• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1128902
異議申立番号 異議2003-71509  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-11-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-09 
確定日 2005-10-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3354250号「高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3354250号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3354250号の発明は、平成5年12月22日(優先日 平成5年3月9日 日本)に特許出願したものであり、平成14年9月27日に特許権の設定登録がなされ、その後、金子 しの(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立てがなされ、平成16年3月5日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年4月19日に特許異議意見書が提出され、特許権者及び特許異議申立人に対して審尋がなされ、双方から回答書が提出され、平成17年9月12日付けで再度取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年9月22日に訂正請求書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の要旨
全文訂正明細書の記載からみて、特許権者が求める訂正の内容は次のとおりのものと認められる。
訂正事項a
請求項1の
「熱変形温度が100℃以下の非晶性ポリオレフィン(A)と高密度ポリエチレン(B)を配合してなることを特徴とする高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート。」を
「熱変形温度が100℃以下の非晶性ポリオレフィン(A)と高密度ポリエチレン(B)の配合比率が、98重量%:2重量%〜45重量%:55重量%であることを特徴とする高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート。」と訂正する。

訂正事項b
請求項2を削除する。

訂正事項c
請求項3〜6の項番を繰り上げて、新請求項2〜5とする。

訂正事項d
新請求項3(訂正前の請求項4)の「請求項1、2又は3」を「請求項1又は2」と、新請求項4(訂正前の請求項5)の「請求項1、2、3又は4」を「請求項1、2又は3」と、新請求項5(訂正前の請求項6)の「請求項1、2、3又は4」を「請求項1、2又は3」と、それぞれ訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項aは、訂正前の請求項2の「非晶性ポリオレフィン(A)と高密度ポリエチレン(B)の配合比率が、98重量%:2重量%〜45重量%:55重量%である請求項1記載の高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート」との記載に基づいて非晶性ポリオレフィン(A)と高密度ポリエチレン(B)の配合比率を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(2)訂正事項bは請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(3)訂正事項cは、訂正事項bによる請求項2の削除に対応して請求項3〜6を繰り上げて項番を整理するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(4)訂正事項dは、訂正事項cによる項番の整理に対応して、引用請求項の項番を整理後のものに改めるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(5)訂正事項a〜dはいずれも、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-3.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
上記の結果、訂正後の本件請求項1〜5に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明5」という。)は、訂正された明細書(以下、「訂正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。

「【請求項1】熱変形温度が100℃以下の非晶質ポリオレフィン(A)と高密度ポリエチレン(B)の配合比率が、98重量%:2重量%〜45重量%:55重量%であることを特徴とする高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート。
【請求項2】非晶性ポリオレフィン(A)と高密度ポリエチレン(B)の配合比率が、65重量%:35重量%〜45重量%:55重量%である耐油性良好な請求項1記載の高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート。
【請求項3】高密度ポリエチレン(B)の密度が、0.960以上である請求項1又は2記載の高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート。
【請求項4】非晶性ポリオレフィン(A)が、シクロペンタジエンないしその誘導体とノルボルナジエンないしその誘導体との付加反応物と、エチレン、ブタジエン、又はスチレン誘導体から選ばれた1種以上の不飽和単量体との共重合体、又はその水素添加物である請求項1、2又は3記載の高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート。
【請求項5】非晶性ポリオレフィン(A)が、ジシクロペンタジエンないしその誘導体とエチレンとの付加反応物と、エチレン、ブタジエン、又はスチレン誘導体から選ばれた1種以上の不飽和単量体との共重合体である請求項1、2又は3記載の高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート。」

4.特許異議の申立てについての判断
4-1.特許異議申立人の主張
特許異議申立人は甲第1号証及び参考資料1〜3を提出し、概略、つぎの理由により訂正前の請求項1〜6に係る特許は取り消されるべきである旨、主張する。
(1)訂正前の請求項1〜6に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができない。

4-2.合議体の判断
4-2-1.取消理由
当審において平成16年3月4日付けで通知した取消理由及び引用した刊行物等は以下のとおりである。
(1)訂正前の請求項1〜6に係る発明は、参考資料1及び2の記載を参酌すれば、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができない。

<刊行物等>
刊行物1:特開平5-51501号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
参考資料1:特開昭55-157606号公報(同参考資料3)
参考資料2:筏 義人 他5名編「高分子事典」、株式会社高分子刊行会、1971.2.20、p.170〜171

4-2-2.刊行物1及び参考資料1、2の記載事項
刊行物1
(1-1)「【請求項1】 (a)下記一般式[X]

(式[X]中、Raは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)で表わされる繰り返し単位及び下記一般式[Y]

(式[Y]中、Rb 〜Rm はそれぞれ水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン原子,酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を示し、nは0以上の整数を示す。Rj 又はRk とRl 又はRm とは互いに環を形成してもよい。また、Rb 〜Rm それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる繰り返し単位を有する共重合体であって、ガラス転移温度(Tg)が30℃以下である環状オレフィン系共重合体100重量部と、(b)抗ブロッキング剤及び/又は滑剤0.01〜10重量部とからなることを特徴とするオレフィン系重合体組成物。
【請求項2】(a)請求項1記載の環状オレフィン系共重合体100重量部と、(b)抗ブロッキング剤及び/又は滑剤0.01〜10重量部と、(c)α-オレフィン系重合体1〜100重量部とからなることを特徴とするオレフィン系重合体組成物。
【請求項3】 請求項1又は2記載のオレフィン系重合体組成物からなることを特徴とするフィルム又はシート。」(特許請求の範囲)

(1-2)「本発明は、適度な弾性率を有すると共に、弾性回復性,透明性に優れ、包装分野,医療分野,農業分野におけるフィルムやシートの材料等として好適に使用されるオレフィン系重合体組成物、並びに該組成物からなるフィルム又はシートに関する。」(段落【0001】)

(1-3)「成分(a)の環状オレフィン系共重合体は、基本的には、上述したようなα-オレフィン成分と環状オレフィン成分とからなるものであるが、本発明の目的を損なわない範囲で、これら必須の2成分の他に、必要に応じて他の共重合可能な不飽和単量体成分を含有していてもよい。このような任意に共重合されてもよい不飽和単量体として、具体的には、(1)前記したα-オレフィン成分のうち、先に使用されていないもの、(2)前記した環状オレフィン成分のうち、先に使用されていないもの、(3)ジシクロペンタジエン,ノルボルナジエンなどの環状ジエン類、(4)ブタジエン,イソプレン,1,5-ヘキサジエンなどの鎖状ジエン類、(5)シクロペンテン,シクロヘプテンなどの単環オレフィン類等が挙げられる。」(段落第【0011】)

(1-4)「また、成分(a)の環状オレフィン系共重合体は、X線回折法により測定した結晶化度が0〜40%であることが好ましい。結晶化度が40%を超えると、本発明組成物の弾性回復性,透明性が低下することがある。より好ましい結晶化度は0〜30%、特に0〜25%である。」(段落【0017】)

(1-5)「本発明において、成分(c)のα-オレフィン系重合体としては、少なくとも下記一般式
CH2 =CHR13(式中R13は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。)で表わされるα-オレフィンを一成分とする単独重合体又は共重合体であって、前記成分(a)以外のものを用いることができる。具体的には、ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体およびその金属塩、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、ポリ1-ブテン、1-ブテン・エチレン共重合体、1-ブテン・プロピレン共重合体、1-ブテン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン等があげられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合等である。」(段落【0041】)

(1-6)「本発明のオレフィン系重合体組成物は、透明性、弾性回復性、粘着性、突刺し強度、引裂き強度、耐候性、低温ヒートシール性、ヒートシール強度、衝撃強度、形状記憶性、誘電特性等の種々特性に優れているので、例えばシーラントフィルム、パレットストレッチフィルム、業務用ラップフィルム、農業用フィルム、食肉包装フィルム、シュリンクフィルム、被覆材、制振材、パイプ、医療用輸液パック、玩具などの種々の用途に利用できる。特に、フィルム又はシートとした場合には、弾性回復性、透明性、粘着性に優れていると共に、ブロッキングが生じにくく、包装,医療,農業等の様々な分野で有効に使用できるフィルム又はシートを得ることができる。」(段落【0046】)

参考資料1
(参1-1)「・・・エチレンの重合を行つたところ・・・密度0.968g/cm3、極限粘度1.45dl/g、メルトインデツクス6.20のポリエチレンが生成した。」(第10頁右下欄第2〜6行)

参考資料2
(参2-1)「軟化温度〔softening temperature〕
高分子固体が”軟化”し始める温度を,軟化温度(軟化点)または熱ゆがみ温度(heat distortion temperature)という。その定義は任意的である。しかし,一定の加重下,一定の速度で昇温(e.g.0.1Kg/mm2,1℃/min)したときの試料の伸びがある一定値(e.g.1%)に達する温度とみなされることが多い。・・・高分子物質は,軟化温度近辺の狭い温度範囲で大きい速度で伸びはじめる。無定形高分子の場合には,この軟化温度はガラス転移温度付近にあるが,結晶性の高い高分子では融点に近い温度である。・・・表に各種高分子のガラス転移点,軟化点,融点を示す。」(第170頁下から8行〜第171頁下から6行)

(参2-2)「各種高分子材料のガラス転移点,軟化点,融点の関係」と題する表には、「無定形高分子:ポリ塩化ビニル,ガラス転移点 Tg(℃)=81〜87,融点 Tm(℃)=85、無定形高分子:ポリスチレン,ガラス転移点 Tg(℃)=100,105,融点 Tm(℃)=95、無定形高分子:ポリカーボネート,ガラス転移点 Tg(℃)=150,融点 Tm(℃)=140」とのデータが示されている。(第171頁)

4-2-3.特許法第29条2項違反について
(1)本件発明1
刊行物1には、特許請求の範囲(摘示記載(1-1))の請求項1に、
「一般式[X]

(式[X]中、Raは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)で表わされる繰り返し単位及び下記一般式[Y]

(式[Y]中、Rb 〜Rm はそれぞれ水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン原子,酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を示し、nは0以上の整数を示す。Rj 又はRk とRl 又はRm とは互いに環を形成してもよい。また、Rb 〜Rm それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる繰り返し単位を有する共重合体であって、ガラス転移温度(Tg)が30℃以下である環状オレフィン系共重合体100重量部と、(b)抗ブロッキング剤及び/又は滑剤0.01〜10重量部とからなることを特徴とするオレフィン系重合体組成物」が記載されており、請求項2には、
「(a)請求項1記載の環状オレフィン系共重合体100重量部と、(b)抗ブロッキング剤及び/又は滑剤0.01〜10重量部と、(c)α-オレフィン系重合体1〜100重量部とからなることを特徴とするオレフィン系重合体組成物」が、そして請求項3には、
「請求項1又は2記載のオレフィン系重合体組成物からなることを特徴とするフィルム又はシート」が記載されている。
そうすると、刊行物1の特許請求の範囲には、
「(a)一般式[X]と下記一般式[Y]で表わされる繰り返し単位を有するガラス転移温度(Tg)が30℃以下である環状オレフィン系共重合体100重量部と、(b)抗ブロッキング剤及び/又は滑剤0.01〜10重量部と、(c)α-オレフィン系重合体1〜100重量部とからなるオレフィン系重合体組成物からなるフィルム又はシート」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものということができる。
そこで、本件発明1と刊行物1発明とを以下に対比する。
先ず本件発明1の(A)成分について検討する。
本件発明1における「熱変形温度が100℃以下の非晶質ポリオレフィン(A)」は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、例えば一般式

(以下、「本件一般式1」という。」)
(ただし、式中nは1以上の正の整数、mは1以上の正の整数、R1は水素原子、ハロゲン原子、CH2CH3基、又はC6H4R2基を表し、R2は水素原子、炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン化炭化水素基又はハロゲン原子を示す。また、Xはシクロペンタジエンないしその誘導体とノルボルナジエンないしその誘導体との付加反応物もしくはその水素添加物、又はジシクロペンタジエンないしその誘導体とエチレンとの付加反応物を表す。)(段落【0005】)で表されるものであり、Xは、一般式

(以下、「本件一般式2」という。」)
(ただし、式中nは1以上の正の整数であり、R1〜R12はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭化水素基より選ばれる原子もしくは基を示し、R9〜R12は、互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。)(段落【0006】)で表されるものである。
一方、刊行物1発明の(a)環状オレフィン系共重合体は一般式[X]と一般式[Y]で表される繰り返し単位を有するものである。
そして以下に述べるように、刊行物1発明の(a)環状オレフィン系共重合体の一般式[X]及び[Y]は、それぞれ、本件一般式1における「―(CH2 ―CR1H)― 」及び「(X)」に一致する。
即ち、刊行物1の一般式[X]のRa及び本件一般式1の「―(CH2 ―CR1H)― 」のR1 がいずれも水素原子である場合には、両者は共に「―(CH2 ―CH2)― 」となる。また、刊行物1の一般式[Y]のRb 〜Rm 及び本件一般式2の(X)のR9〜R12がすべて水素原子である場合には、両者は全く同じ化学構造を有することとなる。(なお、本件一般式2の(X)はモノマーの形で表現されているので二重結合が存在しているが、これが共重合体を構成する場合には刊行物1発明の一般式[Y]のように二重結合は開いた形となるから、この点で両者が異なるものではない。)
そして、刊行物1発明の(a)環状ポリオレフィン系共重合体と本件発明1の(A)非晶質ポリオレフィンとは、ともにこれらの繰り返し単位から成る共重合体であるから、共通の化学構造を有するポリマーであるといえる。
また、本件発明1においては(A)非晶質ポリオレフィンについて「熱変形温度が100℃以下の」と規定しているが、刊行物1発明においては(a)環状ポリオレフィンについて「ガラス転移温度(Tg)が30℃以下」とされており、刊行物1の発明の詳細な説明に「成分(a)の環状オレフィン系共重合体は、X線回折法により測定した結晶化度が0〜40%であることが好ましい」(摘示記載(1-4))と記載されているところからみて、実質的には非晶質のポリマーであると考えられる。そして、参考資料2に「無定形高分子の場合には、この軟化温度はガラス転移温度付近にあるが、」(摘示記載(参2-1))と記載されていることを参酌すれば、刊行物1発明の(a)環状ポリオレフィンの軟化温度はおおよそ30℃付近以下と解するのが相当であり、熱変形温度も当然その程度と考えられる。
そうすると、刊行物1発明の(a)環状オレフィン系重合体も100℃以下の熱変形温度を有するものであると推定される。

次に、本件発明1の(B)成分について検討する。
刊行物1の「(c)α-オレフィン系重合体」については、発明の詳細な説明に「本発明において、成分(c)のα-オレフィン系重合体としては、少なくとも下記一般式CH2 =CHR13(式中R13は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。)で表わされるα-オレフィンを一成分とする単独重合体又は共重合体であって、前記成分(a)以外のものを用いることができる。具体的には、ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、・・・等があげられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合等である」(摘示記載(1-5))と記載されており、ポリエチレン、即ちエチレンの単独重合体が記載されている。

更に、刊行物1には、その発明に係る組成物を包装用途に供すること(摘示記載(1-6))が記載されている。
また、本件発明1でいう「ポリマーアロイ」とは、一般にポリマー同士の組成物を意味するものである。

してみれば、本件発明1と刊行物1発明とは、ともに、「熱変形温度が100℃以下の非晶質ポリオレフィンとポリエチレンを配合してなる包装用ポリマーアロイシート」である点で一致しており、本件発明1における以下の構成を刊行物1発明は備えていない点で両者間には相違が認められる。
(あ)ポリエチレンが「高密度ポリエチレン」である点、及び
(い)非晶性ポリオレフィン(A)と高密度ポリエチレン(B)との配合比率が「98重量%:2重量%〜45重量%:55重量%」である点、及び
(う)ポリマーアロイシートが「高防湿薬品包装用」である点

そこで、これらの相違点について検討する。
(あ)の点
上記のように刊行物1には、「(c)α-オレフィン系重合体」としてポリエチレンを用いることは記載されているものの、ポリエチレンには、高密度のポリエチレンのほかに高圧法による低密度のポリエチレンも存在することは周知であるから、刊行物1に記載されたポリエチレンが直ちに高密度のポリエチレンを意味するものということはできず、密度0.968g/cm3であるポリエチレンが存在することを示す参考資料1の記載を参酌しても、刊行物1に「高密度のポリエチレン」の使用が開示されているとはいえない。

(う)の点
刊行物1には「本発明は、適度な弾性率を有すると共に、弾性回復性,透明性に優れ、包装分野,医療分野,農業分野におけるフィルムやシートの材料等として好適に使用されるオレフィン系重合体組成物、並びに該組成物からなるフィルム又はシートに関する」(摘示記載(1-2))と記載されており、また、「本発明のオレフィン系重合体組成物は、透明性、弾性回復性、粘着性、突刺し強度、引裂き強度、耐候性、低温ヒートシール性、ヒートシール強度、衝撃強度、形状記憶性、誘電特性等の種々特性に優れているので、例えばシーラントフィルム、パレットストレッチフィルム、業務用ラップフィルム、農業用フィルム、食肉包装フィルム、シュリンクフィルム、被覆材、制振材、パイプ、医療用輸液パック、玩具などの種々の用途に利用できる。特に、フィルム又はシートとした場合には、弾性回復性、透明性、粘着性に優れていると共に、ブロッキングが生じにくく、包装,医療,農業等の様々な分野で有効に使用できるフィルム又はシートを得ることができる」(摘示記載(1-6))と記載されている。これらの記載により、刊行物1発明のシートが包装の分野で使用されるものであり、医療分野で使用されることが理解し得たとしても、本件発明1のような「高防湿薬品包装用」という特殊な用途に供することを、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

これらの点について、特許権者が審尋に対する回答書に添付した実験報告書によれば、本件発明1の(A)成分としてアペルAPL6509(90部)に(B)成分として高密度ポリエチレンF6080(10部)を配合したものと、アペルAPL6509(90部)に低密度ポリエチレン(スミカセンG720)を配合したもの(比較例)とでは、前者の透明性(HAZE)が2%であるのに対し後者のそれは25%であって大きな差があるほか、透湿度についても前者が0.2(g/m2 ・24hr)であるのに対し後者は0.3(g/m2 ・24hr)であり前者が優れていることが認められる。
そして、このような高密度ポリエチレンを(い)の範囲内の配合量で使用することによる透明性(HAZE)や防湿性向上の効果について、当業者が容易に予想し得たものとすることはできない。(なお、刊行物1には透明性については記載がされているが、防湿性ないし透湿性については何も述べられていない。)

したがって、本件発明1は、参考例1及び2の記載を参酌しても、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本件発明2〜5
本件発明2〜5は、本件発明1において更に技術的限定を付加したポリマーアロイシートに係るものであり、上記のように本件発明1が刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1と同様の理由により、本件発明2〜5もまた、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明1〜5に係る発明について特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜5についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】熱変形温度が100□以下の非晶性ポリオレフィン(A)と高密度ポリエチレン(B)の配合比率が、98重量%:2重量%〜45重量%:55重量%であることを特徴とする高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート。
【請求項2】非晶性ポリオレフィン(A)と高密度ポリエチレン(B)の配合比率が、65重量%:35重量%〜45重量%:55重量%である耐油性良好な請求項1記載の高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート。
【請求項3】高密度ポリエチレン(B)の密度が、0.960以上である請求項1又は2記載の高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート。
【請求項4】非晶性ポリオレフィン(A)が、シクロペンタジエンないしその誘導体とノルボルナジエンないしその誘導体との付加反応物と、エチレン、ブタジエン、又はスチレン誘導体から選ばれた1種以上の不飽和単量体との共重合体、又はその水素添加物である請求項1、2又は3記載の高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート。
【請求項5】非晶性ポリオレフィン(A)が、ジシクロペンタジエンないしその誘導体とエチレンとの付加反応物と、エチレン、ブタジエン、又はスチレン誘導体から選ばれた1種以上の不飽和単量体との共重合体である請求項1、2又は3記載の高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、押出成形等によりシートあるいは、フィルム等として利用できる新規な高防湿薬品包装用ポリマーアロイシートに関するものである。更に詳しくは相溶性に優れる特定の非晶性ポリオレフィンと特定の高密度ポリエチレンとを組み合わせることにより得られる、物性バランス及び外観、成形性、防湿性、透明性、耐衝撃性、耐油性に優れた新規なシートであり、一般にPTPと称される固形剤包装用に使用される高防湿薬品包装用ポリマーアロイシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】医薬品包装の分野で、固形剤包装用として一般に用いられているPTP包装用シートには、従来からポリ塩化ビニール(以下、PVCと略記する)樹脂からなるシートが用いられている。PVC樹脂シートはPTP包装に要求される特性をほぼ満足する優れたシートであるが、防湿特性が劣るため、防湿を必要とする製剤に対しては、PTP包装をした後、さらにアルミ箔を含む構成のフィルムによりピロー包装を行うか、あるいは、PVC樹脂シートにポリ塩化ビニリデン(以下、PVDCと略記する)樹脂をコーティングした複合シートを用いることで防湿特性を補う方法がとられてきた。しかし、これらの方法は、工数が増えるほか、包材コストのアップにつながる。また、最近の脱PVCの動向とPVC樹脂よりも防湿性が優れているということから、ポリプロピレン(以下、PPと略記する)樹脂からなるシートも用いられているが、成形性が悪いという欠点があり、また高い防湿性の必要な製剤用途には使用に限界があった。非晶性ポリオレフィンは、透明性、防湿性、電気的性質、機械的強度、成形性、寸法安定性に優れた特性を持っているが、非常に脆く、押出成形等により作製したシートあるいはフィルムは、実用的には耐衝撃性が不足しており、非晶性ポリオレフィンの特性を損なわず強靭化することが望まれている。又、非晶性ポリオレフィンは、非晶性であるが故に耐油性が悪く、耐油性を要求される食品等の用途に用いるには改良が必要である。これらの欠点を改良の為、結晶性ポリマーとガラス転移点の高いジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物とを組み合わせた複合シートにする方法が特開平4-272937号公報に例示されているが、この発明の複合シートは耐衝撃性に優れるものの、成形性が悪く防湿性に劣る結晶性樹脂がリッチなシートであり、又、成形しにくいガラス転移点の高いジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を組み合わせおり、高防湿薬品包装用シートとしては使用が困難なものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、熱変形温度が100℃以下の非晶性ポリオレフィンと高密度ポリエチレンを配合し分散粒子径を微細にすることにより、成形加工性、剛性、耐傷付性、耐衝撃性、耐油性、耐薬品性、耐水性、防湿性、透明性等の物性のバランスがきわめて良好でかつ、フィルム、シート等成形加工時の外観及び成形性の優れた新規な高防湿薬品包装用ポリマーアロイシートを提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、熱変形温度が100℃以下の非晶性ポリオレフィン(A)と高密度ポリエチレン(B)を配合してなることを特徴とする高防湿薬品包装用ポリマーアロイシートに関するものである。一般に、二種以上の樹脂を組み合わせた場合に透明性良好なものを得るためには、各々の樹脂の屈折率がほとんど同じものを選ぶことと、分散粒子径をミクロに分散させることが考えられる。本発明の場合は、樹脂としては屈折率がほぼ同一で且つ防湿性が良好であり、又同じポリオレフィン系樹脂のため相溶性に優れる2種の樹脂を組み合わせ、成形性、防湿性に優れる熱変形温度が100℃以下の非晶性ポリオレフィン(A)を海成分とし、且つ島成分の高密度ポリエチレン(B)を微細に分散させることによりはじめて成形加工性、剛性、耐傷付性、耐衝撃性、防湿性、透明性等の物性のバランスがきわめて良好でかつ、フィルム、シート等成形加工時の外観及び成形性の優れた新規な高防湿薬品包装用ポリマーアロイシートが得られ、更に2種の樹脂の配合比率を極めて近い特定の範囲にすることにより耐油性、耐薬品性にも優れる新規な高防湿薬品包装用ポリマーアロイシートが得られることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0005】本発明に、用いられる熱変形温度が100℃以下の非晶性ポリオレフィン(A)とは、環状オレフィン構造を有する重合体であり、その構造及び性質より非晶性ポリオレフィンと言える。熱変形温度が100℃以下の非晶性ポリオレフィンの例としては、下記の様な物が挙げられる。例えば、下記の一般式で表される非晶性重合体である。

(ただし、式中nは1以上の正の整数、mは1以上の正の整数、R1は水素原子、ハロゲン原子、CH2CH3基、又はC6H4R2基を表し、R2は水素原子、炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン化炭化水素基又はハロゲン原子を示す。また、Xはシクロペンタジエンないしその誘導体とノルボルナジエンないしその誘導体との付加反応物もしくはその水素添加物、又はジシクロペンタジエンないしその誘導体とエチレンとの付加反応物を表す。)
【0006】シクロペンタジエンないしその誘導体とノルボルナジエンないしその誘導体との付加反応物の水素添加物、又はジシクロペンタジエンないしその誘導体とエチレンとの付加反応物の一般式は下記に示すものである。
【化1】

(ただし、式中nは1以上の正の整数であり、R1〜R12はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭化水素基より選ばれる原子もしくは基を示し、R9〜R12は、互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。)
【0007】上記、シクロペンタジエンないしその誘導体とノルボルナジエンないしその誘導体との付加反応物の水素添加物、又はジシクロペンタジエンないしその誘導体とエチレンとの付加反応物としては、例えば、テトラシクロ-3-ドデセン、8-メチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-エチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-プロピルテトラシクロ-3-ドデセン、8-ブチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-イソブチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-ヘキシルテトラシクロ-3-ドデセン、8-ステアリルテトラシクロ-3-ドデセン、5,10-ジメチルテトラシクロ-3-ドデセン、2,10-ジメチルテトラシクロ-3-ドデセン、8,9-ジメチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-エチル-9-メチルテトラシクロ-3-ドデセン、11,12-ジメチルテトラシクロ-3-ドデセン、2,7,9-トリメチルテトラシクロ-3-ドデセン、9-エチル-2,7-ジメチルテトラシクロ-3-ドデセン、9-イソブチル-2,7-ジメチルテトラシクロ-3-ドデセン、9,11,12-トリメチルテトラシクロ-3-ドデセン、9-エチル-11,12-ジメチルテトラシクロ-3-ドデセン、9-イソブチル-11,12-ジメチルテトラシクロ-3-ドデセン、5,8,9,10-テトラメチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-エチリデンテトラシクロ-3-ドデセン、8-エチリデン-9-メチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-エチリデン-9-エチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-エチリデン-9-イソプロピルテトラシクロ-3-ドデセン、8-エチリデン-9-ブチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-n-プロピリデンテトラシクロ-3-ドデセン、8-n-プロピリデン-9-メチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-n-プロピリデン-9-エチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-n-プロピリデン-9-イソプロピルテトラシクロ-3-ドデセン、8-n-プロピリデン-9-ブチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-イソプロピリデンテトラシクロ-3-ドデセン、8-イソプロピリデン-9-メチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-イソプロピリデン-9-エチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-イソプロピリデン-9-イソプロピルテトラシクロ-3-ドデセン、8-イソプロピリデン-9-ブチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-クロロテトラシクロ-3-ドデセン、8-ブロモテトラシクロ-3-ドデセン、8-フルオロテトラシクロ-3-ドデセン、8,9-ジクロロテトラシクロ-3-ドデセン、ヘキサシクロ-4-ヘプタデセン、12-メチルヘキサシクロ-4-ヘプタデセン、12-エチルヘキサシクロ-4-ヘプタデセン、12-イソブチルヘキサシクロ-4-ヘプタデセン、1,6,10-トリメチル-12-イソブチルヘキサシクロ-4-ヘプタデセン、オクタシクロ-5-ドコセン、15-メチルオクタシクロ-5-ドコセン、15-エチルオクタシクロ-5-ドコセン、ペンタシクロ-4-ヘキサデセン、1,3-ジメチルペンタシクロ-4-ヘキサデセン、1,6-ジメチルペンタシクロ-4-ヘキサデセン、15,16-ジメチルペンタシクロ-4-ヘキサデセン、ヘプタシクロ-5-エイコセン、ヘプタシクロ-5-ヘンエイコセン、ペンタシクロ-4-ペンタデセン、1,3-ジメチルペンタシクロ-4-ペンタデセン、1,6-ジメチルペンタシクロ-4-ペンタデセン、14,15-ジメチルペンタシクロ-4-ペンタデセン、ペンタシクロ-4,10-ペンタデカジエン等が挙げられる。また、スチレン誘導体としては、例えばスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、o-クロルスチレン、m-クロルスチレン、p-クロルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-クロロエチルスチレン、p-メチル-α-メチルスチレンなどが用いられる。なお、これらは2種類以上の混合物としても使用できる。なお、これらは2種類以上の混合物としても使用できる。
【0008】本発明に、用いられる高密度ポリエチレン(B)は、密度が0.94〜0.98(g/ml)のものであり、その中でも0.96〜0.98(g/ml)のものが好ましく用いられる。また、透湿度は1.0(g/m2・24hr/0.1mm)以下のものであり、低いものが好ましく用いられる。また、屈折率については組み合わせる非晶性ポリオレフィンの応じて近いものが好ましく使用される。本発明による高防湿薬品包装用ポリマーアロイシートにおいて、熱変形温度が100℃以下の非晶性ポリオレフィン(A)98〜45重量%好ましくは65〜45重量%、高密度ポリエチレン(B)2〜55重量%好ましくは35〜55重量%の範囲で配合しなければならない。(A)成分の含量が45重量%より少ない場合は、成形加工性、防湿性、剛性が十分でなく、98重量%より多い場合は、耐衝撃性において好ましい性質が得られない。又65重量%より多い場合は、耐油性、耐薬品性が低下する傾向にある。更に、必要に応じて基本的性質を損なわない範囲で相溶化剤、添加剤、例えば染顔料、安定剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、充填剤及び柔軟性を付与するエラストマー等も添加することもできる。本発明による高防湿薬品包装用ポリマーアロイシートは、通常の熱可塑性樹脂シートに用いられている加工方法、例えば押出成形等により、容易にフィルム、シート等に加工される。本発明のシートの厚みについては特に限定するものではないが、0.2〜0.5mmの範囲であり、特に0.25〜0.40mmの範囲がPTP用包材の厚みとしては適当である。
【0009】
【実施例】以下実施例により、本発明を説明するが、これは単なる例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。なお、シートの特性測定には0.25mmのT-ダイシートを使用し、光線透過率、及びHAZEはASTM-D1003により、防湿度はJIS-Z0208に基づいて条件A、即ち温度25℃、相対湿度90%での測定値であり、外観は目視により判定した。耐油性については、5mm角で厚さ約250μのシートをn-ヘプタン中に浸漬し、23℃で3日間放置後の外観変化(膨潤等)、軟化の程度、透明性の変化等を評価し、変化のない物を○、やや変化した物を△、変化した物を×とした。また引張試験はASTM-D638、曲げ試験はASTM-D790、アイゾット衝撃試験はASTM-D256によって測定した結果である。配合組成及び各特性値の結果は、表1,2に示した。
(実施例1〜3)(A)成分としては、化式1の環状オレフィン構造を有する重合体アペルAPL6509[APO▲1▼;熱変形温度72℃(ASTM D64818.6Kg/cm2)三井石油化学工業(株)製]を使用し、(B)成分としては、エースポリエチHD F6080V[HDPE▲1▼;密度0.961g/cm3(JIS K6760)昭和電工(株)製]を使用した。
(実施例4〜6)(A)成分としては、化式1の環状オレフィン構造を有する重合体アペルAPL6011[APO▲2▼;熱変形温度95℃(ASTM D64818.6Kg/cm2)三井石油化学工業(株)製]を使用し、(B)成分としては、エースポリエチHD S6002[HDPE▲2▼;密度0.954g/cm3(JIS K6760)昭和電工(株)製]を使用した。
(比較例1)(A)成分として、アペルAPL6509[APO▲1▼;三井石油化学工業(株)製]を使用した。
(比較例2)(A)成分としては、アペルAPL6509[APO▲1▼;熱変形温度72℃(ASTM D648 18.6Kg/cm2)三井石油化学工業(株)製]を使用し、(B)成分としては、エースポリエチHD F6080V[HDPE▲1▼;密度0.961g/cm3(JIS K6760)昭和電工(株)製]を使用した。
(比較例3)(A)成分としては、化式1の環状オレフィン構造を有するものの、熱変形温度が100℃を超える重合体アペルAPL6515[APO▲3▼;熱変形温度125℃(ASTM D648 18.6Kg/cm2)三井石油化学工業(株)製]を使用し、(B)成分としては、エースポリエチHDS6002[HDPE▲2▼;密度0.954g/cm3(JIS K6760)昭和電工(株)製]を使用した。
【0010】

【0011】

【0012】
【発明の効果】本発明による高防湿薬品包装用ポリマーアロイシートは、通常の熱可塑性シートに用いられている加工方法、例えば押出成形等により、容易にフィルム、シート等に加工され、成形加工性、剛性、耐傷付性、耐衝撃性、耐油性、耐薬品性、耐水性、透明性、防湿性等の物性のバランスがきわめて良好でかつ、フィルム、シート等成形加工時の外観の優れた製品を与える。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-29 
出願番号 特願平5-324350
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三谷 祥子  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 佐野 整博
船岡 嘉彦
登録日 2002-09-27 
登録番号 特許第3354250号(P3354250)
権利者 住友ベークライト株式会社
発明の名称 高防湿薬品包装用ポリマーアロイシート  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ