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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
管理番号 1130838
異議申立番号 異議2003-72883  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-08-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-25 
確定日 2005-11-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3410799号「光学的立体造形用樹脂組成物」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3410799号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 (1)手続の経緯
本件特許3410799号の発明は、平成6年2月21日に出願され、平成15年3月20日にその特許権の設定登録がなされ、その後、JSR株式会社(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、それに基づく取消理由通知がなされ、それに対して、その指定期間内である平成17年1月25日に特許異議意見書及び訂正請求書が提出され、さらに、取消理由通知がなされ、それに対して、その指定期間内に特許異議意見書が提出され、同時に、特許異議申立人に対して審尋がなされ、それに対して回答書が提出されたものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア、訂正の内容
訂正事項a:特許請求の範囲の訂正
訂正a-1:請求項1の
「【請求項1】(1)一般式〔I〕で示される構造式からなる化合物10重量%〜60重量%、
【化1】

〔ここにR1 はH、CH3 、C2 H5 、C3 H7 等の低級アルキル基であり、n=1〜15で示される整数である。〕
(2)エポキシ化合物、エポキシアクリレート化合物、エステルアクリレート化合物、アクリレート化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物40重量%〜90重量%、
(3)(1)+(2)に対して光重合開始剤0.1重量%〜10重量%を必須成分とすることを特徴とする液状3次元光学的立体造形用樹脂組成物。」を、
「【請求項1】 (1)一般式〔I〕で示される構造式からなる化合物10重量%〜60重量%、
【化1】

〔ここにR1 はH、CH3 、C2 H5 、C3 H7 等の低級アルキル基であり、n=1〜15で示される整数である。〕
(2)エポキシ化合物、エポキシアクリレート化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物40重量%〜90重量%、
(3)(1)+(2)に対して光重合開始剤0.1重量%〜10重量%を必須成分とすることを特徴とする液状3次元光学的立体造形用樹脂組成物。」と訂正する。
(なお、上記の(1)〜(3)は、特許明細書では〇の中に数字が記載されている。以下同じ。)
訂正a-2:請求項2〜6を削除する。
訂正事項b:発明の詳細な説明の訂正
訂正b-1:特許明細書の段落【0008】の化学式を、
「【化2】

」と訂正する。
訂正b-2:特許明細書の段落【0010】を、
「(2)エポキシ化合物、エポキシアクリレート化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物40重量%〜90重量%、
(3)(1)+(2)に対して光重合開始剤0.1重量%〜10重量%を必須成分とすることを特徴とする液状3次元光学的立体造形用樹脂組成物。」と訂正する。
訂正b-3:特許明細書の段落【0012】の化学式を、
「【化3】

」と訂正する。
訂正b-4:特許明細書の段落【0015】中の
「エポキシ化合物、エポキシアクリレート化合物、エステルアクリレート化合物等」を、
「エポキシ化合物、エポキシアクリレート化合物等」と訂正する。
訂正b-5:特許明細書の段落【0016】を、
「本発明に使用される組成物のうち、(2)で示される成分は、エポキシ化合物、又はエポキシアクリレート化合物のビニル系不飽和化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物である。エポキシ化合物の代表的なものとしては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等が挙げられる。またエポキシアクリレート化合物はいわゆるモノマー、オリゴマーのいずれも用いることができる。」と訂正する。
訂正b-6:特許明細書の段落【0017】の
「アクリレート化合物としては、…………、ジアリルフタレート等が挙げられる。」を削除する。
訂正b-7:特許明細書の段落【0018】中の
「エステルアクリレート化合物としては、無水フタル酸、………アクリル酸からなる化合物等が代表的なものとして挙げられる。」を削除する。
訂正b-8:特許明細書の段落【0020】中の
「本発明の成分(1)+成分(2)+成分(3)の組み合わせで好ましいものは、ネオペンチルグリコールとアジピン酸とからなるオリゴエステルとイソホロンとからなる付加物と2-ハイドロオキシエチルアクリレートからなるウレタンアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及び2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンの組成物;ネオペンチルグリコールとアジピン酸とからなるオリゴエステルとイソホロンとからなる付加物と2-ハイドロオキシエチルアクリレートからなるウレタンアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、PO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PO:プロピオンオキサイドの略)及び2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンの組成物、」を、
「本発明の成分(1)+成分(2)+成分(3)の組み合わせで好ましいものは、」と訂正する。
イ、訂正の適否
訂正事項aは、特許請求の範囲の訂正であり、訂正a-1は、特許請求の範囲の請求項1において、(1)の化学式における明らかな誤記を訂正するものであり、また、(2)の化合物を、「エポキシ化合物、エポキシアクリレート化合物」に限定するものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの認められる。
訂正a-2は、請求項2〜6を削除するものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正と認められる。
訂正事項bは発明の詳細な説明の訂正であり、そのうち、訂正b-1及びb-3は化学式における明らかな誤記の訂正であり、また、訂正b-2、b-4〜b-8は、特許請求の範囲の訂正である訂正事項a(a-1及びa-2)に伴い、発明の詳細な説明において整合性を保つための訂正であり、明りょうでない記載の釈明と認められ、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正と認められる。
また、上記訂正事項a(a-1及びa-2)及びb(b-1〜b-8)は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
(3)特許異議の申立てについての判断
ア、訂正明細書の請求項1に係る発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 (1)一般式〔I〕で示される構造式からなる化合物10重量%〜60重量%、
【化1】

〔ここにR1 はH、CH3 、C2 H5 、C3 H7 等の低級アルキル基であり、n=1〜15で示される整数である。〕
(2)エポキシ化合物、エポキシアクリレート化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物40重量%〜90重量%、
(3)(1)+(2)に対して光重合開始剤0.1重量%〜10重量%を必須成分とすることを特徴とする液状3次元光学的立体造形用樹脂組成物。」
イ、引用した刊行物に記載された事項
当審において、第2回目の取消理由通知に引用した刊行物は次のとおりである。
刊行物1:特開平5-86149号公報
(特許異議申立人提出甲第1号証)
刊行物2:特開平2-208305号公報
上記の刊行物1及び2には次のとおりの記載が認められる。
a、刊行物1
「【請求項1】 以下に定義する光硬化性樹脂組成物において、吸収極大が400nm乃至600nmの波長範囲にある化合物を含有させることにより450nm乃至550nmの任意の照射光に対する該組成物の硬化深度を0.5mm以下とすることを特徴とする光立体成形用樹脂組成物。(イ)1分子中に重合能を有する不飽和結合を少なくとも1個有する化合物と光ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物、または(ロ)カチオン重合性化合物と光カチオン重合開始剤とを含有する光硬化性樹脂組成物、または(ハ)(イ)と(ロ)に示される化合物と重合開始剤とをそれぞれ少なくとも1種ずつ含有する光硬化性樹脂組成物。」(特許請求の範囲請求項1)
「【産業上の利用分野】本発明は、活性エネルギー線に対して高い感度を示す光硬化性樹脂からなる3次元成形用の材料に関する。即ち、液状光硬化性樹脂にレーザビーム光学系を用いて選択的な露光硬化を行い、3次元立体情報を表示する立体形状を形成させる液状光硬化性樹脂の硬化深度を改善し、高い寸法精度を持つ成形物を形成できる光立体成形用樹脂組成物に関するものである。」(段落【0001】)
「これらのカチオン重合性化合物の中で特に好ましいものは1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する脂環族エポキシ化合物であり、カチオン重合反応性、低粘度化、可視光エネルギー線透過性、厚膜硬化性、体積収縮率、解像度等の点で良好な特性を持つ。」(段落【0041】)
「………本発明の光硬化性樹脂組成物中に含有される光ラジカル重合開始剤及び/あるいは光カチオン重合開始剤の量は、1分子中に重合能を有する不飽和結合を少なくとも1個有する化合物及び/あるいはカチオン重合性化合物の量に対して重量比で1/5から1/500までの広い範囲に亘って取ることができるが、好ましくは1/10から1/100の範囲である。」(段落【0044】)
「実施例1
1分子中に重合能を有する不飽和結合を少なくとも1個有する化合物としてエチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート(以下、モノマーIと記載)、イソボルニルアクリレート(以下、モノマーIIと記載)、光ラジカル重合開始剤としてカンファーキノン(以下、開始剤Iと記載)及び増感剤としてN,N′-ジエチルアミノエチルメタクリレート(以下、増感剤Iと記載)を用いた。本実施例及び以下の実施例、並びに比較例において用いた組成を後に挙げる表1に示した。」(段落【0057】)
「実施例5
カチオン重合性化合物として、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(以下、モノマーIIIと記載)97部、光カチオン重合開始剤として(η5 -2,4-シクロペンタジエン-1-イル)〔(1,2,3,4,5,6-η)-(1-メチルエチル)-ベンゼン〕-鉄(+1)-ヘキサフルオロフォスフェート(チバガイギー社製、商品名CG24-61)(以下、開始剤IIと記載)1部及び化学式6の色素1部を混合して十分撹拌し、本発明の光カチオン重合性組成物を得た。」(段落【0074】)
「実施例9
モノマー、開始剤及び増感剤について、それぞれ光ラジカル硬化性のものと光カチオン硬化性のものとの両者を混合した。すなわち、表1にその配合(部)を示すように、モノマーI24部、モノマーII24部、モノマーIII48部を開始剤I1部、開始剤II1部及び増感剤I1部と混合し、更に、色素として化学式6で示される化合物1部を混合し、十分に撹拌し、光ラジカル硬化と光カチオン硬化とを同時に行うことのできる本発明組成物を得た。」(段落【0077】)
「比較例1〜3
何れの比較例も色素を添加することなく、比較例1では、モノマーI、モノマーII、開始剤I及び増感剤Iを使用し、比較例2では、モノマーIII及び開始剤IIを使用し、比較例3では、モノマーI、モノマーII、モノマーIII、開始剤I、開始剤II及び増感剤Iを使用し混合撹拌し、実施例1と同様の方法で、光硬化性樹脂組成物を調製し、硬化深度及び硬化した光硬化性樹脂の吸収極大波長(λmax)を測定した。」(段落【0079】)
第9頁の【表1】によれば、比較例3として、モノマーIが25重量部、モノマーIIが24重量部及びモノマーIIIが48重量部で、開始剤I及びIIがそれぞれ1重量部の光硬化性樹脂組成物が記載されている。
b、刊行物2
「1.一般式(1)

[式中、R1、R2、R3、R4は水素原子、メチル基、エチル基、またはCF3基、Aはエチレン基またはプロピレン基、m、nは1〜10である]で示される(メタ)アクリル酸エステルを65重量%以上含有してなる、光硬化性組成物に光束を照射して照射された部分を硬化させた後に硬化物の周辺部の未硬化の該光硬化性組成物を同様に光束を照射して硬化させ、以後この工程を繰り返して立体形状の硬化体を製造する際に用いられる光硬化性組成物。」(特許請求の範囲)
「本発明は、光硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、立体形状の硬化体を製造する際に用いられる光硬化性組成物に関する。」(第1頁右下欄6〜8行)
「一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルは公知の方法で製造することができる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類にエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを付加させた後、(メタ)アクリル酸とエステル化することにより製造することができる。」(第2頁右上欄9〜15行)
ウ、対比・判断
本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1の実施例9には、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート(24重量部)、イソボニルアクリレート(24重量部)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(48重量部)と、2種類の光重合開始剤(合計2重量部)の光硬化性樹脂組成物が記載され、同様に比較例3でも、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート(25重量部)、イソボニルアクリレート(24重量部)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(48重量部)と、2種類の光重合開始剤(合計2重量部)の光硬化性樹脂組成物が記載されている。
そして、刊行物1に記載のエチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレートは、本件発明の(1)の一般式〔I〕で示される構造式からなる化合物に相当し、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートは、同じく本件発明の(2)のエポキシ化合物に相当し、さらに、実施例9及び比較例3における必須成分の重量比は、本件発明で特定する重量比を満たすものである。
また、刊行物1の光硬化性樹脂組成物は、その産業上の利用分野に記載されるとおり、3次元立体情報を表示する立体形状を形成させる液状光硬化性樹脂である。
そうであるならば、両者は、重量比において重複一致する一般式〔I〕で示される構造式からなる化合物、エポキシ化合物及び光重合開始剤を必須成分とする液状3次元光学的立体造形用樹脂組成物である点で一致し、本件発明では、一般式〔I〕で示される構造式からなる化合物において、エチレンオキシドの繰り返し数が、n=1〜15で示される整数であるとするのに対し、刊行物1では、nに相当する数値(エチレンオキシドの繰り返し数)が記載されていない点で相違するものと認められる。
そこで、上記相違点について検討する。
刊行物2には、立体形状の硬化体の製造に用いられる光硬化性組成物が記載され、また、その主要成分である一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルは、本件発明の一般式〔I〕で示される構造式からなる化合物に相当するものであり、アルキレンオキシドの繰り返し数m及びn(本件発明におけるnに相当)として、1〜10と記載されている。
また、アルキレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートと認められる市販品では、nが15以下のものが多く(特許異議申立人が平成17年8月12日付で提出した回答書に添付の参考資料を参照)、刊行物1におけるエチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレートにおけるnも本件発明の1〜15の範囲内である蓋然性も高いものと認められる。
そうであるならば、刊行物1のエチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレートにおいて、エチレンオキシドの繰り返し数(n)として、1〜15のものを採用することに格別な困難性はないというべきである。
特許権者は、特許異議意見書において、刊行物1のエチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレートは本件発明の一般式〔I〕で示される構造式からなる化合物と相違すると主張するが、本件明細書においても、上記化合物の実施例として、EO変性ビスフェノールAジアクリレートと記載されており、刊行物1のものと相違するものとすることはできない。
さらに、本件発明の硬化後の機械物性に優れ、体積収縮率の少ない寸法精度に優れるとする作用効果が記載されていないと主張するが、刊行物1には、高い寸法精度をもつ成形物を形成することが記載され、また、刊行物1の光硬化性組成物は、その必須成分及びその重量比において本件発明と同じであることから、硬化後の機械的物性も、同じ程度のものというべきであり、その作用効果も格別なものとすることはできない。
したがって、本件発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
以上のとおり、本件発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14号の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
光学的立体造形用樹脂組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】▲1▼一般式〔I〕で示される構造式からなる化合物10重量%〜60重量%、
【化1】

〔ここにR1はH、CH3、C2H5、C3H7等の低級アルキル基であり、n=1〜15で示される整数である。〕
▲2▼エポキシ化合物、エポキシアクリレート化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物40重量%〜90重量%、
▲3▼▲1▼+▲2▼に対して光重合開始剤0.1重量%〜10重量%を必須成分とすることを特徴とする液状3次元光学的立体造形用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、活性エネルギー線硬化型の光学的立体造形用樹脂組成物に関し、特に硬化後の機械物性に優れ、体積収縮率の少ない寸法精度に優れた光学的立体造形用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、感光性樹脂を用いて立体造形物を製造する装置は、特開昭56-144478号公報に開示されており、ここに開示されている立体図形作成装置は、光硬化性樹脂に必要量の光エネルギーを供給することによって立体造形物を作成するものである。また特開昭60-247515号公報には、基本的実用方法として、光により硬化する光硬化性流動物質に、硬化に必要な光エネルギー供給を選択的に行って所望形状の固体を形成することを特徴とする光学的造形方法が提案された。その後同様の装置や方法またはこれらの改良された技術が開示されている。
【0003】
例えば特開昭62-35966号公報(三次元の物体を作成する方法と装置)、特開平1-204915号公報(光学的立体造形用樹脂組成物)、特開平2-113925号公報(立体像形成方法)、特開平2-145616号公報(光学的立体造形用樹脂組成物)、特開平2-153722号公報(光学的造形法)、特開平3-15520号公報(立体像形成方法)、特開平3-21432号公報(立体像形成システム)、特開平3-41126号公報(立体像形成方法)に開示されている。該光学的立体造形法の代表的な例は、容器に入れた液状光硬化性樹脂の液面に、所望のパターンが得られるようにコンピューターで制御された紫外線レーザーを選択的に照射して所定厚みを硬化し、ついで該硬化層の上に1層分の液状樹脂を供給し、同様に紫外線レーザーで前記と同様に照射硬化させ、連続した硬化層を得る積層操作を繰り返すことによって最終的に立体造形物を得る方法である。この光学的立体造形法は、製造する造形物の形状がかなり複雑であっても、容易に比較的短時間に得ることが出来るため最近特に注目を集めている。
【0004】
従来、該光学的立体造形法に用いられている光硬化性樹脂としては、変性ポリウレタン(メタ)アクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、感光性ポリイミド、アミノアルキド等が知られており、又最近では特開平1-204915号公報には、硬化性液状物質として架橋脂環式炭化水素基を有するエチレン性不飽和化合物を含むモノマー化合物及びエチレン性不飽和基を有するポリマーが用いられることが示され、特開平1-213304号公報公報には、エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質として、エポキシ化合物、環状エーテル化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、環状スピロオルソエステル化合物、ビニル化合物等が示され、また該エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質を含む光学的造形用樹脂組成物を改良したものとして、特開平2-28261号公報、特開平2-75617号公報がある。更に、特開平2-145616号公報には、液状硬化性樹脂と微少粒子とを含む光学的造形用樹脂組成物が示され、その他特開平3-104626号公報、特開平3-114732号公報及び特開平3-114733号公報等に各種改良技術が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、光学的立体造形法に用いられる光硬化性樹脂としては、取扱性が良好であること、造形速度が大きいこと、造形精度が高いこと等のいくつかの観点から、樹脂粘度が比較的低いこと、硬化時の体積収縮率が低いことは勿論のこと、更に得られた造形物の機械的物性が充分高いことが要求される。しかしながら、前記の液状光硬化性樹脂は、いずれもこれらの諸特性、特段機械特性と低体積収縮率を同時に満足すべきものは必ずしも得られず、この点が問題となっていた。また一般的に液状樹脂を硬化重合させる場合、得られた立体造形物の体積の収縮が発生するので、3次元光学的立体造形物用樹脂組成物の樹脂成分として、該液状樹脂を用いた場合、造形物の精度が劣る欠陥がある。このような欠陥を防止するために樹脂組成物についてる種々検討することによって前記造形物の体積収縮率を低下させる試みがなされている。
【0006】
前記造形物の体積収縮率を低下させる試みとして、・フィラーを添加する方法、・発泡させる方法、・膨張層分離を発生させる方法、この他に・モノマー、オリゴマーの基本容積当りの官能基容量を低下させる方法等が考えられるが、これらいずれの方法も体積収縮率の低減には有効ではあるが、機械的物性の低下は避けられないのが実状である。即ち体積収縮率の低減と機械的物性の維持、向上とは二律背反現象となっていた。しかるに本発明者等は、偶然にも下記の一般式Iで示される構造式からなる化合物を一定割合配合して得られた3次元光学的立体造形物用組成物は、驚くべきことに体積収縮率を低減すると同時に機械的物性をも向上する現象を見出し、該二律背反現象を打破し、本発明を完成したものである。したがって、本発明が解決しようとする課題は、充分高い機械的特性を有し、かつ低体積収縮率を示す、いわゆる寸法精度に優れた光学的立体造形物を形成することができる光硬化性液状樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の発明が解決しようとする課題は、下記の各発明によって達成される。
(1)▲1▼一般式〔I〕で示される構造式からなる化合物10重量%〜60重量%、
【0008】
【化2】

【0009】
〔ここにR1はH、CH3、C2H5、C3H7等の低級アルキル基であり、n=1〜15で示される整数である。〕
【0010】
▲2▼エポキシ化合物、エポキシアクリレート化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物40重量%〜90重量%、
▲3▼▲1▼+▲2▼に対して光重合開始剤0.1重量%〜10重量%を必須成分とすることを特徴とする液状3次元光学的立体造形用樹脂組成物。
【0011】
以下に、本発明を更に詳しく説明すると、本発明に用いられる化合物は、下記の一般式〔I〕で示される構造式からなる。
【0012】
【化3】

【0013】
〔ここにR1はH、CH3、C2H5、C3H7等の低級アルキル基であり、n=1〜15で示される整数である。〕
【0014】
この化合物のうち、nは1〜15の範囲、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜5の範囲である。nの数が15を越える場合には機械的強度の低下がみられ本発明の効果が充分発揮されないので用いることは出来ない。本発明に使用される組成物のうち、▲1▼で示される成分の組成割合は10〜60重量%であり、好ましくは15〜50重量%、更に好ましくは20〜40重量%である。▲1▼で示される成分の組成割合が10重量%未満にあっては本発明の効果、即ち機械物性が劣りしかも体積収縮率が大きくなるので好ましくない。
【0015】
▲1▼で示される成分としては、具体的にはn=1,R1=H;n=2,R1=H;n=2,R1=CH3;n=2,R1=C2H5;n=5,R1=CH3;n=5,R1=H;n=5,R1=C2H5;n=10,R1=H;n=10,R1=CH3;n=15,R1=H;n=15,R1=CH3;この他n=6〜15のものも、本発明の効果を奏するので好ましい。▲1▼で示される成分は基本的には、▲2▼で示されるエポキシ化合物、エポキシアクリレート化合物等の主剤を改良する助剤的存在であり、▲1▼で示される成分の組成割合が60重量%越えるものにあっては▲2▼の成分である主剤の性能(靱性等の剛性、機械的特性等)が発現されないので、用いることはできない。すなわち本発明に効果のある組成割合は▲1▼で示される成分は10〜60重量%の範囲に限定される。
【0016】
本発明に使用される組成物のうち、▲2▼で示される成分は、エポキシ化合物、又はエポキシアクリレート化合物のビニル系不飽和化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物である。エポキシ化合物の代表的なものとしては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等が挙げられる。またエポキシアクリレート化合物はいわゆるモノマー、オリゴマーのいずれも用いることができる。
【0017】
【0018】
エポキシアクリレート化合物としては、グリシジルエーテルとアクリル酸との反応によって得られるビスフェノールA、フェノールノボラック型、脂環型の各化合物等が代表的なものとして挙げられる。かかる成分▲2▼は単官能性及びまたは多官能性化合物を1種以上単独混合物の形で使用することができる。▲2▼で示される成分は、1種単独でもよいが2種以上混合使用してもよい。ただしエポキシ化合物を採用した場合には塩基性化合物、例えばウレタンアクリレート化合物と併用することは避けた方がよい。エポキシ化合物を採用したときには▲3▼で示される重合開始剤成分として後述するカチオン重合触媒を用いることが多く、したがって塩基性化合物との併用が出来ないためである。
【0019】
本発明に使用される重合開始剤成分・としては、光重合開始剤として、2,2-ジメトキシ-2-フエニルアセトフエノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、ミヒラーケトン等が代表的なものとして挙げることが出来るが、これらに限定されるものではなく、またこれらの開始剤は1種または2種以上を組合わせて使用することも出来る。更に必要に応じてアミン系化合物等の増感剤を併用することも可能である。また熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が代表的のものとして挙げることができる。エポキシ化合物を用いる場合にはトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のエネルギー活性カチオン重合触媒が用いられる。本発明に使用される重合開始剤成分▲3▼の使用量は、成分▲1▼+成分▲2▼に対して0.1〜10重量%であり、好ましくは1〜5重量%である。
【0020】
本発明の成分▲1▼+成分▲2▼+成分▲3▼の組み合わせで好ましいものは、脂環族エポキシであるセロキサイト2021P(ダイセル化学(株)製)、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートカチオン触媒UVI-9670(巴工業(株)製)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンの組成物等が挙げられる。
【0021】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、レベリング剤、界面活性剤、有機高分子化合物、有機可塑剤、有機高分子固体微粒子、及び無機固体微粒子等を配合してもよい。本発明において有機高分子固体微粒子、無機固体微粒子等の固体微粒子を前記樹脂組成物に添加することにより、機械的強度又は体積収縮率を改善することができる。該固体微粒子は、好ましくはそれぞれ平均粒径3μm〜70μmであり、更に好ましくは10μm〜60μm、更に好ましくは15μm〜50μmである。またこれらの固体微粒子は、これらの範囲の粒径のものを任意に混合して使用することができるが、好ましくは同程度の粒径のものを用いる。有機高分子固体微粒子としては架橋ポリスチレン系高分子、架橋型ポリメタアクリレート系高分子、ポリエチレン系高分子、ポリプロピレン系高分子等がその代表的なものとして挙げられる。また無機固体微粒子としてはガラスビーズ、タルク微粒子、酸化珪素微粒子等がその代表的なものとして挙げられるが、有機高分子固体微粒子、無機固体微粒子はこれらに限定されるものではなく、いずれのものでも用いることができる。
【0022】
本発明に用いられる有機高分子固体微粒子と無機固体微粒子はそれぞれ用いられるが、これらを併用してもよい。これらの固体微粒子を併用する時は、有機高分子固体微粒子と無機固体微粒子の混合割合は、有機高分子固体微粒子に対して無機固体微粒子の割合は5容量%〜70容量%であり、好ましくは、10容量%〜55容量%である。本発明に使用される前記所定有機高分子固体微粒子及びまたは無機固体微粒子はアミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等のシランカップリング剤で処理されたものを採用することが好ましい。かかるシランカップリング剤で処理した有機高分子固体微粒子、無機固体微粒子を用いたときには特段機械的強度に好ましい結果が得られる。しかしながらシランカップリング剤の種類の効果は用いる光硬化性樹脂によって異なる。ビニル系不飽和化合物を光硬化性樹脂として用いた場合にはアクリルシラン系処理剤が最も好ましく、エポキシ系化合物を光硬化性樹脂として用いた時はエポキシシラン系処理剤が最も効果が高いことを見出した。
【0023】
ポリエチレン系高分子個体微粒子、ポリプロピレン系高分子個体微粒子を用いるときにはシランカップリング剤処理のためには少なくとも1〜10重量%のアクリル酸系化合物を共重合したものを採用した方が好ましい結果が得られる。本発明の樹脂組成物は前記成分▲1▼、▲2▼及び▲3▼を混合し、あるいは必要に応じて他の成分を配合してなるものであるが、各成分の混合方法は特に限定されるものではない。本発明の樹脂組成物を用いて光学的立体造形する場合に使用される光は目的に応じて紫外線、可視光、赤外線、レーザー光線等が用いられる。硬化効率を考慮すると、レーザー光線又は紫外線が特に好ましいが、感応性樹脂の選択如何によっては、可視光線や赤外線を効率的に使用することもできる。本発明の樹脂組成物が用いられる光学的立体造形法の代表的な方法としては、液状であるこの組成物に所望のパターンを有する硬化層が得られるように光を選択的に照射して硬化層を形成し、次いで該硬化層に未硬化液状組成物を供給し、同様に光を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する積層操作を繰り返すことによって最終的に目的とする立体的造形物を得る方法である。
【0024】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0025】
参考例1〔ウレタンアクリレートオリゴマーの合成〕攪拌機、冷却管及び側管付き滴下ロートを備えた5リットルの三口フラスコにイソホロンジイソシアナートを3量化したIPDIターポリマー(住友バイエル社製;デイスモジュールZ-4372)1023gとジブチルスズラウレート0.076gを仕込み、オイルバスで内温を65℃にする。予め50℃に保存した側管付き滴下ロートにポリネオペンチレンアジペート(旭電化製;アデカニューエースY9-10)420.1gを仕込む。系内全体を減圧にし、窒素ガスで常圧に戻す操作を繰り返し、脱気及び窒素置換を行う。系内全体を常圧にし窒素雰囲気中フラスコ内容物の温度を65℃に保ち、内容物を攪拌しながら滴下ロートより1時間を掛けてポリネオペンチレンアジペートを滴下する。滴下後更に1時間内容物を65℃に保ち攪拌下反応を継続する。フラスコ内容物の温度を50℃に冷却した後、滴下ロートに2-ヒドロキシエチルアクリレート254.5gにメチルヒドロキノン0.90gを均質に溶解混合した液を仕込み、フラスコ内容物の温度が55℃を越えない範囲で素早く滴下し、その後2時間攪拌下反応を継続する。得られたウレタンアクリレートオゴリゴマーを内容物が暖かい内にフラスコより取り出す。ここに得られたウレタンアクリレートオリゴマーはIR及び元素分析の結果以下の構造式であることを確認した。
【0026】
【化4】

【0027】
参考例2〔光学的造形用組成物の調合〕攪拌機、冷却管及び側管付き滴下ロートを備えた5リットルの三口フラスコに参考例1で合成したウレタンアクリレート1600g、EO変性ビスフェノールAジアクリレート〔新中村化学(株)製、NKエステルA-BPE-4は本発明でのn=2、R1=H〕1680g、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート〔新中村化学(株)製NKエステルA-TMPT-3PO〕720gを仕込減圧脱気窒素置換した。紫外線カットした環境下2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(チバガイギー社製;イルガキュアー651)120gを添加し、完全溶解するまで混合して光学的造形用組成物を調製した。
【0028】
参考例3 集束したArレーザー光(出力500mW、波長368m)を参考例2で調合した樹脂組成物の表面に対して垂直に、JIS規格7113に準拠するダンベル試験片が得られるように照射した。得られた硬化物を付着の樹脂液をイソプロピルアルコールで洗浄除去した後3KWの紫外線で10分間ポストキュアを行った。得られた試験片をJIS規格K7113に準拠して引っ張り特性を測定した。また樹脂組成物、造形物の比重を測定することによって体積収縮率を求めた。得られた結果は以下の通りで、一般的に言われているウレタンアクリレート系樹脂の体積収縮率6〜8%と比較して低収縮であり機械的物性にも優れたものであることが明確である。
【0029】
引張強度 5.4Kg/mm2
引張伸度 8%
引張弾性率 243Kg/mm2
体積収縮率 4.6%
【0030】
比較例1 参考例2に於いてEO変性ビスフェノールAジアクリレートの代わりにポリプロピレングリコール200ジアクリレート〔新中村化学(株)製、NKエステルAPG-200〕を用いた以外は全く同様に樹脂組成物を調合した。また参考例3と同様にしてタンベル試験片を造形し同様に物性及び体積収縮率を測定した。その結果は以下の通りで実施例3と比較して機械物性、及び体積収縮率が劣っている。
【0031】
引張強度 4.0Kg/mm2
引張伸度 8%
引張弾性率 187Kg/mm2
体積収縮率 7.8%
【0032】
比較例2 参考例2に於いてEO変性ビスフェノールAジアクリレートの替わりにポリプロピレングリコール700ジアクリレート(新中村化学(株)製NKエステルAPG-700)を用いた以外は全く同様に樹脂組成物を調合した。また参考例3と同様にしてタンベル試験片を造形し同様に物性及び体積収縮率を測定した。その結果は以下の通りで比較例1と比べたとき体積収縮率の改善は認められるが、機械的物性の著しい低下が見られる。
【0033】
引張強度 1.2Kg/mm2
引張伸度 13%
引張弾性率 18Kg/mm2
体積収縮率 5.9%
【0034】
比較例3 参考例2に於いてEO変性ビスフェノールAジアクリレートの替わりにポリエチレングリコール200ジアクリレート(新中村化学(株)製NKエステルA-200)を用いた以外は全く同様に樹脂組成物を調合した。また参考例3と同様にしてタンベル試験片を造形し同様に物性及び体積収縮率を測定した。その結果は以下の通りで、比較例1と比べたとき、機械的物性の向上が認められたが、反面体積収縮率が高くなり、体積収縮率の低減と機械物性の向上とは二律背反現象であることが明白であり、本発明の効果は極めて異例のことである。
【0035】
引張強度 4.5Kg/mm2
引張伸度 9%
引張弾性率 203Kg/mm2
体積収縮率 8.0%
【0036】
実施例1 セロキサイト2021P(ダイセル化学(株)製、脂環族エポキシ化合物)1500g、EO変性ビスフェノールAジアクリレート〔新中村化学(株)製NKエステルA-BPE-4本発明でのn=2、R1=H〕750g、PO変性トリメチレングコールトリアクリレート(新中村化学(株)製NKエステルA-TMPT-3PO)750gを仕込混合攪拌する。これに紫外線カットした環境下、UVI-9670(巴工業(株)製カチオン触媒)60g及び2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(チバガイギー社製;イルガキュアー651)120gを添加し、完全溶解するまで混合攪拌する。この樹脂液を用い実施例3と同様にして試験片を作成した。得られた結果は以下の通り、機械的物性に優れた低収縮造形品であった。
【0037】
引張強度 7.1Kg/mm2
引張伸度 7%
引張弾性率 335Kg/mm2
体積収縮率 5.6%
【0038】
比較例4 実施例1において、EO変性ビスフェノールAジアクリレートの替わりにポリプロピレングリコール400ジアクリレート(新中村化学(株)製NKエステルAPG-400)を用いた以外は全く同様に樹脂組成物を調合した。また参考例3と同様にしてタンベル試験片を造形し同様に物性及び体積収縮率を測定した。その結果は以下の通りで実施例1と比較して機械的物性、体積収縮率が劣っている。
【0039】
引張強度 3.8Kg/mm2
引張伸度 8%
引張弾性率 191Kg/mm2
体積収縮率 7.0%
【0040】
比較例5 実施例1においてEO変性ビスフェノールAジアクリレートの替わりにポリプロピレングリコール700ジアクリレート(新中村化学(株)製NKエステルAPG-700)を用いた以外は全く同様に樹脂組成物を調合した。また参考例3と同様にしてタンベル試験片を造形し同様に物性及び体積収縮率を測定した。その結果は以下の通りで、比較例1と較べたとき体積収縮率の改善は認められるが、機械的物性の低下が見られる。
【0041】
引張強度 3.1Kg/mm2
引張伸度 8%
引張弾性率 166Kg/mm2
体積収縮率 6.0%
【0042】
比較例6 実施例1においてEO変性ビスフェノールAジアクリレートの替わりにポリエチレングリコール200ジアクリレート(新中村化学(株)製NKエステルA-200)を用いた以外は全く同様に樹脂組成物を調合した。また参考例3と同様にしてタンベル試験片を造形し同様に物性及び体積収縮率を測定した。その結果は以下の通りで、比較例1と比べたとき、機械的物性の向上が認められたが、反面体積収縮率の低減と機械的物性の向上とは二律背反現象であることがこの比較例からも認められ、機械的物性の改善と体積収縮率の低減を同時に達成する本発明の効果は極めて異例のことである。
【0043】
引張強度 5.9Kg/mm2
引張伸度 5%
引張弾性率 366Kg/mm2
体積収縮率 7.5%
【0044】
実施例2 セロキサイト2021P(ダイセル化学(株)製、脂環族エポキシ化合物)1500g、EO変性ビスフェノールAジアクリレート〔新中村化学(株)製NKエステルA-BPE-10本発明でのn=5、R1=H〕750g、PO変性トリメチレングコールトリアクリレート(新中村化学(株)製NKエステルA-TMPT-3PO)750gを仕込混合攪拌する。これに紫外線カットした環境下、UVI-9670(巴工業(株)製カチオン触媒)60g及び2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(チバガイギー社製;イルガキュアー651)120gを添加し、完全溶解するまで混合攪拌する。この樹脂液を用い参考例3と同様にして試験片を作成した。得られた結果は以下の通り、機械的物性に優れた低収縮造形品であった。
【0045】
引張強度 4.0Kg/mm2
引張伸度 10%
引張弾性率 200Kg/mm2
体積収縮率 4.9%
【0046】
比較例7 実施例1において、EO変性ビスフェノールAジアクリレート(NKエステルA-BPE-4)の替わりにEO変性ビスフェノールAジアクリレート(NKエステルA-BPE-40本発明外でのn=20)を用いた以外は全く同様に樹脂組成物を調合した。また参考例3と同様にしてタンベル試験片を造形し同様に物性及び体積収縮率を測定した。その結果は以下の通りで、体積収縮率が著しく低下するが機械的物性の低下が著しく用いることは出来ない。
【0047】
引張強度 0.6Kg/mm2
引張伸度 20%
引張弾性率 3Kg/mm2
体積収縮率 4.0%
【0048】
参考例4〜6 参考例2で調製された光学的造形用組成物に、個体微粒子として、架橋ポリスチレン系高分子、架橋型ポリメタアクリレート系高分子、ガラスビーズを添加して、それぞれ光学的造形用組成物を作製し、参考例3と同様にして光学的造形物を形成した。このようにして得られた結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から明らかなように、固体粒子を添加することにより機械的強度を維持しつつ体積収縮率を小さくすることができる。
【0051】
参考例7 参考例2で調製された光学的造形用組成物に、固体微粒子として、アクリルシラン系処理剤で処理されたガラスビーズGB-731C(東芝バロティーニ(株)製、平均粒径30μ)を50容量%添加して光学的造形用組成物を作製し、参考例3と同様にして光学的造形物を形成した。このようにして得られた光学的造形物は、機械的強度5.1Kg/mm2、体積収縮率は2.2%と優れたものである。
【0052】
【発明の効果】
本発明は、光学的立体造形用樹脂組成物の成分として、特定の変性ビスフェノールAジアクリレート化合物を加えることにより、得られた光学的立体造形物の体積収縮率が小さく、しかも機械的物性にも優れたものが得られ、また前記光学的立体造形用樹脂組成物に固体微粒子を添加することによりいっそうの体積収縮率を改善することができるという従来にない格別顕著な効果を奏するものである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-21 
出願番号 特願平6-44699
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C08F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小野寺 務  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 佐野 整博
藤原 浩子
登録日 2003-03-20 
登録番号 特許第3410799号(P3410799)
権利者 ナブテスコ株式会社
発明の名称 光学的立体造形用樹脂組成物  
代理人 渡辺 喜平  
代理人 中島 幹雄  
代理人 中島 幹雄  

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