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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B |
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管理番号 | 1132186 |
審判番号 | 不服2004-798 |
総通号数 | 76 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-07-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-01-09 |
確定日 | 2006-02-27 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第346098号「地図表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 7月21日出願公開、特開平 7-181891〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明の認定 本願は平成5年12月21日の出願であって、平成15年12月10日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成16年1月9日付けで本件審判請求がされたものである。 本願においては、出願後の平成12年12月21日付け、平成15年4月15日付け及び平成16年2月9日付けで明細書についての手続補正がされたが、平成16年2月9日付けの手続補正は当審において却下され、この補正の却下の決定は確定した。 したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年4月15日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。 「入力された文字又は数値情報に対応する地図データを検索して表示手段に地図を表示する地図表示装置において、 上記文字又は数値情報を入力するデータ入力手段と、 上記表示手段に表示すべき上記地図の表示中心座標であって当該地図上の緯度及び経度を表す第1のデータと、それぞれ所定の縮尺で縮小された地図を表す第2のデータとをそれぞれ有する複数の上記地図データを、上記文字又は数値情報に対応させて記憶する地図データ記憶手段と、 上記文字又は数値情報が入力されたとき、当該文字又は数値情報に対応する上記地図データを上記地図データ記憶手段から検索する地図データ検索手段と、 上記地図データ検索手段から検索した上記地図データを上記表示手段に表示する地図表示手段と を具え、 上記地図表示手段は、上記地図データ検索手段から検索された上記地図データを用いて、上記第1のデータによつて、当該表示すべき地図上の上記緯度及び経度を上記表示手段の表示中心座標に位置合せした状態において、上記第2のデータによつて、上記所定の縮尺で縮小された地図を上記表示手段に表示する ことを特徴とする地図表示装置。」 第2 当審の判断 1.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-251284号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア〜オの記載が図示とともにある。 ア.「道路地図を区分して記憶している道路地図データ記憶手段(A)と、車両位置を検出する車両位置検出手段(B)と、車両位置検出手段(B)からの車両位置情報に基づいて車両の現在位置を、道路地図データ記憶手段(A)に記憶された車両周辺の地図とともに表示させる表示制御手段(C)とを備える車載ナビゲーション装置において、表示したい地図の番号を入力する番号入力手段(D)と、番号入力手段(D)により入力された番号に応じた地図データを選択し表示制御手段(C)に供給する地図選択手段(E)とを有し、上記番号は当該地図に対応する地域の市外局番であることを特徴とする、車載ナビゲーション装置に用いる地図選択表示装置。」(【請求項1】) イ.「目的地を含む地図に対応する番号等を検索するには、時間と手間がかかり、特に車両走行中に行えば走行に専念できず危険であるという問題がある。一方、運転者が目的地を目指す場合、目的地にある訪問先の電話番号が分かっていることが多い。」(段落【0005】) ウ.「道路地図データベース8は、半導体メモリ、カセットテープ、CD-ROM、DAT等で構成され、道路地図(高速自動車国道、自動車専用道路、一般国道、主要地方道、一般都道府県道、指定都市の一般市道、その他の生活道路、ならびに鉄道、川、有名施設、等高線等を含む。)をメッシュ状に分割し、各メッシュ単位でノードとリンクとの組み合わせからなる道路地図データとして記憶しているものである。ここに、各メッシュは階層構造をなしており、最も大きなメッシュは、市外局番に対応する地域とほぼ合致している。」(段落【0013】) エ.「出力コントローラは、キー入力ボード2から入力される市外局番を読み取ると下表に例示する対応テーブルに基づき地図メッシュの座標を特定し、道路地図データベース8から該当する地図データを読出して液晶ディスプレイ3に表示させる機能を有する。」(段落【0014】) オ.【表1】には、市外局番、地名及び地図の座標(標準正規化座標)の対応関係として、06,大阪、523504(2500,3500)及び075、京都、523501(5000,4500)と記載されている。(段落【0015】) 2.引用例記載の発明の認定 引用例の記載オにおいて、地名大阪及び京都の標準正規化座標は、括弧書き中に2つの数値がコンマを挟んで並記されており、この表記法は2次元座標の表記法であり、地図の座標であることを考慮すれば、緯度及び経度に相当する座標である(絶対緯度,絶対経度とは限らない。)ことが明らかである。 引用例の記載ウにおいて、「各メッシュは階層構造をなしており、最も大きなメッシュは、市外局番に対応する地域とほぼ合致している。」とある以上、半導体メモリ、カセットテープ、CD-ROM、DAT等で構成された道路地図データベース(記載アの「道路地図データ記憶手段」)には、表示範囲が市外局番に対応する地域とほぼ合致するような縮尺の地図データが記憶されている。 したがって、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。 「道路地図データ記憶手段と、車両位置を検出する車両位置検出手段と、車両位置検出手段からの車両位置情報に基づいて車両の現在位置を、道路地図データ記憶手段に記憶された車両周辺の地図とともに表示させる表示制御手段とを備える車載ナビゲーション装置において、 前記道路地図データは道路地図をメッシュ状に分割したものであり、各メッシュは階層構造をなしており、最も大きなメッシュは市外局番に対応する地域とほぼ合致する縮尺となるように構成されており、 番号入力手段並びに市外局番、地名及び地図の緯度・経度座標の対応関係を記憶した対応テーブルを有し、前記番号入力手段によって入力された市外局番を読み取ると前記対応テーブルに基づき地図メッシュの緯度・経度座標を特定し、前記道路地図データベースから該当する地図データを読出して液晶ディスプレイに表示させる機能を有する地図選択表示装置。」(以下「引用発明」という。) 3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定 引用発明の「市外局番」及び「番号入力手段」は、本願発明の「文字又は数値情報」及び「データ入力手段」にそれぞれ相当する。 引用発明においては、「対応テーブル」には最も大きなメッシュの「地図の緯度・経度座標」を記憶しているのであるが、1つのメッシュ内の地点の緯度・経度座標は単一ではないから、メッシュを代表する地点の緯度・経度座標を記憶していると解すべきである。したがって、引用発明において「対応テーブル」に記憶されている「地図の緯度・経度座標」は、本願発明の「地図上の緯度及び経度を表す第1のデータ」に相当し、それが地図の代表座標である点で本願発明と引用発明は一致する。引用発明において、最も大きなメッシュの地図データは「所定の縮尺で縮小された地図を表す第2のデータ」に相当する。ところで、本願発明の「地図データ記憶手段」は「第1のデータと・・・第2のデータとをそれぞれ有する複数の上記地図データを、上記文字又は数値情報に対応させて記憶する」とされており、単一の記憶手段に第1のデータ及び第2のデータを文字又は数値情報に対応させて記憶していることを要件とするのか、それとも地図表示装置全体として、第1のデータ及び第2のデータを文字又は数値情報に対応させて記憶することを要件とするのかは、【請求項1】の記載のみからは明らかでない。そこで、発明の詳細な説明を参酌すると、出願当初から一貫して「CD-ROM内に記録された地図をデイスプレイ上に表示する。この実施例の場合これに加えて、数字キーによりキー入力される目的地の電話番号TNに基づいてデータ検索RAM中に記録された電話番号データTDと緯度及び経度データPDとの対応データベースを検索し、その電話番号TNに応じた緯度及び経度データPDから検索されるCD-ROM内の地図をデイスプレイ上に表示」(段落【0010】)等の記載があり、第1のデータ及びそれと文字若しくは数値情報の対応関係はデータ検索RAMに、第2データはCD-ROMに記憶される旨記載されているから、単一の記憶手段に第1のデータ及び第2のデータを文字又は数値情報に対応させて記憶しているものに限られず、地図表示装置全体として、第1のデータ及び第2のデータを文字又は数値情報に対応させて記憶しておればよい(第2のデータと文字又は数値情報の対応については、直接対応関係が記憶されているものに限られず、第1のデータを介して第2のデータと文字又は数値情報が対応づけられていてもよい。)と解さねばならない。そうであれば、引用発明においても、第1のデータ及び第2のデータを文字又は数値情報に対応させて記憶していることは明らかである。 引用発明は「番号入力手段によって入力された市外局番を読み取ると前記対応テーブルに基づき地図メッシュの緯度・経度座標を特定し、前記道路地図データベースから該当する地図データを読出して液晶ディスプレイに表示させる機能を有する」のだから、「文字又は数値情報が入力されたとき、当該文字又は数値情報に対応する上記地図データを上記地図データ記憶手段から検索する地図データ検索手段」を有することは明らかである。 引用発明が「地図データ検索手段から検索した地図データを表示手段に表示する地図表示手段」を具えること、及び「地図データ検索手段から検索された地図データを用いて、第2のデータによつて、所定の縮尺で縮小された地図を上記表示手段に表示する」ことも明らかである。 そして、引用発明の「地図選択表示装置」を「地図表示装置」ということもできる。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「入力された文字又は数値情報に対応する地図データを検索して表示手段に地図を表示する地図表示装置において、 上記文字又は数値情報を入力するデータ入力手段と、 上記表示手段に表示すべき上記地図の代表座標であって当該地図上の緯度及び経度を表す第1のデータと、それぞれ所定の縮尺で縮小された地図を表す第2のデータとをそれぞれ有する複数の上記地図データを、上記文字又は数値情報に対応させて記憶する地図データ記憶手段と、 上記文字又は数値情報が入力されたとき、当該文字又は数値情報に対応する上記地図データを上記地図データ記憶手段から検索する地図データ検索手段と、 上記地図データ検索手段から検索した上記地図データを上記表示手段に表示する地図表示手段と を具え、 上記地図表示手段は、上記地図データ検索手段から検索された上記地図データを用いて、上記第2のデータによつて、上記所定の縮尺で縮小された地図を上記表示手段に表示する ことを特徴とする地図表示装置。」 〈相違点〉代表座標につき、本願発明では「地図の表示中心座標」としており、第2のデータによつて地図を表示手段に表示するに当たり「上記第1のデータによつて、当該表示すべき地図上の上記緯度及び経度を上記表示手段の表示中心座標に位置合せした状態において、」と特定しているのに対し、引用発明はかかる限定を有さない点。 4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断 引用発明では、階層構造をなす地図メッシュのうち、最も大きなメッシュが市外局番に対応して読み出されるのであり、そのようなメッシュは広域地図であり、明記はないものの、メッシュ全体を表示手段に表示すると解するのが自然であり、それ以外の解釈が可能であるとしても、メッシュ全体を表示手段に表示することは設計事項である。その場合、代表座標については、隅部であっても中心であっても一向に差し支えなく、要は適当な約束事をしておけばよいだけでのことであり、メッシュを代表する位置として中心を選ぶこと、すなわち代表座標を地図の表示中心座標とすることは設計事項に属する。 そして、メッシュ全体を表示手段に表示するのであれば、メッシュ中心は表示手段の表示中心に位置することになり、代表座標が表示中心座標であれば、「上記第1のデータによつて、当該表示すべき地図上の上記緯度及び経度を上記表示手段の表示中心座標に位置合せした状態において、」第2のデータによつて地図を表示手段に表示することになるのは必然的結果である。 以上のとおり、相違点に係る本願発明の構成は設計事項程度であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第3 むすび 本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-01-04 |
結審通知日 | 2006-01-05 |
審決日 | 2006-01-17 |
出願番号 | 特願平5-346098 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松川 直樹 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
長島 和子 藤本 義仁 |
発明の名称 | 地図表示装置 |
代理人 | 田辺 恵基 |