの先端からエアを吸引して前記ワッシャ組み込みねじのワッシャを吸着可能に構成する」という事項に対応する技術的思想が記載されており、実願平5-3652号(実開平6-57531号)のCD-ROM(以下、「刊行物3」という。)には、ボルト締付工具に関して、「傾こうとするワッシャ組み込みねじのねじ本体の頭部に接する矯正部材」に対応する技術的思想が記載されている。
そして、刊行物1に記載された自動ねじ締め機において、刊行物2に記載されたワッシャガイドに係る技術的思想を適用することに、構成上の困難性はなく、また、このワッシャガイド自体、自動ねじ締め機のねじの傾きを防ぐ目的を有するものであるから、「ワッシャガイドにワッシャ組み込みねじのワッシャが吸着された段階」のねじの姿勢の適正化に関して、刊行物3に記載された矯正部材に係る技術的思想を適用し、「ワッシャガイドを、『常時』ドライバビットを内包するよう配置」するように構成する等、適宜の設計的変更を行って、補正前の請求項1に係る発明に想到することは、当業者にとって、容易なことであると認められるから、補正前の請求項1は、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができない発明であると認められる。
したがって、請求時補正書による補正が、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に相当すると仮定しても、その補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において、前項第2号の場合に準用する第126条第4項の規定に違反しているものと認められるから、平成14年改正前特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるという結論に変わりはない。

第3 本願発明について
1.本願発明
本特許出願の請求時補正書による手続補正が、第2のとおり却下されたから、本特許出願の請求項1ないし3に係る発明は、上記第2の2.(1)の(α)の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

2.引用刊行物等とその記載事項
刊行物1:特開平9-174352号公報
刊行物2:特開昭61-159339号公報
(1)刊行物1の記載事項
刊行物1には、【図1】〜【図7】とともに、以下の事項が記載されている。
(a1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】昇降駆動源の駆動により昇降可能なドライバ台に回転駆動源を配置し、この回転駆動源の駆動により回転可能なねじ締め工具を備えたドライバユニットを設けるとともに、このドライバユニットのねじ締め工具の移動路上においてねじを保持するチャックユニットを配置する一方、
チャックユニットをドライバユニットと一体に昇降可能かつそれぞれ単独でも昇降可能に構成し、チャックユニットの昇降を制動するブレーキ手段を設け、任意の位置でチャックユニットを停止可能に構成したことを特徴とする自動ねじ締め機。
・・・」

したがって、刊行物1には、「昇降駆動源と、この昇降駆動源の作動を受けて昇降可能なドライバ台と、このドライバ台に配置した回転駆動源と、この回転駆動源の駆動を受けて回転するねじ締め工具とを備えた自動ねじ締め機」が、記載されている。

(2)刊行物2の記載事項
刊行物2には、第1図〜第5図とともに、以下の事項が記載されている。
(b1)「第1図に本発明に係る自動水平ネジ締機の要部を示す。
同図において、1は吸着パイプであり、先端寄り(図中、右側)の内周面に内鍔部2を形成した円筒体3と、該円筒体3の基端側(図中、左側)に嵌着され螺合部4を円筒体3の側外方に突設したキャップ5とから吸着パイプ1は構成される。
前記キャップ5の嵌着部6にはコイルスプリング7が着座する凹所8が凹設されると共に、螺合部4には該凹所8と連通する孔部9が貫設されている。この孔部9より前記吸着パイプ1内にドライバ10のビット11が同軸状として回転自在に嵌挿されると共に、仮想線のように螺合部4に真空パイプ12の一端が螺着され、図外の真空源によって前記吸着パイプ1の内部が負圧状態に保持される。
13は前記吸着パイプ1に摺動自在に内嵌された筒状フロートであり、該フロート13と前記キャップ5との間に介装された前記コイルスプリング7の付勢力によってフロート13の先端が吸着パイプ1の端面より側外方に突出している。該フロート13の基端は前記吸着パイプ1の内鍔部2に係合する外鍔部14が突設され、図例のようにコイルスプリング7の付勢力によって該外鍔部14が内鍔部2に係合してフロート13の突出寸法を規制している。このように構成された自動水平ネジ締機を使用してネジ締が行われる。
15は第4図同様ネジ16がセットされるキャッチャである。また、ネジ16にはワッシャ17が嵌め込められ、このワッシャ17に前記フロート13の先端面が当接する。なお、ネジ16は頭部18に十字の係合溝19を有する、いわゆる十字孔付きネジである。」(第2頁右上欄第17行-右下欄第7行)
(b2)「本発明は、ドライバのビットが同軸状として回転自在に嵌挿されると共に、内部が負圧状態に保持された吸着パイプと、該吸着パイプに摺動自在に内嵌され、コイルスプリングの付勢力によって先端が外部に突出された筒状フロートとを備え、フロート先端面にてネジに嵌め込まれたワッシャを吸着するようにしたから、従来のように傾くことなく同軸状にネジを保持することができ、ビット先端がネジ頭部の係合溝に正確に係合して、ネジ締エラーを防止することができる。」(第3頁左上欄第18行-右上欄第7行)

3.当審の判断
(1)比較
刊行物1記載の発明の「昇降駆動源」、及び「ねじ締め工具」は、それぞれ、本願発明の「往復駆動源」、及び「ドライバビット」に相当する。
したがって、本願発明と刊行物1に記載された発明では、以下のア.の点で一致し、イ.の点で相違する。

ア.一致点
「往復駆動源と、この往復駆動源の作動を受けて移動可能なドライバ台と、このドライバ台に配置した回転駆動源と、この回転駆動源の駆動を受けて回転するドライバビットとを備えた自動ねじ締め機」である点。

イ.相違点
(A)本願発明においては、「ねじ本体にワッシャを組み付けたワッシャ組み込みねじの前記ワッシャが嵌合可能なワッシャガイドを前記ドライバビットの先端方向に付勢しかつ常時ドライバビットを内包するように配置し、このワッシャガイドの先端からエアを吸引する」構成が特定されているのに対し、刊行物1記載の発明においては、かかる構成は、特定されていない点。

(2)判断
刊行物2には、記載事項(b1)及び第1図〜第3図の記載から見て、ワッシャ17が嵌め込められたネジ16のワッシャ17に当接するフロート13を、ビット11方向にコイルスプリング7により付勢し、かつビット11を内包するように配置し、このフロート13の先端からエアを吸引する構成が記載されている。
ここで、刊行物2記載の発明の「ワッシャ17が嵌め込められたネジ16」は、それぞれ、本願発明の「ねじ本体にワッシャを組み付けたワッシャ組み込みねじ」に相当し、刊行物2記載の発明の「フロート13」及び「ビット11」は、本願発明の「ワッシャガイド」及び「ドライバビット」に相当するものと認められ、相違点(A)に関する構成の主要部分が記載されているものと認められる。
刊行物1記載の自動ねじ締め機の発明に、刊行物2記載の自動水平ネジ締め機の上記の構成を適用することは、両者とも、自動的にねじ締めを行うにあたって、ねじの吸着を適正に行うことを目的とするものであり、特段の創意は認められない。
その一方で、刊行物2においては、本願発明のように、ワッシャガイドがドライバビットを「常時」内包するものとは明記されていないが、刊行物2記載の発明も「フロート13」の先端部に、「ワッシャ17」を吸着している以上、「フロート13」と「ビット11」の位置関係は、本願発明の「ワッシャガイド」と「ドライバビット」の位置関係と類似であるものと看取される。
そして、刊行物2記載の発明においても、少なくとも、ネジ締め動作がされているほとんどの期間は、「フロート13」が「ビット11」を内包しているものであり、仮に、「常時」内包するという点で本願発明との差異が存在するとしても、設計上の微差に過ぎないものと認められ、本特許出願の明細書の記載あるいは技術常識を考慮しても、技術的に格別の意義は認められないものである。
また、本願発明のワッシャガイドには、ワッシャが「嵌合」可能になっているのに対して、刊行物2記載の発明の対応する部材であるフロートは、ワッシャと「当接」するのみであるが、記載事項(b2)によれば、刊行物2記載の発明は、「傾くことなく同軸上にねじを保持することができ」るものであって、「ねじの姿勢を良好に保つ」という本願発明と同等の機能を有するものであり、この機能は、ねじの頭部のみならず、ワッシャをも、本願発明においてはワッシャガイド、刊行物2記載の発明においてはフロートに、吸着させることによって実現されるものである。
したがって、吸着が完了したワッシャ組み込ねじと「ワッシャガイド」あるいは「フロート」との関係に関しては、「嵌合」という本願発明の形態が、「当接」という刊行物2記載の発明の形態に比べて、特に優れているという事情も認められないから、「嵌合」と「当接」の両吸着形態は、当業者が適宜選択しうる事項であると認められる。
以上により、本願発明は、刊行物1記載の発明において、相違点(A)に係る技術的事項に関し、設計的な事項を考慮しつつ、刊行物2記載の発明を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

(3)小括
さらに、上記相違点によって奏される効果は、当業者が予測できる範囲のもので、格別のものではなく、請求人の主張を総合的に検討しても、本願発明は、刊行物1及び刊行物2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認める。

4.結論
したがって、本特許出願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本特許出願についての拒絶をすべき旨の査定を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-03 
結審通知日 2005-10-11 
審決日 2005-10-25 
出願番号 特願平9-309802
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B23P)
P 1 8・ 572- Z (B23P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川内野 真介柴沼 雅樹中島 成  
特許庁審判長 大野 覚美
特許庁審判官 田々井 正吾
見目 省二
発明の名称 自動ねじ締め機  

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