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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03H
管理番号 1130882
異議申立番号 異議2003-72205  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-12-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-04 
確定日 2006-02-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第3383004号「ホログラム記録媒体の作成方法および作成装置」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3383004号の請求項1ないし7に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯

本件特許第3383004号の請求項1ないし7に係る発明についての出願は、平成5年5月27日に特許出願され、平成14年12月20日にその特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人凸版印刷株式会社から特許異議の申立てがなされ、平成16年10月27日付けの取消理由通知に対して平成17年1月7日付けで意見書が提出された。

2.申立て理由の概要
異議申立人凸版印刷株式会社は、請求項1ないし5及び7に係る発明の特許は甲第1号証により、請求項6に係る発明は甲第1および2号証に記載の発明に基づき容易に発明されたものであるので特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明にに対してなされたものであるので、特許を取り消すべきと主張している。

3.本件請求項1ないし7に係る発明
本件の請求項1ないし7に係る発明は、特許第3383004号公報の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】回折格子により所定のモチーフが表現されたホログラム記録媒体を作成する方法であって、所定線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることによって複数用意する第1の段階と、それぞれ所定の画素値をもった複数の画素を平面上の所定位置に定義することにより所定のモチーフを表現した、モチーフ画素情報を用意する第2の段階と、前記モチーフ画素情報において定義された各画素と、前記第1の段階で用意した各画素パターンとの対応関係を、各画素についての画素値を参照することにより定義する第3の段階と、前記対応関係に基づいて、前記画素パターンを所定の画素位置に配置する第4の段階と、を有することを特徴とするホログラム記録媒体の作成方法。
【請求項2】請求項1に記載のホログラム記録媒体の作成方法において、第2の段階で、複数の異なるモチーフについてのモチーフ画素情報をそれぞれ用意し、第3の段階で、異なるモチーフに所属する画素については、異なる画素パターンを対応させ、複数のモチーフを同一平面上に重複させて表現するようにしたことを特徴とするホログラム記録媒体の作成方法。
【請求項3】請求項1に記載のホログラム記録媒体の作成方法において、第1の段階で、互いに近似したパラメータをもつ複数の画素パターンを1グループとして、複数グループの画素パターンを用意し、第2の段階で、複数の異なるモチーフについてのモチーフ画素情報をそれぞれ用意し、第3の段階で、異なるモチーフに所属する画素については、異なるグループに属する画素パターンを対応させ、複数のモチーフを同一平面上に重複させて表現するようにしたことを特徴とするホログラム記録媒体の作成方法。
【請求項4】回折格子により所定のモチーフが表現されたホログラム記録媒体を作成する方法であって、所定線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることによって複数用意する第1の段階と、それぞれ所定の画素値をもった複数の画素をM行N列の配列上に定義することにより所定のモチーフを表現したモチーフ画素情報を、複数の異なるモチーフについてそれぞれ用意する第2の段階と、m行n列に配列された副画素から構成される単位副画素配列を定義し、この単位副画素配列内の各副画素位置にどのモチーフの画素を配置するかを定めた副画素構成情報を用意する第3の段階と、
前記モチーフ画素情報において定義された各画素と、前記第1の段階で用意した各画素パターンとの対応関係を、各画素についての画素値を参照することにより定義する第4の段階と、前記単位副画素配列自身をM行N列に配列することにより、(m×M)行(n×N)列の副画素配列を定義し、前記対応関係に基づいて、各モチーフごとに各単位副画素配列に対応する画素パターンを抽出し、前記副画素構成情報に基づいて、抽出された画素パターンを所定の副画素位置に配置する第5の段階と、を有することを特徴とするホログラム記録媒体の作成方法。
【請求項5】回折格子により所定のモチーフが表現されたホログラム記録媒体を作成する方法であって、所定線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることによって複数用意する第1の段階と、それぞれ所定の画素値をもった複数の画素をM行N列の配列上に定義することにより所定のモチーフを表現したモチーフ画素情報を、複数の異なるモチーフについてそれぞれ用意する第2の段階と、m行n列に配列された副画素から構成される単位副画素配列を定義し、この単位副画素配列内の各副画素位置にどのモチーフの画素を配置するかを定めた副画素構成情報を用意する第3の段階と、前記モチーフ画素情報において定義された各画素と、前記第1の段階で用意した各画素パターンとの対応関係を、各画素についての画素値を参照することにより定義する第4の段階と、前記単位副画素配列自身を(M/m)行(N/n)列に配列することにより、M行N列の副画素配列を定義し、前記対応関係に基づいて、各モチーフごとに各単位副画素配列に対応する画素パターンを抽出し、前記副画素構成情報に基づいて、抽出された画素パターンのうちの一部を選択してこれを所定の副画素位置に配置する第5の段階と、を有することを特徴とするホログラム記録媒体の作成方法。
【請求項6】請求項1〜5のいずれかに記載のホログラム記録媒体の作成方法において、画素としての全占有領域と、この全占有領域の中で格子線を配置する対象となった閉領域と、の面積比がそれぞれ異なる複数の画素パターンを用意し、各画素位置にはその画素のもつ画素値に応じた面積比をもつ画素パターンを対応させ、階調をもったモチーフを表現するようにしたことを特徴とするホログラム記録媒体の作成方法。
【請求項7】回折格子により所定のモチーフが表現されたホログラム記録媒体を作成する装置であって、所定線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることによって複数用意した画素パターンファイルを保持する手段と、それぞれ所定の画素値をもった複数の画素を平面上の所定位置に定義することにより所定のモチーフを表現した、モチーフ画素情報ファイルを入力する手段と、前記モチーフ画素情報ファイルにおいて定義された各画素と、前記画素パターンファイル内に用意された各画素パターンとの対応関係を、各画素についての画素値を参照することにより定義した対応関係情報ファイルを作成する手段と、前記対応関係情報ファイルに基づいて、前記画素パターンを所定の画素位置に配置した画像データを作成する手段と、前記画像データに基づいて、所定の記録媒体にホログラムパターンを形成する手段と、m行n列に配列された副画素から構成される単位副画素配列について、この単位副画素配列内の各副画素位置にどのモチーフの画素を配列するかを定めた副画素構成情報ファイルを保持する手段と、を備え、前記画像データを作成する手段が、前記副画素構成情報ファイルに基づいて画素パターンの配置処理を行うことを特徴とするホログラム記録媒体の作成装置。」

4.刊行物等
異議申立人凸版印刷株式会社が証拠として提示した刊行物には、それぞれ以下の記載がある。
刊行物1:特開平5-2148号公報(甲第1号証)
(記載事項1a)
「【0002】
【従来の技術】従来から、平面状の基板の表面に、回折格子からなる複数の微小なドットを配置することにより、回折格子パターンが形成されたディスプレイが多く使用されてきている。この種の回折格子パターンを有するディスプレイを作製する方法としては、例えば“特開昭60-156004号公報”に開示されているような方法がある。この方法は、2光束干渉による微小な干渉縞(以下、回折格子とする)を、そのピッチ、方向、および光強度を変化させて、感光性フィルムに次々と露光するものである。
【0003】一方、最近では、例えば電子ビーム露光装置を用い、かつコンピュータ制御により、平面状の基板が載置されたX-Yステージを移動させて、基板の表面に回折格子からなる複数の微小なドットを配置することにより、ある絵柄の回折格子パターンが形成されたディスプレイを作製する方法が、本発明者によって提案されてきている。その方法は、1988年11月25日にファイルされた“米国特許出願シリアル番号第276,469号”に開示されている。」
(記載事項1b)
「【0023】図2に示すように、本発明によって作製された、ドット16を有するディスプレイ15を、観察者が観察すると仮定する。図2に示すように、照明光91の入射角度をθ、回折格子18によって回折された1次回折光92の方向をα、1次回折光92の波長をλとすると、図3に示すように、回折格子18の方向Ω、および回折格子18のピッチd(空間周波数の逆数)は、以下のような式で求めることができる。なお、照明光91はY-Z平面上を通るとし、回折光はX-Z平面上を通るとする。
【0024】
tan(Ω)=sin(α)/sin(θ)
d=λ/{sin2 (θ)+sin2 (α)}1/2
上式を用いることにより、照明光91を任意の方向に回折するための、前記回折格子18の方向Ωおよびピッチdを求めることが可能になる。すなわち、照明光91の入射角度θ、1次回折光92の方向α、1次回折光92の波長λを与えれば、回折格子18の方向Ω、およびピッチdを得ることができる。
【0025】ここで、正面に回折する(α=0)ような回折格子のピッチd´を求める。
d´=λ/sin(θ)
よって、
d=d´・sin(θ)/{sin2 (θ)+sin2 (α)}1/2
=d´・cos(Ω)
図4に示すように、曲線を一定のピッチで平行移動した構成では、常に上式を満たしているため、回折光が水平方向に移動する視点に、常に同じ色の波長を観察できるような回折格子の構成になっている。図4のドットでは、ドットを構成する曲線が、傾きΩ1からΩ2まで変化しており、その曲線が、ピッチd´で並んでいる。すなわち、回折光の水平方向での回折される範囲が、グレーティングの存在する面の法線に対しての角度α1からα2である、グレーティングのドットを得るためには、
tan(Ω1 )=sin(α1 )/sin(θ)
tan(Ω2 )=sin(α2 )/sin(θ)
d=λ/sin(θ)
となる。よって、傾きΩ1 からΩ2 まで変化する曲線を、ピッチd´で平行移動したグレーティングを用いればよい。」
(記載事項1c)
「【0026】そこで、本発明では、回折格子イメージの基本的な1ドットの構成を、図4に示すような構成とする。
【0027】次に、このドットを図5に示すように、縦方向に3つに分割する。そして、この3つに分割した領域を、左からr1 ,r2 ,r3 とする。すると、r1 の部分に入射した光は、左方向に回折し、またr2 の部分に入射した光は、正面方向に回折し、さらにr3 の部分に入射した光は、右方向に回折することになる。ここで、もしこのドットを、左方向からのみ観察できるようにしたい場合には、r1 の部分のみについて、回折格子を描画し、r2 ,r3 の部分については、何も描画しなければよい。その場合、観察者は、視点がe1の範囲にある時にのみ、このドットが光って見えることになる。なお、図5の場合には、説明のため回折格子のドットを縦方向に3つに分割したが、それ以上に分割することも可能である。すなわち、入力したい視差画像の枚数分だけ、回折格子のドットを分割することになる。
【0028】ここで、説明のために、ある物体の視差画像を、3枚撮影したとする。この物体は、例えば左から観察すると“T”、また正面から観察すると“O”、さらに右から観察すると“P”に見えるとする(実際には、このような物体は存在しないが)。使用する視差画像の枚数が3枚なので、ドットは縦方向に3つに分割する。図6に示すように、“T”はドットの左の部分、また“O”はドットの中央の部分、さらに“P”はドットの右の部分の回折格子を描画することによって、回折格子イメージの回折格子のパターンを得ることができる。
【0029】さて、このようにして得られた回折格子イメージを、図7に示すようにして、再生する。この時、左方向では“T”、また真ん中では“O”、さらに右方向では“P”を観察できることになる。なお、ここでは、入力した画像は3枚としているが、もっと多くの視差画像を用いることによって、観察者の左右の目に入る画像を、異なったものにすることが可能である。すなわち、観察者は、左右の目に別々に視差のある画像を観察することになり、立体的な(3次元的な)画像を得ることができる。また、観察者の観察位置を水平方向に移動した場合でも、他の方向から見た視差画像が得られるため、自然な立体感を得ることができる。」
(記載事項1d)
「【0034】まず、回折格子パターンを描画するための様々なパラメータを入力する。そして、ステップa2およびa3において、この入力したパラメータを基に、他のパラメータを求めるための計算を行なう。ここでは、原画の枚数をL、X方向の描画領域の数をn、Y方向の描画領域の数をm、一つの描画領域内のX方向のドットの数をO、Y方向のドットの数をPとする。なお、描画領域とは、電子ビーム露光装置を用いた電子ビームの描画エリアが、一般に数mm角であるため、それ以上の絵柄を描画するためには、X-Yステージを用いて、描画エリアを面付けする必要があり、この時の数mm角の範囲を、描画領域と称する。」
(記載事項1e)
「【0039】また、回折格子(グレーティング)が、平行な曲線によって構成されているので、水平方向に広がりのある回折光を作ることができる。このため、像に飛びがなく、しかも水平方向に視点を移動した時に色の変化しない立体像を、再現よく観察することができる。すなわち、従来では、回折格子(グレーティング)が、平行な直線によって構成されているため、回折光は、ある一定波長の光に対しては光線となり、水平方向に広がりのある光を作り出すことができない。よって、かかるディスプレイを、離れた位置で水平方向に移動しながら観察すると、像が見える位置と像が見えない位置とが生じる(像の飛び)。従って、もし左右どちらかの目に、像が見えない状態になると、立体視を行なうことができなくなり、また像の飛びは、観察者に不快感を与えることになる。この点、本実施例のディスプレイでは、このような問題を全て解決することができる。」

刊行物2:特開平3-39701号公報(甲第2号証)
刊行物2には、以下の記載がある。
(記載事項2a)
「平面状の基板と、該基板の表面に形成された回折格子パターンとからなるディスプレイであって、該回折格子パターンが回折格子により形成された複数の微小なドットから構成され、該ドットの面積が各ドット毎に指定された大きさに変化してなることを特徴とする回折格子パターンを有するディスプレイ。」(特許請求の範囲)
(記載事項2b)
「各ドットの面積に対応して微小な回折格子による明度の表現ができ」(第2頁左上欄第19行〜同頁右上欄第1行)

5.対比・判断
本件の請求項1ないし7に係る発明(以下、「本件第1発明」ないし「本件第7発明」という。)を刊行物1および刊行物2に記載の発明と対比し、判断する。
5-1.本件第1発明について
(1)本件第1発明
本件第1発明を、
(a)回折格子により所定のモチーフが表現されたホログラム記録媒体を作成する方法であって、
(b)所定線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることによって複数用意する第1の段階と、
(c)それぞれ所定の画素値をもった複数の画素を平面上の所定位置に定義することにより所定のモチーフを表現した、モチーフ画素情報を用意する第2の段階と、
(d)前記モチーフ画素情報において定義された各画素と、前記第1の段階で用意した各画素パターンとの対応関係を、各画素についての画素値を参照することにより定義する第3の段階と、
(e)前記対応関係に基づいて、前記画素パターンを所定の画素位置に配置する第4の段階と、
(f)を有することを特徴とするホログラム記録媒体の作成方法。
と分節する。

(2)取消理由
異議申立の取消理由は、
(2.1)
刊行物1の【0023】〜【0024】段落、【0028】〜【0029】段落および【0034】段落の記載に基づき、刊行物1には、
(イ)「作製しようとする回折格子パターン(絵柄)に応じて、回折格子からなるドットを生成するにあたって、回折格子のピッチ、方向を適宜選択すること。」
(ロ)「複数種類のモチーフ(T、O、P)を用意すること。」
(ハ)「各モチーフを構成する画素パターン(角度が異なる複数種類の回折格子からなるドット)を用意すること。」
の工程を具備する、回折格子により所定のモチーブが表現されたホログラム記録媒体を作成する方法が記載され、これにより、本件第1発明における(a)、(b)、(f)に相当する要件が開示されていること、
(2.2)
(c),(d),(e)は刊行物1には直接的には記載されていず、また刊行物1には「画素値」なる概念についての具体的な記載が見られない点で相違するが、作製しようとする回折格子パターンが目標として予め存在する場合、前記パターンは、潜在的に、画素と画素パターンとが、画素値を介して対応付けられていると言わざるを得ず、その目標に応じて、ドットを配置すべき位置で回折格子を描画することは、当業者にとっては、至極当然の処理に過ぎないこと、
(2.3)
刊行物1の【0028】〜【0029】段落には、左方向、正面方向、右方向からそれぞれ視覚されるべき「T」「O」「P」の画像(=モチーフ)を、それぞれの方向に対応するように、回折格子の方向Ωを決定した上で、「左下がりの回折格子」「水平な回折格子」「右下がりの回折格子」からなるドット(=画素パターン)を所定位置に配置するプロセスが記載されており、画像「T」「O」「P」の選定は要件(c)に他ならず、回折格子の方向Ωの選定は要件(d)に他ならず、必然的に要件(e)が行われることになるので、本件第1発明は、刊行物1記載の発明に基づき当業者が容易に発明することができたものである。

(3)特許権者の主張
(3.1)
本願のホログラムは「疑似ホログラム」と言うべきものであり、再生時に三次元立体像を得るものではなく、三次元立体像の再生を意図した従来の一般的なホログラム記録媒体とは全く異なる技術思想にようるものである。
(3.2)
本件第1発明の(b)は既製品としてのタイルを予め複数種類用意しておくこと、(c)は所定範囲内の画素値をもった画素配列からなる画像情報を用意すること、(d)はタイルと画像情報との対応関係を定義すること、(e)は対応関係に基づいて個々の画素位置にタイルのいずれかを配置すること、を意味する。
(3.3)
刊行物1記載の発明は像の飛びのない立体的(3次元的)な像を表現することを最も主要な特徴としており、本件第1発明とは全く異なる技術思想をベースとしている。
(3.4)
刊行物1記載の発明は、個々のドット(画素)内に配置する格子線の向きΩとピッチdは照明光、回折光の角度、および波長に基づいて演算によって求める。
(3.5)
異議申立人は刊行物1には「回折格子のピッチ、方向を適宜選択すること」、「画素パターンを用意すること」が開示されているとしているが、演算によって求めるものであるので、結局は、刊行物1には(b)(c)(d)(e)は何ひとつ開示されていない。

(4)当審の判断
本件第1発明は三次元立体像の再生を意図したものではなく、従来の一般的なホログラム記録媒体とは異なるものであると、特許権者は主張するが、当該技術分野において、平面に描かれた図形の領域を区分し、区分した領域にそれぞれ異なる方向あるいはピッチを有する回折格子を作製することにより特殊な表示効果を有するようにした光学素子は、以下に示すように本件出願時において広く知られており、周知のものである。
本件特許権者の出願による実願昭58-25428号(実開昭59-131900号)のマイクロフィルム(以下、「周知文献1」という。)には、平面を区画し、ピッチ、方向、傾きを選択した回折格子を配置することにより、効果的な光学的装飾を行うことができる発明が開示されている。
米国第4568141号特許明細書(1986年2月4日発行、以下、「周知文献2」という。)には、ピッチ、方向、傾きを選択した回折格子を平面上に配置することにより見る角度により色彩が動的に変化すること、特定図形に対し、動的変化を意図し、それに対応して予め定めたピッチ、方向を有する回折格子を配置すること(Fig.5、Fig.6およびその説明参照)が記載されている。
特開平2-72320号公報(以下、「周知文献3」という。)には、平面を微小なドットに分割し、各ドット内に回折格子を作製すること、各ドット内の回折格子としてピッチ、方向が異なった回折格子とすることにより、ディスプレイの像を観察者の見る位置によって変化させることができること(第5図およびその説明参照)が記載されている。
さらには、特開平2-165987号公報(以下、「周知文献4」という。)には、図柄を画素に分割し、図柄に対応させて画素に回折格子を配置することが記載されている。
とするならば、本件出願時の技術水準として、平面図形のディスプレイとしては、例えば周知文献2におけるFig.5に示された矢印を動的表示すること、に応じて平面図形を分割した各部に所定の回折格子を割り当てるという技術思想は知られていた。
そして、刊行物1の【0028】〜【0029】段落には、回折格子により所定のモチーフを表現するディスプレイが記載されている。
また、刊行物1では、特に、その図6において、「T」、「O」、「P」からなるモチーフを構成する画素に対し、「T」の一部であること、「O」の一部であること、「P」の一部であること、いずれでもないこと、の4種類の特性値を設定し、各特性値に対し、図4の回折格子を縦3分割したうちの異議申立人の言う「左下がりの回折格子」「水平な回折格子」「右下がりの回折格子」(刊行物1の記載では、【0027】段落における「r1」、「r2」、「r3」)の特定の回折格子を割り当てるか、回折格子を割り当てないか、とする実施例が開示されている。
特許権者は刊行物1記載の発明は、個々のドット(画素)内に配置する格子線の向きΩとピッチdは照明光、回折光の角度、および波長に基づいて演算によって求めるものであると主張するが、刊行物1の【0025】段落には「曲線を一定のピッチで平行移動した構成では、常に上式を満たしているため、回折光が水平方向に移動する視点に、常に同じ色の波長を観察できるような回折格子の構成になっている。・・・よって、傾きΩ1からΩ2まで変化する曲線を、ピッチd’で平行移動したグレーティングを用いればよい。」なる記載があり、「曲線を一定のピッチで平行移動した構成」の回折格子を採用することが開示されている。

とするならば、たとえ、特許権者が主張するような三次元立体像の再生を意図した発明が刊行物1に記載されていたとしても、
(a)回折格子により所定のモチーフが表現されたディスプレイを作成する方法であって、
(b)所定の曲線を一定のピッチで平行移動して作製した回折格子を複数用意する第1の段階と、
(c)それぞれ所定の特性値をもった複数の画素を平面上の所定位置に定義することにより所定のモチーフを表現した、モチーフ画素情報を用意する第2の段階と、
(d)前記モチーフ画素情報において定義された各画素と、前記第1の段階で用意した各回折格子との対応関係を、各画素についての特性値を参照することにより定義する第3の段階と、
(e)前記対応関係に基づいて、前記各回折格子を所定の画素位置に配置する第4の段階と、
(f)を有することを特徴とするディスプレイの作成方法。
の発明(以下、「引用発明」という。)が刊行物1に記載されていることになる。
そして、上記引用発明における「ディスプレイ」は回折格子により構成されているので本件第1発明における「ホログラム記録媒体」ということができ、引用発明における「特性値」、「各回折格子」は、本件第1発明における「画素値」、「画素パターン」にそれぞれ相当するので、両者は、本件第1発明が複数用意する回折格子が「線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えること」で規定されているのに対して、引用発明では「所定の曲線を一定のピッチで平行移動して作製した」回折格子である点でのみ相違する。

しかしながら、刊行物1の【0039】段落には、「回折格子(グレーティング)が、平行な曲線によって構成されているので、水平方向に広がりのある回折光を作ることができる。このため、像に飛びがなく、しかも水平方向に視点を移動した時に色の変化しない立体像を、再現よく観察することができる、すなわち、従来では、回折格子(グレーティング)が、平行な直線によって構成されているため、回折光は、ある一定の波長の光に対しては光線となり、水平方向に広がりのある光を作り出すことができない。」なる記載があり、この記載からは特許権者が主張するように刊行物1には三次元立体像の再生を意図していることが読み取れるとともに、回折格子が従来は曲線ではなく、直線により構成されていたことも記載されている。
とするならば、引用発明における「所定の曲線を一定のピッチで平行移動して作製した回折格子」に替えて、「所定の角度を有する直線を一定のピッチで平行移動して作製した回折格子」とすることに何ら困難性はなく、それによる効果は周知文献1ないし4の記載から予測することができ、格別のものではない。
したがって、本件第1発明は、刊行物1に記載の発明および周知技術に基づき、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5-2.本件第2発明について
(1)本件第2発明
本件第2発明は、本件第1発明における第2の段階で、複数の異なるモチーフについてのモチーフ画素情報をそれぞれ用意し、第3の段階で、異なるモチーフに所属する画素については、異なる画素パターンを対応させ、複数のモチーフを同一平面上に重複させて表現するようにしたことを特徴とするものである。

(2)取消理由および特許権者の意見
本件第2発明における複数の異なるモチーフは刊行物1記載の発明における「T」、「O」、「P」に相当するので、刊行物1記載の発明により容易に想到し得たものであるとする異議申立による取消理由に対し、特許権者は「確かに、観察方向を変えることにより、異なるモチーフが観察可能なホログラム記録媒体、という点のみに着目すれば、本願の図22に示されているホログラム記録媒体と、甲第1号証の図7に示されている媒体とは、共通の特徴を有している。しかしながら、本願の図22に示されているホログラム記録媒体により再生されるモチーフ「A」や「B」は、立体視が全く生じない単なる二次元画像である。もっとも、回折格子特有の光学的な効果により、キラキラと輝いて見えるモチーフとして把握されることになる。これに対して、甲第1号証の図7に示されている媒体により再生されるモチーフ「T」、「O」、「P」は、立体視が生じる三次元画像になる。」(平成17年1月7日付け意見書第12頁第8〜15行)と主張した。

(3)当審の判断
刊行物1には「T」、「O」、「P」の3つの異なる図形を、それぞれに異なる図形に対応した異なる回折格子により同一平面内上に重複させて表示したものが開示されている。そして、その効果として、左方向では「T」、真ん中では「O」、右方向では「P」を観察できる、と記載されている(【0029】段落)ので、刊行物1には見る方向によって異なる画像を見ることができる旨の記載があるものであるし、見たものが立体視を生じる三次元画像となるか否かは表示するモチーフに依存(具体的には右眼で見る像と左眼で見る像が視差によって生じる画像であるか否か)するものであり、「モチーフ「T」、「O」、「P」は、立体視が生じる三次元画像になる。」とする特許権者の意見は採用できない。
なお、刊行物1に開示された例では一つの図形を表す回折格子は複数ではないが、平面上の図形を表現するために複数の異なる回折格子を使用することは先に周知文献により示したように当業者には周知の構成であり、採用することに何ら困難性はない。
そして、同じ回折格子が異なるモチーフに対して使用すればモチーフ間の区別が付かなくなることから、異なるモチーフに所属する画素については、異なる画素パターンを対応させることも、当業者が当然採用するものである。
したがって、本件第2発明は、刊行物1に記載の発明および周知技術に基づき、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5-3.本件第3発明について
(1)本件第3発明
本件第3発明は、本件第1発明における第1の段階で、互いに近似したパラメータをもつ複数の画素パターンを1グループとして、複数グループの画素パターンを用意し、第2の段階で、複数の異なるモチーフについてのモチーフ画素情報をそれぞれ用意し、第3の段階で、異なるモチーフに所属する画素については、異なるグループに属する画素パターンを対応させ、複数のモチーフを同一平面上に重複させて表現するようにしたことを特徴とするホログラム記録媒体の作成方法、であり、本件第2発明における異なるモチーフである各モチーフに所属する画素に対応させる画素パターンを異なるモチーフ毎に「互いに近似したパラメータをもつ」ものとする、と見ることもできる。

(2)取消理由および特許権者の意見
異議申立による取消理由は、本件第2発明に対する異議申立理由に加え、単なる設計事項に過ぎないとするものであるのに対し、特許権者は本件第2発明と刊行物1記載の発明との相違点を主張する以外の本件第3発明についての刊行物1記載の発明との相違点の主張は行っていない。

(3)当審の判断
本件第3発明も、先に周知技術として示した文献に記載されているものと同じく、回折格子により回折される光によりモチーフあるいは絵柄、図形を認識させることを目的としている。
そして、刊行物1には、異なるモチーフ「T」、「O」、「P」に対応した異なる回折格子を使用することにより、異なる方向から見た場合に、異なるモチーフ「T」、「O」、「P」を認識できることが開示されている。
とするならば、異なる方向から見た場合に、それぞれの方向に対応するモチーフを認識することができるためには、そのモチーフを構成する回折格子が同じ方向に光を回折するように構成しなければならないことは自明であるし、異なるモチーフに対応する回折格子としては、回折光の方向が近似しているようにすることは当業者が実施時に当然採用するものであり、そのためには、モチーフ毎に近似したパラメータを持つ回折格子とすることは当然採用する構成である。
したがって、本件第3発明は、刊行物1に記載の発明および周知技術に基づき、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5-4.本件第4発明について
(1)本件第4発明
本件第4発明を、
(a)回折格子により所定のモチーフが表現されたホログラム記録媒体を作成する方法であって、
(b)所定線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることによって複数用意する第1の段階と、
(c)それぞれ所定の画素値をもった複数の画素をM行N列の配列上に定義することにより所定のモチーフを表現したモチーフ画素情報を、複数の異なるモチーフについてそれぞれ用意する第2の段階と、
(d)m行n列に配列された副画素から構成される単位副画素配列を定義し、この単位副画素配列内の各副画素位置にどのモチーフの画素を配置するかを定めた副画素構成情報を用意する第3の段階と、
(e)前記モチーフ画素情報において定義された各画素と、前記第1の段階で用意した各画素パターンとの対応関係を、各画素についての画素値を参照することにより定義する第4の段階と、
(f)前記単位副画素配列自身をM行N列に配列することにより、(m×M)行(n×N)列の副画素配列を定義し、前記対応関係に基づいて、各モチーフごとに各単位副画素配列に対応する画素パターンを抽出し、前記副画素構成情報に基づいて、抽出された画素パターンを所定の副画素位置に配置する第5の段階と、
(g)を有することを特徴とするホログラム記録媒体の作成方法。
と分節する。

(2)取消理由および特許権者の意見
異議申立による取消理由は、刊行物1の図6には、モチーフ「T」、「O」、「P」は「5行×5列」の配列上で定義されたモチーフ画素情報からなり、その各画素に対し、縦3列に分割したもの、即ち「1行×3列」の副画素に相当するものを定義し、回折格子を配置しているので、刊行物1により本件第4発明は容易に発明することができたものである、とするものであり、それに対し、特許権者は、「なるほど、1つの画素を複数の副画素に分割し、個々の副画素ごとに異なるモチーフを記録したホログラム記録媒体、という観点から見ると、本件請求項4および5に係る発明によって最終的に作製されるプロダクトと、甲第1号証に係る発明によって最終的に作製されるプロダクトとは共通するかもしれない。しかしながら、両者の共通点はそれだけであり、作成されたプロダクトに類似点があることを理由として、本発明の進歩性を否定することはできない。」(平成17年1月7日付け意見書第13頁第17〜22行)との主張を行った。

(3)当審の判断
本件第4発明の分節(a)〜(f)における分節(a)、(b)、(g)は本件第1発明の分節(a)、(b)、(f)と同一であるので、相違点である分節(c)〜(f)について検討する。
刊行物1の図6における、5行5列の配列上に定義された複数のモチーフ「T」、「O」、「P」を用意することは、分節(c)の意味する内容であるM行N行の配列上に定義された複数のモチーフを用意することに相当する。
刊行物1の図6における、モチーフを表現する画素を縦3列に分け、左列、中央列、右列にそれぞれ、モチーフ「T」、「O」、「P」を表現する情報を対応させ、各回折格子を配することは、分節(d)、(e)および(f)において、m=1、n=3として、各副画素位置にどのモチーフの画素を配置するかを定めた副画素構成情報を用意し、対応させ、配置すること、に相当する。
なお、刊行物1の図6においては、各モチーフ「T」、「O」、「P」にはそれぞれ1種類の回折格子を対応させているが、それぞれのモチーフに複数種の回折格子を対応させることは、先に本件第2発明に対する当審の判断で示したように、当業者には周知に構成であり、格別のものではない。
したがて、特許権者が主張するように最終的に作製されるプロダクトが類似するというものではなく、本件第4発明は、その方法としての構成も刊行物1に記載の発明および周知技術に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5-5.本件第5発明について
(1)本件第5発明
本件第5発明の意味する内容は、モチーフを表現する画素(M×N)のうちの画素(m×n)を副画素と設定したものであり、本件第4発明とは副画素の大きさが異なるものである。

(2)取消理由および特許権者の意見
異議申立による取消理由は、本件第4発明との相違点は単位副画素配列を、(m×M)行(n×N)行とするか、(M/m)行(N/n)列とするかであり、単なる設計事項に過ぎないとするものであり、それに対し、特許権者は、本件第5発明に特有の効果の主張を行っていない。

(3)当審の判断
本件第5発明は、本件第4発明においては、単位副画素配列m×nを、モチーフの画素配列M×Nの各画素を分割して埋め込むか、モチーフの画素のうちのm×n個を使用するかで相違するが、モチーフと回折格子との対応については本件第4発明における対応と同じであり、それによる格別の効果が記載ないしは主張されているものではないので、設計的な事項である。
したがって、本件第5発明は、刊行物1に記載の発明および周知技術に基づき、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5-6.本件第6発明について
(1)本件第6発明
本件第6発明は、分節すれば、
(a)請求項1〜5のいずれかに記載のホログラム記録媒体の作成方法において、
(b)画素としての全占有領域と、この全占有領域の中で格子線を配置する対象となった閉領域と、の面積比がそれぞれ異なる複数の画素パターンを用意し、
(c)各画素位置にはその画素のもつ画素値に応じた面積比をもつ画素パターンを対応させることにより、階調をもったモチーフを表現するようにしたこと
(d)を特徴とするホログラム記録媒体の作成方法。
である。

(2)取消理由および特許権者の意見
異議申立による取消理由は、刊行物2には、画素としての占有領域中における回折格子が占有する面積比を異ならせることにより、階調を表現することが記載されているので、刊行物2記載の発明を刊行物1記載の発明に適用することは当業者が容易に推考し得るものであるとする異議申立による取消理由に対し、特許権者は「なるほど、「回折格子を実際に形成する閉領域の面積に応じて階調表現を行う」という技術は、甲第2号証に開示されているかもしれないが、本件請求項6は、請求項1〜5を引用する形式で記載された従属項であり、引用対象となった請求項に係る発明の特徴をすべて含むものである。よって、請求項6に記述されている文言で特定される事項が、甲第2号証に開示されていたとしても、それをもって請求項6に係る発明の進歩性を否定することはできない。」(平成17年1月7日付け意見書第13頁第24〜29行)との主張を行った。

(3)当審の判断
分節(a)では「請求項1〜5のいずれかに記載のホログラム記録媒体の作製方法において、」とされているので、「請求項1記載のホログラム記録媒体の作製方法」に限定すると、先の「5.1本件第1発明について」の検討において、「請求項1記載のホログラム記録媒体の作製方法」である本件第1発明は「刊行物1に記載の発明および周知技術に基づき、当業者が容易に想到し得たものである。」との判断を行った。
したがって、分節(b)、(c)による構成を請求項1記載のホログラム記録媒体の作製方法に適用することに進歩性があるか否かを検討する。
分節(b)、(c)による構成は刊行物2(甲第2号証)に開示されていることは特許権者も認めている。そして、刊行物2に記載の発明は「回折格子パターンを有するディスプレイ」(記載事項2a)に関する発明であり、刊行物1に記載の発明と同一技術分野に属するものであるし、刊行物2記載の発明を刊行物1に記載の発明に適用することを阻害する要因を見いだすことができない。
したがって、本件第6発明は、刊行物1および2に記載の発明および周知技術に基づき、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5-7.本件第7発明について
(1)本件第7発明
本件第7発明は、分節すると、
(a)回折格子により所定のモチーフが表現されたホログラム記録媒体を作成する装置であって、
(b)所定線幅の格子線を所定ピッチおよび所定角度で所定の閉領域内に配置した画素パターンを、線幅、ピッチ、角度という3つのパラメータのうちの少なくとも1つを変えることによって複数用意した画素パターンファイルを保持する手段と、
(c)それぞれ所定の画素値をもった複数の画素を平面上の所定位置に定義することにより所定のモチーフを表現した、モチーフ画素情報ファイルを入力する手段と、
(d)前記モチーフ画素情報ファイルにおいて定義された各画素と、前記画素パターンファイル内に用意された各画素パターンとの対応関係を、各画素についての画素値を参照することにより定義した対応関係情報ファイルを作成する手段と、
(e)前記対応関係情報ファイルに基づいて、前記画素パターンを所定の画素位置に配置した画像データを作成する手段と、
(f)前記画像データに基づいて、所定の記録媒体にホログラムパターンを形成する手段と、
(g)m行n列に配列された副画素から構成される単位副画素配列について、この単位副画素配列内の各副画素位置にどのモチーフの画素を配列するかを定めた副画素構成情報ファイルを保持する手段と、を備え、
(h)前記画像データを作成する手段が、前記副画素構成情報ファイルに基づいて画素パターンの配置処理を行うこと
(i)を特徴とするホログラム記録媒体の作成装置。
となるものである。

(2)取消理由および特許権者の意見
本件第7発明は、(他の請求項に記載の発明の)「作成方法」に係る請求項を、「作成装置」に書き換えただけであり、その処理動作は、刊行物1に記載されたものと何ら変わらない、とする取消理由に対し、特許権者は「本件請求項1に係る主張と同様に、根拠のないものである。」との主張のみを行った。

(3)当審の判断
分節(a)〜(c)による構成は本件第4発明における分節(a)〜(c)における方法あるいは段階を装置あるいは手段により表現したものに過ぎない。
分節(d)の構成は本件第4発明における分節(e)を手段として表現したものに過ぎない。
分節(g)の構成は本件第4発明における分節(d)を手段として表現したものに過ぎない。
分節(e)、(f)、(h)におけるホログラムパターンのためのデータを作成する手段、所定の記録媒体にホログラムパターンを形成するという手段を有するとするものであるが、刊行物1の【0003】の記載および【図8】にはX-Yステージ上の乾板に電子ビームにより回折格子パターンを描くことが記載されているし、一般にホログラム記録媒体の作成装置においては、ホログラムパターンのためのデータを作成し、記録媒体にホログラムパターンを形成するという手段を有することは当然の構成であり、格別のものではない。
したがって、本件第7発明は、刊行物1に記載の発明および周知技術に基づき、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.まとめ
以上のとおりであるから、本件請求項1ないし7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法の一部を改正する法律の施行に伴う経過処置を定める政令(平成7年制令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-12-16 
出願番号 特願平5-148681
審決分類 P 1 651・ 121- Z (G03H)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山村 浩  
特許庁審判長 上野 信
特許庁審判官 鹿股 俊雄
前川 慎喜
登録日 2002-12-20 
登録番号 特許第3383004号(P3383004)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 ホログラム記録媒体の作成方法および作成装置  
代理人 志村 浩  

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