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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1130194
審判番号 不服2003-24335  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-08-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-16 
確定日 2006-02-01 
事件の表示 平成10年特許願第537878号「両面ハイブリッドDVD―CDディスク」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月 3日国際公開、WO98/38637、平成12年 8月 2日国内公表、特表2000-509879〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求にかかる特許出願(以下、「本願」という)は、1998年2月27日(優先権主張 1997年2月28日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成14年12月6日付けで、請求項1〜3に係る各発明について、特許法第29条第2項の規定より特許を受けられない、及び明細書及び図面の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない、とする旨の拒絶理由の通知がなされ、平成15年9月4日付けで、本願は前記拒絶理由で拒絶すべきものである旨の査定がなされたものである。
そして、平成15年12月16日付けで、特許法第121条第1項の審判が請求されると共に、平成16年1月14日付けで手続補正書が提出されたものである。


II.補正について
平成16年1月14日付けの手続補正は却下する。

理 由
1.補正の内容
上記手続補正による補正(以下、「本件補正」という)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を全文にわたってするもので、特許請求の範囲については、大要、補正前の請求項1に係る発明に対しては、CDディスクの厚さとDVDディスクの厚さの割合について、特に『約3対2』とする旨の要件を付加しようとするもの、発明の詳細な説明については、先行文献を掲記し、さらに当該各文献の記載内容を詳細に付加するものである(【0002】〜【0005】を参照)。

2.補正の適否
1)特許請求の範囲の補正について
出願当初の明細書及び図面(以下、「明細書等」という)の、発明の背景の項には、
「新しいDVD方式の1つの特徴は、データが記録されている表面を有するための射出成形で形成されたプラスチック材が、従来の(現在一般的な)CDディスクの厚さ(以下、「全高」という)のほぼ半分の厚さである点にある。「半分高」のDVDデータ表面に剛直性を与えるために、通常は同じ「半分高」の厚さのプラスチック層を裏に当てている。」
なる記載があって、さらに好適な実施形態の詳細な説明の項には、
「図1は、一般的な(すなわち従来技術の)全高のCD1を示している。」
「図2は、従来技術のDVDディスクを示している。・・・(中略)・・・半分高のディスク13が接着剤で半分高の支持ディスク15に接着されている。」
「図3は、図1の・・・(中略)・・・CD方式の半値高のディスクを示している。」
「図4は、本発明の好適な実施形態を示しており、これでは、図3に示されている半分高のCD方式と図2に13で示されている下側の半分高の複合層等の2枚の半分高のディスクが接着されている。」
等々の記載がある。
また、一般的に、DVDディスクは、CDディスクの厚さ(全高)のほぼ半分の厚さであって、(CDディスクの)「半分高」のDVDデータ表面に剛直性を与えるため、通常同じ「半分高」の厚さのプラスチック層を裏に当てることで、ディスク全体として、DVDディスクの厚さを、CDディスクと同じ厚さ(全高)としている。
明細書等の図4の本発明の好適な実施形態では、半分高のCD方式のディスクとDVDディスクの下側の半分高の複合層等の2枚の半分高のディスクが接着されているのであるから、結局、各ディスクの厚さは、比で表すとすると約1対1となることは明らかである。
とすると、『約3対2』なる割合数値の記載ないしは示唆する事項は、明細書等のいずれにも見いだすことはできないし、明細書等の記載からみても自明な事項の範囲内のものすることはできない。
また、請求人は、上記『約3対2』なる割合数値について、請求の理由で、「(イ)請求項1の「CDディスクの厚さとDVDディスクの厚さの割合が約3対2である」点は出願当初に願書に添付された図面の図4の記載による。・・・(中略)・・・「特許請求の範囲の減縮」に相当することは明かである」旨主張している。しかしながら、図4についての明細書の記載は、上記のとおりである。しかも、図1についてではあるが、「もちろん、図面は正確な縮尺率では示されておらず、全高のディスクを概略的に示すためのものである。」とされているように、図4でも正確な縮尺率のものでないし、両ディスクの寸法関係に多少の差があったとしても、明細書において、その差が技術的に特別の意味があること等の説明ないし記載はなく、上記主張のような、図面の記載から、両ディスクの厚さの割合が『約3対2』であることの構成事項を想定することは困難であって、採用できない。
2)発明の詳細な説明の補正について
請求人は、本件補正で、発明の詳細な説明に複数の先行文献の文献名を追加するとともにこれら先行技術文献の内容を具体的に記載してきている。そして、このことで、本願に係る発明と先行技術とを対比し、発明の評価に関する情報、発明の実施に関する情報を実質的に追加する補正内容となるものとなるから、これは出願当初の明細書等の記載の範囲内のものでない。(必要あれば:特許・実用新案審査基準「明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)」の先行技術文献の内容の追加の項を参照のこと)
結局、本件補正は、本件特許出願当初の明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてするものとは認められない。

3.補正についてのむすび
したがって、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


III.本願について
平成16年1月14日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、出願当初の明細書及び図面の記載に基づいて検討する。
1.拒絶査定の理由
原審において通知された拒絶理由のうち、明細書及び図面の記載の不備については、以下のとおりである。
「2.この出願は,明細書及び図面の記載が下記の点で,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

(1)発明の詳細な説明では「CD」と「DVD」の貼合せであるとしているが,上記した文献4の表1にあるように,CDの基板厚さは 1.2mm であることが示されている。
しかしながら,そのような「CD」に対し,「DVD」を貼り合せた場合,「DVD」ディスクにも基板があり,無視できない厚さがある以上,従来の「CD」装置では,ディスクの厚さが相違することとなり,従来の規格に則って製造された装置への装着が不可能となるはずであるが,その点について,この出願の詳細な説明において,何ら釈明もしていないし,解決手段も,対策が不要であることすらも示していない。
かかる記載では,この出願について,当業者が実施可能に開示したものと認めることはできない。
なお,補正による出願当初の開示の範囲を逸脱した事項の追加は認められない。
また,かかる事項は当該発明を実施する上で当然考慮されるべきことである以上,それが本願と無関係であるとするのみの主張は,本願発明が互換性を謳うものである以上無関係とすることはできず,上記の理由を解消するものとしての採用はできないことに注意されたい。」

2.当審の判断
本願発明について、出願当初の明細書等には、「本発明は、同一構造体上に標準音声CD方式と超高密度(DVD)方式の両方で行われるデータ記憶に関するものである。」とし、請求項1に係る発明は、結局、両方式のディスクをそれぞれ、従来の(現在一般的な)CDディスクの厚さを基準に半分高とした第1データ方式および第2データ方式でデータを記録した第1半分高コンパクトディスク表面と第2半分高コンパクトディスク表面を接着層を介して接着して全高のコンパクトディスクを形成するようにした「両面ハイブリッドDVD-CDディスク(コンパクトディスク)」に関するものと認められる。
そして、本発明によって、「CDまたはDVDプレーヤのいずれによっても再生することができ」、コンテントディベロッパは、「ユーザがCDまたはDVDプレーヤのいずれでも再生できる単一ディスクを販売することができる。」とされ 発明の簡単な説明、図面の簡単な説明、好適な実施形態の詳細な説明 等においてはいずれにおいても、本発明について、従来技術の全高のCD方式のコンパクトディスク、従来技術の全高のDVD方式のコンパクトディスクを前提として記載している。
即ち、本発明によるディスクは、従来技術のCDプレーヤ又はDVDプレーヤで再生することを前提としてなされたものとみることができる。
しかしながら、CD方式のディスク部分についてみると、従来技術のCDディスクは、透明基板厚が1.2mmとして規格化されたものであり、したがって、対応するCDプレーヤも、光ヘッドを構成する光源、対物レンズ等の光学部品は、1.2mmの透明基板厚に対応した光学特性を備えたものであることは明らかである。
これに対して、本願発明によるディスクをみると、図1記載のものが、従来技術の全高のCD方式のコンパクトディスクとして、半分高のCD方式のコンパクトディスクが図3として示されている。
本願明細書の好適な実施形態の詳細な説明には、「図3は、図1の支持層11に相当する保護層41の厚さを減じることによって形成されたCD方式の半値高のディスクを示している。」とされ、保護層41の厚さを減じて、半値高のディスクを形成するとしているが、図1及び図3、従って、図4のCD方式のディスク部分は、透明基板部分(上表面5側の基板部分)の厚さは、規格に沿った厚さを有していないことは明らかである。
即ち、従来技術のCD方式のディスクの規格では、透明基板自体が1.2mmの厚さを有するものであって、これに対して、いわゆる保護層は、高々数μm〜数十μm程度である。
従来技術のCD方式によるディスク自体の厚さを半分にするには、透明基板自体の厚さを半減することが必須があり、基板厚に対する規格から外れることは明らかである。
結局、従来技術のCDプレーヤでは、特別の工夫なしには、再生することができないことは明らかであり、発明の詳細な説明でこの点についての説明は必須である。
従来技術のCDプレーヤでの再生を前提とした本願発明によるディスクが基板厚においてCD規格から外れている場合、その実施に際し、上記拒絶理由で審査官が指摘した点の明確な説明は必須であって、その説明の記載がなされていない本願明細書及び図面は、当業者がその発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているということはできない。

3.むすび
以上のとおりであるから、本願明細書及び図面は、特許法第36条第4項に規定された要件を満たしていないとしてなされた原査定は妥当なものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-15 
結審通知日 2004-10-19 
審決日 2004-11-15 
出願番号 特願平10-537878
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 561- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 田中 純一
片岡 栄一
発明の名称 両面ハイブリッドDVD―CDディスク  
代理人 曾我 道照  
代理人 曾我 道治  
代理人 古川 秀利  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 梶並 順  

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