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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 H05K 審判 一部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 H05K |
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管理番号 | 1128884 |
異議申立番号 | 異議2003-72671 |
総通号数 | 74 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-11-12 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-11-06 |
確定日 | 2005-08-24 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3402372号「配線板の製造法」の請求項1、3ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3402372号の請求項3ないし4に係る特許を取り消す。 同請求項1、5ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件特許第3402372号(以下、「本件特許」という)は、平成 4年 4月23日に出願された特願平4-104675号の特許出願に係り、平成15年 2月28日に登録(請求項の数6)されたものである。その後、表記特許異議申立人より、請求項1、3ないし6に係る特許異議の申立があったので、当審において、当該申立の理由を検討の上、請求項3及び4に係る本件特許を取り消す旨の取消理由を通知したが、これに対して、その通知書で指定した期間内の平成17年 6月 7日付けで特許異議意見書と共に訂正請求書が提出された。 第2.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 特許権者が上記訂正請求によって求める訂正事項は、願書に添付した明細書(特許登録時の明細書、以下、「登録時明細書」と言う。)に記載された特許請求の範囲の請求項3について、次のように訂正するというものである。 「【請求項3】キャリア基板上に配線パターンを形成し、配線パターンを内側にして絶縁基材と重ね合わせ、配線パターンを絶縁基材内に埋め込み、キャリア基板を除去する工程を含む配線板の製造法であって、配線パターンがローラー圧延された金属箔をエッチングして形成されることを特徴とする配線板の製造法。」を、 「【請求項3】キャリア基板上に配線パターンを形成し、配線パターンを内側にして絶縁基材と重ね合わせ、配線パターンを絶縁基材内に埋め込み、キャリア基板を除去し、露出した配線パターン面にカバー材をラミネートする工程を含む配線板の製造法であって、配線パターンがローラー圧延された金属箔をエッチングして形成されることを特徴とする配線板の製造法。」とする。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (1)訂正の目的 上記訂正事項は、発明を特定する事項である配線板の製造工程において、これに含まれる事項である、露出した配線パターン面にカバー材をラミネートする工程を附加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 (2)新規事項の有無 上記の訂正事項は、本件特許明細書の段落【0012】及び図2(g)に記載されている事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものである。 (3)特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記訂正事項は、実質上、特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 3.むすび 以上のとおり、上記訂正事項は、平成15年法律第47号附則第2条第8項の規定によって、なお従前の例によるとされることにより適用される、同法律による改正前の特許法第120条の4第2項第1号に掲げる事項を目的とし、同じく特許法第120条の4第3項において準用され、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定で、なお従前の例によるとされることにより適用される、同法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3.特許異議申立てに係る本件特許発明の認定 上記第2.に示したように、上記訂正請求は認容されるから、当該訂正請求に係る訂正明細書を本件特許明細書とし、本件特許異議申立てに係る発明は、当該特許明細書における特許請求の範囲の請求項1、請求項3ないし6のそれぞれに記載された次のとおりのものと認める。(以下、請求項1、3ないし6に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」、「本件発明3」ないし「本件発明6」と言う。なお、請求項2は、特許異議申し立ての対象外であるため、本決定では言及しない。) 【請求項1】(1A)第一の金属によるキャリヤ金属箔の片面に第一の金属とエッチング条件が異なる第二の金属による薄層を形成し、 (1B)第二の金属による薄層の面に第二の金属とエッチング条件が異なる第三の金属による所定の配線パターンを形成し、かつこの第三の金属による所定の配線パターンの形成と同時に、第一の金属によるキャリヤ金属箔の第二の金属による薄層が形成されている面の反対面に、後工程で第一の金属によるキャリヤ金属箔の所望の部分をエッチング除去する際の基準となる位置合わせ用パターンを形成し、 (1C)所定の配線パターンが形成されたキャリヤ金属箔を配線パターン面が内側になるようにして絶縁基材と重ね合わせ配線パターンを絶縁基材内に埋め込み、 (1D)第一の金属によるキャリヤ金属箔及び第二の金属による薄層の所望の部分をエッチング除去する、ことを特徴とする配線板の製造法。 【請求項3】キャリア基板上に配線パターンを形成し、配線パターンを内側にして絶縁基材と重ね合わせ、配線パターンを絶縁基材内に埋め込み、キャリア基板を除去し、露出した配線パターン面にカバー材をラミネートする工程を含む配線板の製造法であって、配線パターンがローラー圧延された金属箔をエッチングして形成されることを特徴とする配線板の製造法。 【請求項4】キャリア基板が、電気めっき法で形成された金属箔、金属板および可とう性を有する高分子フィルムから選ばれた少なくとも一種である請求項3記載の配線板の製造法。 【請求項5】(5A)第一の金属によるキャリヤ金属箔の片面に第一の金属とエッチング条件が異なる第二の金属による薄層を形成し、 (5B)第二の金属による薄層の面に第二の金属とエッチング条件が異なる第三の金属による所定の配線パターンを形成し、 (5C)所定の配線パターンが形成されたキャリヤ金属箔を配線パターン面が内側になるようにして絶縁基材と重ね合わせ配線パターンを絶縁基材内に埋め込み、 (5D)第一の金属によるキャリヤ金属箔及び第二の金属による薄層の所望の部分をエッチング除去する、ことを特徴とする配線板の製造法。 【請求項6】キャリア金属箔が長尺のものであり、所定の配線パタ-ンを連続して形成するようにした請求項1または5記載の配線板の製造法。 第4.特許異議の申立てについての判断 1.本件発明3及び本件発明4の特許について (1)引用例とその記載事項の概要 当審より通知した取消理由では、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物として、次のものを引用した。 第1引用例:特開昭63-56991号公報 第2引用例:特開平1-268091号公報 第3引用例:特開昭60-176292号公報(甲第3号証) 上記各引用例に記載されている事項の概要は、次のとおりである。 (a)上記第1引用例には、「プリント配線板の製造法」に関して、以下のの記載がある。 イ)「以下、この発明を、第1図を参照しつつ、より詳細に説明する。 この発明の製造法の導体パターン形成工程において、導電層と支持層とからなる積層板が用いられる。この導電層はフォトエッチング法によって導体パターンに形成されるものであり、少なくとも導電性を有する。また、支持層は製造中導電層または導体パターンを機械的に支持する・・・導電層および支持層の材質の種類は・・・選択的エッチングのために、各々は異種のものである。そのような導電層の材料として、アルミニウム、銀、銅・・・などがあり、支持層の材料として、アルミニウム、銀・・・などの金属、ポリイミド、エポキシ樹脂などのエッチング可能な樹脂などがある。」(第2頁左下欄第7行〜同右下欄第4行) ロ)「フォトエッチング法によって支持層4上に所望の導体パターン5を形成する。・・・ 次いで、接着剤層、例えば半硬化状態ののり層7が表面に設けられた所定形状の絶縁基板6を準備する。・・・この絶縁基板6は、のり層7を介して導体パターン5と接合させる。・・・例えば、半硬化状ののりを用いてプレス接着し、こののりが導体パターン5の間隙にも充填させ、次いで熱硬化させることができる。」 (第2頁右下欄第7行〜第3頁左上欄第14行) ハ)「絶縁基板6を、接着剤層7を介して導体パターン5の面に接合した後、支持層4を選択的にエッチング除去して導体パターン5を露出させる。この選択的エッチングで用いられるエッチング液は、支持層4を溶かすが、導体パターン5を実質的に溶かさない物質である。・・・この工程における選択的エッチングは、支持層全面を除去することもできるが、必要に応じて所定のレジストを設けて支持層の一部を残し、他を除去して導体パターンを露出させてもよい。」(第3頁左上欄第15行〜同右上欄第6行) (b)また、上記第2引用例には、「フレキシブル回路基板」に関して、次の記載がある。 ニ)「従来フレキシブル回路基板の導電箔として、一般的に使用されている電解銅箔が耐折強度が弱いために起因した、実装作業の低い歩留り、回路の断線ひいては電子機器の信頼性の疑念が、本発明による圧延銅箔の使用によって耐折強度が大巾に向上したため、実装歩留りの向上はもとより、電子機器の信頼性をも高めることができる。」(第3頁左下欄第8〜15行) (c)更に、第3引用例には、「フレキシブル配線板の製造法」に関し、次に記載がある。 ホ)「回路パターンを形成するベース材料に銅箔を用いた。用いる銅箔は・・・めっきした銅箔でも良いし、・・・圧延された銅箔でも良い。」(第2頁左上欄第10〜14行) (2)本件発明3との対比 (a)本件発明3の構成事項と、第1引用例の上記記載事項イ)〜ハ)とを対比すると、第1引用例記載の「支持層」及び「導体パターン」は、本件発明3でいう「キャリア基板」及び「(キャリア基板上の)配線パターン」に相当し、同様に、「のり層7が表面に設けられた所定形状の絶縁基板6」は「絶縁基材」に相当する。 そして、第1引用例ロ)の「絶縁基板6は、のり層7を介して導体パターン5と接合させる」旨の記載は、「導体パターンを内側にしてのり層及び絶縁基板と重ね合わせ」ることを意味していると解し得る。また、同じくロ)で「半硬化状ののりを用いてプレス接着し、こののりが導体パターン5の間隙にも充填させ、次いで熱硬化させる」としているが、その結果として、導体パターンは、「絶縁基板内に埋め込」まれることになる。 更に、同引用例ハ)の「絶縁基板6を、・・・導体パターン5の面に接合した後、支持層4を選択的にエッチング除去」する旨の記載は、「支持層4を除去する」工程を意味するものであるし、イ)の「導電層はフォトエッチング法によって導体パターンに形成される」旨の記載から、上記の導体パターンは「エッチングして形成される」ことは明らかである。 一方、本件発明3でいう「ローラー圧延された金属箔」は、「導電層」の一態様とみることができる。 (b)上記の対比から、本件発明3と第1引用例記載の発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 「キャリア基板上に配線パターンを形成し、配線パターンを内側にして絶縁基材と重ね合わせ、配線パターンを絶縁基材内に埋め込み、キャリア基板を除去する工程を含む配線板の製造法であって、配線パターンが導電層をエッチングして形成される配線板の製造法」の発明と言える点。 [相違点1] 本件発明3が、「露出した配線パターン面にカバー材をラミネートする工程」を含むのに対し、第1引用例記載事項では、当該工程について明らかでない点。 [相違点2] 配線パターンが形成される導電層が、本件発明3では「ローラー圧延された金属箔」であるのに対して、第1引用例記載事項では、「(アルミニウム、銀、銅などの材料で形成される)導電層」というにとどまる点。 (c)相違点の検討 [相違点1]について 配線基板の表面、即ち、露出した配線パターン面を、樹脂フィルム等で覆い(ラミネートして)、基板表面の保護を図ることは、当該技術分野における常套手段である(例えば、特開昭59-4195号公報、特開昭63-199491号公報、特開平2-1198号公報参照)。 そして、第1引用例記載の発明において、このような常套手段を採用することにより上記相違点1に係る構成とすることは、例えば、配線基板の用途等、必要に応じて当業者が適宜なしうる設計事項と言えることである。 [相違点2]について 第3引用例の記載からも明らかなように、当該技術分野で用いられる銅箔材料としては、「めっきした銅箔」(電解銅箔)と共に、「圧延された銅箔」(圧延銅箔)も採用されていることが認められ、更に、第2引用例の上記ニ)の記載は、電解銅箔が耐折強度が弱いために起因する種々の不都合を、「圧延銅箔」の使用によって回避できる可能性があることを示唆したものと言える。 しかも、銅箔等の金属箔を得るための圧延は、一般的にはローラー圧延によって行われることを考慮すれば、第1引用例記載の「(配線パターンをエッチングして形成する)導電層」として、「ローラー圧延された金属箔」を用いることにより、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。 (3)本件発明4との対比 本件発明4では、キャリア基板に関して、「電気めっき法で形成された金属箔、金属板および可とう性を有する高分子フィルムから選ばれた少なくとも一種」であることが要件とされている。 一方、上述のとおり、第1引用例記載の発明において「キャリア基板」に相当するのは「支持層」であるが、同引用例では、当該支持層の材料としてイ)で「アルミニウム、銀・・・などの金属、ポリイミド、エポキシ樹脂などのエッチング可能な樹脂」を挙げている。そして、この記載は、上記の本件発明4で要件とする事項を、実質上開示したものと言えるものである。 したがって、本件発明4と第1引用例記載の発明との相違点は、本件発明3と第1引用例記載の発明との相違点と同様となり、当該相違点が格別のものと言えないことは、上記(2)で述べたとおりである。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明3及び本件発明4のいずれも、上記第1ないし3引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので、請求項3及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に基づいて、拒絶査定をするべき出願に対してされたことになるから、平成15年法律第47号附則第2条第8項の規定により、なお従前の例によるとして適用される、平成7年政令第205号第4条第2項の規定によって、上記法律第47号による改正前の特許法第114条第2項の規定を適用し、取り消すべきものである。 2.本件発明1及び本件発明5ないし本件発明6の特許について (1)特許異議申立人が提出した証拠と、その記載事項の概要 特許異議申立人が提出した証拠は、次の甲第1〜7号証である。 甲第1号証:電子情報通信学会論文誌 C-II 1989年4月号 第243〜253頁 甲第2号証:特開昭60-164392号公報 甲第3号証:特開昭60-176292号公報(上記の第3引用例) 甲第4号証:特開昭63-79396号公報 甲第5号証:特表昭59-500341号公報 甲第6号証:特開昭63-182886号公報 甲第7号証:特開昭63-18693号公報 (a)甲第1号証の記載事項の概要は次のとおりである。(但し、アンダーラインは、当審で附加) イ)「極めて微細な配線を大形の有機基板上に形成することを目的に新微細配線形成プロセスの研究を行なった.・・・まず、銅はく上に、ホトレジスト像を形成し、電気めっきにより配線導体を形成する.次に、レジストをはく離後、接着前処理を行い、基板に接着する.更に、穴開け、スルーホールめっきを行った後、最後に銅はくをエッチング除去する.エッチングを自動的に停止するため、銅エッチング液に耐食性のある金属をバリヤ層として用いた.・・・このプロセスを用いて、フレキシブル配線板、両面配線板、多層配線板を作製し、微細配線化に有効なことを示した.」(第243頁、「あらまし」欄) ロ)「筆者らは、・・・電気めっき技術を用いることとし、・・・配線を表面性状に優れた別の基板上に形成した後、必要な特性を有する有機基板へ転写する微細配線形成プロセス・・・を提案している.既に類似技術として、ステンレスベルト上に高速電気銅めっきにより形成した配線導体をプラスチックフィルムに転写するフレキシブル配線板が実用化されている・・・しかし、この方法は転写工程において導体をフィルムに接着して機械的にはく離するので、微細配線に適用することは困難が予測される.それに対して筆者らの方法は、配線導体のベース体からの分離をエッチングにより行なうことにより、微細な配線の転写を可能にした転写技術である。その工程を簡単に述べると、・・・比較的厚い銅はく上に、厚膜のホトレジストと電気めっきにより配線導体を形成する.次に、ホトレジストを除去した後、配線導体面を接着面として有機基板に接着する.・・・この中で、配線導体を電気めっきにより形成するときに、銅はく層と配線導体層の中間に耐食性金属をめっきにより設けている.これにより、銅はく層のエッチングが完了すると耐食性の金属層が露出しエッチングの進行が自動的に停止するのでオーバエッチングを防止できる.このような特徴により、微細配線転写法は従来技術の枠を超えた微細配線を大型有機基板上に実現でき、かつ多層配線板、フレキシブル配線板、メタルベース配線板などの多様な配線板へ応用できる.」(第244頁左欄第15〜44行) ハ)「2.1 微細配線転写法による配線形成プロセス 微細配線転写法による基本的な製造プロセスを図1に示した.まず、単体として取扱い可能な厚さの銅はくを形成する.・・・連続加工を可能にするために圧延銅はくやステンレスベルトに連続的にめっきして形成することも可能である.次に、・・・微細レジスト像を形成する.続いて、金めっき、銅めっきを順次施した後、レジストをはく離する.・・・多層化接着の前処理として酸化銅被膜形成処理を行った後、下地銅はくをステンレス板からはく離する.・・・この配線パターン付き銅はくを・・・各種の有機またはメタルベース基板の配線板とする.」(第244頁右欄第3行〜第245頁左欄第11行) (b)甲第2号証には、「回路板の形成方法」に関して、概要、次の記載がある。 ニ)「(イ) 極薄のアルミキャリヤ上に被着され且つ表面が程度に粗面化された銅箔上に、レジストをコーティングする工程と、 (ロ) 前記レジストを選択的に感光・硬化して未硬化のレジストを除去する工程と、 (ハ) 前記工程によって除去されたレジストによって露呈した銅箔部分をエッチングする工程と、 (ニ) 前記硬化したレジストを除去する工程と、 (ホ) 銅箔が選択的に残された前記アルミキャリヤ上に絶縁性の合成樹脂を一定厚に被着・硬化させて基板を形成する工程と、 (ヘ) 前記銅箔を埋設した基板からアルミキャリヤを除去する工程と、 (ト) 基板上に露呈した銅箔に、Ni、Auを順次メッキする工程と からなることを特徴とする回路板の形成方法。」(第1頁左下欄第5行〜同右下欄第1行) ホ)「第2図(a)において、6はアルミキャリアで、・・・該アルミキャリア6上にはめっきで形成した約5〜9μm厚の銅箔7が被着・・・されている。・・・ 回路板の形成に際しては、まず第2図(a)の状態から同図(b)に示すように、銅箔7上に感光性のレジスト8をラミネータ等で均一厚さにコーティングし、・・・公知のホトプロセス工程によって、同図(c)に示すように、銅箔7上に硬化したレジスト8が被着した状態を得る。 次にこの状態から、選択性エッチング溶液にて、・・・露呈した銅箔7部分を・・・除去し[同図(d)]、・・・然る後、・・・レジスト8を除去する[同図(e)]。 そして・・・同図(e)の状態から、・・・合成樹脂9を一定厚に積層して硬化させ基板を得る[同図(f)]。・・・次にこの状態から、アルミニウム選択エッチング溶液・・・にてアルミキャリア6を溶解・除去すれば、同図(g)に示すような平滑化基板が得られ、・・・Niメッキ層10、・・・Auメッキ層11を順次形成すれば、同図(h)に示す・・・回路板が得られることになる。」(第2頁右上欄第17行〜同右下欄第13行) (c)甲第3号証(上記第3引用例)には、上記第4.1.(1)で指摘した事項の他に、銅箔(キャリア金属箔)の片面に、「耐蝕性のある金属のめっき、銅のめっきを行い、回路パターンを形成」し、回路パターンが樹脂内に埋め込まれた状態で、前記銅箔をエッチングすることによりフレキシブル配線板を製造すること、また、「長尺銅箔を用いることにより、連続生産が可能である」旨の記載がある。(第1頁左下欄第5〜11行、第2頁左下欄第8〜11行参照) (d)甲第4号証以下にも、キャリア金属箔(板)の片面に、回路パターンを形成し、後にキャリア金属箔(板)をエッチングすることにより導体回路板等を製造する旨の記載があり、また、甲第7号証には、長尺の金属箔の利用を開示する記載(第2、3図等)がある。 (2)特許異議申立理由の概要 特許異議申立人は、概略次のような主張をしている。 (a)甲第1号証には、 イ)「第一の金属によるキャリヤ金属箔(=銅箔層)に第1の金属とエッチング条件が異なる第二の金属(=バリヤ金属)による薄層を形成する」こと、 ロ)「第二の金属(=バリヤ金属)による薄層の面に第二の金属とエッチング条件が異なる第三の金属(=銅配線)による所定の配線パターンを形成する」こと、 ハ)「所定の配線パターンが形成されたキャリヤ金属箔を配線パターン面が内側になるようにして絶縁基材と重ね合わせ配線パターンを絶縁基材内に埋め込む」こと、 ニ)「第一の金属によるキャリヤ金属箔及び第二の金属による薄層の所望の部分をエッチング除去する」こと、 が開示されている。 そこで、甲第1号証の上記開示事項と本件発明5の構成事項とを対比すると、実質上、変わるところがなく、本件発明5は、甲第1号証記載の発明と同一である。(特許異議申立書第9頁第14行〜第10頁第22行参照。) (b)また、本件発明5の構成に更なる構成が付加される本件発明1及び本件発明6についても、当該付加される構成は、甲第2号証以下に開示されているか、あるいは格別のものではないから、本件発明1及び本件発明6は、いずれも、甲第1号証記載の発明と同一であるか、あるいは甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (c)本件発明1は、特許法第36条第5項第2号の要件を満たしていない。 (3)当審の判断 (a)本件発明5と、甲第1号証の記載事項との対応関係をみると、上記「第一の金属」(キャリヤ金属箔)に対応するのは甲第1号証記載の「銅はく」であり、以下同様に、「第二の金属」(バリヤ金属)は「耐食性金属(金めっき)」に、「第三の金属」(銅配線)は「銅めっき」に、それぞれ対応している。 そして、甲第1号証の「配線導体を電気めっきにより形成するときに、銅はく層と配線導体層の中間に耐食性金属をめっきにより設けている」という記載(更に、第244頁右欄図1の「3.Pattern plating」以下参照)からみて、上記「第二の金属」に対応する「耐食性金属(金めっき)」は、配線導体の一部として形成されていることが認められる。 (b)一方、本件発明5の構成についてみると、請求項5では、「(5A)第一の金属によるキャリヤ金属箔の片面に第一の金属とエッチング条件が異なる第二の金属による薄層を形成し、」「(5B)第二の金属による薄層の面に第二の金属とエッチング条件が異なる第三の金属による所定の配線パターンを形成し、」としている。 つまり、本件発明5では、「第三の金属による所定の配線パターンを形成」(5B)するよりも前の段階で、「第二の金属による薄層」が形成されており、当該第二の金属による薄層は、「所定の配線パターン」とは別のものとして形成されていることが認められる。 そうすると、上記本件発明5の、(5A)及び(5B)の構成が甲第1号証に記載されているとすることはできない。 (c)更に、上記の(5A)、(5B)及び(5D)の構成は、甲第2号証以下についてみても開示や示唆があるとはいえず、このことは、上記第4.で検討した各引用例等についても同様である。 なお、甲第4号証には金属膜(5)をバリヤ金属とする旨の示唆もなく、当該金属膜(5)は、むしろ、「第1の金属」に対応するものであることが明らかである。 (d)そして、本件発明5では、上記(5A)、(5B)及び(5D)の構成を備えることにより、第二の金属を「ワイヤボンディング端子や接続端子として使用するため接栓めっきを必要とする配線導体に金めっきをする場合の給電用端子として使用できる」と共に、第二の金属は「その後エッチング除去されるが薄層であるので接栓めっきの給電用端子として使用しつつ、エッチングにより簡単に除去することができる」という、明細書記載の作用効果が認められる(段落【0015】参照)。 (e)以上のとおり、本件発明5が、甲第1号証記載の発明と同一、あるいは甲第1〜7号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは言えない。 (f)また、本件発明1及び本件発明6は、本件発明5の構成に更なる構成が付加される発明であるから、本件発明5と同様の理由で、甲第1〜7号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは言えない。 (g)請求項1の記載に関しても、その記載に特段の不備があるとは認められない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1及び本件発明5ないし6については、いずれの発明も、甲第1〜7号証記載の各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、本件発明1及び本件発明5ないし6の特許を取り消すべきものとすることはできない。 また、他に上記本件特許を取り消すべき理由も発見しない。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件発明3及び4の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから平成15年改正前の特許法第113条第2項に該当し、取消されるべきものである。 本件発明1及び本件発明5ないし6の特許については、取消理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 配線板の製造法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(1A)第一の金属によるキャリヤ金属箔の片面に第一の金属とエッチング条件が異なる第二の金属による薄層を形成し、 (1B)第二の金属による薄層の面に第二の金属とエッチング条件が異なる第三の金属による所定の配線パターンを形成し、かつこの第三の金属による所定の配線パターンの形成と同時に、第一の金属によるキャリヤ金属箔の第二の金属による薄層が形成されている面の反対面に、後工程で第一の金属によるキャリヤ金属箔の所望の部分をエッチング除去する際の基準となる位置合わせ用パターンを形成し、 (1C)所定の配線パターンが形成されたキャリヤ金属箔を配線パターン面が内側になるようにして絶縁基材と重ね合わせ配線パターンを絶縁基材内に埋め込み、 (1D)第一の金属によるキャリヤ金属箔及び第二の金属による薄層の所望の部分をエッチング除去する、ことを特徴とする配線板の製造法。 【請求項2】位置合わせ用パターンの形成を、エッチング法およびめっき法から選ばれた少なくとも一種により行う請求項1記載の配線板の製造法。 【請求項3】キャリア基板上に配線パターンを形成し、配線パターンを内側にして絶縁基材と重ね合わせ、配線パターンを絶縁基材内に埋め込み、キャリア基板を除去し、露出した配線パターン面にカバー材をラミネートする工程を含む配線板の製造法であって、配線パターンがローラー圧延された金属箔をエッチングして形成されることを特徴とする配線板の製造法。 【請求項4】キャリア基板が、電気めっき法で形成された金属箔、金属板および可とう性を有する高分子フィルムから選ばれた少なくとも一種である請求項3記載の配線板の製造法。 【請求項5】(5A)第一の金属によるキャリヤ金属箔の片面に第一の金属とエッチング条件が異なる第二の金属による薄層を形成し、 (5B)第二の金属による薄層の面に第二の金属とエッチング条件が異なる第三の金属による所定の配線パターンを形成し、 (5C)所定の配線パターンが形成されたキャリヤ金属箔を配線パターン面が内側になるようにして絶縁基材と重ね合わせ配線パターンを絶縁基材内に埋め込み、 (5D)第一の金属によるキャリヤ金属箔及び第二の金属による薄層の所望の部分をエッチング除去する、ことを特徴とする配線板の製造法。 【請求項6】キャリア金属箔が長尺のものであり、所定の配線パタ-ンを連続して形成するようにした請求項1または5記載の配線板の製造法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、配線板の製造法に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、配線板の製造法としてはエッチドフォイル法が最も広く使用されている。エッチドフォイル法は、銅張り積層板にエッチングレジストを形成し、エッチング液によりエッチングレジストが形成されてない部分の銅箔をエッチング除去して所定の配線パターンを形成した後、エッチングレジストを除去して配線板を製造するものである。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 エッチドフォイル法は簡便で生産性に優れた方法であるが、この方法で使用される銅張り積層板の銅箔厚みが通常35〜70μmと厚いため、エッチングレジストが形成されてない部分の銅箔をエッチング除去する工程でアンダーカットにより配線パターン導体の側面がえぐられてしまい、高密度あるいは高精度のパターンを形成することができない。 【0004】 また、製造された配線板の表面には配線パターン導体が凸となっており、更にその上に絶縁層を介して配線パターンを形成して多層配線板を製造する場合に配線板表面の凹凸形状が高密度多層配線板製造の障害となっている。 【0005】 本発明は、高密度、高精度の配線パタ-ンの形成が可能であるとともに、配線導体が基板に埋め込まれ表面が平滑な配線板を生産性よく製造する方法を提供するものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】 図1により本発明の一実施例を説明する。キャリヤ金属箔1の片面にキャリヤ金属箔1とエッチング条件が異なる金属薄層2を設ける(図1(a))。キャリヤ金属箔1としては銅箔が一般的であるが、ステンレス板(箔)上に電気めっきで形成した銅箔なども適用できる。また、金属薄層2としてはニッケルや半田などが一般的であるが特に限定されるものではなく、成膜手段も電気めっきや無電解めっき及び真空成膜法などの適用が可能である。次に、金属薄層2上に金属薄層2とエッチング条件が異なる金属層3を設け3層箔を形成する(図1(b))。この場合、3層箔(金属箔1/金属薄層2/金属層3)の組合せとしては、例えば、銅箔/ニッケル薄層/銅層が挙げられる。なお、3層箔の各層厚さについては、特に限定はされないが、金属薄層2については、キャリヤ金属層1と金属層3に対するエッチング時のバリヤー効果が要求されるため、1〜3μm程度の膜厚が必要である。 【0007】 次に、3層箔の金属層3面に所定の配線パターン形成用のレジストパターン4とキャリヤ金属箔1面に所定の位置合わせ用パターン形成用のレジストパターン5をそれぞれ形成し(図1(c))、化学エッチングにより所定の配線パターン6及び位置合わせ用パターン7を形成後(図1(d))、レジストパターン4、5を剥離する(図1(e))。この場合、キャリア金属箔1/金属薄層2からなる2層箔の両面にレジストパターンを形成した後、めっきによって所望する配線パターンと位置合わせ用パターンを形成することも可能である。このめっき法を適用する場合は、位置合わせ用パターンの厚さが厚いと絶縁基材と積層する際にプレス用鏡板に傷がつくこと、圧力が均一にかからないことなどの懸念があるため、めっき時の電流密度を調節して厚さを10μm以下にすることが望ましい。 【0008】 次に、配線パターン6及び位置合わせ用パターン7が形成されたキャリヤ金属箔1を配線パターン6を内側にして絶縁基材8と重ね合わせて配線パターン6を絶縁基板8内に埋め込む(図1(f))。配線パターン6はプレス等熱圧着によって容易に絶縁基板8の樹脂内に埋め込むことができる。次に、キャリヤ金属箔1の露出面9を機械的に研磨し、レジスト層を形成後、位置合わせ用パターン7を基準にフォトマスクを使用して所望する領域のレジスト層を感光させ、現像により所定のレジストパターン10を形成した(図1(g))。続いて、化学エッチング法により所望する部分のキャリヤ金属箔及び金属薄層を除去して所定のパターン11を形成した(図1(h))。この場合、キャリヤ金属箔及び金属薄層をエッチング加工してなるパターン11はそのまま表面配線(配線パタ-ン)として利用できる他、例えば、更に多層化が必要な場合は、配線パターン6と上部配線層との接続部としても利用可能である。このようにして、配線パターン6を形成したキャリヤ金属箔面の反対面にフォトリソグラフ法を適用して形成した位置合わせパターン7を使用することにより、製造工程の短縮に加えて加工精度の向上を図ることができる。 【0009】 この方法では、従来一般的であったザグリ加工によって位置合わせパターンを露出させる方法に比べて工程を短縮できること、位置合わせパターンに対する機械的ダメージが皆無であることなどから、位置合わせ精度が格段に向上した。また、キャリヤ金属箔に配線パターンを形成した時点でドリルにより穴加工する方法と比較しても、金属箔穴あけ時に発生するバリやプレス後に発生する樹脂のしみ出しなどの問題がなく安定的な製造が可能になった。更に、配線パタ-ンを絶縁基材に埋め込んだ後にキャリヤ金属箔と金属薄層の所定の部分をエッチングする方法では、エッチングする部分を設定するための基準点を決めることが困難であるが、本発明では配線パタ-ンを絶縁基材に埋め込んだ後に新たに基準点を設けることが不用であるため、配線パタ-ン位置合わせ精度、生産性が向上する。 【0010】 図2は、本発明の他の一実施例を説明するものである。ローラー圧延された金属箔12にキャリア基板13を設ける(図2(a))。キャリア基板13としては電気めっきで形成した銅箔やニッケル箔が使用でき、またアクリル系などの粘着剤をステンレスなどの金属板や可とう性を有する高分子フィルムに塗布し、ローラー圧延された金属箔12をラミネートすることも可能である。なお、キャリア基板13を電気めっきで形成する場合、ローラー圧延された金属箔12に対するエッチング時のバリヤー効果が要求されるため、ローラー圧延された金属箔12とエッチング条件の異なることが必要である。また、金属板や可とう性を有する高分子フィルムをキャリア基板13とする場合は、塗布する粘着剤に耐エッチング液性や後工程となる転写プレス後の剥離性がよいことなどが必要になる。 【0011】 次に、ローラー圧延された金属箔12面に所定のレジストパターン14を形成し(図2(b))、化学エッチングにより所定の配線パターン15を形成後(図2(c))、レジストパターン14を剥離する(図2(d))。次に、配線パターン15を内側にして絶縁基材(ポリイミドフィルム等)16と重ね合わせて配線パターン15を絶縁基材16内に埋め込む(図2(e))。配線パターン15は、プレスなど熱圧着によって容易に絶縁基材16内に埋め込むことができる。 【0012】 次に、キャリア基板12を除去し(図2(f))、配線パターン15の絶縁保護のためにカバー材17をラミネートし、所望するフレキシブルプリント配線板(図2(g))を得る。こうして得られた配線板は、配線パターン15が絶縁フィルム基材16内に埋め込まれ平滑なパターンになることから、微細パターンへのはんだ接続時のブリッジ不良を発生しにくくすることができ、なおかつローラー圧延された金属箔配線パターンであることから繰り返し屈曲するような用途にも適用可能である。 【0013】 この方法によれば、配線パターンが微細なパターンになってもそれへのはんだ接続時のブリッジ不良が発生しにくく、しかも繰り返し屈曲するようなプリンタやハードディスクドライブなどの用途にも使用可能なフレキシブルプリント配線板の製造を可能とする。 【0014】 図3は、本発明の更に他の一実施例を説明するものである。第一の金属によるキャリヤ金属箔18としての35μm厚みの銅箔(図3(a))の一方の表面に、第一の金属とエッチング条件が異なる第二の金属による薄層19としてニッケルを電気めっきで1μm厚み形成した(図3(b))後、感光性レジスト膜20を形成し、露光、現像することで深さ25μmの所定の配線パタ-ンの溝を形成した(図3(c))。その後、銅箔に給電する方法で、配線パタ-ンの溝底部に露出しているニッケル上に銅を20μm厚さ形成し、第二の金属とエッチング条件が異なる第三の金属による所定の配線パターン21とした。次に、レジストを剥離し、配線銅を酸化処理して積層時の層間密着性を向上させた後、絶縁基材すなわちガラス布エポキシ樹脂プリプレグを介してガラス布エポキシ樹脂積層板22に熱プレスし一体化し配線パタ-ンを絶縁基材内に埋め込んだ(図3(e))。その後、表面の銅層を当初形成したニッケル層まで選択的に溶解するエッチング液で高速エッチング除去した(図3(f))後、逆の選択性を有するエッチング液でニッケルをクイックエッチングした(図3(g))。第二の金属による薄層の面に第二の金属とエッチング条件が異なる第三の金属による所定の配線パターンを形成する場合、めっき法によって行うこともできる。 【0015】 第二の金属による薄層19としてニッケル層は、ワイヤボンディング端子や接続端子として使用するため接栓めっきを必要とする配線導体に金めっきをする場合の給電用端子として使用できる。図3(f)の段階、即ち表面の銅層を当初形成したニッケル層まで銅を選択的に溶解するエッチング液で高速エッチング除去した段階で、接栓めっきを必要とする配線導体以外の部分にエッチングレジストを形成しエッチングを行い接栓めっきを必要とする配線導体上のニッケル層を除去し、除去されずに残ったニッケル層を給電用端子として接栓めっきを必要とする配線導体に金めっきを行った後、エッチングレジストを除去する。あるいは図3(f)の段階で、接栓めっきを必要とする配線導体以外の部分にめっきレジストを形成しニッケル層を給電用端子として接栓めっきを必要とする配線導体部に金めっきを行い、めっきレジストを除去するようにすることもできる。第二の金属による薄層19としてニッケル層は、その後エッチング除去されるが薄層であるので接栓めっきの給電用端子として使用しつつ、エッチングにより簡単に除去することができる。 【0016】 第一の金属によるキャリヤ金属箔18としては、銅箔の他ステンレス、アルミニムウ等任意の金属箔が使用でき、厚さは20〜100μmが好ましい。第二の金属による薄層19の金属はニッケルの他アルミニウム、銅、チタン等任意の金属が使用でき、厚さは0.1〜10μmが好ましく、形成法は電気めっき法、無電解めっき法、真空成膜法(真空蒸着法、スッパタリング法等)等任意のものが使用される。第三の金属による所定の配線パタ-ン21の金属としては銅が好ましい。第一の金属、第二の金属、第三の金属は、エッチングの条件が少なくとも第一の金属と第二の金属及び第二の金属と第三の金属で異なるものであれば良い。 【0017】 絶縁基材としては、ガラス布等の基材にエポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸・乾燥したプリプレグを介してのガラス布エポキシ樹脂積層板等の積層板、ポリイミドフィルム等の合成樹脂フィルム、接着剤付き積層板、接着剤付きセラミック板等配線パタ-ンが埋め込まれるものであればとくに制限はない。 【0018】 所定の配線パターンが形成されたキャリヤ金属箔を配線パターン面が内側になるようにして絶縁基材と重ね合わせ配線パターンを絶縁基材内に埋め込む場合、加熱・加圧することが好ましい。本発明で使用される、第一の金属によるキャリヤ金属箔と、その片面に形成された第一の金属とエッチング条件が異なる第二の金属による薄層と、第二の金属による薄層の面に形成された第二の金属とエッチング条件が異なる第三の金属による所定の配線パターンよりなる配線パターン付き金属箔では、キャリヤ金属箔とその片面に形成された金属薄層の材質、厚み、層の数等を適宜選定することにより、加熱・加圧により配線パタ-ンが埋め込まれる絶縁基材と加熱温度域での熱膨張係数が適合するよう、配線パターン付き金属箔の熱膨張係数を調整することが可能となる。こうすることにより、配線パターンの寸法精度を向上することができる。配線パターン付き金属箔は柔軟性に富むものであり、配線パタ-ンが埋め込まれる絶縁基材の形状すなわち転写面の形状は平面状だけでなく曲面状のものも使用可能となる。またキャリア板をステンレス板等の板状のものの場合は、大きさに自ずと制限があるが、本発明ではキャリヤ金属箔であるので大型化が容易となる。 【0019】 図4は、本発明の更に他の一実施例を説明するものである。図4(a)は、レジストラミネ-ト工程を示すもので、23は厚さ35μmの銅箔の片面に3μmニッケル層を形成した幅600mmの長尺銅箔による銅箔ロ-ルである。この長尺銅箔23のニッケル層が形成された面にレジストフィルム24をロ-ルラミネ-タ-25により連続的にラミネ-トする。26はレジスト付き銅箔のロ-ルである。図4(b)は、露光、現像工程を示すものである。レジスト付き銅箔26のレジスト面を所定のパタ-ンマスクを用いて連続的に露光27し、続いて現像28、乾燥29を行いレジストパタ-ン付き銅箔30を連続的に作成する。図4(c)は、パタ-ンめっき工程を示すものである。レジストパタ-ン付き銅箔30を電気銅めっき槽を通過させ高速銅めっきを行い、厚さ20μmの所定の配線パタ-ンを連続的に形成する。その後、水洗、レジスト除去を行い、酸化処理槽32を通過させ配線パタ-ン表面を酸化し絶縁基材との接着性向上のための酸化処理をした後、水洗、乾燥を行い、めっきパタ-ン(配線パタ-ン)付き銅箔30を連続的に作成する。 【0020】 このように本発明では、ロ-ル状銅箔を用いて、レジスト塗工、露光、現像、めっき工程を含む配線パタ-ン形成を連続化でき、生産性を高めることが可能となる。こうして得られためっきパタ-ン(配線パタ-ン)付き銅箔30を連続的に所定の大きさに切断し、ガラス布エポキシ樹脂プリプレグを介してガラス布エポキシ樹脂積層板等の絶縁基板に熱プレスし一体化し配線パタ-ンを絶縁基板内に埋め込んだ後、外形加工を行い、その後、銅箔、ニッケル層の所望の部分をエッチングし配線板とする。 【0021】 このようにして得られた配線板は、微細配線(配線幅、配線間隔が50μm以下)が可能であり、また微細ピッチはんだ付けに最適の平面配線構造であるので高密度表面実装に適する。また本発明の方法は、長尺の銅箔等の連続したキャリヤ金属箔に連続的に配線加工をした後に絶縁基板材料と組み合わせる方式であるので、極めてクリ-ンな環境下で運転される連続自動製造ラインの使用が可能となり、欠陥発生要因も少なく、生産性、量産性にも優れる等の特徴を持つものである。 【0022】 【実施例】 実施例1 外形350mm角、厚さ50μmの電解箔(日本電解(株)製、商品名SMR)の粗化処理面に厚さ1μmのニッケル及び厚さ25μmの銅をそれぞれ連続的に電気めっきで形成し、銅箔/ニッケル層/銅層からなる3層箔を形成した。ニッケルメッキは、ワット浴を使用し、電流密度2A/dm2で行った。銅めっきは、硫酸銅浴を使用し、4A/dm2で行った。次に、ヂュポン社製ドライフィルムレジスト(商品名、リストンT-1215)を両面にラミネートし、両面合わせマスクを使って露光後、現像により配線パターンに対応するレジストパターンを銅層面に、また、位置合わせ用パターンに対応するレジストパターンを銅箔側にそれぞれ形成した。この場合、位置合わせパターンとしては、4個のトンボマーク(直径5mm)を使用した。3層箔の前加熱条件は、80℃で15分とし、ラミネート条件は、圧力20psi、ロール温度104℃、送り速度0.5m/分で行った。露光量は、120mJ/cm2とし、トリクロロエタンで現像した。次に、カメリヤ(株)製両面エッチング装置を用いて、アルカリエッチング液(メルテックス(株)社製Aプロセス、液温度は40±3℃)により銅層と銅箔の所望する部分を両面同時にエッチング除去した。この場合、銅層及び銅箔エッチング時のスプレー圧力をそれぞれ4kg/cm2、1kg/cm2とすることにより、配線幅/配線間隔が150/150μmで配線厚さが35μmの配線パターンと深さ10μmのトンボマークをそれぞれ銅箔の表裏に同時に形成した。次に、塩化メチレンでレジストパターンを剥離後、配線パターンに黒色酸化処理を施し、プレスによって配線パターンが内側になるようにガラスエポキシ基材と加熱圧着した。プレス条件は、170℃、40kg/cm2で120分である。プレス後、キャリヤ銅箔面を機械研磨し、前述のトンボマークを基準点として再び所定のレジストパターンを形成した。レジストパターン形成条件は、前記の条件と同じである。更に、前述のアルカリエッチャントを用いてキャリヤ銅箔の所定の部分をエッチングした後、塩化メチレンでレジストパターンを剥離して所望する表面配線を得た。こうして得られた表面配線と既に形成されていた配線パターンとの位置精度は良好であた。以上は、キャリヤ銅箔を表面配線として使用する例であるが、多層板の層間接続部として使用することも可能である。その場合には、例えばキャリヤー銅箔をピラー状に加工し、更に絶縁樹脂層を設け、ピラー頭頂部を露出させた後、上部配線を形成する方法などが使用できる。 【0023】 実施例2 厚さ35μmの圧延銅箔(日鉱グールドフォイル(株)社製、商品名BHNー02)の粗化処理面にキャリア基板となるニッケル層を電気めっきで形成する。ニッケルめっきはワット浴を使用し、電流密度2A/dm2で3μm形成した。次に、レジストフィルム(日本合成化学工業(株)社製ドライフィルムレジスト、商品名アルフォ401Y25)を圧延銅箔の光沢面にラミネートし、露光後、現像によりレジストパターンを形成した。仮前加熱条件は、80℃、15分とし、ラミネート条件は、圧力4kg/cm2、ロール温度95℃、送り速度1.0m/分で行った。露光量は、80mj/cm2とし、炭酸ソーダ水溶液で現像した。次に、アルカリエッチング液(メルテックス(株)社製Aプロセス、液温度は40±3℃))により、最小配線幅/配線間隔が70/80μmで配線厚さ35μmの配線パターンを形成した。次に、苛性ソーダ水溶液でレジストパターンを剥離後、配線パターンに黒色酸化処理を施し、プレスによって配線パターンが内側になるように厚さ25μmの接着剤付きポリイミドフィルム基材(デュポン社製商品名パイララックスLFー0210)と加熱圧着した。プレス条件は、180℃、35kg/cm2で60分である。次に、外側に露出しているキャリア板であるニッケルめっきを、剥離液(メルテックス(株)社製商品名エンストリップ165S)で剥離した。次に、配線パターン上に絶縁保護のため、同様の厚さ25μmの接着剤付きポリイミドフィルム基材(デュポン社製商品名パイララックスLFー0110)をラミネートし、前記同様加熱圧着して、フレキシブルプリント配線板を作製した。この配線板の耐屈曲性は4.3×106サイクルであった。屈曲試験はJISC5016に準拠して行った。条件は、曲げ半径R4.5mm、ストローク30mm、振動数25Hz、抵抗上昇1%時の屈曲回数を測定した。 【0024】 比較例 配線パターンが厚さ35μmの電解銅箔(日鉱グールドフォイル(株)社製商品名JTCー35)によるものであること以外は、実施例2と同様にしてフレキシブルプリント配線板を作製した。この配線板の耐屈曲性は5.2×105サイクルであった。 【0025】 【発明の効果】 本発明は、高密度、高精度の配線パタ-ンの形成が可能であるとともに、配線導体が基板に埋め込まれ表面が平滑な配線板を生産性よく製造ことができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例の製造工程を示す断面図である。 【図2】本発明の他の一実施例の製造工程を示す断面図である。 【図3】本発明のさらに他の一実施例の製造工程を示す断面図である。 【図4】本発明のさらに他の一実施例の製造工程を示す断面図である。 【符号の説明】 1.キャリヤ金属箔 2.金属薄層 3.金属層 4.配線パターン形成用レジストパターン 5.位置合わせ用パターン形成用レジストパターン 6.配線パターン 7.位置合わせ用パターン 8.絶縁基材 9.キャリヤ金属箔露出面 10.レジストパターン 11.所定のパターン 12.ローラー圧延された金属箔 13.キャリア基板 14.レジストパターン 15.配線パターン 16.絶縁基材 17.カバー材 18.キャリヤ金属箔 19.金属薄層 20.感光性レジスト膜 21.配線パターン 22.絶縁基材 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-07-05 |
出願番号 | 特願平4-104675 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
ZD
(H05K)
P 1 652・ 534- ZD (H05K) |
最終処分 | 一部取消 |
特許庁審判長 |
大野 覚美 |
特許庁審判官 |
柴沼 雅樹 鈴木 久雄 |
登録日 | 2003-02-28 |
登録番号 | 特許第3402372号(P3402372) |
権利者 | 日立化成工業株式会社 |
発明の名称 | 配線板の製造法 |
代理人 | 三好 秀和 |
代理人 | 三好 秀和 |