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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B01J
審判 全部申し立て 特29条の2  B01J
管理番号 1130831
異議申立番号 異議2003-72873  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-11-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-26 
確定日 2005-11-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3410147号「燃料電池用燃料ガスの製造方法」の請求項1及び2に係る発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3410147号の請求項1及び2に係る発明の特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3410147号は、国内優先権の主張を伴って平成5年4月2日〔優先権主張番号(先の出願番号):特願平4-112338号、優先日:平成4年4月6日〕)に出願され、平成15年3月20日に特許の設定登録がなされたものであって、その特許につき、近藤武(以下、「異議申立人」という)より特許異議の申立がなされ、これに基づき取消理由を通知したところ、権利者より平成16年10月15日付けで訂正請求書及び特許異議意見書が提出されたものである。
なお、上記訂正請求書及び特許異議意見書を異議申立人に送付したところ異議申立人からは当該特許の取消につき何等の回答も得られなかった。

II.訂正の適否
II-1.訂正事項
平成16年10月15日付け訂正請求は、本件明細書につき、訂正請求書に添付された訂正明細書に記載されるとおりの、次の〈イ〉及び〈ロ〉の訂正を求めるものである。
以下、訂正前の明細書を「特許明細書」といい、訂正請求書に添付された訂正明細書を「本件明細書」という。
〈イ〉特許明細書の請求項1における、
「硫黄分を含有する炭化水素を脱硫剤で処理し、硫黄分を0.2ppm以下とした後、水蒸気改質触媒と接触させる、水素を主成分とする燃料電池用燃料ガスの製造方法において、前記脱硫剤として銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=95:5〜5:95の範囲にある銅-ニッケル合金系脱硫剤を用いることを特徴とする燃料電池用燃料ガスの製造方法。」を、
「硫黄分含有量が5ppm以下の炭化水素を脱硫剤で処理し、硫黄分を0.2ppm以下とした後、水蒸気改質触媒と接触させる、水素を主成分とする燃料電池用燃料ガスの製造方法において、前記脱硫剤として銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=95:5〜40:60の範囲にある銅-ニッケル合金系脱硫剤を用いて50〜400℃で処理することを特徴とする燃料電池用燃料ガスの製造方法。」に訂正する。
〈ロ〉特許明細書の段落0015の記載を、
「すなわち本発明は、硫黄分含有量が5ppm以下の炭化水素を脱硫剤で処理し硫黄分を0.2ppm以下とした後、水蒸気改質触媒と接触させ水素を主成分とする燃料電池用燃料ガスの製造方法において、前記脱硫剤として銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=95:5〜40:60の範囲にある銅-ニッケル合金系脱硫剤を用いて50〜400℃で処理することを特徴とする燃料電池用燃料ガスの製造方法に関する。」に訂正する。
II-2.訂正の適否の判断
II-2-1.訂正の目的の適否
上記〈イ〉の訂正は、具体的には、
〈イ-1〉請求項1における「硫黄分を含有する炭化水素」を「硫黄分含有量が5ppm以下の炭化水素」に訂正し、
〈イ-2〉請求項1における「銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=95:5〜5:95」を、「銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=95:5〜40:60」に訂正し、
〈イ-3〉請求項1における「を用いることを特徴とする燃料電池用燃料ガスの製造方法」を「を用いて50〜400℃で処理することを特徴とする燃料電池用燃料ガスの製造方法」に訂正するものである。
そして、当該〈イ-1〉の訂正は炭化水素の硫黄分の含有量を限定し、当該〈イ-2〉の訂正は脱硫剤の銅とニッケルとの重量比を限定し、また、当該〈イ-3〉の訂正は脱硫剤の処理につきその温度条件を限定するものであって、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記〈ロ〉の訂正は、上記請求項の訂正により不明瞭ないしは不一致となった発明の詳細な説明の記載を当該請求項の記載に整合させるものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
II-2-2.新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記〈イ-1〉〜〈イ-3〉及び〈ロ〉の訂正は、願書に添付した明細書の記載から自明なこととして導き出されるものであり、新規事項の追加には該当せず、また、それらは実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当しない。
II-2-3.訂正の適否の結論
よって、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.本件発明
特許明細書についての訂正請求は前記したとおり容認されたものであり、したがって、訂正後の本件特許第3410147号の請求項1及び2に係る発明(以下、必要に応じて、それぞれ、「本件発明1」及び「本件発明2」という)は、本件明細書の特許請求の範囲に記載される次のとおりのものである。
【請求項1】硫黄分含有量が5ppm以下の炭化水素を脱硫剤で処理し、硫黄分を0.2ppm以下とした後、水蒸気改質触媒と接触させる、水素を主成分とする燃料電池用燃料ガスの製造方法において、前記脱硫剤として銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=95:5〜40:60の範囲にある銅-ニッケル合金系脱硫剤を用いて50〜400℃で処理することを特徴とする燃料電池用燃料ガスの製造方法。
【請求項2】前記水蒸気改質触媒が貴金属系触媒であり、スチーム/カーボン比が2〜3であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用燃料ガスの製造方法。

IV.特許異議申立及び取消理由の概要
IV-1.特許異議申立
異議申立人は、以下の証拠を提示し、次のように主張する。
【理由-1】特許明細書の請求項1に係る発明(訂正後の本件発明1)は、特願平5-33927号の願書に最初に添付した明細書に替わる甲第1号証に記載された発明と同一であって、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
【理由-2】特許明細書の請求項1及び2に係る発明(訂正後の本件発明1及び2)は、甲第2〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、特許明細書の請求項1及び2に係る発明の特許は取り消されるべきものである。
甲第1号証:特願平6-228570号公報
甲第2号証:特開平2-204301号公報
甲第3号証:米国特許第4,923,836号明細書
甲第4号証:特開昭63-35403号公報
甲第5号証:特開平3-80937号公報
甲第6号証:特開平3-109942号公報
IV-2.取消理由
取消理由は、異議申立の上記理由-1及び理由-2により特許明細書の請求項1及び2に係る発明の特許は取り消されるべきものである、というものである。

V.証拠の記載内容
V-A.甲第2号証(特開平2-204301号公報)には、以下のことが記載されている。
(A-1)「硫黄分150wtppm以下の灯油留分を水素含有ガス存在下で圧力50kg/cm2・G以下、温度250〜400℃、LHSV0.2〜7h-1、水素/灯油比0.02〜1.0Nm3H2/kgの範囲で水素化脱硫触媒および硫化水素吸着剤と接触させたのち、スチーム/カーボン比0.1〜7.0mol/atomの範囲の水蒸気を加え、圧力50kg/cm2・G以下、温度150〜500℃、LHSV0.1〜10h-1の条件でNi系収着剤と接触させ、さらに所定量の水蒸気を添加して、または無添加で反応混合物をそのまま通常の改質条件下で水蒸気改質触媒と接触させることを特徴とする灯油留分から水素を製造する方法。」(第1頁左欄第5〜17行、特許請求の範囲)
(A-2)「本発明は水素含有ガス存在下で水素化脱硫触媒と硫化水素吸着剤を用いて灯油中の硫黄分を低減せしめたのち、水蒸気存在下でNi系収着剤を用いてさらに灯油中に残留する硫黄分を除去せしめ水蒸気改質触媒上で改質反応を行わせて水素を製造する方法に関する。」(第1頁左下欄末行〜右下欄第5行)
(A-3)「本発明で用いるNi系収着剤はNiを30〜70wt%含有するものがよく、銅、クロム、ジルコニウム、マグネシウムその他の金属成分を少量含んでいても使用することができる。」(第2頁右下欄第4〜7行)
(A-4)「灯油、水素含有ガスおよび水蒸気は・・・の条件下でNi系収着剤と接触させる。このような方法および条件で処理された灯油は硫黄分が0.2wtppm以下に低減され、次の段階の水蒸気改質の原料として十分適したものである。」(第3頁右下欄末行〜第4頁左上欄第6行)

V-B.甲第3号証(米国特許第4,923,836号明細書)には、以下のことが記載されている。
(B-1)「1.実質的に、NiO換算で1重量%以上の少なくとも一つのNi成分と、CuO換算で1重量%以上の少なくとも一つの銅成分と、クラッキング能力を有する結晶性モレキュラーシーブを含む酸性成分からなる触媒組成物。
2.結晶性モレキュラーシーブは、ゼオライト、そして、ZSM-5触媒、Yゼオライト、Xゼオライト、ゼオライトベータ、モルデナイト、ゼオライトLとゼオライトオメガから選ばれ、Ni成分はNiO換算で1〜20重量%であり、銅成分はCuO換算で5〜20重量%である、クレーム1で規定した組成物」旨(第16欄第38〜52行、クレーム1及び2)
(B-2)「発明の要約
この発明は、パラフィン系炭化水素を含有する原料が、原料中の硫黄の存在又は不存在下にノーマルパラフィン系炭化水素の異性化と同時に原料から硫黄成分を吸着することが可能な新規な二元機能触媒と接触させることにより、異性化(又は水添異性化)する方法に関する。
この二元機能触媒は、ある活性担体成分と組み合わされた、少なくともVIII群金属成分と少なくともIB群金属成分とを含む。
二元機能触媒は、原料に硫黄があるとき異性化(又は水添異性化)につき活性であるけれども、そのような活性は、原料に硫黄が5ppmwそして好ましくは全く含まれていないときにはより優れる。
更には、高度に安定した二元機能触媒が所望のときは、二元機能触媒は担体上にニッケルと銅の金属成分の双方を含有することが、高く推奨される。」旨(第2欄第35〜52行)
(B-3)「実施例II
実施例Iの触媒DFと類似の方法で、DFNiとDFCu/Niで示される二つの触媒を調製した。但し、触媒DFNiは、NiOで換算してニッケル酸化物を名目11.0wt%含み、触媒DFCu/Niは、名目11.0wt%(NiOとして)のニッケル酸化物と、CuOで換算して8.1wt%の銅酸化物(II)を含有し、両触媒は、LZ-210ゼオライト(アルミナに対するシリカの比率12.0)を含有する・・・サポートを有する。
それぞれの触媒は、実施例Iのrnu2反応器で、分離して、70時間、実施例1の炭化水素原料と接触させる。この炭化水素原料にはチオフェンがドープされ、硫黄換算で15ppmwの初期濃度を有している。
その触媒を、初期には、水素ガスと48hr、375℃、300psigで接触させ、それ以後、70hr間、実施例Iと同じ条件で原料と接触させた。但し、触媒DFNiのrunの場合には270℃に昇温し、触媒DFCu/Niの場合には285℃に昇温し、各runで初期に同じ異性化活性を持つように初期温度を選択した。
実施例Iの表IIにおいてR-2の炭化水素生成物に対する呼称に従って、次の表IVでは、各runの流出物から得られた異性化生成物を述べる。各runをとおして、その流出物は、硫黄濃度がゼロであることが観察された。
表IVでは、触媒DFCu/Niは触媒DFNiに比べてより高い異性化安定性を示す。」旨(第15欄第40行〜第16欄第16行)

VI.当審の判断
VI-1.理由-1について
ここでの無効理由は、『本件出願の先の出願である特願平4-112338号においては、脱硫剤として、「銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=95:5〜40:60の範囲」を規定していたが、本件出願においては、「銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=95:5〜5:95の範囲」に広げて出願したものであって、本件請求項1に係る発明における銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=40:60〜5:95の範囲にある脱硫剤を用いた態様のものは、先の出願に記載されたものでなく、したがって、本件請求項1に係る発明の上記態様のものは特許法第29条の2の適用については優先権の利益を享受できないものである』との異議申立人の主張に基づくものである。
しかし、本件請求項1における脱硫剤の銅とニッケルの重量比は、上記訂正により、「銅:ニッケル=95:5〜40:60の範囲」と限定されたものであり、その結果、本件発明1は、実質上、先の出願である特願平4-112338号の願書に添付した明細書に記載された範囲のものに限られることになったものである。
そうであれば、本件発明1の出願は、特許法第29条の2の適用につき、先の出願の時にされたものとみなされるものである。
してみれば、本件発明1の先の出願の出願日である平成4年4月6日(優先日)よりも後の出願日に出願された甲第1号証に係る出願により、本件発明1は特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないとはいえない。

VI-2.理由-2について
VI-2-1.本件発明1
甲第2号証の前記(A-1)及び(A-4)によれば、甲第2号証には、「硫黄分150wtppm以下の灯油留分を水素化脱硫触媒および硫化水素吸着剤と接触させたのち、温度150〜500℃の条件でNi系収着剤と接触させて灯油留分の硫黄分を0.2wtppm以下に低減し、さらに水蒸気改質触媒と接触させる、灯油留分から水素を製造する方法」に関する発明(以下、必要に応じて、「甲第2号証発明」という)が記載されているということができる。
そこで、本件発明1と甲第2号証発明とを対比する。
まず、甲第2号証発明の灯油留分、及び、水素化脱硫触媒および硫化水素吸着剤と接触させたものは、いずれも、本件発明1でいう炭化水素の概念に含まれる。
次に、甲第2号証発明のNi系収着剤は、水素化脱硫触媒および硫化水素吸着剤と接触させた灯油留分の硫黄分を低減させるものであるから、本件発明1の脱硫剤に相当する。
次いで、甲第2号証発明のNi系収着剤で灯油留分の硫黄分を低減させる処理は、温度150〜500℃の条件で実施されるものであるが、この処理温度は本件発明1の脱硫剤を用いる処理温度50〜400℃範囲と重複・一致する。
更に、甲第2号証発明では、そのNi系収着剤で硫黄分を低減させた灯油留分を、本件発明1と同じように、水蒸気改質触媒と接触させるものである。
よって、両者は、
「炭化水素を脱硫剤で処理し、硫黄分を0.2ppm以下とした後、水蒸気改質触媒と接触させる、水素を主成分とするガスの製造方法において、脱硫剤を用いて50〜400℃で処理するガスの製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。
【相違点1】炭化水素につき、本件発明1では、「硫黄分含有量が5ppm以下」であるとするのに対して、甲第2号証発明ではそのことが示されない点。
【相違点2】脱硫剤につき、本件発明1では、「銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=95:5〜40:60の範囲にある銅-ニッケル合金系」のものであるとするのに対して、甲第2号証発明ではNi系収着剤を用いるものであって、当該特定事項を具備しない点
【相違点3】製造するガスが、本件発明1では、「燃料電池用燃料」ガスであるとするのに対して、甲第2号証発明ではそのことが明示されない点
以下、上記相違点のうち、まず、相違点2に関する特定事項が容易に想到できるか否かにつき検討する。
【相違点2について】
本件明細書の記載(特に、従来技術に関する段落0002〜0012及び実施例及び比較例に関する0028〜0039の記載)によれば、炭化水素を水蒸気改質して燃料電池用燃料ガスを製造するに際して、その炭化水素の硫黄分を低減させる従来のNi系等の脱硫剤では、300℃を超える比較的高温域での処理では炭素析出が著しく、また、脱硫能力が不十分であるという問題があったところ、本件発明1では、燃料電池用燃料ガスの製造方法において、その脱硫剤として、「銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=95:5〜40:60の範囲にある銅-ニッケル合金系」のものを採択することにより、その余の構成と相俟って、上記問題を解消することができたものである。
これに対して、甲第2号証発明は、本件発明1でいう従来問題とされていたNi系収着剤(脱硫剤)を用いるものに過ぎないものである。
他に、甲第2号証には、その前記(A-3)によれば、クロム、ジルコニウム、マグネシウム等と並んで、偶々、銅を少量、Ni系収着剤に含んでもよい旨示されるものの、そこでのものは、本件発明1におけるように比較的高温域での炭素析出の抑制につき配慮するものではなく、また、本件発明1のようにNi5〜60に対して95〜40重量比の如くCuを多量に配合することが示されるものでなはない。
してみれば、甲第2号証発明において、又は、それに甲第2号証の他の記載を併せてみても、当該相違点2に関する特定事項を当業者が容易に想到することができるものではない。
次に、甲第3〜6号証の記載を順次みる。
甲第3号証には、その前記(B-1)〜(B-3)によれば、NiO換算で11重量%のNiと、CuO換算で8.1重量%のCuと、クラッキング能力を有するLZ-210ゼオライトからなる触媒組成物で代表される三成分系触媒組成物が記載され、且つ、その触媒組成物は炭化水素を異性化するだけでなく脱硫機能を併せ持つことが示される。
しかし、甲第3号証に記載の触媒組成物は、その触媒活性成分としてNiとCuに加えてゼオライト類を必須成分として含むものである以上、その触媒組成物からNiとCuのみを取り出すところの動機付けがなく、それを甲第2号証発明の収着剤とすることは当業者といえども直ちに想到できるものではないし、そのうえ、甲第3号証においては、その触媒組成物の脱硫能力が詳細に説明されないばかりでなく、前記(B-3)によればその触媒組成物が285℃と比較的低温度条件で使用されたこともあり、比較的高温域での炭素析出の有無ないしは炭素析出に関する挙動につき説明されるものもない。
してみれば、甲第3号証の記載を甲第2号証発明に併せてみても、甲第2号証発明において、その脱硫剤を「銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=95:5〜40:60の範囲にある銅-ニッケル合金系」のものとなし、300℃を超える比較的高温域での処理で炭素析出を抑制し、また、脱硫能力を高めるようにすることが当業者の容易に想到できるものであるということができない。
甲第4号証では灯油を脱硫した後に水蒸気改質反応を行わしめる燃料電池用水素製造方法等に関する記載があり、また、甲第5及び6号証には、炭化水素を水蒸気改質する際に、貴金属触媒を用いること及び所定のスチーム/カーボン比を選定すること等に関する記載があるものの、これら甲第4〜6号証では当該相違点2に関する特定事項につき教示されるものは何もない。
そうすると、甲第3号証及び甲第4〜6号証に記載のものを甲第2号証発明に組み合わせてみても、甲第2号証発明において、当該相違点2に関する特定事項を採択することが当業者の容易になし得るものであるということはできない。
しかがって、他の相違点1及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2〜6号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

VI-2-2.本件発明2
本件発明2は、本件発明1に対して、更に、水蒸気改質触媒及びスチーム/カーボン比につき限定するものであって、本件発明1の特定事項を全て具備するものである。
したがって、本件発明2は、上記VI-2-1.で説示した理由と同じ理由により、甲第2〜6号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

VII. まとめ
特許異議申立の理由及び証拠によっては、訂正後の本件請求項1及び2に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に訂正後の本件請求項1及び2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
燃料電池用燃料ガスの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】硫黄分含有量が5ppm以下の炭化水素を脱硫剤で処理し、硫黄分を0.2ppm以下とした後、水蒸気改質触媒と接触させる、水素を主成分とする燃料電池用燃料ガスの製造方法において、前記脱硫剤として銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=95:5〜40:60の範囲にある銅-ニッケル合金系脱硫剤を用いて50〜400℃で処理することを特徴とする燃料電池用燃料ガスの製造方法。
【請求項2】前記水蒸気改質触媒が貴金属系触媒であり、スチーム/カーボン比が2〜3であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用燃料ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は炭化水素からの燃料電池用燃料ガスの製造方法に関するものであり、特に灯油等の重質な炭化水素から比較的高温で用いても炭素析出が少なく、寿命の長い脱硫剤を用いた燃料電池用燃料ガスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池はエネルギー変換効率が高く、環境を悪化させることが少ない等の理由から民生用あるいは産業用の発電装置として実証プラントの試験が行われつつあり、各方面からのその技術の完成が期待されている。
【0003】
この燃料電池はその電解質の違いにより、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型の3つに大別される。現在、リン酸型燃料電池が最も実用化に近いと考えられているが、エネルギー変換効率の高さ、排熱の有効利用および使用できる燃料の多様性等の面で溶融炭酸塩型、さらに固体電解質型燃料電池が優れている。
【0004】
いずれの燃料電池も水素を主成分としたガスを燃料とする。リン酸型燃料電池の場合、燃料ガス中に一酸化炭素が含まれていると電極性能が悪化するため、電池本体に燃料ガスを供給する前に一酸化炭素を除去する必要がある。通常、一酸化炭素の除去にはCO変成反応が利用され、二酸化炭素として無害化される。溶融炭酸塩型燃料電池の場合、燃料ガスから一酸化炭素を除去する必要はない。固体電解質型燃料電池の場合、逆に一酸化炭素、さらには軽質炭化水素も水素と同様に燃料として使用することができる。
【0005】
燃料電池に用いられる水素は技術的な容易さから主にメタンを主成分とする天然ガスあるいは天然ガスを主成分とする都市ガスを水蒸気改質して製造する方法およびメタノールを改質あるいは分解して製造する方法が研究されている。
【0006】
しかし、天然ガスあるいは都市ガスを用いた燃料電池は配管のある供給地域にしか設置できず、その利用は地域的に極めて限定される。また地震等の大規模災害の場合は都市ガス配管の破断のためガス供給が停止する可能性はかなり高い。またメタノールを改質あるいは分解して水素を得る方法は、現在のところ水素当たりの原単位としては天然ガスに比べてかなり高価となる欠点を有する。
【0007】
一方、全国的な供給網によって、一般に市販されている灯油を燃料電池用の水素を得るための原料として用いることが可能となれば、全国各地のどの地域にも供給可能である。また、地震の場合でも燃料電池が運転可能な状態であるならば、その地域にある在庫灯油を利用して発電を続行することが可能である。また灯油は天然ガスに比べて水素製造の原単位が安く、発電コストが低いというメリットもある。
【0008】
従来、水蒸気改質法による水素製造プラントにおいてはオフガス、天然ガス、LPG、ナフサ等の軽質炭化水素が原料として用いられており、灯油等のより重質な炭化水素を用いることは困難であるとされている。その主な理由は灯油のほうが天然ガス、LPG、ナフサに比べて脱硫が困難であるためである。水蒸気改質触媒は硫黄に対して非常に敏感であり、僅かな硫黄の存在によっても触媒活性の低下をきたす。従って、炭化水素を水蒸気改質原料として用いるためには、原料炭化水素中の硫黄分が0.2ppm以下、好ましくは0.1ppm以下になるまで極めて高度に脱硫する必要がある。
【0009】
ところが、一般暖房用に供給されているJIS K 2203に規定されている1号灯油の硫黄分は150ppmまで認められており、平均的に20〜60ppm程度の硫黄分を含んだ灯油が市販されている。従って、JIS1号灯油を燃料電池の燃料源とする場合、灯油中の硫黄分を0.2ppm以下に低減させなければならない。
【0010】
石油類の脱硫は、通常Co-Mo系あるいはNi-Mo系触媒を用いて、水素存在下、高温、高圧の条件で行われる。このような水素化脱硫法でJIS1号灯油の硫黄分を0.2ppm以下にまで低下させるためには、20〜100kg/cm2・Gの高圧下で脱硫しなければならない。
【0011】
しかしながら、一般的に燃料電池は、通常電力会社で行われている発電に比べて規模が小さく、大がかりな脱硫設備を付設するわけにはいかない。特に、500kw以下の分散型燃料電池では、その設置場所がビルや建屋の近接地とか地下室等になることが予想される。この場合、近隣地域への安全、環境上の配慮、関連法規、特に高圧ガス取締り法の関係からも脱硫反応の条件として10kg/cm2・G未満の圧力で行われることが要求される。このような条件でJIS1号灯油を水素化脱硫した場合、硫黄分を5ppm以下にすることは可能であるが、安定的に0.2ppm以下にすることは困難である。従って、灯油の硫黄分を0.2ppm以下にするためには、水素化脱硫した灯油をさらに脱硫剤で処理する必要がある。
【0012】
このような観点から、特開平1-188404号公報、特開平1-188405号公報、特開平1-188406号公報にはニッケル系脱硫剤で脱硫した灯油を水蒸気改質し、水素を製造する方法が報告されている。しかし、この場合、脱硫の可能な温度範囲は150〜300℃であり、300℃を超える温度では炭素析出が著しく脱硫部の差圧が大きくなり運転が困難になる。しかし、脱硫の後段にある水蒸気改質装置の入口温度は400〜500℃であり、脱硫温度もこの温度に近いほうがプロセス上好ましい。また、特開平2-302302号公報、特開平2-302303号公報には銅-亜鉛系脱硫剤を用いた燃料電池発電システムが報告されている。銅-亜鉛系脱硫剤の場合、比較的高温で用いても炭素析出は少ない。しかし、脱硫活性がニッケルに比べて低いため、天然ガス、LPG、ナフサ等の軽質炭化水素の脱硫は行えるが、灯油の脱硫に対しては不十分である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、比較的高温で用いても炭素析出が少なく、しかも脱硫能力の高い脱硫剤を用いて炭化水素を処理し、それをさらに水蒸気改質する燃料電池用燃料ガスの製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、炭化水素の脱硫における炭素析出の抑制と脱硫能力の向上を主眼に鋭意研究した結果、特定の脱硫剤を用いることによりその目的が達成されることを見い出し、この知見に基づいて本発明に達成したものである。
【0015】
すなわち本発明は、硫黄分含有量が5ppm以下の炭化水素を脱硫剤で処理し硫黄分を0.2ppm以下とした後、水蒸気改質触媒と接触させ水素を主成分とする燃料電池用燃料ガスの製造方法において、前記脱硫剤として銅とニッケルの重量比が銅:ニッケル=95:5〜40:60の範囲にある銅-ニッケル合金系脱硫剤を用いて50〜400℃で処理することを特徴とする燃料電池用燃料ガスの製造方法に関する。
【0016】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の製造方法では、炭化水素を特定の脱硫剤で脱硫し、それを水蒸気改質することにより燃料電池用燃料ガスを製造する。
【0017】
本発明に用いる炭化水素は特に限定されない。例えば、天然ガス、天然ガスを主成分とした都市ガス、LPG、ナフサ、灯油等を挙げることができる。これらの炭化水素の中でもナフサあるいは灯油を用いたときに特に本発明の製造方法が優位となる。特に灯油を用いたときにその優位性が高い。これらの炭化水素中に含まれる硫黄分の含有量については特に制限はないが、0.2ppm超〜5ppm以下が好ましい。硫黄分含有量が5ppmを超える炭化水素を本発明の脱硫剤に通した場合、脱硫剤の寿命が短く、脱硫剤を頻繁に交換する必要がある。
【0018】
従って、硫黄分含有量が5ppmを超えた炭化水素を原料とする場合は、予め水素化脱硫を行い、硫黄分を5ppm以下にすることが好ましい。通常、この水素化脱硫はNi-Mo系あるいはCo-Mo系触媒を用いた高圧の水素化脱硫によって達成される。水素化脱硫の反応条件は、温度:50〜400℃、圧力:10〜100kg/cm2、LHSV:0.1〜10の範囲で行われる。特に灯油を用いたときの反応条件は、温度:300〜400℃、圧力:10〜100kg/cm2、LHSV:0.1〜1となる。
【0019】
このような水素化脱硫装置と脱硫剤を用いた装置の両方を有している燃料電池システムの場合、高濃度の硫黄分を含んだ炭化水素を直接燃料電池システムの原料として用いることができる。従って、JIS1号灯油も用いることができる。但し、この場合、水素化脱硫装置の出口および脱硫剤を用いた装置の入口で炭化水素中の硫黄分が5ppm以下となるように水素化脱硫装置の運転条件を設定することが好ましい。
【0020】
本発明で用いる特定の脱硫剤は収着作用により微量の硫黄分を除去するものである。ここで用いられる特定の脱硫剤とは、銅とニッケルの合金を含有するものであり、銅とニッケルの重量比が金属として銅:ニッケル=95:5〜5:95、好ましくは80:20〜20:80、さらに好ましくは70:30〜30:70の範囲にあるものである。処理する炭化水素が重質なほどニッケルの割合は高いほうがよいが、ニッケルの割合が95を超えると300〜400℃の比較的高い温度で脱硫を行なった場合に炭素析出が増加する。またニッケルの濃度が5よりも少ない場合には、灯油のような重質な炭化水素の脱硫に対して脱硫能力が不十分である。
【0021】
この脱硫剤に含まれる銅とニッケルは、担体に担持されていることが好ましい。担体としては、Al2O3、ZnO、MgO、CaO、SiO2、TiO2、ZrO2、活性炭、ケイソウ土等の単独あるいはこれらの混合物が挙げられ、特にAl2O3、ZnO、MgOの単独あるいは混合物が好ましい。これらの担体を用いることにより、脱硫剤中での銅-ニッケル合金の分散性が向上し、脱硫能力が高まると共に脱硫剤としての寿命も長くなる。担体への銅とニッケルの担持方法は特に限定されない。例えば、含浸法、共沈法、沈着法、ゲル混練法、ポアフィリング法等を用いて担持することができる。これら脱硫剤中の銅とニッケルの合計量の濃度は脱硫剤の全重量を基準にして金属として20〜70wt%が好ましく、30〜50wt%がさらに好ましい。この脱硫剤を使用するときの形状としては、差圧の関係から成形品が好ましく、打錠成形、押し出し成形、球状成形、破砕成形等により0.5〜10mm程度の粒径に揃えたものが好ましい。また、脱硫剤のかさ密度は0.5〜2g/ml、表面積は10〜400m2/g、細孔容積は0.1〜1.5ml/gの範囲であるのが好ましい。本発明における脱硫剤は担体に担持しないでそのまま用いることもできる。
【0022】
この脱硫剤を用いた炭化水素の脱硫の反応条件は、温度:50〜400℃、圧力:常圧〜10kg/cm2・G、LHSV:0.1〜10の範囲であるのが好ましいが、特に灯油を用いた場合、温度:200〜400℃、好ましくは300超〜400℃、圧力:常圧〜10kg/cm2・G、LHSV:0.1〜1の範囲が好ましい。本発明において脱硫された炭化水素中の硫黄分は0.2ppm以下、好ましくは0.1ppm以下である。0.2ppmを超える硫黄分を含む炭化水素を後段の水蒸気改質触媒に供給した場合、水蒸気改質触媒が硫黄被毒により短期間に劣化し、燃料電池システムを安定して運転することができなくなる。従って、硫黄分が0.2ppm以下となるように脱硫の反応条件を設定すべきである。
【0023】
本発明の製造方法において、脱硫剤で硫黄分0.2ppm以下に脱硫された炭化水素は、次に水蒸気改質塔に送られ、水素を主成分としたガスに改質される。水蒸気改質触媒は、スチーム/カーボン比3.5以上であるならばニッケル系触媒を用いることができるが、燃料電池の発電効率を考えた場合、スチーム/カーボン比は2〜3の範囲が適当であるため、このような条件では貴金属系触媒を用いるほうがよい。貴金属系触媒としては、ルテニウム系およびロジウム系が特に優れている。
【0024】
水蒸気改質の反応条件は、触媒床入口温度:350〜500℃、触媒床出口温度:650〜800℃、圧力:常圧〜10kg/cm2・G、LHSV:0.1〜10の範囲である。特に灯油を用いた場合は、触媒床入口温度:400〜500℃、触媒床出口温度:700〜800℃、圧力:常圧〜10kg/cm2・G、LHSV:0.1〜1の範囲である。
【0025】
水蒸気改質装置を出たガスの組成はドライベースで、水素:60〜80vol%、一酸化炭素:10〜30vol%となる。
【0026】
燃料電池がリン酸型燃料電池の場合、改質ガスをさらに一酸化炭素変成触媒で処理して一酸化炭素を二酸化炭素に転化した後、そのガスを電池本体へ供給する。しかし、燃料電池が溶融炭酸塩型あるいは固体電解質型燃料電池の場合、改質ガスを直接電池本体へ供給しても構わない。
【0027】
【実施例】
次に、本発明の実施例等について説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
実施例1
(1)銅-ニッケル合金系脱硫剤の調製:
硝酸銅58g、硝酸ニッケル69.8g、硝酸亜鉛116.6g、硝酸アルミニウム60gに純水を加えて全量を1000mlとした。別に炭酸ソーダ105gを純水に溶かし全量を2000mlとしたものを用意し、これを前記金属硝酸塩水溶液中に撹拌しながら徐々に加え、沈澱を生成させた。pHが7となったところで炭酸ソーダの添加を終了し、そのまま1時間撹拌を続け沈澱を熟成した。その後、沈澱を濾過して沈澱ケーキを得た。
【0029】
このケーキを1wt%重炭酸アンモニウム水溶液で数回洗浄しナトリウムを除去した後、110℃で1昼夜乾燥した。乾燥したケーキは粉砕した後、400℃で1時間空気焼成した。焼成後の粉末を5mmφ×5mmのタブレットに打錠成形した。この成形品を2〜3mm程度の大きさに破砕して脱硫反応管に充填し、発熱しないように注意しながら水素気流中で昇温し200℃で16時間還元した。
【0030】
この脱硫剤の組成はCu:22wt%、Ni:21wt%、ZnO:46wt%、Al2O3:11wt%であり、表面積は98m2/gであった。
【0031】
(2)JIS1号灯油:次の性状を有する市販のJIS1号灯油を原料とした。
硫黄分:32ppm、比重(15/4℃):0.798、沸点範囲:165〜265℃、芳香族分:20.3vol%、煙点:25mm。
【0032】
(3)JIS1号灯油の水素化脱硫:
上記(2)の性状を有するJIS1号灯油を市販の水素化脱硫触媒(NiO:5wt%、MoO3:20wt%、Al2O3:75wt%)と酸化亜鉛よりなる水素化脱硫装置で脱硫して硫黄分2ppmの水素化脱硫1号灯油を得た。水素化脱硫の条件は、反応温度:380℃、圧力:10kg/cm2・G、LHSV:1である。
【0033】
(4)水素化脱硫JIS1号灯油の脱硫:
上記(1)で得られた銅-ニッケル合金系脱硫剤を用いて、上記(3)による水素化脱硫JIS1号灯油をさらに脱硫した。脱硫の反応条件は、温度:380℃、圧力:9kg/cm2・G、LHSV:1、H2/oil:100ml/g(同伴ガス組成、H2:74vol%、CO:1vol%、CH4:1vol%、CO2:24vol%)で行った。脱硫反応管には内径20mmφのステンレス管を用い、これに脱硫剤40mlを充填して用いた。通油初期から3000時間まで出口灯油の硫黄分は検出限界(0.05ppm)以下であったが、その後、徐々に増加し約7000時間後に0.1ppm程度の値となった。
【0034】
(5)水蒸気改質試験:
ルテニウム系触媒(Ru:1wt%、Al2O3:79wt%、CeO2:20wt%)を用いて、上記(4)の方法で脱硫されたJIS1号灯油の水蒸気改質を行った。
【0035】
すなわち、用いた触媒5mmφの球状であり、これを内径20mmφのステンレス製反応管に40ml充填した。水蒸気改質の反応条件は、触媒床入口温度:450℃、触媒床出口温度:750℃、圧力:常圧、LHSV:1、H2/oil:100ml/g、スチーム/カーボン比:3である。反応開始後5000時間経過した後でも、灯油は100%改質され、出口ガスの組成も熱力学平衡値に近いものであった。また触媒床の差圧増加も認められなかった。
【0036】
比較例1
2〜3mm程度の大きさに破砕した市販の銅系脱硫剤(CuO:36wt%、ZnO:47wt%、Al2O3:15wt%、1/4インチφ×1/8インチ打錠成形、表面積:68m2/g)40mlを反応管に充填し、発熱しないように注意しながら水素気流中で昇温し200℃で16時間還元した。
【0037】
この脱硫剤を用いて、実施例1の(3)で得られた水素化脱硫JIS1号灯油を脱硫処理した。脱硫の反応条件は実施例1の(4)と全く同様である。通油初期から出口灯油の硫黄分は0.1ppmであり、500時間後に0.3ppm、1000時間後に0.5ppmに達した。
【0038】
比較例2
2〜3mm程度の大きさに破砕した市販のニッケル系脱硫剤(Ni:34.4wt%、1/8インチφ×1/16インチ打錠成形、表面積:147m2/g)40mlを反応管に充填し、発熱しないように注意しながら水素気流中で昇温し200℃で16時間還元した。
【0039】
この脱硫剤を用いて、実施例1の(3)で得られた水素化脱硫JIS1号灯油を脱硫処理した。脱硫の反応条件は実施例1の(4)と全く同様である。通油初期から脱硫剤床の差圧が増加しはじめ、200時間後には差圧は1kg/cm2に達し反応を停止した。この間の出口灯油の硫黄分は検出限界以下であった。
【0040】
実施例2
(1)銅-ニッケル合金系吸着脱硫剤の調製
硝酸銅26.6g、硝酸ニッケル104g、硝酸亜鉛127.9g、硝酸アルミニウム51.5gに純水を加えて全量を1000mlとする。別に炭酸ソーダ105gを純水に溶かし全量を2000mlとしたものを用意し、これを前記金属硝酸塩水溶液中に撹拌しながら徐々に加え、沈澱を生成させる。pHが7となったところで炭酸ソーダの添加を終了し、そのまま1時間撹拌を続け、沈澱を熟成する。その後沈澱を濾過して沈澱ケーキを得る。このケーキを1wt%重炭酸アンモニウム水溶液で数回洗浄し、ナトリウムを除去した後、110℃で1昼夜乾燥する。乾燥したケーキは粉砕した後、400℃で1時間空気焼成する。焼成後の粉末を5mmφ×5mmのタブレットに打錠成形する。この成形品を2〜3mm程度の大きさに破砕して収着脱硫反応管に充填し、発熱しないように注意しながら水素気流中で昇温し、200℃で16時間還元した。この収着脱硫剤の組成はCu:10wt%、Ni:30wt%、ZnO:50wt%、Al2O3:10wt%であり、表面積は95m2/gであった。
【0041】
この収着脱硫剤を用いて、実施例1の(3)で得られた水素化脱硫JIS1号灯油を脱硫処理した。脱硫の反応条件は実施例1の(4)と全く同様である。通油初期から3300時間まで出口灯油の硫黄分は検出限界(0.05ppm)以下であったが、その後、徐々に増加し約7800時間後に0.1ppm程度の値となった。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法により、灯油のような重質で硫黄分の多い炭化水素を原料とした場合でも、長期間安定して水素を主成分とした燃料電池用燃料ガスを製造することができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-11-07 
出願番号 特願平5-98297
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B01J)
P 1 651・ 16- YA (B01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新居田 知生  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 佐藤 修
野田 直人
登録日 2003-03-20 
登録番号 特許第3410147号(P3410147)
権利者 新日本石油株式会社 財団法人石油産業活性化センター
発明の名称 燃料電池用燃料ガスの製造方法  
代理人 伊東 哲也  
代理人 伊東 哲也  
代理人 伊東 哲也  

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