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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1129841
審判番号 不服2003-4898  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-05-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-26 
確定日 2006-01-18 
事件の表示 平成6年特許願第278499号「デンタルライト駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成8年5月7日出願公開、特開平8-112292号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年10月18日の出願であって、平成15年2月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年3月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月7日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年4月7日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年4月7日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「治療用椅子における座部の高さ、背板の傾斜角および座部の旋回角度を検出するセンサーと、
該各センサーよりの出力により前記治療用椅子の変化に比例した信号を送出する送信機と、
天井等の高所に取付けられたモータ等の駆動源によって2軸方向に照明器具を回動するデンタルライトと、
該デンタルライトの近傍に取付けられた前記送信機よりの前記信号を受信する受信機と、
治療用椅子の座部高さ、背板の傾斜角および座部の旋回角度に対する標準角度が予め記憶され、かつ、操作スイッチによる操作が前記標準角度と異なった場合に該異なった角度を補正角度として記憶すると共に、次の操作スイッチによる制御時に前記記憶された補正角度に基づいた出力を前記送信機に出力する制御回路と、
前記受信機よりの信号により前記駆動源を制御して前記照明器具を回動させるライト制御回路と、
を具備したことを特徴とするデンタルライト駆動装置。」と補正された。

上記補正は、「操作スイッチによる操作が前記標準角度と異なった場合に該異なった角度を補正角度として記憶すると共に、次の操作スイッチによる制御時に前記記憶された補正角度に基づいた出力を前記送信機に出力する」ことを発明の構成とすることを含んでいるが、該構成は、願書に最初に添付した明細書明細書又は図面に記載されていないから、本件補正は、願書に最初に添付した明細書明細書又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものではない。
したがって、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年4月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「治療用椅子の高さおよび背板の傾斜角を検出するセンサーと、該各センサーよりの出力により前記治療用椅子の変化に比例した信号を送出する送信機と、天井等の高所に取付けられモータ等の駆動源によって1軸方向に回動するデンタルライトと、該デンタルライトの近傍に取付けられた前記送信機よりの前記信号を受信する受信機と、前記各センサーの変位した出力を読み込み、かつ、予め設定した照明器具の標準角度に対して補正が行われている場合には補正を行ってその出力を前記送信機に出力する制御回路と、前記受信機よりの信号により前記駆動源を制御するライト制御回路とを具備し、前記治療用椅子の高さおよび背板の傾斜角に比例してデンタルライトを1軸方向に回動して治療用椅子の患者の口元を照明するようにしたことを特徴とするデンタルライト駆動装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物である、実願平3-95829号(実開平5-37206号のCD-ROM)(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、
「【0017】
ライト支持アームの水平回動はアーム駆動装置4内部の回動用モーターの回転軸と該支持アームとを減速桟,円筒ラック,ピニオン等を介して回動自在に連結することにより確保され、また、上記の回動用モーターとは別個の傾動用モーターにより減速桟等を介して軸42を回動させ、ライト支持アーム2を軸42を中心として傾動させる。…(中略)…
【0019】
アーム駆動装置4の上部は前述した通り天井5にアンカーボルト等により取付けられるが、その取付位置は図3に示すように駆動装置の平面の中心が仰臥位の姿勢にされた治療台8の体長方向の軸線上に在り、その軸線上の位置としては治療台を椅座位の姿勢として患者を座らせたときの体軸センター位置とするのがよい。…(中略)…
【0021】
アーム駆動装置を遠隔操作するコントロール装置(図示せず)は、コントロール装置とアーム駆動装置とを電線で連結した有線のコントロール装置でも不可ではないが、電線を介しての感染を防止する意味からも、無線もしくは光で操作するコントロール装置とすることが望ましい。そして前述した照明灯の輝度,照射野等の調整のための遠隔操作をも含めて操作できるコントローラーとして構成し、衛生管理のためにディスポーザルな透明カバーで覆って使用するのが好ましい。…(中略)…
【0028】
【作用および効果】
上述した通りの構成を有する本考案の歯科治療用照明装置においては、ライト支持アームに口腔内照明用の2個の照明灯が支持され、しかも該支持アームをアーム駆動装置により水平回動させ、また傾動できるので、バックレストやヘッドレストを傾動させても従来装置では対応が困難であった口腔内の特殊な治療部位の照明や治療中の照明の微妙な調整が可能かつ容易である。また、臼歯部の治療の際に患者頭部を右向き或いは左向きに姿勢変更したときに望ましい照明の微妙な調整がライト支持アームの水平回動により可能になる。」(平成4年11月19日付け手続補正書により補正された明細書の段落【0017】〜【0028】)と記載されている。
上記記載から、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。
「口腔内照明用の2個の照明灯がライト支持アームに支持され、該支持アームは、天井に取り付けられ、無線もしくは光で操作するコントロール装置により遠隔操作されるアーム駆動装置の内部の傾動用モーターにより傾動されて、バックレストの傾動に対応して調整可能である歯科治療用照明装置の駆動装置。」

同じく、特開平2-132701号公報(以下、「引用例2」という。)には、
「本発明は、診療台のバックフレームの傾斜量に応じて、ライト部の位置及び角度を自動的に移動し得るようにした歯科用ライトを提供ずるものであり、すなわち、支持スタンドと、該支持スタンドに保持された繰出自在のスライドシャフトと、角度調節自在に設けられたスライドシャフト支持駆動部と、スライドシャフトの先端に設けたライト部と、該ライト部の俯角方向微調整装置と、さらに、診療台のバックフレームの傾斜量に応答して、バックフレームの起立及び傾斜時の該バックフレームの移動距離に相当する距離だけ前記ライト部を前後に移動させる制御機構及び前記ライト部の俯角方向を自動微調整する制御機構とを備えてなることを特徴とする歯科用ライトである。…(中略)…
このように、一たんライトの位置が設定されてからは、例えば、図示例のように立位診療から座位診療に変わるときにも(図中点線で示す)口腔部の後退移動量を検出しそれに応対する量だけ前記スライドシャフトを前方に繰出してやれば口腔部とライト部との距離を常に略一定に保つことができる。」(1ページ右下欄12行〜2ページ右上欄9行)と記載されている。
上記記載から引用例2には、治療用椅子の背板の傾斜を検出する検出器即ちセンサーを設けて、その検出値に対応してライト部を前後に移動させる制御機構が開示されているといえる。

(2)対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「無線もしくは光で操作するコントロール装置」、「口腔内照明用の2個の照明灯」、「傾動用モーター」、「バックレスト」は、その機能ないし構造からみて、それぞれ、前者の「送信機」、「デンタルライト」、「モータ等の駆動源」、「治療用椅子」の「背板」に相当する。
そして、後者の駆動装置が、無線もしくは光で操作するコントロール装置により操作されることから、後者は、コントロール装置からの信号を受信する受信機と、アーム駆動装置を制御する制御回路を備えていて、2個の照明灯の近傍に設けられていることは明らかであり、傾動は、1軸方向の回動といえ、「バックレストの傾動に対応して調整」することは、「1軸方向に回動」することになる。
また、歯科治療用照明装置は、治療用椅子の患者の口元を照明するものといえる。
そうすると、両者は、
「送信機と、天井等の高所に取付けられモータ等の駆動源によって1軸方向に回動するデンタルライトと、該デンタルライトの近傍に取付けられた前記送信機よりの前記信号を受信する受信機と、受信機よりの信号により前記駆動源を制御するライト制御回路とを具備し、治療用椅子の背板の傾斜角に対応してデンタルライトを1軸方向に回動して治療用椅子の患者の口元を照明するようにしたデンタルライト駆動装置。」である点で一致しており、次の点で相違する。

相違点1:本願発明は、「治療用椅子の高さおよび背板の傾斜角を検出するセンサー」を備え、「該各センサーよりの出力により前記治療用椅子の変化に比例した信号を送出」し、「治療用椅子の高さおよび背板の傾斜角に比例してデンタルライトを1軸方向に回動」するのに対し、引用発明は、治療用椅子の背板の傾斜角に応じてデンタルライトを1軸方向に回動するものではあるが、コントロール装置からの信号によるものであり、「治療用椅子の高さおよび背板の傾斜角を検出するセンサー」を備えておらず、「治療用椅子の高さおよび背板の傾斜角に比例して」回動するものか否か明らかでない点。
相違点2:本願発明は、「前記各センサーの変位した出力を読み込み、かつ、予め設定した照明器具の標準角度に対して補正が行われている場合には補正を行ってその出力を前記送信機に出力する制御回路」を備えているのに対し、引用発明では、コントロール装置からの操作信号を送信機に出力している点。

(3)当審の判断
まず、相違点1について検討する。
一般に、制御を行うに際し各種センサーを設け、その出力信号に従って制御信号を作成することは慣用の技術手段であり、治療用椅子の背板の傾斜に対応して、照明装置を調整するのにそのような手段を採用することも、引用例2に記載されているように公知である。
そして、歯科治療用椅子は、背板の傾斜を変える時は、同時に椅子の高さも変えるのが通常であるから、治療用椅子の高さにも対応してデンタルライトを回動するようにすることも、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、引用発明に上記慣用の技術手段を適用して相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
なお、「治療用椅子の高さおよび背板の傾斜角に比例して」は、本願明細書の記載からみて、「治療用椅子の高さおよび背板の傾斜角に対応して」の意味であるとして判断したが、実際に比例するものであるとしても、そのように変更することは容易である。

相違点2について検討すると、センサーを用いてフィードバック制御を行う際に、基準となる値からの偏差に基づいて制御信号を出力することは常套手段であるから、相違点2に係る構成とすることも当業者が容易に想到し得ることである。

そして、相違点1,2に係る構成を総合してみても、その効果は当業者が予測し得る範囲のものであるから、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。
なお、当審における審尋に対する、平成17年9月26日付け回答書に提示された補正案も検討したが、引用例1には、照明器具を2軸方向に回動させることも記載されており、座部の旋回に対応して回動させることも必要に応じて当業者が容易になし得る程度のことであるから、補正案の発明も当業者が容易に想到し得るものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-07 
結審通知日 2005-11-15 
審決日 2005-11-28 
出願番号 特願平6-278499
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 561- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎瀬戸 康平  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 北川 清伸
一色 貞好
発明の名称 デンタルライト駆動装置  
代理人 福田 賢三  
代理人 加藤 恭介  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 武通  

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