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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B01J |
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管理番号 | 1132613 |
異議申立番号 | 異議2003-70699 |
総通号数 | 76 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-03-05 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-03-11 |
確定日 | 2005-12-28 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3328438号「固体酸触媒の製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3328438号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3328438号は、平成6年8月15日に特許出願され、平成14年7月12日に特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人コスモ石油株式会社(以下、「申立人」という)より、特許異議の申立てがなされ、取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成15年8月14日付けで訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否 2-1.訂正の内容 本件訂正の内容は、本件特許明細書を、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正すること、即ち、下記訂正事項(a)乃至(c)のとおりに訂正しようとするものである。 訂正事項(a) 【特許請求の範囲】の【請求項1】の 「・・・pHが6.5〜8.5の範囲の溶液中で調製したジルコニウム水酸化物もしくは水和酸化物・・・」 を 「・・・pHが6.5〜8.5の範囲の溶液中で、ジルコニウムの塩にアルカリを加えて中和し、過剰なアルカリを加えることなく調製したジルコニウム水酸化物もしくは水和酸化物・・・」 に訂正する。 (b)段落【0006】の 「・・・pHが6.5〜8.5の範囲にあり、温度が40〜100℃に加熱された溶液中で調製したジルコニウム水酸化物もしくは水和酸化物・・・」 を 「・・・pHが6.5〜8.5の範囲にあり、温度が40〜100℃に加熱された溶液中で、ジルコニウムの塩にアルカリを加えて中和し、過剰なアルカリを加えることなく調製したジルコニウム水酸化物もしくは水和酸化物・・・」 に訂正する。 (c)段落【0020】の 「アルキル化、エステル化、異性化など様々な酸触媒反応に高い触媒機能を示し」 を 「異性化反応に高い触媒機能を示し」 に訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項(a)は、【請求項1】の、「pHが6.5〜8.5の範囲の溶液中でジルコニウム水酸化物もしくは水和酸化物を調製する」とは、ジルコニウムの塩にアルカリを加えて中和することに他ならず、また、固体酸触媒を製造するときの、ジルコニウム水酸化物もしくは水和酸化物の調製に際して、アルカリを過剰に添加する特別の事情も存在しないので、「過剰なアルカリを加えることなく」との規定は、それ自体限定的減縮に該当しないところから、上記訂正事項(a)は、明りようでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。 また、上記訂正事項(b)は、上記訂正事項(a)に対応して、【請求項1】の訂正に整合させるためであって、明りようでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。 さらに、上記訂正事項(c)は、【請求項1】の方法で製造する固体酸触媒の用途を、「アルキル化、エステル化、異性化など様々な酸触媒反応」を「異性化反応」に限定し、【請求項1】の記載に整合させるためであって、明りようでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。 そして、上記訂正事項(a)〜(c)は、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 2-3.まとめ 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 3-1.本件発明 本件請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という)は、上記2.で示したように、上記訂正が認められるから、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(上記2-1.の訂正事項参照) 「【請求項1】 40〜100℃に加熱したpHが6.5〜8.5の範囲の溶液中で、ジルコニウムの塩にアルカリを加えて中和し、過剰なアルカリを加えることなく調製したジルコニウム水酸化物もしくは水和酸化物を、硫酸根を含有するか、もしくは焼成により硫酸根を発生する処理剤で処理した後、350〜900℃の温度範囲で焼成することを特徴とする酸強度(H0)-11.93以下であり異性化反応に用いられる固体酸触媒の製造方法。 【請求項2】 前記溶液のpHが7〜8の範囲であり異性化反応に用いられる請求項1記載の固体酸触媒の製造方法。」 3-2.取消理由の概要 当審で通知した取消理由の概要は、訂正前の本件請求項1及び2に係る発明は、下記刊行物1、2または3に記載された発明と同一であるか、下記刊行物1〜4の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項もしくは同条第2項の規定に違反してなされたものであるというものである。 刊行物1:特開平5-208922号公報(甲第1号証) 刊行物2:特開平5-200296号公報(甲第2号証) 刊行物3:A.Corma et al., "Applied Catalysis" A.General Vol.111, 175-189 (1994)(甲第3号証) 刊行物4:「触媒」Vol.27,No.3,198-204(1985) (甲第4号証) 3-3.刊行物の記載 3-3-1.刊行物1には次の事項が記載されている。 (a)「分子当り4〜24個の炭素原子を有する直鎖パラフィンを臨界超過又は臨界に近い状態で反応体及び/又は生成物と共に固体スーパーアシッド(超強酸)触媒と接触させることからなる分子当り4〜24個の炭素原子を有する直鎖パラフィンの異性化方法。」(【請求項1】) (b)「触媒の酸性度がH0=-12よりも強い請求項1に記載の方法。」(【請求項3】) (c)「水酸化アンモニウム(溶液B・・・)でジルコニウム塩溶液(溶液A・・・)を加水分解することによって、水酸化ジルコニウムを造った。溶液Aと溶液Bを、一緒にした混合物のpHが7.0と8.0の間に保たれるように、攪拌加熱しながら反応器に同時に加え、そして溶液Aが完全に使い果されるまで温度を50〜55℃に保った。添加が完了した後、反応混合物を更に2時間攪拌し、次に一夜静置しながら冷却した。・・・硫酸アンモニウム・・・を十分量の水中に溶解し、水酸化ジルコニウム・・・上に含浸させた。・・・処理された水酸化物を次に150℃で乾燥し、次に725℃で1時間苛焼した。完成した触媒である硫酸化ジルコニアは、4.0%の硫酸イオンを含有していた。硫酸化ジルコニアの酸性度は、ヒノ及びアラタによってH0<-16と報告されている(J.C.S. Chem. Comm. 851,(1980))。」(【0027】) 3-4.当審における判断 3-4-1.本件発明1について 上記刊行物1の記載(c)を、本件発明1に沿って整理すると、「50〜55℃に加熱し、pH7.0〜8.0の範囲の溶液中で、水酸化アンモニウムでジルコニウム塩溶液を加水分解して水酸化ジルコニウムを調製し、硫酸アンモニウムで処理した後、725℃で焼成することを特徴とする酸強度(H0)が-16より小さな異性化反応に用いる固体酸触媒の製造方法」(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると言える。 そこで、本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、上記の構成で一致し、 本件発明1では、水酸化ジルコニウムの調製に際し、「過剰なアルカリを加えない」ことを明記しているのに対し、刊行物1発明では、過剰なアルカリを加えているか否か明記されていない点で相違し(相違点1)、 また、本件発明1では、固体酸触媒の用途を単に「異性化反応用」としているのに対し、刊行物1発明は、「臨界超過又は臨界に近い状態の反応体と接触させて直鎖パラフィンの異性化反応用」としている点で相違している(相違点2)。 以下、相違点について検討する。 上記相違点1については、上記刊行物1の記載(c)に「溶液Aと溶液Bを、一緒にした混合物のpHが7.0と8.0の間に保たれるように、攪拌加熱しながら反応器に同時に加え、そして溶液Aが完全に使い果されるまで温度を50〜55℃に保った。添加が完了した後、反応混合物を更に2時間攪拌し、次に一夜静置しながら冷却した。」とあり、該記載中に「pHが7.0と8.0の間に保たれるように、・・・溶液Aが使い果たされるまで・・・保った。」後に、「さらに、溶液Bのみを添加して」添加を完了したとの記載がないことからいって、添加が完了した時の最終的なpHは7.0と8.0の間に保たれたままであると解するのが相当である。 してみれば、刊行物1発明の、水酸化ジルコニウムの調製時の溶液のpH7.0〜8.0は、本件発明1の6.5〜8.5の中央に位置し、好ましい範囲を規定したと思われる本件発明2の範囲と一致しているのであるから、当然に、本件発明1でいう「過剰」の域にないことは明らかというべきである。 また、本件特許公報の段落【0008】に記載の、過剰のアルカリを加えたときの、触媒活性への悪影響が、刊行物1発明において生じていることを具体的に確認することができないところから、刊行物1発明の、水酸化ジルコニウムの調製時の溶液のpHが、本件発明1のものと区別する根拠を見いだすこともできない。 よって、上記相違点1は、実質的な差異とすることはできない。 この点に関し、特許権者は、pH10までアルカリを添加する旨が明記された特開昭61-242641号公報、特開昭61-263932号公報を従来技術として挙げ、刊行物1発明は「さらに、溶液Bのみを添加して」添加を完了しており、過剰なアルカリが加えられていると主張している。 しかしながら、特許権者の主張に沿って「さらに、溶液Bのみを添加して」添加を完了したとして刊行物1発明を解釈すると、「pHが7.0と8.0の間に保たれるように、・・・溶液Aが使い果たされるまで・・・保った。」との刊行物1の記載は、溶液Aが完全に使い果たされるまでは、すなわち、中和が完了するまではpHを7.0と8.0との間に保つことが必要であることを敢えて意図した記載であることになるが、斯かる意図に関しては刊行物1には何等説明がされていないものである。このように、刊行物1に何等説明もない新たな技術思想を有すると解釈してまで、記載のない「さらに、溶液Bのみを添加して」添加を完了していると解することは合理的な解釈とはいえず、単に、刊行物1発明では、最終的なpHは7.0〜8.0との間に保たれたままであるが、特開昭61-242641号公報、特開昭61-263932号公報に記載された技術では、pH10までアルカリを添加していると解するのが相当である。 よって、特許権者の主張は採用できないものである。 また、相違点2については、本件明細書の全体を精査してみても、本件発明1の「異性化反応用」が刊行物1発明の用途を排除しているとする根拠が見いだせない以上、この点も相違点とすることはできない。 したがって、本件発明1は刊行物1発明と同一である。 3-4-2.本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の、水酸化ジルコニウム調製時の溶液のpHを7〜8と規定したことを特徴とするものであり、この点は刊行物1発明の範囲と一致するところから、3-4-1.に記載と同じ理由により、本件発明2は刊行物1発明と同一である。 4.まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、上記刊行物1に記載された発明に該当するので、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件発明1及び2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則 第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 固体酸触媒の製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】40〜100℃に加熱したpHが6.5〜8.5の範囲の溶液中で、ジルコニウムの塩にアルカリを加えて中和し、過剰なアルカリを加えることなく調製したジルコニウム水酸化物もしくは水和酸化物を、硫酸根を含有するか、もしくは焼成により硫酸根を発生する処理剤で処理した後、350〜900℃の温度範囲で焼成することを特徴とする酸強度(H0)が-11.93以下であり異性化反応に用いられる固体酸触媒の製造方法。 【請求項2】前記溶液のpHが7〜8の範囲であり異性化反応に用いられる請求項1記載の固体酸触媒の製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、周期律表第IV属金属化合物からなる-11.93以下という高い酸強度を有する固体酸触媒の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 化学工業においては、アルキル化反応、エステル化反応、異性化反応等の酸触媒を必要とする反応が多数知られている。従来この種の反応には、硫酸、塩化アルミニウム、フッ化水素、リン酸、パラトルエンスルホン酸等の酸触媒が使用されている。しかしこれらの酸触媒は金属を腐食させる性質があり、高価な耐食材料の使用あるいは耐食処理を施す必要があった。また通常、反応後の反応物質との分離が困難な上に廃酸処理が必要であり、アルカリ洗浄などの煩雑な工程を経なければならず、環境面にも大きな問題があった。さらに触媒を再利用することも非常に困難であった。 【0003】 かかる状況に鑑み、本発明者らは周期律表第IV族金属水酸化物もしくは水和酸化物を硫酸根含有溶液と接触させた後、350〜800℃で焼成した硫酸根含有金属酸化物が100%硫酸(H0は-11.93)より高い酸強度を示すことを見出し、固体酸触媒の製造方法を提案した(特公昭59-6181公報)。これらの固体酸触媒は、その高い酸強度故に様々な酸触媒反応に対し高い触媒性能を有し、しかも腐食性が低く、反応物質との分離が容易で廃酸処理も不要、触媒の再利用も可能といった長所を有しており、様々な工業的反応において、従来の酸触媒の代替が期待されている。しかしながら、これらの固体酸触媒は、硫酸根含有溶液との接触前の原料のIV族金属水酸化物もしくは水和酸化物に起因すると思われる活性のばらつき等の問題があった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、高活性な固体酸触媒を安定的に製造する方法を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、特定の条件下に得られた周期律表第IV属金属水酸化物もしくは水和酸化物を用いることにより、さらに高い触媒活性を有する固体酸触媒を安定的に得ることができることを見出した。 【0006】 本発明は、かかる知見に基づきなされたもので、pHが6.5〜8.5の範囲にあり、温度が40〜100℃に加熱された溶液中で、ジルコニウムの塩にアルカリを加えて中和し、過剰なアルカリを加えることなく調製したジルコニウム水酸化物もしくは水和酸化物を、硫酸根を含有するか、もしくは焼成により硫酸根を発生する処理剤で処理した後、350〜900℃の温度範囲で焼成することからなる酸強度(H0)が-11.93以下であり異性化反応に用いられる固体酸触媒を製造する方法である。 【0007】 本発明にいう周期律表第VI族金属としては、ジルコニウムが用いられる。 【0008】 第IV族金属水酸化物もしくは水和酸化物は、一般には、水、または水と、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコールとの混合溶液に上記第IV族金属の塩、例えば、これらの金属のアルコラート、塩化物、硫酸塩、オキシ塩化物あるいはオキシ硫酸塩等を溶解、あるいは懸濁させ、これに、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等の水酸化物あるいは炭酸塩等のアルカリ、特に好ましくは、アンモニア水溶液を加えて、中和することにより得ることができるが、この際、中和後の最終pHが6.5〜8.5の範囲になるように、第IV族金属の水酸化物もしくは水和酸化物を調製する必要がある。溶液のpHが6.5より低くても、また8.5より高くても、最終的に製造した固体酸触媒の活性は低下することが分かった。この場合に、溶液の温度を40℃〜100℃に加温して行うと、最終的に製造した固体酸触媒の活性はさらに向上することが明らかになった。すなわち、従来は、過剰のアルカリを加え、溶液中に溶解している第IV族金属を水酸化物や水和酸化物として、より完全に回収しようとすることが試みられていた。これが、触媒の活性に悪影響を与えていたことが判明した。 【0009】 本発明は、上記のようにして得られる第IV族金属の水酸化物もしくは水和酸化物を、硫酸根を含有するか、もしくは焼成により硫酸根を発生する処理剤で処理するものであるが、このときの硫酸根を含有する処理剤としては、例えば、硫酸、硫酸アンモニウム、アミンの硫酸塩等を水或いは有機溶媒に溶解したもの等を用いることができる。また、焼成により硫酸根を発生する処理剤としては、例えば硫化水素や亜硫酸ガス等、あるいはこれらを水或いは有機溶媒に溶解したもの等を用いることができる。これらの処理剤は、硫酸根として0.01〜5モル濃度、あるいはこれに相当する量の硫酸根を発生するような濃度、含有したものを用いることが好ましい。 【0010】 この処理剤による処理は、どのような方法で行ってもよく、例えば上記で得られる第IV族の金属水酸化物もしくは水和酸化物そのままに、あるいはこれらを一旦乾燥させて、0.1〜50重量倍の処理剤を散布、または流下等をすることにより処理する方法、あるいは1〜50重量倍の処理剤を含む液に水酸化物もしくは酸化物を、このままあるいは乾燥して、浸漬する方法等が採用できる。 【0011】 上記処理剤で処理した後、過剰の処理液が残存した場合には、吸引濾過或いは濾紙などに吸収させて除去することが望ましい。 【0012】 次にこれを乾燥し、さらに活性化処理を行う。活性化処理は空気又は窒素等のガス雰囲気中にて、350℃〜900℃の温度で、特に好ましくは、350〜650℃で、1〜10時間焼成することによって行うことが好ましい。 【0013】 本発明で得られる固体酸触媒は、濃硫酸の酸強度(H0)-11.93よりも高い酸強度を有し、異性化反応に優れた触媒性能を示す。本発明で得られる固体酸触媒を異性化反応に用いると、反応は不均一系で進行し、通常反応後は濾過等の手段により触媒と反応物質を容易に分離することができ、さらに廃酸処理の必要がなく、触媒を再利用することも可能である。尚、固体酸触媒の酸強度(H0)は、pKa値が既知の酸塩基変換指示薬、例えば、p-ニトロトルエン(pKa値;-11.4)、m-ニトロトルエン(pKa値;-12.0)、p-ニトロクロロベンゼン(pKa値;-12.7)、2,4-ジニトロトルエン(pKa値;-13.8)、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(pKa値;-14.5)、1,3,5-トリクロロベンゼン(pKa値;-16.1)等の乾燥シクロヘキサンあるいは塩化スルフリル溶液に、触媒を浸漬し、触媒表面上の指示薬の酸性色への変色を観察して、酸性色に変色するpKa値と同じか、それ以下の値である。 【0014】 【実施例】 触媒の調製例1 市販のオキシ塩化ジルコニウム100gを蒸留水2lに溶解し、この溶液を室温で撹拌しながら28%アンモニア水を、それぞれ、pHが4、5、6、7、8、9、10になるまで加えて、各々沈澱を生ぜしめ、撹拌をやめて2〜3時間静置した。生成した水和ジルコニアを濾別し、蒸留水250mlで2回洗浄した。得られた水和ジルコニアを濾別し、50℃で48時間乾燥した。この乾燥物2gを1規定硫酸30mlに1時間浸漬した。過剰の硫酸を濾過により除去した後、室温で48時間乾燥した。乾燥した硫酸処理物を空気気流中600℃で3時間焼成し、約1.8gの硫酸根含有ジルコニア触媒を得た。 【0015】 触媒の調製例2 市販のオキシ塩化ジルコニウム25gを蒸留水500mlに溶解し、この溶液を60〜70℃に加熱し、撹拌しながら28%アンモニア水を、それぞれ、pHが4、5、6、7、8、9、10になるまで加えて、各々沈澱を生成させた。その後60〜70℃に保持したまま撹拌をやめて、2〜3時間静置した。生成した水和ジルコニアを濾別し、60〜70℃の蒸留水250mlで2回洗浄した。得られた水和ジルコニアを濾別し、50℃で48時間乾燥した。この乾燥物2gを1規定硫酸30mlに1時間浸漬した。過剰の硫酸を濾過により除去した後、室温で48時間乾燥した。乾燥した硫酸処理物を空気気流中600℃で3時間焼成し、約1.8gの硫酸根含有ジルコニア触媒を得た。 【0016】 また、上記のpH8で沈殿させた水和ジルコニアを用いて調製して得た触媒を、1,3,5-トリクロロベンゼンを0.03%濃度で乾燥シクロヘキサンに溶解した溶液に加えた結果、触媒表面に着色が認められ、酸強度(H0)は-16.12以下と極めて高いことが確認された。 【0017】 活性試験 触媒の調製例1、2により製造した触媒について、ペンタンの骨格異性化の転化率、選択率を測定することにより触媒活性の比較を行った。異性化反応は閉鎖循環系の反応装置を用い、触媒量0.8g、ペンタン30〜50torr、反応温度0℃で行った。反応開始3時間後のペンタンの転化率、異性化反応の選択率を、生成物をガスクロマトグラフィーで分析することにより求めた。生成物は、イソペンタン、イソブタン、メタンであり、転化率は、炭化水素の全モル数を100%として、イソペンタン、イソブタン、メタンの合計モル数の分率で求めた。異性化反応の選択率は、イソペンタン、イソブタンの合計モル数の分率で求めた。 【0018】 これらの結果を図1に示した。図の横軸は、水和ジルコニアを沈殿させたときのpH、縦軸は転化率(%)および選択率(%)である。図中の-●-は、触媒の調製例1で得た触媒の転化率、-□-は、同じく選択率、-◆-は、触媒の調製例2で得た触媒の転化率、-△-は、同じく選択率である。 【0019】 この結果から明らかなように、水和ジルコニアをpH6.5〜8.5の範囲で調製することにより、触媒活性を極めて高くでき、水和ジルコニアの調製時にpHを前記範囲の一点にコントロールすることにより、活性の安定した触媒を調製できることが分かる。また、温度を室温より高くすることによって、さらに高い活性を有する触媒を得られることも分かる。 【0020】 【発明の効果】 本発明は、高活性な酸強度の高い固体酸触媒を、安定的に製造することができるという格別の効果を奏する。またこれらの固体酸触媒は、高い酸強度を有するため、異性化反応に高い触媒機能を示し、さらに、腐食性が少なく、反応物質との分離が容易で廃酸処理が不要、また触媒の再利用も可能といった多くの利点を有する。 【図面の簡単な説明】 【図1】 水和ジルコニウム調製時のpHとペンタンの骨格異性化の転化率、選択率との関係を示す図。 【符号の説明】 ●:触媒の調製例1で得た触媒の転化率。 □:触媒の調製例1で得た触媒の選択率。 ◆:触媒の調製例2で得た触媒の転化率。 △:触媒の調製例2で得た触媒の選択率。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-11-04 |
出願番号 | 特願平6-211726 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
ZA
(B01J)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 関 美祝 |
特許庁審判長 |
板橋 一隆 |
特許庁審判官 |
野田 直人 鈴木 毅 |
登録日 | 2002-07-12 |
登録番号 | 特許第3328438号(P3328438) |
権利者 | 株式会社ジャパンエナジー |
発明の名称 | 固体酸触媒の製造方法 |
代理人 | 酒井 正己 |
代理人 | 加々美 紀雄 |
代理人 | 須賀 総夫 |
代理人 | 小松 純 |
代理人 | 小松 純 |
代理人 | 酒井 正己 |
代理人 | 加々美 紀雄 |