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審決分類 審判 全部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  B08B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B08B
管理番号 1132574
異議申立番号 異議2003-71438  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-12-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-02 
確定日 2005-12-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3352565号「基板洗浄方法およびそれに使用する回転式基板洗浄装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3352565号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3352565号の請求項1ないし2に係る発明についての出願は、平成7年5月25日に特許出願され、平成14年9月20日にその発明についての特許権の設定登録がなされ、その後の平成15年6月2日に、中野映子により特許異議の申立てがなされ、平成17年3月17日付けで当審による取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年5月27日付けで訂正請求書及び意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
平成17年5月27日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正」という。)の訂正の内容は、次のとおりである。
(1-1)訂正事項a
訂正前の特許請求の範囲の請求項1
「基板保持手段によって鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持された基板の上方から外れた待機位置から前記基板の回転中心箇所まで洗浄具を移動させるとともに前記基板の回転中心箇所で前記洗浄具を下降する洗浄開始工程と、前記洗浄具を前記基板に作用させるとともに前記基板の外周縁に移動させ、そこから前記洗浄具を前記基板に作用させない位置まで上昇させ、前記基板の回転中心箇所まで前記洗浄具を移動させてから前記洗浄具を前記基板に作用させる位置まで下降させる洗浄工程と、その洗浄工程を複数回繰り返した後に、前記基板の外周縁箇所で前記洗浄具を上昇させてから待機位置に戻す洗浄終了工程とから成る基板洗浄方法において、
前記洗浄工程における前記洗浄具の昇降ストロークを前記洗浄開始工程および洗浄終了工程それぞれにおけるよりも小にしたことを特徴とする基板洗浄方法。」を、
「基板保持手段によって鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持された基板の上方から外れた待機位置から前記基板の回転中心箇所まで洗浄具を移動させるとともに前記基板の回転中心箇所で前記洗浄具を下降する洗浄開始工程と、前記洗浄具を前記基板に作用させるとともに前記基板の外周縁に移動させ、そこから前記洗浄具を前記基板に作用させない位置まで上昇させ、前記基板の回転中心箇所まで前記洗浄具を移動させてから前記洗浄具を前記基板に作用させる位置まで下降させる洗浄工程と、その洗浄工程を複数回繰り返した後に、前記基板の外周縁箇所で前記洗浄具を上昇させてから待機位置に戻す洗浄終了工程とから成る基板洗浄方法において、
前記洗浄開始工程および洗浄終了工程それぞれにおける前記洗浄具の昇降ストロークは、前記待機位置にある待機ポット内に挿入された前記洗浄具を、基板の水平横外側方を覆って洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態のカップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており、
前記洗浄工程における前記洗浄具の昇降ストロークは、前記洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ前記洗浄具の下端が前記カップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されていることを特徴とする基板洗浄方法。」
と訂正する。
(1-2)訂正事項b
訂正前の特許請求の範囲の請求項2
「基板を鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持する基板保持手段と、
基板表面を洗浄する洗浄具と、
前記洗浄具を前記基板上の洗浄位置と前記基板上から外れた待機位置とにわたって変位する洗浄具移動手段と、
前記洗浄具を、前記基板に作用させて洗浄する作用位置と、その作用位置よりも高い非作用位置とにわたって昇降する洗浄具昇降手段と、
基板表面の前記洗浄具による洗浄箇所に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備えた回転式基板洗浄装置において、
前記洗浄具昇降手段を、前記洗浄具を洗浄位置と待機位置とにわたって移動するときに前記洗浄具を昇降する第1の洗浄具昇降手段と、
前記洗浄具が洗浄位置にある状態で前記第1の洗浄具昇降手段よりも小さいストロークで前記洗浄具を昇降する第2の洗浄具昇降手段と、
から構成してあることを特徴とする回転式基板洗浄装置。」
を、
「基板を鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持する基板保持手段と、
基板表面を洗浄する洗浄具と、
前記洗浄具を前記基板上の洗浄位置と前記基板上から外れた待機位置とにわたって変位する洗浄具移動手段と、
前記洗浄具を、前記基板に作用させて洗浄する作用位置と、その作用位置よりも高い非作用位置とにわたって昇降する洗浄具昇降手段と、
基板表面の前記洗浄具による洗浄箇所に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備えた回転式基板洗浄装置において、
前記洗浄具昇降手段を、前記洗浄具を洗浄位置と待機位置とにわたって移動するときに前記洗浄具を昇降する第1の洗浄具昇降手段と、
前記洗浄具が洗浄位置にある状態で前記洗浄具を昇降する第2の洗浄具昇降手段と、から構成してあり、
前記第1の洗浄具昇降手段による前記洗浄具の昇降ストロークは、前記待機位置にある待機ポット内に挿入された前記洗浄具を、基板の水平横外側方を覆って洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態のカップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており、
前記第2の洗浄具昇降手段による前記洗浄具の昇降ストロークは、前記洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ前記洗浄具の下端が前記カップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されていることを特徴とする回転式基板洗浄装置。」
と訂正する。
(1-3)訂正事項c
明細書の段落番号【0006】の記載を、
「【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、上述のような目的を達成するために、基板保持手段によって鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持された基板の上方から外れた待機位置から基板の回転中心箇所まで洗浄具を移動させるとともに基板の回転中心箇所で洗浄具を下降する洗浄開始工程と、洗浄具を基板に作用させるとともに基板の外周縁に移動させ、そこから洗浄具を基板に作用させない位置まで上昇させ、基板の回転中心箇所まで洗浄具を移動させてから洗浄具を基板に作用させる位置まで下降させる洗浄工程と、その洗浄工程を複数回繰り返した後に、基板の外周縁箇所で洗浄具を上昇させてから待機位置に戻す洗浄終了工程とから成る基板洗浄方法において、前記洗浄開始工程および洗浄終了工程それぞれにおける前記洗浄具の昇降ストロークは、前記待機位置にある待機ポット内に挿入された前記洗浄具を、基板の水平横外側方を覆って洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態のカップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており、前記洗浄工程における前記洗浄具の昇降ストロークは、前記洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ前記洗浄具の下端が前記カップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されていることを特徴としている。」と訂正する。
(1-4)訂正事項d
明細書の段落番号【0007】の記載を、
「また、請求項2に係る発明の回転式基板洗浄装置は、上述のような目的を達成するために、基板を鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持する基板保持手段と、基板表面を洗浄する洗浄具と、その洗浄具を基板上の洗浄位置と基板上から外れた待機位置とにわたって変位する洗浄具移動手段と、洗浄具を、基板に作用させて洗浄する作用位置と、その作用位置よりも高い非作用位置とにわたって昇降する洗浄具昇降手段と、基板表面の洗浄具による洗浄箇所に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備えた回転式基板洗浄装置において、洗浄具昇降手段を、洗浄具を洗浄位置と待機位置とにわたって移動するときに洗浄具を昇降する第1の洗浄具昇降手段と、洗浄具が洗浄位置にある状態で前記洗浄具を昇降する第2の洗浄具昇降手段とから構成してあり、前記第1の洗浄具昇降手段による前記洗浄具の昇降ストロークは、前記待機位置にある待機ポット内に挿入された前記洗浄具を、基板の水平横外側方を覆って洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態のカップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており、前記第2の洗浄具昇降手段による前記洗浄具の昇降ストロークは、前記洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ前記洗浄具の下端が前記カップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されていることを特徴とする。」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(2-1)訂正事項aは、発明を特定する事項である「前記洗浄工程における前記洗浄具の昇降ストロークを前記洗浄開始工程および洗浄終了工程それぞれにおけるよりも小にしたこと」を、これに含まれる事項である「前記洗浄開始工程および洗浄終了工程それぞれにおける前記洗浄具の昇降ストロークは、前記待機位置にある待機ポット内に挿入された前記洗浄具を、基板の水平横外側方を覆って洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態のカップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており、前記洗浄工程における前記洗浄具の昇降ストロークは、前記洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ前記洗浄具の下端が前記カップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されていること」に変更し、しかも、上記変更した点については、願書に添付された明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0014】、【0017】、【0019】ないし【0022】に記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2-2)訂正事項bは、発明を特定する事項である「前記洗浄具昇降手段を、前記洗浄具を洗浄位置と待機位置とにわたって移動するときに前記洗浄具を昇降する第1の洗浄具昇降手段と、前記洗浄具が洗浄位置にある状態で前記第1の洗浄具昇降手段よりも小さいストロークで前記洗浄具を昇降する第2の洗浄具昇降手段とから構成してあること」を、これに含まれる事項である「前記洗浄具昇降手段を、前記洗浄具を洗浄位置と待機位置とにわたって移動するときに前記洗浄具を昇降する第1の洗浄具昇降手段と、前記洗浄具が洗浄位置にある状態で前記洗浄具を昇降する第2の洗浄具昇降手段と、から構成してあり、前記第1の洗浄具昇降手段による前記洗浄具の昇降ストロークは、前記待機位置にある待機ポット内に挿入された前記洗浄具を、基板の水平横外側方を覆って洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態のカップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており、前記第2の洗浄具昇降手段による前記洗浄具の昇降ストロークは、前記洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ前記洗浄具の下端が前記カップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されていること」に変更し、しかも上記変更した点については、特許明細書の段落【0014】、【0017】、【0019】ないし【0022】に記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2-3)訂正事項cおよび訂正事項dは、それぞれ上記訂正事項aおよび訂正事項bの訂正にともない、発明の詳細な説明の記載を整合させたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない
(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

3.特許異議の申立ての理由の概要
異議申立人は、次の理由及び証拠により、請求項1ないし2に係る発明の特許は取り消されるべき旨、主張している。

(理由)請求項1ないし2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(証拠)
甲第1号証:特開平6-326067号公報
甲第2号証:特開平7-74134号公報

4.当審による取消理由の概要
当審による取消理由の概要は、本件出願の請求項1ないし2に係る発明は、下記の刊行物1、刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1ないし2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

刊行物1:特開平6-326067号公報 (甲第1号証に同じ。)
刊行物2:特開平7-74134号公報(甲第2号証に同じ。)

5.本件発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件請求項1ないし2に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、それぞれ、平成17年5月27日付け訂正請求書に添付された訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次の事項で特定されるとおりのものである。
(本件発明1)
「基板保持手段によって鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持された基板の上方から外れた待機位置から前記基板の回転中心箇所まで洗浄具を移動させるとともに前記基板の回転中心箇所で前記洗浄具を下降する洗浄開始工程と、前記洗浄具を前記基板に作用させるとともに前記基板の外周縁に移動させ、そこから前記洗浄具を前記基板に作用させない位置まで上昇させ、前記基板の回転中心箇所まで前記洗浄具を移動させてから前記洗浄具を前記基板に作用させる位置まで下降させる洗浄工程と、その洗浄工程を複数回繰り返した後に、前記基板の外周縁箇所で前記洗浄具を上昇させてから待機位置に戻す洗浄終了工程とから成る基板洗浄方法において、
前記洗浄開始工程および洗浄終了工程それぞれにおける前記洗浄具の昇降ストロークは、前記待機位置にある待機ポット内に挿入された前記洗浄具を、基板の水平横外側方を覆って洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態のカップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており、
前記洗浄工程における前記洗浄具の昇降ストロークは、前記洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ前記洗浄具の下端が前記カップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されていることを特徴とする基板洗浄方法。」
(本件発明2)
「基板を鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持する基板保持手段と、
基板表面を洗浄する洗浄具と、
前記洗浄具を前記基板上の洗浄位置と前記基板上から外れた待機位置とにわたって変位する洗浄具移動手段と、
前記洗浄具を、前記基板に作用させて洗浄する作用位置と、その作用位置よりも高い非作用位置とにわたって昇降する洗浄具昇降手段と、
基板表面の前記洗浄具による洗浄箇所に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備えた回転式基板洗浄装置において、
前記洗浄具昇降手段を、前記洗浄具を洗浄位置と待機位置とにわたって移動するときに前記洗浄具を昇降する第1の洗浄具昇降手段と、
前記洗浄具が洗浄位置にある状態で前記洗浄具を昇降する第2の洗浄具昇降手段と、から構成してあり、
前記第1の洗浄具昇降手段による前記洗浄具の昇降ストロークは、前記待機位置にある待機ポット内に挿入された前記洗浄具を、基板の水平横外側方を覆って洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態のカップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており、
前記第2の洗浄具昇降手段による前記洗浄具の昇降ストロークは、前記洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ前記洗浄具の下端が前記カップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されていることを特徴とする回転式基板洗浄装置。」

6.引用刊行物に記載された発明
(1)刊行物1
上記刊行物1には、図面とともに下記の事項が記載されている。
(1-1)
「表面洗浄装置3は、図15に示すように、ウエハWを把持して昇降及び回転させるためのウエハ昇降回転機構130と、ウエハWの表面に当接してウエハWの表面を洗浄するブラシ洗浄機構131と、ウエハWの表面に純水を噴射する純水噴射機構132とを有している。ウエハ昇降回転機構130は、ウエハWの側面を把持する複数の把持爪133を有している。この把持爪133は、ウエハ昇降回転部134により昇降及び回転させられる。」(段落【0043】)
(1-2)
「ブラシ洗浄機構131はアーム135を有している。アーム135は、その先端がウエハWの中心から外周に向って揺動するように構成されている。アーム135の先端には、下向きの円形ブラシ136が回転可能に配置されている。図に二点鎖線で示す待機位置にアーム135が配置された状態において、円形ブラシ136に対向する位置には、円形ブラシ136を洗浄するための洗浄ノズル137が配置されている。この洗浄ノズル137により円形ブラシ136に付着したパーティクルが除去され得る。」(段落【0044】)
(1-3)
「純水噴射機構132は、昇降及び揺動するノズル支持アーム138を有している。ノズル支持アーム138の先端には、超音波で振動した純水を噴射する超音波ノズル139が、ウエハWの中心に向かい斜め下方に純水を噴射し得るように配置されている。なお、この噴射角度は調整可能である。ウエハWの下面には、洗浄時に表面から裏面に回り込むパーティクルを除去するための裏面洗浄ノズル140が配置されている。裏面洗浄ノズル140は、ウエハWの裏面に対して2方向に純水を噴射する。」(段落【0045】)
(1-4)
「ウエハWの裏面の洗浄が終了すると、ウエハ把持機構80が上昇する。続いて裏面洗浄装置2と表面洗浄装置3との間に配置された多関節ロボット7が、ウエハWを受け取って表面洗浄装置3に搬送する。なお、この間の待機中にも、ノズル34から純水がウエハWに噴霧され、ウエハWの酸化や乾燥が防止される。表面洗浄装置3では、ウエハ昇降回転機構130が上昇し、把持爪133がウエハWを把持する。続いて、ウエハWが回転し、ノズル支持アーム138を揺動させつつ超音波ノズル139から純水をウエハWの表面に噴射する。同時に、円形ブラシ136が回転しつつアーム135が揺動し、ウエハWの表面を洗浄する。」(段落【0055】)
(1-5)
「このときアーム135は、ウエハWの中心付近で下降し円形ブラシ136をウエハWの表面に当接させる。その状態でアーム135はウエハWの外周方向に移動する。円形ブラシ136が外周部に到達すると、アーム135は上昇する。このサイクルを洗浄中に繰り返すことでウエハWの洗浄が行われる。洗浄中においては、ウエハWの裏面に対して裏面洗浄ノズル145が純水を噴射する。これにより、表面から裏面に回り込むパーティクルが除去される。また、アーム135が待機位置(図15の二点鎖線)にある場合には、洗浄ノズル137から純水が円形ブラシ136に向かって噴射される。これにより円形ブラシ136に付着したパーティクルが除去され得る。」(段落【0056】)
(1-6)
「ここでは、回転しているウエハWの表面の中心に、円形ブラシ136を当接させ、径方向に円形ブラシ136を移動させている。この移動及びウエハWの回転により、円形ブラシ136がウエハWを擦ることにより生じるパーティクルは、
効率良くウエハWの外周側へ排出される。なお、円形ブラシ136と超音波ノズル139は同時に動作させなくてもよい。その片方でも充分な場合にはそれらを単独で動作させることも可能である。また、超音波ノズル139の噴射角度が調整できるので、より効率良くパーティクルを除去できる。」(段落【0057】)
(1-7)
図15には、アーム135の待機位置(二点鎖線)とウエハWの外周部との間に、ウエハWの水平横外側方を覆っている囲いが示されている。
また、図15から、ウエハ昇降回転機構130は、ウエハWを鉛直方向の回転軸回りに回転可能とするものであること、上記2点鎖線で示された待機位置は、ウエハWの上方から外れた位置に位置していることが読み取れる。
上記記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ウエハWを把持して昇降及び鉛直方向の回転軸回りに回転させるためのウエハ昇降回転機構130と、前記ウエハWの表面に当接して前記ウエハWの表面を洗浄するブラシ洗浄機構131と、前記ウエハWの表面に純水を噴射する純水噴射機構132とを有し、前記ウエハWの上方から外れた位置に位置している待機位置と前記ウエハWの外周部との間にウエハWの水平横外側方を覆っている囲いが設けられている表面洗浄装置3であって、前記ウエハ昇降回転機構130は、前記ウエハWの側面を把持する複数の把持爪133を有し、前記ブラシ洗浄機構131はアーム135を有するとともに、前記アーム135は、その先端が前記ウエハWの中心から前記待機位置まで揺動するとともに、その先端に円形ブラシ136が回転可能に配置されており、前記待機位置に配置された状態で、前記円形ブラシ136に向かって洗浄ノズル137から純水が噴射され、前記円形ブラシ136に付着したパーティクルが除去され得るように構成されており、前記表面洗浄装置3の洗浄時の動作は、前記ウエハ昇降回転機構130が上昇し、前記把持爪133が前記ウエハWを把持し、前記ウエハWが回転し、純水を前記ウエハWの表面に噴射し同時に、前記円形ブラシ136が回転しつつ前記アーム135が揺動し、前記アーム135は、前記ウエハWの中心付近で下降し前記円形ブラシ136を前記ウエハWの表面に当接させ、その状態で前記アーム135は前記ウエハWの外周方向に移動し、前記円形ブラシ136が外周部に到達すると、前記アーム135は上昇し、このサイクルを洗浄中に繰り返すことで前記ウエハWの洗浄が行われるものである前記表面洗浄装置3。」
(2)刊行物2
刊行物2には、図面とともに下記の事項が記載されている。
(2-1)
「以下、上記実施例装置の動作について簡単に説明する。基板の洗浄動作開始前には、揺動アーム1は、待機位置Aで待機しており、この位置Aでは、アーム荷重受止板7は支軸用ボス6の上面に載った状態で停止している。基板41の洗浄が行われる場合には、先ず待機位置Aでエアシリンダ18の出力ロッド19でアーム支軸5を押し上げ、次いで駆動モータ12でアーム支軸5をその軸線回りに回転させることにより洗浄ブラシ2を基板41の中心位置Bへ移動させる。」(段落【0020】)
(2-2)
「次に、その位置Bでエアシリンダ18の出力ロッド19を退行させてアーム支軸5を下降させることにより、アーム荷重受止板7を両腕てこ25の一方のコロ26に載せ掛ける。このときブラシ回転始動センサ36が作動して、洗浄ブラシ2が始動回転する。」(段落【0021】)
(2-3)
「一方、錘載置板21は、両腕てこ25の他方のコロ27に載り掛かっており、アーム支軸5の下降に伴って、両腕てこ25を介して押し上げられる。このとき、錘載置板21上の錘り22及び減速シリンダ31の出力ロッド31aが錘載置板21の上昇速度を減じるように作用するので、短腕25a側に載り掛かっているアーム荷重受止板7の下降速度は一層減速される。そして洗浄ブラシ2は回転しながら基板41上に緩やかに当接し、次いであるいは同時に、錘載置板21がストッパ32に当接して下降停止する。これにより、洗浄ブラシが基板表面と接触状態で始動回転するのを回避して、基板の表面に微細な傷が発生するのを防止することができる。」(段落【0022】)
(2-4)
「次に、揺動アーム1の駆動モータ12を逆転させることにより、洗浄ブラシ2を回転させた状態で、基板41の中心位置Bから周縁位置Cへ向けて移動させ、同時に洗浄液供給ノズル43から洗浄液を吐出させて基板41全面を洗浄する。そして基板41の洗浄後は、当該洗浄ブラシ2を前記待機位置Aに移動させる。なお、洗浄ブラシ2がB位置からC位置へ向けて移動する間、アーム荷重受止板7はコロ26に載り掛かったままの状態に維持される。また、基板の洗浄が不十分な場合等、必要な場合には、洗浄ブラシ2の持ち上げ、基板中心位置Bへの移動、洗浄ブラシ2の軟着、基板周縁位置Cへの移動という一連の動作が必要回数繰り返される。」(段落【0023】)
6.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1発明を対比すると、それらの機能及び構造からみて、後者の「ウエハW」は前者の「基板」に相当し、以下、同様に、「鉛直方向の軸心回りに回転」は「鉛直方向の軸芯周りで回転可能」に、「ウエハ昇降回転機構130」は「基板保持手段」に、「ウエハWの水平横外側方を覆っている囲い」は「基板の水平横外側方を覆って」なる「カップ」に、「円形ブラシ136」は「洗浄具」に、「アーム135」が「前記ウエハWの中心付近で下降し前記円形ブラシ136を前記ウエハWの表面に当接させ」ることは「基板の回転中心箇所で洗浄具を下降する洗浄開始工程」に、「前記円形ブラシ136を前記ウエハWの表面に当接させ、その状態で前記アーム135は前記ウエハWの外周方向に移動し、前記円形ブラシ136が外周部に到達すると、前記アーム135は上昇し、このサイクルを洗浄中に繰り返す」ことは「洗浄具を基板に作用させるとともに基板の外周縁に移動させ、そこから洗浄具を基板に作用させない位置まで上昇させ、前記基板の回転中心箇所まで前記洗浄具を移動させてから前記洗浄具を前記基板に作用させる位置まで下降させる洗浄工程と、その洗浄工程を複数回繰り返」すこと、にそれぞれ相当する。
そして、後者は、表面洗浄装置に係る発明ではあるが、発明の内容にウエハ洗浄時の動作も含むものであるからウエハ洗浄方法を構成する工程も実質的に含んでいるものといえる。
また、後者では、「前記アーム135は、前記ウエハWの中心付近で下降」する前は、「アーム135」は「待機位置」にあって、一枚の「ウエハW」の洗浄工程が終了した後は、「アーム135」を「待機位置」に戻す工程に移ると考えることが、「待機位置」との名称及びウエハWの交換の段取りの想定からみて妥当であるといえるから、後者は、前者の「基板の上方から外れた待機位置から前記基板の回転中心箇所まで洗浄具を移動させる」工程に相当する工程及び「その洗浄工程を複数回繰り返した後」に、「前記洗浄具を上昇させてから待機位置に戻す洗浄終了工程」に相当する工程を含むものといえる。
上記のことから、両者は、
「基板保持手段によって鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持された基板の上方から外れた待機位置から前記基板の回転中心箇所まで洗浄具を移動させるとともに前記基板の回転中心箇所で前記洗浄具を下降する洗浄開始工程と、前記洗浄具を前記基板に作用させるとともに前記基板の外周縁に移動させ、そこから前記洗浄具を前記基板に作用させない位置まで上昇させ、前記基板の回転中心箇所まで前記洗浄具を移動させてから前記洗浄具を前記基板に作用させる位置まで下降させる洗浄工程と、その洗浄工程を複数回繰り返した後に、前記洗浄具を上昇させてから待機位置に戻す洗浄終了工程とから成り、基板の水平横外側方を覆ってカップが設けられている基板洗浄方法」
において一致し、以下の点で相違する。

【相違点1】:
本件発明1では、「洗浄開始工程および洗浄終了工程それぞれにおける前記洗浄具の昇降ストローク」は、「待機位置にある」「洗浄具」を、「カップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており」、「洗浄工程における洗浄具の昇降ストローク」は、「洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ洗浄具の下端がカップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されている」ものであり、「洗浄具」を「基板の外周縁箇所」で上昇させているのに対して、刊行物1発明では、そのような工程となっているか否かが明らかでない点。
【相違点2】:
待機位置に関して、本件発明1では、「待機位置」に「待機ポット」があり、「洗浄具」を「待機ポット内に挿入」した状態となっているのに対して、刊行物1発明では、「待機位置」では、洗浄ノズルから純水が円形ブラシに向かって噴射されるが、「待機ポット」内に「挿入」した状態であるか否かが明らかでない点。
【相違点3】:
「基板の水平横外側方を覆って」なる「カップ」に関して、本件発明1では、「カップ」が、「洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態」のものであるのに対し、刊行物1発明では、「囲い」がそのような状態のものであるか否かが明らかでない点。

そこで、上記相違点について検討する。
【相違点1】について
マテリアル・ハンドリング技術において、作業効率の向上は常に意識されている課題であって、そのためマニュプレータのアーム等の制御については、必要最小限な動きをとるようにすることが技術常識といえる。
そして、本件発明1が属する基板洗浄の分野は、マテリアル・ハンドリングの知識に基づいて装置設計、運転制御が行われる技術分野といえ、基板洗浄の分野のニーズからみても作業効率の向上は当業者が常に意識する課題といえる。
これらのことから、基板洗浄技術において、洗浄具を装着したアームの移動に関して、効率化を目的として、それを必要最小限の距離で移動させて装置運転上、極力無駄な動きを排除することは、当業者が必要に応じて容易になし得る設計的事項といえる。
相違点1に係る本件発明1の基板洗浄方法を構成する工程について、その技術的意義を検討すると、本件訂正明細書の段落【0033】に「洗浄工程において、基板の外周縁箇所から基板の回転中心箇所まで洗浄具を戻す場合には、基板を待機位置と洗浄位置とにわたって移動させる場合よりも小さいストロークで洗浄具を昇降するから、洗浄具を基板上で外周縁箇所から回転中心箇所の洗浄位置に迅速に戻すことができ、洗浄処理効率を向上できるようになった。」と記載されているように、洗浄開始工程、洗浄工程、洗浄終了工程のそれぞれの工程における洗浄具の昇降ストロークを、必要最小限の距離とすることにより、洗浄処理効率を向上することにあるといえる。
また、上記昇降ストロークを変更可能とする機構は、本件出願時において格別のものではない。
してみると、刊行物1発明におけるブラシ洗浄機構131のアーム135の動作において、効率化を図るために必要最小限の動作とすることを目的に、アーム135を洗浄時の繰り返し動作中の昇降ストロークと洗浄開始時及び洗浄終了時の昇降ストロークを、上記囲いの高さを意識して異ならせ、さらに洗浄終了時の戻し位置を待機位置により近いウエハWの外周縁近傍位置とし、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項の工程に相当する工程とすることは、当業者が容易に想到し得たことといえる。
【相違点2】について
本件訂正明細書の段落【0018】には、「カップ5の水平方向の横外側方において、待機位置Cにある洗浄具12の周囲を覆うように待機ポット28が設けられ、その待機ポット28内の対向する一対の隅部の箇所それぞれに、待機ポット28内に挿入された洗浄具12に純水とかそれに薬液を混ぜたものとか更には超音波水などの洗浄液を供給するノズル29が設けられている。」との記載があり、「待機ポット」は、ノズルによる洗浄具の洗浄液等による洗浄に関与する囲い状のものを指すと解することができるが、刊行物1発明の待機位置でも、洗浄具に向かって洗浄ノズルから洗浄液が噴射されており、一般に洗浄場所に洗浄液の外部への飛散防止、有効利用の観点から囲い状のものを設けることは普通に行われている周知技術であるから、刊行物1発明における待機位置に該周知技術を適用して、相違点2に係る本件発明1の「待機ポット」に相当するものを設け、その内に洗浄具を挿入するようにすることは、当業者において、容易に想到し得たことといえる。
【相違点3】について
ウエハ洗浄装置の分野等においてカップ昇降手段を設けたものは、特開平4-26118号公報の第12図に示されているように周知技術である。
また、上記周知技術のカップ昇降手段を設けたものにあっては、カップの下降位置では、ウエハの交換作業が行われ、上昇位置では、洗浄作業が行われるが、洗浄位置におけるカップの機能の1つが洗浄液の飛散防止であることは技術常識といえる。
そして、刊行物1発明についての実施例を示す刊行物1の図15には、上記囲いの右下部に上下を指す矢印が示されており、この矢印は、カップ昇降手段が周知技術であることからみて、上記囲いが昇降することを示しているとみることが妥当であり、また、ウエハWの交換作業があることを考慮すると、カップは上昇位置にあるとみることが妥当である。
してみると、刊行物1発明における実際の洗浄工程における「囲い」に関する状態は、本件発明1のそれと比較して実質的に相違するものといえない。
たとえ、そうではないとしても、当業者であれば、ウエハ交換の利便性等の改善から刊行物1発明にカップ昇降手段を設けた上記周知技術を適用して相違点3に係る本件発明1の位置設定とすることは容易になし得たことといえる。

したがって、本件発明1は、当業者が刊行物1発明及び上記周知技術に基いて容易に想到し得たものであり、本件発明1の有する発明の効果は、刊行物1発明並びに上記周知の技術から当業者が予測し得る範囲内のものといえる。
(2)本件発明2について
本件発明2は、基板洗浄方法である本件発明1に対応した基板洗浄装置であり、上記(1)で検討したと同様に、本件発明2と刊行物1発明を対比すると、それらの機能及び構造からみて、後者の「ウエハW」は前者の「基板」に相当し、以下、同様に、「鉛直方向の軸心回りに回転」は「鉛直方向の軸芯周りで回転可能」に、「ウエハ昇降回転機構130」は「基板保持手段」に、「表面洗浄装置3」は「回転式基板洗浄装置」に、「ブラシ洗浄機構131」の「アーム135」は「洗浄具移動手段」に、「ウエハWの表面に純水を噴射する純水噴射機構132」は「基板表面の前記洗浄具による洗浄箇所に洗浄液を供給する洗浄液供給手段」に、「円形ブラシ136」は「洗浄具」に、「ウエハWの水平横外側方を覆っている囲い」は「基板の水平横外側方を覆って」なる「カップ」に、それぞれ相当する。
また、後者の「ブラシ洗浄機構131」の「洗浄アーム135」について、「その先端が前記ウエハWの中心から前記待機位置まで揺動する」とともに、「前記円形ブラシ136が回転しつつ前記アーム135が揺動し、前記アーム135は、前記ウエハWの中心付近で下降し前記円形ブラシ136を前記ウエハWの表面に当接させ、その状態で前記アーム135は前記ウエハWの外周方向に移動し、前記円形ブラシ136が外周部に到達すると、前記アーム135は上昇し、このサイクルを洗浄中に繰り返す」ものということは、「前記洗浄具を、前記基板に作用させて洗浄する作用位置と、その作用位置よりも高い非作用位置とにわたって昇降する洗浄具昇降手段」及び「前記洗浄具昇降手段を、前記洗浄具を洗浄位置と待機位置とにわたって移動するときに前記洗浄具を昇降する」「洗浄具昇降手段と、前記洗浄具が洗浄位置にある状態で前記洗浄具を昇降する」「洗浄具昇降手段」に相当する構成を備えるものであり、併せて「前記洗浄具昇降手段」を「前記洗浄具を洗浄位置と待機位置とにわたって移動」させる構成に相当する構成も備えてなるものといえる。
上記のことから、両者は、
「基板を鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持する基板保持手段と、
基板表面を洗浄する洗浄具と、
前記洗浄具を前記基板上の洗浄位置と前記基板上から外れた待機位置とにわたって変位する洗浄具移動手段と、
前記洗浄具を、前記基板に作用させて洗浄する作用位置と、その作用位置よりも高い非作用位置とにわたって昇降する洗浄具昇降手段と、
基板表面の前記洗浄具による洗浄箇所に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備えた回転式基板洗浄装置において、
前記洗浄具昇降手段を、前記洗浄具を洗浄位置と待機位置とにわたって移動するときに前記洗浄具を昇降する洗浄具昇降手段と、
前記洗浄具が洗浄位置にある状態で前記洗浄具を昇降する洗浄具昇降手段と、基板の水平横外側方を覆ったカップと、から構成してある回転式基板洗浄装置。」
において一致し、以下の点で相違する。

【相違点4】:
洗浄具昇降手段に関して、本件発明2では、洗浄具昇降手段を「前記洗浄具を洗浄位置と待機位置とにわたって移動するときに前記洗浄具を昇降する第1の洗浄具昇降手段」と、「前記洗浄具が洗浄位置にある状態で前記洗浄具を昇降する第2の洗浄具昇降手段」と、から構成し、「第1の洗浄具昇降手段による洗浄具の昇降ストローク」は、「待機位置にある洗浄具を、カップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており」、「第2の洗浄具昇降手段による洗浄具の昇降ストローク」は、「洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ洗浄具の下端がカップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されている」ものであるのに対して、刊行物1発明では、洗浄開始位置と待機位置での昇降の際と洗浄時の昇降の際に使用するアームに「第1の」あるいは「第2の」との区別はなく、「洗浄開始位置」と「待機位置」での昇降の際と洗浄時の昇降の際のストロークについて、かかる構成となっているか否かが明らかでない点。
【相違点5】:
「待機位置」に関して、本件発明2では、「待機位置」に「待機ポット」があり、「洗浄具」を「待機ポット内に挿入」した状態となっているのに対して、刊行物1発明では、「待機位置」では、洗浄ノズルから純水が円形ブラシに向かって噴射されるが、「待機ポット」内に「挿入」した状態であるか否かが明らかでない点。
【相違点6】:
「基板の水平横外側方を覆って」なる「カップ」に関して、本件発明2では、「カップ」が、「洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態」のものであるのに対し、刊行物1発明では、「囲い」がそのような状態のものであるか否か明らかでない点。

そこで、上記相違点について検討する。
【相違点4】について
相違点4に係る本件発明1の基板洗浄方法を構成する工程について、その技術的意義を検討すると、本件訂正明細書の段落【0033】に記載のような技術的意義を基本として、さらに段落【0034】に「請求項2に係る発明の回転式基板洗浄装置によれば、基板を待機位置と洗浄位置とにわたって移動させる場合の昇降は第1の洗浄具昇降手段により、そして、洗浄工程において、基板の外周縁箇所から基板の回転中心箇所まで洗浄具を戻す場合の昇降は、第1の洗浄具昇降手段によるときよりも小さな昇降ストロークに設定した第2の洗浄具昇降手段によりそれぞれ行わせるから、上述した請求項1に係る発明の基板洗浄方法を実施する上で便利な装置を提供できるようになった。」と記載されているような、基板を待機位置と洗浄位置とにわたって移動させる場合の昇降と、洗浄工程において、基板の外周縁箇所から基板の回転中心箇所まで洗浄具を戻す場合の昇降とに、それぞれ昇降ストロークの設定値の異なる第1の洗浄具昇降手段及び第2の洗浄具昇降手段を用いることにより、便利な装置を提供できるという技術的意義を有することにあるといえる。
ここで、本件発明2の「第1の洗浄具昇降手段」及び「第2の洗浄具昇降手段」について検討すると、本件訂正明細書には、実施例1としての複数の昇降機構によりストローク変更を可能としたものばかりでなく、第2の実施例として、図5に電動パルスモータ34として示されるような単体でストローク変更が可能な昇降機構を有する基板洗浄装置が示されているから、本件発明2は、その「第1の洗浄具昇降手段」及び「第2の洗浄具昇降手段」として、実施例1として示されたような複数の昇降機構によりストローク変更を可能とするものも、実施例2として示された単体の昇降機構によりストローク変更が可能なものも含むものであると解することが相当である。
ところが、ストロークが変更可能な昇降手段としては、ストロークを単一の昇降機構で変更可能としたものも、複数の昇降機構により変更可能としたものもどちらも周知技術であり、刊行物2に「減速シリンダ31」及び「ストッパ31」として示されるようなアームの昇降機構とは別体に設けた昇降ストロークの微調整機構も周知技術である。
また、複数の昇降機構により変更可能とした昇降手段が、独立に制御し易い等の見地でみると便利であるということも普通に知られていることといえる。
さらに、昇降手段において、上記周知技術の選択は、装置の利便性、メンテナンスのし易さ、コスト等に応じ、適宜されることは技術常識である。
上記のことに加え、上記(1)で相違点1について検討したことを考慮すると、相違点2に係る本件発明2の発明特定事項の構成は、当業者が刊行物1発明に基づき利便性等の必要性に応じ適宜上記周知技術を適用することにより容易になし得たことといえる。
【相違点5】について、
相違点5は、本件発明1に係る相違点2に対応する相違点であり、相違点2について上記(1)で検討したと同様の理由から、相違点5に係る本件発明2の発明特定事項の構成は、当業者が刊行物1発明及び上記周知技術等に基き容易になし得たことといえる。
【相違点6】について、
相違点6は、本件発明1に係る相違点3に対応する相違点であり、相違点3について上記(1)で検討したと同様の理由から、刊行物1発明における実際の洗浄工程における「囲い」に関する状態は、本件発明2のそれと比較して実質的に相違するものといえないし、そうではないとしても、当業者であれば、相違点6に係る本件発明1の位置設定とすることは容易になし得たことといえる。

したがって、本件発明2は、当業者が刊行物1発明及び上記周知技術に基づいて容易になし得たものであり、本件発明2の有する発明の効果は、刊行物1発明並びに上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものといえる。
(3)まとめ
以上のことから、本件発明1ないし2は、刊行物1発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものであるといえる。

7.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1ないし2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年制令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
基板洗浄方法およびそれに使用する回転式基板洗浄装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】基板保持手段によって鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持された基板の上方から外れた待機位置から前記基板の回転中心箇所まで洗浄具を移動させるとともに前記基板の回転中心箇所で前記洗浄具を下降する洗浄開始工程と、前記洗浄具を前記基板に作用させるとともに前記基板の外周縁に移動させ、そこから前記洗浄具を前記基板に作用させない位置まで上昇させ、前記基板の回転中心箇所まで前記洗浄具を移動させてから前記洗浄具を前記基板に作用させる位置まで下降させる洗浄工程と、その洗浄工程を複数回繰り返した後に、前記基板の外周縁箇所で前記洗浄具を上昇させてから待機位置に戻す洗浄終了工程とから成る基板洗浄方法において、
前記洗浄開始工程および洗浄終了工程それぞれにおける前記洗浄具の昇降ストロークは、前記待機位置にある待機ポット内に挿入された前記洗浄具を、基板の水平横外側方を覆って洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態のカップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており、
前記洗浄工程における前記洗浄具の昇降ストロークは、前記洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ前記洗浄具の下端が前記カップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されていることを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項2】基板を鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持する基板保持手段と、
基板表面を洗浄する洗浄具と、
前記洗浄具を前記基板上の洗浄位置と前記基板上から外れた待機位置とにわたって変位する洗浄具移動手段と、
前記洗浄具を、前記基板に作用させて洗浄する作用位置と、その作用位置よりも高い非作用位置とにわたって昇降する洗浄具昇降手段と、
基板表面の前記洗浄具による洗浄箇所に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備えた回転式基板洗浄装置において、
前記洗浄具昇降手段を、前記洗浄具を洗浄位置と待機位置とにわたって移動するときに前記洗浄具を昇降する第1の洗浄具昇降手段と、
前記洗浄具が洗浄位置にある状態で前記洗浄具を昇降する第2の洗浄具昇降手段と、から構成してあり、
前記第1の洗浄具昇降手段による前記洗浄具の昇降ストロークは、前記待機位置にある待機ポット内に挿入された前記洗浄具を、基板の水平横外側方を覆って洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態のカップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており、
前記第2の洗浄具昇降手段による前記洗浄具の昇降ストロークは、前記洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ前記洗浄具の下端が前記カップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されていることを特徴とする回転式基板洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用のガラス基板、液晶表示装置用のガラス基板、光ディスク用の基板等の基板に、純水などの洗浄液を供給して洗浄処理するために、基板保持手段によって鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持された基板の上方から外れた待機位置から基板の回転中心箇所まで洗浄具を移動させるとともに基板の回転中心箇所で洗浄具を下降する洗浄開始工程と、洗浄具を基板に作用させるとともに基板の外周縁に移動させ、そこから洗浄具を基板に作用させない位置まで上昇させ、基板の回転中心箇所まで洗浄具を移動させてから洗浄具を基板に作用させる位置まで下降させる洗浄工程と、その洗浄工程を複数回繰り返した後に、基板の外周縁箇所で洗浄具を上昇させてから待機位置に戻す洗浄終了工程とから成る基板洗浄方法およびそれに使用する回転式基板洗浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板を回転させながら、その表面を洗浄具で洗浄する場合、従来一般に、例えば、実開平1-107129号公報に開示されているように、エアシリンダによって、洗浄具(洗浄ブラシ)を洗浄液の飛散を防止するカップの外に位置する待機位置から上昇させ、そこから基板の回転中心箇所の上方まで移動させてから下降し、基板の外周縁まで基板表面に沿わせて移動させ、その移動時に、基板を鉛直方向の軸芯周りで回転させながら、その基板表面に洗浄液を供給し、基板表面に付着したパーティクルやゴミを剥離させるとともに、その剥離したパーティクルやゴミなどの洗浄除去物を洗浄液とともに基板回転による遠心力を利用しながら基板の外方へ流出させるようにしている。また、洗浄終了後には、洗浄具を上昇させてから待機位置の上方まで変位させ、しかる後に、待機位置に下降させるように構成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来では、洗浄具を基板の外周縁に移動した後に、その洗浄具を基板に作用しない位置まで上昇させ、しかる後に、基板の回転中心箇所まで戻してから下降させ、基板の回転中心箇所から基板の外周縁まで洗浄具を2〜4回繰り返して移動させることにより洗浄するようにしている。
【0004】
しかしながら、従来では、洗浄具を基板上で外周縁箇所から回転中心箇所に戻すために昇降させるのに、基板を待機位置と洗浄位置とにわたって移動するときに昇降するエアシリンダを用いるようにしている。このため、カップを越える必要が無いにもかかわらず、洗浄具の昇降ストロークが大きく、洗浄具を基板上で外周縁箇所から回転中心箇所に戻すために時間を要し、洗浄処理効率が低下する欠点があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、請求項1に係る発明の基板洗浄方法は、洗浄具を基板上で外周縁箇所から回転中心箇所に迅速に戻すことにより洗浄処理効率を向上できるようにすることを目的とし、また、請求項2に係る発明の回転式基板洗浄装置は、請求項1に係る発明の基板洗浄方法を実施する上で有効な装置を提供できるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、上述のような目的を達成するために、基板保持手段によって鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持された基板の上方から外れた待機位置から基板の回転中心箇所まで洗浄具を移動させるとともに基板の回転中心箇所で洗浄具を下降する洗浄開始工程と、洗浄具を基板に作用させるとともに基板の外周縁に移動させ、そこから洗浄具を基板に作用させない位置まで上昇させ、基板の回転中心箇所まで洗浄具を移動させてから洗浄具を基板に作用させる位置まで下降させる洗浄工程と、その洗浄工程を複数回繰り返した後に、基板の外周縁箇所で洗浄具を上昇させてから待機位置に戻す洗浄終了工程とから成る基板洗浄方法において、前記洗浄開始工程および洗浄終了工程それぞれにおける前記洗浄具の昇降ストロークは、前記待機位置にある待機ポット内に挿入された前記洗浄具を、基板の水平横外側方を覆って洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態のカップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており、前記洗浄工程における前記洗浄具の昇降ストロークは、前記洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ前記洗浄具の下端が前記カップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されていることを特徴としている。
【0007】
また、請求項2に係る発明の回転式基板洗浄装置は、上述のような目的を達成するために、基板を鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持する基板保持手段と、基板表面を洗浄する洗浄具と、その洗浄具を基板上の洗浄位置と基板上から外れた待機位置とにわたって変位する洗浄具移動手段と、洗浄具を、基板に作用させて洗浄する作用位置と、その作用位置よりも高い非作用位置とにわたって昇降する洗浄具昇降手段と、基板表面の洗浄具による洗浄箇所に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備えた回転式基板洗浄装置において、洗浄具昇降手段を、洗浄具を洗浄位置と待機位置とにわたって移動するときに洗浄具を昇降する第1の洗浄具昇降手段と、洗浄具が洗浄位置にある状態で前記洗浄具を昇降する第2の洗浄具昇降手段とから構成してあり、前記第1の洗浄具昇降手段による前記洗浄具の昇降ストロークは、前記待機位置にある待機ポット内に挿入された前記洗浄具を、基板の水平横外側方を覆って洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態のカップの上端面よりも上方まで上昇できるように設定されており、前記第2の洗浄具昇降手段による前記洗浄具の昇降ストロークは、前記洗浄具を基板に作用させる位置から、基板から上方に離間して作用しない位置でかつ前記洗浄具の下端が前記カップの上端面よりも下方になる位置まで上昇するように設定されていることを特徴とする。
【0008】
【作用】
請求項1に係る発明の基板洗浄方法の構成によれば、基板の上方から外れた待機位置から基板の回転中心箇所の洗浄位置まで洗浄具を移動させる場合、および、基板の外周縁箇所の洗浄位置から待機位置に戻す場合それぞれでは、カップを越えるように洗浄具を十分昇降させながら、洗浄工程において、基板の外周縁箇所から基板の回転中心箇所まで洗浄具を戻す場合には、カップを越える必要が無いことに着目し、洗浄具を基板に作用させない位置まで上昇させ、その位置と基板に作用させる位置との小さいストロークで昇降させることができる。
【0009】
また、請求項2に係る発明の回転式基板洗浄装置の構成によれば、基板の上方から外れた待機位置から基板の回転中心箇所の洗浄位置まで洗浄具を移動させる場合、および、基板の外周縁箇所の洗浄位置から待機位置に戻す場合それぞれでは、第1の洗浄具昇降手段により洗浄具を昇降させてカップを越えさせながら、洗浄工程において、基板の外周縁箇所から基板の回転中心箇所まで洗浄具を戻す場合には、第2の洗浄具昇降手段により、第1の洗浄具昇降手段によるときよりも小さなストロークで洗浄具を昇降させることができる。
【0010】
【実施例】
次に、本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の回転式基板洗浄装置の第1実施例を示す要部の概略縦断面図、図2は平面図であり、電動モータ1の駆動によって鉛直方向の軸芯周りで回転する回転軸2の上端に、基板Wを真空吸着保持する回転台3が一体回転可能に取り付けられ、基板Wを鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持する基板保持手段4が構成されている。
【0011】
なお、本実施例においては、回転台3を真空吸着式のものとして基板保持手段4を構成しているが、これに限られるものではなく、例えば、回転台3上に基板Wの外縁を支持する基板支持部材を複数設けるとともに、この基板支持部材の上端に基板Wの水平方向の位置を規制する位置決めピンを設けて基板保持手段を構成し、基板Wを回転台3の上面から離間した状態で回転可能に保持させるようにしてもよい。
【0012】
基板保持手段4およびそれによって保持された基板Wの周囲は、昇降駆動機構(図示せず)によって昇降可能なカップ5で覆われている。カップ5の横外側方に、基板Wの回転中心側に向けて純水あるいは純水に薬液を混ぜたものなどの洗浄液を噴出供給する洗浄液供給手段としてのノズル6…が設けられている。
【0013】
また、カップ5の横外側方に、図3の一部切欠全体概略側面図に示すように、アングル形状の支持アーム7の回転支軸8が、基台9に設けられた支持体10に昇降および鉛直方向の第1の軸芯P1周りで(図1、図2参照)回転可能に設けられるとともに、基台9に回転のみ可能に設けられた回転筒11に昇降のみ可能に設けられ、その支持アーム7の先端側アーム部分7aの下部に、鉛直方向の第2の軸芯P2周りで(図1、図2参照)回転可能に、基板表面を洗浄する洗浄具12が設けられている。
【0014】
回転支軸8の下端に第1の洗浄具昇降手段としての第1のエアシリンダ13が設けられている。また、回転筒11にベルト14を介して電動モータ15が連動連結されている。図中、16は、洗浄具12が基板Wの回転中心箇所A、基板Wの外周縁箇所B、および、基板Wの上方から外れた非洗浄時の待機位置Cのいずれにあるかを検出する位置検出機構を示している。
【0015】
支持体10に水平方向の軸芯周りで揺動可能にバランスアーム17が設けられ、バランスアーム17の両端に第1および第2の当たりローラ18,19が設けられている。
【0016】
回転支軸8の途中箇所に受け止め板20が設けられ、一方、基台9に突設された支柱21に昇降可能にウェイト台22が設けられるとともに、支柱21に外嵌する状態でウェイト台22に錘23…が載置されている。受け止め板20の下面に第1の当たりローラ18が当接され、一方、ウェイト台22の下面に第2の当たりローラ19が当接されている。錘23…の重量は、回転支軸8、支持アーム7および洗浄具12等の重量よりやや小に設定されている。
【0017】
基台9に立設された支持部材24に第2の洗浄具昇降手段としての第2のエアシリンダ25が設けられ、その第2のエアシリンダ25のシリンダロッド25aの先端がウェイト台22の上面に当接されている。また、支持部材24にストッパー26が設けられ、その先端がウェイト台22の上面に当接することにより、洗浄具12が基板Wの回転中心箇所Aから基板Wの外周縁箇所Bまでの洗浄位置にあるときの最下降位置を設定するように構成されている。ストッパー26にはマイクロメータ27が付設され、設定すべき最下降位置を調整できるように構成されている。
【0018】
図1および図2に示すように、カップ5の水平方向の横外側方において、待機位置Cにある洗浄具12の周囲を覆うように待機ポット28が設けられ、その待機ポット28内の対向する一対の隅部の箇所それぞれに、待機ポット28内に挿入された洗浄具12に純水とかそれに薬液を混ぜたものとか更には超音波水などの洗浄液を供給するノズル29が設けられている。
【0019】
前記第1のエアシリンダ13の昇降ストロークは、待機ポット28内に挿入された洗浄具12を、基板Wの水平横外側方を覆って洗浄液の飛散を防止する位置まで上昇した状態のカップ5の上端面よりも上方まで上昇できるように設定されている。他方、第2のエアシリンダ25の昇降ストロークは、洗浄具12を基板Wに作用させる位置から、基板Wから上方に離間して作用しない位置でかつ洗浄具12の下端がカップ5の上端面よりも下方になる位置まで上昇するに足るように設定されている。
【0020】
次に上記構成の回転式基板処理装置を用いての基板洗浄方法につき、図4の動作説明図を用いて説明する。
(1)洗浄開始工程
図4の(a)に示すように、基板Wの上方から外れた待機位置Cにおいて、第1のエアシリンダ13を伸長して待機ポット28内からカップ5を越える位置まで洗浄具12を上昇させた後、電動モータ15を駆動して洗浄具12を基板Wの回転中心箇所Aまで移動し、その後に、第1および第2のエアシリンダ13,25を短縮して基板Wに作用させる位置まで下降する。
【0021】
(2)洗浄工程
図4の(b)に示すように、基板Wを回転させながら、電動モータ15を駆動して洗浄具12を基板Wの回転中心箇所Aから基板Wの外周縁箇所Bまで移動する。その後に、図4の(c)に示すように、第2のエアシリンダ25を伸長して、基板Wから上方に離間して作用しない位置でかつ洗浄具12の下端がカップ5の上端面よりも下方になる位置まで洗浄具12を上昇し、そこから、電動モータ15を駆動して洗浄具12を基板Wの回転中心箇所Aまで移動し、その後に、第2のエアシリンダ25を短縮して基板Wに作用させる位置まで下降する。次いで、前述同様に、図4の(b)に示すように、洗浄具12を基板Wの回転中心箇所Aから基板Wの外周縁箇所Bまで移動する。この洗浄具12を基板Wに作用させながら回転中心箇所Aから基板Wの外周縁箇所Bまで移動する工程を2〜4回繰り返す。この洗浄工程における回転中心箇所Aから基板Wの外周縁箇所Bまでの位置を洗浄位置と称する。
【0022】
(3)洗浄終了工程
図4の(d)に示すように、基板Wの外周縁箇所Bにおいて、第1および第2のエアシリンダ13,25を伸長してカップ5を越える位置まで洗浄具12を上昇させた後、電動モータ15を駆動して洗浄具12を待機位置Cの上方まで移動し、その後に、第1のエアシリンダ13を短縮して待機ポット28内に挿入する位置まで洗浄具12を下降する。
【0023】
以上の構成により、洗浄工程における洗浄具12の昇降ストロークが小さくなり、前述洗浄工程での処理時間を短縮でき、全体としての洗浄処理時間を短縮できるのである。
【0024】
図5は、第2実施例を示す一部切欠全体側面図であり、第1実施例と異なるところは次の通りである。
【0025】
すなわち、回転支軸8の下端が支持ブラケット30に受け止め支持され、支持ブラケット30がネジ軸31に外嵌螺合されるとともにガイドロッド32に昇降のみ可能に案内され、そして、ネジ軸31にタイミングベルト33を介して正逆転可能な電動パルスモータ34が連動連結されている。
【0026】
電動パルスモータ34にはコントローラ35が接続されている。コントローラ35において、大小の回転数が予め設定されていて、前記洗浄工程では小さい方の回転数が電動パルスモータ34に指令され、一方、前記洗浄開始工程および洗浄終了工程それぞれでは、大きいほうの回転数が電動パルスモータ34に指令され、前述第1実施例と同様に、洗浄工程時には小さなストロークで洗浄具12を昇降し、一方、洗浄開始工程時および洗浄終了工程時それぞれには、大きなストロークで洗浄具12を昇降するように構成されている。他の構成は第1実施例と同じであり、同一図番を付すことにより、その説明は省略する。
【0027】
上述した第2実施例における、洗浄開始工程時および洗浄終了工程時それぞれにおいて大きなストロークで洗浄具12を昇降するように、コントローラ35により大きいほうの回転数を電動パルスモータ34に指令して駆動するための制御構成を第1の洗浄具昇降手段と称する。また、洗浄工程時において小さなストロークで洗浄具12を昇降するように、コントローラ35により小さいほうの回転数を電動パルスモータ34に指令して駆動するための制御構成を第2の洗浄具昇降手段と称する。
【0028】
上記第2実施例において、電動パルスモータ34の回転速度を変更し、例えば、基板Wとの衝突による傷付きの問題が無いように、洗浄具12の上昇速度および待機位置Cでの下降速度それぞれを洗浄工程での下降速度よりも常に速くし、かつ、洗浄開始に先立っての基板Wの回転中心箇所Aでの基板Wに近接する所定位置までの下降速度は速くし、その後に遅い速度にして基板Wに作用させるように構成しても良い。
【0029】
上記実施例では、洗浄具12を昇降するのに、支持アーム7全体を昇降するように構成しているが、洗浄工程時のみ、あるいは、洗浄開始工程時および洗浄終了工程時それぞれのいずれをも、支持アーム7の先端で、洗浄具12だけを昇降するように構成しても良い。
【0030】
上述洗浄具12として、ナイロンブラシやモヘアブラシやスポンジ製やフェルト製などのように、軟質材料のものを使用する場合に限らず、プラスチック製のものを使用する場合にも適用できる。
【0031】
また、上記実施例では、洗浄具12を基板Wの表面に沿って水平方向に変位するのに、電動モータ15により支持アーム7を鉛直方向の第1の軸芯P1周りで回転させるように構成しているが、エアシリンダなどにより支持アーム7を直線方向に移動させるように構成しても良く、支持アーム7と電動モータとから成る構成や支持アーム7とエアシリンダとから成る構成などをして洗浄具移動手段と総称する。
【0032】
本発明としては、上述実施例のような円形基板に限らず、角型基板に対する回転式基板洗浄装置にも適用できる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明の基板洗浄方法によれば、洗浄工程において、基板の外周縁箇所から基板の回転中心箇所まで洗浄具を戻す場合には、基板を待機位置と洗浄位置とにわたって移動させる場合よりも小さいストロークで洗浄具を昇降するから、洗浄具を基板上で外周縁箇所から回転中心箇所の洗浄位置に迅速に戻すことができ、洗浄処理効率を向上できるようになった。
【0034】
また、請求項2に係る発明の回転式基板洗浄装置によれば、基板を待機位置と洗浄位置とにわたって移動させる場合の昇降は第1の洗浄具昇降手段により、そして、洗浄工程において、基板の外周縁箇所から基板の回転中心箇所まで洗浄具を戻す場合の昇降は、第1の洗浄具昇降手段によるときよりも小さな昇降ストロークに設定した第2の洗浄具昇降手段によりそれぞれ行わせるから、上述した請求項1に係る発明の基板洗浄方法を実施する上で便利な装置を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の回転式基板洗浄装置の第1実施例を示す要部の概略縦断面図である。
【図2】
平面図である。
【図3】
一部切欠全体概略側面図である。
【図4】
動作説明図である。
【図5】
第2実施例の一部切欠全体概略側面図である。
【符号の説明】
4…基板保持手段
6…洗浄液供給手段としてのノズル
12…洗浄具
13…第1のエアシリンダ
15…洗浄具移動手段としての電動モータ
25…第2のエアシリンダ
34…電動パルスモータ
35…コントローラ
A…回転中心箇所
B…外周縁箇所
C…待機位置
W…基板
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-11-08 
出願番号 特願平7-152162
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B08B)
P 1 651・ 832- ZA (B08B)
最終処分 取消  
特許庁審判長 増山 剛
特許庁審判官 北川 清伸
芦原 康裕
登録日 2002-09-20 
登録番号 特許第3352565号(P3352565)
権利者 大日本スクリーン製造株式会社
発明の名称 基板洗浄方法およびそれに使用する回転式基板洗浄装置  
代理人 杉谷 勉  
代理人 杉谷 勉  

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