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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G03G
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G03G
管理番号 1128928
異議申立番号 異議2003-73717  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-07-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-10-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3441992号「画像形成装置」の請求項1、2、10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 I 手続の経緯
本件特許第3441992号の請求項1ないし10に係る発明は、平成10年12月28日に特許出願され、平成15年6月20日に設定登録がなされ、その後、江原隆彦より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年7月11日に訂正請求がなされたものである。

II 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求は、本件特許明細書を訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、訂正の内容は次のとおりである。
・訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1、2、10を削除する。
・訂正事項b
同請求項3を請求項1に繰り上げ、
「像担持体上に形成されたトナー像を記録材に静電的に転写する画像形成装置において、
前記像担持体上のトナー像を記録材の1面目に転写後、前記1面目とは反対側の2面目に前記像担持体上のトナー像を転写可能であり」とあるのを、
「像担持体上に形成されたトナー像を静電的に転写し、トナー像転写後、前記記録材上のトナー像を前記記録材に定着する定着手段を有し、前記像担持体上のトナー像を記録材の1面目に転写後、前記1面目とは反対側の2面目に前記像担持体上のトナー像を転写可能であり、
記録材の1面目にトナー像を定着後、前記像担持体上のトナー像を記録材の前記2面目に転写可能である画像形成装置において」に訂正する。
・訂正事項c
同請求項4を請求項2に繰り上げ、「請求項3の画像形成装置」とあるのを「請求項1の画像形成装置。」に訂正する。
・訂正事項d
同請求項5を請求項3に繰り上げ、「請求項3または4の画像形成装置」とあるのを「請求項1または2の画像形成装置」に訂正する。
・訂正事項e
同請求項6を請求項4に繰り上げ、「請求項1〜5のいずれかの項に記載の画像形成装置」とあるのを「請求項1〜3のいずれかの項に記載の画像形成装置」に訂正する。
・訂正事項f
同請求項7を請求項5に繰り上げ、「請求項6の画像形成装置」とあるのを「請求項4の画像形成装置」に訂正する。
・訂正事項g
同請求項8を請求項6に繰り上げ、「請求項6または7の画像形成装置。」とあるのを「請求項4または5の画像形成装置」に訂正する。
・訂正事項h
同請求項9を請求項7に繰り上げ、「請求項1〜8のいずれかの項に記載の画像形成装置。」とあるのを「請求項1〜6のいずれかの項に記載の画像形成装置」に訂正する。
・訂正事項i
明細書の段落【0024】に記載の「第1の本発明によれば、・・・。本発明の一実施態様によれば、前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記1面目のトナー像よりも前記2面目のトナー像の方が小さくされる。」を、「本発明によれば、像担持体上に形成されたトナー像を静電的に転写し、トナー像転写後、前記像担持体上のトナー像を前記記録材に定着する定着手段を有し、前記像担持体上のトナー像を記録材の1面目に転写後、前記1面目とは反対側の2面目に前記像担持体上のトナー像を転写可能であり、記録材の1面目にトナー像を定着後、前記像担持体上のトナー像を記録材の前記2面目に転写可能である画像形成装置において、前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記1面目のトナー像と前記2面目のトナー像とで異なり、前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量は、記録材の含有水分量に応じて可変であることを特徴とする画像形成装置が提供される。本発明の一実施態様によれば、前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記1面目のトナー像よりも前記2面目のトナー像の方が小さくされ、又、他の実施態様によれば、前記像担持体上のトナー像を記録材に静電的に転写する転写手段を有し、トナー像転写時、前記転写手段を流れる電流は、前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量に応じて可変とされる。」と訂正する。
・訂正事項j
明細書の段落【0025】に記載の「第2の本発明によれば、像担持体上に形成されたトナー像を記録材に静電的に転写する画像形成装置において、・・・前記転写手段を流れる電流は、前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量に応じて可変とされる。」を削除する。
・訂正事項k
明細書の段落【0027】に記載の「またトナー像転写後、記録材上のトナー像を記録材に定着する定着手段を有し、記録材の前記1面目にトナー像を定着後、前記像担持体上のトナー像を記録材の前記2面目に転写可能である。」を削除する。
・訂正事項l
明細書の段落【0082】に記載の「以上説明したように、本発明によれば、像担持体上に形成される記録材の1面目用、2面目用のトナー像の単位面積あたりのトナー重量の最大値を、記録材の1面目と2面目とで異なるようにし、更に、トナー像転写時、転写手段を流れる電流は、像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量に応じて可変であるか、又は、・・・」において、「トナー像転写時、転写手段を流れる電流は、像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量に応じて可変であるか、又は、」の文を削除する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
・訂正事項aについて
請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
・訂正事項bについて
請求項3を請求項1に繰り上げたのは、訂正事項aにより請求項1、2が削除されたことに伴って項番号を整理するものであるから、不明瞭な記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
訂正後の請求項1に係る発明は、訂正前の請求項3に記載の「像担持体上に形成されたトナー像を記録材に静電的に転写する画像形成装置において、前記像担持体上のトナー像を記録材の1面目に転写後、前記1面目とは反対側の2面目に前記像担持体上のトナー像を転写可能であり」と、画像形成装置がトナー像を記録材の1面目に転写後2面目に転写可能であるのを、訂正前の請求項10に記載された、1面目に転写し転写したトナー像を定着した後に2面目にトナー像を転写するという事項によって限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
・訂正事項c〜hについて
訂正事項aにより請求項1、2が削除されたことに伴って項番号を整理するものであるから、不明瞭な記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
・訂正事項i〜lについて
訂正事項a〜hによる特許請求の範囲の減縮の伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との間に生じた不整合を正すものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
そして、上記訂正事項a〜lは、いずれも願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3 独立特許要件
(1)訂正後の発明
上記訂正事項b〜hは、特許異議の申立てがされていない訂正前の請求項3〜9についての訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正明細書の請求項1〜7に係る発明が出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうかを検討する。
訂正明細書の請求項1〜7に係る発明は、訂正明細書の請求項1〜7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 像担持体上に形成されたトナー像を静電的に転写し、トナー像転写後、前記像担持体上のトナー像を前記記録材に定着する定着手段を有し、前記像担持体上のトナー像を記録材の1面目に転写後、前記1面目とは反対側の2面目に前記像担持体上のトナー像を転写可能であり、
記録材の1面目にトナー像を定着後、前記像担持体上のトナー像を記録材の前記2面目に転写可能である画像形成装置において、
前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記1面目のトナー像と前記2面目のトナー像とで異なり、
前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量は、記録材の含有水分量に応じて可変であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】 前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記1面目のトナー像よりも前記2面目のトナー像の方が小さい請求項1の画像形成装置。
【請求項3】 前記像担持体上のトナー像を記録材に静電的に転写する転写手段を有し、トナー像転写時、前記転写手段を流れる電流は、前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量に応じて可変である請求項1または2の画像形成装置。
【請求項4】 前記像担持体上のトナー像を記録材担持体に担持された記録材に転写する工程を繰り返して、記録材上に複数色のトナー像を形成する請求項1〜3のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項5】 前記像担持体上に形成される前記複数色のトナー像のうち少なくとも1色のトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記1面目のトナー像と前記2面目のトナー像とで異なる請求項4の画像形成装置。
【請求項6】 前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記複数色のトナー像の単位面積あたりの重量の最大値の合計である請求項4または5の画像形成装置。
【請求項7】 前記像担持体は複数色のトナー像をそれぞれ担持するために複数設けられる請求項1〜6のいずれかの項に記載の画像形成装置。」

(2)甲号各証の記載事項
特許異議申立人は、甲第1号証(特開平7-160078号公報)、甲第2号証(特開平6-102777号公報)を提出しているので検討する。
甲第1号証には次の事項が記載されている。
(1a)「像担持体を均一に帯電する帯電手段と、前記像担持体を像露光することにより静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像に帯電トナーを付着させトナー像として現像する現像手段と、前記像担持体上のトナー像を転写材に静電転写する転写手段と、転写材上のトナー像を加熱定着する定着手段とを備え、帯電から定着に至る画像形成プロセスにより1回目の画像形成が完了した転写材に対して前記画像形成プロセスによる2回目以降の画像形成を行うことにより、1枚の転写材に対して多重または両面の画像形成を行う画像形成装置において、
画像形成プロセスに基づく前記像担持体上の潜像コントラスト及び現像コントラストのうちの少なくとも一方を、1回目の画像形成プロセスと2回目以降の画像形成プロセスとで変更する、
ことを特徴とする画像形成装置。」(特許請求の範囲、請求項1)
(1b)「ところで、近時、転写材に対して多重あるいは両面の画像形成を自動的に行う画像形成装置が使用されている。・・・
しかしながら、上述の多重または両面画像形成(プリント)を転写ローラ方式の画像形成装置で行うと、1回目のプリントは良好でも、2回目に転写不良を発生することが多いことが確認された。」(段落【0004】、【0005】)
(1c)「以上構成に基づき、潜像コントラストと現像コントラストとのうちの少なくとも一方を変更するものは、2回目の感光ドラム上のトナーの付着量を少なくする、または暗部電位とトナー像電位の差を小さくすることにより、2回目の転写バイアスを特別に強くすることなしに、2回目の転写不良(特に爆発飛び散り)を防止することができる。」(段落【0016】)
(1d)「感光ドラム1上のトナー像は、感光ドラム1と転写ローラ6との間の転写ニップ部Nにて転写材Pに転写される。・・・つづいて、転写材Pは、感光ドラム1から分離され、ガイドG3を介して定着装置9に搬送され、未定着であったトナー像がここで加熱加圧されて溶融固着される。一方、・・・。トナー像定着後の転写材Pは、その後の処理が、プリントが片面か、多重か、両面かによって、次の3つにわかれる。」(段落【0024】)
(1e)「第3に、両面プリント場合は、多重プリントの場合とほぼ同じであり、異なる点は、転写材Pが図示の位置にあるフラッパK2により、ガイドG8に導かれて一旦停留され、所定のタイミングで搬送ローラR8によって再給紙され、搬送ローラR7、ガイドG7に搬送される点である。これにより2回目のプリント時には、転写材Pが表裏反転されており、第2面に対してプリントが行われる。」(段落【0027】)
(1f)「以下、さらに具体的に説明する。実施例1では、1回目の画像形成プロセスと2回目の画像形成プロセスとにおいて、現像プロセスでの現像装置5による現像バイアスVDC2 を変更することを特徴とする。」(段落【0035】)
(1g)「このような制御を行うことで1回目に比べて2回目では、感光ドラム1上のトナーの付着量(のり量)を少なくすることができる。この結果、2回目において転写バイアスVTを強めることなく、トナーの爆発飛び散り等の転写不良が発生することがない。このとき転写バイアスVTは強くしていないため、ドラムゴーストの発生もない。」(段落【0037】)

甲第2号証には次の事項が記載されている。
(2a)「帯電電位に応じてトナー像を形成する像担持体と、電界によって前記トナー像を転写材に転写させる転写手段と、前記トナー像のトナー濃度を測定する手段とを備えた画像形成装置において、像担持体上のトナー濃度に応じて転写電界を制御する手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。」(特許請求の範囲、請求項1)、
(2b)「「図26」は像担持体上のトナー像の濃度と最適電界との関係を示すグラフであって、・・・。図示のように、濃度が小さい場合には小さい転写電界でよく、濃度が大きい場合には大きい転写電界が必要なことが判る。」(段落【0007】)
(2c)「「図19」、「図20」は本発明の実施態様を示す画像形成装置の概略図であって、矢印A方向に回転走行する像担持体3ー3表面に現像装置4ー1から供給されるトナーによってトナー像が形成され、このトナー像が、像担持体と転写ドラム3ー7が当接する転写部位に到達すると、転写ブラシ3ー21によって印加される転写バイアスの作用で像担持体側のトナー像は、転写ドラム上に載置された転写材(不図示)に転写される。」(段落【0090】)
(2d)「「図20」に示す様に、現像器4ー1Cは現像電流測定回路102を介して現像バイアス電源103に接続されている。また、前記現像電流測定回路の出力はコントローラ104に入力される。」(段落【0093】)
(2e)「現像電流測定回路102で求められたトナーの電荷量QTと、トナー量測定回路101で得られたトナー量Mがそれぞれコントローラ104に入力され、ここでQT/Mが算出されてトリボが求められる。「図23」は転写電源の出力を制御するため、予め転写制御回路106に記憶されている最適転写電流とトリボの関係を実験的に求めたグラフである。コントローラ104によって求められたトリボが転写制御回路106に入力され、ここで最適転写電流が決定され、これによって転写電源107が発動する。」(段落【0102】、【0103】)
(2f)「この装置によって現像電流とトナー反射濃度からトナーのトリボ値を求め、これによって転写電流を制御することによって、環境温湿度にかかわらず安定して良好な画像を得ることができた。」(段落【108】)

(3)対比・判断
・請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載の画像形成装置の発明(記載事項(1a)参照)を対比すると、
後者の「前記像担持体上のトナー像を転写材に静電転写する転写手段と、転写材上のトナー像を加熱定着する定着手段とを備え」ということは、トナー像を転写材(本件請求項1に係る発明の記録材に相当する。)を転写して定着することであるから、前者の「像担持体上に形成されたトナー像を静電的に転写し、トナー像転写後、前記像担持体上のトナー像を前記記録材に定着する定着手段を有し」ということに対応し、
また、後者の「前記画像形成プロセスによる2回目以降の画像形成を行うことにより、1枚の転写材に対して多重または両面の画像形成を行うこと」において「両面の画像形成を行うこと」は、前者の「トナー像を記録材の1面目に転写後、前記1面目とは反対側の2面目に前記像担持体上のトナー像を転写可能であり」ということにとに対応することであるといえる。
そうすると、両者は、「像担持体上に形成されたトナー像を静電的に転写し、トナー像転写後、前記像担持体上のトナー像を前記記録材に定着する定着手段を有し、前記像担持体上のトナー像を記録材の1面目に転写後、前記1面目とは反対側の2面目に前記像担持体上のトナー像を転写可能であり、
記録材の1面目にトナー像を定着後、前記像担持体上のトナー像を記録材の前記2面目に転写可能である画像形成装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
・相違点
1面目と2面目の画像形成が、前者では、「像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、1面目のトナー像と2面目のトナー像とで異なり、像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量は、記録材の含有水分量に応じて可変である」のに対し、後者では、「潜像コントラスト及び現像コントラストのうちの少なくとも一方を、1回目の画像形成プロセスと2回目以降の画像形成プロセスとで変更する」ものである点。
上記相違点について検討すると、甲第1号証には、「感光ドラム上のトナーの付着量」に関する記載〔(1c)、(1g)〕があるが、これらは潜像コントラストと現像コントラストの少なくとも一方の変更により、2回目の感光ドラム上のトナーの付着量を少なくできることを示すに止まるものであり、画像形成装置〔(1a)、(1b)〕において「感光ドラム上のトナーの付着量」が記録材の含有水分量に応じて可変にすることを示唆するものではない。
また、甲第2号証には、画像形成装置〔(2a)〕において感光体上のトナー像の濃度に応じて転写電流を制御すること〔(2b)、(2e)、(2f)〕が記載されているが、感光体上のトナー像の濃度が、記録材の含有水分量に応じて可変であるようにすることについては全く記載されておらず、示唆もない。
そして、本件請求項1に係る発明は、前記した構成の採用により記録材の1面目、2面目とも高品質な両面画像を得ることができるという効果が奏されるものである。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

・請求項2〜7に係る発明について
訂正明細書の請求項2〜7に係る発明は、訂正明細書の請求項1に係る発明の構成をすべて引用してさらに限定を加えるものであるから、上記請求項1に係る発明についてで述べたのと同様な理由により、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
また、他に訂正明細書の請求項1〜7に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、訂正明細書の請求項1〜7に係る発明は、出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する第126条第2項から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III 特許異議申立についての判断
訂正前の請求項1、2、10に係る発明は訂正の結果削除され、特許異議の申立ての対象が存在しないものとなった。
してみると、この特許異議の申立ては不適法な申立てであって、その補正をすることができないものであるので、特許法第120条の6第1項で準用する第135条の規定によって却下すべきものである。

IV むすび
特許異議申立は、不適法な申立てであって、その補正をできないものであるので、特許法第120条の6第1項で準用する第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像形成装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】像担持体上に形成されたトナー像を記録材に静電的に転写し、トナー像転写後、前記記録材上のトナー像を前記記録材に定着する定着手段を有し、前記像担持体上のトナー像を記録材の1面目に転写後、前記1面目とは反対側の2面目に前記像担持体上のトナー像を転写可能であり、
記録材の1面目にトナー像を定着後、前記像担持体上のトナー像を記録材の前記2面目に転写可能である画像形成装置において、
前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記1面目のトナー像と前記2面目のトナー像とで異なり、
前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量は、記録材の含有水分量に応じて可変であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記1面目のトナー像よりも前記2面目のトナー像の方が小さい請求項1の画像形成装置。
【請求項3】前記像担持体上のトナー像を記録材に静電的に転写する転写手段を有し、トナー像転写時、前記転写手段を流れる電流は、前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量に応じて可変である請求項1または2の画像形成装置。
【請求項4】前記像担持体上のトナー像を記録材担持体に担持された記録材に転写する工程を繰り返して、記録材上に複数色のトナー像を形成する請求項1〜3のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項5】前記像担持体上に形成される前記複数色のトナー像のうち少なくとも1色のトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記1面目のトナー像と前記2面目のトナー像とで異なる請求項4の画像形成装置。
【請求項6】前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記複数色のトナー像の単位面積あたりの重量の最大値の合計である請求項4または5の画像形成装置。
【請求項7】前記像担持体は複数色のトナー像をそれぞれ担持するために複数設けられる請求項1〜6のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式を利用して記録材上に画像を形成し、ハードコピーを得る、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数の画像形成部を備え、各画像形成部でそれぞれ色の異なるトナー像を形成し、そのトナー像を同一記録材上に順次重ね合わせて転写し、記録材上にカラー画像を形成する画像形成装置が種々提案されている。
【0003】
このような画像形成装置のなかで、無端状の記録材担持体を用いた多色電子写真方式のカラー電子写真記録装置が高速記録に用いられている。このカラー電子写真記録装置の一例を図1に基づいて説明する。
【0004】
図1に示すように、装置内には、第1、第2、第3、第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdが並設され、各画像形成部Pa〜Pdで、潜像形成、現像、転写のプロセスを経て各々異なった色のトナー像が形成される。
【0005】
画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ専用の像担持体、本例では電子写真感光ドラム3a、3b、3c、3dを具備し、各感光ドラム3a、3b、3c、3d上に各色のトナー像が形成される。各感光ドラム3a、3b、3c、3dに隣接して、記録材担持体の転写ベルト130が設置され、感光ドラム3a、3b、3c、3d上に形成された各色のトナー像が、転写ベルト130上に担持して搬送される記録材P上に重ね合わせて転写される。
【0006】
各色のトナー像が転写された記録材Pは、定着装置9で加熱および加圧によりトナー像を定着した後、カラーの記録画像として装置外に排出される。
【0007】
各感光ドラム3a、3b、3c、3dの外周には、それぞれ露光ランプ111a、111b、111c、111d、ドラム帯電器2a、2b、2c、2d、電位センサー113a、113b、113c、113d、現像器1a、1b、1c、1d、転写帯電器24a、24b、24c、24d、およびクリーナ4a、4b、4c、4dが設けられ、装置の上方にはさらに図示しない光源装置およびポリゴンミラー117が設置されている。
【0008】
光源装置から発せられたレーザー光をポリゴンミラー117で回転して走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、fθレンズにより各感光ドラム3a、3b、3c、3dの母線方向に集光して露光することにより、各感光ドラム3a、3b、3c、3d上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。
【0009】
現像器1a、1b、1c、1dには、現像剤としてそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのトナーが、図示しない供給装置により所定量充填されている。現像器1a、1b、1c、1dは、それぞれ感光ドラム3a、3b、3c、3d上の潜像を現像して、シアントナー像、マゼンタトナー像、イエロートナー像、ブラックトナー像として可視化する。
【0010】
記録材Pは、記録材カセット10に収容されている。記録材Pはそこから複数の搬送ローラおよびレジストローラ12を経て転写ベルト130上に供給され、転写ベルト130による搬送で感光ドラム3a、3b、3c、3dと対向した転写部に順次送られる。
【0011】
転写ベルト130は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)やポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂などの誘電体樹脂のシートからなっており、その両端部を互いに重ね合わせて接合し、エンドレス形状にしたものか、あるいは継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが用いられている。
【0012】
さて、駆動ローラ13によりこの転写ベルト130が回転し、所定の位置にあることが確認されると、記録材Pがレジストローラ12から転写ベルト130に送り出され、第1画像形成部Paの転写部へ向けて搬送される。これと同時に画像書き出し信号がオンとなり、それを基準としてあるタイミングで第1画像形成部Paの感光ドラム3aに対し画像形成を行う。
【0013】
そして感光ドラム3aの下側の転写部で転写帯電器24aが電界または電荷を付与することにより、感光ドラム3a上に形成された第1色目のトナー像が記録材P上に転写される。この転写により記録材Pは転写ベルト130上に静電吸着力でしっかりと担持され、第2画像形成部Pb以降に搬送される。
【0014】
転写帯電器24(24a〜24d)には、コロナ放電のような非接触帯電器、または導電性のブレード、ローラ、ブラシのような帯電部材を用いた接触帯電器を用いる。非接触帯電器では、オゾンが発生することや、空気を介して帯電するため大気の温湿度環境変動に弱く、画像が安定して形成されない等の問題がある。接触帯電器にはこのような問題がなく、オゾンレス、温湿度環境変動に強い、高画質等のメリットがある。本例では、転写帯電器24に接触式の帯電器を用いている。
【0015】
第2〜第4画像形成部Pb〜Pdでの画像形成、転写も、第1画像形成部Paと同様に行われる。ついで4色のトナー像を転写された記録材Pは、転写ベルト130の搬送方向下流部で分離帯電器32により除電して静電吸着力を減衰させることにより、転写ベルト130の末端から離脱する。通常、駆動ローラ13は安定な分離を行うために接地されている。また分離帯電器32は、トナー像が未定着の状態で記録材Pを除電するので、非接触帯電器が用いられている。
【0016】
転写ベルト130から離脱した記録材Pは、搬送部62により定着装置9へ搬送される。定着装置9は、定着ローラ51、加圧ローラ52と、その各々をクリーニングする耐熱性クリーニング部材54、55と、ローラ51、52内に設置された加熱ヒータ56、57と、定着ローラ51にジメチルシリコーンオイル等の離型剤オイルを塗布する塗布ローラ59と、そのオイル溜め53と、加圧ローラ52の表面の温度を検知して定着温度を制御するサーミスタ58とから構成されている。
【0017】
4色のトナー像を転写された記録材Pは、定着によりトナー像の混色および記録材Pへの固定が行われ、フルカラーのコピー画像に形成され、排紙トレイ63に排出される。
【0018】
転写が終了した感光ドラム3a、3b、3c、3dは、それぞのクリーナ4a、4b、4c、4dにより転写残りトナーをクリーニング、除去され、引き続きつぎの潜像の形成以下に備えられる。転写ベルト130上に残留したトナーおよびその他の異物は、転写ベルト130の表面にクリーニングウエブ(不織布)19を当接して、拭い取るようにしている。
【0019】
以上のような構成の画像形成装置で用いられている転写ベルト130は、前述のように、PETシートやポリフッ化ビニリデンシート、ポリウレタンシート等の誘電体シートであり、これらの体積抵抗は1013〜1018Ωcmのものが一般的である。
【0020】
また転写帯電器24(24a〜24d)は、転写に寄与する電流(転写電流)が適正電流で一定にすると画像が安定することから、記録材の種類(厚さ、材質等)や吸湿条件等により、体積抵抗が変化した場合にも、一定電流が得られるように定電流制御をすることが一般的である。
【0021】
転写電圧は数kV〜数10kVかかる。多重転写を行う画像形成装置では、各転写段階で前の転写時よりも大きな転写電圧が必要になり、特に最後の転写時は、最初の転写時と比べかなり高い転写電圧になる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の画像形成装置は、記録材Pとして紙を用い、これの両面に画像形成を行うと、2面目に転写した画像に点状の転写抜けが発生し、著しく画像の品質を損なう問題があった。
【0023】
したがって、本発明の目的は、記録材の2面目に画像を点状の転写抜けを生じることなく良好に転写して、記録材の両面とも高品質な画像を得ることを可能とした画像形成装置を提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明によれば、像担持体上に形成されたトナー像を記録材に静電的に転写し、トナー像転写後、前記記録材上のトナー像を前記記録材に定着する定着手段を有し、前記像担持体上のトナー像を記録材の1面目に転写後、前記1面目とは反対側の2面目に前記像担持体上のトナー像を転写可能であり、
記録材の1面目にトナー像を定着後、前記像担持体上のトナー像を記録材の前記2面目に転写可能である画像形成装置において、
前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記1面目のトナー像と前記2面目のトナー像とで異なり、
前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量は、記録材の含有水分量に応じて可変であることを特徴とする画像形成装置が提供される。本発明の一実施態様によれば、前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記1面目のトナー像よりも前記2面目のトナー像の方が小さくされ、又、他の実施態様によれば、前記像担持体上のトナー像を記録材に静電的に転写する転写手段を有し、トナー像転写時、前記転写手段を流れる電流は、前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量に応じて可変とされる。
【0025】
【0026】
本発明の一態様によれば、前記像担持体上のトナー像を記録材担持体に担持された記録材に転写する工程を繰り返して、記録材上に複数色のトナー像を形成する。前記像担持体上に形成される前記複数色のトナー像のうち少なくとも1色のトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記1面目のトナー像と前記2面目のトナー像とで異なる。前記像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量の最大値は、前記複数色のトナー像の単位面積あたりの重量の最大値の合計である。前記像担持体は複数色のトナー像をそれぞれ担持するために複数設けられる。
【0027】
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施例を図面に則して更に詳しく説明する。
【0029】
実施例1
図1は、本発明が適用可能な画像形成装置を示す構成図である。本画像形成装置の各部の構成および作用については、従来技術の項で既に説明したので、詳しい説明は省略する。
【0030】
本発明において、図1の転写ベルト130の誘電体シート素材としては、PET、ポリアセタール、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、シリコーン樹脂、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルスルホン、ポリサルフォン、芳香族ポリエステル、ポリエーテルイミド、芳香族ポリイミドなど、エンジニアリングプラスチックのフィルム形状シートが一般に使用される。
【0031】
本実施例では、転写ベルト130の素材として、機械特性、電気的特性および難燃性等の点から、ポリイミド樹脂を使用した。その体積抵抗率は1016Ωcm、厚さは100μmで、シームレスタイプである。
【0032】
転写帯電器を駆動する駆動手段と、記録材の幅を検知する検知手段とを備え、プロセススピードは100mm/秒である。
【0033】
接触式の転写帯電器24(24a〜24d)は、記録材搬送方向に対して直交する方向(スラスト方向)に延びる板状導電性ゴムの転写部材を有し、この転写部材は、転写ベルト130を介して感光ドラム3(3a〜3d)と接触するように押圧されている。この転写帯電器24により、転写部に搬送された記録材Pの裏面側からトナーと逆極性(本例ではプラス)の帯電がなされ、感光ドラム3上のトナー像が記録材Pの表面に静電転写される。本実施例では、転写帯電器24に流れる電流を定電流制御し、転写電流を10μAとした(コロナ帯電器の場合は、コロナ帯電器に流れる電流と、シールドに流れる電流との差が転写電流となる)。
【0034】
分離帯電器32は、転写ベルト130の最下流上方、すなわち転写ベルト130の駆動ローラ13の上方に配置され、放電ワイヤーを備えている。放電ワイヤーはスラスト方向に張設されており、放電ワイヤーの片側端部にスプリングを設けることにより、その張力を保っている。放電ワイヤーへの給電は、装置本体側コネクターより図示しない給電端子、給電ピンおよびスプリングを介して行われる。
【0035】
また駆動ローラ13は本体アースに接続され、放電ワイヤーの対向電極の機能を兼ねている。本実施例では、最終段の画像形成部Pdの転写帯電器24dと分離帯電部との距離が50mmであり、分離帯電器32に10kVppのACを印加した。
【0036】
さて、上記のような画像形成装置に使用される記録材(紙)は、保管時の温湿度によってその状態を著しく変化させる。本発明者らの検討により、包装開封直後の紙と、一度定着器で加熱されて水分が著しく減少した紙とでは、電気的な特性に大きな違いがあることが明らかとなった。すなわち紙は、その含有する水分量が減少すると、表裏面に保持できる電荷量に限界があることが分かった。
【0037】
図2は、記録材表面に外部から与えた面電荷密度と記録材表面の電位との相関図である。図2において、グラフCは記録材としてOHT(PETシート製、厚さ100μm)を用いたときの結果で、OHTでは、供給された電荷量に対して直線的に表面電位が上がっており、理想的なコンデンサーとしての役割を果たしている。またグラフDは開封直後の紙を用いたときの結果であり、これも、供給された電荷量に対して傾斜は低いが、表面電位がCのときと同様、直線的に上がっており、理想的である。
【0038】
一方、グラフAは、芳賀用紙店NPI上質紙(坪量128g/m2、厚さ120μm)を一度定着器を通して用いたときの結果、グラフBは、キヤノン製CLC用両面厚口用紙(坪量105g/m2、厚さ100μm)を同様に一度定着器を通して用いたときの結果である。これを見ると、グラフAの紙は450μC/m2近辺から、グラフBの紙は500μC/m2近辺から、それぞれ直線性を失っており、開封直後の紙(グラフD)あるいはOHT(グラフC)では見られない傾向である。
【0039】
これは、一度定着器を通ることにより紙中の水分が減少すると、ある値以上の電荷を紙の表面に供給したときに、紙中の繊維と繊維との微小な空隙で放電が起こって、紙の表裏面の電荷が相殺されるため、それ以上いくら電荷を供給しても紙の表裏面に電荷を蓄積できず、表面電位が上がらないのであると思われる。
【0040】
上記の画像形成装置においても、このような定着器を通った紙の2面目に画像形成すると、転写工程を経るうちにある程度以上電荷を供給したときに、紙の保持電荷量が限界に達して紙中放電が始まり、紙がトナーに対する保持力を急激に失い、従来技術の項で説明したように、記録材の2面目に点状の画像不良が発生する。
【0041】
図2によれば、一度定着器を通った紙が保持できる最大電荷量は、約500μC/m2である。
【0042】
ここで、画像形成装置において、単位面積あたりのトナーの最大乗り量を1色あたり1mg/cm2、トナー単位重量あたりの電荷量を30μC/gとすると、転写工程が1回終了する度に、300μC/m2のトナー電荷が紙上に付与される。これから、図2のグラフA、Bで示した紙に対して何色分のトナーが転写可能であるかというと、
300×χ≦500 ∴χ≦1.67
であり、最大でも約1.67色分しか転写できないことが分かる。
【0043】
一般に、カラー画像形成装置では、シアン、マゼンタ、イエローの3色を使用したブラック(黒)の再現が困難であること、トナー量を節約したいこと等の理由からUCR(Under Color Removal)を採用している。UCRは、具体的には、シアン、マゼンタ、イエローの共通部分(黒成分)をブラックで置き換え、シアン、マゼンタ、イエローからその分を差し引くというものである。UCRにより黒再現性の向上はもちろん、トナー量を大幅に節約することができる。
【0044】
機種にもよるが、通常、最大総量で2色分前後のトナー量で画像形成が行われる。本実施例でもUCRを採用しており、最大転写トナーの総量を2色分としている。しかし、それでも上記の1.67色分を上回っており、現状では、一度定着器を通った紙に再度転写を行うと、前述の点状の転写不良が発生してしまう。
【0045】
そこで、本発明者らの検討により、一度定着器を通った紙に再度転写する場合、つまり紙の2面目に転写する場合、感光ドラムにおける2面目用のトナー像のトナー量を少なくすることにより、上記の点状転写不良の発生を防止でき、良好な画像を得ることができることが分かった。以下、この方法について詳述する。
【0046】
図2に基づき、記録材の単位面積あたりの最大保持電荷量Qp(C/m2)を、記録材の種類と記録材の置かれている環境雰囲気を変数として与える関数Qp=Qp(s,k)の値とする。ただし、sは記録材の種類、kは環境雰囲気の絶対水分量(g/空気1kg)である。たとえば図2のグラフBで示す記録材では、Qpは約5×10-4C/m2である。
【0047】
また、トナー単位重量あたりの電荷量Qt(C/kg)を、環境雰囲気を変数として与える関数Qt=Qt(k)の値とし、UCR上限値をn色とする。本実施例では、Qt=3×10-2C/kg、n=2色である。さらに、感光ドラム上の単位面積あたりのトナーの重量(トナー乗り量)をM(kg/m2)とする。
【0048】
このとき、4色の画像形成後のトナー電荷量は、M・Qt(k)・n(C/kg)であるので、記録材の表裏面の単位面積あたりの電荷量は±M・Qt(k)・nとなる(本実施例では、ネガトナーを使用しているので、記録材の表面が負、裏面が正)。
【0049】
上記のような点状の転写不良を発生させないためには、このM・Qt(k)・nの値がQp(s,k)の値を超えないようにすればよい。すなわち、感光ドラム上トナー量Mが、
M・Qt(k)・n≦Qp(s,k)
∴M≦Qp(s,k)/Qt(k)/n
の範囲にあればよい。
【0050】
ここで、記録材の単位面積あたりの最大保持電荷量Qp(s,k)は、紙種や画像形成装置本体の稼働環境、特に温湿度等によって大きく左右される。
【0051】
図3に、一度定着器を通った紙を常温常湿環境(23℃、60%RH)、常温低湿環境(23℃、5%RH)に放置したときの含有水分量の変化を示す。紙の含有水分量は、(株)ケット科学研究所製赤外水分計KJT100を使用して測定した。
【0052】
図3に示されるように、紙は一度定着器を通過すると、水分量が2〜3%程度低下する。その後、常温常湿環境に放置された紙は、30秒後には吸湿により水分量がほぼ最初の80%程度まで戻るが、常温低湿環境に放置された紙は、60秒経っても吸湿する傾向が見られない。
【0053】
本実施例においては、紙の1面目の定着終了から2面目の第1色目転写までに要する時間は、約15秒であるため、2面目の紙の水分量は紙の置かれる環境の雰囲気により大きく左右されることが分かる。
【0054】
また図4は、紙の含有水分量と紙の最大保持できる面電荷密度の関係を示す。図4から明らかなように、紙の保持可能な最大面電荷密度は、紙の含有水分量と強い関係があり、含有水分量が小さくなるにつれて少なくなっていくことが分かる。
【0055】
そこで、画像形成装置本体内、しかもできるだけ記録材収納カセット10の近傍に、温度および湿度を測定可能な温湿度センサー20を設け、この温湿度センサー20により検知された装置内の温度・湿度を用いて、装置内の絶対水分量を求め、それから記録材2面目に保持可能な最大面電荷密度を割り出して、それを基に記録材の2面目に転写されるトナー量、すなわち感光ドラム3上に形成する2面目用のトナー像のトナー量を減少させることにした。
【0056】
どの程度トナー量を減少させるかについては、前述の数式(1)に基づき、以下のような手順によることが好ましい。温湿度センサーによる温度、湿度の検出値から、図3から求められるような両面画像形成における2面目の第1色目転写時の紙の含有水分量を割りだし、図4に示したような紙の含有水分量と保持できる最大面電荷密度の関係から、紙の2面目に最大積載可能な面電荷密度を求め、温湿度センサーの検出値から判断されるトナーの単位面積あたりの電荷量と、この紙の面電荷密度とから、数式(1)に基づいて単位面積あたりのトナー量を決定すればよい。
【0057】
具体的な数値例を示す。本実施例において、図2のグラフAで示した紙の両面画像形成における2面目の画像形成の際には、Qp(s,k)=5×10-4C/m2、Qt(k)=3×10-2C/kg、n=2より、M≦8.3×10-3kg/m2となる。従って、2面目の画像形成時には1色あたりのトナー量を8.3×10-3kg/m2に低減すればよい。
【0058】
このとき転写電流もトナー量の減少と同じ割合で減少させることにより、さらに良い効果が得られることが本発明者らの研究で明らかとなった。すなわち、本実施例では、転写電流は各色とも10μAであるので、2面目の転写時は、
10×8.3×10-3/1×10-2=8.3μA
とすればよい。
【0059】
本実施例により一層好ましい態様として、図3および図4に示したような関係式を、記録材の種類に応じた数だけ装置本体内に記憶させておき、画像形成装置の使用に当たり、使用者が記録材の種類を予め装置本体に入力し、その記録材情報から予め装置本体内に記憶されている記録材ごとの保持可能な最大面電荷密度量を割り出し、上述の方式により感光ドラム上のトナーの単位面積あたり重量を決定してやるようにすれば、さらに好ましい結果が得られることは明らかである。
【0060】
図5は、感光ドラム上のトナー像のトナー量とこれを転写した紙上のトナー像の反射濃度との関係を示すグラフである。図5から、感光ドラム上のトナー量と紙上濃度とは比例に関係にあり、点状転写抜けを起こさないようにするためにトナー量を下げると、当然紙上濃度も下がる。しかし、図5から分かるように、トナー量をたとえば8×10-3kg/m2にまで下げても、紙上濃度は1.2程度あり、十分実用に耐える濃度であるので問題ない。
【0061】
上記において、2面目のトナー量は許容される範囲において最大に保った方が、1面目と2面目の濃度差をなくす上で有効であることは言うまでもない。しかし、条件によってはトナー量を顕著に下げないと紙の最大保持電荷量を超えてしまう場合も出てくる。このときは、確かに点状の転写抜けは抑制できるものの、画像としては濃度が薄く実用上問題となりかねない。そこで、このような場合には、最低限の濃度を確保するために、少なくとも反射濃度>1.0を達成するのに必要なトナー量、本実施例では6.×10-3kg/m2(初期値の60%)以下に下げないようにする。
【0062】
すなわち、数式(1)において、
Qp(s,k)/Qt(k)/n<6×10-3
であった場合、
M=Mi×0.6
とする。ただし、Miは感光ドラム上トナー像の単位面積あたりのトナー量の初期値で、本実施例では、Mi=1×10-2kg/m2である。
【0063】
トナー量の下げ方は、潜像の現像コントラスト電位を小さくする、露光量を小さくするなどの方法でもよい。
【0064】
以上では記録材担持体として転写ベルトを示したが、転写ドラムであってもよい。また現像器1(1a〜1d)としては、いずれの方式の現像方法であってもよい。
【0065】
一般に、現像方法は一成分現像法と二成分現像法に大別され、一成分現像法は、非磁性トナーについてはブレード等で現像スリーブ上にコーティングし、磁性トナーについては磁気力によって現像スリーブ上にコーティングし、現像スリーブの回転により像担持体と対向した現像部に搬送し、トナーを像担持体と非接触状態で現像する一成分非接触現像法、像担持体と接触状態で現像する一成分接触現像法があり、二成分現像法は、トナー粒子と磁性キャリアを混合した二成分現像剤を使用し、これを磁気力で現像スリーブ上にコーティングし、現像スリーブにより現像部に搬送して、現像剤を像担持体と非接触状態で現像する二成分非接触現像法と、像担持体と接触状態で現像する二成分接触現像法とがある。画像の高画質化や高安定性の面から、二成分接触現像法が多く用いられる。
【0066】
以上のように、本実施例では、両面画像形成における記録材2面目用のトナ像の像担持体上でのトナー量を、
Mi×0.6≦M≦Qp(s,k)/Qt(k)/n
ただし、Qp(s,k)/Qt(k)/n<Mi×6のとき
M=Mi×0.6
とすることにより、2面目に点状の転写抜けを生じることなく画像を良好に転写して、記録材の両面とも高品質な画像を得ることができる。
【0067】
ここで、感光ドラム上のトナー像の単位面積あたりの受領の測定法としては、所定(面積が既知)のテスト用のトナー像を感光ドラム上に形成し、このテスト用のトナー像の濃度をセンサー(受光部)で検知し、この濃度値からある一定の相関がある重量値に変換すれば、求めることができる。
【0068】
実施例2
実施例1では、記録材2面目におけるトナー量を下げるようにした。しかし、一度定着器を通った紙でも、条件によっては、図2のグラフA、Bのような電気特性を示さず、グラフDのように理想的な電気特性を示す場合がある。
【0069】
たとえば高温高湿環境(30℃、80%RH)では、紙が一度定着器を通って含有水分量が減少しても、高湿環境のため直ぐに水分量が元に戻り、紙の電気特性は図2のDのような挙動を示す。このような環境では、2面目に点状転写抜けが発生することがないので、トナー量を下げる必要はない。ただし、濃度を確保する上でトナー量を安定させることが重要であることは、図5から明らかである。
【0070】
そこで、本実施例では、両面画像形成のダミーコピーを1枚行うことにより、2面目の紙の保持可能な最大面電荷密度を割り出し、その後の両面画像形成時の感光ドラム3上のトナー像のトナー量を決定し、点状転写不良の発生を防止するようにした。以下、詳述する。
【0071】
図6は、各色の転写電圧を示したものである。図において、Vtrは通常の転写電圧であり、色を重ねる度に(本実施例では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順)、転写電圧Vtr1、Vtr2、Vtr3、Vtr4と上昇している。VBは、記録材の非通紙下での転写電圧の推移であり、これも、VB1、VB2、VB3、VB4と上昇している。VtrとVBとを比較すると、各色におけるVtrとVBとの差ΔV1、ΔV2、ΔV3、ΔV4は一定であり、記録材によって異なるが、通常200V〜700V程度である。
【0072】
一方、図7は2面目に対する転写のときのVtrとVBとの相関の一例を示したものであり、各色のVtrとVBの差をΔV1′、ΔV2′、ΔV3′、ΔV4′とする。これを見ると明らかなように、ΔV1′とΔV2′は一定であるが、3色目転写時に突然転写電圧Vtr3がVB3程度まで下がり、そのままの状態で転写工程が進んでいる。4色目もΔV4′がほぼ0Vであり、Vtr4=VB4の状態で転写工程が進んでしまっている。これは、3色目転写中に紙に供給される電荷量が保持可能な最大面電荷密度を超え、そのため転写インピーダンスが急激に下がったためと考えられる。このような状況のとき、点状の転写不良が発生し、著しく画質が損ねられることは前述したとおりである。
【0073】
そこで、本実施例では、両面コピー前にダミーコピーとして1枚の両面コピーを行い、紙の2面目の保持可能な最大面電荷密度を把握した上で、その後の両面画像形成時の感光ドラム上トナー量を決定しようというものである。以下詳述する。
【0074】
ダミーコピー時の2面目の各色のVtrとVBの差分を、上記したようにΔV1′〜ΔV4′とし、各色転写時に紙に供給される電荷量をQ1、Q2、Q3、Q4とする。
【0075】
たとえば図7に示すように、第3色目でΔV3′がほぼ0になった場合、それまでに紙に供給された総電荷量はQ1+Q2である。従って、総電荷量Q1+Q2を紙面積で割れば、保持可能な最大面電荷密度Qp(s,k)を算出できる。後は、実施例1と同様、温湿度センサーの検出値から判断されるトナーの単位重量あたりの電荷量を求め、数式(1)に基づいて単位面積あたりのトナー量を決定すればよい。
【0076】
これにより、画像形成装置の設置環境などにより左右される紙の吸湿具合を、特別な構成をとることなく把握でき、なおかつ両面画像形成における2面目の点状転写不良を防止することができる。
【0077】
実施例3
本実施例3は、両面画像形成における紙の時々刻々変化する2面目の特性を、画像形成装置内にセンサーを設けることにより直接把握し、2面目の転写不良の発生を防止しようというものである。
【0078】
上述したように、紙はその含有水分量が減少することにより、電気特性が大きく変化するので、紙の水分量を直接検知すれば、紙の電気特性を正確に把握でき、紙の最大保持電荷量Qを正確に見積もることができる。
【0079】
そこで、本実施例では、装置内の第1色目転写直前の位置に赤外線水分量計を設け、第1色目転写直前、特に2面目の第1色転写直前に紙の水分量を測定できるようにした。
【0080】
そして、水分量計の検出値を基に、図4によりその紙の2面目の保持可能な最大面電荷密度を割り出し、数式(1)に従って感光ドラム3上の単位面積あたりのトナー量を決定する。これにより、画像形成装置の設置環境などにより左右される紙の2面目における点状の転写不良を防ぐことができ、良好な画像を得ることができた。
【0081】
以上の実施例では、感光ドラム3a〜3d上の各色トナー像を転写ベルト130に担持された記録材Pに順次重ねて転写する画像形成装置について説明したが、1つの感光ドラム上のトナー像を記録材に転写する工程を順次繰り返して、記録材上に複数色のトナー像を形成する画像形成装置においても適用できることはいうまでもない。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、像担持体上に形成される記録材の1面目用、2面目用のトナー像の単位面積あたりのトナー重量の最大値を、記録材の1面目と2面目とで異なるようにし、更に、像担持体上に形成されるトナー像の単位面積あたりの重量は、記録材の含有水分量に応じて可変である構成としたので、記録材の1面目、2面目とも高品質な両面画像を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明が適用可能な画像形成装置を示す構成図である。
【図2】
記録材に与えられた面電荷密度と記録材の表面電位の関係を示す図である。
【図3】
定着後の紙の水分量変化を示す図である。
【図4】
紙の含有水分量と保持可能な最大面電荷密度との関係を示すグラフである。
【図5】
感光ドラム上のトナー像のトナー量とこれを転写した紙上のトナー像の反射濃度との関係を示すグラフである。
【図6】
記録材への転写時における各色ごとの転写電圧を模式的に示す図である。
【図7】
記録材2面目への転写時における各色ごとの転写電圧を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1a〜1d 現像器
3a〜3d 感光ドラム
20 温湿度センサー
24a〜24d 転写帯電器
130 転写ベルト
P 記録材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-28 
出願番号 特願平10-372978
審決分類 P 1 652・ 121- XA (G03G)
P 1 652・ 537- XA (G03G)
最終処分 決定却下  
前審関与審査官 小宮山 文男  
特許庁審判長 山下 喜代治
特許庁審判官 井出 和水
阿久津 弘
登録日 2003-06-20 
登録番号 特許第3441992号(P3441992)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 画像形成装置  
代理人 倉橋 暎  
代理人 倉橋 暎  

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