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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41J
管理番号 1130805
異議申立番号 異議2003-73098  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-11 
確定日 2005-11-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3433354号「印刷装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3433354号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願からの主立った経緯を箇条書きにすると次のとおりである。
・平成6年3月31日 特許権者によりて本件出願
・平成15年5月30日 特許第3433354号として設定登録(請求項1)
・同年12月11日 特許異議申立人村田優子より請求項1に係る特許に対して特許異議申立
・平成16年4月13日付け 当審にて取消理由を通知
・同年6月17日 特許権者より意見書及び訂正請求書提出
・同年10月15日付け 当審にて特許異議申立人に対し審尋
・同年11月25日 特許異議申立人より回答書提出
・平成17年7月5日付け 当審にて再度取消理由を通知
・同年9月12日 特許権者より意見書提出

第2 訂正の許否の判断
1.訂正の内容
平成16年6月17日付けの訂正請求(以下「本件訂正」という。)は次の訂正事項1〜4からなっている。
訂正事項1:請求項1の記載を
「印字用の発熱体がライン状に配置された印字ヘッドを駆動して被印字媒体に1ラインづつ印字する印字手段と、
前記印字手段による各ラインの印字が終了し次のラインの印字が開始されるまでの間に前記被印字媒体を次のラインの印字位置まで搬送するモータと、
前記印字ヘッドから前記被印字媒体の搬送方向に離間して設けられその離間位置から先に搬送された前記被印字媒体を切断するカッタ手段とを備えた印刷装置において、
前記印字手段による1ラインづつの印字と前記印字手段による各ラインの印字の間に前記モータによる前記被印字媒体の次のラインの印字位置への搬送が繰り返されることにより、前記被印字媒体が所定の距離だけ搬送されて前記印字手段による所定番目のラインの印字が終了したときに、前記モータによる前記所定番目のラインの次のラインの印字位置への搬送を行わないように、前記モータの駆動を行うことなく前記被印字媒体の搬送を停止させる第1の制御手段と、
前記第1の制御手段により前記印字手段の駆動及び前記被印字媒体の搬送が停止された状態で前記カッタ手段により前記被印字媒体が切断された後に、前記モータによる前記被印字媒体の搬送を停止させたままの状態で前記印字手段によって前記所定番目のラインを重複して印字し、その後に前記モータにより前記被印字媒体を前記所定番目のラインの次のラインの印字位置まで搬送してから、前記所定番目のラインに続くラインについて前記印字手段による印字動作と前記モータによる前記被印字媒体の搬送動作を再開させる第2の制御手段と、
を具備したことを特徴とする印刷装置。」(下線が訂正箇所。以下同様。)と訂正する。
訂正事項2:明細書の段落【0022】の記載を
「【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に係る印刷装置は、印字用の発熱体がライン状に配置された印字ヘッドを駆動して被印字媒体に1ラインづつ印字する印字手段と、前記印字手段による各ラインの印字が終了し次のラインの印字が開始されるまでの間に前記被印字媒体を次のラインの印字位置まで搬送するモータと、前記印字ヘッドから前記被印字媒体の搬送方向に離間して設けられその離間位置から先に搬送された前記被印字媒体を切断するカッタ手段とを備えたものにおいて、前記印字手段による1ラインづつの印字と前記印字手段による各ラインの印字の間に前記モータによる前記被印字媒体の次のラインの印字位置への搬送が繰り返されることにより、前記被印字媒体が所定の距離だけ搬送されて前記印字手段による所定番目のラインの印字が終了したときに、前記モータによる前記所定番目のラインの次のラインの印字位置への搬送を行わないように、前記モータの駆動を行うことなく前記被印字媒体の搬送を停止させる第1の制御手段と、前記第1の制御手段により前記印字手段の駆動及び前記被印字媒体の搬送が停止された状態で前記カッタ手段により前記被印字媒体が切断された後に、前記モータによる前記被印字媒体の搬送を停止させたままの状態で前記印字手段によって前記所定番目のラインを重複して印字し、その後に前記モータにより前記被印字媒体を前記所定番目のラインの次のラインの印字位置まで搬送してから、前記所定番目のラインに続くラインについて前記印字手段による印字動作と前記モータによる前記被印字媒体の搬送動作を再開させる第2の制御手段とを備えて構成したものである。」と訂正する。
訂正事項3:明細書の段落【0024】の記載を
「【作用】
つまり、本発明の印刷装置では、被印字媒体が所定の距離だけ搬送されて印字手段による所定番目のラインの印字が終了したときに、モータによる前記所定番目のラインの次のラインの印字位置への搬送を行わないように、モータの駆動を行わないことで、被印字媒体の搬送が停止され、カッタ手段により被印字媒体が切断された後に、印字再開の際には、モータによる被印字媒体の搬送を停止させたままの状態で印字手段によって前記所定番目のラインを重複して印字がなされ、その後にモータにより被印字媒体を前記所定番目のラインの次のラインの印字位置まで搬送してから、前記所定番目のラインに続くラインについて印字手段による印字動作とモータによる被印字媒体の搬送動作が再開されることになる。」と訂正する。
訂正事項4:明細書の段落【0069】の記載を
「【発明の効果】
以上のように、本発明の印刷装置によれば、被印字媒体が所定の距離だけ搬送されて印字手段による所定番目のラインの印字が終了したときに、モータによる前記所定番目のラインの次のラインの印字位置への搬送を行わないように、モータの駆動を行わないことで、被印字媒体の搬送が停止され、カッタ手段により被印字媒体が切断された後に、印字再開の際には、モータによる被印字媒体の搬送を停止させたままの状態で印字手段によって前記所定番目のラインを重複して印字がなされ、その後にモータにより被印字媒体を前記所定番目のラインの次のラインの印字位置まで搬送してから、前記所定番目のラインに続くラインについて印字手段による印字動作とモータによる被印字媒体の搬送動作が再開されるようになる。」と訂正する。

2.訂正の目的、特許請求の範囲の拡張・変更の有無及び新規事項追加の存否
訂正事項1のうち、「搬送手段」(6箇所)を「モータ」と訂正することは、搬送手段を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。訂正事項1のうち、「搬送を行うことなく前記被印字媒体の搬送を停止させる」を「搬送を行わないように、前記モータの駆動を行うことなく前記被印字媒体の搬送を停止させる」と訂正することは明りようでない記載の釈明を目的とするものと認める。
訂正事項2〜4は、訂正事項1に付随した訂正(訂正事項3の「搬送を停止され」を「搬送が停止され」と訂正することを除く。)であり、その目的は訂正事項1と同一と認め、「搬送を停止され」を「搬送が停止され」と訂正することは誤記の訂正を目的とするものと認める。
訂正事項1〜4が願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内であること、及び訂正事項1〜4が実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでないことは明らかである。

3.結論
以上のとおり、本件訂正は平成15年改正前特許法120条の4第2項、並びに同条3項で準用する平成15年改正前特許法126条2項及び3項が読み替えられて準用される平成6年改正前特許法126条第1項ただし書き及び2項の規定に適合する。
よって、本件訂正を認める。

第2 特許異議申立についての判断
1.本件発明の認定
訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりのものであって、再掲すると次のとおりである。
「印字用の発熱体がライン状に配置された印字ヘッドを駆動して被印字媒体に1ラインづつ印字する印字手段と、
前記印字手段による各ラインの印字が終了し次のラインの印字が開始されるまでの間に前記被印字媒体を次のラインの印字位置まで搬送するモータと、
前記印字ヘッドから前記被印字媒体の搬送方向に離間して設けられその離間位置から先に搬送された前記被印字媒体を切断するカッタ手段とを備えた印刷装置において、
前記印字手段による1ラインづつの印字と前記印字手段による各ラインの印字の間に前記モータによる前記被印字媒体の次のラインの印字位置への搬送が繰り返されることにより、前記被印字媒体が所定の距離だけ搬送されて前記印字手段による所定番目のラインの印字が終了したときに、前記モータによる前記所定番目のラインの次のラインの印字位置への搬送を行わないように、前記モータの駆動を行うことなく前記被印字媒体の搬送を停止させる第1の制御手段と、
前記第1の制御手段により前記印字手段の駆動及び前記被印字媒体の搬送が停止された状態で前記カッタ手段により前記被印字媒体が切断された後に、前記モータによる前記被印字媒体の搬送を停止させたままの状態で前記印字手段によって前記所定番目のラインを重複して印字し、その後に前記モータにより前記被印字媒体を前記所定番目のラインの次のラインの印字位置まで搬送してから、前記所定番目のラインに続くラインについて前記印字手段による印字動作と前記モータによる前記被印字媒体の搬送動作を再開させる第2の制御手段と、
を具備したことを特徴とする印刷装置。」

2.引用刊行物の記載事項
平成17年7月5日付け取消理由に引用した特開平4-331169号公報(以下「引用例1」という。)には、次のア〜コの記載が図示とともにある。
ア.「印刷ヘッドと印刷媒体であるテープと該テープを移送する駆動源となるモータと、前記テープに文字・図形等を印刷し、所定の位置で該テープをカットするカット手段を有し、文字・図形等の印刷途中で、印刷を中断し、前記テープをカットした後、印刷を再開するごときテーププリンタにおいて、前記テープのカットの直前にテープを送るテープ送りローラを前記テープをたるませるため所定量分逆転させる制御手段と、この後にテープをカットする制御手段と、逆転させた所定量分以下を正転させる制御手段と、印刷を再開する制御手段とを有することを特徴とするテーププリンタ。」(【請求項1】)
イ.「【産業上の利用分野】本発明は文字図形をテープ状の被印刷物に印刷するテーププリンタに係わり、特にテープをカットするためのカット手段を有するテーププリンタにおいて、カット手段の制御に関するものである。」(段落【0001】)
ウ.「図23は従来のテーププリンタの上記不具合点の説明図であり、印刷途中で印刷を停止しカットした場合の印刷ドットを示す。図23の207のドット列を印刷後にテープ送りを停止しテープカットを行うと印刷テープがカッタに引っ張られテープ送り方向に移動してしまう。その結果次の印刷列208と印刷停止前の印刷列207のドット間距離が他のドット間距離とくらべて大きくなり、その結果印刷の縦抜けとなってしまう。」(段落【0006】)
エ.「従来から印刷途中で記録紙をカットする試みもなされたが、カット中に記録紙が移動してしまい、カット前とカット後の印刷結果がずれてしまうと言う問題点があり実用性に乏しかった。」(段落【0008】)
オ.「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明のテーププリンタは、テープのカットの直前にテープを送るテープ送りローラを前記テープをたるませるため所定量分逆転させる制御手段と、この後にテープをカットする制御手段と、逆転させた所定量分以下を正転させる制御手段と、印刷を再開する制御手段とを有することを特徴とするテーププリンタである。」(段落【0011】)
カ.「105は等間隔に複数の発熱体(図示しない)を有しヘッド支持体106に保持されている印刷ヘッド」(段落【0019】)
キ.「図6は、テープ印刷の説明図で、・・・印刷バッファ60内の202と203はそれぞれドットのあるなしを示している。印刷バッファ60内の縦方向の列が左側から順に印刷ヘッド105に送信され通電を行うと図6(c)の様に印刷を行う。図6(c)では印刷文字「A」の一部を印刷ヘッド105に送信し通電を行った時の印刷ドットを示す。204は印刷しないドットを205は印刷したドットを示す。各通電は、1列毎に行われ、その間にステップモータ103が駆動されテープ送りが行われる。ドット列間の距離d1はステップモータ103の駆動によりテープ送りローラ111の回転送り量により制御している。図7は、本発明のテーププリンタの印刷テープ154とヘッド位置の関係について示した図である。矢印A30はテープ送り方向、217はヘッド位置とカッタ位置の距離分の余白のテープであり、210はその長さを示している。211はテープ長で、前部マージン212、印刷範囲213、後部マージン214の総和である。215はテープ幅で、216は印刷幅である。」(段落【0029】)
ク.「初期状態では印刷ヘッド105はH1に位置している。印刷指令を受けると前部マージン212分テープを送る。印刷ヘッド105がH2の位置にくると印刷を開始する。印刷開始後前部マージンの先端がカッタ位置にくる時、印刷ヘッド105はH3の位置にあり、印刷を停止しカット処理を行う。カット後印刷を再開し印刷を終了すると印刷ヘッド105はH4に位置する。」(段落【0030】)
ケ.「カット時のドット間の縦抜けを防ぐ為に、本発明の実施例を説明する。その方法の1つは、ステップモータのホールド制御であり、他の1つはテープカット前後にテープを逆転させる方法である。」(段落【0031】)
コ.「テープカット時・・・両面粘着テープ152と透明テープ151は、通常テープ送り出しの張力により引っ張られているが、テープ送りの逆転により、それぞれ152-1と151-1のようにたるませた状態となる。このとき、印刷ヘッド105の位置では、透明テープ151とインクリボン153は印刷ヘッド105とプラテンローラ149に圧着され動くことはない。ここでテープカットされると、両面粘着テープ152-1と透明テープ151-1はカッタに引っ張られわずかに送られるが、やはり、透明テープ151とインクリボン153は印刷ヘッド105とプラテンローラ149に圧着され動くことはない。テープカット後にテープ送りは正転され、両面粘着テープ152-1と透明テープ151-1は元の張った状態に戻る。正転させるとき、逆転の時より少ないパルス数分戻すことにより、余分に引っ張り出してしまうことのないよう制御する。」(段落【0039】)

2.引用例1記載の発明の認定
引用例1の記載キによれば、印字は1列毎に行われ、ドット列間の距離d1だけステップモータ103が駆動されテープ送りが行われるのだから、記載カの「複数の発熱体」により1列の印字が行われること、及び1列の印字が終了してから次の1列の印字開始までにドット列間の距離(以下「1列分」という。)だけテープ送りが行われることは明らかである。
記載ウの「印刷テープ」と記載エの「記録紙」に相違はなく(随所に「テープ」とあるのも同義である。)、記載エの「カット前とカット後の印刷結果がずれてしまうと言う問題点」とは記載ウの「カット中に記録紙が移動してしまい、印刷テープがカッタに引っ張られテープ送り方向に移動してしまう。その結果次の印刷列208と印刷停止前の印刷列207のドット間距離が他のドット間距離とくらべて大きくなり、その結果印刷の縦抜けとなってしまう」ことと認められる。テープが移動しなければ印刷の縦抜けはないのであるから、テープをカットするに際しては、カット前又はカット後のどちらかで1列分テープが送られると認めることができ、それは記載エ「従来から印刷途中で記録紙をカットする試み」にも当てはまる。
したがって、記載エに「従来」とあるテーププリンタは、
「1列に配置した複数の発熱体を有する印刷ヘッドと印刷媒体であるテープと該テープを移送する駆動源となるモータと、前記テープに文字・図形等を印刷し、所定の位置で該テープをカットするカット手段を有し、1列の印字が終了してから次の1列の印字開始までに1列分テープ送るテーププリンタであって、
文字・図形等の印刷途中で、印刷を中断し、前記テープをカットした後印刷を再開し、カット前又はカット後のどちらかで1列分テープを送るテーププリンタ。」(以下「従来技術」という。)
また、印刷の縦抜けを解消したものとして引用例1に記載されたテーププリンタは次のようなものである。
「1列に配置した複数の発熱体を有する印刷ヘッドと印刷媒体であるテープと該テープを移送する駆動源となるモータと、前記テープに文字・図形等を印刷し、所定の位置で該テープをカットするカット手段を有し、1列の印字が終了してから次の1列の印字開始までに1列分テープ送るテーププリンタであって、
文字・図形等の印刷途中で、印刷を中断し、前記テープをカットした後印刷を再開し、カット前又はカット後のどちらかで1列分テープを送るものであり、前記テープのカットの直前にテープを送るテープ送りローラを前記テープをたるませるため所定量分逆転させる制御手段と、この後にテープをカットする制御手段と、逆転させた所定量分以下を正転させる制御手段と、印刷を再開する制御手段とを有するテーププリンタ。」(以下「引用発明1」という。)

3.本件発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「列」、「印刷ヘッド」及び「テープ」と本件発明の「ライン」、「印字ヘッド」及び「被印字媒体」にはそれぞれ相違はないから、引用発明1の「印刷ヘッド」は「印字用の発熱体がライン状に配置された印字ヘッド」であり、同ヘッドを駆動して被印字媒体に1ラインづつ印字する印字手段を引用発明1が備えることは明らかである。
引用発明1において「1列の印字が終了してから次の1列の印字開始までに1列分テープ送る」ことと、本件発明1において「前記印字手段による各ラインの印字が終了し次のラインの印字が開始されるまでの間に前記被印字媒体を次のラインの印字位置まで搬送する」ことにも相違がない。
引用発明1の「カット手段」は本件発明1の「カッタ手段」に相当し、引用発明1のそれが「前記印字ヘッドから前記被印字媒体の搬送方向に離間して設けられ」ており、「その離間位置から先に搬送された前記被印字媒体を切断する」ことは明らかである。当然引用発明1においても、「前記印字手段による1ラインづつの印字と前記印字手段による各ラインの印字の間に前記モータによる前記被印字媒体の次のラインの印字位置への搬送が繰り返されることにより、前記被印字媒体が所定の距離だけ搬送されて前記印字手段による所定番目のラインの印字が終了したときに」モータが停止されてテープ(被印字媒体)が切断される。厳密には、引用発明1ではテープをたるませた状態で切断するため、カッタ位置から先に搬送されたテープを切断するのではなく、カッタ位置よりも逆転量分だけ先に搬送されたテープを切断するというべきかもしれないが、そのことを別途相違点として認定するとしても、後記認定の相違点に係る本件発明の構成を採用した場合には、自動的に満たされる構成であるから、ここでは相違点として扱わない。
引用発明1の「印刷を再開」と「本件発明1」の「前記所定番目のラインに続くラインについて前記印字手段による印字動作と前記モータによる前記被印字媒体の搬送動作を再開」にも相違がない。ただし、被印字媒体切断前後の印字動作及び搬送動作については、本件発明と引用発明1では相違する。
そして、引用発明1の「テーププリンタ」は「印刷装置」の一種である。
したがって、本件発明と引用発明1とは、
「印字用の発熱体がライン状に配置された印字ヘッドを駆動して被印字媒体に1ラインづつ印字する印字手段と、
前記印字手段による各ラインの印字が終了し次のラインの印字が開始されるまでの間に前記被印字媒体を次のラインの印字位置まで搬送するモータと、
前記印字ヘッドから前記被印字媒体の搬送方向に離間して設けられその離間位置から先に搬送された前記被印字媒体を切断するカッタ手段とを備えた印刷装置において、
前記印字手段による1ラインづつの印字と前記印字手段による各ラインの印字の間に前記モータによる前記被印字媒体の次のラインの印字位置への搬送が繰り返されることにより、前記被印字媒体が所定の距離だけ搬送されて前記印字手段による所定番目のラインの印字が終了したときに、前記モータの駆動を行うことなく前記被印字媒体の搬送を停止させる第1の制御手段と、
前記第1の制御手段により前記印字手段の駆動及び前記被印字媒体の搬送が停止された状態で前記カッタ手段により前記被印字媒体が切断された後に、前記所定番目のラインに続くラインについて前記印字手段による印字動作と前記モータによる前記被印字媒体の搬送動作を再開させる第2の制御手段と、
を具備した印刷装置。」である点で一致し(この一致点は、本件発明と従来技術との一致点でもある。)、次の点で相違する。
〈相違点〉本件発明では、「印字手段による所定番目のラインの印字が終了したときに、前記モータの駆動を行うことなく前記被印字媒体の搬送を停止させる」に際し、「前記モータによる前記所定番目のラインの次のラインの印字位置への搬送を行わないように」し、「被印字媒体が切断された後に、前記モータによる前記被印字媒体の搬送を停止させたままの状態で前記印字手段によって前記所定番目のラインを重複して印字し、その後に前記モータにより前記被印字媒体を前記所定番目のラインの次のラインの印字位置まで搬送してから」印字再開するのに対し、引用発明1では「テープのカットの直前にテープを送るテープ送りローラを前記テープをたるませるため所定量分逆転させる制御手段と、この後にテープをカットする制御手段と、逆転させた所定量分以下を正転させ」てから印字再開する点(なお、従来技術は、相違点に係る本件発明の構成も、引用発明1の構成も備えない。)。

4.相違点についての判断及び本件発明の進歩性の判断
本件明細書には「前記ラベルテープ1の先端に生じた不要余白部(l2 )を切断するために、前記図7(C)で示したように、印字処理及びテープ搬送処理を一旦中断してカッタを駆動し、該不要余白部(l2 )を切断分離すると、その切断圧力により、ラベルテープ1がカッタ位置Cの方向に引かれるため、該ラベルテープ1における印字中断位置も矢印kで示すテープ搬送方向に微少にずれ、印字再開位置との間に印字の縦抜けが生じる問題がある。」(段落【0012】)との記載があり、これは引用例1の記載ウ,エと実質同一課題を記載したものであり、本件発明及び引用発明1は相違点に係るそれぞれの発明の構成を採用することにより(従来技術を出発点として)、同課題を解決したものである。
より具体的には、「ラベルテープ1がカッタ位置Cの方向に引かれる」ことが原因となっての「印字の縦抜けが生じる問題」をなくすることが、本件発明及び引用発明1の共通課題であって、引用発明1は原因たる「テープがカッタに引っ張られテープ送り方向に移動」ことを「テープをたるませる」ことにより除去した発明であり、本件発明は原因を除去する代わりに、所定番目のラインの印字が終了後次のラインの印字位置への搬送を行わなず、被印字媒体が切断された後に前記所定番目のラインを重複して印字することにより、印字の縦抜けをなくした発明である。
ところで、何らかの原因により解決すべき問題点がある場合に、原因を除去するか、原因は放置しておいて事後的に適宜の対策を施し問題点を解消又は減少させることは、技術分野を問わず行われることであり、引用発明1は前者(原因除去)を採用したものであるが、後者(事後的対策)に変更しても差し支えないことは明らかである。そして、前者(原因除去)であればその原因を究明し、原因ごとに対策は異なるであろうが、後者(事後的対策)であれば、印刷中断時に被印字媒体が移動するという現象だけが対策対象となり、移動の究極的原因が何であるかは関係がない。

平成17年7月5日付け取消理由に引用した特開平1-238370号公報(以下「引用例2」という。)には、
「ファクシミリ受信装置においては、一般的に感熱記録装置または熱転写記録装置が用いられる。この場合、発熱素子を例えば8〜16dot/mm程度の密度で直線的に並べた記録紙幅に対応する幅のライン型のサーマルヘッドを用い、サーマルヘッドの発熱体素子並設方向を主走査方向(水平走査方向)とし、紙送り方向を副走査方向(垂直走査方向)としてライン毎の画情報を主走査により、また、次のラインの記録に移るには副走査を行うことによつて記録を実施して行く。」(2頁左上欄15行〜右上欄4行)、
「ファクシミリ伝送では画信号をデータ圧縮して送るので、伝送速度が一定化せず、従って、記録速度も一定化しない。・・・特に、記録状態から停止状態に入るときには慣性の法則から必ず上記ピッチよりオーバランすることになる。そして、送りが多過ぎる場合には前のラインと次のラインとの間にすき間が生じて記録像の劣化を招く。」(3頁右下欄7〜19行)及び
「記録実行状態から復号に手間どって記録停止の状態に入つた時、副走査方向の送りが停止となるので、前記慣性によるオーバーランのために復号が終ってその次のラインの記録が実行されると上のラインLNbと下のラインLNcとの間に白ぬけEが生じる。そこで、復号により停止が生じるとき、これを検出する機能を持たせ、この停止検出時に最後の記録終了時点からオーバランするまでの間における予め定めた一部タイミングにおいて第7図(b)に示すように再度、前ライン(LNb)の画信号で1ライン分の記録を行ない(LNb’)、これによつて形成される追記ドットD2’により白ぬけを無くすようにする。そして、復号が済んでからLNcのドットD3を記録する。」(4頁左上欄11行〜右上欄4行)
との各記載がある。これら記載によると、引用発明1(又は従来技術)と引用例2記載のファクシミリ受信装置は、発熱体(発熱素子)をライン状に配置し、ライン毎の画情報を主走査により、次のラインの記録に移るには副走査を行うことによつて記録を実施する印刷装置である点、及びテープ若しくは記録紙が予定以上に送られた場合に縦抜け(白ぬけ)となる点で共通することが明らかである。そして、引用例2記載の技術では、「前のラインと次のラインとの間にすき間が生じ」るため、「前ライン(LNb)の画信号で1ライン分の記録」することにより、白ぬけをなくしたものである。そうであれば、相違点に係る引用発明1の構成(原因除去による縦抜け解消手段)を、引用例2記載の白ぬけ解消手段を採用することにより事後的対策に変更すること、すなわち、テープ切断によるテープ移動分に対して切断直前の印字データを再度印字することは当業者にとって想到容易である。
ところで、引用発明1又は従来技術では、カット前に1列分(1ライン分)テープを送るのか、カット後に1列分テープを送るのかによって、格別の印刷品位上の相違はない。しかし、引用例2記載の技術を採用して、縦抜けを解消する場合には、切断直前の印字データを再度印字する際に、直前の印字列から1列分以上テープが送られていてはならないことは自明である。引用例2第4図(a)及び(b)を比較すると、追記ドットD2’を形成しない(a)において、ドットD2とドットD3の間隔は、本来の1ライン分よりも大きく、「最後の記録終了時点からオーバランするまでの間における」とあるのは、オーバランして停止するまで待っていたのでは、ドットD2と追記ドットD2’の間隔が1ライン分を超え白ぬけを解消できないからである。そして、引用発明1に引用例2記載の技術を採用するに当たり、カット前に1列分テープを送ったのでは、切断時のテープ移動と相俟って、カット直前の印字列から1列分以上テープが送られることになってしまい、縦抜けを解消できないことが自明である。換言すれば、引用発明1に引用例2記載の技術を採用する場合には、カット直前の列を印字した後は、テープを送らずに切断作業に入り、カット後に直前列のデータを再印字してから1列分テープを送ることは必然的付随事項である。
したがって、相違点に係る本件発明の構成は、引用発明1及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に想到することができた構成である。
特許権者は、「引用例2の発明では、記録再開時には停止直前に記録した画信号の次の画信号から記録を行うように構成されているため、オーバーラン時の停止直前に記録した画信号とその上に重ねて記録される再開時の画信号とが異なる信号であるため、記録の連続性が損なわれることになります。」(平成17年9月12日付け意見書5頁7〜10行)と主張するので検討する。引用例2記載の発明は、停止までに1ライン分を超える長さの記録紙が送られる(既に述べたように第7図(a)から明らかであり、その原因はオーバーランである。)ことにより白ぬけが生じることを解消するために、停止直前の画信号を再度記録することで、白ぬけとなる箇所を埋める発明である。この技術思想を引用発明1に採用することが当業者にとって想到容易なのであって、記録再開時の画信号が何であるかは、引用発明1に引用例2記載の技術を採用する場合に考慮する必要がないことがらである。要するに、特許権者の主張は、記録停止・再開前後の画信号という観点に固執した主張であり、テープ(記録紙)の不都合な移動に着目した主張ではない。テープ(記録紙)の不都合な移動に着目すれば、引用発明1及び引用例2記載の技術に基づいて相違点に係る本件発明の構成に容易に至ることは既に述べたとおりであるから、上記主張によって本件発明の進歩性を肯定することはできない。
また、相違点に係る本件発明の構成を採用したことによる、予測困難なほどの作用効果を認めることもできない。
したがって、本件発明は引用発明1及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
本件発明は引用発明1及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1に係る特許は、特許法29条2項の規定により拒絶をしなければならない特許出願に対してされた特許である。すなわち、請求項1に係る特許は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)4条2項の規定により、取り消されなければならない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
印刷装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】印字用の発熱体がライン状に配置された印字ヘッドを駆動して被印字媒体に1ラインづつ印字する印字手段と、
前記印字手段による各ラインの印字が終了し次のラインの印字が開始されるまでの間に前記被印字媒体を次のラインの印字位置まで搬送するモータと、
前記印字ヘッドから前記被印字媒体の搬送方向に離間して設けられその離間位置から先に搬送された前記被印字媒体を切断するカッタ手段とを備えた印刷装置において、
前記印字手段による1ラインづつの印字と前記印字手段による各ラインの印字の間に前記モータによる前記被印字媒体の次のラインの印字位置への搬送が繰り返されることにより、前記被印字媒体が所定の距離だけ搬送されて前記印字手段による所定番目のラインの印字が終了したときに、前記搬送手段による前記所定番目のラインの次のラインの印字位置への搬送を行わないように、前記モータの駆動を行うことなく前記被印字媒体の搬送を停止させる第1の制御手段と、
前記第1の制御手段により前記印字手段の駆動及び前記被印字媒体の搬送が停止された状態で前記カッタ手段により前記被印字媒体が切断された後に、前記モータによる前記被印字媒体の搬送を停止させたままの状態で前記印字手段によって前記所定番目のラインを重複して印字し、その後に前記モータにより前記被印字媒体を前記所定番目のラインの次のラインの印字位置まで搬送してから、前記所定番目のラインに続くラインについて前記印字手段による印字動作と前記モータによる前記被印字媒体の搬送動作を再開させる第2の制御手段と、
を具備したことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば帯状記録紙を被印刷媒体として印刷するラベルプリンタ,ファクシミリ等の印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オーディオカセットやビデオカセットに貼付けてその内容を記すインデックスラベル、あるいは種々の所持品に貼付けてその所有者を記すネームラベル等をオリジナルで作成する装置の1つとして、例えばラベルプリンタが提供されている。
【0003】
このラベルプリンタは、多数の文字入力キーを備えた文書作成機能を有し、この文書作成機能により任意に作成した文字列からなる文書データ等を、印刷キーを操作することで被印字データとしてラベル状のテープにサーマル印字ヘッドを介して熱転写印刷して出力するもので、この印刷されたラベルテープは、順次搬送されて装置本体側面のテープ排出口より外部に排出され、前記印字ヘッドとテープ排出口との間に配設されたカッタにより切断分離されるようになっている。
【0004】
ここで、前記サーマル印字ヘッドとカッタとの間には、構造上、ある程度の間隔が存在するため、ラベルテープの先端と被印字データの印字開始位置との間には、前記ヘッド〜カッタ間隔に対応する長さの余白部が生じることになる。
【0005】
このため、ラベルテープに対する実際の印字に際しては、印字開始位置よりも前に必要な先端余白長を予め設定し、この先端余白長よりもさらに前の不要余白部分を、前記カッタにより切断分離させている。
【0006】
図7はラベルプリンタのラベルテープに対する被印字データの印字状態を示す図である。
図7において、1はラベルテープ、Pはサーマル印字ヘッドの配置位置(印字開始位置)、Cはカッタの配置位置(テープ切断位置)であり、初期状態では、図7(A)に示すように、前回印字の際のテープ切断により、カッタ位置Cを先端としてラベルテープ1がセットされている。
【0007】
ここで、被印字データの印字に際しては、ヘッド位置Pとカッタ位置Cとの間隔Lの範囲内において、印字開始位置Pよりも前に必要な先端余白長l1(l:エル)が予めキー入力により数値設定されるもので、この場合、前記P〜C間隔Lから前記先端余白長l1が減算されて、印字開始後におけるラベルテープ1の不要余白長l2が求められる。
【0008】
すると、図7(B)に示すように、ヘッド位置Pにおける被印字データの1ライン印字毎にラベルテープ1は矢印kで示す方向に搬送されるもので、ここで、ラベルテープ1の印字開始からの搬送距離が前記不要余白長l2に達することで、前記予め設定された先端余白長l1を残して、ラベルテープ1の不要余白部が、カッタ位置Cよりも先に搬送されたことが検出されると、被印字データの印字処理及びラベルテープ1の搬送処理が一旦停止され、図7(C)に示すように、カッタが駆動されて前記ラベルテープ1の不要余白部が切断分離される。
【0009】
これにより、ラベルテープ1の先端には、所定の先端余白部(l1)が設定されるもので、この後、図7(D)に示すように、1ライン毎の印字処理及びテープ搬送処理が再開され、被印字データ「ABC」がラベルテープ1に印字されるようになる。
【0010】
そして、図7(E)に示すように、被印字データの最終の印字文字「C」がヘッド位置Pにおいて印字終了した時点からのラベルテープ1の搬送距離が、予め設定された後端余白長l3とC〜P間隔Lとを加算した「l3+L」に達することで、印字後ラベルテープ1の後端に所定の後端余白部(l3)が得られたことが検出されると、印字処理及びテープ搬送処理が停止され、カッタが駆動されて印字済みラベルテープ1が切断分離される。
【0011】
これにより、ヘッド位置Pとカッタ位置Cとの間隔Lが存在しても、予め設定された先端余白長l1に応じて不要余白部(l2)が切断分離され、所定の先端余白部(l1)及び後端余白部(l3)を有する印字済みラベルテープ1が得られるようになる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記ラベルテープ1の先端に生じた不要余白部(l2)を切断するために、前記図7(C)で示したように、印字処理及びテープ搬送処理を一旦中断してカッタを駆動し、該不要余白部(l2)を切断分離すると、その切断圧力により、ラベルテープ1がカッタ位置Cの方向に引かれるため、該ラベルテープ1における印字中断位置も矢印kで示すテープ搬送方向に微少にずれ、印字再開位置との間に印字の縦抜けが生じる問題がある。
【0013】
図8は前記ラベルテープ切断のために印字の中断が生じた場合の従来の1文字印字動作に対応するヘッド通電信号STBとテープ搬送モータパルス信号φ1〜φ4との関係を示すタイミングチャートである。
【0014】
図9は前記ラベルテープ切断のために印字の中断が生じた場合の従来の1文字印字状態を示す図である。
この場合、印字ヘッドは1ライン8ドットの分解能を有し、1文字8×8ドットで印字されるものとし、また、テープ搬送モータは2相励磁式のステップモータで、1ステップで1ライン分テープ搬送されるものとして説明する。
【0015】
すなわち、タイミングT0におけるモータパルスφ3,φ4の出力により印字ヘッドが印字ラインP0にセットされている状態で、ヘッド通電信号Aが出力されると、被印字データの第1ラインaが印字されると共に、タイミングT1においてモータパルスφ4,φ1が出力されることでラベルテープ1が1ライン分搬送され、印字ヘッドが印字ラインP1にセットされる。
【0016】
そして、ヘッド通電信号Bが出力されると、被印字データの第2ラインbが印字されると共に、タイミングT2においてモータパルスφ1,φ2が出力されることでさらに1ライン分テープ搬送され、印字ヘッドが印字ラインP2にセットされる。
【0017】
つまり、印字ヘッドの通電による1ライン印字処理とモータパルスの出力による1ライン分のテープ搬送処理とが繰返されることで、被印字データが1ラインずつ印字されるもので、この後、ヘッド通電信号Cの出力により、被印字データの第3ラインcが印字されると共に、タイミングT3においてモータパルスφ2,φ3が出力されることで1ライン分テープ搬送され、印字ヘッドが印字ラインP3にセットされた際に、前記図7(B)で示したように、ラベルテープ1の印字開始からの搬送距離がその不要余白長l2に達したことが検出されると、タイミングTs1において印字ヘッドの通電処理及びモータパルスの出力処理は一旦停止される。
【0018】
ここで、前記図7(C)で示したように、カッタが駆動され、ラベルテープ1の不要余白部(l2)が切断分離されるもので、この際、印字ヘッドが印字ラインP3にセットされて搬送中断状態にあるラベルテープ1も、その切断圧力によりカッタ位置Cの方向に引かれるので、該ラベルテープ1にはΔlの搬送ずれが生じ、前記印字ヘッドの印字ラインP3はΔl分だけずれてP3′にセットされてしまう。
【0019】
そして、タイミングTs2において印字処理が再開されると、ヘッド通電信号Dの出力により、前記Δlだけずれの生じた印字ラインP3′に対応して被印字データの第4ラインdが印字されると共に、タイミングT4においてモータパルスφ3,φ4が出力されることで再び1ライン分テープ搬送され、印字ヘッドが印字ラインP4にセットされるもので、この後、さらに、印字ヘッドの通電による1ライン印字処理とモータパルスの出力による1ライン分のテープ搬送処理とが、タイミングT5→T6→T7と繰返され、順次被印字データの第5ライン→第6ライン→…と印字されて1文字分印字されるようになる。
【0020】
このように、従来のラベルプリンタでは、被印字データの印字処理を中断して、ラベルテープ1を切断し、印字処理を再開させると、前記ラベルテープ1の搬送ずれΔlに応じた幅の印字の縦抜けXが生じ、印字品質を低下させる問題がある。
【0021】
本発明は前記課題に鑑みなされたもので、被印字データの印字中における印字の中断に際し、被印字媒体にその搬送方向へのずれが生じた場合でも、印字抜けが生じることなく、良好な印字品質を維持することが可能になる印刷装置を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に係る印刷装置は、印字用の発熱体がライン状に配置された印字ヘッドを駆動して被印字媒体に1ラインづつ印字する印字手段と、前記印字手段による各ラインの印字が終了し次のラインの印字が開始されるまでの間に前記被印字媒体を次のラインの印字位置まで搬送するモータと、前記印字ヘッドから前記被印字媒体の搬送方向に離間して設けられその離間位置から先に搬送された前記被印字媒体を切断するカッタ手段とを備えたものにおいて、前記印字手段による1ラインづつの印字と前記印字手段による各ラインの印字の間に前記モータによる前記被印字媒体の次のラインの印字位置への搬送が繰り返されることにより、前記被印字媒体が所定の距離だけ搬送されて前記印字手段による所定番目のラインの印字が終了したときに、前記モータによる前記所定番目のラインの次のラインの印字位置への搬送を行わないように、前記モータの駆動を行うことなく前記被印字媒体の搬送を停止させる第1の制御手段と、前記第1の制御手段により前記印字手段の駆動及び前記被印字媒体の搬送が停止された状態で前記カッタ手段により前記被印字媒体が切断された後に、前記モータによる前記被印字媒体の搬送を停止させたままの状態で前記印字手段によって前記所定番目のラインを重複して印字し、その後に前記モータにより前記被印字媒体を前記所定番目のラインの次のラインの印字位置まで搬送してから、前記所定番目のラインに続くラインについて前記印字手段による印字動作と前記モータによる前記被印字媒体の搬送動作を再開させる第2の制御手段とを備えて構成したものである。
【0023】
【0024】
【作用】
つまり、本発明の印刷装置では、被印字媒体が所定の距離だけ搬送されて印字手段による所定番目のラインの印字が終了したときに、モータによる前記所定番目のラインの次のラインの印字位置への搬送を行わないように、モータの駆動を行わないことで、被印字媒体の搬送が停止され、カッタ手段により被印字媒体が切断された後に、印字再開の際には、モータによる被印字媒体の搬送を停止させたままの状態で印字手段によって前記所定番目のラインを重複して印字がなされ、その後にモータにより被印字媒体を前記所定番目のラインの次のラインの印字位置まで搬送してから、前記所定番目のラインに続くラインについて印字手段による印字動作とモータによる被印字媒体の搬送動作が再開されることになる。
【0025】
【0026】
【実施例】
以下図面により本発明の一実施例について説明する。
図1は本発明の印刷装置を搭載したラベルプリンタの構成を示す外観図である。
【0027】
プリンタ本体10の正面には、キー入力部11及び液晶ドットマトリクス表示部12が設けられる。
キー入力部11には、電源のON/OFF操作を行なう「ON」キー13a,「OFF」キー13b、ひらがなや英記号,英数字を入力する際に操作される各種文字記号入力キー14、英記号入力モードを設定する際に操作される「aA」キー15、ひらがな/カタカナ入力モードを設定する際に操作される「あア」キー16、空白入力する際に操作される「空白」キー17、各モードにおけるそれ以前の処理内容を取消す際に操作される「取消し」キー18、所望のかな/漢字変換を行なう際に選択的に操作される「変換」キー19a,「単漢字」キー19b,「無変換」キー19c、漢字変換等の選択/実行を行なう際に操作される「実行」キー20、各キー横に表示された機能選択を行なう際に操作される「機能」キー21、印刷処理を開始させる際に操作される「印刷」キー22、液晶表示部12上での画面スクロール操作やカーソル移動操作あるいはデータ選択操作を行なう際に操作されるカーソルキー「↑」23a,「↓」23b,「→」23c,「←」23d、そして、文字データ入力モードあるいは印刷モードを設定する際に操作される「モード」キー24が設けられる。
【0028】
また、前記キー入力部11には、その他にも、被印字データの作成表示の際に適宜操作される各種の機能キーが設けられる。
すなわち、例えば文字データ入力モードにおいて、“ABC”と文字入力してラベル印刷したい場合に、まず、文字記号入力キー14を操作して、「A」「B」「C」と入力すると、液晶表示部12上に“ABC”と順次表示される。
【0029】
そして、印刷モードを設定して「印刷」キー22を操作すると、前記入力文字列“ABC”がラベルテープ32aに印刷されて出力される。
一方、前記液晶ドットマトリクス表示部12に隣接するプリンタ本体10の内部には、その一部を切り欠いて示すように、カセット装着部31が設けられ、このカセット装着部31には、インクテープカセット32が装着されて使用される。
【0030】
前記インクテープカセット32には、前記被印刷データが印刷される接着剤付きラベルテープ32aと該ラベルテープ32aに対する印刷用のインクリボン32bが備えられ、ラベルテープ32aは転写部32cにおいてインクリボン32bと平行接触して同時進行し、テープ繰出し部32dから繰出されるよう構成される。
【0031】
前記カセット装着部31に対し、前記インクテープカセット32は、前記キー入力部11を除くプリンタ本体10の正面上部を被う開閉蓋10aを、ロックスイッチ10bを操作して開放することで着脱可能になるもので、該インクテープカセット32の内部に配されたリボン巻取りスプール33は、図示しないテープ搬送モータにより回転駆動され、このインクリボン32bの巻取りに伴ないこれに接触するラベルテープ32aも同時並行して引出される。
【0032】
この場合、プラテンローラ34はインクテープカセット32の転写部32cにおけるラベルテープ32aに沿って位置設定され、また、サーマルヘッド35は同転写部32cにおけるインクリボン32bに沿って位置設定される。
【0033】
また、前記サーマルヘッド35のライン型発熱素子に対応する印字位置からラベルテープ32aの搬送方向に一定距離Lで離間したテープ繰出し部32dには、該テープ繰出し部32dより先に搬送されたラベルテープ32aを切断分離するためのカッタ36が配置される。
【0034】
ここで、前記転写部32cにおいて、ラベルテープ32aとインクリボン32bとは、前記インクテープカセット32の入替えに伴ない開閉蓋10aが閉じられた際に、プラテンローラ34とサーマルヘッド35との間に挾持されるもので、開閉蓋10aが開放されると、プラテンローラ34がサーマルヘッド35から離れ、インクテープカセット32が入替え可能な状態に設定される。
【0035】
すなわち、接着剤付きのラベルテープ32aに対する被印刷データの印刷動作時には、該ラベルテープ32aとインクリボン32bとは、リボン巻取りスプール33及びプラテンローラ34の回転により、転写部32cにおいてそれぞれ同一の速度で搬送され、サーマルヘッド35がプラテンローラ34との間に前記ラベルテープ32aとインクリボン32bとを挟み付けて熱転写動作することにより、被印字データが順次ラベルテープ32aに印刷されてテープ繰出し部32dから繰出され、その印刷済み部分がプリンタ本体10の外部に排出される。
【0036】
そして、1ラベル分の印刷が終了すると、カッタ36により印刷済みラベルテープ32aが切断分離される。
図2は前記ラベルプリンタの電子回路の構成を示すブロック図である。
【0037】
このラベルプリンタの電子回路は、制御部(CPU)40により回路全体の動作制御が司られる。
制御部40には、前記キー入力部11が接続されると共に、表示メモリ41及び表示ドライバ42を介して液晶ドットマトリクス表示部12が接続され、また、印刷制御部43を介してサーマルヘッド35及びテープ搬送モータ44が接続され、カッタ駆動部45を介してカッタ36が接続される。
【0038】
その他、前記制御部40には、ROM46、キャラクタジェネレータ47、RAM48が接続される。
前記ROM46には、各種データ入力モードにおける被印刷データの作成制御プログラムや印刷制御プログラム等、制御部40によるシステム制御プログラムが予め記憶される。
【0039】
また、前記キャラクタジェネレータ47には、前記キー入力部11により入力可能な全ての文字・記号・命令コードに対応するキャラクタパターンデータが予め記憶される。
【0040】
前記RAM48には、文字データ入力モードにおいて入力された文字データが被印字データとして記憶される印字データメモリ、印刷モードにおける被印字データの印字開始に際し、予めキー入力設定されるラベルテープ32aの先端余白長l1(l:エル)や後端余白長l3が記憶されると共に、該先端余白長l1と前記サーマルヘッド35からカッタ36までの距離Lとに基づき算出される不要余白長l2が記憶される余白長レジスタ等が備えられる。
【0041】
前記印刷制御部43は、被印字データの印刷開始に応じて前記RAM48内の印字データメモリより順次読出される被印字データが、サーマルヘッド35によりラベルテープ32aに1ラインデータずつ印刷出力されるのに同期して、テープ搬送モータ44を駆動して前記リボン巻取りスプール33を回転駆動させるもので、これにより、ラベルテープ32aはその1ライン毎の印刷に伴ないインクテープカセット32から1ライン分ずつ繰出されて搬送排出される。
【0042】
なお、図示しないが、前記カッタ36は、例えば固定刃と可動刃とを備え、可動刃はカムを介して駆動モータに連結されており、駆動モータの駆動により可動刃が作動し、これら刃と刃の間でテープ切断を行なうものである。そして、前記駆動モータは、制御部(CPU)40の制御を受け、カッタ駆動部45からモータ駆動電圧が供給されることにより駆動される。
【0043】
次に、前記構成によるラベルプリンタの動作について説明する。
このラベルプリンタを用いて任意のラベルを作成する場合、まず、モードキー24を操作して入力モードを設定し、印刷したい文字・記号列を入力する。
【0044】
制御部40は、キー入力部11から入力されたデータをRAM48内の印字データメモリに保存し、さらに、キャラクタジェネレータ47を用いて表示フォントに変換し、表示データを表示メモリ41にセットする。表示ドライバ42は表示メモリ41に記憶された表示データを液晶ドットマトリクス表示部12に表示する。また、制御部40は、キー入力部11からの指示に応じて仮名漢字変換等の処理も行なう。
【0045】
一方、印刷に際して、ラベルテープ32aの余白の長さを設定する場合、ユーザはモードキー24を操作し、余白設定モードを設定する。この余白設定モードの設定に応じて、制御部40は表示メモリ41及び表示ドライバ42を介して液晶ドットマトリクス表示部12に余白設定画面を表示させる。
【0046】
ここで、ユーザがキー入力部11を操作して、例えば先端余白長l1及び後端余白長l3に適当な数値を設定すると、その余白長データl1,l3は、RAM48内の余白長レジスタに記憶されると共に、この余白長レジスタには、さらに、サーマルヘッド35の印字位置Pとカッタ36のテープ切断位置Cとの一定距離Lから前記先端余白長l1を減算して求めた不要余白長l2が記憶される(図7参照)。
【0047】
なお、余白長として特に数値を設定しない場合には、前記一定距離Lがそのまま先端余白長l1として設定される。
そして、入力した被印字データを印刷する場合、モードキー24を操作して印刷モードに設定した後、キー入力部11の印刷キー22を操作する。このキー操作に応じて、制御部40はROM46に記憶された制御プログラムに従って印刷処理を開始するもので、これにより、RAM48内の印字データメモリに記憶された被印字データが順次1ラインデータずつ読出され、印刷制御部43からサーマル印字ヘッド35を介してラベルテープ32aに熱転写印字されると共に、テープ駆動モータ44により該ラベルテープ32aが1ライン分ずつ搬送される(図7参照)。
【0048】
ここで、前記被印字データの印刷処理に伴なう1文字印刷処理について説明する。
図3は前記ラベルプリンタの1文字印刷処理を示すフローチャートである。
【0049】
図4は前記ラベルプリンタの1文字印刷処理に伴なう1文字印字動作に対応するヘッド通電信号STBとテープ搬送モータパルス信号φ1〜φ4との関係を示すタイミングチャートである。
【0050】
図5は前記ラベルプリンタの1文字印刷処理に伴なう1文字印字状態を示す図である。
この場合、サーマル印字ヘッド35は1ライン8ドットの分解能を有し、1文字8×8ドットで印字されるものとし、また、テープ搬送モータ44は2相励磁式のステップモータで、1ステップで1ライン分テープ搬送されるものとして説明する。
【0051】
すなわち、印刷制御部43からテープ搬送モータ44に対するタイミングT0におけるモータパルスφ3,φ4の出力によりサーマル印字ヘッド35がラベルテープ32aの印字ラインP0にセットされている状態で、RAM48内の印字データメモリに対する制御部40からのアドレス指定により、被印字データの第1ラインaが読込まれ、ヘッド通電信号Aが出力されると、前記ラベルテープ32aの印字ラインP0に対して被印字データの第1ラインaが印字される(ステップS1,S2)。
【0052】
この際、被印字データの印刷開始からのラベルテープ32aの搬送距離が、前記RAM48内の余白長レジスタに予め記憶されている不要余白長l2に達したか否か判断され、該不要余白長l2の切断のための印刷停止(中断)を行なうか否か判断されるもので、ここで、ラベルテープ32aの搬送距離が不要余白長l2に到達せず、印刷停止の必要無しと判断されると、タイミングT1においてモータパルスφ4,φ1が出力されることでラベルテープ32aが1ライン分搬送され、サーマル印字ヘッド35が印字ラインP1にセットされると共に、RAM48内の印字データメモリに記憶されている被印字データの第2ラインbがアドレス指定される(ステップS3→S4,S5)。
【0053】
すると、前記RAM48内の印字データメモリに対する1ラインデータずつのアドレス指定に応じて、1文字印刷が終了したか否か判断されるもので、この場合、前記ステップS5では、被印字データの第2ラインbがアドレス指定されているので、印刷終了ではないと判断され、再び前記ステップS1からの処理に復帰する(ステップS6→S1)。
【0054】
すなわち、ラベルテープ32aの印字ラインP1にサーマル印字ヘッド35がセットされている状態で、前記被印字データの第2ラインbが読込まれ、ヘッド通電信号Bが出力されると、前記ラベルテープ32aの印字ラインP1に対して被印字データの第2ラインbが印字される(ステップS1,S2)。
【0055】
ここで、ラベルテープ32aの搬送距離が前記不要余白長l2に到達せず、印刷停止の必要無しと判断されると、タイミングT2においてモータパルスφ1,φ2が出力されることでラベルテープ32aが1ライン分搬送され、サーマル印字ヘッド35が印字ラインP2にセットされると共に、RAM48内の印字データメモリに記憶されている被印字データの第3ラインcがアドレス指定される(ステップS3→S4,S5)。
【0056】
つまり、印字ヘッドの通電による1ライン印字処理毎に、ラベルテープ32a切断ための印刷停止が必要か否か判断されると共に、印刷停止が必要でない場合には、モータパルスの出力による1ライン分のテープ搬送処理が繰返されることで、RAM48内の印字データメモリに記憶されている被印字データがサーマル印字ヘッド35を介してラベルテープ32aに1ラインずつ印字される。
【0057】
この後、前記ステップS4,S5の処理により、ラベルテープ32aの印字ラインP2にサーマル印字ヘッド35がセットされている状態で、ステップS1,S2の処理を経て、被印字データの第3ラインcが読込まれ、ヘッド通電信号Cの出力により、前記ラベルテープ32aの印字ラインP2に対して被印字データの第3ラインcが印字された際に、ステップS3において、ラベルテープ32aの搬送距離が、前記RAM48内の余白長レジスタに予め記憶されている不要余白長l2に達したと判断されると、タイミングTs1において印刷制御部43によるヘッド通電処理及びモータパルスの出力処理は停止(中断)され、印刷再開待ちの状態に設定される(ステップS3→S7)。
【0058】
ここで、カッタ駆動部45を介してカッタ36が駆動され、該カッタ36より先に搬送されたラベルテープ32aの不要余白部(l2)が、例えば図7(C)で示すように切断分離されるもので、この際、印字ラインP2における第3ラインcの印字後に、該印字ラインP2にサーマル印字ヘッド35がセットされたまま印刷中断状態にあるラベルテープ32aも、その切断圧力によりカッタ36の方向に引かれるので、該ラベルテープ32aにはΔlの搬送ずれが生じ、前記サーマル印字ヘッド35の印字ラインP2はΔl分だけずれてP2′にセットされる。
【0059】
そして、キー入力部11における「実行」キー20が再操作されることで、タイミングTs2において印刷処理が再開されると、印字ラインP2→P3の更新処理がなされないまま、被印字データの第3ラインcが再び読込まれ、ヘッド通電信号Cの再出力により、前記Δlだけずれの生じた印字ラインP2′に対応して被印字データの第3ラインcが重複して印字される(ステップS7→S1,S2)。
【0060】
すなわち、被印字データの第3ラインcの印字後に、その印刷処理が中断再開された際には、ラベルテープ32aの搬送位置及び被印字データのアドレス指定はそのままにして、前記被印字データの第3ラインが再印字されるもので、これにより、印字ラインP2に対する第3ラインcの印字後にΔlの搬送ずれが生じた印字ラインP2′に対しても重ねて第3ラインcが印字され、印字の縦抜けが阻止されるようになる。
【0061】
そして、ステップS3において、印刷停止の必要無しと判断されると、タイミングT3においてモータパルスφ2,φ3が出力されることで再び1ライン分ラベルテープ32aが搬送され、サーマル印字ヘッド35が印字ラインP3にセットされると共に、RAM48内の印字データメモリに記憶されている被印字データの第4ラインdがアドレス指定される(ステップS3→S4,S5)。
【0062】
この後、さらに、サーマル印字ヘッド35の通電による1ライン印字処理とモータパルスの出力による1ライン分のテープ搬送処理とが、タイミングT4→T5→T6→と繰返されることで、順次被印字データの第4ラインd→第5ラインe→第6ラインf→…と印字されて1文字分の印字処理が終了される(ステップS1〜S6)。
【0063】
したがって、前記構成のラベルプリンタによれば、RAM48の印字データメモリに記憶された被印字データを、1ラインずつアドレス指定して読込み、印刷制御部43からサーマル印字ヘッド35を介してラベルテープ32aに印刷出力すると共に、その1ライン印刷処理毎に、テープ搬送モータ44にモータパルスを出力してラベルテープ32aを1ライン分ずつ搬送させ、サーマル印字ヘッド35の印字ラインを更新させる状態で、ある1ライン印字後に、例えばラベルテープ32aの印刷開始からの搬送距離がRAM48内の余白長レジスタに予め記憶されている不要余白長l2に達したことで、その印刷処理が中断されると共にラベルテープ32aの不要余白部がカッタ36により切断分離され、再び印刷処理が再開された際には、ラベルテープ32aの搬送位置及び被印字データのアドレス指定はそのままにして、直前の印字ラインが再印字されるので、前記カッタ36の切断圧力によりラベルテープ32aに搬送ずれが生じても、被印字データの同一ラインが重複印字されることで印字の縦抜けは防止され、印字品質の低下を阻止することができるようになる。
【0064】
なお、前記実施例において説明した1文字印刷処理では、1ラインデータの読込みヘッド通電による印字後に、印刷停止の有無を判断し、モータパルスを出力してテープ搬送し次の1ラインデータをアドレス指定する手順として説明したが、例えばテープ搬送及び1ラインデータのアドレス指定後に、指定された1ラインデータの読込みヘッド通電による1ライン印字を実行し、印刷停止の有無を判断する手順としてもよい。
【0065】
図6は前記ラベルプリンタの1文字印刷処理の他の実施例を示すフローチャートである。
すなわち、この他の実施例の1文字印刷処理によれば、モータパルスの出力によりラベルプリンタ32aが1ライン分搬送されると共に(ステップA1)、RAM48内の印字データメモリに記憶される被印字データの1ラインデータがアドレス指定された後に(ステップA2)、該1ラインデータの読込み(ステップA3)及びサーマル印字ヘッド35の通電(ステップA4)による1ラインデータの印字がなされ、例えばラベルテープ32a切断のための印刷停止の有無が判断される(ステップA5)。
【0066】
そして、この他の実施例における印字停止(中断)後の印字再開に際しても、前記実施例同様、印字ラインの更新処理を実行せずに、直前の1ラインデータを重複して印字するので(ステップA5→A7→A3,A4)、ラベルテープ32aに搬送ずれが生じていても、印字の縦抜けを阻止することができる。
【0067】
なお、上述の実施例では、カッタ36が制御部(CPU)40の制御を受けて作動するものとしたが、このカッタ36としては、手動操作で作動するものを使用してもよい。すなわち、カッタ36を固定刃と可動刃で構成すると共に、装置外より可動刃を作動させる操作機構を設けるものである。
【0068】
この場合には、上記の印字中断時に、表示部12に「テープのカットを行ない、処理後に実行キーを押してください。」というメッセージ表示をし、テープ切断処理後の「実行」キー20の押下操作で前記の印字再開処理を始めるように構成する。
【0069】
【発明の効果】
以上のように、本発明の印刷装置によれば、被印字媒体が所定の距離だけ搬送されて印字手段による所定番目のラインの印字が終了したときに、モータによる前記所定番目のラインの次のラインの印字位置への搬送を行わないように、モータの駆動を行わないことで、被印字媒体の搬送が停止され、カッタ手段により被印字媒体が切断された後に、印字再開の際には、モータによる被印字媒体の搬送を停止させたままの状態で印字手段によって前記所定番目のラインを重複して印字がなされ、その後にモータにより被印字媒体を前記所定番目のラインの次のラインの印字位置まで搬送してから、前記所定番目のラインに続くラインについて印字手段による印字動作とモータによる被印字媒体の搬送動作が再開されるようになる。
【0070】
【0071】
よって、本発明によれば、被印字データの印字中における印字の中断に際し、被印字媒体にその搬送方向へのずれが生じた場合でも、印字抜けが生じることなく、良好な印字品質を維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例に係わる印刷装置を搭載したラベルプリンタの構成を示す外観図。
【図2】
前記ラベルプリンタの電子回路の構成を示すブロック図。
【図3】
前記ラベルプリンタの1文字印刷処理を示すフローチャート。
【図4】
前記ラベルプリンタの1文字印刷処理に伴なう1文字印字動作に対応するヘッド通電信号STBとテープ搬送モータパルス信号φ1〜φ4との関係を示すタイミングチャート。
【図5】
前記ラベルプリンタの1文字印刷処理に伴なう1文字印字状態を示す図。
【図6】
前記ラベルプリンタの1文字印刷処理の他の実施例を示すフローチャート。
【図7】
ラベルプリンタのラベルテープに対する被印字データの印字状態を示す図。
【図8】
ラベルプリンタのラベルテープ切断のために印字の中断が生じた場合の従来の1文字印字動作に対応するヘッド通電信号STBとテープ搬送モータパルス信号φ1〜φ4との関係を示すタイミングチャート。
【図9】
前記ラベルテープ切断のために印字の中断が生じた場合の従来の1文字印字状態を示す図。
【符号の説明】
10…プリンタ本体、11…キー入力部、12…液晶ドットマトリクス表示部、13a…「ON」キー、13b…「OFF」キー、14…文字記号入力キー、15…「aA」キー、16…「あア」キー、17…「空白」キー、18…「取消し」キー、19a…「変換」キー、19b…「単漢字」キー、19c…「無変換」キー、20…「実行」キー、21…「機能」キー、22…「印刷」キー、23a…「↑」キー、23b…「↓」キー、23c…「→」キー、23d…「←」キー、24…「モード」キー、31…カセット装着部、32…インクテープカセット、32a…ラベルテープ、32b…インクリボン、32c…転写部、32d…テープ繰出し部、33…リボン巻取りスプール、34…プラテンローラ、35…サーマル印字ヘッド、36…カッタ、40…制御部(CPU)、41…表示メモリ、42…表示ドライバ、43…印刷制御部、44…テープ搬送モータ、45…カッタ駆動部、46…ROM、47…キャラクタジェネレータ、48…RAM、STB…ヘッド通電信号、φ1〜φ4…モータパルス、P0〜P7…印字ライン、a〜h…被印字1ラインデータ、Δl……搬送ずれ、L…ヘッド/カッタ位置間隔、l1…先端余白長、l2…不要余白長、l3…後端余白長
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-27 
出願番号 特願平6-64034
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B41J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 名取 乾治  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤本 義仁
砂川 克
登録日 2003-05-30 
登録番号 特許第3433354号(P3433354)
権利者 カシオ計算機株式会社
発明の名称 印刷装置  

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