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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1130843
異議申立番号 異議2003-71120  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-01-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-28 
確定日 2005-11-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3341221号「半導体ウエハの固定方法及びその装置」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3341221号の請求項1ないし7に係る特許を取り消す。 
理由 第1.手続きの経緯
特許第3341221号の請求項1ないし7に係る発明についての特許出願は、平成6年1月17日(優先権主張1993年1月15日、米国)に出願され、平成14年8月23日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1ないし7に係る発明の特許について、申立人 吉成迪夫より、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年10月7日に訂正請求がなされたものである。

第2.訂正の適否

(1)訂正の内容
上記訂正請求の内容は、以下の通りである。
○訂正事項a
設定登録時の願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件明細書」という。)の特許請求の範囲「【請求項4】静電吸引力によって半導体ウェハ(12)を引きつける2つの電極(22,24)を設けたウェハ支持体(14,16,18,20)に前記ウェハを固定する装置であって、a)前記電極(22,24)に励磁信号を供給するために、前記電極に接続された電源(44,254)と、b)前記2つの電極を励磁するために前記電源に接続され、ウエハがウエハ支持体上に配置されたとき前記ウエハを前記ウエハ支持体に引き付けるためコントローラ(250)と、c)前記2つの電極(22,24)間のキャパシタンスに関連した出力信号を供給するために前記2つの電極に電気的に接続されキャパシタ感知回路(114)とを有しており、前記コントローラ(250)は、前記キャパシタ感知回路(114)に連結する手段を含み、感知さたキャパシタンスに対応する前記出力信号を入力し、前記ウエハが前記ウエハ支持体上に配置されたかを判断するために監視することを特徴とする装置。」を
「【請求項4】静電吸引力によって半導体ウェハ(12)を引きつける2つの電極(22,24)を設けたウェハ支持体(14,16,18,20)に前記ウェハを固定する装置であって、a)前記電極(22,24)に励磁信号を供給するために、前記電極に接続された電源(44,254)と、b)前記2つの電極を励磁するために前記電源に接続され、ウエハがウエハ支持体上に配置されたとき前記ウエハを前記ウエハ支持体に引き付けるためのコントローラ(250)と、c)前記2つの電極(22,24)間のキャパシタンスに関連した出力信号(164)を供給するために前記2つの電極に電気的に接続されたキャパシタンス感知回路(114)とを有しており、
前記キャパシタンス感知回路(114)は、前記ウエハが前記ウエハ支持体上に載置されている時に、前記2つの電極(22,24)間のキャパシタンスを感知して前記キャパシタンスの変化を監視し、かつ前記ウエハが静電吸引力によって所定位置に保持されている時にも前記キャパシタンスの変化を監視しており、 前記コントローラ(250)は、前記キャパシタンス感知回路(114)に連結する手段を含み、感知されたキャパシタンスに対応する前記出力信号(164)が前記コントローラ(250)に入力され、この出力信号に基づいて、ウエハ支持体上のウエハの存在、及びウエハが確実に固定されているかを判断することを特徴とする装置。」と訂正する。
○訂正事項b
本件明細書の段落【0007】の
「c)前記2つの電極間のキャパシタンスに関連した出力信号を供給するために前記2つの電極に電気的に接続されたキャパシタ感知回路とを有しており、
前記コントローラは、前記キャパシタ感知回路に連結する手段を含み、感知されたキャパシタンスに対応する前記出力信号を入力し、前記ウエハが前記ウエハ支持体上に配置されたかを判断するために監視することを特徴としている。」を、
「c)前記2つの電極間のキャパシタンスに関連した出力信号を供給するために前記2つの電極に電気的に接続されたキャパシタンス感知回路とを有しており、
前記キャパシタンス感知回路は、前記ウエハが前記ウエハ支持体上に載置されている時に、前記2つの電極間のキャパシタンスを感知して前記キャパシタンスの変化を監視し、かつ前記ウエハが静電吸引力によって所定位置に保持されている時にも前記キャパシタンスの変化を監視しており、 前記コントローラは、前記キャパシタンス感知回路に連結する手段を含み、感知されたキャパシタンスに対応する前記出力信号が前記コントローラに入力され、この出力信号に基づいて、ウエハ支持体上のウエハの存在、及びウエハが確実に固定されているかを判断することを特徴としている。」と訂正する。
○訂正事項c
本件明細書の段落【0008】の
「したがって、ウェハ支持体に2つの電極を設けて、静電吸引力によってウェハをウェハ支持体に引き付けることができ、電源が2つの電極を励磁して、電極に結合されたキャパシタンス監視回路が、2つの電極間のキャパシタンスを監視する。」を、
「したがって、ウェハ支持体に2つの電極を設けて、静電吸引力によってウェハをウェハ支持体に引き付けることができ、電源が2つの電極を励磁して、電極に結合されたキャパシタンス感知回路が、2つの電極間のキャパシタンスを監視する。」と訂正する。
○訂正事項d
本件明細書の段落【0009】の
「ウェハがウェハ支持体内に載置されている場合、コントローラが励磁信号を電源から2つの電極に加えることによって、ウェハがウェハ支持体に引き付けられる。コントローラは、キャパシタンス監視回路からの出力に接続される入力線を備え、ウェハ支持体上にウェハが存在しているかを決定する。」 を、
「ウェハがウェハ支持体内に載置されている場合、コントローラが励磁信号を電源から2つの電極に加えることによって、ウェハがウェハ支持体に引き付けられる。コントローラは、キャパシタンス感知回路からの出力に接続される入力線を備え、ウェハ支持体上にウェハが存在しているかを決定する。」と補正する。
○訂正事項e
本件明細書の段落【0031】の
「アナログスイッチ152からの出力は、抵抗器/コンデンサ回路154によって積分されるため、演算増幅器162の非反転入力線160へ送られる入力は、回路114よって感知されたキャパシタンスに正比例した電圧レベルになる。この演算増幅器162は電圧フオロワとして機能するので、FVOUTの符号が付けられている出力164は、感知キャパシタンスに正比例した直流出力信号である。この直流出力信号は、注入機制御システム250(図7)によってそのシステムの性能を監視するために利用される。ウェハをチャック上に載置するためのウェハハンドラは、適当なウェハ不在状態の感知に応答して励起される。ウェハが感知されると、制御回路250からの出力が直流電源44を作動させて電極22,24を励磁するため、クランプとウェハとの間に静電吸引力が発生する。」を、
「アナログスイッチ152からの出力は、抵抗器/コンデンサ回路154によって積分されるため、演算増幅器162の非反転入力線160へ送られる入力は、回路114によって感知されたキャパシタンスに正比例した電圧レベルになる。この演算増幅器162は電圧フォロワとして機能するので、FVOUTの符号が付けられている出力164は、感知キャパシタンスに正比例した直流出力信号である。この直流出力信号は、注入機制御装置(コントローラ)250(図7)によってそのシステムの性能を監視するために利用される。ウェハをチャック上に載置するためのウェハハンドラは、適当なウェハ不在状態の感知に応答して励起される。ウェハが感知されると、制御装置250からの出力が直流電源44を作動させて電極22,24を励磁するため、クランプとウェハとの間に静電吸引力が発生する。」と訂正する。
○訂正事項f
本件明細書の段落【0032】の
「図6は、キャパシタンス監視回路114に適した電圧を発生するための電源回路200を示している。図6の左側の2つの入力線210,212は、発光ダイオード213を励起する12ボルト信号を与える。次に、12ボルト信号は集積回路電圧レギュレータ216,218へ送られて+8及び+5ボルトを発生する。直流/直流変換器220が土15ボルトの信号を発生する。これらの電圧は図4および図5の回路へ送られて、本発明のキャパシタンス監視を行うことができるようにする。」を、
「図6は、キャパシタンス感知回路114に適した電圧を発生するための電源回路200を示している。図6の左側の2つの入力線210,212は、発光ダイオード213を励起する12ボルト信号を与える。次に、12ボルト信号は集積回路電圧レギュレータ216,218へ送られて+8及び+5ボルトを発生する。直流/直流変換器220が±15ボルトの信号を発生する。これらの電圧は図4および図5の回路へ送られて、本発明のキャパシタンス監視を行うことができるようにする。」と訂正する。
○訂正事項g
本件明細書の段落【0039】の
「 【発明の効果】
本発明によれば、キャパシタンス感知回路が、ウェハ支持体内の2つの電極間のキャパシタンスを監視して、支持体上にウェハが存在するか否を感知できると共にウェハが静電吸引力によって支持体に固定されていることをチェックするので、ウェハの載置と固定を容易にかつ確実に確認できる。」を、
「 【発明の効果】
本発明によれば、キャパシタンス感知回路が、ウェハ支持体内の2つの電極間のキャパシタンスを監視して、第一に、支持体上にウェハが存在するか否を感知できると共に、第二に、にウェハが静電吸引力によって支持体に固定されていることをチェックするので、ウェハの載置と固定を容易にかつ確実に確認できる。」と訂正する。
○訂正事項h
本件明細書の図面の簡単な説明における【図1】の
「電源、静電クランプアセンブリ及びキャパシタンス測定回路の概略図である。」を、
「電源、静電クランプアセンブリ及びキャパシタンス感知回路の概略図である。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aについてみると、訂正個所「前記キャパシタンス感知回路(114)は、前記ウエハが前記ウエハ支持体上に載置されている時に、前記2つの電極(22,24)間のキャパシタンスを感知して前記キャパシタンスの変化を監視し、かつ前記ウエハが静電吸引力によって所定位置に保持されている時にも前記キャパシタンスの変化を監視しており、」は、キャパシタンス感知回路(114)の機能を減縮したものであり、また、他の訂正個所「前記出力信号(164)が前記コントローラ(250)に入力され、この出力信号(164)に基づいて、ウエハ支持体上のウエハの存在、及びウエハが確実に固定されているかを判断する」は、キャパシタンスに対応する出力信号の役割を明りょうにしたものであり、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記訂正事項aの残りの訂正箇所では「キャパシタ感知回路」を、上記訂正事項c、d、fでは「キャパシタンス監視回路」を、上記訂正事項hでは「キャパシタンス測定回路」を、それぞれ、「キャパシタンス感知回路」に訂正することにより、上記訂正事項eの訂正箇所「注入機制御装置(コントローラ)250」では、「制御システム」および「制御回路」を「制御装置」に訂正することにより、それぞれ記載を統一したものである。
上記訂正事項bは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図ったものである。
上記訂正事項gでは、2つのステップをより明確にするために、「キャパシタンス感知回路が、ウェハ支持体内の2つの電極間のキャパタンスを監視して、第一に、支持体上にウェハが存在するか否を感知できると共に、第二に、ウェハが静電吸引力によって支持体に固定されていることをチェックするので、ウェハの載置と固定を容易にかつ確実に確認できる。」と訂正し、「第一に」、「第二に」という語句を挿入することにより、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図ったものである。
これらの訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
上記訂正事項eの残りの訂正箇所「回路114によって」では、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そして、いずれの訂正事項も、願書に添付した明細書の記載の範囲内のものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
上記第2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし7に係る発明は上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである(以下、「本件発明1」ないし「本件発明7」という。)。
「 【請求項1】
イオン注入において、
半導体ウェハ(12)をウェハ支持体(14,16,18,20)に固定するための方法であって、
a)前記ウエハ支持体に取り付けられた2つの電極(22,24)間のキャパシタンスを測定することによって、前記ウェハ支持体(14,16,18,20)上に前記ウェハ(12)が存在することを感知する段階と、
b)前記2つの電極(22,24)間の測定されたキャパシタンスが、前記ウェハ(12)を前記ウエハ支持体(14,16,18,20)上に載置したことを示す値に達した時、前記ウェハと支持体の間に静電吸引力を発生させることによって前記ウェハを前記ウエハ支持体に固定する段階とを含み、
さらに、前記感知する段階は、前記2つの電極(22,24)間のキャパシタンスに関連した出力信号を供給し、かっこの出力信号が、前記ウエハ支持体上に前記ウエハが配置されたことを示す所定値に達したかどうかを判断するステップを含み、
前記静電吸引力が発生している時に前記2つの電極(22,24)間のキャパシタンスの変化を監視することによって、ウェハ(12)が静電吸引力によって前記ウエハ支持体に固定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
ウェハを固定する段階は、2つの電極(22,24)間に直流電圧(44)を印加することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
キャパシタンスの変化を監視する段階は、ウェハの適切な固定が感知されない場合、警告メッセージを発生して注入位置へのウェハ支持体の移動を保留するステップを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
静電吸引力によって半導体ウェハ(12)を引きつける2つの電極(22,24)を設けたウェハ支持体(14,16,18,20)に前記ウェハを固定する装置であって、
a)前記電極(22,24)に励磁信号を供給するために、前記電極に接続された電源(44,254)と、
b)前記2つの電極を励磁するために前記電源に接続され、ウエハがウエハ支持体上に配置されたとき前記ウエハを前記ウエハ支持体に引き付けるためのコントローラ(250)と、
c)前記2つの電極(22,24)間のキャパシタンスに関連した出力信号(164)を供給するために前記2つの電極に電気的に接続されたキャパシタンス感知回路(114)とを有しており、
前記キャパシタンス感知回路(114)は、前記ウエハが前記ウエハ支持体上に載置されている時に、前記2つの電極(22,24)間のキャパシタンスを感知して前記キャパシタンスの変化を監視し、かつ前記ウエハが静電吸引力によって所定位置に保持されている時にも前記キャパシタンスの変化を監視しており、
前記コントローラ(250)は、前記キャパシタンス感知回路(114)に連結する手段を含み、感知されたキャパシタンスに対応する前記出力信号(164)が前記コントローラ(250)に入力され、この出力信号に基づいて、ウエハ支持体上のウエハの存在、及びウエハが確実に固定されているかを判断することを特徴とする装置。
【請求項5】
さらに、コントローラ(250)に結合されて、ウェハ支持体の取り付け向きの変更及び前記ウエハのイオン注入位置への移動を行うロボット手段(254)を有しており、
前記コントローラは、コントローラが感知キャパシタンスに基づいてウェハとウェハ支持体の間に不十分な静電吸引力を感知した場合、ロボット手段を消勢する手段を備えることを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
キャパシタンス感知回路(114)は、前記2つの電極間のキャパシタンスが変化するのに応じて変化する発振出力を与えるために、前記2つの電極のいずれか一方に接続される第1、第2入力を有するオシレータ回路(120)と、前記発振出力を、この発振出力の周波数に基づく前記出力信号に変換するための出力回路とを備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の装置。
【請求項7】
キャパシタンス感知回路(114)の前記出力回路は、オシレータ回路に結合されて前記周波数信号の発振出力を電圧レベルに変換する積分回路(154)を有していることを特徴とする請求項6記載の装置。」

(2)引用刊行物に記載された発明
当審が平成16年4月15日付けで通知した取消理由で引用し、本件出願優先権主張の日前に国内で頒布された刊行物3及び刊行物1,2,4,5には、それぞれ、図面とともに以下のように記載されている。

(2-1)刊行物3:特開昭62-174939号公報
「導電性の物体を載置する面を有する絶縁体と、
該絶縁体を介在させて上記物体に面する一対または2以上の対からなる電極と、
上記電極に電圧を印加する電源と、
上記対をなす電極間の電気容量の変化を検出する電気容量検出部と、
該電気容量検出部の検出出力に基づき上記載置面上の導電性物体の有無を判定する判別部と
を具備することを特徴とする静電吸着装置。」(特許請求の範囲)
「近年、集積回路素子の高集積化、高性能化と共に集積回路素子製造プロセスのドライ化、つまり真空中での処理工程が重要な役割をはたすようになった。真空中での試料の保持、搬送は、大気との圧力差を利用する真空吸着ができないため、従来機械的な保持にたよらざるを得なかった。しかしながら、機械的な保持では試料全体をホルダに一様に保持することができず、また試料に損傷を与えるおそれがあるという欠点があり、最近真空中でも動作可能な静電力による吸着が注目されてきた。」(公報第1頁左下欄第20行〜右下欄第10行)
「第1図は、本発明の一実施例に係る静電吸着装置の構成を示す。同図において、1は試料、例えばウェハ、2a,2bは静電吸着用電極、3は絶縁体、4a,4bはスイッチ、5は吸着電圧印加用直流電源および制御部、6は電気容量検出部、7は判別部である。
上記構成において、試料を静電吸着する際はスイッチ4a,4bを吸着電圧印加用直流電源および制御部5側に切換え、所定の電圧を電極2a,2bに印加する。これにより試料1と電極2a,2bに静電的な引力が発生し、試料1は吸着保持される。一方、試料1の有無を検知するにはスイッチ4a,4bを電気容量検出部6側に切換える。試料1がある場合は、試料1がない場合に比べ電気容量検出部6からみた容量が増加する。例えば電極2a,2bの面積をA、電極2a,2bから試料1までの距離をd、絶縁体3の誘電率をεとし、試料1が電気導体であるとすると、増加する電気容量は1/2・εA/dとなる。この電気容量の変化を電気容量検出部6で検出し、判別部7で試料の有無を判定する。電気容量変化の検出には、例えば電気(静電)容量の変化によって発振が開始したり停止したりする発振回路、またはこの容量変化に応じて周波数の変化する発振回路を利用することができる。」(公報第2頁左上欄第12行〜右上欄第16行)
以上の記載から、刊行物3には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「集積回路素子製造プロセスにおいて、
試料、例えばウェハを、導電性の物体を載置する面を有する絶縁体に固定するための静電吸着装置であって、
吸着電圧印加用直流電源、制御部、電気容量検出部および判別部を備え、
スイッチの切換えにより、
試料を静電吸着する際は、所定の直流電圧を電極に印加し、
前記絶縁体に取り付けられた一対または2以上の対からなる電極間の電気容量を測定することによって、載置面上の導電性物体の有無を判定する判別部を有する静電吸着装置。」

(2-2)刊行物1:特開平4-216650号公報
「【産業上の利用分野】本発明は、半導体製造装置もしくは検査装置においてウエハの保持状態を確認する方法およびこの方法を用いた半導体製造装置もしくは検査装置に関するものである。」【0001】
「 【実施例】
以下に本発明の実施例を静電・真空チャックを内蔵したパレットを例に詳述する。図3は静電チャック用電極が2分割されている双極型静電真空チャックの構成図である。図3において1はウエハ、2はパレット、3は静電チャック用電極、4は静電容量計、5は真空チャック、11は比較器である。」【0015】
「 ウエハ1を真空チャック5でパレット2に吸着した状態で2枚の静電チャック用電極3間の静電容量C2を静電容量計4で測定する。」【0017】
「 実際には浮遊容量等の影響があるので、平坦度が良かったときのC2の値を記録しておきこの値を基準にして許容できるC2の範囲を実験から決定する必要がある。しかし、このC2の許容範囲が決まれば吸着状態の可否判断は機械的に容易に行うことができる。図3では比較器11がこれを行っている。」【0018】
「 本実施例では静電チャック用電極間の静電容量を測定する時に静電チャックを働かせていないが、図4に示すように静電容量計に静電チャック用高電圧が掛かるのを防ぐためキャパシタを接続し、かつ静電チャック用高圧電源を交流的に切り離すために高圧電源と直列にインダクタを挿入すれば静電チャックを働かせた状態で静電容量を測定することもできる。」【0021】
以上の記載から、刊行物1には以下の発明が記載されていると認めることができる。
「静電容量計に静電チャック用高電圧が掛かるのを防ぐためキャパシタを接続し、双極型静電真空チャックの静電チャックを働かせた状態で静電チャック用電極間の静電容量を測定し、ウエハの吸着状態の可否判断をするウエハ保持状態確認装置。」

(2-3)刊行物2:特開昭63-169244号公報
「1.導電体または半導体の試料を静電引力によって吸着する静電チャック部と、上記静電引力を発生させるため静電チャック部の電極板間に電圧を印加する電源回路と、上記電極板間の静電容量に応じた周波数で発振する発振回路と、該発振周波数を検出する周波数検出回路とを具備することを特徴とする試料保持装置。」(特許請求の範囲)
「[産業上の利用分野]
本発明は、導電体または半導体の試料を静電引力によって保持固定するとともにその保持固定の状態を検出し得るようにした試料保持装置に関する。」(公報第1頁左下欄第16〜20行)
「第1図は本発明の一実施例に係る静電チャック本体の説明図である。同図において、1は導体あるいは半導体などの試料、2,5は絶縁層(アルミナセラミックスなど)、3,4は極性の異なる電極板である。」(公報第2頁左下欄第6〜10行)
「このことを第1図の装置に対して利用した例を第4図に示す。同図において、12は第1図の静電チャック自身を等価的に表わすコンデンサ、13は供給電源、14,15はコンデンサ、16はコイル、17はリアクタンス発振回路である。
この構成において、コンデンサ14,15は電源13で発生した直流高電圧を除去するが、交流的には無視できるので、コンデンサ12,14,15およびコイル16からなる回路は第3図に示すLC発振回路と等価である。したがって、リアクタンス発振回路17を加えることにより、静電チャック(コンデンサ12)の有する容量に対応した共振周波数fが検出でき、したがって、(2),(3)式より、コンデンサ12の静電容量Cおよび試料1と静電チャック面との平均距離dが得られる。
このような構成にすると、上記平均距離の検出値をd1、試料が確実に保持されているときの検出値をd2とすれば、d1とd2の値を比較することにより、検出時の試料の吸着状態の良否を判断することができる。また、熱その他の影響で、試料がプロセス中に反り、許容できる平均距離の値d3を超えた場合には、露光を中止し、その試料を除去し次の試料に変えることができる。」(公報第2頁右下欄第17行〜公報第3頁右上欄第1行)
「本発明によれば、真空中でも静電容量計等から静電チャックに対する試料の吸着状態を確認できるため、不保持状態や極端に悪い平面度で固定された状態あるいはレジストがチャック面へ回り込んだり若しくはごみ等をかみ込んだままでの微細加工や検査が行なわれなくなり、加工、検査等の能率化に役立つ。」(公報第3頁左下欄第2〜8行)
以上の記載から、刊行物2には以下の発明が記載されていると認めることができる。
「静電チャックを表すコンデンサ12、コンデンサ14,15、コイル16、リアクタンス発振回路17からなる直列共振回路の、静電チャックの有する容量Cに対応した共振周波数fを検出し、これにより、静電容量Cおよび試料1と静電チャック面との平均距離dが得られ、コンデンサ14,15が、電源13で発生した直流高電圧を除去するので、プロセス中でも試料の吸着状態の良否を判断することができる試料保持装置。」

(2-4)刊行物4:実願昭62-114329号(実開平 1- 19186号)のマイクロフィルム
「半導体の製造装置において、シリコンウェハー等の試料を保持する場合には静電吸着法が採用される場合が少なくない。この静電吸着法は、試料と試料ホルダとの間に絶縁体を介設して直流電圧を印加するようにしたもので、絶縁体に生起する分極電荷を利用して試料を試料ホルダに吸着保持させるようにしている。
ところで、このようにして保持された試料は、各種製造工程を通過する間に、試料ホルダの回転等によりその姿勢を縦横に変更される場合が少なくない。」(マイクロフィルム第1頁第19行〜第2頁第9行)
「判定手段11は、予め入力された設定値と、前記検出手段による検出結果とを比較して、その差が基準値以上であれば吸着が異常である旨の信号を出力するようにしている。この出力は、ここでは、ブザー等の報知手段12に入力するようにしており、警報によって従業者等に異常を了知させるようにしているが、その出力を増幅して装置を直接停止させる等、他の方法も考えることができる。」(明細書第7頁第6〜14行)
以上の記載から、刊行物4には以下の発明が記載されていると認めることができる。
「半導体の製造装置において、シリコンウェハー等の試料を保持する静電吸着法であって、吸着が異常である場合、警報によって従業者等に異常を了知させるか、あるいは、異常である旨の信号により装置を直接停止させる静電吸着法。」

(2-5)刊行物5:特開昭60-110133号公報
「本発明は静電チャックにおける異状確認装置に関する。」(公報第1頁右下欄第2〜3行)
「第2図は、本発明にかかる静電チャックにおける異状確認装置の回路ブロック図である。図中5は直流の高圧電源であり、その-(マイナス)側は接地され、その+(プラス)側は、保護用抵抗(高抵抗値:例えば2MΩ)6、スイッチ7および検出トランス8(1次側)からなる直列回路を介して基盤1に接続されている。
基盤1上に載置された試料2上面上には、電極3が固定され、そしてこの電極3は接地されている。従って、電極3と試料2とが導通していると、スイッチ7をONすることによって、高圧電源5からの直流高電圧は、試料2、基盤1間に印加され、試料2、基盤1間に静電力が発生して、この静電力によって試料2は基盤1に吸着される。
基盤1上に試料2が載置されることによって、両者間には、所定の静電容量を持つコンデンサが形成される。
9は交流発生器(周波数は例えば、500KHz〜1MHz)であり、この交流発生器9からの出力信号は、スイッチ10を介して、スイッチ7と検出トランス8との間において、高圧電源5、保護用抵抗6、スイッチ7、検出トランス8、基盤1、試料2および電極3を直列接続した閉回路中に加えられる。
従って、試料2と電極3とが導通していると、スイッチ10をONすることによって第3図に等価回路図で示すように、交流発生器9、スイッチ10、検出トランス8(1次側)、基盤1、基盤1と試料2とによって形成されたコンデンサC、試料2の等価抵抗Rおよび電極3からなる閉回路が形成され、この閉回路に交流発生器9からの交流信号が流れる。一方、試料2と電極3との導通が不十分または全く無いと、第3図中、試料2の等価抵抗Rの値が非常に高くまたは無限大になった状態とみなすことができる。従って、このような状態においては、前記閉回路(第3図)には、ほとんどまたは全く交流発生器9からの交流信号が流れない。
検出トランス8の2次側には、1次側における交流信号の電圧に対応した電圧の交流信号が得られ、これがバッファ増巾器11に入力される。12はバッファ増巾器11からの出力信号(交流)を検波積分して直流に変換する検波積分器、13は検波積分器12からの出力信号と、あらかじめ定めた基準設定値とを比較して、検波積分器12からの出力信号の値が基準設定値を越えたときに信号を出力する比較器である。この基準設定値はあらかじめ電極3が導通した状態の検定用の試料を基盤1上に載置したときに得られた、検波積分器12からの出力信号レベルよりも所定値だけ低い値に定められている。14は比較器13からの出力信号を所定時間保持すると共にその保持時間中、導通確認信号として信号を適当な表示記録手段等に出力するラッチ器である。」(公報第2頁左下欄第5行〜第3頁左上欄第18行)
以上の記載から、刊行物5には以下の発明が記載されていると認めることができる。
「静電チャックにおける異常確認装置であって、電極に接続された検出トランスからの交流信号を検波積分して直流に変換する検波積分器と、その検波積分器からの出力信号と、あらかじめ定めた基準設定値とを比較して、検波積分器からの出力信号の値が基準設定値を超えたときに信号を出力する比較器を備える異常確認装置。」

(3)対比・判断
(3-1)本件発明1について
本件発明1と引用発明を対比すると、前者が「方法」のカテゴリーに属し、後者が「物」のカテゴリーに属するものではあるが、このカテゴリーの違いは、発明の本質的な違いとは認められない。また、前者の「イオン注入」は、後者の「集積回路素子製造プロセス」の内のひとつの工程にすぎないものであり、同じく、前者の「半導体ウェハ」は、後者の「試料、例えばウェハ」に相当し、前者の「ウェハ支持体」は、後者の「導電性の物体を載置する面を有する絶縁体」に相当し、前者の「固定するための方法」は、後者の「静電吸着装置」を単に使用する方法にすぎず、前者の「2つの電極」は、後者の「一対または2以上の対からなる電極」に相当し、前者の「電極間のキャパシタンス」は、後者の「対をなす電極間の電気容量」と同じであり、前者の「存在することを感知する段階」は、後者の「判別部」が行っている「電気容量検出部の検出出力に基づき上記載置面上の導電性物体の有無を判定する」点と同じであり、また、前者の「さらに、前記感知する段階は、前記2つの電極(22,24)間のキャパシタンスに関連した出力信号を供給し、かつこの出力信号が、前記ウエハ支持体上に前記ウエハが配置されたことを示す所定値に達したかどうかを判断するステップを含む」点のうち、前段の「出力信号を供給」は、後者の「電気容量検出部」も同様にしていることであり、後段の「所定値に達したかどうかを判断するステップ」は、後者の「試料の有無を判定する判別部7」においても同様の判断をしているものとみなすことができる。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点1>
イオン注入において、
半導体ウェハをウェハ支持体に固定するための方法であって、
a)前記ウエハ支持体に取り付けられた2つの電極間のキャパシタンスを測定することによって、前記ウェハ支持体上に前記ウェハが存在することを感知する段階と、
さらに、前記感知する段階は、前記2つの電極間のキャパシタンスに関連した出力信号を供給し、かつこの出力信号が、前記ウエハ支持体上に前記ウエハが配置されたことを示す所定値に達したかどうかを判断するステップを含む点。
<相違点1>
前者は、「前記静電吸引力が発生している時に前記2つの電極間のキャパシタンスの変化を監視することによって、ウェハが静電吸引力によって前記ウエハ支持体に固定される」のに対し、後者ではそのように構成されていない点。
<相違点2>
前者は、「前記2つの電極間の測定されたキャパシタンスが、前記ウェハを前記ウエハ支持体上に載置したことを示す値に達した時、前記ウェハと支持体の間に静電吸引力を発生させることによって前記ウェハを前記ウエハ支持体に固定する」のに対し、後者では、「静電吸着」と「置面上の導電性物体の有無の判定」については記載されているものの、それらの時間的順序関係が明らかでない点。
(3-1-1)上記相違点1,2についての検討
<相違点1>について
刊行物1に記載の静電チャックは、上記のとおり、「静電チャックを働かせた状態で静電チャック用電極間の静電容量を測定」するものであり、これは、とりもなおさず、「静電吸引力が発生している時に前記2つの電極間のキャパシタンスの変化を監視すること」にほかならず、そして、その測定の間、静電チャック用高電圧がかかっているのであるから、「ウェハが静電吸引力によって前記ウエハ支持体に固定」されていることも明らかである。
してみれば、相違点1に係る構成は刊行物1に記載の事項であり、また、両者はともに静電チャックに関するものであるから、組み合わせるにあたっての阻害要因も見いだせない。
また、上記相違点1に基づく作用効果にも、格別なものは見いだせない。
したがって、相違点1に係る構成の違いは、引用発明に刊行物1に記載の発明を組み合わせることにより、当業者が容易に想到し得たものである。
なお、刊行物2にも、上記(2)ウ.のとおり、相違点1に係る構成は示されている。
<相違点2>について
引用発明においては、「静電吸着」と「載置面上の導電性物体の有無の判定」は、スイッチにより切換えられているが、吸着と判定の時間的順序関係については明らかでない。
しかしながら、有無を判定してから静電吸着させることは当業者であれば当然行う事項であり、相違点に係る構成の違いは、設計的事項の限定により、当業者が容易に想到し得たものである。
また、上記相違点2に基づく作用効果にも、格別なものは見いだせない。
(3-1-2)まとめ
以上のとおり、本件発明1は、引用発明及び刊行物1に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-2)本件発明2について
本件発明2と引用発明とを対比すると、本件発明2の特徴点である、「ウェハを固定する段階は、2つの電極(22,24)間に直流電圧(44)を印加する」点は、引用発明も同様であり、本件発明2に新たな相違点はない。
したがって、本件発明2は、本件発明1と同様に、引用発明及び刊行物1に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-3)本件発明3について
本件発明3と引用発明とを対比すると、両者は、上記一致点1で一致し、上記相違点1,2及び下記の点で相違する。
<相違点3>
前者は、「キャパシタンスの変化を監視する段階は、ウェハの適切な固定が感知されない場合、警告メッセージを発生して注入位置へのウェハ支持体の移動を保留するステップを備えている」が、後者ではそのように構成されていない点。
(3-3-1)上記相違点3についての検討
刊行物4に記載の発明では、静電吸着法を用いた半導体の製造装置において、吸着が異常である場合、警報によって従業者等に異常を了知させるか、あるいは、異常である旨の信号により装置を直接停止させることが記載されており、「警報」と「装置の停止」、両方を行う点までは記載されてはいないが、これらの両方をともに行うことは、当業者にとって適宜実施可能な事項であり、異常時の動作としては通常行われることである。
また、「注入位置へのウェハ支持体の移動を保留する」ことは、半導体の製造装置の停止の一形態にすぎず、半導体製造装置をイオン注入装置に限定すれば、係る移動の保留は、装置の停止として自明な事項の限定にすぎない。
してみれば、相違点3に係る構成は刊行物4に記載の事項であり、また、両者はともに静電チャックに関するものであるから、組み合わせるにあたっての阻害要因も見いだせない。
また、上記相違点3に基づく作用効果にも、格別なものは見いだせない。
したがって、相違点3に係る構成の違いは、引用発明に刊行物1,4に記載の発明を組み合わせることにより、当業者が容易に想到し得たものである。
(3-3-2)まとめ
以上のとおり、本件発明3は、引用発明及び刊行物1,4に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-4)本件発明4について
本件発明4と引用発明を対比すると、両者は共に「物」のカテゴリーに属するものであり、前者の「静電吸引力によって半導体ウェハを固定する装置」は、後者の「ウェハを固定するための静電吸着装置」に相当し、同じく、前者の「前記電極に接続された電源」は、後者の「吸着電圧印加用直流電源」に、前者の「キャパシタンス感知回路」は、後者の「電気容量検出部」に、それぞれ相当することは明らかである。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点2>
静電吸引力によって半導体ウェハを引きつける2つの電極を設けたウェハ支持体に前記ウェハを固定する装置であって、
a)前記電極に励磁信号を供給するために、前記電極に接続された電源と、
b)前記2つの電極を励磁するために前記電源に接続され、ウエハがウエハ支持体上に配置されたとき前記ウエハを前記ウエハ支持体に引き付けるためのコントローラと、
c)前記2つの電極間のキャパシタンスに関連した出力信号を供給するために前記2つの電極に電気的に接続されたキャパシタンス感知回路とを有しており、
前記キャパシタンス感知回路は、前記ウエハが前記ウエハ支持体上に載置されている時に、前記2つの電極間のキャパシタンスを感知して前記キャパシタンスの変化を監視する点。
<相違点4>
前者のキャパシタンス感知回路が「前記ウエハが静電吸引力によって所定位置に保持されている時にも前記キャパシタンスの変化を監視する」のに対して、後者ではそのように構成されていない点。
<相違点5>
前者が、「コントローラは、前記キャパシタンス感知回路に連結する手段を含み、感知されたキャパシタンスに対応する前記出力信号が前記コントローラに入力され、この出力信号に基づいて、ウエハ支持体上のウエハの存在、及びウエハが確実に固定されているかを判断する」のに対して、後者ではそのように構成されていない点。
(3-4-1)上記相違点4,5についての検討
<相違点4>について
刊行物1に記載の発明における静電チャックは、「静電チャックを働かせた状態で静電チャック用電極間の静電容量を測定」するものであり、これは、同様に、「キャパシタンス感知回路が前記ウエハが静電吸引力によって所定位置に保持されている時にも前記キャパシタンスの変化を監視する」ことにほかならない。
してみれば、相違点4に係る構成は刊行物1に記載の事項であり、また、両者はともに静電チャックに関するものであるから、組み合わせるにあたっての阻害要因も見いだせない。
また、上記相違点4に基づく作用効果にも、格別なものは見いだせない。
したがって、相違点4に係る構成の違いは、引用発明に刊行物1に記載の発明を組み合わせることにより、当業者が容易に想到し得たものである。
<相違点5>について
引用発明における静電吸着装置は、上記のとおり、「電気容量を測定することによって、載置面上の導電性物体の有無を判定する判別部」を有するものであり、この判定の後、何らかの制御するのは慣用事項、あるいは、この判定に基づく何らかの制御をする制御部を備えるのは慣用事項である。
してみれば、コントローラがこの判断をした点は、慣用事項にすぎない。
また、上記相違点5に基づく作用効果にも、格別なものは見いだせない。
したがって、相違点5に係る構成の違いは、引用発明に慣用事項を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものである。
(3-4-2)まとめ
以上のとおり、本件発明4は、引用発明及び刊行物1に記載の発明及び慣用事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-5)本件発明5について
本件発明5と引用発明とを対比すると、両者は、上記一致点2で一致し、上記相違点4,5及び下記の点で相違する。
<相違点6>
前者が、「コントローラ(250)に結合されて、ウェハ支持体の取り付け向きの変更及び前記ウエハのイオン注入位置への移動を行うロボット手段(254)を有」するのに対して、後者ではそのように構成されていない点。
<相違点7>
前者が、「前記コントローラは、コントローラが感知キャパシタンスに基づいてウェハとウェハ支持体の間に不十分な静電吸引力を感知した場合、ロボット手段を消勢する手段を備える」のに対して、後者ではそのように構成されていない点。
(3-5-1)上記相違点6,7についての検討
<相違点6>について
刊行物4には上記のとおり、「保持された試料は、各種製造工程を通過する間に、試料ホルダの回転等によりその姿勢を縦横に変更される」と記載されており、これらの「通過」「姿勢の変更」にロボット手段を使うのは慣用事項にすぎない。
また、上記相違点6に基づく作用効果にも、格別なものは見いだせない。
してみれば、相違点6に係る構成の違いは、引用例発明に慣用事項を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものである。
<相違点7>について
刊行物4に記載の発明おいては、静電吸着法を用いた半導体の製造装置において、吸着が異常である場合、異常である旨の信号により装置を直接停止させることが記載されており、ロボット手段を消勢することは、製造装置停止の一態様にすぎない。
してみれば、相違点7に係る構成は刊行物4に記載の事項であり、また、両者はともに静電チャックに関するものであるから、組み合わせるにあたっての阻害要因も見いだせない。
また、上記相違点7に基づく作用効果にも、格別なものは見いだせない。
したがって、相違点7に係る構成の違いは、引用発明に刊行物4に記載の発明を組み合わせることにより、当業者が容易に想到し得たものである。
(3-5-2)まとめ
以上のとおり、本件発明5は、引用発明及び刊行物1,4に記載の発明及び慣用事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-6)本件発明6について
本件発明6と引用発明とを対比すると、両者は、上記一致点2で一致し、上記相違点4〜7及び下記の点で相違する。
<相違点8>
前者が、「キャパシタンス感知回路は、前記2つの電極間のキャパシタンスが変化するのに応じて変化する発振出力を与えるために、前記2つの電極のいずれか一方に接続される第1、第2入力を有するオシレータ回路と、前記発振出力を、この発振出力の周波数に基づく前記出力信号に変換するための出力回路とを備える」のに対して、後者ではそのように構成されていない点。
(3-6-1)上記相違点8についての検討
刊行物2には、静電チャックの有する容量Cに対応した共振周波数fを検出する点と、これにより、試料1と静電チャック面との平均距離dを得て、吸着状態の良否を判断する点が記載され、これは、2つの電極間のキャパシタンスが変化するのに応じて変化する発振出力を得る点、及び、発振出力の周波数に基づく前記出力信号に変換する点に相当する。
してみれば、相違点8に係る構成は刊行物2に記載の事項であり、また、両者はともに静電チャックに関するものであるから、組み合わせるにあたっての阻害要因も見いだせない。
また、上記相違点8に基づく作用効果にも、格別なものは見いだせない。
したがって、相違点8に係る構成の違いは、引用発明に刊行物2に記載の発明を組み合わせることにより、当業者が容易に想到し得たものである。
(3-6-2)まとめ
以上のとおり、本件発明6は、引用発明及び刊行物1,2,4に記載の発明及び慣用事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-7)本件発明7について
本件発明7と引用発明3とを対比すると、両者は、上記一致点2で一致し、上記相違点4〜8及び下記の点で相違する。
<相違点9>
前者が、「キャパシタンス感知回路(114)の前記出力回路は、オシレータ回路に結合されて前記周波数信号の発振出力を電圧レベルに変換する積分回路(154)を有している」のに対して、後者ではそのように構成されていない点。
(3-7-1)上記相違点9についての検討
刊行物5には、電極に接続された検出トランスからの交流信号を検波積分して直流に変換する検波積分器が記載されている。そして、その出力信号は基準設定値とを比較されて異常確認信号となる。これは、相違点9に係る積分回路と同様の動作である。
してみれば、相違点9に係る構成は刊行物5に記載の事項であり、また、両者はともに静電チャックに関するものであるから、組み合わせるにあたっての阻害要因も見いだせない。
また、上記相違点9に基づく作用効果にも、格別なものは見いだせない。
したがって、相違点9に係る構成の違いは、引用発明に刊行物5に記載の発明を組み合わせることにより、当業者が容易に想到し得たものである。
(3-7-2)まとめ
以上のとおり、本件発明7は、引用発明及び刊行物1,2,4,5に記載の発明及び慣用事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1ないし7についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体ウエハの固定方法及びその装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入において、半導体ウェハ(12)をウェハ支持体(14,16,18,20)に固定するための方法であって、
a)前記ウエハ支持体に取り付けられた2つの電極(22,24)間のキャパシタンスを測定することによって、前記ウェハ支持体(14,16,18,20)上に前記ウェハ(12)が存在することを感知する段階と、
b)前記2つの電極(22,24)間の測定されたキャパシタンスが、前記ウェハ(12)を前記ウエハ支持体(14,16,18,20)上に載置したことを示す値に達した時、前記ウェハと支持体の間に静電吸引力を発生させることによって前記ウェハを前記ウエハ支持体に固定する段階とを含み、
さらに、前記感知する段階は、前記2つの電極(22,24)間のキャパシタンスに関連した出力信号を供給し、かつこの出力信号が、前記ウエハ支持体上に前記ウエハが配置されたことを示す所定値に達したかどうかを判断するステップを含み、
前記静電吸引力が発生している時に前記2つの電極(22,24)間のキャパシタンスの変化を監視することによって、ウェハ(12)が静電吸引力によって前記ウエハ支持体に固定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
ウェハを固定する段階は、2つの電極(22,24)間に直流電圧(44)を印加することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
キャパシタンスの変化を監視する段階は、ウェハの適切な固定が感知されない場合、警告メッセージを発生して注入位置へのウェハ支持体の移動を保留するステップを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
静電吸引力によって半導体ウェハ(12)を引きつける2つの電極(22,24)を設けたウェハ支持体(14,16,18,20)に前記ウェハを固定する装置であって、
a)前記電極(22,24)に励磁信号を供給するために、前記電極に接続された電源(44,254)と、
b)前記2つの電極を励磁するために前記電源に接続され、ウエハがウエハ支持体上に配置されたとき前記ウエハを前記ウエハ支持体に引き付けるためのコントローラ(250)と、
c)前記2つの電極(22,24)間のキャパシタンスに関連した出力信号(164)を供給するために前記2つの電極に電気的に接続されたキャパシタンス感知回路(114)とを有しており、
前記キャパシタンス感知回路(114)は、前記ウエハが前記ウエハ支持体上に載置されている時に、前記2つの電極(22,24)間のキャパシタンスを感知して前記キャパシタンスの変化を監視し、かつ前記ウエハが静電吸引力によって所定位置に保持されている時にも前記キャパシタンスの変化を監視しており、
前記コントローラ(250)は、前記キャパシタンス感知回路(114)に連結する手段を含み、感知されたキャパシタンスに対応する前記出力信号(164)が前記コントローラ(250)に入力され、この出力信号に基づいて、ウエハ支持体上のウエハの存在、及びウエハが確実に固定されているかを判断することを特徴とする装置。
【請求項5】
さらに、コントローラ(250)に結合されて、ウェハ支持体の取り付け向きの変更及び前記ウエハのイオン注入位置への移動を行うロボット手段(254)を有しており、前記コントローラは、コントローラが感知キャパシタンスに基づいてウェハとウェハ支持体の間に不十分な静電吸引力を感知した場合、ロボット手段を消勢する手段を備えることを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
キャパシタンス感知回路(114)は、前記2つの電極間のキャパシタンスが変化するのに応じて変化する発振出力を与えるために、前記2つの電極のいずれか一方に接続される第1、第2入力を有するオシレータ回路(120)と、前記発振出力を、この発振出力の周波数に基づく前記出力信号に変換するための出力回路とを備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の装置。
【請求項7】
キャパシタンス感知回路(114)の前記出力回路は、オシレータ回路に結合されて前記周波数信号の発振出力を電圧レベルに変換する積分回路(154)を有していることを特徴とする請求項6記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体ウェハをウェハ支持体に当接した状態に保持するための方法及び装置、特にそのような装置の作動を監視する方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
「交流電界励磁を利用した静電チャック」と題する米国特許第5,103,367号明細書には、半導体ウェハの処理中にウェハを支持体に接触した状態で保持するための機構が記載されている。この特許は3つの電極を開示しており、そのうちの2つはほぼ平坦な表面を備えて、薄い絶縁フィルム内に埋め込まれている。
【0003】
これらの2つの電極は、低周波交流電源によって励磁されて、制御された振幅及び位相の正弦波磁界を発生する。第3電極は、他の2つの電極に対する基準点を与える。電圧の印加及び除去の割合を制御することによって、低電圧勾配がウェハ支持体に得られる。これによって、絶縁媒体とウェハとの間に保持力がなくなる。
【0004】
チャックの低交流振幅による励磁によって、ウェハ及び絶縁フィルムの相対位置関係を感知する容量性の電流を流すことができ、電極への電圧印加の簡単な制御が可能になる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来の装置では、電極を3つ必要とし、他の1つの電極の操作で2つの電極に与える電圧の印加及び除去の割合を正確に制御することは難しく、切換えの時点を監視することもできなかった。
【0006】
このような事情にかんがみて、本発明は、2つの電極間のキャパシタンスの測定により支持体上にウエハが存在することを容易に感知し、このキャパシタンスの変化を監視すると共に、ウェハが静電吸引力によって支持体に固定されるようにした半導体ウエハの固定方法及びその装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、イオン注入において、半導体ウェハをウェハ支持体に固定するための方法であって、
a)前記ウエハ支持体に取り付けられた2つの電極間のキャパシタンスを測定することによって、前記ウェハ支持体上に前記ウェハが存在することを感知する段階と、
b)前記2つの電極間の測定キャパシタンスが、前記ウェハを前記ウエハ支持体上に載置したことを示す値に達した時、前記ウェハと支持体の間に静電吸引力を発生させることによって前記ウェハを前記ウエハ支持体に固定する段階とを含み、
さらに、前記感知する段階は、前記2つの電極間のキャパシタンスに関連した出力信号を供給し、かつこの出力信号が、前記ウエハ支持体上に前記ウエハが配置されたことを示す所定値に達したかどうかを判断するステップを含み、
前記静電吸引力が発生している時に前記2つの電極間のキャパシタンスの変化を監視することによって、ウェハが静電吸引力によって前記ウエハ支持体に固定されることを特徴としている。
また、他の請求項の記載によれば、本発明は、静電吸引力によって半導体ウェハを引きつける2つの電極を設けたウェハ支持体にウェハを固定する装置であって、
a)前記電極に励磁信号を供給するために、前記電極に接続された電源と、
b)前記2つの電極を励磁するために前記電源に接続され、ウエハがウエハ支持体上に配置されたとき前記ウエハを前記ウエハ支持体に引き付けるためのコントローラと、
c)前記2つの電極間のキャパシタンスに関連した出力信号を供給するために前記2つの電極に電気的に接続されたキャパシタンス感知回路とを有しており、
前記キャパシタンス感知回路は、前記ウエハが前記ウエハ支持体上に載置されている時に、前記2つの電極間のキャパシタンスを感知して前記キャパシタンスの変化を監視し、かつ前記ウエハが静電吸引力によって所定位置に保持されている時にも前記キャパシタンスの変化を監視しており、
前記コントローラは、前記キャパシタンス感知回路に連結する手段を含み、感知されたキャパシタンスに対応する前記出力信号が前記コントローラに入力され、この出力信号に基づいて、ウエハ支持体上のウエハの存在、及びウエハが確実に固定されているかを判断することを特徴としている。
【0008】
したがって、ウェハ支持体に2つの電極を設けて、静電吸引力によってウェハをウェハ支持体に引き付けることができ、電源が2つの電極を励磁して、電極に結合されたキャパシタンス感知回路が、2つの電極間のキャパシタンスを監視する。
【0009】
ウェハがウェハ支持体内に載置されている場合、コントローラが励磁信号を電源から2つの電極に加えることによって、ウェハがウェハ支持体に引き付けられる。コントローラは、キャパシタンス感知回路からの出力に接続される入力線を備え、ウェハ支持体上にウェハが存在しているかを決定する。
【0010】
このため、本発明の好適な実施例に従って構成された半導体ウェハ用の静電チャックには、ウェハと係合可能な第1絶縁層と、前記第1絶縁層を支持するベース部材と、前記第1絶縁層と前記ベース部材との間に配置された第1及び第2電極と、第1及び第2電極に直流電位を加えて、第1絶縁層と前記ウェハとの間に静電吸引力を発生させる電源とが設けられている。
【0011】
キャパシタンス感知回路は、ウェハが第1絶縁層上に載置されている時に、第1及び第2電極間のキャパシタンスを感知して、前記キャパシタンスの変化を監視する。キャパシタンス感知回路はまた、ウェハが静電吸引力によって所定位置に保持されている時にも前記キャパシタンスの変化を監視する。
【0012】
本発明の上記及び他の目的、利点及び特徴は、添付の図面を参照した本発明の好適な実施例の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0013】
【作用】
本発明では、支持体に取り付けられた2つの電極間のキャパシタンスを測定することによって、支持体上にシリコンウェハが存在することを感知する。2つの電極間の測定キャパシタンスが、支持体上にウェハが載置されていることを示す値に達した時、ウェハ及び支持体間に静電吸引力を発生させることによって、ウェハが支持体に固定される。
【0014】
また、静電吸引力が発生している時の2つの電極間のキャパシタンスの変化を利用して、ウェハが静電吸引力によって支持体に固定されていることを確認するためのチェックが行われる。この感知されるキャパシタンスは周波数に変換されるために、その変化が感知しやすく、ウェハの載置を容易に確認し、さらにウェハの固定を確認できる。
【0015】
【実施例】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図2および図3は、半導体ウェハ12(図3)を処理のためにこれを支持固定するクランプアセンブリ10を示している。
【0016】
クランプアセンブリ10には、好ましくはアルミナまたはモリブデンで形成されたバッキングプレート14と、やはりアルミナで形成されたベース部材16と、ガラス製の絶縁層18と、アルミナ製の絶縁層(誘電体層)20とが設けられている。ガラス層18と絶縁層20との間に電極22,24が配置されており、ガラス層18とベース部材16との間に加熱素子26が配置されている。
【0017】
米国特許第4,261,762号明細書に記載されているように、ガス管継手28がチャックアセンブリ内に延在してウェハ12と絶縁層20との間に開放して、ウェハとチャックとの間でガス伝導冷却を行うことができるようにしている。ガス配給溝29が絶縁層20の上表面に形成されて、ガスの分散を助けている。
【0018】
ベース部材16が、冷却流体を流すチャネル30を備えたマニホルドを形成している。図示の好適な実施例では、チャネルが渦巻状に形成されているが、それは雷文(方形の螺旋状文様)形状にしたり、一連の連結チャネルにすることもできる。チャネルはバッキングプレート14によって閉鎖されて密閉導管を形成しており、バッキングプレート14はマニホルドに密着される。バッキングプレートには、冷却剤入口継手32及び冷却剤出口継手34用の開口が設けられている。
【0019】
本発明のチャックアセンブリは広範囲の温度状態で作動するようにしたものであるから、マニホルドを流れる冷媒は用途に応じて液体または気体にすることができる。
【0020】
クランプ構造
絶縁層(誘電体層)20は、好ましくは高純度(99.5%)アルミナの薄い(約0.25mm)層で形成される。次に、好ましくはペースト状の粉末銅アルミニウムまたは銀パラジウムメタル及びガラスフリットを絶縁層上にスクリーン印刷してから、それを約700°Cで焼成することによって、電極22及び24を絶縁層の(図2に示されている)底表面上に形成する。図1に示されているように、電極は平面図がほぼ半円形である。
【0021】
加熱素子26は、ペースト状の粉末タングステン及びガラスフリットをマニホルド上に連続した雷文状にスクリーン印刷することによって形成され、好ましくは雷文パターンの配置は、図3に示されているように、チャックの横断方向に温度均一性が最適化されるように外縁部においてヒータ出力密度が高くなるようにする。
【0022】
電極22,24及び加熱素子26を絶縁層上に焼成してから、絶縁層20をマニホルドに付着させる。上記組付けが完了した後、バッキングプレート14を炉内ろう付けまたはシーリングガラスによってマニホルド16の底部に密着させる。
【0023】
図3に概略的に示されているように、電極22に接続した第1導線40及び電極24に接続した第2導線42のためのアクセス穴36,38がバッキングプレート14、マニホルド16及び絶縁層18に貫設されている。導線40,42は、ろう付けまたは他の適当な方法で、例えば電極と係合可能なばね接点を設けることによって電極に取り付けられ、絶縁層20の表面上に載置された半導体ウェハ12に静電固定力を発生するために約3キロボルトの直流信号を発生する切り換え電源44(図1)に接続されている。
【0024】
さらに、加熱素子を一般的に120ボルトで作動する第2電源54に接続するため、加熱素子26の一方の端子に取り付けられた第3導線50及び加熱素子26の他方端子に同様に取り付けられた第4導線52のためのアクセス穴46,48がバッキングプレート14及びマニホルド16に貫設されている。好ましくは、アクセス穴36,38及びガス管継手28用の穴は構造体に機械加工され、穴36,38はシーリングガラスで密閉され、管継手はそれの穴にシーリングガラスで接着される。
【0025】
キャパシタンス感知回路
図1に示されているように、電極22,24からの2つの入力線110,112がキャパシタンス感知回路114に結合されている。これら2つの入力線110,112間のキャパシタンスは、電極22,24間のキャパシタンスに等しく、電極に印加される電圧と共に、ウェハの存在の影響を受ける。これら2つの入力線は集積回路122の演算増幅器120に結合されている。
【0026】
集積回路は、市販の型番LF356の回路であり、ナショナル・セミコンダクタ(National Semiconductor)から入手できる。演算増幅器120は、入力線110,112間のキャパシタンスに正比例した周波数で振動する出力を発生する。
【0027】
演算増幅器120からの振動出力信号は、±9ボルトの範囲で変動する。この信号は整流及び成形されてから、3ボルトのツェナーダイオード134によって定められた基準入力132を有する比較増幅器130へ送られる。比較増幅器130は、感知キャパシタンスに従って周波数が変化する一定の10マイクロ秒のオン周期を備えた方形波信号出力を発生する。
【0028】
4インチ直径円のウェハでは、このオン周期は、ウェハが存在しない場合に約20マイクロ秒で、ウェハが絶縁層20上に載置されている場合に約30マイクロ秒、ウェハが載置されて電源44によって電極に固定用電圧(約3キロボルト)が加えられている場合に約40マイクロ秒である。
【0029】
比較増幅器130からの出力は、対応の光検出器から光学的に隔離されている発光ダイオード140,142をオン・オフさせる。上部光検出器144は診断用に用いられ、検出器144からの出力148は、例えばキャパシタンスに伴った周波数変化を監視するオシロスコープに送ることができる。
【0030】
第2光検出器146が、アナログスイッチ152(図5)に結合されたトランジスタ150をオン・オフさせる信号を発生する。このアナログスイッチ152は、トランジスタ150のコレクタに結合された入力線(IN)を備えている。トランジスタがオン・オフすると、スイッチ152の出力(S1、S2)が、比較器130からの方形波周波数出力に従って接地状態から8ボルトまで状態を順次変化させる。
【0031】
アナログスイッチ152からの出力は、抵抗器/コンデンサ回路154によって積分されるため、演算増幅器162の非反転入力線160へ送られる入力は、回路114によって感知されたキャパシタンスに正比例した電圧レベルになる。この演算増幅器162は電圧フォロワとして機能するので、FVOUTの符号が付けられている出力164は、感知キャパシタンスに正比例した直流出力信号である。この直流出力信号は、注入機制御装置(コントローラ)250(図7)によってそのシステムの性能を監視するために利用される。ウェハをチャック上に載置するためのウェハハンドラは、適当なウェハ不在状態の感知に応答して励起される。ウェハが感知されると、制御装置250からの出力が直流電源44を作動させて電極22,24を励磁するため、クランプとウェハとの間に静電吸引力が発生する。
【0032】
図6は、キャパシタンス感知回路114に適した電圧を発生するための電源回路200を示している。図6の左側の2つの入力線210,212は、発光ダイオード213を励起する12ボルト信号を与える。次に、12ボルト信号は集積回路電圧レギュレータ216,218へ送られて+8及び+5ボルトを発生する。直流/直流変換器220が±15ボルトの信号を発生する。これらの電圧は図4および図5の回路へ送られて、本発明のキャパシタンス監視を行うことができるようにする。
【0033】
作用
作用を説明すると、処理を行うためにイオンビーム内に保持されるべきウェハ12を絶縁層20の表面上に載置して、電源44を励磁することによって、ウェハをチャック上に固定保持できる十分な静電吸引力をウェハと絶縁層20との間に加える。次に、ウェハをイオンビームのイオン注入経路内へ移動させることができるように、チャック10を回転及び並進移動させることができる。
【0034】
注入機制御装置250(図7)は、センサ252(例えば圧力測定計、電圧計、機械的位置を測定するエンコーダ、及びFVOUT出力線164)から入力を受け取り、機械的び電気的部材254(例えば弁、電源、ロボット及び静電クランプ電源44)へ作動コマンドを送る多数の装置インターフェースを有している。
【0035】
制御装置内には、作動コマンドを送る前に実行されなければならない様々なクロスチェックがプログラムされている(例えば、室が既にほぼ真空状態になっていることが確認されなければ、冷却ポンプに通じた弁が開放できない)。出力線164は、ウェハの存在及びそれが固定されているかを表示し、ウェハハンドリング及び注入作業を実行するためのこれらのクロスチェックに対するクリティカル情報を与える。例えば、ウェハが確実に固定されていることが確認されなければ、アセンブリ10は垂直位置へ回転しない。同様に、クランプ上のウェハの存在が確認されなければ、クランプは励起されない。クリティカルクロスチェックが機能しない場合、制御装置250は注入機をHOLD(さらなる作動を保留する)状態して、装置またはウェハ製品の損傷を避けることができるようにする。
【0036】
一連のクロスチェックの第2の機能は、オペレータインターフェース260に装置状態に関する情報を提供することである。すなわち、クロスチェックが機能しない時、アラームメッセージが発生してオペレータインターフェース260のスクリーンに表示され、ディスクドライブに維持されているデータログに記録される。この情報によって、オペレータは正常な装置作動を回復するための補正動作を取ることができる。
【0037】
図7は、この形式の装置の現在の技術状態を表しており、キャパシタンス感知回路114を追加することで、クランプ10上のウェハの状態に関して得られる情報の質的前進が得られる。
【0038】
以上に本発明の好適な実施例を詳細に説明してきたが、本発明の精神の範囲内において様々な変更を加えることができることは明らかである。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、キャパシタンス感知回路が、ウェハ支持体内の2つの電極間のキャパシタンスを監視して、第一に、支持体上にウェハが存在するか否を感知できると共に、第二に、にウェハが静電吸引力によって支持体に固定されていることをチェックするので、ウェハの載置と固定を容易にかつ確実に確認できる。
【0040】
また、測定されるキャパシタンスはこれに対応する周波数に変換されるためにその監視が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】
電源、静電クランプアセンブリ及びキャパシタンス感知回路の概略図である。
【図2】
イオン注入機に用いられているウェハ支持体の平面図である。
【図3】
図2の3ー3平面に沿って見た断面図である。
【図4】
キャパシタンス感知回路の概略図である。
【図5】
キャパシタンス感知回路の一部構成図である。
【図6】
図4及び図5の感知回路を励磁するための電源回路である。
【図7】
図4及び図5のキャパシタンス感知回路の出力を利用してイオン注入機を制御する制御装置の概略図である。
【符号の説明】
12 ウェハ
14 バッキングプレート
16 ベース部材
18,20 絶縁層
22,24 電極
44 電源
114 キャパシタンス感知回路
250 コントローラ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-06-22 
出願番号 特願平6-16998
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 柴沼 雅樹  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 菅澤 洋二
岡野 卓也
登録日 2002-08-23 
登録番号 特許第3341221号(P3341221)
権利者 アクセリス テクノロジーズ インコーポレーテッド
発明の名称 半導体ウエハの固定方法及びその装置  
代理人 小野塚 薫  
代理人 萼 経夫  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 萼 経夫  
代理人 小野塚 薫  
代理人 宮崎 嘉夫  

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