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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1128670
審判番号 不服2003-6920  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-24 
確定日 2006-01-05 
事件の表示 平成 6年特許願第 77045号「吸光度測定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年10月27日出願公開、特開平 7-280724〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年4月15日の出願であって、平成15年3月14日付けで拒絶査定(発送日15年3月25日)がなされ、これに対し、平成15年4月24日に審判請求がなされるとともに、平成15年5月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年5月22日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年5月22日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおりに補正された。 「【請求項1】パルス変調され通常の光が出力する光より3倍以上その光強度が大きくされたパルス光を発光する光源とこれを受光する光検出器の間に被験体を設置した状態で光源が発光しているときと発光していないときに光検出器が受光する光の光強度をそれぞれ測定した後、それぞれの光強度の差より被験体を透過した光の光強度を求め、また、光源と光検出器の間に被験体が設置されていない状態で光源が発光しているときと発光していないときに光検出器が受光する光の光強度を測定した後、それぞれの光強度の差から光源より直接光検出器に入射した光の強度を求め、その上で上記被験体を透過した光の光強度と光源より直接光検出器に入射した光の光強度から被験体の吸光度を測定することを特徴とする吸光度測定方法。」(下線部分は、補正箇所である。以下、補正後の請求項1に記載された発明を、「本願補正発明」という。)
本件補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「パルス光を発光する光源」について、「通常の光が出力する光より3倍以上その光強度が大きくされ」たものであるとの限定を付加するものであって、この付加内容は、本願出願時の願書に添付された明細書段落に「【0019】また、パルス変調されたパルス光は、通常の光源が出力する光よりその光強度が著しく大きいため、……」、「【0029】本実施例において、光源1をパルス変調して発光させたパルス光を用いているのは、この光強度が図2(b)に示すように一定量の光を発する直流光(直流電流により光源が発光する光であり、以下DC光とする)に比べて3倍以上大きく……」と記載があるから、補正前の明細書に記載された事項の範囲内の補正であり、特許法第17条の2第2項(平成5年法)で準用する特許法第17条第2項の規定を満足し、そして、特許法第17条の2第3項第2号(平成5年法)に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか[特許法第17条の2第4項(平成5年法)において準用する平成15年改正前の特許法第126条第3項(平成5年法)の規定に適合するか]について検討する。

(2)刊行物
原査定の拒絶理由で示された刊行物は次のものである。
刊行物1:特開平3-110452号公報

刊行物1には、
その特許請求の範囲に、
ア)「投受光部と反射部とを相対向して配設し、投受光部から投射された光により、投受光部と反射部との間に浮遊する煙霧粒子層の光透過率または吸光係数を測定する煙霧透過率測定装置において、」(第1頁左下欄4-8行)、
イ)「前記反射部と一体的に設けられた投受光部側に、光源と、この光源からの測定光を前記反射部に投射するための投射レンズおよび対物レンズと、前記反射部で反射された測定光をハーフミラーを介して入射して電気信号に変換する光電変換部と、」(第1頁左下欄8-12行)、
ウ)「前記光源からの校正光を前記ハーフミラーを介して入射して光電変換部に導光する導光手段と、」(第1頁左下欄13-14行)、
エ)「前記投射レンズと対物レンズとの途中に配設されて測定光および校正光を断続光とするチョッパー手段と、」(第1頁左下欄14-16行)、 オ)「前記ハーフミラーを介して光電変換部に導入される校正光と測定光とを交互に切替えを行う光切替手段とを設け、さらに前記光電変換部からの電気信号を入力すると共に光透過率及び吸光係数を演算する制御部と、」(第1頁左下欄16-同頁右下欄2行)、
カ)「絶対値設定を行うために前記投受光部と反射部との間の空間部内を清浄な空気に置換させる煙霧除去手段とを設けたことを特徴とする煙霧透過率測定装置。」(第1頁右下欄2-5行)、
と記載があり、
第1図には、光源6とチョッパー手段15によりチョッパされた光が、煤煙3を通過する測定光aの光路と、煤煙を通過しない校正光bの光路を経て、それぞれ、光電変換部12に至る様子が図示されている。
そして、
キ)「光電変換部からの出力電気信号を増幅するプリアンプ回路部13が設けられている。」(第3頁左上欄8-10行)、
ク)「光切替手段17はハーフミラーを介して光電変換部12へ測定光aと校正光bとを切替え入射させている。」(第3頁左上欄15-17行)、
ケ)「制御部19は演算処理回路であって、プリアンプ回路部13からの電気信号を受けると共に、この電気信号に基づいて光透過率または吸光係数を演算する。」(第3頁右上欄10-13行)、
コ)「前記制御部では、この電気信号(電圧値)に基づいて光透過率および吸光係数が演算される。」(第3頁右上欄15-17行)、
サ)「すなわち、一般に煤塵3などの層の光透過率TLは下記の丸数字1式で表される。 TL=J・(VA/VB)………丸数字1 ただしJ
は係数である。」(第3頁右上欄18行-同頁左下欄1行)、
シ)「しかし上記電気信号VA,VBはノイズ,ドリフトが入っているため、これらを除去する必要がある。よって0%校正時の測定光を遮断した時の値VCを使って、測定光aの値として(VB-VC)を、また校正光bの値として(VA-VC)を用いればよい。」(第3頁左下欄2-7行)、
ス)「従って、誤差のない光透過率TL’は下記の丸数字2式で表される。
TL’=J・(VB-VC)/(VA-VC)………丸数字2
また吸光係数Kは下記の丸数字3式で表される。
K=(1/2L)・log(1/TL’)………丸数字3
ただし、Lは第1図の投受光部1と反射部2との間の距離である。」(第3頁左下欄8-14行)、
が記載されている。

そして、サ)で、光透過率TL=J・(VA/VB)と定義されており、分母である電気信号VBが校正光bに係るものであることが明らかであるから、
シ)での「測定光aの値として(VB-VC)を、また校正光bの値として(VA-VC)を用いればよい」という記載は誤記であり、正しくは「測定光aの値として(VA-VC)を、また校正光bの値として(VB-VC)を用いればよい」であり、
ス)での「TL’=J・(VB-VC)/(VA-VC)」という記載も誤記であり、正しくは「TL’=J・(VA-VC)/(VB-VC)」であることが明らかである。

(3)刊行物1記載の発明
チョッパー手段が、連続発光の光源からの光をパルス光に変調するものであることは自明であり、刊行物1の第1図において、光源6とチョッパー手段15が全体として、パルス光発生部ということができ、
第1図に、測定光aの光路に、被験体たる煤塵3を、パルス光発生部と、光電変換部12の間に設置した状態が示されており、
シ)には、チョッパー開でパルス光があるときと、チョッパー閉でパルス光がないときに、光電変換部12が受光することで生ずる光強度(電気信号VAとVC)をそれぞれ測定した後、光強度の差であるVA-VCより、被験体を透過した光の強度を求めることが記載されており、
また、第1図に、校正光bの光路に、前記パルス光発生部と、光電変換部12の間に、被験体たる煤塵3が設置されていない状態も示されており、 シ)には、パルス光があるときとないときに光電変換部12が受光する光の光強度を求め、それぞれの光強度の差であるVB-VCから、パルス光発生手段側から、被験体たる煤塵3を経ないで直接に光電変換部12に入射した光の強度を求め、
ス)に、被験体たる煤塵3を透過した光の光強度と、パルス光発生部から直接に光電変換部12に入射した光の光強度から被験体の吸光係数Kを測定すること、
ができる装置が記載されており、装置の作動を方法に表現変更できることはいうまでもないことである。

したがって、前記事項を整理すると、刊行物1には、
連続発光の光源とチョッパー手段からなるパルス光発生部と、パルス光を受光する光電変換部の間に被験体を設置した状態で、チョッパーが開でパルス光があるときと、チョッパーが閉でパルス光がないときに、光検出器が受光する光の光強度をそれぞれ測定した後、それぞれの光強度の差より被験体を透過した光の強度を求め、また、前記パルス光発生部と光電変換部の間に被験体が設置されていない状態で、チョッパーが開でパルス光があるときと、チョッパーが閉でパルス光がないときに、光電変換部が受光する光の光強度を測定した後、それぞれの光強度の差からパルス光発生部より直接に光電変換部に入射した光の強度を求め、その上で上記被験体を透過した光の光強度とパルス光発生部より直接光検出器に入射した光の光強度から被験体の吸光係数を測定することを特徴とする吸光係数測定方法、
の発明が記載されている。

(4)対比・検討
本願発明と、刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1に記載の「光電変換部」、「吸光係数」がそれぞれ、本願発明の「光検出器」、「吸光度」に相当し、本願発明の「パルス光を発光する光源」は、パルス光発生部ということができ、「光源が発光しているときと発光していないとき」は、パルス光があるときとないとき、ということができるから、両者は、
パルス光発生部と、パルス光を受光する光検出器の間に被験体を設置した状態で、パルス光があるときとないときに、光検出器が受光する光の光強度をそれぞれ測定した後、それぞれの光強度の差より被験体を透過した光の強度を求め、また、パルス光発生部と光検出器の間に被験体が設置されていない状態で、パルス光があるときとないときに光検出器が受光する光の光強度を測定した後、それぞれの光強度の差からパルス光発生部より直接に光検出器に入射した光の強度を求め、その上で上記被験体を透過した光の光強度とパルス発光部より直接光検出器に入射した光の光強度から被験体の吸光度を測定することを特徴とする吸光度測定方法、
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本願発明は、パルス光発生部が、「パルス変調され通常の光が出力する光より3倍以上その光強度が大きくされたパルス光を発光する光源」であるのに対し、刊行物1記載の発明は、パルス光発生部が、連続発光の光源とチョッパー手段からなるものであり、光強度について記載がないものである点。
相違点2
本願発明は、光検出器は、光源が発光しているときと発光していないときに受光する光の光強度をそれぞれ測定するものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、光検出器は、チョッパが光を遮断しているときと、遮断していないときに受光する光の光強度をそれぞれ測定するものである点。

前記相違点について検討すると、
相違点1について
吸光度測定の技術分野において、パルス光を発光する光源を採用することが従来周知であり、パルス光発生部を、連続発光する光源とそこからの光をチョッパする手段から構成することに代えて、パルス変調されたパルス光を発光する光源を採用してよいことも、従来周知である[例:特開平6-18409号公報(平成6年1月25日公開)は明細書段落0005、0006に吸光度算出をすること、キセノンランプを断続的にオンさせてもよいし、連続的に発光するキセノンランプを機械的なチョッパで断続させてもよいことが記載されている。特開昭61-202143号公報に吸光度測定装置において、パルス点灯方式によって高輝度の光をパルス状に発するキセノンフラッシュランプを光源とすることが記載されている。特開平5-154154号公報の明細書段落0013、0014に、パルスレーザから得たレーザ光を生体組織に照射して、吸光度を計測することが記載されている。]から、刊行物1記載の発明において、パルス光発生部として、パルス変調されたパルス光を発光する光源を採用することは当業者が容易に想到できたものである。
そして、本願請求項1での「パルス変調され通常の光が出力する光より3倍以上その光強度が大きくされたパルス光を発光する光源」について検討すると、「通常の光」は、本願明細書段落0029の記載を参酌すれば、「一定量の光を発する直流光」のことになるが、吸光度測定において、照射する光強度を大きくするほどSN比が大となって、測定精度が向上することがわかっているのであるから、「一定量の光を発する直流光」を適宜定めた場合、パルス光の強度が単に「一定量の光を発する直流光」の3倍以上の強度であるようなパルス光を発生する光源にすることは、当業者が必要に応じて適宜行うことができた設計的事項である(例えば、連続発光させるキセノンランプと、パルス点灯光源であるキセノンフラッシュランプを比べた場合、キセノンフラッシュランプの方が低い平均入力で大きな光強度が得られるものである。パルス点灯方式を採用して、同じ平均入力でも、連続点灯した場合の3倍以上の光強度を得る程度のことは、普通のことである)。そして、「3倍以上」における3倍という数値に何ら臨界的意義があるわけではない。
相違点2について
刊行物1でパルス光発生部として、「パルス変調され通常の光が出力する光より3倍以上その光強度が大きくされたパルス光を発光する光源」を採用することは、前記「相違点1について」で記載したとおり当業者が容易に想到できたものであり、その場合、刊行物1に記載の光電変換部(光検出器)は、光源が発光しているときと発光していないときに受光する光の光強度をそれぞれ測定するもの、となるのは自明である。

なお、本願請求項1には、被験体が設置された状態での、パルス光の光路と、被験体が設置されている状態でのパルス光の光路について、それが同じ光路であるかどうかについて記載がないが、もし本願明細書または図面の実施例に記載のように、同じ光路であるとしても、刊行物1記載の発明において、同じ光路とすることは、当業者が容易に想到できたものと認める。(例えば刊行物1の第5図で、被験体たる煤塵3を除去して、校正光を通している。)

そして、相違点1,2および前記なお書きの事項を総合的に判断しても、本願発明は当業者が刊行物1記載の発明および従来周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、それによる効果も予想範囲内のものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本願補正発明は、特許法第17条の2第3項(平成5年法)において準用する平成15年改正前の特許法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年2月22日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、特許出願の願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のものである。 「【請求項1】パルス変調されたパルス光を発光する光源とこれを受光する光検出器の間に被験体を設置した状態で光源が発光しているときと発光していないときに光検出器が受光する光の光強度をそれぞれ測定した後、それぞれの光強度の差より被験体を透過した光の光強度を求め、また、光源と光検出器の間に被験体が設置されていない状態で光源が発光しているときと発光していないときに光検出器が受光する光の光強度を測定した後、それぞれの光強度の差から光源より直接光検出器に入射した光の強度を求め、その上で上記被験体を透過した光の光強度と光源より直接光検出器に入射した光の光強度から被験体の吸光度を測定することを特徴とする吸光度測定方法。」
(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物は、上記「2.(2)刊行物」に記載の刊行物1であり、刊行物1記載の発明は、上記「2.(3)刊行物1記載の発明」に記載したとおりである。

(3)対比・検討
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「パルス光を発光する光源」について、「通常の光が出力する光より3倍以上その光強度が大きくされ」、との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(4)対比・検討」に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び従来周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び従来周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明及び従来周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-07 
結審通知日 2005-11-08 
審決日 2005-11-24 
出願番号 特願平6-77045
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 樋口 宗彦  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 菊井 広行
水垣 親房
発明の名称 吸光度測定方法  
代理人 石川 新  
代理人 田中 重光  
代理人 田中 重光  
代理人 石川 新  

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