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審決分類 |
審判 一部申し立て 特29条の2 H01L 審判 一部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 H01L 審判 一部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 H01L 審判 一部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1132582 |
異議申立番号 | 異議2003-71535 |
総通号数 | 76 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-08-11 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-06-16 |
確定日 | 2005-12-28 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3356522号「洗浄方法、かかる洗浄方法を使った半導体装置の製造方法および液晶表示装置の製造方法」の請求項1ないし5、9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3356522号の請求項1ないし5、9に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続きの経緯 特許第3356522号の請求項1ないし10に係る特許についての特許出願は、平成6年1月19日に出願され、平成14年10月4日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1ないし5、9に係る特許について、申立人山口雅行より、平成15年6月16日に特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年7月20日に特許異議意見書の提出及び訂正請求がなされたものである。 第2.訂正の適否 (1)訂正の内容 上記訂正請求の内容は、以下の通りである。 (a)特許請求の範囲の請求項1の記載である 「 【請求項1】 被洗浄物を薬液に浸漬することにより処理する工程と; 前記薬液で処理した被洗浄物を、純水よりなる第1の温度の洗浄液で洗浄し、塵埃粒子を前記被洗浄物から除去する第1の洗浄工程と; 前記第1の洗浄工程で洗浄した被洗浄物を、純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液で洗浄し、前記被洗浄物から薬液を除去する第2の洗浄工程とよりなり、 前記第1の温度は洗浄液中で塵埃粒子の氷結が生じないような温度に設定されることを特徴とする洗浄方法。」を、 「 【請求項1】 半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を薬液に浸漬することにより処理する工程と; 前記薬液で処理した半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を、純水よりなる第1の温度の洗浄液で洗浄し、塵埃粒子を前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板から除去する第1の洗浄工程と; 前記第1の洗浄工程で洗浄した半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を、純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液で洗浄し、前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板から薬液を除去する第2の洗浄工程とよりなり、 前記第1の温度は洗浄液中で塵埃粒子の氷結が.生じないような温度に設定されることを特徴とする洗浄方法。」と訂正する。 (b)特許請求の範囲の請求項4の記載である 「 【請求項4】 前記被洗浄物の表面は親水性であることを特徴とする請求項1記載の洗浄方法。」を、 「 【請求項4】 前記薬液がH2SO4を含み、前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板の表面は親水性であることを特徴とする請求項1記載の洗浄方法。」と訂正する。 (c)特許請求の範囲の請求項7の記載である 「 【請求項7】 被洗浄物を処理する薬液を保持する薬液槽と; 前記薬液で処理された被洗浄物を洗浄する洗浄液を保持する洗浄液槽と; 前記洗浄液槽に前記洗浄液を第1の温度で供給する第1の温度制御手段と; 前記洗浄液槽に前記洗浄液を、前記第1の温度よりも実質的に高い第2の温度で供給する第2の温度制御手段と; 前記第1の温度制御手段と前記第2の温度制御手段とを、前記洗浄液が前記洗浄液槽にまず第1の温度で供給されついて前記第2の温度で供給されるように制御する制御手段とよりなることを特徴とする洗浄装置。」を、 「 【請求項7】 被洗浄物を処理する薬液を保持する薬液槽と; 前記薬液で処理された被洗浄物を洗浄する洗浄液を保持する洗浄液槽と; 前記洗浄液槽に前記洗浄液を第1の温度で供給する第1の温度制御手段と; 前記洗浄液槽に前記洗浄液を、前記第1の温度よりも実質的に高い第2の温度で供給する第2の温度制御手段と; 前記第1の温度制御手段と前記第2の温度制御手段とを、前記洗浄液が前記洗浄液槽にまず第1の温度で供給されついで前記第2の温度で供給されるように制御する制御手段とよりなることを特徴とする洗浄装置。」と訂正する。 (d)特許請求の範囲の請求項9の記載である 「 【請求項9】 被洗浄物を処理する薬液を保持する薬液槽と; 純水よりなる第1の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第1の洗浄槽と; 純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第2の洗浄槽と; 前記第1の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第1の温度に設定する第1の温度制御手段と; 前記第2の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第2の温度に設定する第2の温度制御手段とよりなる洗浄装置。」を、 「 【請求項9】 半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を処理する薬液を保持する薬液槽と; 純水よりなる第1の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第1の洗浄槽と; 純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第2の洗浄槽と; 前記第1の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第1の温度に設定する第1の温度制御手段と; 前記第2の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第2の温度に設定する第2の温度制御手段とよりなる洗浄装置。」と訂正する。 (e)明細書の第0017段落の記載である 「 【課題を解決するための手段】 本発明は、上記の課題を、 被洗浄物を薬液に浸漬することにより処理する工程と; 前記薬液で処理した被洗浄物を第1の温度の洗浄液で洗浄し、塵埃粒子を前記被洗浄物から除去する第1の洗浄工程と; 前記第1の洗浄工程で洗浄した被洗浄物を前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液で洗浄し、前記被洗浄物から薬液を除去する第2の洗浄工程とよりなり、 前記第1の温度は洗浄液中で塵埃粒子の氷結が生じないような温度に設定されることを特徴とする洗浄方法及びかかる洗浄方法を使った半導体装置あるいは液晶表示装置の製造方法により、または 被洗浄物を処理する薬液を保持する薬液槽と; 前記薬液で処理された被洗浄物を洗浄する洗浄液を保持する洗浄液槽と; 前記洗浄液槽に前記洗浄液を第1の温度で供給する第1の温度制御手段と; 前記洗浄液槽に前記洗浄液を、前記第1の温度よりも実質的に高い第2の温度で供給する第2の温度制御手段と; 前記第1の温度制御手段と前記第2の温度制御手段とを、前記洗浄液が前記洗浄液槽にまず第1の温度で供給されついて前記第2の温度で供給されるように制御する制御手段とよりなることを特徴と する洗浄装置により、または 被洗浄物を処理する薬液を保持する薬液槽と; 第1の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第1の洗浄槽と; 前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第2の洗浄槽と; 前記第1の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第1の温度に設定する第1の温度制御手段と; 前記第2の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第2の温度に設定する第2の温度制御手段とよりなる洗浄装置により解決する。」を、 「 【課題を解決するための手段】 本発明は、上記の課題を、 半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を薬液に浸漬することにより処理する工程と; 前記薬液で処理した半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を純水よりなる第1の温度の洗浄液で洗浄し、塵埃粒子を前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板から除去する第1の洗浄工程と; 前記第1の洗浄工程で洗浄した半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を、純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液で洗浄し、前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板から薬液を除去する第2の洗浄工程とよりなり、 前記第1の温度は洗浄液中で塵埃粒子の氷結が生じないような温度に設定されることを特徴とする洗浄方法及びかかる洗浄方法を使った半導体装置あるいは液晶表示装置の製造方法により、 または被洗浄物を処理する薬液を保持する薬液槽と; 前記薬液で処理された被洗浄物を洗浄する洗浄液を保持する洗浄液槽と; 前記洗浄液槽に前記洗浄液を第1の温度で供給する第1の温度制御手段と; 前記洗浄液槽に前記洗浄液を、前記第1の温度よりも実質的に高い第2の温度で供給する第2の温度制御手段と; 前記第1の温度制御手段と前記第2の温度制御手段とを、前記洗浄液が前記洗浄液槽にまず第1の温度で供給されついで前記第2の温度で供給されるように制御する制御手段とよりなることを特徴とする洗浄装置により、または 半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を処理する薬液を保持する薬液槽と; 純水よりなる第1の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第1の洗浄槽と; 純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第2の洗浄槽と; 前記第1の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第1の温度に設定する第1の温度制御手段と; 前記第2の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第2の温度に設定する第2の温度制御手段とよりなる洗浄装置により解決する。」と訂正する。 (f)明細書の第0007段落の記載である 「 図1を参照するに、まず直径が8インチのシリコンウェハ上に付着している塵粒子のうち、粒径が0.2μm以上のものの数を測定した。次いで、ウェハを、32%の濃度のH2O2と98%の濃度のH2SO4とを体積比で2:100の割合で含む薬液中に110゜Cで15分間浸漬した。次いで、ウェハを薬液から引き上げ、様々な温度の純水中で約30秒間リンスした。この工程の後、さらに純水ををオーバーフローさせながら20分間リンスし、20分間乾燥させた後、再び粒径が0.2μm以上の粒子の数を測定した。」を、 「 図1を参照するに、まず直径が8インチのシリコンウェハ上に付着している塵粒子のうち、粒径が0.2μm以上のものの数を測定した。次いで、ウェハを、32%の濃度のH2O2と98%の濃度のH2SO4とを体積比で2:100の割合で含む薬液中に110°Cで15分間浸潰した。次いで、ウェハを薬液から引き上げ、様々な温度の純水中で約30秒間リンスした。この工程の後、さらに純水をオーバーフローさせながら20分間リンスし、20分間乾燥させた後、再び粒径が0.2μm以上の粒子の数を測定した。」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項(a)についてみると、この訂正は、特許請求の範囲の請求項1の発明の構成である「被洗浄物」について、「半導体装置の基板または液晶表示装置の基板」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 上記訂正事項(b)についてみると、この訂正は、特許請求の範囲の請求項4の発明が、請求項1を引用することによって備える構成である「薬液」について、「薬液がH2SO4を含む」ことを限定し、また、上記訂正事項(a)による、請求項1の訂正との整合を図るものであり、特許請求の範囲の減縮、及び、明りょうでない記載の釈明に該当する。 上記訂正事項(c)についてみると、この訂正は、特許請求の範囲の請求項7の記載である「第1の温度で供給されついて前記第2の温度で供給される」を、「第1の温度で供給されついで前記第2の温度で供給される」と訂正するものであり、これは、誤記の訂正に該当する。 上記訂正事項(d)についてみると、この訂正は、特許請求の範囲の請求項9の発明の構成である「被洗浄物」について、「半導体装置の基板または液晶表示装置の基板」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 上記訂正事項(e)についてみると、この訂正は、発明の詳細な説明の記載と、上記訂正事項(a)による請求項の記載との整合を図るものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。 上記訂正事項(f)についてみると、この訂正は、「純水ををオーバーフローさせながら」を「純水をオーバーフローさせながら」と訂正するものであり、これは、誤記の訂正に該当する。 そして、いずれの訂正事項も、願書に添付した明細書の記載の範囲内のものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)独立特許要件 (3-1)請求項6について 請求項6は、特許異議の申立てがされていない請求項であって、訂正請求もされていないが、これは従属形式の請求項であって、その引用元の請求項1ないし4の訂正によって、その特許請求の範囲が減縮しているから、訂正明細書の請求項6に係る発明の独立特許要件について検討する。 明細書の請求項6に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項6に記載されたとおりのものであり、訂正明細書の請求項1ないし4に係る発明の構成をすべて含むものである。 そして、当該請求項1ないし4に係る発明が、下記第3.(6)のように、申立人が提出した甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一と認めることができないし、また、同じく申立人が提出した甲第2号証ないし甲第3号証に係る刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認めることもできないので、同様の理由により、明細書の請求項6に係る発明は、申立人が提出した甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一と認めることができないし、また、同じく申立人が提出した甲第2号証ないし甲第3号証に係る刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認めることもできない。 (3-2)請求項7について 上記請求項7に係る訂正は、特許異議の申立てがされていない請求項についての訂正であって、誤記の訂正を目的としたものに該当するから、訂正明細書の請求項7に係る発明の独立特許要件について検討する。 訂正明細書の請求項7に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項7に記載されたとおりのものである。(上記(1)訂正の内容参照。) そして、当該請求項7に係る発明は、洗浄装置が、薬液で処理された被洗浄物を洗浄する洗浄液を保持する洗浄液槽を備え、その洗浄液槽に洗浄液を供給する制御手段として、 「前記洗浄液槽に前記洗浄液を第1の温度で供給する第1の温度制御手段と; 前記洗浄液槽に前記洗浄液を、前記第1の温度よりも実質的に高い第2の温度で供給する第2の温度制御手段と; 前記第1の温度制御手段と前記第2の温度制御手段とを、前記洗浄液が前記洗浄液槽にまず第1の温度で供給されついで前記第2の温度で供給されるように制御する制御手段」 という、甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面及び甲第2、3号証に記載されていない独自の構成を備えることにより、明細書記載の特有の効果を奏するものであるから、申立人が提出した甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一と認めることができないし、また、同じく申立人が提出した甲第2号証ないし甲第3号証に係る刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認めることもできない。 (3-3)請求項8について 請求項8は、特許異議の申立てがされていない請求項であって訂正請求もされていないが、これは従属形式の請求項であって、その引用元の請求項7の訂正によって、その特許請求の範囲が減縮しているから、訂正明細書の請求項8に係る発明の独立特許要件について検討する。 明細書の請求項8に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項8に記載されたとおりのものであり、訂正明細書の請求項7に係る発明の構成をすべて含むものである。 そして、当該請求項7に係る発明が、上記(3-2)のように、申立人が提出した甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一と認めることができないし、また、同じく申立人が提出した甲第2号証ないし甲第3号証に係る刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認めることもできないので、同様の理由により、明細書の請求項8に係る発明は、申立人が提出した甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一と認めることができないし、また、同じく申立人が提出した甲第2号証ないし甲第3号証に係る刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認めることもできない。 (3-4)請求項10について 請求項10は、特許異議の申立てがされていない請求項であって訂正請求もされていないが、これは従属形式の請求項であって、その引用元の請求項9の訂正によって、その特許請求の範囲が減縮しているから、訂正明細書の請求項10に係る発明の独立特許要件について検討する。 明細書の請求項10に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項10に記載されたとおりのものであり、訂正明細書の請求項9に係る発明の構成をすべて含むものである。 そして、当該請求項9に係る発明が、下記第3.(6)のように、申立人が提出した甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一と認めることができないし、また、同じく申立人が提出した甲第2号証ないし甲第3号証に係る刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認めることもできないので、同様の理由により、明細書の請求項10に係る発明は、申立人が提出した甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一と認めることができないし、また、同じく申立人が提出した甲第2号証ないし甲第3号証に係る刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認めることもできない。 (4)むすび したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法改正前の特許法第126条第1項ただし書きの規定、及び、第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3.特許異議の申立てについて (1)特許異議の申立ての概要 申立人は、甲第1号証ないし甲第4号証を提出し、請求項1ないし5、9に係る発明は、甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるから、上記各請求項に係る発明の特許は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、また、請求項1ないし5、9に係る発明は、甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、上記各請求項に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、請求項4の記載は、「親水性」とはどの程度の範囲のレベルのものを意味しているか、きわめて不明確であるから、上記請求項4に係る発明の特許は特許法第36条第5項及び第6項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきであると主張している。 なお、甲第4号証は、特許権者が平成14年1月25日付けで提出した意見書である。 (2)記載不備について 明細書の特許請求の範囲の請求項4の記載は、「半導体装置の基板または液晶表示装置の基板の表面は親水性である」限りにおいて明りょうであり、申立人の主張するような記載不備はない。 (3)本件発明 上記第2.(4)で述べたとおり、上記訂正が認められるから、本件特許の請求項1ないし5、9に係る発明(以下、「本件発明1ないし5、9」という。)は、上記訂正請求による訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5、9に記載された、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を薬液に浸漬することにより処理する工程と; 前記薬液で処理した半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を、純水よりなる第1の温度の洗浄液で洗浄し、塵埃粒子を前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板から除去する第1の洗浄工程と; 前記第1の洗浄工程で洗浄した半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を、純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液で洗浄し、前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板から薬液を除去する第2の洗浄工程とよりなり、 前記第1の温度は洗浄液中で塵埃粒子の氷結が生じないような温度に設定されることを特徴とする洗浄方法。 【請求項2】 前記第1の温度は25゜C以下であることを特徴とする請求項1記載の洗浄方法。 【請求項3】 前記第2の温度は60゜C以下であることを特徴とする請求項1記載の洗浄方法。 【請求項4】 前記薬液がH2SO4を含み、前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板の表面は親水性であることを特徴とする請求項1記載の洗浄方法。 【請求項5】 前記請求項1から4のいずれか一項記載の洗浄方法を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。 【請求項9】 半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を処理する薬液を保持する薬液槽と; 純水よりなる第1の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第1の洗浄槽と; 純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第2の洗浄槽と; 前記第1の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第1の温度に設定する第1の温度制御手段と; 前記第2の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第2の温度に設定する第2の温度制御手段とよりなる洗浄装置。」 (3)引用出願及び引用刊行物 上記取消理由通知において引用された出願及び刊行物は以下の通りである。 引用出願 :特願平5-318044号(特開平 7-175247号、甲第1号証) 引用刊行物1:特開平 4-369654号公報(甲第2号証) 引用刊行物2:特開平 4- 29787号公報(甲第3号証) (4)引用出願の願書に最初に添付した明細書又は図面の記載 上記引用出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、下記の事項が記載されていると認められる。 「アルミニウム基体上に機能性膜を形成する工程を含む電子写真感光体の製造方法において、機能性膜を形成する工程の前に、基体の表面を二酸化炭素を溶解した水による洗浄および二酸化炭素を溶解した温水による引き上げ乾燥を行うことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】) 「二酸化炭素を溶解した水の温度が20°C以上40°C以下であり、二酸化炭素を溶解した温水の温度が40°C以上70°C以下である請求項5記載の方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項6】) 「【産業上の利用分野】 本発明は、アルミニウム基体上に機能性膜を形成した電子写真感光体の製造方法に関し、特に、珪素原子を含有したアルミニウム基体上にプラズマCVD法により珪素原子と水素原子を含む非単結晶堆積膜を機能性膜として形成した電子写真感光体の製造方法に関する。」(段落【0001】) 「本発明者らは堆積膜形成に先立ち、塵などの付着物を除去するために行なう洗浄工程で用いる水に何らかの改良を加えることで上記のような欠陥発生を抑制することができないかと考え、鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。本発明の方法のようにCO2水を用いることで良好な結果が得られる理由(メカニズム)については、未だ解明されていない点が多いが、本発明者らは現在、次のように考えている。 アルミニウム基体表面に部分的に露出した珪素原子が多い部分は、周囲の通常のアルミニウムの部分と局部的な電池を形成して腐食を促進する。 一方、水に溶解した二酸化炭素は水中で炭酸イオンとなり、これらの局部電池の部分に引き寄せられ周囲を覆うことにより水中の酸素等の接近を防ぎ、効果的に腐食を防止する。さらに炭酸イオンは、珪素原子の多い部分表面に何らかの変質を生じさせ、それにより堆積膜形成時にこの部分から異常成長が発生することを防止する。」(段落【0044】〜【0046】) 「さらに本発明の方法では、切削工程後、CO2水による洗浄工程の前に前洗浄工程を設けることにより、洗浄工程の効果を低減させる油脂およびハロゲン系の残流物の除去を完全に行なって効果を高めることもできる。特に、前洗浄工程で水または界面活性剤を加えた水による超音波洗浄を行なうことにより、本発明の方法の効果を大幅に向上させることができる。」(段落【0053】) 「切削後、投入台111上に置かれた基体101は、搬送機構103により洗浄槽121に搬送される。前洗浄槽121中の界面活性剤水溶液122中で超音波処理することにより表面に付着している切削油および切り粉の洗浄を行なう。 次に、搬送機構103により基体101をCO2水による洗浄槽131に運び、25°Cの温度に保たれたCO2水によりさらに洗浄を行なう。CO2水については、工業用導電率計(商品名:α900R/C、堀場製作所製)により随時導電率を測定し、必要に応じて二酸化炭素を溶解することにより、導電率がほぼ10μS/cmに維持されるように制御する。CO2水による洗浄の終了した基体101は、搬送機構103によりCO2温水による乾燥槽141に移動し、昇降装置(図示せず)を用い、60°Cの温度に保たれたCO2温水にて引き上げ乾燥に付す。CO2温水については、工業用導電率計(商品名α900R/C、堀場製作所製)により随時導電率を測定し、必要により二酸化炭素を溶解することにより、導電率がほぼ20μS/cmに維持されるように制御する。乾燥工程の終了した基体101は、搬送機構103により搬送台151に運ぶ。」(段落【0057】〜【0058】) 「本発明の方法の前洗浄工程で用いられる界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤またはそれらの混合したもの等いずれのものでも可能である。中でも、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸モノエステル塩、燐酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤または脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤が特に効果的である。ビルダーとしては、燐酸塩、炭酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩等が有効である。キレート剤としては、グルコン酸塩、EDTA、NTA、燐酸塩等が有効である。」(段落【0067】) 「本発明において、二酸化炭素を溶解した水による洗浄工程に使用される水の水質は非常に重要であり、二酸化炭素溶解前の状態では半導体グレードの純水、特に超LSIグレードの超純水が望ましい。具体的には、水温25°Cの時の抵抗率として、1MΩ・cm、好ましくは3MΩ・cm、最適には5MΩ・cmを下限とする水である。その抵抗値の上限は、理論抵抗値(18.25MΩ・cm)以下であれば良いが、コストおよび生産性の面から17MΩ・cm、好ましくは15MΩ・cm、最適には13MΩ・cmである。 微粒子量としては、0.2μm以上のものが1ml中に10000個以下、好ましくは1000個以下、最適には100個以下である。微生物量としては、総生菌数が1ml中に100個以下、好ましくは10個以下、最適には1個以下である。有機物量(TOC)は1リットル中に10mg以下、好ましくは1mg以下、最適には0.2mg以下である。 上記の水質の水を得る方法としては、活性炭法、蒸留法、イオン交換法、フィルターろ過法、逆浸透法、紫外線殺菌法等があるが、これらの方法を複数組み合わせて用い、所望の水質を達成することが望ましい。」(段落【0069】〜【0071】) 「本発明の方法において、CO2温水による温水乾燥を行なう場合、使用される水の水質は非常に重要であり、二酸化炭素溶解前の状態では半導体グレードの純水、特に超LSIグレードの超純水が望ましい。具体的には、水温25°Cでの抵抗率として、1MΩ・cm、好ましくは3MΩ・cm、最適には5MΩ・cmを下限とする水である。抵抗値の上限は、理論抵抗値(18.25MΩ・cm)以下の値であれば良いが、コストおよび生産性の面から17MΩ・cm、好ましくは15MΩ・cm、最適には13MΩ・cmである。 微粒子量としては、0.2μm以上のものが1ml中に10000個以下、好ましくは1000個以下、最適には100個以下である。微生物量としては、総生菌数が1ml中に100個以下、好ましくは10個以下、最適には1個以下である。有機物量(TOC)は1リットル中に10mg以下、好ましくは1mg以下、最適には0.2mg以下である。 上記の水質の水を得る方法としては、活性炭法、蒸留法、イオン交換法、フィルターろ過法、逆浸透法、紫外線殺菌法等があるが、これらの方法を複数組み合わせて用い、所望の水質を達成することが望ましい。」(段落【0085】〜【0087】) 「(比較実験例2) 実験例1と同様に珪素原子の含有量が100ppmのアルミニウム基体を同様の手順で切削後、切削工程終了15分後に表7に示す条件によって洗剤(非イオン性界面活性剤)による洗浄、純水による洗浄および引き上げ乾燥を行なった。表面処理装置としては図1のものを用い、但し洗浄槽131および乾燥槽141では、二酸化炭素を溶解していない純水を使用した。」(段落【0148】) 「【発明の効果】 以上説明した通り、本発明の方法では、機能性膜形成の工程の前に基体の表面を二酸化炭素を溶解した水により洗浄する工程および二酸化炭素を溶解した温水により乾燥する工程を行なってから、アルミニウム基体上に機能性膜、特に、プラズマCVD法によって水素原子および/または弗素原子と珪素原子とを含む非単結晶堆積膜を形成して電子写真感光体を作製することから、均一な高品位の画像を与える電子写真感光体を安価に、しかも安定的に提供することができる。」(段落【0195】) (5)引用刊行物の記載事項 (5-1)引用刊行物1 上記引用刊行物1には、以下のとおり記載されている。 「電子写真用感光体の感光層表面を粗面化後、水溶性弱アルカリ系洗浄剤で洗浄し、続いて純水で洗浄し、温純水に浸漬し引き上げて乾燥させることを特徴とする電子写真用感光体の製造方法。」(【特許請求の範囲】【請求項1】) 「温純水の温度が60°C以上80°C以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または7記載の電子写真用感光体の製造方法。」【特許請求の範囲】【請求項8】) 「【産業上の利用分野】 この発明は、電子写真用感光体の製造方法、特にSe-As系,Se-Te-As系の電子写真用感光体の感光層表面を粗面化後、水溶性弱アルカリ系洗浄剤,純水および温純水を用いて洗浄,乾燥する方法に関する。」(段落【0001】) 「【作用】 感光層表面を粗面化する際に汚染された感光体は、水溶性弱アルカリ系洗浄剤で洗浄することにより研削剤,研削屑が除去され、続いて純水で洗浄することにより水溶性弱アルカリ系洗浄剤および残存する研削剤,研削屑などが洗浄除去され、最後に温純水に浸漬して引き上げることにより乾燥されて、清浄化される。水溶性弱アルカリ系洗浄剤は有機溶剤に比べると研削剤などの油分に対する洗浄力は小さい。これを補うためには、水溶性弱アルカリ系洗浄剤による洗浄を二段階に分けて行い、かつ、第一段階の洗浄を感光層表面を機械的に拭いながら行い、さらに残存する汚れを第二段階で超音波洗浄するとよい。また、純水による洗浄を三段階に分けて行うことにより、水溶性弱アルカリ系洗浄剤および残存する研削剤,研削屑などを充分に除去することができる。 また、粗面化後の感光層表面を洗浄した水溶性弱アルカリ系洗浄剤を静電フィルタあるいは限外濾過フィルタで濾過することにより、研削屑,研削剤などの汚れを除去して洗浄剤のかなりの繰り返し使用を可能とし洗浄剤の寿命を長くすることができる。また、洗浄に用いた純水を逆浸透膜フィルタで濾過することにより、感光体に付着して純水中に持ち込まれる洗浄剤および洗浄剤に溶解していて持ち込まれるSeが除去され、純水のかなりの繰り返し使用が可能となり、さらに最終洗浄に用いた純水をそのまま排水することが可能となる。また、乾燥のために使用する温純水の温度を60°C以上80°C以下の範囲内とし、その中に感光体をその温度が少なくとも温純水の温度-3°C以上となるまでの時間浸漬した後、10mm/秒以上15mm/秒以下の速度で引き上げるとムラなく良好に乾燥することができて好適であり、また、感光体基体としてアルミニウムが用いられている場合でもアルミニウムが変色することもない。また、乾燥のために使用する温純水の電気伝導度を1μS/cm以下とすることにより、感光体の電気特性を有機溶剤による洗浄の場合と同様に良好にすることができて好ましい。」(段落【0008】) (5-2)引用刊行物2 上記引用刊行物2には、以下のとおり記載されている。 「1.洗浄籠に入れた部品を洗浄する方法において、純水に界面活性剤を添加した溶液中に超音波が伝播するようにし、その温度を35〜45°Cに保った第一槽に洗浄籠を水没し、部品の汚れを剥離する第1の工程と、 45〜55°Cに保った純水を満たした第二槽で洗浄籠の上下動を繰り返し、汚れの離脱を促進する第二の工程と、 55〜65°Cに保った純水を満たした第三槽に洗浄籠を水没して、仕上げの濯ぎをする第三の工程と、 第三の工程を経て真空槽に挿入し水分を除去する第四の工程とからなることを特徴とする部品の洗浄方法。 2.部品は複雑形状で細孔あることを特徴とする請求項1記載の部品の洗浄方法。」(特許請求の範囲) 「〔産業上の利用分野〕 本発明は、精密な部品の洗浄方法に関するものである。 〔従来の技術〕 メッキやコーティング等、表面処理した細孔を持つ精密な部品を、クリーンルーム内で組立を行う際に、クリーンルーム内に持込む前に、部品を洗浄籠に整列し、表面に付着しているほこり、綿ゴミ、指紋等を洗浄する、特に部品の表面を亜鉛メッキやアルミ・アロジンで処理した場合には洗浄温度が、60°C以上では、表面処理した被膜が劣化する。」(公報第1頁右下欄第2〜13行) 「本発明は、細孔をもつ精密な部品を低温下で洗浄する方法を提供することを目的とする。 〔問題点を解決するための手段〕 洗浄籠に入れた部品を洗浄する方法において、純水に界面活性剤を添加した溶液中に超音波が伝播するようにし、その温度を35〜45°Cに保った第一槽に洗浄籠を水没し、部品の汚れを剥離する第1の工程と、 45〜55°Cに保った純水を満たした第二槽で洗浄籠の上下動を繰り返し、汚れの離脱を促進する第二の工程と、 55〜65°Cに保った純水を満たした第三槽に洗浄籠を水没して、仕上げの濯ぎをする第三の工程と、 第三の工程を経て真空槽に挿入し水分を除去する第四の工程で水分を除去するのである。 即ち、第一の工程から順に徐々に水温を高め、第三の工程を経た部品を直ちに真空槽へ挿入して水切りをすることを特徴とする。」(公報第2頁左上欄第18行〜右上欄第17行) 「〔発明の効果〕 本発明によれば、細孔があり、許容温度が60°Cの被洗浄物でも、形状、大きさに関係なく、環境問題のない純水を使用した洗浄ができる。」(公報第3頁左下欄第3〜6行) (6)対比・判断 (6-1)本件発明1について 本件発明1は、「半導体装置の基板または液晶表示装置の基板」を対象とした洗浄方法(以下、「構成A」という。)であって、その構成として、前記基板を、「純水よりなる第1の温度の洗浄液で洗浄し、塵埃粒子を前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板から除去する第1の洗浄工程」(以下、「構成B」という。)、及び、第1の洗浄工程で洗浄した基板を、「純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液で洗浄し、前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板から薬液を除去する第2の洗浄工程」(以下、「構成C」という。)を備える点で特有のものである。 しかしながら、上記引用出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、半導体装置の基板または液晶表示装置の基板の洗浄方法は記載されていないし、上記の構成B,Cも記載されていない。 また、構成A〜Cは、同明細書又は図面に記載された発明から自明の事項でもない。 本件発明1は、この構成A〜Cにより、「本発明によれば、基板を薬液により処理し引続きリンスする際、基板に付着する粒子を最少化出来、また基板表面から薬液を完全に除去することが可能である。」という、明細書記載の、格別顕著な作用効果を奏する洗浄方法であるものと認められる。 したがって、本件発明1は、上記引用出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一と認めることができない。 また、上記刊行物1ないし2にも、上記の構成A〜Cは記載されていないし、それを示唆する記載もない。 したがって、本件発明1は、上記刊行物1及び2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 (6-2)本件発明2ないし5について 本件発明2ないし5は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに限定を加えたものであるので、本件発明1と同様の理由により、上記引用出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一と認めることができないし、また、上記刊行物1及び2にに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認めることもできない (6-3)本件発明9について 本件発明9は、「半導体装置の基板または液晶表示装置の基板」を対象とした洗浄装置であって、その構成として、「純水よりなる第1の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第1の洗浄槽と、純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第2の洗浄槽と、前記第1の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第1の温度に設定する第1の温度制御手段と、前記第2の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第2の温度に設定する第2の温度制御手段」を備える点で特有のものである。 しかしながら、上記引用出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、半導体装置の基板または液晶表示装置の基板の洗浄装置は記載されていないし、上記の構成B,Cも記載されていない。 また、構成A〜Cは、同明細書又は図面に記載された発明から自明の事項でもない。 本件発明9は、この構成A〜Cにより明細書記載の、格別顕著な作用効果を奏する洗浄方法であるものと認められる。 したがって、本件発明9は、上記引用出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一と認めることができない。 また、上記刊行物1ないし2にも、上記の点は記載されていないし、それを示唆する記載もない。 したがって、本件発明9は、上記刊行物1及び2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 (7)むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし5、9に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし5、9に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件請求項1ないし5、9に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める法令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 洗浄方法、かかる洗浄方法を使った半導体装置の製造方法および液晶表示装置の製造方法。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を薬液に浸漬することにより処理する工程と; 前記薬液で処理した半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を、純水よりなる第1の温度の洗浄液で洗浄し、塵埃粒子を前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板から除去する第1の洗浄工程と; 前記第1の洗浄工程で洗浄した半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を、純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液で洗浄し、前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板から薬液を除去する第2の洗浄工程とよりなり、 前記第1の温度は洗浄液中で塵埃粒子の氷結が生じないような温度に設定されることを特徴とする洗浄方法。 【請求項2】前記第1の温度は25°C以下であることを特徴とする請求項1記載の洗浄方法。 【請求項3】前記第2の温度は60°C以下であることを特徴とする請求項1記載の洗浄方法。 【請求項4】前記薬液がH2SO4を含み、前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板の表面は親水性であることを特徴とする請求項1記載の洗浄方法。 【請求項5】前記請求項1から4のいずれか一項記載の洗浄方法を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。 【請求項6】前記請求項1から4のいずれか一項記載の洗浄方法を含むことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。 【請求項7】被洗浄物を処理する薬液を保持する薬液槽と; 前記薬液で処理された被洗浄物を洗浄する洗浄液を保持する洗浄液槽と; 前記洗浄液槽に前記洗浄液を第1の温度で供給する第1の温度制御手段と; 前記洗浄液槽に前記洗浄液を、前記第1の温度よりも実質的に高い第2の温度で供給する第2の温度制御手段と; 前記第1の温度制御手段と前記第2の温度制御手段とを、前記洗浄液が前記洗浄液槽にまず第1の温度で供給されついで前記第2の温度で供給されるように制御する制御手段とよりなることを特徴とする洗浄装置。 【請求項8】さらに、前記第1および第2の温度を、前記第1の温度と第2の温度の中間の温度の洗浄液を前記洗浄液に混合することにより調整する温度調整手段を備えたことを特徴とする請求項7記載の洗浄装置。 【請求項9】半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を処理する薬液を保持する薬液槽と; 純水よりなる第1の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第1の洗浄槽と; 純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第2の洗浄槽と; 前記第1の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第1の温度に設定する第1の温度制御手段と; 前記第2の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第2の温度に設定する第2の温度制御手段とよりなる洗浄装置。 【請求項10】さらに、前記第1の温度と第2の温度の中間の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第3の洗浄槽を備えたことを特徴とする請求項9記載の洗浄装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は一般に半導体装置の製造に関し、特に半導体装置あるいは液晶表示装置の製造工程において使われる基板の洗浄方法および装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 半導体装置あるいは液晶表示装置の製造工程は、一般に半導体基板あるいはガラス基板等の基板を洗浄する工程を含む。かかる洗浄工程には、基板を薬液に浸漬する処理工程と、薬液に浸漬した基板を引き上げ、基板上に残留している薬液の膜を多量の純水で洗い流すリンス工程が含まれる。 【0003】 従来より、かかるリンス工程においては加熱した温純水を使うことでリンス効果を高めることができることが知られていた。一方、リンス工程では、薬液が完全に除去できると同時に、洗浄した基板上に塵の粒子が付着しないことが特に肝要である。 【0004】 リンス工程において、塵粒子の付着を回避するために、特開昭63-155729はリンスに使われる純水の温度を5°C程度に維持し、液化窒素ガス等の低温ガスを純水中に導入し、純水中の塵粒子を氷結させて基板から除去する方法を提案している。この方法では、塵粒子は氷結の核として作用する。しかし、かかる方法は大がかりな設備を必要とし、しかも純水の温度が非常に低いため、十分なリンス効果が得られない問題点を有する。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の出願人は、温純水による基板のリンス効果について実験を行っていたところ、リンスに使われる純水の温度と基板上に付着する塵粒子の数との間に興味深い関係を見いだした。以下、本出願人による実験およびその結果について説明する。 【0006】 図1は本出願人が行った実験の手順を示す図である。 【0007】 図1を参照するに、まず直径が8インチのシリコンウェハ上に付着している塵粒子のうち、粒径が0.2μm以上のものの数を測定した。次いで、ウェハを、32%の濃度のH2O2と98%の濃度のH2SO4とを体積比で2:100の割合で含む薬液中に110°Cで15分間浸漬した。次いで、ウェハを薬液から引き上げ、様々な温度の純水中で約30秒間リンスした。この工程の後、さらに純水をオーバーフローさせながら20分間リンスし、20分間乾燥させた後、再び粒径が0.2μm以上の粒子の数を測定した。 【0008】 図2は図1の実験の結果を示す。 【0009】 図2を参照するに、リンス後に基板上に残留する粒子の数は、リンスに使われた純水の温度と共に増加することが発見された。付着粒子の数が温度とともに増加する理由は明確ではないが、特にサブミクロンパターンを有する半導体装置の場合、許容される残留付着粒子数は8インチ径のウェハの場合15個以下であることを考えると、リンスに使われる純水の温度を25°C以上にすると基板上に付着する粒子の数が許容範囲を超えてしまうことがわかる。 【0010】 一方、塵粒子の付着を最少化すべく低温の純水を使って薬液で処理されたウェハをリンスすると、基板表面からの薬液の除去が不完全になることが知られている。 【0011】 図3は、本出願人が行った、純水の温度とリンス効果の間の関係を検証する実験を示す。 【0012】 図3を参照するに、この実験では8インチ径のシリコンウェハを前記H2O2とH2SO4の混合液よりなる薬液中に浸漬した後、常温から60°Cまでの純水オーバーフロー中で10秒間リンスし、基板表面の比抵抗を測定した。 【0013】 図4はかかる比抵抗の測定結果を示す。図4中、縦軸は純水の比抵抗が回復するまでの時間を示し、基板上に残留する酸の割合に対応する。図4よりわかるように、比抵抗はリンスに使った純水の温度が高くなるにつれて低下する傾向を示す。図4の傾向は、リンスに使う純水の温度が低いと十分なリンス効果が得られないという公知の知識を確認するものである。 【0014】 このように、薬液による処理の後でリンスに使われる薬液の温度が高いと基板表面への塵粒子の付着量が多くなり、一方塵粒子の付着を最少にするために純水の温度を低くすると薬液が基板表面に残留してしまい、洗浄工程の後でなされる半導体装置の製造工程に悪影響を与える。 【0015】 そこで、本発明は上記の課題を解決した、新規で有用な基板洗浄方法およびかかる基板洗浄方法を使った半導体装置の製造方法を提供することを、概括的目的とする。 【0016】 本発明の他のより具体的な目的は、薬液処理後の基板表面に残留する塵粒子の数を最少化し、同時に基板表面に残留する薬液を最少化する基板洗浄方法およびかかる基板洗浄方法を使った半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。 【0017】 【課題を解決するための手段】 本発明は、上記の課題を、 半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を薬液に浸漬することにより処理する工程と; 前記薬液で処理した半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を純水よりなる第1の温度の洗浄液で洗浄し、塵埃粒子を前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板から除去する第1の洗浄工程と; 前記第1の洗浄工程で洗浄した半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を、純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液で洗浄し、前記半導体装置の基板または液晶表示装置の基板から薬液を除去する第2の洗浄工程とよりなり、 前記第1の温度は洗浄液中で塵埃粒子の氷結が生じないような温度に設定されることを特徴とする洗浄方法およびかかる洗浄方法を使った半導体装置あるいは液晶表示装置の製造方法により、または 被洗浄物を処理する薬液を保持する薬液槽と; 前記薬液で処理された被洗浄物を洗浄する洗浄液を保持する洗浄液槽と; 前記洗浄液槽に前記洗浄液を第1の温度で供給する第1の温度制御手段と; 前記洗浄液槽に前記洗浄液を、前記第1の温度よりも実質的に高い第2の温度で供給する第2の温度制御手段と; 前記第1の温度制御手段と前記第2の温度制御手段とを、前記洗浄液が前記洗浄液槽にまず第1の温度で供給されついで前記第2の温度で供給されるように制御する制御手段とよりなることを特徴とする洗浄装置により、または 半導体装置の基板または液晶表示装置の基板を処理する薬液を保持する薬液槽と; 純水よりなる第1の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第1の洗浄槽と; 純水よりなり前記第1の温度よりも高い第2の温度の洗浄液を供給されてこれを保持する第2の洗浄槽と; 前記第1の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第1の温度に設定する第1の温度制御手段と; 前記第2の洗浄槽中の洗浄液の温度を前記第2の温度に設定する第2の温度制御手段とよりなる洗浄装置により解決する。 【0018】 好ましい一実施例によれば、前記第1の洗浄工程の温度は25°C以下に設定される。 【0019】 好ましい別の実施例によれば、前記第2の洗浄工程の温度は60°C以下に設定される。 【0020】 好ましいさらに別の実施例によれば、洗浄方法は、前記被洗浄物表面を親水性にする工程を含む。 【0021】 【作用】 本発明によれば、薬液で処理された被洗浄物を、純水よりなる第1の、低温の洗浄液で処理することにより、被洗浄物に塵粒子が付着することなく効果的な洗浄ができる。その際、前記第1の温度を、洗浄液中で塵埃粒子の氷結が生じないような温度に設定してあるため、洗浄の際に被洗浄物表面が結氷するような問題は生じない。また、前記洗浄液を冷却するのに液体窒素を導入する等、特殊な設備は必要でなく、通常の熱交換器を使うことが出来る。従って、本発明の方法および装置は半導体装置や液晶表示装置等の量産を行うのに適している。また、本発明では、前記第1の温度における第1の洗浄工程に引き続いて第2の、より高い温度での第1の洗浄工程を行うことにより、第1の洗浄工程の後に被洗浄物表面に残留する薬液を実質的に完全に除去することが可能である。 【0022】 図2は先に説明した本出願人による発見を示す図であるが、この図よりわかるように、前記第1の洗浄工程の温度を25°C以下に設定することにより、8インチウェハ上の塵埃粒子の数を、0.2μm以上の粒径のものについて15個以下に抑制することが出来る。 【0023】 一方、本出願人は、前記第2の洗浄工程において使われる洗浄液すなわち純水の温度を様々に変化させて、被洗浄物すなわち基板上に吸着される種々の金属不純物の量を測定した。図5はかかる測定に関わる実験の手順を、また図6は測定結果を示す。この実験では、図5に示すように6インチ径のシリコンウェハを用意し、これを様々な温度の純水中に30分間浸漬した。ついで前記純水から引き上げたウェハを20分間乾燥し、HFに浸漬することにより基板表面に形成されていた自然酸化膜を溶解させた。さらにこのように溶解した自然酸化膜を白金皿上で蒸発乾固させHNO3で溶解した後フレームレス原子吸光装置により前記自然酸化膜上に残留していた金属不純物元素を定量分析した。 【0024】 図6を参照するに、測定した金属元素はNaおよびK等のアルカリ金属,CaやMg等のアルカリ土類金属、およびFe,Cr,Cu,MnおよびZn等の遷移金属元素であるが、いずれのグループの元素においても、吸着量が洗浄液の温度が60°Cを超えると急激に増加するのがわかる。これらの金属元素は環境中に一般的に存在しており、基板の汚染を生じる機会の多いものであり、従って、図6の関係より、前記第2の洗浄工程における洗浄液の温度、すなわち第2の温度は60°C以下に設定するのが好ましいことがわかる。 【0025】 更に、図7は、本出願人が基板表面の性質と洗浄効果との関係を調べるために行った実験を示す。 【0026】 図7を参照するに、まず4インチ径のシリコンウェハを用意し、その表面上の粒子の数を0.2μm径以上のものについて測定した。次いで、前記シリコンウェハを150°Cの熱燐酸H3PO4中で5分間処理し、ウェハ表面のシリコン酸化膜を除去した。次いで、このようにシリコン表面が露出したウェハを、様々な温度の純水中に30秒間浸漬した。ついで基板を純水オーバーフロー中で10分間リンスし、15分間乾燥させ、基板上に残留している径が0.2μm以上の粒子の数を測定した。 【0027】 図8はかかる測定の結果を、洗浄に使った純水の温度の関数として示す図である。 【0028】 図8を参照するに、基板表面に疎水性のシリコン表面が露出している場合、純水の温度が高ければ高いほど付着粒子数は減少し、図2に示した傾向と逆転することがわかる。換言すると、本発明の基板洗浄方法は、洗浄される基板表面が親水性である場合に特に有効であることがわかる。 【0029】 【実施例】 以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。 【0030】 図9は本発明の第1実施例による基板洗浄装置の構成を示す図である。 【0031】 図9を参照するに、基板洗浄装置は例えば先に説明したH2O2とH2SO4の混合液等よりなる薬液を保持する薬液槽1と、純水を保持する洗浄液槽2と、洗浄液槽2でリンスされた基板を乾燥させる乾燥部3とを含み、洗浄液槽2にはライン4から純水が供給される。ライン4はライン4a,4bおよび4cに分岐し、ライン4aには供給された純水を冷却する熱交換器10が形成されている。熱交換器10は駆動装置11により駆動され、供給された純水を冷却する。一方、ライン4bは供給された純水をそのまま通過させる経路を形成する。さらに、ライン4cは供給された純水を加熱する熱交換器13を含み、熱交換器13は駆動装置14により駆動されて供給された純水を加熱する。ライン4a,4bおよび4cはそれぞれ弁9,91および92を経て単一のライン4dに合流し、ライン4dは純水を純水槽2へ供給する。供給された純水は純水槽2においてオーバーフローし、純水槽2中に浸漬された基板がリンスされる。さらに、ライン4dには純水の温度を測定する温度センサ8が設けられ、制御装置15が温度センサ8の出力に基づいて駆動装置11および14、および弁9,91および92を制御する。 【0032】 次ぎに、制御装置15による図9の基板洗浄装置の動作を説明する。 【0033】 まず、表面に親水性の自然酸化膜を有するシリコン基板7が薬液槽1に浸漬され、処理される。この処理では、薬液の温度は例えば先に説明したように110°Cに設定され、10分間程度処理が継続される。その結果、基板7の表面に付着していた不純物や粒子が基板から分離する。このように薬液槽1において処理された基板7は次いで洗浄槽2に移され、純水中でリンスされる。その際、制御装置15はまず弁91および92を閉鎖し、温度センサ8の出力信号をモニタしながら駆動装置11を駆動してライン4a中の純水を25°C以下の第1の温度に冷却する。前記25°Cでのリンスは例えばまず30秒間継続され、次いで純水をオーバーフローさせながら約20分間継続される。その際、必要に応じてライン4b中の純水を混合し、温度を調整してもよい。その結果、基板7の表面から塵粒子が効果的に除去される。図2を参照。 【0034】 次ぎに、制御装置15は弁9および91を閉鎖し、温度センサ8の出力信号をモニタしながら駆動装置14を駆動してライン4c中の純水を前記第1の温度よりも高いが60°C以下に設定された第2の温度に加熱する。その結果、基板7の表面に残留していた薬液が効果的に除去される。図4を参照。その際、第2の温度を60°C以下に設定することで、基板表面における金属不純物元素の吸着を最少化することが出来る。図6を参照。この工程において、必要に応じて弁91を開き、ライン4b中の純水をライン4c中の純水に混合して温度を調整してもよい。 【0035】 前記第2の温度におけるリンスが終了すると、基板7は乾燥部3に移され、乾燥される。 【0036】 以上の工程において、基板7は表面に親水性の酸化膜が形成されているため、図8に示した関係は成立せず、基板7を低温の前記第1の温度の純水でリンスすることにより、効果的に粒子を除去することが可能になる。また、前記薬液処理工程において、基板7をHNO3等の酸化剤中に浸漬し、表面に自然酸化膜を意図的に形成してもよい。 【0037】 図10は本発明の第2実施例による基板洗浄装置の構成を示す。 【0038】 図10を参照するに、本実施例では薬液を保持する薬液槽12の他に、純水を保持する洗浄槽21〜23を含み、第1の洗浄槽21には図1のライン4aから前記第1の温度の純水が供給される。一方、第2の洗浄槽22には前記ライン4bより温度制御されていない常温の純水が供給され、さらに第3の洗浄槽23には前記ライン4cより加熱された、第2の温度の温純水が供給される。処理したい基板11はまず薬液槽12において処理された後、まず洗浄槽21において第1の温度の純水で洗浄され、ついで第2の洗浄槽22に移され、さらに第3の洗浄槽23において第2の温度の純水で洗浄される。基板11は洗浄槽23における処理の後、乾燥部31で乾燥される。 【0039】 本発明は、半導体装置の製造において有用であるのみならず、液晶表示装置の製造においても有用である。 【0040】 また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨内において様々な変形・変更が可能である。 【0041】 【発明の効果】 本発明によれば、基板を薬液により処理し引続きリンスする際、基板に付着する粒子を最少化出来、また基板表面から薬液を完全に除去することが可能である。 【図面の簡単な説明】 【図1】 純水洗浄における純水温度と粒子付着との関係を求める実験を示す図である。 【図2】 図1の実験結果を示す図である。 【図3】 純水洗浄における純水温度と比抵抗値の関係を求める実験を示す図である。 【図4】 図3の実験結果を示す図である。 【図5】 純水洗浄における純水温度と金属不純物の吸着量との関係を求める実験を示す図である。 【図6】 図5の実験結果を示す図である。 【図7】 純水洗浄における純水温度と粒子付着との関係を求める別の実験を示す図である。 【図8】 図7の実験結果を示す図である。 【図9】 本発明の第1実施例による基板洗浄装置の構成を示す図である。 【図10】 本発明の第2実施例による基板洗浄装置の構成を示す図である。 【符号の説明】 1,11 薬液槽 2,21〜23 洗浄槽 3,31 乾燥部 4,4a〜4c 洗浄水供給ライン 8 温度センサ 9,91,92 弁 10,13 熱交換器 11,14 駆動装置 15 制御装置 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-12-13 |
出願番号 | 特願平6-4095 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YA
(H01L)
P 1 652・ 16- YA (H01L) P 1 652・ 534- YA (H01L) P 1 652・ 532- YA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鈴木 充 |
特許庁審判長 |
前田 幸雄 |
特許庁審判官 |
菅澤 洋二 佐々木 正章 |
登録日 | 2002-10-04 |
登録番号 | 特許第3356522号(P3356522) |
権利者 | 富士通株式会社 富士通ヴィエルエスアイ株式会社 |
発明の名称 | 洗浄方法、かかる洗浄方法を使った半導体装置の製造方法および液晶表示装置の製造方法 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠彦 |