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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1132264
審判番号 不服2003-15268  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-07 
確定日 2006-03-02 
事件の表示 平成 6年特許願第133975号「チェンジャー機器」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年12月 8日出願公開、特開平 7-320383〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許願(以下、「本願」という。)は、平成6年5月25日に出願されたものである。そして、平成15年6月30日付けで、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨の査定がなされ、平成15年8月7日付けで、特許法第121条第1項に基づき審判請求がなされるとともに、同年15年9月4日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


2.平成15年9月4日付け手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成15年9月4日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕
(1)補正内容
上記補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明に関してのもので、特許請求の範囲においては、補正前、
「【請求項1】記録媒体を複数個、それぞれ所定のストック位置に収納する
ストッカ手段と、
記録媒体から情報を読み出す再生手段と、
記録媒体が、ストック位置、記録媒体の再生位置、記録媒体の挿脱位置の間で搬送されるように搬送動作を行なう搬送手段と、
前記挿脱位置から機器内部を遮蔽しているとともに、前記挿脱位置にかかる搬送動作の際に開放される遮蔽手段と、
前記遮蔽手段の開放状態を検出する検出手段と、
上記ストッカ手段から上記搬送手段に記録媒体が受け渡された後、上記搬送手段により記録媒体が上記再生位置又は上記挿脱位置へ搬送される際、上記検出手段により上記遮蔽手段の開放状態が検出される場合には、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を停止させる搬送制御手段と
を備えるチェンジャー装置。
【請求項2】複数の記録媒体が収納されるストッカ手段と、
記録媒体の再生を実行する再生手段と、
上記ストッカ手段との間で記録媒体の受け渡しを実行するストック位置と記録媒体の再生位置と記録媒体の挿脱位置との間で記録媒体を搬送する搬送手段と、
上記挿脱位置から機器内部を遮蔽しているとともに、上記搬送手段が挿脱位置に移動する際、開放される遮蔽手段と、
上記遮蔽手段の開放状態を検出する検出手段と、
上記搬送手段により記録媒体が上記再生位置又は上記挿脱位置から上記ストック位置へ搬送される際、上記検出手段により上記遮蔽手段の開放状態が検出される場合には、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を停止させる搬送制御手段と
を備えるチェンジャー装置。
【請求項3】上記搬送制御手段は、上記遮断手段の開放状態の検出により上記積層方向への移動を停止させている際、上記検出手段により上記遮蔽手段が閉じられたことが検出された場合には上記搬送手段の停止状態を解除し、搬送動作を再開させることを特徴とする請求項1又は2記載のチェンジャー装置。」
としていたものを、補正後、
「【請求項1】複数の記録媒体が収納されるストッカ部と、
記録媒体の再生を実行する再生手段と、
上記ストッカ部との間で記録媒体の受け渡しを実行するストッカ位置と記録媒体の再生位置と機器外部に表出した記録媒体の挿脱位置との間で記録媒体を搬送する搬送手段と、
上記挿脱位置から機器内部を遮蔽しているとともに、上記搬送手段が挿脱位置に移動する際、開放される遮蔽手段と、
上記遮蔽手段の開放状態を検出する検出手段と、
上記ストッカ部から上記搬送手段に記録媒体が受け渡された後、上記搬送手段により記録媒体が上記再生位置又は上記挿脱位置へ搬送される際、上記搬送手段が機器内部にて移動するときに上記検出手段により上記遮蔽手段の開放状態が検出される場合には、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を停止させ、上記搬送手段が機器外部に表出するときに上記検出手段により上記遮蔽手段の開放状態が検出される場合には、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を継続させる搬送制御手段と
を備えるチェンジャー機器。
【請求項2】複数の記録媒体が収納されるストッカ部と、
記録媒体の再生を実行する再生手段と、
上記ストッカ部との間で記録媒体の受け渡しを実行するストッカ位置と記録媒体の再生位置と機器外部に表出した記録媒体の挿脱位置との間で記録媒体を搬送する搬送手段と、
上記挿脱位置から機器内部を遮蔽しているとともに、上記搬送手段が挿脱位置に移動する際、開放される遮蔽手段と、
上記遮蔽手段の開放状態を検出する検出手段と、
上記搬送手段により記録媒体が上記再生位置又は上記挿脱位置から上記ストッカ位置又は上記再生位置へ搬送される際、上記搬送手段が機器外部から機器内部へ移動するときに上記検出手段により上記遮蔽手段の開放状態が検出される場合には、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を継続させ、上記搬送手段が機器内部にて移動するときに上記検出手段により上記遮蔽手段の開放状態が検出される場合には、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を停止させる搬送制御手段と
を備えるチェンジャー機器。
【請求項3】上記搬送制御手段は、上記遮断手段の開放状態の検出により機器内部における上記搬送手段の上記複数の記録媒体が収納される積層方向への移動を停止させている際、上記検出手段により上記遮蔽手段が閉じられたことが検出された場合には上記搬送手段の停止状態を解除し、搬送動作を再開させることを特徴とする請求項1又は2記載のチェンジャー機器。」
とするものである。(なお、上記下線部分を参照のこと。)

(2)補正の適否
(2-1)上記請求項1に係る発明において、補正後の「上記搬送手段が機器内部にて移動するとき」に「搬送手段による記録媒体の搬送動作を停止」なる事項であるが、審判請求理由で補正の根拠箇所である、明細書の【0098】〜【0106】等を参酌すると、垂直搬送動作中、昇降動作中および水平方向搬送中との記載のものであり、上記の、特に「機器内部にて移動」の直接的記載はない。そして、上記事項を文言どおりに解釈すれば、挿脱位置から機器の内側は、内部であって、全て含まれるようになるもので、明細書で記載の「【0102】・・・水平方向搬出中・・・動作状態を継続」と対応するものでない。
また、上記下線部分の「機器外部に表出するときに」との構成であるが、明細書にはこのような表現はなく、「【0102】これ以外の動作状態、例えば再生動作中や水平方向の搬送動作中であれば、蓋111はあけられても特に危険は無く、また当然プレイ位置からイジェクト位置の間の水平搬送動作中は蓋111はあけられる」との構成で対応するものでない。
よって、上記補正の事項は新規事項である。

(2-2)補正後の、上記請求項1に係る発明においての「ストッカ部から上記搬送手段に記録媒体が受け渡された後、上記搬送手段により記録媒体が上記再生位置又は上記挿脱位置へ搬送される際」と、同請求項2に係る発明においての「記録媒体が上記再生位置又は上記挿脱位置から上記ストッカ位置又は上記再生位置へ搬送される際」は、搬送の動向を具体的にして、停止と継続の構成要件を記載しているが、当該構成は審判請求理由で、補正の根拠箇所としている明細書の【0098】〜【0106】等にみあたらないもので新規事項の追加である。

(2-3)上記請求項1に係る発明において、補正後の「搬送手段が機器外部から機器内部へ移動するときに上記検出手段により上記遮蔽手段の開放状態が検出される場合には、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を継続」なる構成であるが、補正前は「遮蔽手段の開放状態が検出される場合には、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を停止」という搬送動作の『停止』のみであったのが、条件によっては搬送動作の『継続』をするというもので、搬送制御手段において、新たな課題達成を伴う構成要件の付加で、これは変更にあたる。

(2-4)結局、本件補正は、少なくとも、請求項1,2に係る発明においては、上記したように願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した範囲内においてしたものでなく、特許法17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するものであり、また、特許法第17条の2第3項第1〜4号に規定された目的のいずれにも該当しないことは明らかである。

(3)補正についての結び
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明
(3-1)平成15年9月4日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項に係る各発明は、平成15年2月19日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち【請求項2】に係る発明は次のとおりのものである。
「【請求項2】複数の記録媒体が収納されるストッカ手段と、
記録媒体の再生を実行する再生手段と、
上記ストッカ手段との間で記録媒体の受け渡しを実行するストック位置と記録媒体の再生位置と記録媒体の挿脱位置との間で記録媒体を搬送する搬送手段と、
上記挿脱位置から機器内部を遮蔽しているとともに、上記搬送手段が挿脱位置に移動する際、開放される遮蔽手段と、
上記遮蔽手段の開放状態を検出する検出手段と、
上記搬送手段により記録媒体が上記再生位置又は上記挿脱位置から上記ストック位置へ搬送される際、上記検出手段により上記遮蔽手段の開放状態が検出される場合には、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を停止させる搬送制御手段と
を備えるチェンジャー装置。」(以下、「本願発明」という。)

(3-2)刊行物
原査定の拒絶理由で引用された特開平4-178991号公報(以下、「刊行物1」という。)には、記録媒体カートリッジライブラリ装置における挿入口シャッタ機構についてのもので、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与。)
(3-2-1)「光ディスクカートリッジ(以下、カートリッジという)の収納および駆動を行なう光ディスクライブラリ装置(以下、OLUという)は、一般的に第2図で示すように、カートリッジ挿入口2から挿入されるカートリッジ1を多数収納する収納ラック3と、カートリッジ1を駆動するドライブ4と、カートリッジ1を取り込んで搬送ガイド5に沿って移動することによりカートリッジ1を前記挿入口2、収納ラック3及びドライブ4の間で搬送するホルダHとを有する。
前記挿入口2には挿入口シャッタ8が設けられている。挿入口シャッタ8は、オペレータによる所定のカートリッジ挿入操作(例えばスイッチ操作)が行なわれた時に、前記挿入口2を開いてカートリッジ1がホルダ6に取り込まれるのを可能にし、それ以外の時には、カートリッジ挿入口2を閉じた状態に維持することにより、カートリッジ1が誤挿入されたりオペレータの手などの異物がOLU内に入り込んだりするのを防止できるようになっている。」(第2頁左上欄第1行〜第20行目)
(3-2-2)「〔発明が解決しようとする課題〕 しかしながらこの種のOLUにあっては、所定のカートリッジ挿入操作以外の操作、すなわち、例えばオペレータ側(カートリッジ挿入口2の外側)から挿入シャッタ8を手で操作するなどによっても挿入口8を開けることができるため、確実な安全機能を果すことができなかった。
この発明は上述の点に鑑みてなされたもので、所定のカートリッジ挿入操作以外の操作によって挿入口シャッタが開くのを簡単且つ確実に防止できる。記録媒体カートリッジライブラリ装置における挿入口シャッタ機構を提供することを目的とする」(第2頁右上欄第1行〜第13行目)
(3-2-3)「〔実施例〕 以下、添付図面に基づいて本発明を詳述する。
第1図は、OLUのカートリッジ挿入口2に適用した本発明の一実施例に係る挿入シャッタ機構10を示す。
ホルダHは、カートリッジ1が例えば送りローラRにより台座Pからカートリッジ挿入口2を通って挿入される際前記台座Pに接近する方向(前方)に移動してカートリッジ1を取り込み、しかる後、再び当初の後方位置に復帰してから該カートリッジ1を図示しないドライブまたは収納ラックまで搬送するようになっている。
挿入シャッタ機構10において、挿入口シャッタ12は、上下方向に延び、カートリッジ1が誤挿入されたり、オペレータの手などの異物がOLU内に入り込んだりするのを防止するためカートリッジ挿入口2を閉じた状態に維持する下方閉鎖位置と、カートリッジ1が挿入され得るようにカートリッジ挿入口2を開状態にする上方開放位置との間を移動可能になっている。このような移動を行なうため、挿入口シャッタ12の側面には、挿入口2を形成するOLUの壁部に設けられたガイド溝(図示せず)に摺接するピン(図示せず)が設けられている。因みに、第1図において、挿入口シャッタ12は下方閉鎖位置にある。挿入口シャッタ12は、その上端部分において、上下方向に隔離対向して後方に延びる1対の上、下突起15,16を有する。」(第3頁左上欄第14行〜左下欄第1行目)
(3-2-4)「OLU内に所定のカートリッジを挿入しようとする場合、オペレータは、前記カートリッジ1を台座にセットし、例えば所定の挿入用スイッチ(図示せず)をオンする。このようにして、ホルダーHが前方に移動し、これに伴い、レバープッシャー22が水平突起20aを前方に押圧することにより開閉レバー18が時計回り方向に回動してその横部19において上突起15を押し上げ、挿入口シャッター12が上方開放位置に上昇させられる。そこで、カートリッジ1は、送りローラRにより台座Pからカートリッジ挿入口2を通ってホルダHに取り込まれる。このようにしてカートリッジ1の挿入が完了すると、ホルダHは当初の位置に後退し、これに伴い、レバープッシャー22も後退する。その結果、開閉レバー18がモータ等の駆動手段(図示せず)により時計回り方向に回動復帰しながらその横部19において下突起16を押し下げ、挿入口シャッタ12が下方閉鎖一に下降させられる。なお、挿入口シャッター12の下降は、前記駆動手段によらず、該シャッタ12の自重によって行われるようになってもよい。」(第3頁右下欄第6行〜第4頁左上欄第7行目)
(3-2-5)「このように挿入シャッタ12が下方閉鎖位置にあるときにおいて、例えばオペレータが手によって挿入口シャッタ12をこじ開けようとしても、下突起16が開閉レバー18の横部19と当接し該横部19によるストッパ作用を受けるため、挿入口シャッタ12は開かないことになる。すなわち、この挿入口シャッタ機構にあっては、挿入口シャッタ12はホルダHの前方移動を伴う所定のカートリッジ挿入操作によってのみ開放可能であり、カートリッジ挿入口2の前方からオペレータが直接開けるなどの、前記所定のカートリッジ挿入操作以外の操作によっては開かない。
なお、本発明は、OLUに限らず・・・(中略)・・・その他の記録媒体カートリッジ用のライブラリ装置に適用してもよい。」(第4頁左上欄第8行〜右上欄第2行目)

以上の記載を、図面を参照して整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されているものと認める。
「光ディスクカートリッジを多数収納する収納ラックと、
光ディスクカートリッジを駆動するドライブと、
光ディスクカートリッジを取り込んで搬送ガイドに沿って移動することにより光ディスクカートリッジを挿入口、収納ラック及びドライブの間で搬送するホルダとを有し、
光ディスクカートリッジはカートリッジ挿入口から挿入され、挿入口には挿入口シャッタが設けられて、オペレータによる所定の光ディスクカートリッジ挿入操作(例えばスイッチ操作)が行なわれた時に、前記挿入口を開いて、ホルダは、カートリッジが例えば送りローラにより台座からカートリッジ挿入口を通って挿入される際、前記台座に接近する方向(前方)に移動して、カートリッジがホルダに取り込まれるのを可能にし、
それ以外の、所定の光ディスクカートリッジ挿入操作以外の操作、すなわち、例えばオペレータ側(カートリッジ挿入口の外側)から挿入シャッタを手で操作するなどによって挿入口を開けることができるための確実な安全機能をもつ光ディスクライブラリ装置。」(以下、「刊行物1発明」という。)

(3-3)対比・判断
(3-3-1)対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
(i) 刊行物1発明における「光ディスクカートリッジ」は、本願発明の「記録媒体」に相当する。
(ii) 刊行物1発明における「光ディスクカートリッジを多数収納する収納ラック」は、本願発明の「複数の記録媒体が収納されるストッカ手段」に相当する。
(iii) 刊行物1発明における「光ディスクカートリッジを駆動するドライブ」は再生手段であるから、本願発明の「記録媒体の再生を実行する再生手段」に相当する。
(iv)刊行物1発明における「光ディスクカートリッジを取り込んで搬送ガイドに沿って移動することにより光ディスクカートリッジを挿入口、収納ラック及びドライブの間で搬送するホルダ」は、本願発明の「ストッカ手段との間で記録媒体の受け渡しを実行するストック位置と記録媒体の再生位置と記録媒体の挿脱位置との間で記録媒体を搬送する搬送手段」に相当する。
(v)刊行物1発明における「光ディスクカートリッジはカートリッジ挿入口から挿入され、挿入口には挿入口シャッタが設けられ」は、本願発明の「挿脱位置から機器内部を遮蔽」に相当する。
(vi)刊行物1発明における「所定の光ディスクカートリッジ挿入操作(例えばスイッチ操作)が行なわれた時に、前記挿入口を開いて、ホルダは、カートリッジが例えば送りローラにより台座からカートリッジ挿入口を通って挿入される際、前記台座に接近する方向(前方)に移動して、カートリッジがホルダに取り込まれるのを可能」の記載は、本願発明の「搬送手段が挿脱位置に移動する際、開放される遮蔽手段」に相当する。
(vii)刊行物1発明における「光ディスクライブラリ装置」は、本願発明の「チェンジャー装置」に相当する。

結局、両発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「複数の記録媒体が収納されるストッカ手段と、
記録媒体の再生を実行する再生手段と、
上記ストッカ手段との間で記録媒体の受け渡しを実行するストック位置と記録媒体の再生位置と記録媒体の挿脱位置との間で記録媒体を搬送する搬送手段と、
上記挿脱位置から機器内部を遮蔽しているとともに、上記搬送手段が挿脱位置に移動する際、開放される遮蔽手段と、
上記搬送手段により記録媒体が上記再生位置又は上記挿脱位置から上記ストック位置へ搬送される搬送制御手段と
を備えるチェンジャー装置。」

[相違点]
遮蔽手段について、本願発明のものは、「遮蔽手段の開放状態を検出する検出手段」を有しているものであるが、刊行物1発明のものはこのような遮蔽手段の開放状態の検出手段がなく、また、この検出手段に関連して、記録媒体が再生位置又は挿脱位置からストック位置へ搬送される際において、本願発明のものは、「検出手段により上記遮蔽手段の開放状態が検出される場合には、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を停止」というものであるが、刊行物1発明のものにはこの点の構成がない点。

(3-3-2)判断
上記相違点について、本願発明のもつ課題は「【0006】(前略)・・・蓋が不要に開けられて指や異物が挿入された際に危険を回避できるようにすることを目的とする。」点にある。しかしながら、このような課題の指摘は、刊行物発明1のものも、「この種のOLUにあっては、所定のカートリッジ挿入操作以外の操作、すなわち、例えばオペレータ側(カートリッジ挿入口2の外側)から挿入シャッタ8を手で操作するなどによっても挿入口8を開けることができるため、確実な安全機能を果すことができなかった。」(上記(3-2-2)を参照)と記載しているとおり、『蓋』である遮蔽手段の不必要な開閉に因る危険とその回避を指摘している点で相違するものではない。
また、通常、搬送物を仕切手段等をもって区切っているものにおいて、仕切手段を部分的に開放して内部が露出する場合、搬送手段を停止して危険を回避する構成の採用はきわめて通常的である。
このことは、光ディスクライブラリ装置等の保管媒体管理機能に関する光ディスクライブラリ装置の分野において、装置の仕切りにあたる扉部分に開放状態検出部を設け、扉が開放された場合に媒体搬送手段を停止する構成は、原査定の拒絶理由で引用された特開平5-314620号公報(以下、「刊行物2」という。)に記載があり、他にも拒絶査定時に提示した特開平1-290158号公報(以下、「刊行物3」という。)においてみることができる自明の構成であるから、上記刊行物1発明のものにおいてもこれを採用して、上記相違点a.b.の態様にしての本願発明は当業者が適宜容易に想到できるものと認める。
なお、刊行物2については「【請求項1】データ記録媒体を複数個保管する保管棚と、データを記録、再生する記録再生装置と、保管棚と記録再生装置間の媒体搬送を行う媒体搬送機構と保管棚の媒体有無情報を記憶する不揮発メモリ(媒体管理メモリ)を有するデータ記録媒体自動交換装置において、前記媒体管理メモリのデータと、実際の保管棚内媒体有無の整合再チェックを装置の扉が開閉されたことを検出したことにより行うことを特徴とするデータ記録媒体自動交換装置。
【請求項2】外扉開閉検出センサを装置動作中に外扉が開けられた場合の緊急停止用インタロックセンサと兼ねたことを特徴とした請求項1記載のデータ記録媒体自動交換装置。」及び「【0022】又、前記マイクロスイッチ15の状態は常時マイクロプロセッサ21で監視出来るので、媒体搬送部2の動作中に外扉が開けられた場合、緊急停止させることも出来る。」を、
刊行物3は「上記ディスクカートリッジ挿入口5には、このディスクカートリッジ挿入口5を閉塞する蓋体20が設けられている。この蓋体20は、一側部が回動自在に支持されるとともに、付勢手段となる第4のコイルバネ20aにより上記ディスクカートリッジ挿入口5を閉塞する方向に付勢されてなる。また、この蓋体20の一側部付近には、挿入操作検出手段となる第2のスイッチSW2が設けられている。この第2のスイッチSW2は、上記蓋体20が閉成状態になっているときにのみ導通状態になるようになさている。」(第7頁左下欄第4行〜14行目)、及び「ところで、本願発明に係るディスク交換装置は、上記蓋体20に取付けられた第2のスイッチSW2により上記蓋体20に取付けられた第2のスイッチSW2により上記蓋体20が開扉されていることが検出される場合には、上記CPU26がディスクカートリッジの挿入操作が続行中であるとみなして、上記ディスクカートリッジ移送トレイ8の上記挿入側副収納棚17に対向する位置への移動を規制する移動規制機構を備えている。」(第9頁左下欄第10行〜17行目)を
それぞれ参照のこと。(上記、下線部分は当審で付与。)

以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1〜刊行物3に基づいて、当業者が容易に発明し得たものと認められ、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものである。


4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項2に係る発明は、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができいものである。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-20 
結審通知日 2005-12-20 
審決日 2006-01-16 
出願番号 特願平6-133975
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山澤 宏  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 中村 豊
片岡 栄一
発明の名称 チェンジャー機器  
代理人 鈴木 伸夫  
代理人 脇 篤夫  

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