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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1128917
異議申立番号 異議2003-73435  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-07-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2005-10-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3425248号「多重真空処理方法、機能性フィルムの製造方法及び機能性フィルム」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3425248号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第3425248号の発明は、平成6年12月27日に特許出願され平成15年5月2日にその特許の設定登録がなされたものであり、その後、凸版印刷株式会社より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、平成17年2月14日付けで特許異議意見書とともに訂正請求書が提出されたものである。
[2]訂正の適否についての判断
[訂正の内容]
訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。
訂正事項a:特許請求の範囲である
「【請求項1】(1)真空チャンバー内において、走行しているウェッブに対して真空処理を施して巻取り、
(2)大気圧に戻すことなく真空条件を変え、
(3)次いで次に行われる真空処理に適した走行速度に調整してウェッブを逆に走行させ、走行中のウェッブに対して先に施した真空処理とは異なる種類の真空処理を施すことを特徴とする多重真空処理方法。
【請求項2】前記、ウェッブを逆に走行させ走行中のウェッブに対して先に施した真空処理とは異なる種類の真空処理を施す操作を、複数回継続して行うことを特徴とする請求項1記載の多重真空処理方法。
【請求項3】前記真空処理が、真空蒸着処理、スパッタリング処理、プラズマ処理、イオンプレーティング及びプラズマCVDから選ばれたものである請求項1又は2記載の多重真空処理方法。
【請求項4】請求項1、2又は3記載の多重真空処理方法をプラスチックフィルムに適用することを特徴とする機能性プラスチックフィルムの製造方法。
【請求項5】請求項4記載の方法により得られた機能性プラスチックフィルム。
【請求項6】請求項5記載の機能性プラスチックフィルムが、反射防止フィルム、ガスバリアーフィルム、タッチパネル用導電性フィルム、フィルム液晶基板、熱線反射フィルム、又は誘電体ミラーであることを特徴とする機能性プラスチックフィルム。」を、
「【請求項1】(1)真空チャンバー内において、走行しているウェッブに対して真空処理を施して巻取り、
(2)大気圧に戻すことなく次に行われる真空処理に適した真空条件に変え、次いで該真空処理に適した走行速度に調整してウェッブを逆に走行させ、
(3)走行中のウェッブに対して先に施した真空処理とは異なる種類の真空処理を施し、
(4)前記各真空処理は、真空蒸着処理、スパッタリング処理、プラズマ処理及びプラズマCVDから選ばれたものであることを特徴とする多重真空処理方法。
【請求項2】前記、ウェッブを逆に走行させ走行中のウェッブに対して先に施した真空処理とは異なる種類の真空処理を施す操作を、複数回継続して行うことを特徴とする請求項1記載の多重真空処理方法。
【請求項3】請求項1または2記載の多重真空処理方法をプラスチックフィルムに適用することを特徴とする機能性プラスチックフィルムの製造方法。
【請求項4】請求項3記載の方法により得られた機能性プラスチックフィルム。
【請求項5】請求項4記載の機能性プラスチックフィルムが、反射防止フィルム、ガスバリアーフィルム、タッチパネル用導電性フィルム、フィルム液晶基板、熱線反射フィルム、又は誘電体ミラーであることを特徴とする機能性プラスチックフィルム。」に訂正する。
訂正事項b:特許明細書の段落「【0014】である
「【課題を解決するための手段】前記した問題点を解決するために、本発明の多重真空処理方法は、真空チャンバー内において、走行しているウェッブに対して真空処理を施して巻取り、大気圧に戻すことなく真空条件を変え、次いで、次に行われる真空処理に適した走行速度に調整してウェッブを逆に走行させ、走行中のウェッブに対して先に施した真空処理とは異なる種類の真空処理を施すことを特徴とする。」を、
「【課題を解決するための手段】前記した問題点を解決するために、本発明の多重真空処理方法は、真空チャンバー内において、走行しているウェッブに対して真空処理を施して巻取り、大気圧に戻すことなく次に行われる真空処理に通した真空条件に変え、次いで、該真空処理に適した走行速度に調整してウェッブを逆に走行させ、走行中のウェッブに対して先に施した真空処理とは異なる種類の真空処理を施し、前記各真空処理は、真空蒸着処理、スパッタリング処理、プラズマ処理及びプラズマCVDから選ばれたものであることを特徴とする。」と訂正する。
訂正事項c:特許明細書の段落【0016】である
「本明細書において「真空処理」とは、真空条件下においてウェッブに対して表面処理、被膜形成処理を行う操作をいい、例えば、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ処理、イオンプレーティング、プラズマCVD等が挙げられる。」を、
「本明細書において「真空処理」とは、真空条件下においてウェッブに対して表面処理、被膜形成処理を行う操作をいい、例えば、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ処理、プラズマCVD等が挙げられる。」と訂正する。
訂正事項d:特許明細書の段落【0019】である
「本発明の多重真空処理方法により、真空処理されたウェッブは、種々の機能が付与される。例えば、プラスチックフィルムに対してプラズマ処理等を行うことにより、表面が活性化され、その上に形成される被膜との密着性が向上される。さらに、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、プラズマCVD等の薄膜形成手段を用い、被膜材料として光学機能性材料、例えば、高屈折率材料、低屈折率材料等を選択して用いて、基材ウェッブ上に高屈折率層の被膜、低屈折率層の被膜の順に積層すれば反射防止被膜となる。また、被膜材料として紫外線遮断性、導電性、帯電防止性、ガスバリヤー性のものを選択することにより、それらの性質が付与された機能性フィルムを形成することができる。」を、
「本発明の多重真空処理方法により、真空処理されたウェッブは、種々の機能が付与される。例えば、プラスチックフィルムに対してプラズマ処理等を行うことにより、表面が活性化され、その上に形成される被膜との密着性が向上される。さらに、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD等の薄膜形成手段を用い、被膜材料として光学機能性材料、例えば、高屈折率材料、低屈折率材料等を選択して用いて、基材ウェッブ上に高屈折率層の被膜、低屈折率層の被膜の順に積層すれば反射防止被膜となる。また、被膜材料として紫外線遮断性、導電性、帯電防止性、ガスバリヤー性のものを選択することにより、それらの性質が付与された機能性フィルムを形成することができる。」と訂正する。
訂正事項e:特許明細書の段落【0042】における「反射防止フィルムの製造例その3」を「反射防止フィルムの製造例その4」と訂正する。
訂正事項f:特許明細書の段落【0047】における「反射防止フィルムの製造例その4」を「反射防止フィルムの製造例その5」と訂正する。
訂正事項g:特許明細書の段落【0050】における「反射防止フィルムの製造例その5」を「反射防止フィルムの製造例その6」と訂正する。
訂正事項h:特許明細書の段落【0054】における「反射防止フィルムの製造例その6」を「反射防止フィルムの製造例その7」と訂正する。
[訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否、拡張・変更の存否]
訂正事項aの請求項1の訂正における「大気圧に戻すことなく次に行われる真空処理に適した真空条件に変え」は、真空条件の変更に対して、次に行われる真空処理に適した真空条件に限定するものであり、該構成要件は、段落【0018】における「次いで真空チャンバー1内の真空条件を大気圧に戻すことなく次の真空処理に適するような真空条件に変え」、段落【0025】における「真空条件及び走行条件を変更して」、段落【0036】における「真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適した値に調整し」、段落【0044】における「真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適した値に調整し」に示されている。
したがって、該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項aの請求項1の訂正における「(4)前記各真空処理は、真空蒸着処理、スパッタリング処理、プラズマ処理及びプラズマCVDから選ばれたものである」は、訂正前の請求項3の構成要件を付加して請求項1を限定するものであり、該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項aの請求項3〜5は、訂正前の請求項3を削除したために伴い請求項の番号が繰り上がったために訂正したものであり、該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項bの明細書の訂正における「大気圧に戻すことなく次に行われる真空処理に適した真空条件に変え」および「前記各真空処理は、真空蒸着処理、スパッタリング処理、プラズマ処理及びプラズマCVDから選ばれたものである」は、前記aで述べた理由と同じ理由により、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項c、及びdの明細書の訂正において、「真空処理」のうち、イオンプレーティングを削除する訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項e、f、g及びhの明細書の訂正は、通し番号が誤記により重複して付与されていたものを訂正するものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、誤記の訂正を目的とするものである。
また、上記訂正事項a、b、c、d、e、f、g及びhは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[3]特許異議の申立についての判断
(訂正後の本件特許発明)
訂正後の請求項1〜5に係る本件特許発明(以下、「訂正後の本件発明1〜5」という。)は、訂正明細書の請求項1〜5に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】(1)真空チャンバー内において、走行しているウェッブに対して真空処理を施して巻取り、
(2)大気圧に戻すことなく次に行われる真空処理に適した真空条件に変え、次いで該真空処理に適した走行速度に調整してウェッブを逆に走行させ、
(3)走行中のウェッブに対して先に施した真空処理とは異なる種類の真空処理を施し、
(4)前記各真空処理は、真空蒸着処理、スパッタリング処理、プラズマ処理及びプラズマCVDから選ばれたものであることを特徴とする多重真空処理方法
【請求項2】前記、ウェッブを逆に走行させ走行中のウェッブに対して先に施した真空処理とは異なる種類の真空処理を施す操作を、複数回継続して行うことを特徴とする請求項1記載の多重真空処理方法。
【請求項3】請求項1または2記載の多重真空処理方法をプラスチックフィルムに適用することを特徴とする機能性プラスチックフィルムの製造方法。
【請求項4】請求項3記載の方法により得られた機能性プラスチックフィルム。
【請求項5】請求項4記載の機能性プラスチックフィルムが、反射防止フィルム、ガスバリアーフィルム、タッチパネル用導電性フィルム、フィルム液晶基板、熱線反射フィルム、又は誘電体ミラーであることを特徴とする機能性プラスチックフィルム。」
(特許異議申立の理由の概要)
本件訂正前の請求項1〜6に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記刊行物1〜5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
尚、甲第2号証は、本件特許の拒絶理由に対する平成15年3月14日付け意見書の写しであり、刊行物ではないので採用しないものとする。

刊行物1:特開昭57-53539号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開昭60-17421号公報(甲第3号証)
刊行物3:特開平2-194944号公報(甲第4号証)
刊行物4:特開平6-130204号公報(甲第5号証)
刊行物5:特開平6-57415号公報(甲第6号証)
(刊行物1〜5の記載事項)
刊行物1:
「1個の蒸着ドラムに沿って移動する高分子成形物基材上に異なる2種の蒸発物質を配した蒸発源により個別にまたは同時に連続して被膜を形成した後、前記高分子成形物基材の被膜面と反対側の面をグロー放電雰囲気に露呈することを特徴とする真空内被膜形成方法。」(請求項(1))
「本発明において・・・、非磁性層は、Al、Cu、In、Sn、Si、Ti等で、厚み範囲は100Å〜1000Å、強磁性層はCo、Fe、Niおよびそれらの合金について厚み範囲が100Å〜2000Åのものである。」(第2頁左上欄7〜14行目)
「そして本発明の要点のひとつは、1個の蒸着ドラム10に沿って移動する高分子成形物基材11に、2種の異なる蒸発物質21,25を加熱気化させて得た蒸気流にて、2層被膜を形成する点にある。しかし、例えば、偶数層でない構成を必要とする場合はこの限りではなく、どちらか一方を蒸着したのち、前述した2層蒸着を行い、必要に応じて、この操作をくり返えせばよい。」(刊行物1の2頁右上欄20行〜2頁左下欄7行)
「蒸着速度は、多くの非磁性層が500〜1500Å/sec、強磁性層の場合が300〜3000Å/sec・・・、強磁性層のみ、または非磁性層のみを独立に酸化性雰囲気で蒸着し得る点も、優れた磁気記録媒体を得る上で有利な点である。」(第3頁左上欄4〜10行目)
「本発明の・・・、第2図でA方向で蒸着する場合は、蒸発源19のみか、蒸発源19から23の蒸着、B方向での蒸着の場合は、蒸発源23のみか、蒸発源23から19である。・・・6層〜8層の多層構造体を得ることができるものである。」(第3頁左上欄11行目〜右上欄3行目)
刊行物2:
「次に、上述の透明導電性フィルム・・・を作製するために使用する蒸着方法及び装置を説明する。・・・基体1は搬送ローラ36で送りながら(搬送速度は10cm/mm〜2m/mm)、酸化シリコン若しくはシリコンからなる蒸発源37を加熱蒸発し、・・・蒸発源37からの蒸発材料が基体1の一方の面上に酸化シリコン層(層12)として堆積せしめられる。そして、一旦、基体1をロール34上に巻き取つた後、搬送方向を逆転させてロール34からロール35方向へ基体1を搬送し、蒸着槽32内で、今度は蒸着条件(例えば導入O2ガス圧)を変更して蒸着を行い、・・・蒸着条件を変更した状態で層11上に層10を蒸着せしめる。・・・膜質良好な製品を得ることができる。」(第6頁左上欄2行目〜第7頁左上欄1行目)
刊行物3:
「透明なプラスチックフィルムからなる基材の表面に・・・透明バリアー複合フィルム。」(請求項(1))
「本発明は、真空系内で蒸着・スパッタリング・イオンプレーティング等のPVD法により、・・・複合フィルムが得られた。」(第3頁右上欄4行目〜12行目)
実施例-1には、「・・・巻取式蒸着スパッタリング装置・・・下記の条件で、酸化アルミニウム薄膜、酸化珪素薄膜をそれぞれ約1000Åの膜厚で連続的に順次積層して設け・・・酸化アルミニウム薄膜・・・真空度1.0×10-4(Torr)・・・ラインスピード1.0m/min・・・酸化珪素薄膜・・・真空度5.0×10-6(Torr)・・・ラインスピード3(m/min)・・・」と記載されている。
刊行物4:
「耐熱性プラスチック透明基材上に・・・導電性を有する多層反射防止光透過板の製造方法。」(請求項1)
「(3)反射防止膜の形成 ・・・。(a)排気・・・(b)前処理 ・・・真空度を約1.0×10-4Torr・・・にした。その条件下で高周波・・・300Wをかけて発生させたプラズマで、(2)で得られた基材の表面を処理した。(c)蒸着 ・・・1層目は真空度約4×10-5Torr・・・の条件下で、2層目は酸素を導入して真空度約8×10-5Torr・・・の条件下で高周波・・・300Wをかけて発生させたプラズマ雰囲気下で、3層目は真空度約2×10-5Torr・・・の条件下で蒸着した。」(段落【0032】〜【0035】)
刊行物5:
「ウェブ基材の表面に蒸発物質を順次蒸着する方法であって、・・・上記複数の蒸発源からの蒸発物質の流れに順次繰り返してさらされ、かつ蒸発源に順次さらされる回数が蒸発源の数よりも多く設定されたステップとを備える方法。」(請求項1)
「したがって、公知のコーティングシステムでは、ウェブ基材上への広範囲に亙っての多重組織の層の形成は、図1に示すように、基材を一つの蒸発源から次の蒸発源への繰り返し往復動作させることによってなされるのが一般的である。・・・多層組織の形成としては新規である。」(段落【0012】)
「シャッタ212は、・・・蒸着を成功させるために重要な他の要件としては、蒸着速度、テープの移送速度、アパーチャ開口の大きさ及び調整可能性、そして、蒸発源のタイプを挙げることができる。・・・よるものである。」(段落【0
025】)
(対比・判断)
刊行物1には、ウェブ状の基材を用いた巻き取り式の蒸着法が記載されており、順方向成膜、逆方向成膜を行うことにより、多層成膜をすることについて開示され、また、順方向成膜と逆方向成膜の間は大気開放することなく、真空装置内で連続して行われて(図2等参照)おり、この点では、訂正後の本件発明1と一致するといえる。
しかし、刊行物1には、「2種の蒸発物質を配した蒸発源により個別にまたは同時に連続して皮膜を形成した後」(刊行物1の請求項1)、及び、「そして本発明の要点のひとつは、1個の蒸着ドラム10に沿って移動する高分子成形物基材11に、2種の異なる蒸発物質21,25を加熱気化させて得た蒸気流にて、2層被膜を形成する点にある。しかし、例えば、偶数層でない構成を必要とする場合はこの限りではなく、どちらか一方を蒸着したのち、前述した2層蒸着を行い、必要に応じて、この操作をくり返えせばよい。」(刊行物1の2頁右上欄20行〜2頁左下欄7行)と記載されているが、これらの記載は、同じ種類の真空処理である蒸着を繰返すことを示すものであり、これに対し、訂正後の本件発明1は、その請求項1に規定するように、「一つの真空処理を施した後に、次に行われる真空処理に適した真空条件に変え、次いで該真空処理に適した走行速度に調整してウェッブを逆に走行させ、走行中のウエッブに対して先に施した真空処理とは異なる種類の真空処理であって、真空蒸着処理、スパッタリング処理、プラズマ処理及びプラズマCVDから選ばれた真空処理を次に施す」(以下、「特定の構成」という。)ものであり、これを示唆する記載は刊行物1にはない。
特許異議申立人は、特許異議申立書の「c.本件特許発明と証拠の対比」の欄において、「異なる2種類の材料を独立に酸化性雰囲気で蒸着するということは、それぞれ、真空度、酸素ガスの分圧を変える必要があり、真空条件を変化させることである。」(特許異議申立書13頁7行〜8行)と主張している。
しかしながら、訂正後の本件発明1は、大気圧に戻すことなく異なる真空処理を行うものであり、しかも、最初の走行中に真空処理を行った後に、逆走させて最初の真空処理とは異なる真空処理を逆走中に行うものであり、すなわち、刊行物1のように異なる2種類の材料を独立に酸化性雰囲気で、同一種類の真空処理としての蒸着を少なくとも2回続けて行うものではない。
したがって、刊行物1には、訂正後の本件発明1の「特定の構成」を示唆する記載はなく、その「特定の構成」が容易に推考しうるともいえないので、訂正後の本件発明1は、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易になし得ることはできない。
さらに、特許異議申立人は、「膜厚、蒸着速度等を制御するときに、真空度、基材の速度、蒸着法であればターゲットへ加えるエネルギー量、スパッタ法であれば印加電力を変化させ制御することは、当たり前のことである。すなわち、真空度、ウエッブ走行速度などの処理条件を変化させることは当業者であれば容易になし得ることである。」(特許異議申立書13頁9行〜12行)と主張し、甲第3号証(刊行物2)及び甲第4号証(刊行物3)を提示している。
しかしながら、訂正後の本件発明1は、前記したように同一種類の真空処理である蒸着を少なくとも2回続けて行う刊行物1の発明とは前記した点において異なるので、刊行物1の発明を前提として、刊行物1の蒸着するときの膜厚、蒸着速度等を制御するために甲第3号証(刊行物2)及び甲第4号証(刊行物3)の技術を結びつけても訂正後の本件発明1の「特定の構成」を導き出ずことはできない。
さらに、刊行物2は、同一種類の真空処理を続けて行うものであり、訂正後の本件発明1の「特定の構成」のような、最初の走行中に真空処理を行った後に、逆走させて最初の真空処理とは異なる真空処理を逆走中に行うものではない。
また、刊行物3は、同一種類の真空処理を続けて行うものであり、訂正後の本件発明1の「特定の構成」のような、最初の走行中に真空処理を行った後に、逆走させて最初の真空処理とは異なる真空処理を逆走中に行うものではない。
さらに、特許異議申立人は、甲第5号証(刊行物4)には、多層反射防止膜について、最初にプラズマ表面処理を施し、次に材料の異なる3層を順次蒸着し、それぞれの真空度の処理条件は異なることが開示されていると主張しているが、刊行物4の手法は、本件特許明細書の段落【0012】において解決すべき問題点のある技術として紹介しているように、先の真空処理と、次に行われる異なる真空処理の間で真空条件が破られるという問題を有する技術にすぎない。
さらに、特許異議申立人は、甲第6号証(刊行物5)には、ウェブ基材上に、例えば材料、厚みが異なる多層組織の薄膜を設けることに関するものであり、蒸着条件として、蒸着速度、テープ(ウェブ状基材)の移送速度等が重要であることが記載されていると主張しているが、刊行物5は、複数の蒸発源上にウェッブ基材を移送ローラにより移送中に順次蒸着を行うものであり、訂正後の本件発明1の「特定の構成」のように一つの真空処理を施した後に、次に行われる真空処理に通した真空条件に変えるものではない。また、先の真空処理に引き続き、最初の走行中に真空処理を行った後に、逆走させて最初の真空処理とは異なる真空処理を走行中に行うものではない。
したがって、刊行物1〜5に記載された発明を組み合わせても、訂正後の本件発明1の「特定の構成」を導き出ずことはできない。
そして、訂正後の本件発明1は、その「特定の構成」を含む構成を採用することにより、訂正後の明細書記載のとおりの効果を奏するものである。
したがって、訂正後の本件発明1は、刊行物1〜5に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものではない。
訂正後の本件発明2〜5は訂正後の本件発明1を引用する発明であり、訂正後の本件発明1が前記したように刊行物1〜5に基いて当業者が容易になしえたものではないので、訂正後の本件発明1と同様の理由により、訂正後の本件発明2〜5は、刊行物1〜5に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものではない。
[4]結び
したがって、特許異議の申立ての理由によっては、訂正後の本件発明1〜5についての特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本件発明1〜5についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
多重真空処理方法、機能性フィルムの製造方法及び機能性フィルム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(1)真空チャンバー内において、走行しているウェッブに対して真空処理を施して巻取り、
(2)大気圧に戻すことなく次に行われる真空処理に適した真空条件に変え、次いで該真空処理に適した走行速度に調整してウェッブを逆に走行させ、
(3)走行中のウェッブに対して先に施した真空処理とは異なる種類の真空処理を施し、
(4)前記各真空処理は、真空蒸着処理、スパッタリング処理、プラズマ処理及びプラズマCVDから選ばれたものであることを特徴とする多重真空処理方法。
【請求項2】前記、ウェッブを逆に走行させ走行中のウェッブに対して先に施した真空処理とは異なる種類の真空処理を施す操作を、複数回継続して行うことを特徴とする請求項1記載の多重真空処理方法。
【請求項3】請求項1または2記載の多重真空処理方法をプラスチックフィルムに適用することを特徴とする機能性プラスチックフィルムの製造方法。
【請求項4】請求項3記載の方法により得られた機能性プラスチックフィルム。
【請求項5】請求項4記載の機能性プラスチックフィルムが、反射防止フィルム、ガスバリアーフィルム、タッチパネル用導電性フィルム、フィルム液晶基板、熱線反射フィルム、又は誘電体ミラーであることを特徴とする機能性プラスチックフィルム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、真空蒸着処理、スパッタリング処理、イオンプレーティンク、プラズマ処理及びプラズマCVD等から選ばれた複数種類の真空処理を一つのチャンバー内で、フィルム等のウェッブに対して真空を破ることなく継続して処理できる多重真空処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空蒸着処理、スパッタリング処理、プラズマ処理、イオンプレーティング及びプラズマCVD等の真空処理は、物質表面の被覆或いは改質等に有効な方法として多用されている。プラスチックフィルムに対してこれらの真空処理をすることによって、そのフィルム上に形成される被膜との密着性を増加させたり、薄膜を形成させたりして新たな機能の付加されたフィルムが得られている。
【0003】
一方、近年、ワープロ、コンピュータ、テレビ等の各種ディスプレイや各種光学レンズ、光学物品、自動車、電車等の窓ガラスの表面における光の反射防止をするために、これらの物品の表面に、反射防止フィルムを貼着することが行われている。
【0004】
反射防止膜として、例えば、ガラス上に形成された膜厚0.1μm程度のMgF2の薄膜の場合を説明する。入射光が薄膜に垂直に入射する場合に、特定の波長をλ0とし、この波長に対する反射防止膜の屈折率をn0、反射防止膜の厚みをh、および基板の屈折率をngとすると、反射防止膜が光の反射を100%防止し、光を100%透過するための条件は、次の式(1)および式(2)の関係を満たすことが必要であることは既に知られている(サイエンスライブラリ 物理学=9「光学」70〜72頁、昭和55年,株式会社サイエンス社発行)。
【0005】
【数1】
n0=√ng 式(1)
n0h=λ0/4 式(2)
【0006】
ガラスの屈折率ng=約1.5であり、MgF2膜の屈折率n0=1.38、入射光の波長λ0=5500Å(基準)と既に知られているので、これらの値を前記式(2)に代入すると、反射防止膜の厚みhは約0.1μm前後の光学薄膜が最適であると計算される。したがって、従来このような厚みの光学薄膜が反射防止膜に使用されていた。
【0007】
また、前記式(1)によれば、光の反射を100%防止するためには、上層塗膜の屈折率がその下層塗膜の屈折率の約平方根の値になるような材料を選択すればよいことが分かり、従来、このような原理を利用して、上層膜の屈折率をその下層膜の屈折率よりも低い値とすること、即ち、基板上に高屈折率層、低屈折率層の順に薄膜を設けることにより光の反射防止を行うことが行われていた。
【0008】
また、本出願人は、特願平6-284472号にて既に低屈折率層/高屈折率層/基材フィルムからなる積層構造を基本構成とする反射防止フィルムにおいて、高屈折率層の膜厚Dは次式(3)で示される厚みを持つ光学薄膜であることが、反射防止に優れていることを提案している。
【0009】
【数2】
n・D=(N+1)λ/4 式(3)
〔nは高屈折率層の屈折率、λは可視光線の波長(380≦λ≦780nm)、Nは0又は1の整数〕
【0010】
すなわち、上記に説明される反射防止フィルムは、低屈折率層及び高屈折率層共に、塗装により形成することが困難な、極端に膜厚が薄い光学薄膜であることが、反射防止に優れている。このような光学薄膜の形成には、真空蒸着処理、スパッタリング処理、イオンプレーティング、プラズマCVD等の真空処理が適していることが知られている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の真空処理による薄膜の形成方法において、プラスチックフィルム上に種類の異なる真空処理手段、例えば、真空蒸着処理とスパッタリング処理を行うとすれば、真空処理装置において、供給ロールから連続的に走行して、真空処理手段の作用部へ供給されて真空処理され、次いで巻取りロールに巻き取られるので、それらの処理における真空条件、プラズマCVDでは通常10-2〜10-1mmHg程度、スパッタリングでは10-3〜10-2mmHg程度であるため、一つの真空チャンバーにおいて、複数の真空処理を連続して行うことはできなかった。
【0012】
従来、複数の異なる真空処理を行うためには、例えば、一つの真空処理を行った後に一端、真空条件を破り、即ち、真空チャンバー内に空気を導入して大気圧に戻し、処理されたプラスチックフィルムを別の新たな真空処理ができるようにセットし直し、次いで真空チャンバーを排気して別の真空条件を設定してから前回とは異なる真空処理が行われていた。このように、真空条件の異なる複数の真空処理を行うのに、途中で真空条件が破られ空気が導入されるので、工程間の段取りの時間が非常に長くなるという問題があった。また、このように真空条件が破られることにより、処理された表面が空気に晒されて、表面の活性種が失活したり、或いは表面が酸化されたりして、積層される界面が影響を受け、品質の一定した積層物を得るためには問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、同一の真空チャンバー内において、ある真空処理が行われた後に、大気圧に戻すことなく継続的に別の真空処理を行うことができる多重真空処理方法、その処理方法による機能性フィルムの製造方法を提供し、さらに得られた機能性フィルムを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記した問題点を解決するために、本発明の多重真空処理方法は、真空チャンバー内において、走行しているウェッブに対して真空処理を施して巻取り、大気圧に戻すことなく次に行われる真空処理に適した真空条件に変え、次いで、該真空処理に適した走行速度に調整してウェッブを逆に走行させ、走行中のウェッブに対して先に施した真空処理とは異なる種類の真空処理を施し、前記各真空処理は、真空蒸着処理、スパッタリング処理、プラズマ処理及びプラズマCVDから選ばれたものであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の多重真空処理方法に用いられる多重真空処理装置は、真空チャンバー内にウェッブの正走行機能と逆走行機能が付与された一対のロールからなる巻出巻取機構、及び該巻出巻取機構の一対のロール間を走行するウェッブに対して複数種類の真空処理を継続して施すことができる真空処理機構を含むことを特徴とする。
【0016】
本明細書において「真空処理」とは、真空条件下においてウェッブに対して表面処理、被膜形成処理を行う操作をいい、例えば、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ処理、プラズマCVD等が挙げられる。
【0017】
図1は、本発明の多重真空処理方法に用いられる多重真空処理装置の1構成例を模式的に示したものである。図1において、1は、その内部を所望の真空度に設定することができる真空チャンバーである。該真空チャンバー1内に、ウェッブ2の巻出し及び巻取りを行うことができ、ウェッブ2の正走行及び逆走行機能が付与された一対のロール3、4を含む巻出巻取機構が配置されている。ロール3及びロール4の間を走行するウェッブ2の面に対して真空処理を行うために相異なる複数種類の真空処理機構5、6、7が各々互いに間隔を保つか、或いは互いに連結された状態で配置されている。このように配置されているため、ウェッブ2の走行中に使用したい真空処理機構のみを選択的に作動させることが可能となる。
【0018】
前記巻出巻取機構において、一方のロール3が巻出し操作を行っているときに、他方のロール4は共動して巻取り操作をする。複数の真空処理の真空条件が異なる場合、或いは複数の真空処理時のウエッブ2の走行スピードが異なる場合に、複数の真空処理は次のように行われる。すなわち、最初に巻出しロール3及び巻取りロール4間を走行中のウェッブ2に対して、真空処理を施し、次いで真空チャンバー1内の真空条件を大気圧に戻すことなく次の真空処理に適するような真空条件に変え、及び/又はウエッブ2の走行スピードを変えて、ウェッブ2を逆に走行させ、逆走中のウェッブ2に対して先に施した真空処理とは異なる種類の真空処理を最初の真空処理機構とは別の種類の真空処理機構にて施す。
【0019】
本発明の多重真空処理方法により、真空処理されたウェッブは、種々の機能が付与される。例えば、プラスチックフィルムに対してプラズマ処理等を行うことにより、表面が活性化され、その上に形成される被膜との密着性が向上される。さらに、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD等の薄膜形成手段を用い、被膜材料として光学機能性材料、例えば、高屈折率材料、低屈折率材料等を選択して用いて、基材ウェッブ上に高屈折率層の被膜、低屈折率層の被膜の順に積層すれば反射防止被膜となる。また、被膜材料として紫外線遮断性、導電性、帯電防止性、ガスバリヤー性のものを選択することにより、それらの性質が付与された機能性フィルムを形成することができる。
【0020】
紫外線遮断性を付与する被膜材料としては、例えば、Sb2O5、ZnO、TiO2等の超微粒子が挙げられる。導電性又は帯電防止性を付与する被膜材料としては、SnO2やITO等の超微粒子が挙げられる。ガスバリヤー性を付与する被膜材料としては、SiO2が挙げられる。特に、プラズマCVD法により形成したSiOx膜は、通常の真空蒸着膜と比べて密度が高く、ガスバリヤー性が高い。
【0021】
反射防止フィルムを構成するための高屈折率材料には、例えば、ZnO(屈折率1.90)、TiO2(屈折率2.3〜2.7)、CeO2(屈折率1.95)、Sb2O5(屈折率1.71)、SnO2、ITO(屈折率1.95)、Y2O3(屈折率1.87)、La2O3(屈折率1.95)、ZrO2(屈折率2.05)、Al2O3(屈折率1.63)、HfO2(屈折率2.00)、Ta2O3等が挙げられる。反射防止フィルムを構成するための低屈折率材料には、例えば、LiF(屈折率1.4)、MgF2(屈折率1.4)、3NaF・AlF3(屈折率1.4)、AlF3(屈折率1.4)、Na3AlF6(氷晶石、屈折率1.33)、SiOX(x:1.50≦x≦2.00)(屈折率1.35〜1.48)等が挙げられる。
【0022】
本発明の真空処理されるウェッブの材料には、ロールからの巻出し、ロールへの巻取りが行え、真空処理に耐える材料であれば何でも使用できるが、特に、プラスチックフィルムは、前記作業に適しており、反射防止フィルム、ガス透過防止フィルム、導電性フィルム、帯電防止フィルム等の用途が多岐にわたっているので、種々の機能を付与するには好適なウェッブ材料である。
【0023】
例えば、反射防止フィルムに使用できるウェッブ材料には、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、トリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリロニトリルフィルム等が使用できるが、特に、トリアセチルセルロースフィルム、及び一軸延伸ポリエステルフィルムが透明性に優れ、光学的に異方性が無い点で好適に用いられる。その厚みは、通常は8μm〜1000μm程度のものが好適に用いられる。
【0024】
【実施例】
本発明を具体的な機能性積層フィルムの製造例に基づいて以下に説明する。図19は下記の実施例及び参考例の各真空処理に共通な真空処理パスを示す概念図である。図19において、一端の巻き出し巻き取りゾーン101から他端の巻き出し巻き取りゾーン105へ走行されるウエッブ102はスパッタゾーン103に導入され、次いでプラズマゾーン104に導入される。このプラズマゾーン104は一つのゾーンとして同一の真空条件を保つことができ、複数のプラズマ処理、例えば、前処理又は後処理としてのいわゆるプラズマ処理、或いはプラズマCVD等ができるように一個以上の小部屋に別れている。
【0025】
スパッタゾーン103とプラズマゾーン104においてはその真空条件及びウエッブの走行速度が異なる。例えば、スパッタリングでは真空条件は10-3〜10-2mmHg及び走行速度は0.8〜3.0m/分であるのに対して、プラズマ処理或いはプラズマCVDでは真空条件は10-2〜10-1mmHg及び走行速度はスパッタリングより10〜30倍は速い。したがって、スパッタゾーン103とプラズマゾーン104においてはその真空条件及び走行速度が異なるので、ウェッブ102の一方向への走行中においては、これらのゾーンにおいて同時に異なった処理を行うことができない。このような真空条件及び走行速度が異なる複数の真空処理を行う場合には、巻き出し巻き取りゾーン101から走行されるウェッブ102をスパッタリングゾーン103或いはプラズマゾーン104の何れか一方を運転状態(オン)にし、他方を停止状態(オフ)にし、一方の真空処理が行われた後に巻き取りを完了し、次いで、真空条件及び走行条件を変更して先のオン・オフ状態を変えて、ウエッブ102を逆走行させて他方の真空処理を行う。
【0026】
〔参考例1〕
反射防止フィルムの製造例その1(真空プロセスによる薄膜1層の場合)
図2は本参考例1の反射防止フィルムの層構成を示す。図2において11は透明プラスチック基材フィルムであり、その材質は、トリアセチルセルロースフィルム(略語:TACフィルム)又はポリエチレンテレフタレートフィルム(略語:PETフィルム)である。その透明プラスチック基材フィルム11上に、接着剤層12が形成されている。さらにその接着剤層12上に透明プラスチック基材フィルム11の屈折率よりも高い屈折率を持つハードコート層13が、高屈折率樹脂組成物を用いて塗布により形成されている。このハードコート層13に防眩性を付与する目的でその表面には微細な凹凸が形成されていてもよく、或いはこのハードコート層13中に防眩性を発揮することができるビーズ等の粒子が混入されていてもよい。
【0027】
さらにハードコート層13上にそのハードコート層13の屈折率よりも低い屈折率を持つプラズマCVDによるSiOxCVD膜14が形成されている。上記の反射防止フィルムにおいて透明プラスチック基材フィルム11の材質がTACである場合、カラー液晶ディスプレー用の反射防止フィルムに適しており、また透明プラスチック基材フィルム11の材質がPETの場合、CRT用の反射防止フィルムに適している。
【0028】
図2の反射防止フィルムの製造方法は次のようにして行われる。透明プラスチック基材フィルム11に対して、ウエット法により接着剤組成物を塗布して接着剤層12を形成する。次いで、透明プラスチック基材フィルム11の屈折率よりも高い屈折率を持ち防眩性のハードコート層用樹脂組成物を塗布し、硬化させてハードコート層13を形成して積層フィルム(即ち、ハードコート層13/接着剤層12/透明プラスチック基材フィルム11からなる層構成の積層フィルム)を得る。
【0028】
図2の反射防止フィルムの製造方法は次のようにして行われる。透明プラスチック基材フィルム11に対して、ウエット法により接着剤組成物を塗布して接着剤層12を形成する。次いで、透明プラスチック基材フィルム11の屈折率よりも高い屈折率を持ち防眩性のハードコート層用樹脂組成物を塗布し、硬化させてハードコート層13を形成して積層フィルム(即ち、ハードコート層13/接着剤層12/透明プラスチック基材フィルム11からなる層構成の積層フィルム)を得る。
【0029】
次いで、この積層フィルムを先に説明した図1の多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適した値に調整し、もう一方のロール4に巻き取らせる。この積層フィルムの走行中に、最初にプラズマ処理を行い積層フィルムの表面を活性化させ密着性を増大させる。次いでこの活性化された積層フィルムの表面上にプラズマCVDによりSiOxを成膜してSiOxCVD膜14を形成する。
【0030】
図2の反射防止フィルムの製造方法は次のようにして行われる。前記の透明プラスチック基材フィルム11上に接着剤層12及びハードコート層13が形成されてなる積層フィルムを図1の多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適するように調整し、プラズマ処理に適した走行速度でもう一方のロール4に巻き取らせる。この積層フィルムの正走行中にプラズマ処理を行う。次いで、ロール4を逆回転させてプラズマ処理済の積層フィルムを逆方向へ走行させて、この走行中に積層フィルムの表面上にプラズマCVDによりSiOxCVD膜14を形成し、ロール3に巻き取る。
【0031】
なお、SiOxCVD膜14上に、さらにプラズマCVDによりCF4、SiF4等のガスを用いて処理し、表面にフッ素を導入することにより、撥水性、防汚性を付与してもよい。
【0032】
上記ハードコート層13に用いられるバインダー樹脂には、透明性のあるものであればどのような樹脂(例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂等)でも使用することができる。ハード性能を付与するためには、ハードコート層の厚みは0.5μm以上、好ましくは、3μm以上とすることにより、硬度を維持することができ、反射防止フィルムにハード性能を付与することができる。ハードコート層の硬度をより向上させるために、ハードコート層に使用するバインダー樹脂には、反応硬化型樹脂、即ち、熱硬化型樹脂及び/又は電離放射線硬化型樹脂を使用することが好ましい。前記熱硬化型樹脂には、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が使用され、これらの樹脂に必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を加えて使用する。
【0033】
前記電離放射線硬化型樹脂には、好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーおよび反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1、6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものが使用できる。
【0034】
〔実施例1〕
反射防止フィルムの製造例その2(真空プロセスによる薄膜1層の場合)
図3に本実施例1の反射防止フィルムの層構成を示す。図3において透明プラスチック基材フィルム11上に、接着剤層12が形成されている。さらにその接着剤層12上に透明プラスチック基材フィルム11の屈折率よりも高い屈折率を持つハードコート層13が、高屈折率樹脂組成物を用いて塗布により形成されている。このハードコート層13に防眩性を付与する目的でその表面には微細な凹凸が形成されていてもよく、或いはこのハードコート層3中に防眩性を発揮することができるビーズ等の微粒子が混入されていてもよい。
【0035】
さらにハードコート層13上にそのハードコート層13の屈折率よりも低い屈折率を持つSiO2スパッタ膜15が形成されている。上記反射防止フィルムにおいて透明プラスチック基材フィルム11の材質がTACである場合、カラー液晶ディスプレー用の反射防止フィルムに適しており、また透明プラスチック基材フィルム11の材質がPETの場合、CRT用の反射防止フィルムに適している。
【0036】
図3の反射防止フィルムの製造方法は、前記参考例1で説明したように接着剤層12及びハードコート層13の形成された積層フィルム(即ち、ハードコート層13/接着剤層12/透明プラスチック基材フィルム11からなる積層フィルム)を図1の多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適した値に調整し、プラズマ処理に適した走行速度でもう一方のロール4に巻き取らせる。この積層フィルムの走行中にプラズマ処理を行って、積層フィルム表面を活性化させ密着性を向上させる。
【0037】
次いで、真空チャンバー1内の真空度をスパッタリングに適した値となるように調整し、ロール4及びロール3を前回とは逆に回転させて、スパッタリングに適した走行速度でプラズマ処理済の積層フィルムを逆方向へ走行させ、この走行中に積層フィルムの表面上にSiO2のスパッタリングによりSiO2スパッタ膜15を形成し、ロール3に巻き取る。前記参考例1と同様に、SiO2スパッタ膜15の形成後に、さらにプラズマCVDによりCF4、SiF4等のガスを用いて処理し、表面にフッ素を導入することにより、撥水性、防汚性を付与してもよい。
【0038】
〔参考例2〕
反射防止フィルムの製造例その3(真空プロセスによる薄膜1層の場合)
図4に本参考例2の反射防止フィルムの層構成を示す。図4において透明プラスチック基材フィルム11上に、接着剤層12が形成されている。さらにその接着剤層12上に透明プラスチック基材フィルム11の屈折率と同等或いはそれよりも高い屈折率を持つハードコート層13が高屈折率樹脂組成物を用いて塗布により形成されている。このハードコート層13に防眩性を付与する目的でその表面には微細な凹凸が形成されていてもよく、或いはこのハードコート層13中に防眩性を発揮することができるビーズ等の微粒子が混入されていてもよい。該ハードコート層13上にそのハードコート層13の屈折率よりも高い屈折率を持つ高屈折率樹脂層16が高屈折率超微粒子を分散したバインダー樹脂を塗布して形成されている。さらに、該高屈折率樹脂層16の屈折率よりも低い屈折率を持つプラズマCVDによるSiOxCVD膜14が形成されている。
【0039】
上記の反射防止フィルムにおいて透明プラスチック基材フィルム11の材質がTACである場合、カラー液晶ディスプレー用の反射防止フィルムに適しており、また透明プラスチック基材フィルム11の材質がPETの場合、CRT用の反射防止フィルムに適している。
【0040】
図4の反射防止フィルムの製造方法は次のようにして行われる。透明プラスチック基材フィルム11に対して、接着剤組成物を塗布して接着剤層12を形成する。次いで、透明プラスチック基材フィルム11の屈折率と同等或いはそれよりも高い屈折率を持つハードコート層用樹脂組成物を塗布し、硬化させてハードコート層13を形成する。次いで、このハードコート層13よりも高い屈折率を持つ高屈折率超微粒子とバインダー樹脂からなる樹脂組成物を塗布し硬化させて高屈折率樹脂層16を形成する。この積層フィルムを前記参考例1と同様にして図1の多重真空処理装置により積層フィルムの表面を活性化させ密着性を増大させ、次いで同じ走行中或いは逆走行中において、この活性化された積層フィルムの表面上にプラズマCVDによりSiOxを成膜してSiOxCVD膜14を形成する。
【0041】
前記参考例1と同様に、SiOxCVD膜14の形成後に、さらにプラズマCVDによりCF4、SiF4等のガスを用いて処理し、表面にフッ素を導入することにより、撥水性、防汚性を付与してもよい。
【0042】
〔実施例2〕
反射防止フィルムの製造例その4(真空プロセスによる薄膜2層の場合)
図5に本実施例2の反射防止フィルムの層構成を示す。図5において、透明プラスチック基材フィルム11上に、接着剤層12が形成され、さらにその接着剤層12上に透明プラスチック基材フィルム11の屈折率と同等或いはそれよりも高い屈折率を持つハードコート層13が高屈折率樹脂組成物を用いて塗布により形成されている。このハードコート層13に防眩性を付与する目的でその表面には微細な凹凸が形成されていてもよく、或いはこのハードコート層13中に防眩性を発揮することができるビーズ等の微粒子が混入されていてもよい。該ハードコート層13上にTiO2のスパッタリングによりそのハードコート層13の屈折率よりも高い屈折率を持つTiO2スパッタ膜17が形成されている。さらに、該TiO2スパッタ膜17の屈折率よりも低い屈折率を持つプラズマCVDによるSiOxCVD膜14が形成されている。
【0043】
本実施例2の反射防止フィルムは、TiO2が含まれるため、UVカット性が付与される。また、透明プラスチック基材フィルム11の材質がTACである場合、カラー液晶ディスプレー用の反射防止フィルムに適しており、また透明プラスチック基材フィルム11の材質がPETの場合、CRT用の反射防止フィルムに適している。
【0044】
図5の反射防止フィルムの製造方法は、前記参考例1で説明したような接着剤層12及びハードコート層13の形成された積層フィルム(即ち、ハードコート層13/接着剤層12/透明プラスチック基材フィルム11からなる積層フィルム)を図1の多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適した値に調整し、プラズマ処理に適した走行速度でもう一方のロール4に巻き取らせる。この積層フィルムの走行中にプラズマ処理を行って、積層フィルム表面を活性化させ密着性を向上させる。次いで、真空条件をスパッタリングに適するように調整した後、ロール4、ロール3を逆回転させて、スパッタリングに適した走行速度でプラズマ処理済の積層フィルムを逆方向へ走行させ、この走行中に積層フィルムの表面上にTiO2のスパッタリングによりハードコート層13の屈折率よりも高い屈折率を持つTiO2スパッタ膜17を形成し、ロール3に巻き取る。次いで、真空条件をプラズマ処理に適した真空度に調整した後、ロール3、ロール4を逆回転してプラズマ処理に適した走行速度で積層フィルム再び逆走行させる過程において、該積層フィルムに対してプラズマCVDによりSiOxを成膜してSiOxCVD膜14を形成する。
【0045】
また、前記参考例1と同様に、SiOxCVD膜14の形成後にさらにプラズマCVDによりCF4、SiF4等のガスを用いて処理し、表面にフッ素を導入することにより、撥水性、防汚性を付与してもよい。なお、本実施例2の反射防止フィルムにおいて、前記TiO2の代わりにハードコート層13の屈折率よりも高い屈折率を持つITOを用いた場合、本実施例3の反射防止フィルムは帯電防止性が付与される。
【0046】
上記方法とは別の製造方法として、離型フィルムを図1に示す多重真空処理装置内の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適するように調整し、プラズマ処理に適した走行速度でもう一方のロール4に巻き取らせ、この離型フィルムの走行中に、最初にプラズマCVDを行い離型フィルム上にSiOxCVD膜14を形成させる。次いで、真空条件をスパッタリングに適するように調整した後、ロール4、ロール3を逆転させてスパッタリングに適した走行速度で離型フィルムを逆走行させ、この離型フィルムの走行中に前記SiOxCVD膜14上にTiO2をスパッタリングして、TiO2スパッタ膜17を形成する。次いで、離型フィルム上に形成された2層の真空処理による薄膜を、前記ハードコート層13/接着剤層12/透明プラスチック基材フィルム11からなる積層フィルム上に転写して、図5に示す層構成の反射防止フィルムを得ることができる。前記離型フィルムには微細な凹凸が形成されたものを用いてもよく、この場合、転写される表面には微細な凹凸が形成され、防眩性が付与される。
【0047】
〔実施例3〕
反射防止フィルムの製造例その5(真空プロセスによる薄膜2層の場合)
図6に本実施例3の反射防止フィルムの層構成を示す。図6に示す反射防止フィルムは、前記実施例2の反射防止フィルムの層構成におけるハードコート層13とTiO2スパッタ膜17との間に、超微粒子をバインダー樹脂で相互に結着した機能性超微粒子層18を設けたものであり、その他の層構成は前記実施例2と同じである。
【0048】
機能性超微粒子層18に用いられる超微粒子には、例えば、前記した、高屈折率材料或いは低屈折率材料等の光学機能性材料、紫外線遮断性材料、導電性材料、帯電防止性材料、ガスバリヤー性材料、防眩性材料等の機能性被覆材料を超微粒子としたものが挙げられる。本実施例3における機能性超微粒子層18は、樹脂バインダー中に分散されたものではなく、機能性超微粒子自体が相互に結着されているために、樹脂中に分散されたものよりも機能性超微粒子の機能を高めることができる。機能性超微粒子層18における機能性超微粒子とバインダー樹脂との比率は、体積比でバインダー樹脂1に対して、機能性超微粒子が0.2〜20、好ましくは1〜10であることが、機能性超微粒子相互を結着させ、機能性超微粒子の機能を発現させるために好ましい。
【0049】
図6に示す層構成の反射防止フィルムの製造方法は、接着剤層12及びハードコート層13、機能性超微粒子層18の形成された積層フィルム(即ち、機能性超微粒子層18/ハードコート層13/接着剤層12/透明プラスチック基材フィルム11からなる積層フィルム)に対して前記実施例2と同じ真空処理を行うことにより達成される。
【0050】
〔実施例4〕
反射防止フィルムの製造例その6(真空プロセスによる薄膜3層の場合)
図7に本実施例4の反射防止フィルムの層構成を示す。図7に示す反射防止フィルムは、前記実施例2の反射防止フィルムの層構成におけるハードコート層13とTiO2スパッタ膜17との間に、帯電防止層としてのITOスパッタ膜19を設けたものであり、その他の層構成は前記実施例2と同じである。
【0051】
図7の反射防止フィルムの製造方法は、前記参考例1で説明した接着剤層12及びハードコート層13の形成された積層フィルム(即ち、ハードコート層13/接着剤層12/透明プラスチック基材フィルム11からなる積層フィルム)を図1の多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内の真空度をスパッタリングに適するように調整し、もう一方のロール4に巻き取らせる。この積層フィルムの走行中にその表面上にITOのスパッタリングによりITOスパッタ膜19を形成し、次いでロール4とロール3を逆回転して積層フィルムを逆走行させ、その積層フィルムの表面上にTiO2のスパッタリングによりTiO2スパッタ膜17を形成する。次いで、真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適した値に調整し、プラズマ処理に適した走行速度で積層フィルムを正走行させてその走行中にプラズマCVDによりSiOxCVD膜14を形成する。
【0052】
上記方法とは別の製造方法として、離型フィルムを図1に示す多重真空処理装置内の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適した値に調整し、プラズマ処理に適した走行速度でもう一方のロール4に巻き取らせ、この離型フィルムの走行中に、最初にプラズマCVDを行い離型フィルム上にSiOxCVD膜14を形成させる。次いで、真空条件をスパッリリングに適するように調整した後、ロール4、ロール3を逆転させてスパッタリングに適した走行速度で離型フィルムを逆走行させ、この離型フィルムの走行中に離型フィルム上のSiOxCVD膜14上にTiO2をスパッタリングして、TiO2スパッタ膜17を形成する。次いで、離型フィルムを正走行させ走行中にITOのスパッタリングによりITOスパッタ膜19を形成する。次いで、離型フィルム上に形成された3層の真空処理による薄膜を、前記ハードコート層13/接着剤層12/透明プラスチック基材フィルム11からなる積層フィルム上に転写して、図7に示す層構成の反射防止フィルムを得ることができる。前記離型フィルムには微細な凹凸が形成されたものでもよく、この場合、転写される表面には微細な凹凸が形成され、防眩性が付与される。
【0053】
プラズマ処理等の前処理、或いはプラズマCVDによるCF4、SiF4等のガスを用いた後処理は、前記参考例1に準じた方法により適宜施すことができる。
【0054】
〔実施例5〕
反射防止フィルムの製造例その7(真空プロセスによる薄膜多層の場合)
図8に本実施例5の反射防止フィルムの層構成を示す。図8に示す反射防止フィルムは、前記実施例2の反射防止フィルムの層構成における最上層のSiOxCVD膜14(低屈折率層)上にさらに、TiO2スパッタ膜17(高屈折率層)、SiOxCVD膜14(低屈折率層)を形成したものであり、最終的に低屈折率層と高屈折率層との組合せを、(最表面側)低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/…(基材側)となるように何層も繰り返してもよい。本実施例5の反射防止フィルムにおいてTiO2スパッタ膜17及びSiOxCVD膜14以外の層構成は前記実施例2と同じである。
【0055】
なお、上記高屈折率層の材料であるTiO2に変えて、前記したような高屈折率材料、例えば、ITO、CeO2、HfO2、La2O3等の材料を使用してもよい。TiO2スパッタ膜17によりUVカット性を付与することができ、またITOスパッタ膜19により帯電防止性を付与することができる。
【0056】
図8の反射防止フィルムの製造方法は、前記参考例1で説明したウエット法で形成した接着剤層12及びハードコート層13の形成された積層フィルム(即ち、ハードコート層13/接着剤層12/透明プラスチック基材フィルム11からなる積層フィルム)を図1の多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適した値に調整し、プラズマ処理に適した走行速度でもう一方のロール4に巻き取らせる。この積層フィルムの走行中にプラズマ処理を行って、積層フィルム表面を活性化させ密着性を向上させる。
【0057】
次いで、真空条件をスパッタリングに適するように調整した後、ロール4、ロール3を逆回転させて、スパッタリングに適する走行速度でプラズマ処理済の積層フィルムを逆方向へ走行させ、この走行中に積層フィルムの表面上にTiO2のスパッタリングによりハードコート層13の屈折率よりも高い屈折率を持つTiO2スパッタ膜17を形成し、ロール3に巻き取る。
【0058】
次いで、真空チャンバー1内の真空条件をプラズマ処理に適するように調整した後、ロール3、ロール4を逆回転してプラズマ処理に適する走行速度で積層フィルム再び逆走行させる過程において、該積層フィルムに対してプラズマCVDによりSiOxを成膜してSiOxCVD膜14を形成する。さらに、同様な操作を繰り返して、TiO2スパッタ膜(高屈折率層)17及びSiOxCVD膜(低屈折率層)14からなる組合せが複数個となるように、(最表面側)低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/…(基材側)なる層構成を形成する。
【0059】
上記方法とは別の製造方法として、離型フィルムを図1に示す多重真空処理装置内の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適した値に調整し、もう一方のロール4にプラズマ処理に適した走行速度で巻き取らせ、この離型フィルムの走行中に、最初にプラズマCVDを行い離型フィルム上にSiOxCVD膜14を形成させる。次いで、真空条件をスパッタリングに適するように調整した後、ロール4、ロール3を逆転させてスパッタリングに適した走行速度で離型フィルムを逆走行させ、この離型フィルムの走行中に離型フィルム上のSiOxCVD膜14上にTiO2をスパッタリングして、TiO2スパッタ膜17を形成する。次いで、離型フィルムを正走行させ、同様に上記のプラズマCVDと上記のスパッタリングを繰り返して、(最上層側)…TiO2スパッタ膜17/SiOxCVD膜/TiO2スパッタ膜17/離型フィルムなる積層体を形成し、この積層体を前記ハードコート層13/接着剤層12/透明プラスチック基材フィルム11からな層構成の積層フィルムのハードコート層13側に積層して、剥離フィルムを剥離して、真空処理による薄膜を転写してもよい。
【0060】
プラズマ処理等の前処理、或いはプラズマCVDによるCF4、SiF4等のガスを用いた後処理は、前記参考例1に準じた方法により適宜施すことができる。
【0061】
〔参考例3〕
ガスバリアーフィルムの製造例
図9に本参考例3のガスバリアーフィルムの層構成を示す。図9に示すガスバリアーフィルムは、透明プラスチック基材フィルム11上にプラズマCVDによりSiOXCVD膜14が形成されたものである。
【0062】
図9のガスバリアーフィルムの製造方法は次のようにして行われる。透明プラスチック基材フィルム11を図1の多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適した値に調整し、プラズマ処理に適した走行速度でもう一方のロール4に巻き取らせる。この透明プラスチック基材フィルム11の走行中に、該フィルムの表面にプラズマ処理による前処理を施して密着性を付与する。次いでこのフィルムを逆走行させて、プラズマCVDによりSiOXを成膜してSiOXCVD膜14を形成する。さらに、このフィルムを正走行させて、プラズマ処理による後処理を行う。
【0063】
図9のガスバリアーフィルムの製造方法の別法としては、前記のガスバリアーフィルムの製造方法において、プラズマ処理による前処理、プラズマCVD、プラズマ処理による後処理のゾーンを走行ラインに並べ、それらのゾーンを区画することにより、透明プラスチック基材フィルム11を逆走行することなく、一回の正走行のみで、全ての真空処理を行うことができる。
【0064】
〔実施例6〕
透明導電性フィルムの製造例その1(タッチパネル用)
図10に本実施例6のタッチパネル等に使用される透明導電性フィルムの層構成を示す。図10に示す透明導電性フィルムは、透明プラスチック基材フィルム11の一方の面にITOのスパッタリングによりITOスパッタ膜19が形成され、透明プラスチック基材フィルム11の他方の面に接着剤層12を介してハードコート層13が形成されたものである。このITOスパッタ膜19により帯電防止性が付与される。
【0065】
図10の透明導電性フィルムの製造方法は次のようにして行われる。透明プラスチック基材フィルム11上に接着剤を塗布して接着剤層12を形成し、次いでその接着剤層12上に前記参考例1で説明した防眩性が付与されるハードコート層用樹脂組成物を塗布してハードコート層13を形成する。次に、この積層フィルムを図1の多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適した値に調整し、もう一方のロール4にプラズマ処理に適した走行速度で巻き取る。この積層フィルムの走行中に、該フィルムの透明プラスチック基材フィルム11側(ハードコート層13側とは反対側)にプラズマ処理による前処理をして密着性を付与する。次いで、真空チャンバー1内をスパッタリングに適した真空度に調整し、該積層フィルムをスパッタリングに適した走行速度で逆走行させて、前記のプラズマ処理面にITOのスパッタリングによりITOスパッタ膜19を形成する。
【0066】
〔参考例4〕
透明導電性フィルムの製造例その2(タッチパネル用)
図11は反射防止性を付与した本参考例4の透明導電性フィルムの層構成を示す。図11において、SiOXCVD膜14/ハードコート層13/接着剤層12/透明プラスチック基材フィルム11からなる積層フィルムは、前記参考例1の反射防止フィルムと同一であり、図11の積層フィルムは、前記参考例1の反射防止フィルムの基材の裏面にプライマー層20と導電性を有するITOスパッタ膜19が形成されて帯電防止層となっている。
【0067】
本参考例4の反射防止性を付与した透明導電性フィルム製造方法は、前記参考例1と同一の工程で、図1に示す多重真空処理装置を用いSiOXCVD膜14/ハードコート層13/接着剤層12/透明プラスチック基材フィルム1からなる層構成の反射防止性を有する積層フィルムを製造する。次いでこの積層フィルムの透明プラスチック基材フィルム11側に、プライマーを塗布して接着性が付与されたプライマー層20を形成する。次いで、この積層フィルムを再び図1に示す多重真空処理装置内のロール3にセットしロール4に巻き取る。この積層フィルムの走行過程において、前記プライマー層20側にITOのスパッタリングを行い、ITOスパッタ膜19を形成する。
【0068】
〔実施例7〕
透明導電性フィルムの製造例その3(タッチパネル用)
図12に本実施例7の透明導電性フィルムの層構成を示す。本実施例7の透明導電性フィルムは、前記参考例4の透明導電性フィルムの層構成において、プライマー層20を省略したものである。
【0069】
本実施例7の反射防止性を付与した透明導電性フィルムの製造方法は、前記参考例1と同一の製造方法で、図1に示す多重真空処理装置を用いSiOXCVD膜14(低屈折率層)/ハードコート層13(高屈折率層)/接着剤層12/透明プラスチック基材フィルム11からなる反射防止性を有する積層フィルムを得る。ついで、この積層フィルムを図1の多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内の真空度をプラズマ処理に適した値に調整し、もう一方のロール4にプラズマ処理に適した走行速度で巻き取る。この積層フィルムの走行中に、該フィルムの透明プラスチック基材フィルム11側(SiOXCVD膜14側とは反対側)に対してプラズマ処理による前処理をして密着性を付与する。次いでスパッタリングに適した真空度に調整し、該積層フィルムをスパッタリングに適した走行速度で逆走行させて、前記のプラズマ処理面にITOのスパッタリングによりITOスパッタ膜19を形成する。
【0070】
〔実施例8〕
フィルム液晶基板の製造例その1
図13に本実施例8のフィルム液晶基板の層構成を示す。本実施例8のフィルム液晶基板は、透明プラスチック基材フィルム11上にガスバリアー層としてSiOXCVD膜14を形成し、そのSiOXCVD膜14上に保護のためにハードコート層13を形成し、一方、透明プラスチック基材フィルム11の裏面にプライマー層20を介して導電性のITOスパッタ膜19を設けたものである。本発明におけるハードコート層13は、防眩性を付与する目的でその表面には微細な凹凸が形成されていてもよく、或いはこのハードコート層13中に防眩性を発揮することができるビーズ等の微粒子が混入されていてもよい。
【0071】
本実施例8のフィルム液晶基板の製造方法は、透明プラスチック基材フィルム11上にプライマーを塗布してプライマー層20を形成する。得られた積層フィルムを図1の多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内をプラズマCVDに適した真空度に調整し、もう一方のロール4にプラズマ処理に適した走行速度で巻き取る。この積層フィルムの走行中に、該積層フィルムのプライマー層20側とは反対側の透明プラスチック基材フィルム11の面に対してプラズマCVDによりSiOxCVD膜14を形成する。
【0072】
次いで、スパッタリングに適するように真空チャンバー1内の真空度を調整し、積層フィルムをスパッタリングに適した走行速度で逆走行させてITOをスパッタリングしてITOスパッタ膜19を形成する。次いで、真空チャンバー1内をプラズマ処理に適した真空度に調整し、積層フィルムをプラズマ処理に適した走行速度で正走行させて前記のSiOxCVD膜14に対してプラズマ処理をして接着性を向上させる。真空チャンバー1から処理された積層フィルムを取出し、この積層フィルムのSiOxCVD膜14上に、前記参考例1に示したハードコート用樹脂組成物を塗布し、硬化させてハードコート層13を成形する。
【0073】
〔実施例9〕
フィルム液晶基板の製造例その2
図14に本実施例9のフィルム液晶基板の層構成を示す。本実施例9のフィルム液晶基板は、前記実施例8のフィルム液晶基板の層構成においてプライマー層20を除き、その位置にSiOxCVD膜14を設けたのもである。本実施例9のフィルム液晶基板は、ガスバリアー層としてのSiOxCVD膜14がプラスチック基材フィルム11の上下に2層形成されるので、ガスバリアー性がさらに強化され、且つITOスパッタ膜20に接触するSiOxCVD膜14はプライマー機能を持つ。
【0074】
本実施例9の反射防止性を付与した透明導電性フィルム製造方法は、透明プラスチック基材フィルム11を図1の多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内をプラズマCVDに適した真空度に調整し、もう一方のロール4にプラズマ処理に適した走行速度で巻き取る。この積層フィルムの走行中に、透明プラスチック基材フィルム11の一方の片面にプラズマCVDによりSiOxCVD膜14を形成し、同時或いは連続して他方の片面にさらにプラズマCVDによりSiOxCVD膜14を形成する。
【0075】
次いで、真空チャンバー1内の真空度をスパッタリングに適すように調整し、積層フィルムをスパッタリングに適した走行速度で逆走行させて、走行中にSiOxCVD膜14の一方にスパッタリングにより導電性膜としてのITOスパッタ膜19を形成する。次いで、真空チャンバー1からこの積層フィルムを取出し、もう一方のコーティングがなされていない方のSiOxCVD膜14の面に、防眩性を有するハードコート層樹脂組成物を塗布してハードコート層13を形成する。このハードコート層13に防眩性を付与するには、ハードコート層13が形成された表面に微細な凹凸を有する賦型板により押圧するか、或いは微細なビーズ等の粒子をバインダー樹脂中に分散させることによって達成される。
【0076】
〔実施例10〕
熱線反射フィルムの製造例その1
図15に本実施例10の熱線反射フィルムの層構成を示す。本実施例10の熱線反射フィルムは、透明プラスチック基材フィルム11上に特に熱線を反射することができる熱線反射層21を設けたものである。
【0077】
本実施例10の熱線反射フィルムの製造方法は、次のように行われる。まず透明プラスチック基材フィルム11を、図1に示す多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内をプラズマ処理に適した真空度に調整し、もう一方のロール4にプラズマ処理に適した走行速度で巻き取る。この積層フィルムの走行中に、透明プラスチック基材フィルム11の一方の片面にプラズマ処理を行って、接着性を増大させる。次いで、真空チャンバー1内の真空度をスパッタリングに適した値に調整し、前記の透明プラスチック基材フィルム11をスパッタリングに適した走行速度で逆走行させてプラズマ処理された面上にPt、Au等の金属をスパッタリングして熱線反射層21を形成する。
【0078】
〔実施例11〕
熱線反射フィルムの製造例その2
図16に本実施例11の熱線反射フィルムの層構成を示す。本実施例11の熱線反射フィルムは、前記実施例10の熱線反射フィルム(図15参照)の熱線反射層21上に、保護のためにハードコート層を設けたものである。
【0079】
本実施例11の熱線反射フィルムの製造方法は、前記実施例10の製造方法により得られた熱線反射フィルムに対して、その熱線反射層21上にさらに防眩性を有する保護層としてハードコート用樹脂組成物を塗布し、硬化させてハードコート層13を形成したものである。このハードコート層13に防眩性を付与するには、ハードコート層13が形成された表面に微細な凹凸を有する賦型板により押圧するか、或いは微細なビーズ等の粒子をバインダー樹脂中に分散させることによって達成される。
【0080】
〔実施例12〕
誘電体ミラーの製造例その1
図17に本実施例12の誘電体ミラーの層構成を示す。本実施例12の誘電体ミラーは、透明プラスチック基材フィルム11上に、接着剤層12を形成し、次いで前記参考例1に説明した防眩性を有するハードコート層13を設けた積層フィルム上に、高屈折率層としてTiO2スパッタ膜17を設け、さらに、SiOxCVD膜14(低屈折率層)とTiO2スパッタ膜17(高屈折率層)の組合せからなる層を複数回繰り返したものである。このような層構成とすることにより、前記した反射防止フィルムとは逆の屈折率の組合せとなるので、ミラー効果を生ずる。
【0081】
本実施例12の誘電体ミラーは次のようにして製造される。透明プラスチック基材フィルム11上に接着剤を塗布して接着剤層12を形成し、次いでハードコート層用樹脂を塗布し、硬化させて防眩性を有するハードコート層13を形成する。上記のようにして得られた積層フィルムを図1に示す多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内をプラズマ処理に適した真空度に調整し、もう一方のロール4にプラズマ処理に適した走行速度で巻き取る。この積層フィルムの走行中に、該積層フィルムのハードコート層13に対してプラズマ処理を行い、接着性を増大させる。
【0082】
次いで、真空チャンバー1内の真空度をスパッタリングに適した値に調整し、前記積層フィルムをスパッタリングに適した走行速度で逆走行させてその走行中にTiO2をスパッタリングしてTiO2スパッタ膜17を形成する。次いで、真空チャンバー1内の真空度をプラズマCVDに適した真空度に調整して、前記工程で処理された積層フィルムをプラズマ処理に適した走行速度で正走行させてその走行中にSiOxのプラズマCVD処理を行いSiOxCVD膜14を形成する。引き続き、再度、スパッタリングに適した真空度に調整し、積層フィルムをスパッタリングに適した走行速度で逆走行し、スパッタリングによるTiO2スパッタ膜17を形成する。前記のSiOxCVD膜14(低屈折率層)とTiO2スパッタ膜17(高屈折率層)の形成処理を複数回行うことにより、本実施例12の誘電ミラーを得る。
【0083】
さらに、TiO2スパッタ膜17(高屈折率層)の表面に対して、前記参考例1で行った、プラズマCVDによるCF4、SiF4等のガスを用いた後処理を適用してもよい。なお、本実施例12の誘電体ミラーにおける高屈折率層の材料として上記のTiO2に代えて、ITO、ZrO2、CeO2、HfO2、La2O3等の材料を使用してもよい。また本実施例12の層構成の誘電体ミラーは、そのSiOxCVD膜14(低屈折率層)とTiO2スパッタ膜17(高屈折率層)の膜厚を調整することによって、干渉フィルターとすることもできる。
【0084】
〔実施例13〕
誘電体ミラーの製造例その2
図18に本実施例13の誘電体ミラーの層構成を示す。本実施例13の誘電体ミラーは、透明プラスチック基材フィルム11上に接着剤層12を介してハードコート層13が形成され、さらにその上に、順次SiOxCVD膜14と、Agスパッタ膜22と、SiOxCVD膜14を形成したものである。
【0085】
本実施例13の誘電体ミラーは次のようにして製造される。透明プラスチック基材フィルム11上に接着剤を塗布して接着剤層12を形成し、次いでハードコート層用樹脂を塗布し、硬化させて防眩性を有するハードコート層13を形成する。上記のようにして得られた積層フィルムを図1に示す多重真空処理装置の真空チャンバー1内のロール3にセットした後、真空チャンバー1内をプラズマ処理に適した真空度に調整し、プラズマ処理に適した走行速度でもう一方のロール4に巻き取る。
【0086】
この積層フィルムの走行中に、該積層フィルムのハードコート層13に対してプラズマ処理を行い、接着性を増大させ、同じ走行中においてSiOxのプラズマCVD処理を行いSiOxCVD膜14を形成する。次いで、真空チャンバー1内の真空度をスパッタリングに適した値に調整し、前記の積層フィルムをスパッタリングに適した走行速度で逆走行させ、その走行中にAgをスパッタリングしてAgスパッタ膜22を形成する。次いで、真空チャンバー1内の真空度をプラズマCVDに適した真空度に調整して、前記工程で処理された積層フィルムをプラズマ処理に適した走行速度で正走行させてその走行中にSiOxのプラズマCVD処理を行いSiOxCVD膜14を形成する。
【0087】
【発明の効果】
本発明の多重真空処理方法によれば、同一の真空チャンバー内において、ある真空処理が行われた後にさらに真空処理が必要とされる場合、継続して真空処理を行うのに、真空チャンバー内を大気圧に戻すことなく別の真空処理を行うことができる。したがって、本発明の多重真空処理では、その処理中に、中間段階の真空処理面が空気に晒されて表面の活性種が失活したり、或いは表面が酸化されたりして積層される界面が影響を受けることが無いので、品質の一定した積層物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の多重真空処理方法に用いられる多重真空処理装置の1構成例の模式図である。
【図2】
参考例1の反射防止フィルムの層構成を示す。
【図3】
実施例1の反射防止フィルムの層構成を示す。
【図4】
参考例2の反射防止フィルムの層構成を示す。
【図5】
実施例2の反射防止フィルムの層構成を示す。
【図6】
実施例3の反射防止フィルムの層構成を示す。
【図7】
実施例4の反射防止フィルムの層構成を示す。
【図8】
実施例5の反射防止フィルムの層構成を示す。
【図9】
参考例3のガスバリアーフィルムの層構成を示す。
【図10】
実施例6のタッチパネル等に使用される透明導電性フィルムの層構成を示す。
【図11】
参考例4の反射防止性を付与した透明導電性フィルムの層構成を示す。
【図12】
実施例7の透明導電性フィルムの層構成を示す。
【図13】
実施例8のフィルム液晶基板の層構成を示す。
【図14】
実施例9のフィルム液晶基板の層構成を示す。
【図15】
実施例10の熱線反射フィルムの層構成を示す。
【図16】
実施例11の熱線反射フィルムの層構成を示す。
【図17】
実施例12の誘電体ミラーの層構成を示す。
【図18】
実施例13の誘電体ミラーの層構成を示す。
【図19】
実施例及び参考例の各真空処理に共通な真空処理パスを示す概念図である。
【符号の説明】
1 真空チャンバー
2 ウェッブ
3,4 ロール
5,6,7 真空処理機構
11 透明プラスチック基材フィルム
12 接着剤層
13 ハードコート層
14 SiOxCVD膜
15 SiO2スパッタ膜
16 高屈折率樹脂層
17 TiO2スパッタ膜
18 機能性超微粒子層
19 ITOスパッタ膜
20 プライマー層
21 熱線反射層
22 Agスパッタ膜
101,105 巻き取り巻き出しゾーン
102 ウエッブ
103 スパッタゾーン
104 プラズマゾーン
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-29 
出願番号 特願平6-337808
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ▲吉▼澤 英一  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 船岡 嘉彦
大熊 幸治
登録日 2003-05-02 
登録番号 特許第3425248号(P3425248)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 多重真空処理方法、機能性フィルムの製造方法及び機能性フィルム  
代理人 光来出 良彦  
代理人 光来出 良彦  

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