• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41M
管理番号 1130841
異議申立番号 異議2003-73688  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-03-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-11-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3436986号「記録用紙」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3436986号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3436986号の請求項1に係る発明は、平成6年9月6日に特許出願され、平成15年6月6日にその発明についての特許の設定登録がされた。
本件特許公報が、平成15年8月18日に発行されたところ、その特許に対して、井出貞子より特許異議の申立てがあり、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成17年7月5日付けで訂正請求がなされた。

第2 訂正の適否について
1 訂正事項
(1) 訂正事項a
特許請求の範囲の記載を、
「【請求項1】 再生パルプを50重量%以上含有するか、又は化学パルプを90重量%以上含有するセルロースパルプを主成分とし、填料としての軽質炭酸カルシウムを4重量%以上10重量%未満含有し、かつバインダー、表面サイズ剤及び導電剤のみで表面サイズ処理された原紙よりなり、その少なくとも一方の面の王研式平滑度試験機による平滑度が40秒〜400秒で、JIS K 6911による表面電気抵抗率が1×109〜1×1011Ωであり、JIS P 8140に記載されるコブサイズ度法吸水試験によるコブサイズ度が15g/m2〜50g/m2であることを特徴とする、乾式電子写真方式、インクジェット方式及び溶融熱転写方式からなる複数のマーキングシステムに対応できる記録用紙。」と訂正する。
(2) 訂正事項b
段落【0008】の記載を、
「【0008】さらに、上記の複数のマ-キングシステムに対応できる記録用紙において、前記原紙は、セルロ-スパルプとして再生パルプを50重量%以上含有するものであるか、又は化学パルプを90重量%以上含有するものであり、かつ、填料として軽質炭酸カルシウムを4重量%〜10重量%含有し、さらにバインダー、表面サイズ剤及び導電剤のみで表面サイズ処理された原紙であることを特徴とするものであり、また、前記複数のマ-キングシステムに対応できる記録用紙はJIS K 6911による表面電気抵抗率が1×109〜1×1011Ωであることを特徴とするものである。」と訂正する。
(3) 訂正事項c
段落【0007】(2箇所)、同【0010】(4箇所)、同【0019】、同【0020】(2箇所)、同【0021】(2箇所)、同【0022】(2箇所)、同【0023】(2箇所)、同【0024】、同【0025】、同【0026】、同【0027】(2箇所)、同【0028】(2箇所)及び同【0029】中に記載されたコブサイズ度の単位「ml/m2」を、「g/m2」と訂正する。
(4) 訂正事項d
段落【0029】中に記載された「実施例1〜7」を、「実施例1〜6」と訂正する。

2 新規事項の有無、訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否
(1) 訂正事項aは、記録用紙を構成する材料の一つである導電剤について、単に「導電剤が添加されている」としていたものを、「バインダー、表面サイズ剤及び導電剤のみで表面サイズ処理された」とすることで、導電剤の存在形態ないし使用形態を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当し、併せて、明らかな誤記であるコブサイズ度の単位を正当な単位に正すものであるから、誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当する。
そして、導電剤に関して、「バインダー、表面サイズ剤及び導電剤のみで表面サイズ処理された原紙」であることは、願書に添付した明細書の実施例に記載されていることであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2) 訂正事項bは、訂正事項aによって特許請求の範囲が訂正されたことに合わせて、発明の詳細な説明に記載されていた該当箇所を、特許請求の範囲の記載に一致させるためのものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3) 訂正事項cは、明らかな誤記であるコブサイズ度の単位を正当な単位に正すものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって、誤記の訂正を目的とする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(4) 訂正事項dは、明細書に記載された実施例は6までであるところ、「実施例1〜7」とした誤りを、「実施例1〜6」に正すものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって、誤記の訂正を目的とする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 本件発明
前項に記載したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許に係る発明は、平成17年7月5日付訂正請求書に添付した全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。(以下、「本件発明」という。)
「再生パルプを50重量%以上含有するか、又は化学パルプを90重量%以上含有するセルロースパルプを主成分とし、填料としての軽質炭酸カルシウムを4重量%以上10重量%未満含有し、かつバインダー、表面サイズ剤及び導電剤のみで表面サイズ処理された原紙よりなり、その少なくとも一方の面の王研式平滑度試験機による平滑度が40秒〜400秒で、JIS K 6911による表面電気抵抗率が1×109〜1×1011Ωであり、JIS P 8140に記載されるコブサイズ度法吸水試験によるコブサイズ度が15g/m2〜50g/m2であることを特徴とする、乾式電子写真方式、インクジェット方式及び溶融熱転写方式からなる複数のマーキングシステムに対応できる記録用紙。」

第4 取消理由の概要
平成17年4月22日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
本件請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものである。

刊行物1:特開平5-230789号公報
刊行物2:特開平5-185759号公報
刊行物3:特開平6-99655号公報
刊行物4:紙パ技協誌、第20巻第2号第17〜24頁

第5 各刊行物に記載された事項
1 刊行物1には、次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】 全パルプ中に古紙パルプを70%以上含有し、かつ、化学パルプの比率90%以上、紙の横方向の伸縮率(温度20°C湿度65%RHから温度20°C湿度25%RHへ環境変化させた時の伸縮率)が0.60%以下であることを特徴とする電子写真用転写用紙。
(1b)「【0013】・・・・・本発明のリサイクル転写紙に用いることができる填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク等の炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、パイオロフィライト、セリサイト、タルク等のケイ酸類等、無機填料や、尿素樹脂等の有機顔料が使用できるが、古紙原料に含まれている灰分を勘案して添加する必要がある。添加する場合には用紙に対して重量比で20%以下、さらに好ましくは10%以下の配合にする。望ましくは、電子写真方式における画質維持性の観点から炭酸カルシウムを10%以下配合することが好ましい。
(1c)「【0015】また画像の乱れを防止し、適当なコピー画像濃度を維持するため、塩化ナトリウム、塩化カリウム、スチレン-マレイン酸コポリマー、第4級アンモニウム塩等の導電剤を抄紙機のサイズプレスで表面塗布して、転写紙の表面電気抵抗(JIS K 6911による)を109〜1011Ω(温度20°C,湿度65%RH)にする。また、コピー画像部の鮮鋭度を向上させるためにキャレンダー処理等により表面の凹凸を少なくして転写紙の平滑度(JIS P 8119)を10秒以上、好ましくは20秒以上にする。・・・・・」
(1d)「【0017】 実施例1 下記第1表の実施例1に示す通り、ケミカルパルプ(CP)として、上質電子写真用紙古紙DIPを100%配合し、表1に示すような填料、内添サイズ剤を配合して抄紙した。さらに間接電子写真適性を付与するため、サイズプレス処理により、澱粉を1g/m2、塩化ナトリウム0.2g/m2となるように塗工し、本発明の電子写真用転写紙を得た。この転写紙の紙離解パルプろ水度は、450mlで、紙の横方向の伸縮率は、等比こうかん式伸縮率計によって測定した結果、0.47%であった。この転写紙の高湿環境でのコピー適性は、次のようにして確認した。即ち、この転写紙を25°C85%RHの環境中で、100枚積み重ね、2時間机上に放置し、複写機(FX5075、富士ゼロックス社製)で、片面コピー、片面多重コピー、両面コピーを行い、発生したシワ発生率、紙詰まり率を確認した。その結果を第1表に示す。」
(1e)第1表及び第2表には、「表面サイズ剤」の名称で、澱粉1g/m2と、NaCl0.2g/m2の混合物を使用したこと。

2 刊行物2には、次の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】 JIS P8119に従って測定したベック平滑度が40秒から400秒の範囲である熱転写用受像紙において、紙の密度が0.65から0.95g/cm3であることを特徴とする熱転写用受像紙。」
(2b)「【0029】本発明では填料として軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、シリカ、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等の無機顔料に加えて尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレンおよびポリスチレンを主原料とした有機顔料を内添しても良い。また、それらを数種類目的に応じた比率で混合して用いる事も可能である。」
(2c)「【0038】実施例1PFIミルでろ水度430 ml c.s.f.まで叩解したLBKPと450mlc.s.f.まで叩解したNBKPを重量比で8:2の割合に混合したパルプ100部に対して、軽質炭酸カルシウム(TP121、奥多摩工業社製)を10部、アルキルケテンダイマーサイズ剤(サイズパインK903、荒川化学社製)をアルキルケテンダイマー分として0.1部、カチオン化澱粉(ケイトF、王子ナショナル社製)を0.8部添加し、坪量64g/m2の手すきシートを作製した。その手抄きシ-トからウェットプレスでの線圧が5kg/cmの条件で脱水した。なお、シートの乾燥条件は90℃で5分間とした。その後、これらのシートにサイズプレスで酸化澱粉(商品名:MS3800、日本食品加工社製)と一緒に表面サイズ剤(商品名:コロパ-ルM150、星光化学社製)の塗布量がそれぞれ0.5g/m2および0.05g/m2となるように塗抹した。更に、線圧が60kg/cmでのス-パ-カレンダー処理を行って熱転写受像紙とした。」

3 刊行物3には、次の事項が記載されている。
(3a)「【請求項1】 内添サイズ剤として中性ロジンサイズ剤を含有し、シート坪量に対するサイズプレス液の吸液量の比(以下、吸液係数と表示)が0.47以上、且つコッブサイズ度が13±2g/m2であることを特徴とする転写用シート。」
(3b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクジェット記録用紙及び電子写真用転写紙に共用できる転写用シートに関する。更に詳しくは、インクジェット記録方法では、高濃度印字画像が得られ、且つ印字部分のブロンズ化現象の少ないインクジェット記録用紙及び電子写真用転写紙に共用できる転写シートに関する。」
(3c)「【0017】さらに、本発明のサイズプレス液にはブロンズ化現象を改良する目的でアルカリ性塩を添加することが好ましい。アルカリ性塩については水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の強アルカリ性物質の使用が考えられるが、四硼酸ナトリウム、四硼酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の弱アルカリ性塩を任意に採用することもできる。」
(3d)「【0022】本発明の方法で得られる紙料中には、填料を添加できる。填料の種類は、一般的には炭酸カルシウム、タルク、カオリン、二酸化チタン等の無機顔料が用いられるが、インクジェット記録方法により印字を行なった場合、ドットの広がりやフェザリングと呼ばれるひげ状のにじみの発生を防止するという観点、及び電子写真用転写紙として使用する場合、ドラムの汚れを防止するという観点からはカオリン、及び炭酸カルシウムの使用が好ましい。」
(3e)「【0028】 実施例1
1.原紙配合;
LBKP(ろ水度 350ml、c.s.f) 70部
NBKP(ろ水度 400ml、c.s.f) 30部
インドネシアクレー(P.T.ALTER ABADI社製、BRU-30) 10部
中性ロジンサイズ剤(荒川化学社製、KS-767) 0.7部
硫酸バンド 1部
両性澱粉(王子ナショナル社製、Cato3210) 1部
炭酸ナトリウム 0.4部
歩留り向上剤(ハイモ社製、NR-11LS) 0.02部
上記配合のスラリーを抄幅1,300mm、抄紙速度150m/min.で長網抄紙機により64g/m2の原紙の抄造を行なった。この原紙に、以下の配合でテーブルにてサイズプレス処理を1回行ない、吸液係数0.60のインクジェット記録用紙、及び電子写真用転写紙に共用できる転写用シートを得た。
2.サイズプレス液配合;
ポリアクリルアミド系樹脂水溶液(ハリマ化成製、G-3000)1部
塩化ナトリウム 0.05部
スチレン-アクリル酸系面サイズ剤(荒川化学社製、
ポリマロン 1308S) 0.30部
水酸化ナトリウム 0.03部
水 98.62部」
(3f)「【0031】上記インクジェット記録用紙、及び電子写真用転写紙に共用できる転写用シートの一般特性として、コッブサイズ度はJIS P-8140に準じたが、水との接触時間は10秒とした。」

4 刊行物4には、
(4a)ベック平滑度TBと圧力降下式平滑度測定器によって測定した平滑度Tpが、だいたい比例関係にあること(第19頁表1、第23頁図8)
(4b)「圧力降下式平滑度測定器は現在、王研式平滑度器という名称で市販されている。」(第24頁右欄第27〜29行)
が記載されている。

第6 当審における判断
1 対比
本件発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
(1) 刊行物1記載の発明における「古紙パルプ」は、本件発明における「再生パルプ」に相当する。
(2) 刊行物1記載の発明では、填料として、「重質炭酸カルシウム」及び「軽質炭酸カルシウム」を例示すると共に、画質維持性の観点から炭酸カルシウムを10%以下配合することが好ましいとしており、「炭酸カルシウムを10重量%未満含有する」点では、両者は一致している。
(3) 本件明細書の「表面サイズには酸化澱粉、ポリビニルアルコール、変性澱粉、セルロース系重合体などのバインダー、アクリル系、スチレン系などの表面サイズ剤のほか、・・・塩化ナトリウム、塩化カリウム、ポリスチレンスルホン酸塩、アクリル系四級アンモニウム塩等の導電剤を添加することが好ましい。」(【0017】)との記載からみて、刊行物1記載の発明の実施例における「澱粉」及び「塩化ナトリウム」は、それぞれ本件発明における「バインダー」及び「導電剤」に相当するから、刊行物1記載の発明においては、バインダー及び導電剤で表面サイズ処理されているといえる。
(4) 刊行物1記載の発明においては、平滑度(JIS P 8119)を10秒以上、好ましくは20秒以上としており、「平滑」である点では、本件発明と一致している。
(5) 刊行物1記載の発明と本件発明とは、「JIS K 6911による表面電気抵抗率が109〜1011Ω」である点で一致している。
よって、両者は、
「再生パルプを50重量%以上含有するか、又は化学パルプを90重量%以上含有するセルロースパルプを主成分とし、填料としての炭酸カルシウムを10重量%未満含有し、かつバインダー及び導電剤で表面サイズ処理された原紙よりなり、その少なくとも一方の面が平滑で、JIS K 6911による表面電気抵抗率が1×109〜1×1011Ωである、乾式電子写真方式に対応できる記録用紙。」
である点で一致し、以下のaないしeの点で相違する。
相違点a:
前記「炭酸カルシウム」について、本件発明では、「軽質炭酸カルシウム」に特定するとともに、その下限値を「4重量%以上」と規定するのに対して、刊行物1に記載された発明では、単に、「炭酸カルシウム」としており、また、下限値についても記載がない点。
相違点b:
本件発明では、「バインダー、表面サイズ剤及び導電剤のみで」表面サイズ処理されるものであるのに対して、刊行物1記載の発明でには、「バインダ」及び「導電剤」のみで表面サイズ処理されている点。
相違点c:
表面の平滑度について、本件発明が、「王研式平滑度試験機による平滑度が40秒〜400秒」であることを規定するのに対して、刊行物1記載の発明では、「ベック平滑度が10秒以上」であるとしている点。
相違点d」
本件発明が、「JIS P 8140に記載されるコブサイズ度法吸水試験によるコブサイズ度が15g/m2〜50g/m2」であることを規定するのに対して、刊行物1記載の発明では、コブサイズ度について規定されてない点。
相違点e
本件発明が、「乾式電子写真方式、インクジェット方式及び溶融熱転写方式からなる複数のマーキングシステムに対応できる」としているのに対して、刊行物1記載の発明では、「電子写真用」についてしか言及されていない点。

2 相違点について
本件明細書の記載からみて、本件発明は、乾式電子写真方式、インクジェット方式及び溶融熱転写方式からなる複数のマーキングシステムに対応できる記録紙を得ることを目的とするものであるが、後の「(5) 相違点eについて」の項でも述べるように、記録紙の技術分野において、複数の記録方式に使用可能な記録用紙を得るという目的・課題については、本件の出願前より既に周知である(例えば、刊行物3あるいは、審査段階で引用され、取消理由通知においても引用した特開昭62-204988号公報、特開昭61-225396号公報参照)。
この点を踏まえたうえで、以下、各相違点について検討する。

(1) 相違点aについて
本件明細書には、相違点aについて、「軽質炭酸カルシウムの原紙中に含有される配合量が4重量%を下回ると、インクジェット記録でインク吸収性が不足し、印字後インク乾燥時間が長くなり、連続印字で、印字部が乱れるなどの障害となる。また、填料の配合量が10重量%を越えて含有されると、特に電子写真方式で連続印字/複写を行なった場合、用紙の紙粉中に含まれる填料により、感光体、クリ-ニングブレ-ド、ゴムロ-ル、定着ロ-ル等への付着量が増加し、摩耗、変質等の原因となり好ましくない。」と記載されている。
そこで、刊行物1に記載された発明について検討するに、刊行物1には、填料として使用される物質の列記の中に、軽質炭酸カルシウムが使用出来ることか明記されている(摘記事項(1b))のであるから、軽質炭酸カルシウムを選択することになんら困難性はない。また、炭酸カルシウムの含有量を、電子写真感光体との関係で10%以下とすることも記載されている(摘記事項(1b))。
刊行物1には、4重量%以上とする点については記載はないが、インクジェット記録紙において、填料として使用される軽質炭酸カルシウムを、紙料の4重量%程度以上含有させることが必要であることは、本件の出願前よりすでに周知である。
例えば、特開平1-280579号公報(特許請求の範囲参照)には、4〜30重量%の軽質カルシウムを含有するインクジェット記録紙が記載され、特開昭64-30781号公報(特許請求の範囲参照)には、5〜30重量%の軽質カルシウムを含有するインクジェット記録紙が記載されている。
したがって、刊行物1に記載された発明において、インクジェット方式の記録に対応できる記録用紙を得ることを目的として、填料を軽質炭酸カルシウムに特定するとともに、その下限値を「4重量%」とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

(2) 相違点bについて
前項「対比」において記載したとおり、本件明細書の記載(段落【00176】)によれば、「澱粉」はバインダーとしているが、一方、刊行物1の各実施例に対する配合として、表面サイズ剤の欄に、澱粉とNaClの混合物が使用されたこと(摘記事項(1d))が記載されている。
ここで、「澱粉」が紙料の表面サイズ剤として使用されることは、製紙あるいは紙加工の分野において周知のことであり(必要ならば、「紙と加工の薬品事典」テックタイムス社(平成3年2月25日発行)第218頁「表面サイズ剤」の項参照のこと)、また、澱粉の一般的性状からして、水に分散させた澱粉が、バインダーとしての性質を有することも自明である。
してみれば、刊行物1に記載された澱粉は、バインダー及び表面サイズ剤の両方の性質を兼ね備えているものであるといえる。
ところで、バインダー及び表面サイズ剤としての役割を、別個の物質により担わせることも刊行物3に記載されているとおり(摘記事項(3e))、本件の出願前にすでによく知られていることである。
してみれば、刊行物1に記載された発明において、相違点bに係る構成を採用することは、刊行物1及び刊行物3に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得たことである。

(3) 相違点cについて
本件明細書には、相違点cについて、「前記複数のマ-キングシステムに対応できる記録用紙は、記録紙の表面性として王研式平滑度測定器により測定された用紙の平滑度が40秒〜400秒でなければならない。前記記録紙の平滑度が40秒より小さいと、溶融熱転写記録をした場合、インクの転写量が用紙表面の凹凸により変化し、結果として濃度が不均一となったり、細線の途切れなどが発生するため好ましくない。また、電子写真記録方式においてもトナ-付着量の多い部分で、濃度均一性、モトルが低下する。平滑度が400秒を上回ると、電子写真方式、インクジェット方式、溶融熱転写方式で印字する場合、シ-ト状で給紙する場合、給紙不良、複写機、プリンタ
-内での搬送性不良などが発生するため好ましくない。」と記載されている。
そこで、刊行物1に記載された発明について検討するに、刊行物1には、「コピー画像部の鮮鋭度を向上させるためにキャレンダー処理等により表面の凹凸を少なくして転写紙の平滑度(JIS P 8119)を10秒以上、好ましくは20秒以上にする。」と記載されており、王研式平滑度測定器により測定された平滑度を「40秒〜400秒」と特定することまでは記載がない。
しかしながら、刊行物2には、熱転写用受像紙において、ベック平滑度を40〜400秒の範囲とすることが記載され(摘記事項(2a))、その効果として、溶融転写における高印字適性を得ることを記載している。
そして、刊行物4によれば、40〜400秒程度の範囲では、王研式平滑度試験器による平滑度値と、ベック平滑度計による平滑度値に、さほど大きな開きはないとしている(摘記事項(4a)、(4b))。
してみれば、刊行物1に記載された発明において、溶融熱転写方式による記録に対応できる記録用紙を得ることを目的として、その平滑度を、王研式平滑度試験機による平滑度が40秒〜400秒と特定することは、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たところである。

(4) 相違点dについて
本件明細書には、相違点dについて、「用紙の液体吸収性は、JIS P 8140に記載されるコブサイズ度法吸水試験により測定されるものであり、純水を用紙と30秒間接触させたときの吸水量として測定した用紙のコブサイズ度は15mg/m2 〜50g/m2である。コブサイズ度が15g/m2を下回るとインクジェット記録した場合インク吸収性が不足し、連続印字した場合にインクが裏面に転写するといった問題が生ずる場合があるし、また、コブサイズ度が50g/m2を上回るとインクジェット記録でドットがにじんだり、必要以上に拡大したりして、画質が低下するため問題となる。」と記載されている。
そこで、刊行物1に記載された発明について検討するに、刊行物1には、コブサイズ度に関する記載はない。
しかしながら、刊行物3には、電子写真用転写紙とインクジェット記録紙とに共用できる転写シートについて、コブサイズ度を規定することが記載されているように、インクジェット記録紙の性能評価において吸水試験は必須の事項であり、その測定方法をいかなる方法にするか、どの程度の範囲が好ましいかは、インクジェット記録紙としての使用を意図する限り、当然に検討し選択する範囲のものである。
よって、刊行物1に記載された発明において、当業者であれば、インクジェット方式による記録に対応できる記録用紙を得ることを目的として、相違点dに係る構成を採用することに格別な困難性を要するものとは認められない。

(5) 相違点eについて
前述のとおり、複数の記録方式に使用可能な記録用紙を製造する試みは、この発明の出願前より周知である(例えば、刊行物3あるいは、審査段階で引用され、取消理由通知においても引用した特開昭62-204988号公報、特開昭61-225396号公報参照)。
そして、電子写真用記録紙に係る発明である刊行物1に記載された発明において、相違点aないし相違点dに係る構成を採用することにより、電子写真記録のみならず、インクジェット記録にも、熱溶融転写記録にも適用できるようにしうることは、刊行物2、3に記載された発明及び周知技術に基づいて、容易になし得ることも、既に記載したとおりである。
さらに、これらの相違点aないし相違点dに係る構成を同時に採用するにあたり、たとえば、ある相違点に係る構成を採用することが他の相違点に係る構成を採用する際の阻害要因になるといったような、特段の事情があるとも認められない。
よって、本件発明が、「乾式電子写真方式、インクジェット方式及び溶融熱転写方式からなる複数のマーキングシステムに対応できる」であろうことは、当業者であれば容易に想起することにすぎない。

(6) 特許権者の主張について
特許権者は、意見書において、刊行物1ないし4には、3種類の記録方式全てに対応可能な記録用紙が記載されていないし、本件発明で規定する要件を全て備えるものは記載されていない、さらに、刊行物1ないし4に記載の記録用紙のそれぞれに対して、いかなる特性を付け加えれば、3種類の記録方式全てに適応できるようになるかについても記載されていないから、本件発明は、刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものでない旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、複数の記録方式に共通して使用可能な記録用紙は、この発明の出願前より周知であるから、各記録方式に最適な記録用紙の満たすべき条件が 個々に知られていれば、それら複数の記録方式に対応しうる記録用紙のアウトラインとして、まず、個々の記録方式用の用紙の特徴を兼ね備えたものの実現を目指すことは、当業者であれば、容易に予測するところである。
例えば、インクジェット記録用紙には、優れたドット形状、高い印字濃度、速いインク吸収性、耐水性、等々、電子写真用転写紙には、鮮鋭な画像の形成、トナー定着性、転写性、環境条件に対して安定した給排紙安定性、感光体その他への紙粉汚染がない、等々、溶融熱転写用紙には、均一な印字濃度、優れた細線再現性、画像の優れた耐摩擦性、等々がそれぞれの記録方式ごとに要求されれば、汎用記録用紙においても、各記録様式に使用する場合に、それらの要求が満たされるべきことは、誰しも考えつくことである。
翻って、意見書で主張するように、本件発明における、ある限定により、溶融熱転写においてこのような効果があり、他の限定により、インクジェット記録においてこのような効果がある云々ということは、畢竟、そのような個々の記録方式用の用紙の特徴を単に積み重ねただけのものに過ぎず、その間には、相乗的あるいは、予期せざる効果が得られたものとすることはできない。

(7) まとめ
したがって、刊行物1記載の発明において、相違点aないしeに係る構成を採用することは、いずれも刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得ることであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第7 結び
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対して特許されたものと認められる。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
記録用紙
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】再生パルプを50重量%以上含有するか、又は化学パルプを90重量%以上含有するセルロースパルプを主成分とし、填料としての軽質炭酸カルシウムを4重量%以上10重量%未満含有し、かつバインダー、表面サイズ剤及び導電剤のみで表面サイズ処理された原紙よりなり、少なくとも一方の面の王研式平滑度試験機による平滑度が40秒〜400秒で、JIS K 6911による表面電気抵抗率が1×109〜1×1011Ωであり、JIS P 8140に記載されるコブサイズ度法吸水試験によるコブサイズ度が15g/m2〜50g/m2であることを特徴とする、乾式電子写真方式、インクジェット方式及び溶融熱転写方式からなる複数のマーキングシステムに対応できる記録用紙。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は乾式電子写真方式の複写機若しくはプリンタ-、水性インクを用いたプリンタ-やコピ-、溶融方式の熱転写プリンタ-にわたる被記録部材に関し、更に詳しくは優れた発色性、鮮明性、印字の均一性に優れた特性を持つ改良された複数のマ-キングシステムに対応できる記録用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式の複写機やプリンタ-、インクジェット方式のプリンタ-や複写機、溶融方式の熱転写プリンタ-等の複数の記録方式の機種がオフィスを中心に、用途に応じて使用されるようになってきており、ユ-ザ-はこれらの各機種に対する記録紙をそれぞれ用意して使用している。
【0003】
従来、電子写真方式の複写機には、例えば、特開昭61-67038号公報に、填料として炭酸カルシウムを使用した電子写真用転写紙を用いることにより、低コストで感光体の摩耗を改善し高品質の印字を可能とすることが開示されている。また、特開昭57-120487号公報には、填料として炭酸カルシウム等の白色顔料と、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマ-を使用してインクジェット用紙のインク吸収性、ドットの広がりをおさえ、高濃度記録を可能とした用紙が開示されている。さらに、特開平2-88293号公報には、炭酸カルシウム粒子と接着剤とを主成分とした画像受容層をシ-ト状基材上に設け、表面のベック平滑度を1000秒以上とすることで熱溶融インク転写画像を均一高濃度、高解像度で鮮明に記録することを可能とした記録用紙が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような電子写真方式、インクジェット方式、溶融熱転写方式の複写機やプリンタ-におけるそれぞれの画像形成方法は、電子写真方式では微小トナー粒子を画像信号に応じて用紙上に付着、熱ロール等で定着させるものであり、インクジェット方式では通常水性インクを画像信号に応じてオリフィスより吐出し用紙上に付着させ、吸収乾燥して画像とするものであるし、また、溶融熱転写方式ではインクリボン上のインクをサ-マルヘッドにより用紙上に溶融熱転写し、付着、固化することにより画像を形成するものであって、いずれの方式でもトナ-、インクが用紙に転写され画像が形成されるものであるが、各記録用紙は、それぞれの方式に向け別個に開発されているため互換性がなく、ユ-ザ-は個々の方式に対応した用紙を別個に購入、使用しなければならず不便であり、用紙の統一が望まれていた。
【0005】
本発明者等は前述のような複数の印字方式で印字品位が良好で、紙粉発生量が少なく、用紙の搬送性、水性インク吸収性が良好な用紙を開発するべく種々の検討を重ねた結果、記録用紙の表面平滑性、液体吸収性を特定の範囲とすることで従来の欠点を改善した複数のマ-キングシステムに対応できる記録用紙が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は微小トナー粒子で画像構成される電子写真方式、水性インクで画像構成されるインクジェット方式、熱溶融インクで画像を構成される溶融熱転写方式の各方式において、トナ-、熱溶融インクの定着性が良好で、水性インクの吸収速度が早く、シャ-プな高解像度の画像を、良好な用紙搬送性でプリント可能で、しかも画像の濃度均一性に優れ、前記要望を満足する記録用紙を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は微小トナ-粒子で画像構成される電子写真方式、水性インクで画像構成されるインクジェット方式、熱溶融インクで画像を構成される溶融熱転写方式のいずれかの方式で印字した場合にも、トナ-、熱溶融インクの定着性が良好で、水性インクの吸収速度が早く、シャ-プな高解像度の画像を、良好な用紙搬送性でプリント可能で、しかも画像の濃度均一性に優れている複数のマ-キングシステムに対応できる記録用紙であって、前記用紙が、セルロ-スパルプを主成分とする原紙の少なくとも一方の面の王研式平滑度試験機による平滑度が40秒〜400秒で、かつJIS P 8140に記載されるコブサイズ度法吸水試験によるコブサイズ度が15g/m2〜50g/m2であることを特徴とする、従来の欠点を改善した複数のマ-キングシステムに対応できる記録用紙である。
【0008】
さらに、上記の複数のマ-キングシステムに対応できる記録用紙において、前記原紙は、セルロ-スパルプとして再生パルプを50重量%以上含有するものであるか、又は化学パルプを90重量%以上含有するものであり、かつ、填料として軽質炭酸カルシウムを4重量%〜10重量%含有し、さらにバインダー、表面サイズ剤及び導電剤のみで表面サイズ処理された原紙であることを特徴とするものであり、また、前記複数のマ-キングシステムに対応できる記録用紙はJIS K 6911による表面電気抵抗率が1×109〜1×1011Ωであることを特徴とするものである。
【0009】
前記複数のマ-キングシステムに対応できる記録用紙は、記録紙の表面性として王研式平滑度測定器により測定された用紙の平滑度が40秒〜400秒でなければならない。前記記録紙の平滑度が40秒より小さいと、溶融熱転写記録をした場合、インクの転写量が用紙表面の凹凸により変化し、結果として濃度が不均一となったり、細線の途切れなどが発生するため好ましくない。また、電子写真記録方式においてもトナ-付着量の多い部分で、濃度均一性、モトルが低下する。平滑度が400秒を上回ると、電子写真方式、インクジェット方式、溶融熱転写方式で印字する場合、シ-ト状で給紙する場合、給紙不良、複写機、プリンタ-内での搬送性不良などが発生するため好ましくない。
【0010】
また、用紙の液体吸収性は、JIS P 8140に記載されるコブサイズ度法吸水試験により測定されるものであり、純水を用紙と30秒間接触させたときの吸水量として測定した用紙のコブサイズ度は15g/m2〜50g/m2である。コブサイズ度が15g/m2を下回るとインクジェット記録した場合インク吸収性が不足し、連続印字した場合にインクが裏面に転写するといった問題が生ずる場合があるし、また、コブサイズ度が50g/m2を上回るとインクジェット記録でドットがにじんだり、必要以上に拡大したりして、画質が低下するため問題となる。
【0011】
前記記録用紙に使用する原紙は、セルロースパルプとして、再生パルプを50重量%以上含有するものであるか、又は化学パルプを90重量%以上含有するものであり、また、填料として軽質炭酸カルシウムを4重量%以上10重量%未満含有する原紙であり、そして前記複数のマーキングシステムに対応できる記録用紙は、JIS K 6911による表面電気抵抗率が1×109〜×1011Ωであることが複数のマーキングシステムに対応できる記録用紙として必要な条件である。
【0012】
本発明に使用する原料セルロ-スパルプとしては、各種のパルプが使用できるが、好適なパルプは化学パルプ、脱墨古紙パルプが挙げられる。化学パルプは針葉樹、広葉樹のリグノセルロ-ス成分をアルカリ性蒸解液によって蒸解して得られたパルプであり、未晒又は晒パルプの状態で、適宜叩解して使用される。また、脱墨古紙パルプとしては上質古紙や新聞古紙を離解、脱墨して得られるものが使用される。原紙は、そのセルロ-スパルプの内再生パルプであれば50重量%を下回る配合量の場合、また化学パルプの場合には90重量%より少ない配合量の場合には、何れの場合も、溶融熱転写方式における濃度均一性や細線の連続性、電子写真記録方式の濃度均一性の低下などといった印字適性が影響されやすい。これは再生パルプはバ-ジンパルプに比べてパルプ繊維長が短く、均一な紙表面が得られるためと考えられる。
【0013】
なお機械パルプの場合、その化学的本質は原料の木材とほとんど同じでそのバ-ジンパルプはヘミセルロ-スやリグニンなどのセルロ-ス以外のものが多量に含まれており、その繊維は長繊維や短繊維に比べファイン分(150メッシュスクリーンパス)が多いので透気性、吸油性に優れ、このためインクジェット方式でのインク吸収性に優れるが、パルプ自体の繊維のばらつきが大きいため再生パルプに比べ紙表面が不均一となり平滑性が劣る。特にインクジェット方式で印字した場合、機械パルプ繊維に沿ってインクが流れたり、ドットのにじみによりドット径がばらついて画質に影響しやすい。
【0014】
また、化学パルプは機械パルプに比べてパルプ自体の繊維のばらつきが小さいため、紙表面が均一となることは既知の事実であり、再生パルプ、又は化学パルプの使用は用紙の表面の均一性、クッション性を向上し結果として熱転写記録方式、電子写真記録方式の溶融インク、トナ-転写性の均一性に寄与すると考えられる。
【0015】
原紙に添加する填料は軽質炭酸カルシウムである。天然に産出する重質炭酸カルシウムは粉砕機により粉砕されるため形状が不定形となり、粒度分布も広くなり、均質で平滑な表面を得ることは難しい。前記軽質炭酸カルシウムを填料に使用することで、原紙の白色度を高め、平滑な表面を得ることが可能であり、複数のマ-キングに対して高画質な印字を可能とする。軽質炭酸カルシウムの粒径は0.1〜10μm程度で、その形状は紡錐型、立方型、針状型、柱状型、イガグリ状型、球形、平板状などがあり、また結晶系はカルサイト型、アラゴナイト型等の結晶系を有する軽質炭酸カルシウムが好ましい。
【0016】
軽質炭酸カルシウムの原紙中に含有される配合量が4重量%を下回ると、インクジェット記録でインク吸収性が不足し、印字後インク乾燥時間が長くなり、連続印字で、印字部が乱れるなどの障害となる。また、填料の配合量が10重量%を越えて含有されると、特に電子写真方式で連続印字/複写を行なった場合、用紙の紙粉中に含まれる填料により、感光体、クリ-ニングブレ-ド、ゴムロ-ル、定着ロ-ル等への付着量が増加し、摩耗、変質等の原因となり好ましくない。
【0017】
また、原紙に内添されるサイズ剤としてはアルケニルコハク酸ソ-ダ、アルキルケテンダイマ-、ロジン系サイズ剤などがあり、さらに紙力増強剤としてカチオン化澱粉、ポリアクリルアミドなどが使用される。原紙表面は表面サイズ処理されることが望ましく、表面サイズには酸化澱粉、ポリビニルアルコ-ル、変性澱粉、セルロ-ス系重合体などのバインダ-、アクリル系、スチレン系などの表面サイズ剤のほか、電子写真方式でのバックグラウンドの汚れ防止、給紙不良を防止するため、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ポリスチレンスルホン酸塩、アクリル系四級アンモニウム塩等の導電剤を添加することが好ましい。
【0018】
またサイズ処理後の原紙の表面電気抵抗率が1×109より下回ると、電子写真記録方式で、例えば80%RHなどという湿度の高い条件下で記録する場合にトナーの転写効率が低下し、結果として印字濃度が低下する。逆に表面電気抵抗率が1×1011Ωを上回ると例えば20%RHなどという湿度の低い条件下で記録する場合には、画像周辺にトナーが飛散したり白紙部のトナーによる汚れが生ずる。また、給紙時に用紙と給紙ロール間または用紙間で静電気が発生し易くなったり、コピ-後に用紙の静電気が除電されにくくなり排紙時に用紙間付着するなどのトラブルが発生する。以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。実施例で部は固形分重量部を意味する。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0019】
【実施例】
実施例1
国内広葉樹チップを原料としてクラフト蒸解を行って未晒パルプを製造し、塩素-苛性ソーダ-ハイポ-二酸化塩素からなる多段漂白設備で漂白パルプ(LBKP)を製造した。前記LBKP100重量部をフリーネス400ml(C.S.F)まで叩解し、アルケニル無水コハク酸(王子ナショナル製、ファイブラン81)0.5重量部、カチオン化澱粉(王子ナショナル製、CATO-F)0.2重量部、変性ポリアクリルアマイド(荒川化学工業製、ポリストロン)0.2重量部、填料として軽質炭酸カルシウム6重量%を添加して抄紙原料として多筒式長網抄紙機により、酸化澱粉(王子コーンスターチ製、エースA)99重量部と合成サイズ剤系表面サイズ剤(三洋化成工業製、サンサイザー)0.5重量部、アクリル系導電剤0.5(ダイセル化学工業社製、セビアン)からなる表面サイズ液で表面サイズし、マシンカレンダー処理して坪量64g/m2の用紙を製造した。この用紙のコブサイズ度は30g/m2で、平滑度はフェルト面で55秒、ワイヤー面が45秒、表面電気抵抗率は8×109Ωであった。
【0020】
実施例2
用紙をスーパーカレンダー処理して平滑度を400秒とした以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は30g/m2で、表面電気抵抗率は8×109Ωであった。
実施例3
表面サイズ液を酸化澱粉(王子コーンスターチ製、エースA)98重量部と合成サイズ剤系表面サイズ剤(三洋化成工業製、サンサイザー)2重量部、アクリル系導電剤0.5(ダイセル化学工業社製、セビアン)からなる表面サイズとしたほかは実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は15g/m2で、平滑度はフェルト面で55秒、ワイヤー面が45秒、表面電気抵抗率は8×109Ωであった。
【0021】
実施例4
抄紙原料としてセルロースパルプが50重量%の再生パルプ100重量部を用いた以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は50g/m2で、平滑度はフェルト面で45秒、ワイヤー面で35秒、表面電気抵抗率は8×109Ωであった。
参考例1
添加する軽質炭酸カルシウムを10重量%とした以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は50g/m2で、平滑度はフェルト面で55秒、ワイヤー面で45秒、表面電気抵抗率は8×109Ωであった。
【0022】
実施例5
表面サイズ液のアクリル系導電剤を0.3重量部(ダイセル化学工業社製、セビアン)とした以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は30g/m2で、平滑度はフェルト面で55秒、ワイヤー面で45秒、表面電気低効率は9×1010Ωであった。
実施例6
表面サイズ液のアクリル系導電剤を1重量部(ダイセル化学工業社製、セビアン)とし、添加する軽質炭酸カルシウムを4重量部とした以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は20g/m2で、平滑度はフェルト面で55秒、ワイヤー面で45秒、表面電気低効率は9×1010Ωであった。
【0023】
比較例1
用紙の平滑度を30秒とした以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は30g/m2で、表面電気抵抗率は8×109Ωであった。
比較例2
用紙をスーパーカレンダー処理して平滑度を500秒とした以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は30g/m2で、表面電気抵抗率は8×109Ωであった。
【0024】
比較例3
表面サイズ液を酸化澱粉(王子コーンスターチ製、エースA)97重量部と合成サイズ剤系表面サイズ剤(三洋化成工業製、サンサイザー)3重量部、アクリル系導電剤0.5(ダイセル化学工業社製、セビアン)とした以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は8g/m2で、平滑度はフェルト面で55秒、ワイヤー面が45秒、表面電気抵抗率は8×109Ωであった。
【0025】
比較例4
表面サイズ液を酸化澱粉(王子コーンスターチ製、エースA)99.8重量部と合成サイズ剤系表面サイズ剤(三洋化成工業製、サンサイザー)0.2重量部、アクリル系導電剤0.5重量部(ダイセル化学工業社製、セビアン)からなる表面サイズとした以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は70g/m2で、平滑度はフェルト面で55秒、ワイヤー面が45秒、表面電気抵抗率は8×109Ωであった。
【0026】
比較例5
抄紙原料をLBKP80重量%と木材をすり潰して得られるグランドパルプ(GP)20重量%の配合からなるパルプ100重量部とした以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は40g/m2で、平滑度はフェルト面で40秒、ワイヤー面が30秒、表面電気抵抗率は8×109Ωであった。
【0027】
比較例6
抄紙原料としてセルロースパルプが40重量%の再生パルプ100重量部を用いた以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は70g/m2で、平滑度はフェルト面で45秒、ワイヤー面が35秒、表面電気抵抗率は8×109Ωであった。
比較例7
填料として軽質炭酸カルシウム3重量%とした以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は12g/m2で、平滑度はフェルト面で55秒、ワイヤー面が45秒、表面電気抵抗率は8×109Ωであった。
【0028】
比較例8
填料として軽質炭酸カルシウム12重量%とした以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は60g/m2で、平滑度はフェルト面で55秒、ワイヤー面が45秒、表面電気抵抗率は8×109Ωであった。
比較例9
アクリル系導電剤を無添加とした以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は30g/m2で、平滑度はフェルト面で55秒、ワイヤー面が45秒、表面電気抵抗率は5×1012Ωであった。
【0029】
比較例10
アクリル系導電剤の添加料を3重量%とした以外は実施例1と同一の処理を行った。この用紙のコブサイズ度は30g/m2で、平滑度はフェルト面で55秒、ワイヤー面が45秒、表面電気抵抗率は2×107Ωであった。
実施例1〜6および比較例1〜10にあげた用紙について(1)富士ゼロックス社製Vivace670複写機で電子写真学会テストチャートを複写しモトルを中心とした画質、用紙500枚を複写し給紙/排紙性の評価、用紙1000枚を複写したときの感光体への付着紙粉量を観察した。(2)キヤノン社製インクジェットプリンターBJ-10Vで文字印字しフェザーリングの状態を観察、またインク吸収時間を測定した。(3)富士ゼロックス社製7026テレコピアで溶融熱転写記録印字しベタ部の白抜けを中心に画質を観察した。
【0030】
複写機、インクジェットプリンター、熱転写テレコピアの画質は良好なものを○、標準的なものを△、不十分なものを×とした。また、複写機の走行性は給/排紙不良枚数が5枚以下を○、6〜10枚を△、11枚以上を×とした。また、紙粉量が少ないものを○、標準的なものを△、多いものを×とした。インクジェットプリンターでのインク吸収性は9秒以下を○、10〜19秒を△、20秒以上を×とした。
【0031】
(4)表面電気抵抗値は(株)川口電機製作所製の常温測定箱(RC-02)及び超絶縁計(R-503)を使用し、印加電圧を100Vに設定し、JIS8111の方法により試験片を前処理し、各々前処理と同じ条件でJIS6911の表面抵抗率に準じた方法により測定した。(5)コブサイズ度はJISP8140に記載されるコブサイズ度法吸水試験に準拠して測定したが、浸漬時間は30秒で行なった。これらの各記録用紙の評価結果を表-1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1から明らかなように、本発明の記録用紙は電子写真方式、インクジェット方式、溶融熱転写方式のいずれで印字した場合でも印字品位が良好で、かつ用紙の搬送性、紙粉発生量が少なく複写機の耐久性を維持し、インク吸収性が良好であった。
【0034】
【発明の効果】
本発明の記録用紙は印字品位が良好で、かつ紙粉による複写機への影響がほとんど無く、用紙の搬送性、インク吸収性が良好であり従来の記録紙では不可能であった複数のマ-キングシステムに対応できる記録用紙を提供することができた。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-30 
出願番号 特願平6-236055
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B41M)
最終処分 取消  
前審関与審査官 赤木 啓二  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 前田 佳与子
秋月 美紀子
登録日 2003-06-06 
登録番号 特許第3436986号(P3436986)
権利者 王子製紙株式会社 富士ゼロックスオフィスサプライ株式会社
発明の名称 記録用紙  
代理人 金谷 宥  
代理人 金谷 宥  
代理人 金谷 宥  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ