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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1130862
異議申立番号 異議2003-73880  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-08-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2006-01-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3474762号「樹脂製ダクト」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3474762号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3474762号(平成10年2月17日出願、平成15年9月19日設定登録)の請求項1ないし3に係る特許について、有限会社神奈川フィールドサービスから、特許異議の申立てがあったので、取消理由を通知したところ、その指定期間内である平成17年6月6日付けで特許異議意見書とともに訂正請求書が提出された。
そこで、訂正拒絶理由を通知したところ、その指定期間内である平成17年9月9日付けで特許異議意見書とともに手続補正書(訂正請求書)が提出された。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正請求に対する補正の適否
2-1-1.補正の内容
平成17年9月9日付の手続補正書(訂正請求書)の内容は、下記の事項を含むものである。(なお、補正事項の符号は当審が付与した。)

(1)補正事項1
平成17年6月6日付訂正請求書の第2頁第5行〜第24行に『特許請求の範囲の請求項1に、「【請求項1】ダクト外面を形成する・・・自動車の吸気系ダクト。」』とあるのを、以下のとおり補正する。
『明細書の特許請求の範囲の欄を、以下の通り訂正する。
【請求項1】「ダクト外面を形成する一対の半割のキャビティ型とダクト内面を形成するコア型とで形成されるキャビティにポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(以下「TPO」という)を射出成形後、型開きし、コア型周囲に成形保持されたダクトをコア型より引き抜いて脱型することにより得られる吸気系ダクトであって;
TPOの射出成形により、上記コア型の周囲に、長さ方向の一部にアンダーカット部を有する屈曲した形状に一体に形成され、上記TPOの硬度がHs(JIS A)50〜95であることにより、上記アンダーカット部を拡径して上記コア型から脱型され、その内部がエアクリーナを通して取り入れられた外気をエンジン本体に供給する吸気通路の一部を構成し、その両端部が自動車のエンジン本体またはエアクリーナの接続固定部として形成されていることを特徴とする自動車の吸気系ダクト。
【請求項2】 TPOが、ハードセグメントとしてポリプロピレン(PP)、ソフトセグメントとして部分架橋または完全架橋されたエチレンープロピレンゴム(EPDM)を成分として有する請求項1に記載の自動車の吸気系ダクト。
【請求項3】 アンダーカット部として蛇腹部が形成され、この蛇腹部のピッチが6〜16mm、山部内面におけるホース内径D1/谷部内面におけるホース内径D2が1.1〜1.5の範囲に形成された請求項1または2に記載の自動車の吸気系ダクト。』

(2)補正事項2
平成17年6月6日付訂正請求書の第2頁第26行〜第3頁第10行に『明細書の段落番号[0008]において、「(1)ダクト外面を形成する…自動車の吸気系ダクト。」』とあるのを、以下のとおり補正する。
「【0008】(1)ダクト外面を形成する一対の半割のキャビティ型とダクト内面を形成するコア型とで形成されるキャビティにポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(以下「TPO」という)を射出成形後、型開きし、コア型周囲に成形保持されたダクトをコア型より引き抜いて脱型することにより得られる吸気系ダクトであって;
TPOの射出成形により、上記コア型の周囲に、長さ方向の一部にアンダーカット部を有する屈曲した形状に一体に形成され、上記TPOの硬度がHs(JIS A)50〜95であることにより、上記アンダーカット部を拡径して上記コア型から脱型され、その内部がエアクリーナを通して取り入れられた外気をエンジン本体に供給する吸気通路の一部を構成し、その両端部が自動車のエンジン本体またはエアクリーナの接続固定部として形成されていることを特徴とする自動車の吸気系ダクト。
【0009】(2)TPOが、ハードセグメントとしてポリプロピレン(PP)、ソフトセグメントとして部分架橋または完全架橋されたエチレンープロピレンゴム(EPDM)を成分として有する請求項1に記載の自動車の吸気系ダクト。
【0010】(3)アンダーカット部として蛇腹部が形成され、この蛇腹部のピッチが6〜16mm、山部内面におけるホース内径D1/谷部内面におけるホース内径D2が1.1〜1.5の範囲に形成された請求項1または2に記載の自動車の吸気系ダクト。」

2-1-2.補正の適否についての判断
上記補正事項1,2により補正された、特許請求の範囲及び明細書の段落【0008】〜【0010】についての訂正事項は、いずれも、補正前の訂正請求書には記載されていない事項であるから、この補正は訂正事項の内容を変更するものであり、補正前の請求の趣旨を変更している。
したがって、補正事項1、2は、訂正請求書の要旨を変更するものであって、この補正は、特許法第120条の4第3項で準用する特許法第131条第2項の規定に適合しないから、当該補正は認められない。

2-2.訂正の適否
上記2-1のとおり、手続補正書による訂正請求書の補正は認められないから、特許権者の求める訂正の内容は、本件特許明細書を、平成17年6月6日付け訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。そこで、この訂正請求について検討する。

2-2-1.訂正の内容
平成17年6月6日付訂正請求書による訂正は、下記の訂正事項を含むものである。(なお、訂正事項の符号は当審が付与した。)

訂正事項1
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1について、
「ダクト外面を形成するキャビティ型とダクト内面を形成するコア型とで形成されるキャビティにポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(以下「TPO」という)を射出成形して一体に屈曲した形状に形成され、かつ長さ方向の一部にアンダーカット部を有するダクトであって、上記TPOの硬度がHs(JISA)50〜95であり、かつ、射出成形後上記アンダーカット部を拡径してコア型より引抜いて脱型するようにしたことを特徴とする自動車のエアダクト。」とあるのを、
「ダクト外面を形成するキャビティ型とダクト内面を形成するコア型とで形成される射出成形型のキャビティにポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(以下「TPO」という)を射出成形後、加硫工程を省略して型開きし、コア型周囲に成形保持されたダクトをコア型より引き抜いて脱型することにより得られる製品ダクトであって;
前記キャビティは、一対の半割のキャビティ型とコア型とで前記製品ダクトに対応する形状に形成され;
TPOの射出成形により、上記コア型の周囲に、長さ方向の一部にアンダーカット部を有する屈曲した形状に一体に形成された製品ダクトが成形保持され、上記TPOの硬度がHs(JIS A)50〜95であることにより、上記アンダーカット部の拡径による上記コア型からの脱型が可能にされ、上記コア型からの脱型により得られる製品ダクトの内部がエアクリーナを通して取り入れられた外気をエンジン本体に供給する吸気通路の一部を構成し、製品ダクトの両端部は自動車のエンジン本体またはエアクリーナの接続固定部として形成されていることを特徴とする自動車の吸気系ダクト。」と訂正する。

2-2-2.訂正の適否についての判断
訂正事項1は、請求項1における訂正前の「ダクト外面を形成するキャビティ型とダクト内面を形成するコア型とで形成されるキャビティ」との記載を、「ダクト外面を形成するキャビティ型とダクト内面を形成するコア型とで形成される射出成形型のキャビティ」と訂正することを含む。要するに、これは、「キャビティ」を「射出成形型のキャビティ」と訂正するものであり、一見、特許請求の範囲の減縮を目的とするもののようにも見える。
しかしながら、訂正前の請求項1における「キャビティにポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(以下「TPO」という)を射出成形し」、「射出成形後上記アンダーカット部を拡径してコア型より引抜いて脱型する」との記載からみて、訂正前の「キャビティ」についても、なんら字句上の限定を伴うまでもなく、射出成形型のキャビティであることは自明である。
してみると、「キャビティ」を「射出成形型のキャビティ」と訂正することは、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものとはいえない。

2-2-3.まとめ
訂正事項1に係る訂正は、少なくとも上記の点において、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものとはいえないので、特許法第120条の4第2項ただし書の規定に適合しないから、当該訂正は認められない。

3.特許異議申立てについての判断
3-1.本件発明
上記2.のとおり、訂正請求書による訂正は認められないから、本件請求項1〜3に係る発明は、それぞれ、特許査定時の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された以下のとおりのものである。

【請求項1】 ダクト外面を形成するキャビティ型とダクト内面を形成するコア型とで形成されるキャビティにポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(以下「TPO」という)を射出成形して一体に屈曲した形状に形成され、かつ長さ方向の一部にアンダーカット部を有するダクトであって、上記TPOの硬度がHs(JISA)50〜95であり、かつ、射出成形後上記アンダーカット部を拡径してコア型より引抜いて脱型するようにしたことを特徴とする自動車のエアダクト。
【請求項2】 TPOが、ハードセグメントとしてポリプロピレン(PP)、ソフトセグメントとして部分架橋または完全架橋されたエチレン-プロピレンゴム(EPDM)を成分として有する請求項1に記載の自動車のエアダクト。
【請求項3】 アンダーカット部として蛇腹部が形成され、この蛇腹部のピッチが6〜16mm、山部内面におけるホース内径D1/谷部内面におけるホース内径D2が1.1〜1.5の範囲に形成された請求項1または2に記載の自動車のエアダクト。

3-2.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人、有限会社神奈川フィールドサービスは、証拠として甲第1号証(特開平6-297492号公報)、甲第2号証(特開平5-245889号公報)、甲第3号証(特開平5-59233号公報)、甲第4号証(特開平9-68117号公報)及び甲第5号証(特開平6-210759号公報)を提出し、本件請求項1に係る発明は甲第1〜4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件請求項2,3に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1〜3に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき旨主張している。

3-3.特許異議申立人が提出した甲第1〜5号証記載の発明
特許異議申立人が提出した甲第1〜5号証には、それぞれ、下記の事項が記載されている。

(1)甲第1号証
ア:「【請求項1】 成形型に形成された円筒状空所に円筒状の中子型を挿入して中子型の先端面側及び外周面側に互いに連通する第1及び第2のキャビティを形成し、
中子型の先端面の中心又は中心近傍から成形材料を第1のキャビティへ注入し、
第1のキャビティに注入された成形材料は放射状に拡散して中子型の先端面外周縁から第2のキャビティへ流動し、
さらに第2のキャビティ内に成形材料が流動して第1及び第2のキャビティ内に充填された後に加硫成形し、
加硫成形後に成形型から中子型を抜き取って成形品を取出し、
成形品の第1のキャビティで成形された部分をカットして可撓管とすることを特徴とする可撓管の製造方法。」
イ:「図1において成形型1に形成された円筒状空所2に円筒状の中子型3を挿入して中子型3の先端面側及び外周面側に互いに連通する第1及び第2のキャビティ4,5を形成してある。中子型3の先端面の中心近傍、図示する例では中心位置に成形材料注入用のランナー6を設けてある。また、中子型3にはエアー等の流体導入路7を形成してあり、この流体導入路7の先端側には流体弁8をばね9により常に第1キャビティ4に面した穴を塞ぐように付勢してある。ランナー6の位置は破線で示す位置であっても良い。即ち、成形品の湾曲した部分の曲率に応じてランナー6の位置を移動することができる。図1のように湾曲部分を有するものにおいては、ランナー6から蛇腹状部分11を形成する個所までの距離を等しくして注入した成形材料がキャビティ5の終端まで同時にいきわたるようにするには破線の位置にあることが望ましい。」(段落【0008】及び図1参照)
ウ:「図1に示すような金型を用い、ランナー6から成形材料を第1のキャビティ4へ注入する。この第1のキャビティ4はディスク状のゲートとなる。第1のキャビティ4に注入された成形材料は放射状に拡散されて中子型3の先端面外周縁から第2のキャビティ5へ流動する。さらに、第2のキャビティ5内に成形材料が流動して第1及び第2のキャビティ4,5内に成形材料が充填されたならば、成形材料を加硫成形する。加硫成形後、流体導入路7から中子型3の先端面に向けてエアー等の流体を吹き出して中子型3から成形品を離型させる。このとき、流体弁8は図面上左手方向へ流体の圧力により押し出され、これによって生ずる隙間から成形品の内側へと吹き出される。エアー等の流体が成形品の内側に送り込まれると、成形品は中子型3から離型する。しかるのちに成形型1から中子型3を抜き取って成形品を取り出し、成形品の第1のキャビティ4で成形された部分をカットする。」(段落【0009】及び図1参照)
エ:「図1で示すような金型で製造された可撓管10は、図2に示すようなものとなる。この可撓管10は、その長さ方向の中央部に位置する蛇腹状部分11と、その両端に連続する平滑状部分12とを備えてな・・・る。・・・弾性体13を・・・ランナー6から第1のキャビティ4を通って第2のキャビティ5へ充填する。」(段落【0010】抜粋及び図1,2参照)
オ:「弾性体13としては、ブタジエンゴム,天然ゴム,ニトリルブタジエンゴム,スチレンブタジエンゴム等の汎用ゴムを用いることも可能であるが、これらのゴムは、比較的早期に高温劣化して可撓管10の耐久性の低下をもたらすもので、高温化で使用される可撓管10の弾性体13としては、フッ素ゴム,シリコンゴム,水素添加ニトリルブタジエンゴム,アクリルゴム,エチレン・アクリルエステル共重合体,エチレン・酢酸ビニール・アクリルエステル三元重合体,クロルスルホン化ポリエチレン,エピクロルヒドリン,エチレン・プロピレン共重合体,エチレン・プロピレン・ジエン三元重合体,イソブテン-イソプレンゴムもしくはこれらの変性体、または、それらのいずれかと、50%以下の他のポリマーとをブレントしたものを選択することが好ましい。」(段落【0011】)
カ:「流体導入路7及び流体弁8を中子型3に設けた場合、成形品を中子型3からエアー等を吹き込むことにより剥がし、離型するので中子型3を抜き取ることが容易に行える。そのため、中子型3の分割を考慮しなくても良く、金型の構造が簡単なものとなる。流体導入路7から成形品の内側に吹き込む流体の圧力は0.5〜3kgf/cm2 程度の圧力で良い。このような低圧でエアーを吹き込んだ場合、成形品は膨らみ、中子型3から容易に脱型できる。」(段落【0013】抜粋)
キ:「このようにして製造された可撓管10は、自動車エンジンの過給機とインタークーラーとの間並びにこのインタークーラーとエンジンとの間に夫々装着されてエンジン給気の給送を行うと共に、エンジン振動の車体への伝達を防止すべく機能するものとして使用される。」(段落【0015】)
ク:「中子型からの脱型が容易なことから、従来技術では困難な湾曲部を有する製品についても製造が可能となる。」(段落【0016】抜粋)

(2)甲第2号証
ケ:「【請求項1】 蛇腹管Fの外面形状を形成する固定金型5と可動金型6、および両金型5・6間に配置されて蛇腹管Fの内面形状を形成するコア7で成形空間9を形成し、
成形空間9に溶融した熱可塑性エラストマーを加圧充填して固化し、一方の管端が端壁4で塞がれた蛇腹管原材3を形成し、
固定金型5と可動金型6を型開きした後、コア7および蛇腹管原材3を成形空間9の外へ移動し、
コア7の内部に設けた通路11を介して蛇腹管原材3の内面に加圧気体を送給して蛇腹管原材3をコア7から離型し、
離型された蛇腹管原材3の端壁4を除去して蛇腹管Fを形成する蛇腹管の製造方法。」

(3)甲第3号証
コ:「【請求項1】 内燃機関の吸気系を構成する合成樹脂部品において、
該合成樹脂部品は、ポリプロピレン樹脂50〜95重量%と熱可塑性エラストマー5〜50重量%とを混合してなる樹脂成分100重量部に対して、無機充填剤10〜150重量部を配合したポリプロピレン樹脂組成物により作製されており、
かつ上記熱可塑性エラストマーは、ビニル構造のポリイソプレンブロックを有するスチレン-イソプレン-スチレン構造のブロックポリマーを主体とするものであることを特徴とする内燃機関の吸気系合成樹脂部品。」

(4)甲第4号証
サ:「【請求項1】 剛性を有する筒状の連結部と、山部と谷部とが筒軸方向に沿って交互に連続形成された、屈曲柔軟性を有する筒状の蛇腹部とからなる内燃機関の吸気系エアダクトにして、
それら連結部と蛇腹部とを、所定の合成樹脂材料を用いたブロー成形にて一体成形すると共に、該蛇腹部における前記山部の頂部部位と前記谷部の底部部位とを、それらの外側形状及び内側形状がそれぞれ縦断面略U字形形状を呈するように構成し、更に該山部の頂部部位が、該谷部の底部部位よりも厚肉となるように構成したことを特徴とする内燃機関の吸気系エアダクト。」
シ:「【請求項3】 前記合成樹脂材料が、40〜90%の範囲の架橋率と60〜90度の範囲の硬度(JIS A)とを有するオレフィン系エラストマーである請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の吸気系エアダクト。」
ス:「エアダクト10を与える合成樹脂材料は、特に限定されるものではなく、エンジンの吸気系部品としての要求特性等を考慮した上で、その種類等が、適宜に決定されるところであるが、有利には、40〜90%の範囲の架橋率と60〜90度の範囲の硬度(JIS A)とを有するオレフィン系エラストマーが、好適に用いられることとなる。それによって、材料コストの低減が効果的に図られ得、以てより優れた経済性が発揮され得るのである。」(段落【0029】抜粋)
セ:「先ず、原料樹脂として、80%の架橋率と75度の硬度(JIS A)とを有するオレフィン系エラストマー〔商品名:ミラストマー(グレード7520)、三井石油化学(株)製〕を所定量準備し、」(段落【0037】抜粋)

(5)甲第5号証
ソ:「【請求項1】 (A)熱可塑性コポリエステルエラストマーまたは熱可塑性コポリアミドエラストマー30〜90重量%、および(B)エポキシ基および/またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレート共重合体ゴム70〜10重量%からなる熱可塑性エラストマー組成物を使用して得られる蛇腹形状部品。」

3-4.対比・判断
3-4-1.請求項1に係る発明について
(1)甲第1号証に記載された発明
上記摘示ア〜エ、カ〜クによれば、甲第1号証には、概要、次の発明が記載されているといえる。
「可撓管の外面を形成する成形型と可撓管の内面を形成する中子型とで形成される第1及び第2のキャビティ内に成形材料を充填し、射出成形して形成され、
長さ方向の中央部に位置する蛇腹状部分とその両端に平滑状部分とを備えてなり、かつ、湾曲部分を有する可撓管であって、
上記充填した後に、加硫成形し、次に中子型に設けられた流体導入路を通じて成形品の内側にエアーを吹き込むことにより成形品を膨らませて中子型から脱型し、成形品の第1のキャビティで成形された部分をカットする
自動車のエンジン給気の給送を行う可撓管。」

(2)請求項1に係る発明と甲第1号証記載の発明との対比
請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、後者における「自動車のエンジン給気の給送を行う可撓管」、「成形型」、「中子型」及び「第1及び第2のキャビティ」は、それぞれ前者における「自動車のエアダクト」、「キャビティ型」、「コア型」及び「キャビティ」に相当し、また、後者における「蛇腹状部分」は、前者における「アンダーカット部」を形成するものであると認められるから、両者は、
「ダクト外面を形成するキャビティ型とダクト内面を形成するコア型とで形成されるキャビティに成形材料を射出成形して一体に屈曲した形状に形成され、かつ長さ方向の一部にアンダーカット部を有するダクトであって、射出成形後上記アンダーカット部を拡径してコア型より引抜いて脱型するようにした自動車のエアダクト」である点で一致し、以下の点で相違する。
「成形材料として、請求項1に係る発明においては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーであって硬度がHs(JISA)50〜95のものを用いるのに対し、甲第1号証記載の発明においては、加硫成形を行うものであって、硬度が明らかではないものを用いる点」(以下、「相違点1」という。)

(3)上記相違点1についての検討
甲第4号証には、エアダクトを成形するための合成樹脂材料としては、エンジンの吸気系部品としての要求特性等を考慮すると、40〜90%の範囲の架橋率と60〜90度の範囲の硬度(JIS A)とを有するオレフィン系エラストマーが、好適に用いられる旨記載されており(上記摘示ス)、また、甲第4号証の実施例において使用されているオレフィン系エラストマーは「商品名:ミラストマー(グレード7520)、三井石油化学(株)製」(上記摘示セ)であることから、甲第4号証のオレフィン系エラストマーはオレフィン系熱可塑性エラストマーであると認められる。
しかし、甲第4号証には、キャビティ内に充填された後に加硫成形することは記載も示唆もされておらず、また、甲第4号証で用いられているオレフィン系熱可塑性エラストマーは、そもそもキャビティ内に充填された後に加硫成形することを必要としない材料である。
これに対し、甲第1号証に記載された発明は、「成形材料が流動して第1及び第2のキャビティ内に充填された後に加硫成形」(摘示ア参照)するものであって、成形材料について具体的に開示された摘示オをみても、加硫成形するものが列挙されているに過ぎず、加硫成形を必要としない、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーについては記載も示唆もされていない。
してみれば、キャビティ内に充填された後に加硫成形を行わない甲第4号証に記載された60〜90度の範囲の硬度(JIS A)を有するオレフィン系エラストマーを、加硫を前提とする甲第1号証の成形材料として用いることは当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
また、甲第2,3,5号証には、特定硬度のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーをダクトの射出成形に用いることについては記載も示唆もないから、上記相違点1は、甲第2,3,5号証から当業者が容易に想到することができたものともいえない。
そして、甲第4号証はブロー成形するものであってコア型から引き抜くものではなく、また、他の甲各号証には特定硬度のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることが記載も示唆もされていないことから、硬度Hs(JISA)が50〜95のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーをダクトの射出成形に用いることにより、脱型が容易になるという本件発明の効果を予測することはできない。
よって、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとすることはできない。

3-4-2.請求項2、3に係る発明について
請求項2、3に係る発明は、請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含み、更に他の特定事項を付加したものであるから、請求項1に係る発明と同様の理由により、甲第1〜5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとすることはできない。

4.取消理由通知について
4-1.取消理由通知の概要
当審が通知した取消理由通知は、概略、本件特許の請求項1〜3に係る発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、というものである。
刊行物1:特開平6-297492号公報(特許異議申立人の提出した甲第1号証)
刊行物2:特開平9-68117号公報(特許異議申立人の提出した甲第4号証)
刊行物3:「熱可塑性エラストマー」化学工業日報社発行(1991年2月15日)第145-181ページ

4-2.判断
取消理由通知で引用した刊行物1、2は、それぞれ、上記甲第1号証、甲第4号証であり、これらの刊行物から、本件請求項1〜3に係る発明が、当業者が容易に発明することができたものであるといえないことは、上記3-4で述べたとおりである。
また、取消理由通知で引用した刊行物3に開示されているのは加硫を必要としないポリオレフィン系熱可塑性エラストマーであって、加硫成形することを前提とする刊行物1(甲第1号証)において、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを成形材料として用いることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件請求項1〜3に係る発明は、刊行物1〜3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-12-20 
出願番号 特願平10-51397
審決分類 P 1 651・ 121- YB (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大島 祥吾  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 川端 康之
野村 康秀
登録日 2003-09-19 
登録番号 特許第3474762号(P3474762)
権利者 タイガースポリマー株式会社 本田技研工業株式会社
発明の名称 樹脂製ダクト  
代理人 鍬田 充生  
代理人 鍬田 充生  
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