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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L 審判 全部申し立て 発明同一 A23L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A23L |
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管理番号 | 1132606 |
異議申立番号 | 異議2003-72808 |
総通号数 | 76 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2004-03-18 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-11-19 |
確定日 | 2005-12-19 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3406911号「コエンザイムQ10を含む飲料及びその製造方法」の請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3406911号の請求項1、3ないし5、7ないし10に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第3406911号に係る発明についての出願は、平成14年8月28日に特願2002-249596号として出願され、平成15年3月7日にその特許の設定登録がなされ、その後、安達泰守及び赤松善弘より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、訂正請求(後日取下げ)がなされた後、再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年11月2日に訂正請求がなされたものである。 II.訂正請求 1.訂正の内容 (a)特許請求の範囲の請求項1を、 「コエンザイムQ10を含み、当該コエンザイムQ10を安定化させる有効量のクエン酸及びリンゴ酸が配合された、ビタミンC含有飲料用液状組成物。」と訂正する。 (b)特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (c)特許請求の範囲の請求項3を請求項1に、請求項4及び7を、請求項1又は3に従属させる訂正をする。 (d)特許請求の範囲の請求項3及び5に記載の「コエンザイムQ」を「コエンザイムQ10」と訂正する。 (e)特許請求の範囲の請求項3,4,5及び7に記載の「飲料用組成物」を、「ビタミンC含有飲料用液状組成物」と訂正する。 (f)特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (g)特許請求の範囲の請求項8乃至10の「組成物」を「飲料用液状組成物」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項(a)は、「コエンザイムQ」を「コエンザイムQ10」に、「量」を「有効量」に、「含む飲料用組成物」を「配合された、ビタミンC含有飲料用液状組成物」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、同(b)及び(f)は、特許請求の範囲を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当し、同(c)は、同(b)に伴う訂正であり、同(d)は、「コエンザイムQ」を「コエンザイムQ10」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当し、同(e)は、「飲料用組成物」を「ビタミンC含有飲料用液状組成物」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、同(g)は、「組成物」を「飲料用液状組成物」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、これらの訂正は新規事項に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法120条の4、2項及び同条3項で準用する126条2項及び3項の規定に適合するので、請求のとおり当該訂正を認める。 III.特許異議申立 1.本件発明 上記のとおり、上記訂正が認められるから、訂正後の請求項1、3ないし5、及び7ないし10に係る発明(以下、「本件発明1、3ないし5、及び7ないし10」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】コエンザイムQ10を含み、当該コエンザイムQ10を安定化させる有効量のクエン酸及びリンゴ酸が配合された、ビタミンC含有飲料用液状組成物。 【請求項3】前記コエンザイムQ10が乳化により水溶液中に分散されたものであることを特徴とする請求項1に記載のビタミンC含有飲料用液状組成物。 【請求項4】請求項1又は3のいずれかに記載のビタミンC含有飲料用液状組成物が遮光性容器に充填されているものであることを特徴とする飲料製品。 【請求項5】コエンザイムQ10を乳化させて水溶液中に分散し、クエン酸及びリンゴ酸をその水溶液に加えることを特徴とする、安定化されたコエンザイムQ10を含む、ビタミンC含有飲料用液状組成物の製造方法。 【請求項7】請求項1又は3のいずれかに記載のビタミンC含有飲料用液状組成物を遮光条件下で保管するビタミンC含有飲料用液状組成物の保存方法。 【請求項8】クエン酸及びリンゴ酸を共存させることにより、コエンザイムQ10が含まれたものである飲料用液状組成物を安定化させる安定化方法。 【請求項9】更に、遮光することにより、前記コエンザイムQ10が含まれたものである飲料用液状組成物を安定化させる請求項8に記載の安定化方法。 【請求項10】クエン酸及びリンゴ酸の混合物を主成分とするコエンザイムQ10を含む飲料用液状組成物の安定化剤。」 2.足立泰守よりの特許異議申立 A.申立ての理由の概要 特許異議申立人 足立泰守は、甲第1号証ないし甲第3号証を提出し、(1)訂正前の請求項1ないし4及び7に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから特許法29条1項3号の規定に該当する、(2)訂正前の請求項1ないし7に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから同法29条2項の規定に違反する、或いは、(3)訂正前の請求項5、6及び8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない、若しくは発明の詳細な説明に記載の範囲を超えるものであるから、同法36条4項或いは6項1号の規定に違反する、と主張している。 B.甲各号証の記載内容 甲第1号証(特表2001-504343号公報)には、 「1.10mg/l〜500mg/lのユビキノンQ10を含むことを特徴とするテーブルウォーター、ミネラルウォーター等のような非アルコール性飲料。 6.1種またはそれ以上の果実ジュース濃縮物および/またはフレーバー改良剤を添加することを特徴とする上記請求項いずれか1項記載の飲料。 11.不透明な容器に入れられていることを特徴とする請求項1〜10いずれか1項記載の飲料。 12.容器が近および遠紫外光に対して不透過性であることを特徴とする請求項11記載の飲料。 14.約1.38g/lのライメット(・・)、約1.04g/lのカシスおよび約1.04g/lのマンゴを含むことを特徴とする請求項13記載の飲料。」(特許請求の範囲)と記載されている。 甲第2号証(特開平10-287560号公報)には、「ユビデカレノンおよびビタミンB1誘導体を配合したことを特徴とする医薬組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)、「本発明の経口組成物は、そのままあるいは必要に応じて他の公知の添加剤、例えば、・・・pH調製剤(クエン酸、リンゴ酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二カリウムなど)・・・などを混合して、常法により、液剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ドライシロップ剤などの経口製剤とすることができる。」(段落【0013】)、及び「実施例2 ユビデカレノン 400mg・・・蒸留水に上記成分とショ糖280g、キシリトール80g、ステビア300mg、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油2gおよびリンゴ酸ナトリウム10gを加えて撹拌し均一にした。その後、クエン酸にてpHを2.8に調整後、蒸留水を加え、1000ml液剤とした。」(段落【0017】)と記載されている。 甲第3号証(「新版・ソフトドリンクス」(昭和56年10月25日光琳発行、58〜59頁)には、「表3・18 果実の総酸中に占めるクエン酸、l-リンゴ酸、d-酒石酸の割合(%)」として「ブラックカーラン」では、クエン酸及びl-リンゴ酸が、それぞれ「90」と「5」であることが記載されている。 C.判断 (1)特許法29条1項3号について (本件発明1について) 本件発明1は、「コエンザイムQ10を含み、当該コエンザイムQ10を安定化させる有効量のクエン酸及びリンゴ酸が配合された、ビタミンC含有飲料用液状組成物」である。 これに対して、甲第1号証には、ユビキノンQ10(コエンザイムQ10と同一物質である。)とカシスとを含む非アルコール飲料が記載され、かつ、甲第3号証によると、このカシス(ブラックカーラン)には、クエン酸及びリンゴ酸が含有されているから、これを踏まえると、上記甲第1号証に係る非アルコール飲料は、コエンザイムQ10とカシスに含有されるクエン酸及びリンゴ酸を含んでいることになる。 しかし、甲第1号証に係る非アルコール飲料では、クエン酸及びリンゴ酸はカシスの含有成分として存在するものであって、本件発明1のように配合されたものではなく、しかも、コエンザイムQ10を安定化させる有効量で存在するのかが不明である。 そうすると、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいい難い。 甲第2号証の「実施例2」には、ユビデカレノン(コエンザイムQ10と同一物質である。)を含み、クエン酸及びリンゴ酸が配合された液剤が記載されているが、これらにビタミンCを配合することについては記載されていない。そうすると、「ビタミンC含有飲料用液状組成物」である本件発明1とは明確に区別されるものであるから、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。 (本件発明3、4及び7について) 本件発明3,4及び7は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1について検討したのと同じ理由により、甲第1号証或いは甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。 (2)特許法29条2項について (本件発明1について) 本件発明1は、コエンザイムQ10を含むビタミンC含有飲料用液状組成物において、当該コエンザイムQ10を安定化させるために有効量のクエン酸及びリンゴ酸を配合するものである。 これに対して、甲第1号証ないし甲第2号証には、コエンザイムQ10、クエン酸及びリンゴ酸からなる飲料(液剤)について開示されてはいるが、ビタミンC含有飲料用液状組成物において、クエン酸及びリンゴ酸の有効量を配合してコエンザイムQ10を安定化させることについて教示するところはない。 また、甲第3号証には、果実の総酸中に占めるクエン酸やリンゴ酸の割合について記載されているだけである。 そうすると、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができる域を超えているというべきである。 そして、本件発明1は、クエン酸とリンゴ酸の有効量を配合することにより、コエンザイムQ10を飲料中に安定的に保持させることができ、店頭や自動販売機の中で長期的に保管できる等特許明細書に記載されたとおりの効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (本件発明3、4及び7について) 本件発明3,4及び7は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1について検討したのと同じ理由により、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (本件発明5について) 本件発明5は、本件発明1に係る「ビタミンC含有飲料用液状組成物」という「物」の発明を「製造方法」で表現したものであるから、本件発明1について検討したのと同じ理由により、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (3)特許法36条4項或いは同条6項1号について 特許異議申立人は、本件明細書には、コエンザイムQにクエン酸及びリンゴ酸を共存させ、しかもそれを遮光することによって、コエンザイムQの安定化を図ることが記載されているだけであるから、当業者は本件明細書をみても、単にコエンザイムQにクエン酸及びリンゴ酸を共存させるだけで、訂正前の請求項5,6及び8に係る発明の特有の効果を備えるように実施できないから、訂正前の請求項5,6及び8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない、若しくは発明の詳細な説明に記載の範囲を超えるものであるから、同法36条4項或いは6項1号の規定に違反する、旨主張している。 よって検討するに、本件明細書の「実施例」の項には、「試験例」として、クエン酸を含むコエンザイムQ10の基本組成物に、リンゴ酸、コハク酸、或いはアスパラギン酸を加えた実験組成物を、遮光条件下で保存した場合のコエンザイムQ10の残存量を測定した試験結果が示されている。 この試験結果によると、クエン酸及びリンゴ酸を含む組成物以外の場合は、コエンザイムQ10が、時間と共に減少するが、クエン酸及びリンゴ酸の共存下では、殆ど分解されないことを確認することができる。 この試験結果は、遮光条件下で保存した場合であるが、そうでない場合でも同様の結果であると容易に予測でき、また、特許異議申立人は、この試験結果に反する実験データを示しているわけではないから、特許異議申立人の上記主張は採用しない。 3.赤松義弘よりの特許異議申立 A.申立ての理由の概要 特許異議申立人 赤松善弘は、甲第1号証ないし甲第4号証を提出し、(1)訂正前の請求項1ないし10に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから特許法29条1項3号の規定に該当する、(2)訂正前の請求項1ないし10に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから同法29条2項の規定に違反する、(3)訂正前の請求項1ないし10に係る発明は、甲第3号証又は甲第4号証に係る先願明細書に記載の発明と同一であるから同法29条の2の規定に違反する、或いは、(4)本件明細書の記載に不備があるから同法36条4項或いは6項2号の規定に違反する、と主張している。 B.甲各号証の記載内容 甲第1号証(特開2001-354553号公報)には、「上記した課題を解決するために本発明者らは鋭意研究した結果、ユビデカレノンと、水溶性ビタミン類とを組み合わせて製剤化する場合に、製剤中にゼラチンが存在することによって起こるユビデカレノンの分解を、有機酸を製剤中に配合することによって阻止しうることを見いだして本発明を完成させた。すなわち、本発明は、 ゼラチンと共存する、ユビデカレノンおよび水溶性ビタミン類を含有する組成物からなり、これに有機酸を配合することを特徴とする、安定化されたユビデカレノン製剤に関する。」(段落【0009】及び【0010】)、「本発明の製剤組成物に配合する有機酸としては、クエン酸、コハク酸、酒石酸、アスパルギン酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸などを挙げることができる。これらの有機酸中で、殊にクエン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、アスパルギン酸およびリンゴ酸が好ましい。」(段落【0020】)、「この結果からクエン酸の添加によりユビデカレノンの分解が抑制されることが分かる。」(段落【0035】)、「この結果から、リンゴ酸またはアスパラギン酸の添加によりユビデカレノンの分解が阻止できることが明らかである。」(段落【0044】)、及び「ユビデカレノンおよび水溶性ビタミン類を含有する組成物はゼラチンの存在下でユビデカレノンが分解されやすいが、これに有機酸、特にクエン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、アスパルギン酸、リンゴ酸を配合することにより、ユビデカレノンの分解を阻止することができる。」(段落【0045】)と記載されている。 甲第2号証(特表2001-504343号公報)には、上記「2.B.」において、甲第1号証として摘示したとおりのことが記載され、さらに「Q10含有飲料は、・・・・・製造後、飲料を不透明の容器、特に、近および遠紫外線不透過性の容器に詰める。また、この目的の容器には、例えば、缶を使用することもでき、光線の全てのスペクトルをカバーする。アルミニウムまたはアルミニウム合金の缶が好適に使用される。」(6頁26行〜7頁2行)と記載されている。 特願2001-243906号の願書に最初に添付された明細書(甲第3号証の特開2003-55203号公報参照。)には、「有機酸の存在下、水溶性物質に分散・乳化したユビキノンを含有することを特徴とする、ユビキノン含有製剤。」(特許請求の範囲の請求項1)、及び「ユビキノンを前述の水溶性物質に分散・乳化する際に用いる有機酸は、例えばクエン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸および/または酒石酸であり、好ましくはリンゴ酸、酒石酸またはこれらの混合物である。液体製剤への有機酸の添加量は、有機酸の種類により異なるが、一般的には0.5〜30重量%の範囲であり、好ましくは1〜25重量%である。」(段落【0015】)と記載され、有機酸として「実施例1ないし7」には「リンゴ酸」を、「実施例8」には「酒石酸」を使用したことが記載されている。 また、特願2002-109743号の願書に最初に添付された明細書(甲第4号証の特開2003-304847号公報参照。)には、「コエンザイムQ10とグリセリン脂肪酸エステル又は/及びショ糖脂肪酸エステルを含有する事を特徴とする安定化された液状飲用組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)、及び「本発明において、風味の点で無機酸や有機酸を配合することが好ましく、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、リン酸、コハク酸、酢酸、グルコン酸、グルタミン酸、塩酸、ポリリン酸等及びそれらの塩類を配合することができる。」(段落【0013】)と記載され、有機酸として「実施例1ないし4」には「クエン酸」を使用したことが記載されている。 C.判断 (1)特許法29条1項3号について (本件発明1について) 甲第1号証には、「この結果からクエン酸の添加によりユビデカレノンの分解が抑制されることが分かる。」、及び「この結果から、リンゴ酸またはアスパラギン酸の添加によりユビデカレノンの分解が阻止できることが明らかである。」との記載はあるが、クエン酸とリンゴ酸とを併用することについて直接的に記載されているところはない。 そうすると、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。 また、甲第2号証には、コエンザイムQ10とカシスとを含む非アルコール飲料が記載され、かつ、このカシス(ブラックカーラン)には、クエン酸及びリンゴ酸が含有されているから、これを踏まえると、上記甲第2号証に係る非アルコール飲料は、コエンザイムQ10とカシス由来のクエン酸及びリンゴ酸を含んでいることになる。 しかし、甲第2号証に係る非アルコール飲料では、クエン酸及びリンゴ酸はカシスの含有成分として存在するものであって、本件発明1のように配合されたものではなく、しかも、コエンザイムQ10を安定化させる有効量で存在するのかが不明である。 そうすると、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるとはいい難い。 (本件発明3、4及び7について) 本件発明3,4及び7は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1について検討したのと同じ理由により、甲第1号証或いは甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。 (本件発明5について) 本件発明5は、本件発明1に係る「ビタミンC含有飲料用液状組成物」という「物」の発明を「製造方法」で表現したものであるから、本件発明1について検討したのと同じ理由により、甲第1号証或いは甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。 (本件発明8ないし10について) 本件発明8及び9は「安定化方法」、並びに本件発明10は「安定化剤」に関するものであるところ、甲第1号証又は甲第2号証には、コエンザイムQ10の安定化については言及されていないので、本件発明8ないし10は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。 (2)特許法29条2項について (本件発明1について) 甲第1号証には、「これらの有機酸中で、殊にクエン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、アスパルギン酸およびリンゴ酸が好ましい。」及び「この結果から、リンゴ酸またはアスパラギン酸の添加によりユビデカレノンの分解が阻止できることが明らかである。」という記載はあるものの、本件明細書の「実施例」における、クエン酸を含む基本組成物にビタミンC及びアスパラギン酸を加えた「アスパ組成物」では、60℃で6日間保存した場合、残存量は40%と半分以下になっており、クエン酸とアスパラギン酸との組合せでは所期の効果が奏されることはない。 そうすると、有機酸としてクエン酸とリンゴ酸とを選択し、これを併用することによりコエンザイムQ10の安定化を図ることが甲第1号証に教示されているとはいえず、本件発明1は、甲第1号証の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。 また、甲第2号証には、コエンザイムQ10、クエン酸及びリンゴ酸からなる飲料(液剤)について開示されてはいるが、ビタミンC含有飲料用液状組成物において、クエン酸及びリンゴ酸の有効量を配合してコエンザイムQ10を安定化させることについて教えるところはない。 してみると、本件発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (本件発明3ないし5及び7について) 本件発明3,4及び7は、本件発明1を引用するものであり、本件発明5は、本件発明1に係る「ビタミンC含有飲料用液状組成物」という「物」の発明を「製造方法」で表現したものであるから、本件発明1について検討したのと同じ理由により、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (本件発明8ないし10について) 本件発明8及び9は「安定化方法」、並びに本件発明10は「安定化剤」に関するものであるところ、甲第1号証又は甲第2号証には、コエンザイムQ10の安定化については言及されていないので、本件発明8ないし10は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (3)特許法29条の2について (本件発明1について) 特願2001-243906号(甲第3号証参照。)に係る先願明細書には、「有機酸の存在下、水溶性物質に分散・乳化したユビキノンを含有することを特徴とするユビキノン含有製剤。」が記載され、分散・乳化する際に用いる有機酸として、クエン酸とリンゴ酸が他の多数の有機酸と共に例示されているが、ビタミンCを配合すること、及びクエン酸とリンゴ酸を併用することについては何も記載されていない。 また、特願2002-109743号(甲第4号証参照。)に係る先願明細書には、「コエンザイムQ10とグリセリン脂肪酸エステル又は/及びショ糖脂肪酸エステルを含有する事を特徴とする安定化された液状飲用組成物。」が記載され、さらに各種ビタミン類を配合きること及びクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、リン酸、コハク酸、酢酸、グルコン酸等の有機酸を配合できることが記載されているが、クエン酸とリンゴ酸を併用することについては何も記載されていない。 そうすると、本件発明1は、甲第3号証又は甲第4号証に係る先願明細書に記載の発明と同一であるとはいえない。 (本件発明3、4及び7について) 本件発明3,4及び7は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1について検討したのと同じ理由により、甲第1号証或いは甲第2号証に係る先願明細書に記載の発明と同一であるとはいえない。 (本件発明5について) 本件発明5は、本件発明1に係る「ビタミンC含有飲料用液状組成物」という「物」の発明を「製造方法」で表現したものであるから、本件発明1について検討したのと同じ理由により、甲第1号証或いは甲第2号証に係る先願明細書に記載の発明と同一であるとはいえない。 (本件発明8ないし10について) 本件発明8及び9は「安定化方法」、並びに本件発明10は「安定化剤」に関するものであるところ、甲第1号証又は甲第2号証に係る先願明細書には、コエンザイムQ10の安定化については言及されていないので、本件発明8ないし10は、甲第1号証又は甲第2号証に係る先願明細書に記載の発明と同一であるとはいえない。 (4)特許法36条4項或いは同条6項2号について 特許異議申立人は、(i)請求項1の「安定化させる量」について本件明細書には説明されておらず、また、どの程度の量か不明であるため本件発明の外延が不明確である、(ii)本件明細書段落【0030】に「コエンザイムQ(Q10を含む)」とあるが、Q10以外のコエンザイムQについて説明されていない、(iii)本件明細書には、クエン酸とリンゴ酸の総重量の説明があるが、クエン酸とリンゴ酸との比率が説明されてない、(iv)請求項3に「前記コエンザイムQ10が乳化により水溶液中に分散されたものである」と記載されているが、どのような水溶液であるか不明で、本件発明の外延が不明確である、(v)請求項6に「コエンザイムQが、コエンザイムQ10を含む」とあるが、詳細な説明には、コエンザイムQ10しか記載されておらず、本件発明の外延が不明確である、(vi)本件発明では、クエン酸とリンゴ酸とを併用した点に特徴があるところ、これらの成分が極めて多量であるか又は極少量である場合には、それぞれの単独使用と実質的に同一となり、その比率は、請求項で記載されるべきである、と主張している。 (i)について 本件明細書段落【0029】には、「本発明の飲料用組成物に配合される特定有機酸混合物であるクエン酸及びリンゴ酸は、その総重量として、通常コエンザイムQに対し、好ましくは重量で約2倍〜約2000倍、より好ましくは重量で約2倍〜約1000倍、特に好ましくは重量で約20倍〜約100倍の量で用いられ得る。」との記載があり、この記載により「安定化させる有効量」は明らかであるから、異議申立人が指摘する記載不備はない。 (ii)及び(v)について 上記訂正請求により、本件発明に係る「コエンザイムQ」は「コエンザイムQ10」に限定されたので、もはや上記主張に理由はない。 (iii)について 本件明細書の「実施例」における「実験組成物」である「リンゴ組成物」では、クエン酸が「0.3%」、リンゴ酸が「0.1%」で配合されていることが記載されている。 したがって、クエン酸とリンゴ酸の比率は明細書に開示されているといえる。 (iv)について 本件明細書段落【0041】には、「また、残部は、純水である。」との記載があり、水溶液の組成は明らかである。 (vi)について 本件発明は、コエンザイムQ10含むビタミンC含有飲料用液状組成物において、当該コエンザイムQ10を安定化させる有効量のクエン酸及びリンゴ酸が配合されたところに新規性が認められるものであるから、敢えて、その比率を請求項に記載する必要はない。 したがって、上記特許異議申立人の主張はいずれも失当である。 4.まとめ 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件の請求項1、3ないし5、7ないし10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の請求項1、3ないし5、7ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 コエンザイムQ10を含む飲料及びその製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】コエンザイムQ10を含み、当該コエンザイムQ10を安定化させる有効量のクエン酸及びリンゴ酸が配合された、ビタミンC含有飲料用液状組成物。 【請求項2】削除 【請求項3】前記コエンザイムQ10が乳化により水溶液中に分散されたものであることを特徴とする請求項1に記載のビタミンC含有飲料用液状組成物。 【請求項4】請求項1又は3のいずれかに記載のビタミンC含有飲料用液状組成物が遮光性容器に充填されているものであることを特徴とする飲料製品。 【請求項5】コエンザイムQ10を乳化させて水溶液中に分散し、クエン酸及びリンゴ酸をその水溶液に加えることを特徴とする、安定化されたコエンザイムQ10を含む、ビタミンC含有飲料用液状組成物の製造方法。 【請求項6】削除 【請求項7】請求項1又は3のいずれかに記載のビタミンC含有飲料用液状組成物を遮光条件下で保管するビタミンC含有飲料用液状組成物の保存方法。 【請求項8】クエン酸及びリンゴ酸を共存させることにより、コエンザイムQ10が含まれたものである飲料用液状組成物を安定化させる安定化方法。 【請求項9】更に、遮光することにより、前記コエンザイムQ10が含まれたものである飲料用液状組成物を安定化させる請求項8に記載の安定化方法。 【請求項10】クエン酸及びリンゴ酸の混合物を主成分とするコエンザイムQ10を含む飲料用液状組成物の安定化剤。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、複数の有機酸の共存下で、コエンザイムQを含む飲料とその飲料の保管方法、特に遮光条件下で保管されるコエンザイムQ10を含む飲料やその保管方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 コエンザイムQ10(補酵素Q-10)は、一般にはビタミンQとも呼ばれ、ユビデカレノン、ユビキノン、ユビキノール-10とも呼ばれる強力な抗酸化物質であり、身体を最も望ましい状態で機能させるために細胞に与えるとよい栄養素の1つである。食品の中にも少量含まれるが、体内の細胞でも作り出されている。コエンザイムQ10は、コハク酸脱水素酵素活性に関連する補酵素でユビデカレノン、ユビキノン、又は、コエンチームQ10とも呼ばれる物質(分子式C59H90O4、分子量863.36)で、1957年Craneらによりウシ心筋のミトコンドリアから単離され、心筋ミトコンドリアの電子伝達系に位置してエネルギー生産に重要な役割を果たす物質であることが知られている。 【0003】 これまでに、ユビデカレノンは経口的に投与されて心筋細胞のミトコンドリアに取り込まれることが知られ、軽度および中程度のうっ血性心不全による浮腫、肺うっ血、狭心症状を含む心筋障害の改善、低下した心拍出量の改善のための医薬として用いられている。 【0004】 また、このユビデカレノンとビタミンB1誘導体とを組み合わせて経口投与すると、この二つの薬剤が相乗的に作用して、ミトコンドリア内のチトクロム電子伝達系におけるエネルギー代謝が改善され、酸化的リン酸化を促進し、低酸素条件下でも酸素利用率が改善され、ATP産生率を高める医薬組成物として有用なこと、およびこの組成物が肉体疲労を回復する医薬として有用なことが知られている(例えば、特開平7-330584号公報)。 【0005】 また上記したユビデカレノンと、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビオチン、パントテン酸、ニコチン酸などの水溶性ビタミン類、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEなどの油溶性ビタミン類、カフェインなどのキサンチン誘導体、人参、鹿茸、牛黄、地黄、枸杞子、ロイアルゼリーなどの生薬、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などのミネラル、メチオニン、ロイシン、タウリンなどのアミノ酸を配合して疲労回復または疲労改善のための製剤例えばドリンク剤を製造することも知られている(特開平7-330593号公報、特開平10-287560号公報など参照)。 【0006】 これまでに、コエンザイムQ10は経口的に投与されて心筋細胞のミトコンドリアに取り込まれることが知られ、軽度および中程度のうっ血性心不全による浮腫、肺うっ血、狭心症状を含む心筋障害の改善、低下した心拍出量の改善のための医薬として用いられている。また、ビタミンEやKに近い構造の物質で食品の成分であるので、食品として扱われることもある。コエンザイムQ10は、油性であり水溶液にそのままでは溶解し難い。 【0007】 しかし、コエンザイムQ10は、乳化により水溶液中への分散が可能であり、通常水を主成分とする飲料に分散することができる。ところが、このように分散されたコエンザイムQ10の安定性が必ずしも高くないことが判明した。 【0008】 これまで、このコエンザイムQ10であるユビデカレノンは、ゼラチンの共存下に於いて、極めて不安定であって、分解物としてユビクロメノールを生成するといわれており、ゼラチンと共存するユビデカレノンおよび水溶性ビタミン類を含有する組成物に有機酸を配合することにより安定化させることが提案されている(特開2001-354553号公報)。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、ゼラチン共存下では、有機酸を配合することによりユビデカレノンの安定性が向上するが、水やグリセリン等が共存する場合については、その効果は必ずしも明確になっていない。従って、乳化して水溶液に分散されたコエンザイムQ10の安定性が所定の基準を満たすものか否かを調べ、満たさない場合は、それを何らかの方法で満たすようにすることが本発明の課題である。 【0010】 【発明を解決するための手段】 以上の課題に鑑み、乳化して水溶液に分散されたコエンザイムQ10の性質を調べたところ、非常に不安定であり、光により速やかに減少することがわかった。また、遮光容器へ閉じ込めた飲料であってもビタミンC等、さまざまな成分の共存により不安定化し、長期間の残存性を確保することが難しいことが判明した。水溶液中でのコエンザイムQ10の安定性の向上のために、遮光し、かつ、ビタミンCを排除すれば安定性が向上することは予測されるが、飲料にはビタミンCが含まれることが多く、この手段は飲料に適さないこともある。 【0011】 そこで、コエンザイムQ10の安定化のために鋭意研究を重ねたところ、クエン酸及びリンゴ酸を共存させると、コエンザイムQ10が安定化することを見出した。即ち、コエンザイムQ10を含む飲料又は飲料組成物中に、クエン酸及びリンゴ酸を共存させるようにするものである。あるいは、コエンザイムQ10を乳化させて分散させた水溶液に、クエン酸及びリンゴ酸を全て含ませて飲料を提供することである。また、クエン酸及びリンゴ酸を含ませた水溶液に、コエンザイムQ10を乳化させて分散させることにより、飲料として提供することもできる。また、クエン酸及びリンゴ酸と、コエンザイムQ10とを共存させた状態で、遮光条件下、コエンザイムQ10を含む飲料を保管する安定的な保存方法を提供する。 【0012】 上記のような構成とすることにより、乳化により分散させたコエンザイムQ10を含む飲料中のコエンザイムQ10を安定化することができ、そして、安定化したコエンザイムQ10を含む飲料を提供することができる。また、乳化により分散させたコエンザイムQ10を含む飲料を長期間保存する方法を提供することができる。 【0013】 より具体的には、本発明は次のような新規飲料組成物及び方法等を提供する。 【0014】 (1)コエンザイムQを含み、当該コエンザイムQを安定化させる量のクエン酸及びリンゴ酸を含む飲料用組成物。 【0015】 (2)前記コエンザイムQが、コエンザイムQ10を含むことを特徴とする上記(1)に記載の飲料用組成物。 【0016】 (3)前記コエンザイムQが乳化により水溶液中に分散されたものであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の飲料用組成物。 【0017】 (4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の飲料用組成物が遮光性容器に充填されているものであることを特徴とする飲料製品。 【0018】 (5)コエンザイムQを乳化させて水溶液中に分散し、クエン酸及びリンゴ酸をその水溶液に加えることを特徴とする、安定化されたコエンザイムQを含む飲料用組成物の製造方法。 【0019】 (6)前記コエンザイムQが、コエンザイムQ10を含むことを特徴とする上記(5)に記載のコエンザイムQを含む飲料用組成物の製造方法。 【0020】 (7)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の飲料用組成物を遮光条件下で保管する飲料用組成物の保存方法。 【0021】 (8)クエン酸及びリンゴ酸を共存させることにより、コエンザイムQ10が含まれたものである組成物を安定化させる安定化方法。 【0022】 (9)更に、遮光することにより、前記コエンザイムQ10が含まれたものである組成物を安定化させる請求項8に記載の安定化方法。 【0023】 (10)クエン酸及びリンゴ酸の混合物を主成分とするコエンザイムQ10を含む組成物の安定化剤。 【0024】 ここで、このコエンザイムQ10を含む組成物の安定化剤には、その他として、いわゆる、希釈剤、安定化剤、調整剤等を含んでよく、適宜賦形剤(更に、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤を含むことを妨げない。)を含んでもよい。また、主成分というのは、有効成分と同等の意味合いで用いられる場合もある。 【0025】 本発明において、コエンザイムQ10の構造を以下に示す。 【0026】 【化1】 【0027】 コエンザイムQ10は、一般名はユビデカレノン(ubidecarenone)で、化学名は、2-(3,7,11,15,19,23,27,31,35,39-decamethyl-2,6,10,14,18,22,26,30,34,38-tetracontadecaenyl)-5,6-dimethoxy-3-methyl-1,4-benzoquinoneである。分子量は、863.36で、融点が約48℃の黄色からだいだい色の結晶性の粉末で、におい及び味はない。エーテルに溶けやすく、光によって分解し、着色が強くなる。コエンザイムQ10は、図1のnが10の物質であり、高等動物において有効な補酵素であるが、nがそれ以外では高等動物以外の生物において有効な補酵素とされる場合もある。コエンザイムQは、これらを含む総称であってよい。 【0028】 本発明では、クエン酸及びリンゴ酸を含むことを特徴とするが、他の種類の酸(例えば、有機酸)が含まれてよい。より具体的には、コハク酸、乳酸、酢酸、フマル酸、酒石酸、グルコン酸,アスパルギン酸、乳酸、マロン酸、マレイン酸等の有機酸を含んでよい。但し、コスト増大や予期せぬ複合効果を避けるためには、より単純化した系(究極的には、クエン酸及びリンゴ酸のみ)が好ましいと考えることもできる。 【0029】 本発明の飲料用組成物に配合される特定有機酸混合物であるクエン酸及びリンゴ酸は、その総重量として、通常コエンザイムQに対し、好ましくは重量で約2倍〜約2000倍、より好ましくは重量で約2倍〜約1000倍、特に好ましくは重量で約20倍〜約100倍の量で用いられ得る。 【0030】 水溶液中にコエンザイムQを乳化して分散させるためには、油脂溶解性のコエンザイムQを少量の油脂性の溶媒で溶解し、適当な界面活性剤を加えた水溶液に少量ずつ加えることにより分散することができる。或いは、コエンザイムQ(Q10を含む)を乳化剤を用いて乳化することができる。このような乳化剤としては、例えば、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、ステアリン酸ジグリセリル、オレイン酸ジグリセリルなどの脂肪酸グリセリンエステル;ステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンフィトステロール、ステアリン酸ポリエチレングリコール、オレイン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどポリオキシエチレンアルキルエーテル;ステアリン酸、オレイン酸などの有機酸;ラウリル硫酸ナトリウム等の陰イオン性乳化剤などが挙げられる。 【0031】 クエン酸及びリンゴ酸を共存させるためには、コエンザイムQが分散される水溶液に予めこれらの有機酸を溶解させておいてよい。この水溶液は、対象となる飲料組成物そのものであってもよく、飲料組成物に添加するコエンザイムQ濃縮液のようなものでもよい。また、コエンザイムQが分散された水溶液にこれらの有機酸を溶解させてもよい。ここで、飲料組成物は、飲料の原料となる組成物であってよく、また、飲料そのものであってもよい。また、飲料とは、コーヒー飲料、茶飲料、炭酸飲料、清涼飲料、種々の成分を添加した水等あらゆる種類の飲料を含んでよい。 【0032】 遮光条件下で保管するということは、遮光された箱等に透明・不透明を問わない容器に入れた当該飲料を保管することを含み、また、遮光性の容器に直接当該飲料を入れて保管することを含んでよい。ここで、遮光というのは、可視光のうち約50%以上がカットされることを意味する場合であってもよく、より好ましくは、約90%以上である場合であってもよい。また、特に波長の短い光はエネルギーが高いため、波長約340ナノメータ以下の光が、約80%以上、より好ましくは、約95%以上カットされることが重要と考えることもできる。例えば、金属製の缶容器の中に入れた場合は、上記の遮光条件をほぼ満足する。 【0033】 このようにして得られたコエンザイムQを含む飲料は、適当な有機酸の配合により、その味や風味に特有のものを持たせることが可能であり、コエンザイムQの栄養価としての機能のみならず、飲料の嗜好性をも満足させることができうる。このためには、これら有効成分の組合わせ、配合比率のみならず、その他の成分の組合わせや配合比率を調節することが好ましい。 【0034】 また本発明の飲料には、香料、着色剤、酸化防止剤、そして、その他の成分を加えてもよい。例えば、カフェインなどのキサンチン誘導体、人参、鹿茸、牛黄、地黄、枸杞子、ロイヤルゼリーなどの生薬、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅などのミネラル、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、リシン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、タウリンなどのアミノ酸類、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどの油溶性ビタミン類などが挙げられる。 【0035】 ここで、コエンザイムQ10が安定化するということは、コエンザイムQ10のみを同じ条件で保管した場合に、上記のような方法で、コエンザイムQ10の分解速度を遅らせることができる場合を含んでよい。 【0036】 【発明の実施の形態】 以下、本発明を具体的な例を上げつつ、より詳しく説明する。 【0037】 コエンザイムQ10は、自然界においては、酵母、鯖、鰯、小麦胚芽、骨格筋肉、心臓に多く含まれ、熱水、含水アルコール、アセトン等の有機溶媒によって抽出されることができる。工業的製造では一般的には発酵法、合成法がある。発酵法では酵母に発酵生産させ抽出、精製され、旭化成社、協和発酵社から市販されている。また、合成的には、植物葉中の成分を出発原料に、合成、精製され、日清ファルマ社から市販されている。以下に述べる実施例では、日清ファルマ社のCOQ10を使用した。 【0038】 クエン酸、乳酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸,アスパルギン酸、乳酸、マロン酸、マレイン酸等の有機酸は、一般に市販されているものを用いることができる。 【0039】 【実施例】 [試験例]基本組成物として、日清ファルマ社製のコエンザイムQ10に乳化剤を加え乳化し、グリセリン、食用油脂、増粘剤等を加え製剤化した後、水溶液中に次の割合で配合した(表1参照)。 【0040】 【表1】 【0041】 上記コエンザイムQ10の基本組成物に(1)ビタミンC(VC)及びリンゴ酸を加えたもの(リンゴ組成物)、(2)ビタミンC(VC)及びコハク酸を加えたもの(コハク組成物)、(3)ビタミンC(VC)及びアスパラギン酸を加えたもの(アスパ組成物)、(4)ビタミンC(VC)だけを加えたもの(C組成物)、及び、(5)基本組成物を準備した。それぞれの場合において、コエンザイムQ10乳化剤を含む基本組成物とその他の添加物の配合比率を表2にまとめる。この表において、クエン酸は、基本組成物に含まれているクエン酸のことであって、あとから加えた添加物ではない。また、残部は、純水である。以上のようにして、得られた配合物についてガラス瓶中(窒素置換された)で遮光条件下で60℃、37℃、又は、20℃に保存して、実験開始時、60℃で4日後(60℃4日)、60℃で6日後(60℃6日)、37℃で2週間後(37℃2W)、4週間後(37℃4W)、8週間後(37℃8W)、及び、20℃で10月後(20℃10M)においてコエンザイムQ10の残存量を測定した。 【0042】 【表2】 【0043】 CQ10の評価(残存量測定)方法は、液体クロマトグラフィーを用いて以下の条件で行った。 【0044】 〔HPLC条件〕 カラム:Inertcil ODS-2 5μm(4mm lD×150mm) 移動相:メタノール/エタノール=12/8の混液流。量:1ml/min。 温度:40℃。注入量:50μl。この試験結果は次の表3に示される。 【0045】 【表3】 【0046】 この表から、クエン酸及びリンゴ酸を含むリンゴ組成物以外の組成物において、COQ10が、時間と共に減少していることがわかる。特に60℃において6日目にはリンゴ組成物以外の組成物全てで半分以下になり、分解が顕著に進んでいることがわかる。更に、(4)と(5)を比べれば、ビタミンCの存在下で、COQ10の分解が加速していることがわかる。しかし、クエン酸及びリンゴ酸を含むリンゴ組成物においては、コエンザイムQ10は、どの温度範囲においても、ほとんど減少しておらず、特に10ヶ月と長期にわたっても安定していることがわかる。即ち、コエンザイムQ10は、クエン酸及びリンゴ酸の共存下で、殆ど分解されなかったことがわかる。 【0047】 上記試料の基本組成物、クエン酸、及び、リンゴ酸、を含む組成物を茶飲料(試料21)、レモン果汁飲料(試料22)、炭酸飲料(試料23)に、それぞれの飲料に対して30重量%だけ添加し、金属製の缶に密閉し、室温で保存し、上記と同様に2週間後(2W)、4週間後(4W)、及び、8週間後(8W)においてコエンザイムQ10の残存量を測定した。 【0048】 【表4】 【0049】 この表から明らかなように、本発明によれば、各種飲料において、コエンザイムQ10は、遮光条件下で、安定的に保存されることがわかる。 【0050】 【発明の効果】 以上のような本発明によれば、コエンザイムQ10を飲料中に安定的に保持させることができ、缶に詰めた状態で、店頭や自動販売機の中で長期的に保管できることがわかる。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-11-28 |
出願番号 | 特願2002-249596(P2002-249596) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YA
(A23L)
P 1 651・ 536- YA (A23L) P 1 651・ 113- YA (A23L) P 1 651・ 161- YA (A23L) P 1 651・ 121- YA (A23L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 本間 夏子 |
特許庁審判長 |
田中 久直 |
特許庁審判官 |
種村 慈樹 長井 啓子 |
登録日 | 2003-03-07 |
登録番号 | 特許第3406911号(P3406911) |
権利者 | アサヒ飲料株式会社 |
発明の名称 | コエンザイムQ10を含む飲料及びその製造方法 |
代理人 | 正林 真之 |
代理人 | 正林 真之 |