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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 一部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C08J
管理番号 1132569
異議申立番号 異議2003-71855  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-08-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-22 
確定日 2005-12-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3369562号「アルケニル芳香族ポリマーフォームおよび該フォームの製造法」の請求項1ないし3、5ないし17、24、25に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3369562号の請求項1ないし2、5ないし11、23ないし24に係る特許を取り消す。 
理由 【I】手続きの経緯
特許第3369562号の請求項1〜28に係る発明についての出願は、平成5年6月8日に国際出願(優先日 平成4年6月9日 米国)され、平成14年11月15日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、佐藤徹(以下「特許異議申立人A」という。)より請求項1〜3,5〜10,24,25に係る特許に対して、また、鐘淵化学工業株式会社(以下「特許異議申立人B」という。)より請求項1,3,5,6〜17に係る特許に対して、それぞれ特許異議の申立てがなされ、平成16年1月15日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月27日に特許異議意見書とともに訂正請求書が提出され、平成17年2月1日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成17年5月16日に特許異議意見書とともに訂正請求書に対する手続補正書が提出され、さらに平成17年6月15日付けで特許権者より上申書が提出されたものである。

【II】訂正の適否について
1.訂正の内容
(訂正事項a)
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(訂正事項b)
訂正事項aの請求項3の削除により、請求項4〜28の項番号を一つずつ繰り上げて、それぞれ請求項3〜27と訂正し、また、それに伴い訂正後の請求項5〜26中の引用する請求項の番号を訂正する。
(訂正事項c)
明細書15頁16行の「フャーム構造物」を「フォーム構造物」と訂正する。
(訂正事項d)
明細書17頁の表Cおよび同18頁の表D中の「実施例8」、「実施例9」、「実施例10」、「実施例11」、「実施例12」および「実施例13」を、それぞれ「実施例6」、「実施例7」、「実施例8」、「実施例9」、「実施例10」および「実施例11」と訂正し、また、「比較例8」、「比較例9」、「比較例10」および「比較例11」を、それぞれ「比較例6」、「比較例7」、「比較例8」および「比較例9」と訂正する。
(訂正事項e)
明細書20頁の表Eおよび表F中の「実施例14」、「実施例15」、「比較例14」および「比較例15」を、それぞれ「実施例12」、「実施例13」、「比較例12」および「比較例13」と訂正する。
(訂正事項f)
明細書18頁の表Dの脚注6中の「表面極めて滑らかでピンホール/スポットなし」、「表面滑らかおよび/またはピンホール/スポット極めて小さい」、「表面可成り滑らかおよび/またはピンホール/スポット小さい」および「表面粗いおよび/またはピンホール/スポット」を、それぞれ「表面極めて滑らかでスポットなし」、「表面滑らかおよび/またはスポット極めて小さい」、「表面可成り滑らかおよび/またはスポット小さい」および「表面粗いおよび/またはスポット」と訂正する。

2.訂正の適否
訂正事項aは請求項の削除であるから、願書に添付された明細書の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
訂正事項bは、訂正事項aの請求項3の削除に伴い、請求項の番号を整理するものであるから、願書に添付された明細書の範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的としたものである。
訂正事項cは、明らかな誤記である「フャーム構造物」を「フォーム構造物」と訂正するものであるから、願書に添付された明細書の範囲内において、誤記の訂正を目的としたものである。
表C〜F中の実施例および比較例の番号は、発明の詳細な説明中の番号と一致していないため誤記であることが明らかであるから、訂正事項dおよびeは、願書に添付された明細書の範囲内において、誤記の訂正を目的としたものである。
表Dの脚注6中の「ピンホール」は、特許請求の範囲に記載されたピンホールとは異なるものを意味するにもかからず同じ用語を使っていたところ、表Dの脚注6中の「ピンホール」を削除することにより誤解が生じないようにするためのものであるから、訂正事項fは、願書に添付された明細書の範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的としたものである。
そして、訂正事項a〜fは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【III】本件発明
特許異議申立の対象である訂正前の請求項1〜3,5〜17,24,25は、訂正前の請求項3が削除されたことにより、訂正後の請求項1〜2,4〜16,23,24に対応している。
上記訂正の結果、訂正後の本件の請求項1〜27に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明27」という。)は、訂正明細書の記載からみて、特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】a)50重量パーセントを越えるアルケニル芳香族ポリマーを含む熱可塑性ポリマー物質を加熱して、融解ポリマー物質を形成し;
b)融解ポリマー物質中に、高圧下で水及び二酸化炭素を含む発泡剤を包含させて、発泡可能なゲルを形成し;
c)発泡可能なゲルを選択された発泡温度にまで冷却し;さらに
d)発泡可能なゲルを減圧で膨張させて、フォーム構造物を生成させ、この場合下記諸要件、すなわち
(i)発泡剤が液状またはガス状で包含され、そしてその発泡剤は発泡剤総重量に対して少なくとも3重量パーセントでかつポリマー物質100重量部当り少なくとも0.3重量部の量の水を含むこと;
(ii)発泡可能なゲルがフォーム構造物の熱伝導率を低下させるだけのカーボンブラックの量を含有すること;そして
(iii)発泡剤がさらにC1-6アルコールを含有することの要件の少なくとも1つが当てはまることを含む独立気泡アルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物の製造法。
【請求項2】アルケニル芳香族ポリマーが50重量パーセントを上回る熱可塑性ポリマー組成物のフォームを含み、該フォームは平均気泡サイズが0.05ミリメートルから1.2ミリメートルに及ぶ比較的大きな一次気泡および気泡サイズが一次気泡の平均気泡サイズの5パーセントから50パーセントにわたる比較的小さな二次気泡を有し、一次および二次気泡がフォーム構造物の総気泡容積の少なくとも90パーセントを構成し、かつ、(i)一次および二次気泡の総数の1ないし30パーセントの数のピンホールおよび(ii)カーボンブラックを含まない対応するフォームの熱伝導率よりも該フォームの熱伝導率を低下させるだけの量のカーボンブラックを含むことを特徴とする独立気泡のアルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物。
【請求項3】アルケニル芳香族ポリマーが50重量パーセントを上回る熱可塑性ポリマー物質のフォームを含み、このフォームは、気泡サイズが0.05ミリメートルから1.2ミリメートルに及ぶ比較的大きい一次気泡および気泡サイズが一次気泡の平均気泡サイズの5パーセントから50パーセントにわたる比較的小さな二次気泡を有し、一次および二次気泡はフォーム構造物中の総気泡容積の少なくとも90パーセントを構成する断熱性で独立気泡のアルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物において、該フォーム構造物は、フォームがカーボンブラックを含まない対応するフォームの熱伝導率よりも、該フォームの熱伝導率を低下させるだけのカーボンブラックの量を有することを特徴とするフォーム構造物。
【請求項4】a)アルケニル芳香族ポリマー物質を加熱して、ポリマー物質融解物とし;
b)ポリマー物質融解物中に、高圧下で、無ハロゲン発泡剤を包含させて、発泡可能なゲルとし;さらに
c)発泡可能なゲルを低圧で膨張させて、フォーム構造物を生成させる工程を含む平均気泡サイズが少なくとも0.1ミリメートルの独立気泡のアルケニル芳香族ポリマーフォームの製造法において、該方法は、発泡剤が二酸化炭素、C1-6アルコール、および水を含有することを特徴とする方法。
【請求項5】アルケニル芳香族ポリマーが5重量パーセント未満の少なくとも1つの共重合可能なモノマーを含有することを特徴とする請求項1および4の中のいずれか1つの項の方法。
【請求項6】ポリマー物質が70重量パーセントを上回るアルケニル芳香族ポリマーを含むことを特徴とする請求項1,4および5の中のいずれか1つの項の方法。
【請求項7】ポリマー物質が95重量パーセントを上回るアルケニル芳香族ポリマーを含むことを特徴とする請求項6の方法。
【請求項8】ポリマー物質が完全にアルケニル芳香族ポリマーよりなることを特徴とする請求項7の方法。
【請求項9】アルケニル芳香族ポリマーがポリスチレンであることを特徴とする請求項1および4ないし8の中のいずれか1つの項の方法。
【請求項10】発泡剤が、ポリマー物質融解物中に、ポリマー融解物100部当り3ないし15部の重量比率で包含されることを特徴とする請求項1および4ないし9の中のいずれか1つの項の方法。
【請求項11】発泡剤が、発泡剤総重量に対して、5ないし60重量パーセントの水を含むことを特徴とする請求項1および4ないし10の中のいずれか1つの項の方法。
【請求項12】二酸化炭素が、ポリマー融解物の0.5ないし6重量パーセントの量で用いられることを特徴とする請求項4の方法。
【請求項13】発泡剤総重量に対して、二酸化炭素15ないし95重量パーセント、C1-6アルコール3ないし80重量パーセントおよび水0.4ないし45重量パーセントの無ハロゲン発泡剤混合物の発泡剤がポリマー総重量に対して3ないし10重量パーセントであることを特徴とする請求項4の方法。
【請求項14】フォームの気泡サイズが0.1ないし0.9ミリメートルで、発泡剤混合物が、ポリマー総重量に対して、二酸化炭素40ないし70重量パーセント、C1-6アルコール6ないし60重量パーセントおよび水0.4ないし3重量パーセントであることを特徴とする請求項4または請求項13の方法。
【請求項15】フォームの気泡サイズが1.2ミリメートルを上回って3.0ミリメートルまであり、発泡剤混合物が、ポリマー総重量に対して、二酸化炭素15ないし50重量パーセント、C1-6アルコール10ないし80重量パーセントおよび水10ないし45重量パーセントであることを特徴とする請求項4または請求項13の方法。
【請求項16】C1-6アルコールがエタノールであることを特徴とする請求項4および13ないし15の中のいずれか1つの項の方法。
【請求項17】アルケニル芳香族ポリマーが5重量パーセント未満の少なくとも1つの共重合可能なモノマーを含有することを特徴とする請求項2または3のフォーム構造物。
【請求項18】ポリマー物質が70重量パーセントを上回るアルケニル芳香族ポリマーを含むことを特徴とする請求項2,3および17の中のいずれか1つの項のフォーォム構造物。
【請求項19】ポリマー物質が95重量パーセントを上回るアルケニル芳香族ポリマーを含むことを特徴とする請求項18のフォーム構造物。
【請求項20】ポリマー物質が完全にアルケニル芳香族ポリマーよりなることを特徴とする請求項19のフォーム構造物。
【請求項21】アルケニル芳香族ポリマーがポリスチレンであることを特徴とする請求項2,34および17ないし20の中のいずれか1つの項のフォーム構造物。
【請求項22】フォーム構造物が全体的に2種類の気泡の概ね不均一の分散体を呈することを特徴とする請求項2,3および17ないし21の中のいずれか1つの項のフォーム構造物。
【請求項23】一次および二次気泡が、一次および二次気泡の総数の1ないし30パーセントの数のピンホールを有することを特徴とする請求項2,3および17ないし22の中のいずれか1つの項のフォーム構造物。
【請求項24】前記ピンホールが、一次および二次フォーム気泡の総数の5ないし20パーセントの数で存在することを特徴とする請求項23のフォーム構造物。」

【IV】取消理由の概要
1.本件請求項1及び3に係る発明(訂正後の本件発明1)は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、本件請求項1及び3に係る発明(訂正後の本件発明1)の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。
2.本件請求項1,3,5〜17に係る発明(訂正後の本件発明1,4〜16)は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1〜6に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1,3,5〜17に係る発明(訂正後の本件発明1,4〜16)の特許は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
3.本件明細書の記載は、下記の点で不備であるから、本件請求項2,3,6〜12,24,25に係る発明(訂正後の本件発明2,5〜11,23,24)の特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

<記>
刊行物1:特表平2-503657号公報(特許異議申立人B提出の甲第1号証)
刊行物2:英国特許第1138473号明細書(特許異議申立人B提出の甲第2号証)
刊行物3:特公昭56-9171号公報(特許異議申立人B提出の甲第3号証及び特許異議申立人A提出の甲第3号証)
刊行物4:特開平3-109445号公報(特許異議申立人B提出の甲第4号証)
刊行物5:特開昭58-126127号公報(特許異議申立人A提出の甲第1号証)
刊行物6:特表平4-502173号公報(特許異議申立人A提出の甲第2号証)

【V】判断
1.刊行物1,5,6に記載された事項
(刊行物1)
ア.「1.・・・独立気泡を有するアルケニル芳香族合成樹脂押出発泡体の製造方法であって、
(a)アルケニル芳香族合成樹脂を熱可塑化する工程、
(b)可塑化樹脂及び発泡剤を、アルケニル芳香族合成樹脂及び発泡剤の混合物中の発泡剤の平衡蒸気圧より大きい圧力・・・に保たれた入口を有する混合装置に導入する工程、
(c)混合物を冷却装置に通す工程、
(d)大気圧より大きいダイ入口圧力・・・を有するダイに冷却混合物を通す工程を含み、・・・ことを特徴とする、前記のアルケニル芳香族合成樹脂押出発泡体の製造方法。
2.工程(b)の発泡剤組成物が、下記の組成物(全ての%は、発泡剤の合計重量基準の重量%である):
・・・
(36)約0.4%〜約99.9%のH2O及び約0.1%〜約50%のCO2;
・・・
の一つから選ばれる請求の範囲1項記載の方法。
3.アルケニル芳香族合成樹脂がポリスチレンである請求の範囲1項記載の方法。
4.アルケニル芳香族合成樹脂が、合計樹脂重量基準で約0.1重量%〜約15重量%の重合されたアクリル酸を有するスチレン/アクリル酸コポリマーである請求の範囲1項記載の方法。」(特許請求の範囲第1〜4項)
イ.「発泡剤は、アルケニル芳香族合成樹脂100重量部当り約3〜約30重量部の量で本発明の方法に存在する。」(5頁左下欄16〜17行)
ウ.「一般に、本発明によるアルケニル芳香族樹脂ポリマー発泡体の製造は、・・・揮発性液体及び/または気体の発泡剤が押出機中で熱可塑化ポリマー流に注入される。熱可塑化ゲルは、押出機からミキサーに通され、」(6頁左下欄7〜12行)
エ.表4の例番号52A,52Bの欄には、PS(ポリスチレン)に、H2O/CO2/C3H8 (1.0/1.3/2.5)の混合物を合計BA(発泡剤)量として4.8pph(100部当りの部数)を添加したことが記載されている。(10頁右上欄)

(刊行物5)
ア.「24.溶融材料に含まれる発泡剤として水を用いて熱可塑性発泡樹脂を製造する方法であつて、押出機で熱可塑性樹脂の溶融材料を形成し、押出機のゲート部の上流側で溶融材料に水を注水して、その押出機の出力として、前記水を含む溶融材料を得、この溶融材料を押出機の下流側で撹拌混合するとともに、その後、水を含む溶融材料の流量と温度とを次段の押出し工程に最適な値に制御しつつ、この溶融材料を押出すことよりなるのを特徴とする熱可塑性発泡樹脂の製造方法。
25.・・・(省略)・・・
26.特許請求の範囲第(24)項に記載のものであつて、水の注水後であつて、しかも、前記攪拌混合を行うに先立つて、溶融材料に気体を導入することを特徴とする方法。」(特許請求の範囲第24〜26項)
イ.「本発明による発泡樹脂・・・の気泡が簡単にこわれるようなことがない利点がある。・・・構造的にも丈夫で気泡のこわれにくい発泡樹脂を製造するのに充分であることがわかつた。」(7頁右上欄8〜16行)
ウ.「実施例
以後、添付図面を参照品柄、本発明の好ましい実施例を詳述する。
第1図に示したものは、熱可塑性発泡樹脂を製造するための単一型押出機装置であつて、この装置は、バレルBを有する押出機Eと、このバレルBの上流側の端部に装着されて、樹脂材R1.粒状材R2.造核剤Nが供給されるようになつている供給ホツパーHとを有している。・・・混合機Mにより均一に混合された溶融材料は動型冷却装置D/Cを経て、金型Dへ供給され、かくて、この金型Dから、水と気体と溶融材料とが均一にまざり合い、冷却された混合物が発泡シートFとして押出される。」(7頁左下欄5行〜右下欄最下行)
エ.「水量としては、押出機の内部における溶融材料の重量に対して0〜8%が望ましい。」(8頁右上欄10〜11行)
オ.「第1図に示した装置を用いて、・・・ポリスチレン製発泡樹脂シートを製造する。・・・高分子量の耐熱性ポリスチレン樹脂を、押出機のバレルの・・・ゲート部の上流側と下流側での圧力が夫々5500PSIG.5000PSIG・・・となるように、押出機装置を操作しつつ供給する。吐出圧が3100〜3500PSIGの範囲になるように定容量ポンプを操作しながら、バレルに注水させるとともに、溶融材料と混ぜる。混合作用は押出機の下流側にて400。Fで行い、その後、制御された冷却装置を介して、3500PSIG.278。Fにて押出成形金型に供給することにより、前記発泡樹脂シートを製造する。」(11頁右下欄下から3行〜12頁左上欄14行)
カ.例1には、第1図に図示された装置を用いて、樹脂としてHMWP(高分子量ポリスチレン:13頁左上欄11〜12行参照)、気体としてCO2を用い、H2Oを3.2%(例No.1)あるいは2.35%(例)No.8)用いて熱可塑性発泡樹脂を製造したことが記載されている。(12頁下欄の表)
キ.「本発明の第2目的は、熱可塑性発泡樹脂を生産するために、発泡剤として空気,窒素,二酸化炭素,水の単独,または、それらの組合せを押出装置に注入する方法と装置とを提供することである。」(5頁左下欄2〜6行)

(刊行物6)
ア.「樹脂状気泡壁およびASTM D-2856によって決定したところ少なくとも95%の独立気泡含有量を有するフォームであって;樹脂が、合計熱可塑性合成樹脂重量に対して、少なくとも60重量%の重合アルケニル芳香族合成樹脂を有する熱可塑性合成樹脂であり;気泡壁が、熱可塑性合成樹脂の重量に対して、1.0〜25重量%の・・・カーボンブラックを含む・・・フォーム。」(特許請求の範囲第1項)
イ.「本発明は、実質的な独立気泡フォームのKファクター(熱伝導率)を減少させ、その結果R値(耐熱性)を増加させる。」(2頁右下欄10〜14行)
ウ.「表4をみてわかるように、Kファクターは、実質的に独立気泡押出ポリスチレンフォーム中にカーボンブラックを導入することによって実質的に減少し得る。」(5頁左下欄下から9〜7行)

2.特許法第29条第1項第3号違反について
刊行物1には、「独立気泡を有するアルケニル芳香族合成樹脂押出発泡体の製造方法であって、(a)アルケニル芳香族合成樹脂を熱可塑化する工程、(b)可塑化樹脂及び発泡剤を、アルケニル芳香族合成樹脂及び発泡剤の混合物中の発泡剤の平衡蒸気圧より大きい圧力に保たれた入口を有する混合装置に導入する工程、(c)混合物を冷却装置に通す工程、(d)大気圧より大きいダイ入口圧力を有するダイに冷却混合物を通す工程を含む、前記のアルケニル芳香族合成樹脂押出発泡体の製造方法」が記載され(摘示記載ア)、発泡剤は揮発性液体及び/または気体であること(摘示記載ウ)、アルケニル芳香族樹脂ポリマーと発泡剤が混合されたものを熱可塑化ゲルと称していること(摘示記載ウ)、発泡剤として水と二酸化炭素を含有すること(摘示記載ア,エ)、合成樹脂100重量部に対して、H2O 1.0重量部、CO2 1.3重量部、C3H8 2.5重量部からなる発泡剤を4.8重量部添加すること(摘示記載エ)が記載されているので、刊行物1には、「独立気泡を有するアルケニル芳香族合成樹脂押出発泡体の製造方法であって、(a)アルケニル芳香族合成樹脂を熱可塑化する工程、b)水と二酸化炭素を含む発泡剤と可塑化樹脂を、アルケニル芳香族合成樹脂及び発泡剤の混合物中の発泡剤の平衡蒸気圧より大きい圧力に保たれた入口を有する混合装置に導入する工程、そして熱可塑化ゲルとし、(c)混合物を冷却装置に通す工程、(d)大気圧より大きいダイ入口圧力を有するダイに冷却混合物を通す工程を含み、発泡剤は揮発性液体及び/または気体であり、発泡剤総重量に対して水が20.8重量%(1.0÷4.8×100)であり、アルケニル芳香族合成樹脂100重量部あたり1.0重量部の水を含む、前記の独立気泡を有するアルケニル芳香族合成樹脂押出発泡体の製造方法」が記載されている。
本件発明1と刊行物1に記載された発明(以下「刊行物1発明」という。)とを対比すると、刊行物1発明の「アルケニル芳香族合成樹脂」は特に他の樹脂と混合することは特定されていないので、刊行物1発明の「(a)アルケニル芳香族合成樹脂を熱可塑化する工程」は、本件発明1の「a)50重量パーセントを越えるアルケニル芳香族ポリマーを含む熱可塑性ポリマー物質を加熱して、融解ポリマー物質を形成し」に相当する。
刊行物1発明の「(b)水と二酸化炭素を含む発泡剤と可塑化樹脂を、アルケニル芳香族合成樹脂及び発泡剤の混合物中の発泡剤の平衡蒸気圧より大きい圧力に保たれた入口を有する混合装置に導入する工程、そして熱可塑化ゲルとし」は、本件発明1の「b)融解ポリマー物質中に、高圧下で水及び二酸化炭素を含む発泡剤を包含させて、発泡可能なゲルを形成し」に相当する。
刊行物1発明の「混合物を冷却装置に通す工程」は、本件発明1の「c)発泡可能なゲルを選択された発泡温度にまで冷却し」に相当する。
刊行物1発明の「大気圧より大きいダイ入口圧力を有するダイに冷却混合物を通す工程を含み」は、混合物がダイを通過した場合には大気圧下になるので減圧されることになり膨張し、発泡体すなわちフォーム構造物を形成するのであるから、本件発明1の「d)発泡可能なゲルを減圧で膨張させて、フォーム構造物を生成させ」に相当する。
また、刊行物1発明の「揮発性液体及び/または気体」は、本件発明1の「液状またはガス状」に相当し、刊行物1発明の発泡剤総重量に対する水の量(20.8重量%)およびポリマー物質100重量部当りの水の量(1.0重量部)は、ともに本件発明1の範囲に含まれている。
したがって、両発明は「a)50重量パーセントを越えるアルケニル芳香族ポリマーを含む熱可塑性ポリマー物質を加熱して、融解ポリマー物質を形成し;b)融解ポリマー物質中に、高圧下で水及び二酸化炭素を含む発泡剤を包含させて、発泡可能なゲルを形成し;c)発泡可能なゲルを選択された発泡温度にまで冷却し;さらにd)発泡可能なゲルを減圧で膨張させて、フォーム構造物を生成させ、この場合下記の要件、すなわち(i)発泡剤が液状またはガス状で包含され、そしてその発泡剤は発泡剤総重量に対して少なくとも3重量パーセントでかつポリマー物質100重量部当り少なくとも0.3重量部の量の水を含むことが当てはまることを含む独立気泡アルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物の製造法」である点で一致し、相違点は見いだせない。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明である。
よって、本件発明1の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

3.特許法第29条第2項違反について
(本件発明1について)
本件発明1は、(i)〜(iii)の要件の少なくとも1つが当てはまるものであるが、まず、(i)の要件を満たす本件発明1について検討する。
上記2.で記載したように、本件発明1のうち(i)の要件を有する発明は、発泡剤総重量に対する水の量が20.8重量%、ポリマー物質100重量部当りの水の量が1.0重量部である点において、刊行物1発明と一致しているが、本件発明1は、上記の水の量以外の発明も含んでおり、この刊行物1発明と一致する水の量ではない本件発明1についてみると、刊行物1発明とは、要件(i)の水の量において相違しているということができる。
しかしながら、刊行物5には水と二酸化炭素を用いてポリスチレン発泡体を製造することが記載されていることからみても、水と二酸化炭素を発泡剤として用いてアルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物を製造することは、一般的に行われていることであるから、刊行物1発明において水と二酸化炭素の量を適当な範囲に調節することは当業者が容易になし得る事項にすぎない。
そして、本件発明1の水の量の数値範囲に臨界的な意義があるともいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物1および5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

次に、本件発明1のうち(ii)の要件を満たす発明について検討すると、本件発明1と刊行物1発明とは、「a)50重量パーセントを越えるアルケニル芳香族ポリマーを含む熱可塑性ポリマー物質を加熱して、融解ポリマー物質を形成し;b)融解ポリマー物質中に、高圧下で水及び二酸化炭素を含む発泡剤を包含させて、発泡可能なゲルを形成し;c)発泡可能なゲルを選択された発泡温度にまで冷却し;さらにd)発泡可能なゲルを減圧で膨張させて、フォーム構造物を生成させる、独立気泡アルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物の製造法」である点で一致し、下記の点で相違している。
(相違点)本件発明1は、「(ii)発泡可能なゲルがフォーム構造物の熱伝導率を低下させるだけのカーボンブラックの量を含有すること」を要件としているのに対し、刊行物1には対応する記載がない点。
しかしながら、刊行物6には、少なくとも60重量%の重合アルケニル芳香族合成樹脂を含有する熱可塑性樹脂にカーボンブラックを添加して独立気泡フォームを製造することにより、熱伝導率を減少させることが記載されているので(摘示記載ア〜ウ)、刊行物1発明において、熱伝導率を減少させるためにカーボンブラックを添加することは、当業者が容易に想到し得たものといえる。
したがって、本件発明1は、刊行物1および6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(本件発明5〜11について)
本件発明5は、本件発明1を引用し、アルケニル芳香族ポリマーが5重量パーセント未満の少なくとも1つの共重合可能なモノマーを含有することを特定した発明であるが、刊行物1には「アルケニル芳香族合成樹脂が、合計樹脂重量基準で約0.1重量%〜約15重量%の重合されたアクリル酸を有するスチレン/アクリル酸コポリマーである」こと(摘示記載ア)が記載されるので、アルケニル芳香族ポリマーが5重量パーセント未満の少なくとも1つの共重合可能なモノマーを含有することも刊行物1に記載されている。
本件発明6〜8は、本件発明1を直接的または間接的に引用し、さらにポリマー物質がある一定値(70重量パーセント、95重量%、完全に)を上回るアルケニル芳香族ポリマーを含むことを特定した発明であるが、刊行物1には、アルケニル芳香族合成樹脂押出発泡体には、他の樹脂を混合することが必須とは記載されていないので、ポリマー物質は基本的に100%のアルケニル芳香族合成樹脂を含むものと認められる。
本件発明9は、本件発明1を引用し、アルケニル芳香族ポリマーがポリスチレンであることを特定した発明であるが、刊行物1には、アルケニル芳香族ポリマーがポリスチレンであること(摘示記載ア)も記載されている。
本件発明10は、本件発明1を引用し、発泡剤が、ポリマー物質融解物中に、ポリマー融解物100部当り3ないし15部の重量比率で包含されることを特定した発明であるが、刊行物1には、発泡剤をアルケニル芳香族合成樹脂100重量部当り約3〜30重量部用いること(摘示記載イ)が記載されている。
本件発明11は、本件発明1を引用し、発泡剤総重量に対して、5ないし60重量パーセントの水を含むことを特定した発明であるが、刊行物1には約0.4%〜約99.9%のH2O及び約0.1%〜約50%のCO2とすること(摘示記載ア)が記載されている。
したがって、本件発明5〜11において新たに特定された事項は、刊行物1に記載ないし示唆されており、また、当該事項中の数値範囲に臨界的意義も見いだせないので、本件発明1が、刊行物1,5及び6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本件発明5〜11も、刊行物1,5及び6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって、本件発明1,5〜11の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

4.特許法第36条第4項違反について
特許権者は、平成17年6月15日提出の上申書において下記の点を主張している。
1)ピンホールは、隣接する気泡を連結するけれども、より大きな気泡を形成することなく、各気泡を維持し、ピンホールはフォームの独立気泡性に物性的に影響を及ぼさないために十分に小さいものである。(2頁14〜17行)
2)フォームの分析は光学顕微鏡を用いて行われることが一般的であるから、ピンホールの計数においても光学顕微鏡画像においてピンホール数を計数し、その画像中の気泡の数で割ることでフォームに存在するピンホールの百分率が算出されることは当業者には自明である。また、本件特許はピンホールの存在の有無の百分率を規定しているのであるから、全てのピンホールの個数を求めることは必要ではなく、顕微鏡画像の視野範囲における気泡の数に対するピンホールの数の割合を求めれば統計学的に足りる。(2頁最下行〜3頁16行)
3)本件訂正明細書には、「ピンホールを有する双峰形フォーム構造物を調製するのに用いられる発泡剤は、発泡剤の総重量に対して少なくとも3重量パーセントの水を含む。また、発泡剤の水分率は、また、この構造物中のアルケニル芳香族ポリマーおよび非アルケニル芳香族ポリマーの重量に対し、100重量部当り少なくとも0.3重量部を構成しなければならない。・・・ポリマー融成物に加えられる発泡剤中の適当な水分率および発泡温度の適当な選択を用いると、ピンホールを有し、所望の双峰形気泡サイズ分布を有するフォーム構造物が得られる。」と記載され、実施例においては具体的な水分率及び発泡温度が開示されているのであるから、本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、当業者がピンホールを有する双峰形フォームの発泡体を容易に製造し得る程度に記載されている。(3頁17行〜4頁10行)

しかしながら、ピンホールが大きく数が増えると、気泡が実質的に連続し、独立気泡のフォームとはいえなくなるものと認められるので、「フォームの独立気泡性に物性的に影響を及ぼさない」とは具体的にどのような条件で確定できるのかが重要となるが、本件訂正明細書には「ASTM D2856に規定されているように」とは記載されているものの、具体的な条件については記載されていないので、独立気泡性に物性的に影響を及ぼさないピンホールとはどのようなものを意味するのか明確ではない。
したがって、上記1)の特許権者の主張を検討しても、本件発明2,23,24におけるピンホールとはどの程度の大きさのものを意味するのか明確ではない。

また、フォームの分析が光学顕微鏡を用いて行われるからといって、ピンホールの数の計測を光学顕微鏡を用いて行うことが自明であるとは必ずしもいえず、また、光学顕微鏡の画像でピンホールの数を測定しようとしても、気泡壁の角度などにより画像で円形に見えるものが気泡同士を連結するピンホールであるのか確認することが難しい場合もあると考えられる。さらに、光学顕微鏡で見えた範囲のピンホールの数と気泡の数との割合を、統計学的に十分信頼性に足りるピンホールの数の気泡総数に対する割合とするためには、どの程度の倍率で観察するのかよいのかも不明である。本件訂正明細書の実施例1には「ピンホールは一次気泡の構成部分の気泡壁中に存在した」と記載されているが、気泡の総数に対するピンホール数の割合については記載されておらず、実施例2には「フォーム気泡の間およびフォーム内部にピンホールがあった。ピンホールは気泡の1ないし30パーセントの数で存在した。」、実施例3には「気泡間に内部連結ピンホールを有し・・・ピンホールは気泡の1ないし30パーセントの数で存在した。」とは記載されているものの、実施例2〜3における実際に測定した気泡の総数に対するピンホール数の割合は記載されていないので、実施例において実際に測定できたのか信頼性に乏しい。
したがって、上記2)の特許権者の主張だけでは、ピンホールの数の測定方法は明確とはいえない。

さらに、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載された発泡剤中の水の量及びポリマーに対する水の量は、非常に広範囲な数値であり、発泡温度も具体的な範囲をもって記載されていないので、実施例1〜3に具体的に記載された条件を採用すれば本件発明2,23,24に該当する実施例1〜3が実施できることはわかるものの、実施例1〜3以外にはどのような条件設定をすれば双峰形でかつピンホールが特定数あるフォーム構造体が得られるか定かではなく、ピンホールの数を「気泡総数の1ないし30パーセントの数」の間で実施例1〜3(記載されていないので不明であるが、例えば15%のように特定の数があるはずである)以外のピンホール数を有するフォーム構造体を製造しようとしたときに、どのような条件設定をすればよいか不明であり、当業者が過度な試行錯誤を要するものといえる。
なお、発明の詳細な説明に記載された条件で十分というのであれば、刊行物1発明は、本件発明2,23,24と同じ水の量を有し、発泡温度も130℃前後で本件明細書の実施例1〜3と非常に近いので、刊行物1発明も、双峰形でかつピンホールを特定量含有するフォーム構造体が得られていることになる。
したがって、上記3)の特許権者の主張を検討しても、本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、本件発明2,23,24について、当業者が容易にその発明をすることができる程度に発明の構成が記載されているとはいえない。
よって、本件発明2,23,24の特許は、特許法第36条第4項の要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

【VI】むすび
以上のとおり、本件発明1,2,5〜11,23,24は、特許法第29条第1項第3号、同法第29条第2項および同法第36条第4項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件発明1,2,5〜11,23,24についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アルケニル芳香族ポリマーフォームおよび該フォームの製造法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】a)50重量パーセントを越えるアルケニル芳香族ポリマーを含む熱可塑性ポリマー物質を加熱して、融解ポリマー物質を形成し;
b)融解ポリマー物質中に、高圧下で水及び二酸化炭素を含む発泡剤を包含させて、発泡可能なゲルを形成し;
c)発泡可能なゲルを選択された発泡温度にまで冷却し;さらに
d)発泡可能なゲルを減圧で膨張させて、フォーム構造物を生成させ、この場合下記諸要件、すなわち
(i)発泡剤が液状またはガス状で包含され、そしてその発泡剤は発泡剤総重量に対して少なくとも3重量パーセントでかつポリマー物質100重量部当り少なくとも0.3重量部の量の水を含むこと;
(ii)発泡可能なゲルがフォーム構造物の熱伝導率を低下させるだけのカーボンブラックの量を含有すること;そして
(iii)発泡剤がさらにC1-6アルコールを含有することの要件の少なくとも1つが当てはまることを含む独立気泡アルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物の製造法。
【請求項2】アルケニル芳香族ポリマーが50重量パーセントを上回る熱可塑性ポリマー組成物のフォームを含み、該フォームは平均気泡サイズが0.05ミリメートルから1.2ミリメートルに及ぶ比較的大きな一次気泡および気泡サイズが一次気泡の平均気泡サイズの5パーセントから50パーセントにわたる比較的小さな二次気泡を有し、一次および二次気泡がフォーム構造物の総気泡容積の少なくとも90パーセントを構成し、かつ、(i)一次および二次気泡の総数の1ないし30パーセントの数のピンホールおよび(ii)カーボンブラックを含まない対応するフォームの熱伝導率よりも該フォームの熱伝導率を低下させるだけの量のカーボンブラックを含むことを特徴とする独立気泡のアルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物。
【請求項3】アルケニル芳香族ポリマーが50重量パーセントを上回る熱可塑性ポリマー物質のフォームを含み、このフォームは、気泡サイズが0.05ミリメートルから1.2ミリメートルに及ぶ比較的大きい一次気泡および気泡サイズが一次気泡の平均気泡サイズの5パーセントから50パーセントにわたる比較的小さな二次気泡を有し、一次および二次気泡はフォーム構造物中の総気泡容積の少なくとも90パーセントを構成する断熱性で独立気泡のアルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物において、該フォーム構造物は、フォームがカーボンブラックを含まない対応するフォームの熱伝導率よりも、該フォームの熱伝導率を低下させるだけのカーボンブラックの量を有することを特徴とするフォーム構造物。
【請求項4】a)アルケニル芳香族ポリマー物質を加熱して、ポリマー物質融解物とし;
b)ポリマー物質融解物中に、高圧下で、無ハロゲン発泡剤を包含させて、発泡可能なゲルとし;さらに
c)発泡可能なゲルを低圧で膨張させて、フォーム構造物を生成させる工程を含む平均気泡サイズが少なくとも0.1ミリメートルの独立気泡のアルケニル芳香族ポリマーフォームの製造法において、該方法は、発泡剤が二酸化炭素、C1-6アルコール、および水を含有することを特徴とする方法。
【請求項5】アルケニル芳香族ポリマーが5重量パーセント未満の少なくとも1つの共重合可能なモノマーを含有することを特徴とする請求項1および4の中のいずれか1つの項の方法。
【請求項6】ポリマー物質が70重量パーセントを上回るアルケニル芳香族ポリマーを含むことを特徴とする請求項1,4および5の中のいずれか1つの項の方法。
【請求項7】ポリマー物質が95重量パーセントを上回るアルケニル芳香族ポリマーを含むことを特徴とする請求項6の方法。
【請求項8】ポリマー物質が完全にアルケニル芳香族ポリマーよりなることを特徴とする請求項7の方法。
【請求項9】アルケニル芳香族ポリマーがポリスチレンであることを特徴とする請求項1および4ないし8の中のいずれか1つの項の方法。
【請求項10】発泡剤が、ポリマー物質融解物中に、ポリマー融解物100部当り3ないし15部の重量比率で包含されることを特徴とする請求項1および4ないし9の中のいずれか1つの項の方法。
【請求項11】発泡剤が、発泡剤総重量に対して、5ないし60重量パーセントの水を含むことを特徴とする請求項1および4ないし10の中のいずれか1つの項の方法。
【請求項12】二酸化炭素が、ポリマー融解物の0.5ないし6重量パーセントの量で用いられることを特徴とする請求項4の方法。
【請求項13】発泡剤総重量に対して、二酸化炭素15ないし95重量パーセント、C1-6アルコール3ないし80重量パーセントおよび水0.4ないし45重量パーセントの無ハロゲン発泡剤混合物の発泡剤がポリマー総重量に対して3ないし10重量パーセントであることを特徴とする請求項4の方法。
【請求項14】フォームの気泡サイズが0.1ないし0.9ミリメートルで、発泡剤混合物が、ポリマー総重量に対して、二酸化炭素40ないし70重量パーセント、C1-6アルコール6ないし60重量パーセントおよび水0.4ないし3重量パーセントであることを特徴とする請求項4または請求項13の方法。
【請求項15】フォームの気泡サイズが1.2ミリメートルを上回って3.0ミリメートルまであり、発泡剤混合物が、ポリマー総重量に対して、二酸化炭素15ないし50重量パーセント、C1-6アルコール10ないし80重量パーセントおよび水10ないし45重量パーセントであることを特徴とする請求項4または請求項13の方法。
【請求項16】C1-6アルコールがエタノールであることを特徴とする請求項4および13ないし15の中のいずれか1つの項の方法。
【請求項17】アルケニル芳香族ポリマーが5重量パーセント未満の少なくとも1つの共重合可能なモノマーを含有することを特徴とする請求項2または3のフォーム構造物。
【請求項18】ポリマー物質が70重量パーセントを上回るアルケニル芳香族ポリマーを含むことを特徴とする請求項2,3および17の中のいずれか1つの項のフォーム構造物。
【請求項19】ポリマー物質が95重量パーセントを上回るアルケニル芳香族ポリマーを含むことを特徴とする請求項18のフォーム構造物。
【請求項20】ポリマー物質が完全にアルケニル芳香族ポリマーよりなることを特徴とする請求項19のフォーム構造物。
【請求項21】アルケニル芳香族ポリマーがポリスチレンであることを特徴とする請求項2,3および17ないし20の中のいずれか1つの項のフォーム構造物。
【請求項22】フォーム構造物が全体的に2種類の気泡の概ね不均一の分散体を呈することを特徴とする請求項2,3および17ないし21の中のいずれか1つの項のフォーム構造物。
【請求項23】一次および二次気泡が、一次および二次気泡の総数の1ないし30パーセントの数のピンホールを有することを特徴とする請求項2,3および17ないし22の中のいずれか1つの項のフォーム構造物。
【請求項24】前記ピンホールが、一次および二次フォーム気泡の総数の5ないし20パーセントの数で存在することを特徴とする請求項23のフォーム構造物。
【請求項25】カーボンブラックが、ポリマー物質の重量に対して、1.0ないし25重量パーセントの量で存在することを特徴とする請求項2,3および17ないし24の中のいずれか1つの項のフォーム構造物。
【請求項26】カーボンブラックが、ポリマー物質の重量に対して、2ないし10重量パーセントを占めることを特徴とする請求項25のフォーム構造物。
【請求項27】請求項1の方法によって製造され、カーボンブラックを含有しかつ双峰形気泡サイズ分布を有するフォーム構造物。
【発明の詳細な説明】
この発明は、すぐれた曲げ特性および/またはすぐれた断熱性を有する双峰形のアルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物に関する。この発明は、さらに、二酸化炭素、C1-C6アルコール、および水を含有する無ハロゲン発泡剤を用いて調製したアルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物に関する。
双峰形フォーム構造物は、比較的大きな一次気泡および比較的小さな二次気泡の双峰形気泡サイズ分布を示す構造物である。大部分の一般的フォーム構造物は単峰形気泡サイズ分布のみを示す。単峰形分布は均一分布または一次気泡サイズ分布のみを有している。種々の双峰形フォーム構造物がUS-A-4,455,272およびUS-A-4,559,367ならびにEP-A0353701(EPO出願第89114160.8号)に開示されている。
US-A-4,559,367は、ポリマー原料中に、微細な含水有機植物性物質を混合し、得られた固体混合物を溶融し、該固体混合融成物中に揮発性発泡剤を包含させて発泡可能な混合物とし、さらに該発泡可能な混合物をダイから押出してフォーム構造物を生成させることによる双峰形フォーム構造物の製造法に関するものである。
US-A-4,455,272は、ポリマー融成物中に、水および物理的発泡剤を導入し、さらに得られた混合物をダイから押出して、構造物を生成させることによる双峰性フォーム構造物の製造法に関するものである。
EP-A-0353701は、ポリマー原料中に、微細な水吸収性鉱物粉末を混合し、得られた固体混合物を溶融し、該固体混合融成物中に揮発性発泡剤を包含させて、発泡可能な混合物とし、さらに該発泡可能な混合物をダイから押出して、フォーム構造物を生成させることによる双峰性フォーム構造物の製造法に関するものである。
双峰形フォーム構造物は、一般的な単峰形フォーム構造物に勝る利点を示す。この利点には強い靭性およびすぐれた断熱能力がある。さらに、双峰形構造物は、典型的には、発泡剤の一成分として水を用いて製造されるが、単峰形構造物は、典型的には、水を使用しない。発泡剤の一成分としての水の使用は、環境的理由から望ましいので、双峰形構造物の製造も同様に望ましい。
双峰形フォーム構造物の断熱能力をさらに高めることは望ましいと思われる。フォーム構造物の物理的性質に悪影響を及ぼさないか、または該構造物の製造または処理に悪影響を及ぼさないで、その断熱能力を高めることはさらに望ましいと思われる。
双峰形フォーム構造物の欠点は可撓性に欠けるということである。双峰形フォーム構造物のすぐれた靭性および断熱能力を示し、その上、すぐれた可撓性を示す双峰形フォーム構造物を得ることは望ましいことであろう。
環境的理由から、経済的成分を有する無ハロゲン発泡剤を低密度アルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物に付与することが望ましいと思われる。発泡剤の種類および量を選ぶことによって、フォームの気泡サイズを調節し得ることは、さらに望ましいことであろう。
この発明の第1の態様によれば、アルケニル芳香族ポリマーが50重量パーセントを上回る熱可塑性ポリマー組成物のフォームを含む可撓性のアルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物がある。該フォームは、平均気泡サイズが0.05ミリメートルから1.2ミリメートルに及ぶ比較的大きな一次気泡および平均気泡サイズが一次気泡の平均気泡サイズの5パーセントから50パーセントにわたる比較的小さな二次気泡を有している。一次および二次気泡はフォーム構造物の総気泡容積の少なくとも90パーセントを形成する。一次および二次気泡は、該気泡総数の1ないし30パーセントの数のピンホールを有している。ピンホールの存在は、ピンホールを有しない対応するフォーム構造物と比較して、該フォーム構造物の可撓性を高める。
この発明の第1の態様に、さらに付け加えると、a)50重量パーセントを上回るアルケニル芳香族ポリマーを含む熱可塑性ポリマー物質を加熱して、融解ポリマー物質とし、b)融解ポリマー物質中に、高圧下で、発泡剤の総重量に対して少なくとも3重量パーセントで、かつポリマー物質100重量部当り少なくとも0.3重量部の量の水を含む液状またはガス状の発泡剤を包含させて、発泡可能なゲルとし、さらにc)発泡可能なゲルを減圧で膨張させてフォーム構造物を生成させる工程を含む前記フォーム構造物の製造法がある。発泡可能なゲルは、ダイから低圧帯域内に押出して、フォーム構造物を生成させるのが好ましい。
この発明の第2の態様によれば、a)アルケニル芳香族ポリマーが50重量パーセントを上回る熱可塑性ポリマー物質のフォームおよびb)カーボンブラックを含まない対応するフォームの熱伝導率よりも前記フォームの熱伝導率を低下させるだけのカーボンブラックの量を含む断熱性双峰形アルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物がある。該フォームは気孔サイズが0.05ミリメートルから1.2ミリメートルにわたる比較的大きな一次気泡および気泡サイズか、一次気泡の平均気泡サイズの5パーセントから50パーセントにわたる比較的小さな二次気泡を有する。一次および二次気泡はフォーム構造物中の総気泡容積の少なくとも90パーセントを形成する。カーボンブラックの添加は、カーボンブラックを実質的に一次フォーム気泡のみからなる通常の単峰形フォーム構造物に加えるときに認められるよりも大きな驚くべき相乗的な断熱能力の増大または熱伝導率の減少をもたらす。
この発明の第3の態様によれば、平均気泡サイズが少なくとも0.1ミリメートルの複数の独立気泡を含む低密度無ハロゲンの独立気泡フォーム製造法がある。「低密度」という用語は、16kg/m3ないし80kg/m3のフォーム密度を意味する。アルケニル芳香族熱可塑性物質を加熱して、ポリマー物質融成物とする。融成物中に、ポリマーの総重量に対して、好ましくは3ないし10重量パーセントの無ハロゲン発泡剤混合物を包含、すなわち混合させて、発泡可能なゲルを生成させる。「無ハロゲンフォーム構造物」という用語は、無ハロゲンまたは無ハロゲン化発泡剤でつくった低密度フォーム構造物を指す。発泡剤は、全発泡剤混合物の総重量に対して、15ないし95重量パーセントの二酸化炭素、3ないし80重量パーセントのC1-C6アルコール、および0.4ないし45重量パーセントの水を含有するのが好ましい。発泡可能なゲルは減圧すなわち低圧で膨張させて、フォームとする。気泡サイズは含水量を変えることによって調節し得ることが認められた。
フォーム構造物は50重量パーセントを上回る、より好ましくは70重量パーセントを上回るアルケニル芳香族ポリマーを含む。アルケニル芳香族ポリマーという用語はスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、クロロスチレン類、およびブロモスチレン類のようなアルケニル基が1個以上の芳香族化合物から誘導されるポリマーを包含する。少量(すなわち、5重量パーセント)のC1-C4メタクリレート類およびアクリレート類、C1-8オレフィン類、ならびにC4-8ジエン類のような共重合可能な化合物を含有する。適当な化合物には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンおよびオクテンがある。
アルケニル芳香族ポリマー物質は、アルケニル芳香族ポリマーが、50重量パーセントを上回るアルケニル芳香族モノマー単位を含みさえすれば、他の熱可塑性物質を含有することができる。適当なプラスチック物質は、アルケニル芳香族ポリマーと混合し、発泡させてフォームとすることができる任意のプラスチック物質から選ぶことができる。適当なプラスチックにはポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ゴム変性アルケニル芳香族ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエステル類、およびポリ塩化ビニリデンがある。適当なポリオレフィン類にはポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレンがある。好ましい構造物は、ポリスチレンフォームが経済的であり、断熱性プラスチックフォームとして通常用いられているので、実質的に(すなわち、95パーセントを上回り)、またもっとも好ましくはもっぱらポリスチレン構造物である。
フォーム構造物は通常、アルケニル芳香族ポリマー自体または、もし存在すれば、他のポリマーとともに溶融、混合してプラスチック融成物とし、該プラスチック融成物中に発泡剤を包含させて、発泡可能なゲルとし、さらに発泡可能なゲルをダイから押出して、フォーム構造物を生成させることによって生成する。溶融および混合中、ポリマーのガラス転移点以上の温度、好ましくは融点以上の温度にポリマーを加熱する。ポリマーおよび添加剤の溶融および混合は、押出機、ミキサー、またはブレンダーのような業界で公知の手段によって行う。同様に、水を含む発泡剤も、任意の前記同様の手段によってプラスチック融成物中に包含すなわち混合する。発泡剤は、得られたプラスチックゲルの実質的な膨張またはゲル中の発泡剤の全般的な均一分散の低下を防止するのに必要な程度の高圧で、プラスチック融成物と混合する。とくに断らなければ、発泡剤は、融成物中に、膨張させるポリマー100部当り、1ないし30部の重量比で包含させるのが適当であり、3ないし15部の重量比で包含させるのが好ましい。発泡可能なゲルは、クーラーまたは冷却帯域を通過させて、最適発泡温度まで、ゲル温度を低下させるのが好ましい。ポリスチレンの場合には、典型的な最適発泡温度は110℃から135℃にわたる。溶融、混合および冷却は、単一押出機、縦列押出機、または別のミキサーまたはクーラーと直列の1個以上の押出機で行うことができる。冷却したゲルは、次に、ダイから減圧すなわち低圧帯域に移送して、フォーム構造物とする。低圧帯域は、ダイから押出す前に発泡可能なゲルが保持される圧力よりも低い圧力にある。低圧は過圧である場合もあれば、減圧である場合もあるが、大気圧程度が好ましい。
とくに断らなければ、水とともに用いることができる発泡剤には、無機薬剤、揮発性有機薬剤および分解して、ガスや他の副生物になる化学薬剤がある。適当なガス状発泡剤には窒素、二酸化炭素、空気およびアルゴンがあるが、これに限るものではない。適当な揮発性有機薬剤にはハロゲン化および非ハロゲン化脂肪族炭化水素がある。適当な非ハロゲン化脂肪族炭化水素にはC1-9アルケン類ならびにn-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、エタン、プロパン、イソペンタン、n-ヘキサン、およびイソヘキサンのようなアルカン類がある。適当なハロゲン化脂肪族炭化水素には塩化メチル、塩化エチル、ペルフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジフルオロメタン、ペルフルオロエタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、クロロテトラフルオロエタン、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、クロロヘプタフルオロプロパン、ジクロロプロパン、ジフルオロプロパン、ジクロロヘキサフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、クロロノナフルオロブタン、およびペルフルオロシクロブタンがある。適当な化学発泡剤には、アゾジカルボンアミド、アゾジイソブチリロニトリル、ベンゼンスルホンヒドラジド、4,4-オキシベンゼンスルホニルセミカルバジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、アゾジカルボン酸バリウム、N,N′-ジメチル-N,N′-ジニトロソテレフタルアミド、およびトリヒドラジノトリアジンがある。
好ましい発泡剤は、水および、たとえば窒素、二酸化炭素またはアルゴンのような無機発泡剤との混合物を用いるものである。もっとも好ましい発泡剤は水および二酸化炭素を含む。とくに断らなければ、発泡剤は発泡剤の総重量に対して、好ましくは3ないし80重量パーセント、より好ましくは5ないし60重量パーセントの水を含む。
この構造物は、顔料、充填剤、酸化防止剤、押出助剤、成核剤、安定剤、帯電防止剤、難燃剤、および掃酸剤のような補助的添加剤を含有することができる。
この構造物のフォーム成分は1立方メートル当り16ないし80キログラムの密度を有するのが好ましい。
双峰形フォーム構造物は、平均気泡サイズが0.05ミリメートルから1.2ミリメートルにわたる比較的大きな一次フォーム気泡および気泡サイズが一次気泡の平均気泡サイズの5パーセントから50パーセントにわたる比較的小さな二次フォーム気泡よりなる。気泡サイズは、典型的に、業界で双峰形フォーム構造物の分析および特性決定に用いられる光学顕微鏡検査法によって測定する。気泡分布中の比較的大きな気泡を平均して、一次気泡の平均気泡サイズを求め、気泡分布中の比較的小さな気泡を平均して、二次気泡の平均気泡サイズを求める。二次気泡は、一次気泡の気泡壁またはストラット(strut)内に位置するか、または単独もしくは2個以上の群をなして一次気泡の外側かまたは一次気泡に隣接して位置することができる。ストラットは3個以上の気泡壁の結合部である。このフォーム構造物のフォームが、2種類の気泡を全体に概ね不均等に分散させるように、二次気泡の至るところに一次気泡をあまねく分散させるのが好ましい。双峰形気泡分布を有するプラスチックフォームに指示される補足的教示がUS-A-4,455,272およびUS-A-4,559,367ならびにEP-A0353701に開示されている。
双峰形フォーム構造物はフォーム気泡の構成部分の間に「ピンホール」を具備して形成させることができる。ピンホールは隣接する一次気泡間、隣接する二次気泡間、または隣接する一次および二次気泡間の気泡壁内に形成される顕微鏡的な孔である。ピンホールはフォーム気泡の極く僅かな面積すなわち微小部分の間に存在するので、ピンホールは、ASTM D2856に規定されているように、フォームの独立気泡性に実質的に影響を及ぼすことはない。ピンホールはフォームの一次および二次気泡の総数の1ないし30パーセントの数で存在するのが好ましく、5ないし20パーセントの数で存在するのがさらに好ましい。フォーム構造物はピンホールであってもなくても形成させることができる。
ピンホールのある双峰形フォームは、対応するピンホールのない双峰形フォームよりもすぐれた可撓度を示す。すぐれた可撓性は、脆くなく、処理しやすく、かつ使用中破損することなく加工し、取扱えるフォーム構造物をもたらす。すぐれた可撓性は、また、スタッコ用に使用する際にすぐれた亀裂抵抗性を示す。
双峰形フォーム構造物の一次および二次気泡は、フォーム構造物中の全気泡容積の少なくとも90パーセント、好ましくは少なくとも95パーセントを形成する。一次気泡より大きな気泡および二次気泡よりも小さな気泡は、気泡サイズの所望の双峰形分布が構造物中に存在することを確実にもたらすために、とって代わった比較小部分(10パーセント未満)の容積のみを形成しなければならない。フォーム構造物中に存在するがフォーム気泡の本質ではないボイドまたはキャビティは、フォーム構造物中の全気泡容積の一部とはみなされない。
特定理論に拘束されるつもりはないが、双峰形気泡サイズ分布は、現存する処理条件(たとえば、温度、圧力、機械的撹拌等)において、発泡可能なゲルがポリマー融成物中の水の溶解度を上回る水の量を含有するときに生じると思われる。発泡可能なゲルが発泡して、フォーム構造物になると、過剰の水は、二次気泡の形となって現われる。
発泡剤の総重量に対して、1重量パーセント以上またはそれ以上の量の水を含む水性発泡剤系を使用すると、典型的には、市販のアルケニル芳香族ポリマー、とくにポリスチレンからつくったフォーム構造物中に双峰形フォーム分布をもたらす。
このフォーム構造物は、ASTM D2856によれば独立気泡が少なくとも90パーセントが好ましい。該独立気泡のフォームは断熱用にとくに有効である。
ピンホールを有する双峰形フォーム構造物を調製するのに用いられる発泡剤は、発泡剤の総重量に対して少なくとも3重量パーセントの水を含む。発泡剤中の水分率は、また、この構造物中のアルケニル芳香族ポリマーおよび非アルケニル芳香族ポリマーの重量に対し、100重量部当り少なくとも0.3重量部を構成しなければならない。必要な水分率は、従来技術のように、プラスチックまたはポリマー融成物中に加えられる水搬送性または水生成性固体によるのではなくて、押出機、ミキサー、またはブレンダーに投入するような外部手段によって、プラスチックまたはポリマー融成物中に直接、液状、またはガス(蒸気も含む)状で包含させる発泡剤に適用される。液状またはガス状で外部からポリマー融成物に加えられる発泡剤中の適当な水分率および発泡温度の適当な選択を用いると、ピンホールを有し、所望の双峰形気泡サイズ分布を有するフォーム構造物が得られる。この発明は、ポリマー融成物中へ水搬送性または水生成性固体の添加を除外するものではないが、該固体によって添加される水はピンホールの生成に欠くことができないとは思われず、したがって、該固体によって添加される水は、液状またはガス状でポリマー融成物に加えられる発泡剤中の適正水分率を計算する際には考慮されない。発泡温度の適切な選択は、発泡可能なゲル中に、水の微細で、均質な分散を確実にもたらす。
カーボンブラックを含有する双峰形フォーム構造物は、一定量のカーボンブラックの場合に認められる断熱能力の増大または熱伝導率の低下が驚くほど大きいので、カーボンブラックを含有する単峰形フォーム構造物よりも有利である。言いかえると、カーボンブラックを有する双峰形フォーム構造物は、カーボンブラックを有しない単峰形フォーム構造物と比べたカーボンブラックを有する単峰形フォーム構造物よりも、断熱能力の増大または熱伝導率の低下が、カーボンブラックを有しない双峰形フォーム構造物に比べて勝ることがわかる。双峰形フォーム構造物と単峰形フォーム構造物との、カーボンブラックの添加による断熱能力の増大または熱伝導率の低下のこの相違は、驚くべきことでもあり、また思いがけないことでもある。さらに、双峰形フォーム構造物は、カーボンブラックが一定量の対応する単峰形フォーム構造物よりも高いR値(断熱能力)または低い熱伝導率を示す。対応するフォーム構造物は、ASTM D3576-77すなわち一次気泡サイズ範囲の光学顕微鏡検査による平均気泡サイズが実質的に同等であり、かつフォーム密度が実質的に同等のフォーム構造物である。カーボンブラックを含有する双峰形フォーム構造物は、双峰形構造物にピンホールがあろうとなかろうとカーボンブラックを含有する単峰形フォーム構造物よりも有利である。
カーボンブラックは、構造物中のアルケニル芳香族ポリマーまたは非アルケニル芳香族ポリマーの重量に対して、フォーム構造物の1.0ないし25重量パーセントを構成するのが好ましく、2ないし10重量パーセントを構成するのがさらに好ましい。カーボンブラックは、この構造物のフォームマトリックス全体に均一に分散しているのが好ましい。カーボンブラックは、気泡壁全体に均一に広がっているのがさらに好ましい。
この発明の無ハロゲンフォーム構造物の気泡サイズは、驚くべきことに、発泡剤混合物中の水の量を調節することによって効果的に制御できることが見出された。水の量を増すと平均気泡サイズの大きなフォームを生じた。このように、フォームの気泡サイズは発泡剤混合物中の水分量を変えることによって制御可能であった。
無ハロゲンフォーム構造物は、非ハロゲン化発泡剤または塩素やフッ素のようなハロゲン分を含まない発泡剤を用いてつくったフォーム構造物である。非ハロゲン発泡剤には、前記ハロゲン化脂肪族炭化水素を含まない発泡剤がある。この発明のフォーム構造物は非ハロゲン化発泡剤からつくったフォーム構造物に限定されないが、用途によっては該発泡剤が好ましいかもしれない。
すぐれたスキン品質および大きな横断面積は、無ハロゲンフォーム構造物のフォームの気泡サイズが小さい場合、すなわち、1.2ミリメール(mm)未満の場合に得ることができる。
気泡サイズが比較的小さい独立気泡を有する1つの態様の無ハロゲンフォーム構造物を、本明細書では「小気泡フォーム」ともいう。気泡サイズが比較的大きな独立気泡を有する別の態様のフォーム構造物を「大気泡フォーム」ということができる。
「小気泡サイズ」という用語は0.1ないし1.2mmの気泡サイズを意味する。有利なことに、この小気泡フォーム構造物は、その中に少なくとも97ないし99.9パーセント、好ましくは98.5ないし99.8パーセントのガス含有独立気泡を有する。
小気泡無ハロゲンフォーム構造物は、平均気泡サイズが、好ましくは0.1ないし1.1mm、より好ましくは0.1ないし0.9mmの気泡を有し、該ね均一の気泡構造を呈し、また不連続性がない。好ましい態様では、小気泡フォーム構造物は、気泡サイズを本体の最小横断寸法を横切る平均気泡直径で測る場合には(すなわち、ASTM法D2842-69によるような場合には)、平均気泡サイズが実質的に変動しない。好ましい態様は、さらに、横断面積が少なくとも8in2(50cm2)、最小横断寸法が少なくとも0.25in(0.6cm)、および密度が1ないし5pcf(16ないし80kg/m3)、好ましくは1.8ないし3.1pcf(29ないし50kg/m3)である。
「大気泡サイズ」という用語は1.2mmを上回り3.0mmまでの気泡サイズを意味する。有利なことに、この大気泡フォーム構造物はその中に、少なくとも97ないし99.9パーセント、好ましくは98.5ないし99.8パーセントのガス含有独立気泡を有する。
大気泡無ハロゲンフォーム構造物は、気泡の平均気泡サイズが1.5ないし2.6mmであるのが好ましく、1.6ないし2.4mmであるのがもっとも好ましい。好ましい態様では、大気泡フォーム構造物は、横断面積が少なくとも8in2(50cm2)、最小横断寸法が少なくとも0.25in(0.6cm)、さらに密度が1ないし5pcf(16ないし80kg/m3)、好ましくは1.6ないし2.0pcf(25.6ないし32kg/m3)である。
小気泡無ハロゲンフォームをつくるには、二酸化炭素を全発泡剤の、通常15ないし95重量パーセント、好ましくは30ないし90重量パーセント、もっとも好ましくは40ないし70重量パーセントの比率で使用する。低級アルコールは、全発泡剤混合物の総重量の3ないし80重量パーセントの量、好ましくは6ないし60重量パーセントの量で使用する。水は全発泡剤混合物の総重量の0.4ないし20重量パーセント、好ましくは0.4ないし10重量パーセントの量、もっとも好ましくは0.4ないし3重量パーセントの量で使用する。
大気泡無ハロゲンフォームをつくるには、二酸化炭素を、好ましくは15ないし50重量パーセント、より好ましくは26ないし43重量パーセントの量で使用する。低級アルコールは10ないし80重量パーセント、より好ましくは22ないし53重量パーセントの量で使用する。水は10ないし45重量パーセント、より好ましくは21ないし35重量パーセントの量で使用する。重量はすべて発泡剤の総重量に対するものである。
この態様に有用な発泡剤は、二酸化炭素、低級アルコールおよび水の混合物である。「低級アルコール」という用語はC1-C6アルコール、好ましくはC1-C4アルコールを意味する。低級アルコールはメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、およびそれらの異性体がある。エタノールが極めて好ましい。
無ハロゲンフォーム構造物の場合に、発泡剤混合物中の水の量は、無水アルコール(「ドライアルコール」)に対するものである。アルコール分が99.9パーセント未満のアルコール(「ウェットアルコール」)を用いる場合には、該アルコール中に含まれる水の量を明示した比較から差引き、必要ならば、必要量の水を充足させるために、追加水分を補足する必要がある。
この明細書で教示する様々のフォーム構造物の好ましい製造法は押出法であるけれども、該構造物はビーズの発泡によって成形でき、発泡の時点でビーズを成形して、種々の形状の構造物を形成させることができることが理解される。成形された発泡可能なビーズからつくった絶縁パネルは一般に粒状ボード(bead board)という。
種々のフォーム構造物は、構造物をパネルの形に作り、さらに構造物を表面に適用することによって表面を断熱するのに用いることができる。該パネルは、たとえば、屋根材、建築物および冷蔵庫のような一般的な断熱用途に有用である。
種々のフォーム構造物は、一般的な隙間埋め緩衝剤および包装用の複数のばらばらの発泡粒子に成形することができる。
下記はこの発明の実施例であって、限定するものと解してはならない。とくに断らなければ、パーセント、部または比率はすべて重量単位のものである。
実施例
実施例1
この発明の、ピンホールを有する双峰形フォーム構造物を、調製して、その断熱能力(「R」値)ならびに圧縮および曲げモードにおける機械的応答について試験した。
サイズ排除クロマトグラフィーにより求めた分子量が200,000の汎用ポリスチレン樹脂ならびに加工および気泡核生成を制御する他の添加剤を2-1/2インチ(6.4センチメートル)の押出機に供給して、発泡剤混合物と密に混合して、発泡可能なゲルとする。発泡剤は、樹脂重量に対し、100部当り4部(pph)の二酸化炭素および0.5pphの水の混合物であった。ゲルを、発泡温度の127℃に冷却し、ダイから押出して、ポリスチレンフォームを生成させた。次表は測定したフォームの物理的性状および機械的試験結果をまとめたものである。R値はASTM C518-85により測定した。添加剤の濃度は、樹脂の重量に対して、タルク0.05pph、ステアリン酸カルシウム0.05pph、酸化マグネシウム0.05pph、ポリエチレン0.1pph、および青色着色剤0.01pphであった。
圧縮強さ試験は、ASTM D1621-79の方法によって行い、曲げ試験はASTM C20391により行った。測定はインストロン4204材料試験システムを用いて行った。
フォーム構造物の気泡形態は双峰形、すなわち一次および二次気泡の分布であった。ピンホールは一次気泡の構成部分の気泡壁中に存在した。
機械試験結果は、双峰形フォーム構造物には一般に現われないすぐれた可撓度および靭性を示した。この向上はフォーム構造物の気泡構造中のピンホールの存在によるものであった。
【表1】

【表2】

実施例2〜3では、この発明のカーボンブラック含有双峰形フォーム構造物を調製した。
実施例2
2-1/2インチ(6.4センチメートル)の押出機、ミキサー、クーラーおよびダイを直列に具備する装置を用いてフォーム構造物をつくった。サイズ排除クロマトグラフィーで測定した分子量が200,000のポリスチレン樹脂を、10重量パーセントのカーボンブラック、0.05重量pphの酸化マグネシウム、0.05重量pphのステアリン酸カルシウムおよび1.0重量pphのヘキサブロモシクロドデカンとともに押出機に供給して、ポリマー融成物を得た。ミキサー内でポリマー融成物に、水1.5重量pphおよび二酸化炭素4重量pphの混合物を加えて、発泡可能なゲルとした。発泡可能なゲルを125℃に冷却して、ダイから押出し、さらに実質的に平行な成形板の間で発泡させた。ダイの圧力は1100psig(76MPa)であった。フォーム構造物は、一次気泡のサイズが0.2ミリメートル(mm)で密度が2.3pcf(36kg/m3)であった。フォームはストラット(strut)および気泡壁に二次気泡を有する双峰形気泡構造を示し、二次気泡は一次気泡サイズの1/5のサイズであった。さらに、フォーム構造物はフォーム気泡の間およびフォーム内部にピンホールがあった。ピンホールは気泡の1ないし30パーセントの数で存在した。エージング180日におけるフォームのKファクターすなわち熱伝導率は0.202Btu-in/°F-ft2-hr(0.0291W/(m.K))であった。
実施例3
実施例2の装置および方法を用いて、ポリスチレン樹脂(密度=0.915〜0.93グラム/立方センチメートル;メルトインデックス2.0〜2.5)100重量部当り、カーボンブラック7重量パーセント、ステアリン酸カルシウム0.05重量部、および直鎖状低密度ポリエチレン0.2重量部を押出機内で混合して、ポリマー融成物を生成させた。100部につき0.5部の水および100部につき4部の二酸化炭素の発泡剤混合物をポリマー融成物に加えて、発泡可能なゲルとした。発泡可能なゲルを128℃に冷却し、ダイから大気圧下の平行成形板の間で発泡させた。ダイ圧力は1200psig(8.3MPa)であった。フォーム構造物は平均一次気泡サイズが0.22mmの双峰形気泡分布を示した。フォーム構造物は、気泡間に内部連結ピンホールを有し、またストラットおよび気泡壁中に二次気圧があった。ピンホールは気泡の1ないし30パーセントの数で存在した。フォーム構造物の密度は3.2pcf(51kg/m2)であった(スキン層含む)。エージング3日後のKファクター(Btu-in/°F-ft2-hr)は0.212(0.0306W/(m.K))であったが、これはR/インチの4.7(32(m.K)/W;R/cm=13(m.K)/W)に相当した。
実施例6〜11
回転ミキサーに給送する直径2インチ(6.1センチメートル)の押出機を用い、この発明の方法によって小気泡フォーム構造物を調製した。回転ミキサーの流出物は3つの熱交換機に通した。熱交換機からの流出物は、順次、複数のインターフェーシャルサーフェスジェネレータ(interfacial surface generator)またはスタティックミキサーに通した。スタティックミキサーからの流出物はスロットダイに通した。フォームはスロットダイから60kg/hr(130ポンド/時)の速度で流出させた。この発明によって、発泡剤混合物中の水の量の異なる小気泡フォームを調製した。各フォーム試料の組成およびそれぞれの発泡剤の比率を表Cに示す。小気泡フォームの評価結果は下記表Dに示す。
比較例6〜9
実施例6〜11の方法に従い、ただし発泡剤から水を省いて、フォーム試料(比較例6〜9)を調製した。発泡剤混合物のその他の成分は下記表Cに表示する。フォームの評価結果は下記表Dに示す。
【表3】

【表4】

表Dに示したデータから容易に明らかなように、CO2、エタノールおよび水の発泡剤混合物を用いて調製したこの発明の小気泡フォームは、すぐれたスキン品質および表面外観を示す。さらに、いずれも、発泡剤混合物中に同量の二酸化炭素を用いて調製した、実施例8の調製フォームと比較例7の調製フォームとを比較すると、発泡剤混合物中に水を加えることによって(実施例8)、該フォームは、水を存在させずに調製したフォーム(比較例7)よりもすぐれたスキン品質を示すだけでなく、また低密度を呈する。
実施例12および13
実施例6〜11に述べたと同じ方法および同じ種類の設備を用い、この発明により、発泡剤混合物中の水の量を変えて大気泡アルケニル芳香族ポリマーフォーム構造物を調製した。大気泡フォームはスロットダイから200ポンド/時(91kg/h)の速度で流出させた。各フォーム試料の組成およびそれぞれの発泡剤比率を表Eに示す。大気泡フォームの評価結果は下記表Fに示す。
比較例12および13
実施例12および13の方法に従い、ただしアルコールまたは水成分を省いて、フォーム構造物(比較例12および13)を調製した。
発泡剤混合物のその他の成分は下記表Eに示す。フォームの評価結果は下記表Fに示す。
【表5】

【表6】

表Fのデータから、この発明による発泡剤混合物を用いて調製したフォーム(実施例12および13)の気泡サイズを、発泡剤混合物からエタノールまたは水を省いた比較例12および13で調製したフォームと比べて70%以上も大きくできることがわかる。
この発明のフォーム構造物および製造方法の態様を、具体的な細部にわたって示したけれども、製造法および所望の物理的性状によっては、依然として、この明細書に示す新規な教示および原理の範囲内に明らかに入る限りにおいて、この発明は、種々の変更により修正可能であることが理解されよう。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-07-21 
出願番号 特願平6-501657
審決分類 P 1 652・ 531- ZA (C08J)
P 1 652・ 113- ZA (C08J)
P 1 652・ 121- ZA (C08J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 内田 靖恵  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 石井 あき子
藤原 浩子
登録日 2002-11-15 
登録番号 特許第3369562号(P3369562)
権利者 ザ ダウ ケミカル カンパニー
発明の名称 アルケニル芳香族ポリマーフォームおよび該フォームの製造法  
代理人 石田 敬  
代理人 西山 雅也  
代理人 樋口 外治  
代理人 田中 弘  
代理人 朝日奈 宗太  
代理人 秋山 文男  
代理人 石田 敬  
代理人 西山 雅也  
代理人 鶴田 準一  
代理人 佐木 啓二  
代理人 福本 積  
代理人 樋口 外治  
代理人 福本 積  
代理人 鶴田 準一  

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