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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  B29C
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  B29C
審判 全部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  B29C
管理番号 1132616
異議申立番号 異議2002-72306  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-09-25 
確定日 2006-02-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第3267888号「光造形簡易型及びその製造方法」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3267888号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3267888号は、平成6年1月26日に出願した特願平6-23492号の一部を平成9年2月6日に新たな特許出願としたもので、平成14年1月11日にその特許権の設定登録がされたものであって、これに対してジェイエスアール株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成16年4月23日付け取消理由通知書(以下、「本件取消理由通知書」という。)を発送したところ、同年7月20日付け特許異議意見書(以下、「本件異議意見書」という。)と共に、同日付け訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)が提出され、これに対し平成17年2月9日付け訂正拒絶理由通知書(以下、「本件訂正拒絶理由通知書」という。)を発送したところ、同年4月18日付け意見書(以下、「本件訂正意見書」という。)と共に、同日付け手続補正書(以下、「本件訂正補正書」という。)が提出されたものである。

2.本件訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の適否

2-1.本件訂正補正書による補正(以下、「本件訂正補正」という。)の適否

2-1-1.本件訂正補正の内容
本件訂正補正は、本件訂正請求書に関するものであって、以下の補正事項aからなるものである。

補正事項a;本件訂正請求書の3頁8〜14行に記載された、
『I.特許請求の範囲を次のとおりに訂正する。
「【請求項1】ロックウエル表面硬度がM-30以上および曲げ弾性率が400kg/mm2以上であり、かつ、熱伝導率が0.3kcal/m・Hr・℃以上である、無機材料強化粒子および/またはウイスカーを配合した光硬化樹脂材料から構成されていることを特徴とする光学的積層造形簡易型。
【請求項2】ウイスカーを配合せず、平均粒径が3〜70μmの無機強化粒子を配合率5〜70容量%で配合した請求項1に記載の光学的積層造形簡易型。』を、
『I.特許請求の範囲を次のとおりに訂正する。
「【請求項1】ロックウエル表面硬度がM-30以上および曲げ弾性率が400kg/mm2以上であり、かつ、熱伝導率が0.3kcal/m・Hr・℃以上である、無機材料強化粒子および/またはウイスカーを配合した光硬化樹脂材料から構成されていることを特徴とする光学的積層造形簡易型。
【請求項2】ウイスカーを配合せず、平均粒径が3〜70μmの無機材料強化粒子を配合率5〜70容量%で配合した請求項1に記載の光学的積層造形簡易型。』と補正する。

2-1-2.本件訂正補正の適否判断
補正前の本件訂正請求書の3頁13〜14行に記載された「無機強化粒子」は、「無機材料強化粒子」と記載すべきものを誤記したものであることは、同本件訂正請求書の記載から明らかで、補正事項aはこの誤記を正すものであるから、本件訂正補正は、認められるものである。

2-2.本件訂正拒絶理由通知書の内容
本件訂正拒絶理由通知書において示した、本件訂正請求書に係る請求は拒絶すべきであるとする理由は、概要、以下のとおりである。

「本件訂正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書(決定注;ここにおける「平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書」は、本件訂正拒絶理由通知書において「特許法第120条の4第2項ただし書」と記載されていたが、本件訂正拒絶理由通知書の記載の趣旨からして、この記載が「平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書」の誤記であったことは明らかである。)に規定するいずれの目的にも適合していない。」

2-3.当審の判断

2-3-1.本件訂正の内容
本件訂正補正は、先に「2-1」で述べたように認められ、本件訂正補正によって補正された本件訂正請求書の記載から見て、本件訂正は、少なくとも、以下の訂正事項a〜gを有するものと認める。

訂正事項a;【特許請求の範囲】の記載を、
「【請求項1】ロックウエル表面硬度がM-30以上および曲げ弾性率が400kg/mm2以上であり、かつ、熱伝導率が0.3kcal/m・Hr・℃以上である、無機材料強化粒子および/またはウイスカーを配合した光硬化樹脂材料から構成されていることを特徴とする光学的積層造形簡易型。
【請求項2】ウイスカーを配合せず、平均粒径が3〜70μmの無機材料強化粒子を配合率5〜70容量%で配合した請求項1に記載の光学的積層造形簡易型。
【請求項3】 無機材料強化粒子の平均粒径が3〜70μmであり、その配合率が5〜65容量%であり、ウィスカーが、径0.3〜1μm、長さ10〜70μm、アスペクト比10〜100であり、その配合率が5〜30容量%であり、無機材料強化粒子及びウィスカーの合計配合率が10〜70容量%である請求項1に記載の光学的積層造形簡易型。
【請求項4】 無機材料強化粒子および/またはウィスカーが、アミノシラン、エポキシシランおよびアクリルシランから選ばれる少なくとも1種のシランカップリング剤で表面処理されたものである請求項1または3に記載の光学的積層造形簡易型。
【請求項5】 型の形状データを構築し、無機材料強化粒子および/またはウィスカーを配合してなる未硬化の光硬化性樹脂を階層的に順次配置し、前記形状データを用いて選択された部位にある光硬化性樹脂層を順次露光して、ロックウエル表面硬度がM-30以上および曲げ弾性率が400kg/mm2以上であり、かつ、熱伝導率が0.3kcal/m・Hr・℃以上である、無機材料強化粒子および/またはウイスカーを配合した光硬化樹脂材料から構成されている光学的積層造形簡易型を製造する方法。」と訂正する。

訂正事項b;段落【0007】の記載につき、
「【発明が解決しようとする課題】上記従来技術の型作成工程では、光硬化樹脂はあまり硬く(強く)ないため、マスターモデルを光造形し、型そのものはモデルを転写するプロセス(上述の樹脂モールディングの他、石膏鋳込み、溶射デポジット等)を経て作られるのが一般的であった。また、所要の熱伝導性特性を備えさせることも困難であり、特に、射出成形型等にように型内から外に熱を逃がすことを必要とする型においては、型内部に冷却水を循環可能にする冷却通路の形成が不可欠となり、光造形による型の製作を一層困難なものとしていた。」とあるのを、
「【発明が解決しようとする課題】上記従来技術の型作成工程では、光硬化樹脂はあまり硬く(強く)ないため、マスターモデルを光造形し、型そのものはモデルを転写するプロセス(上述の樹脂モールディングの他、石膏鋳込み、溶射デポジット等)を経て作られるのが一般的であった。」と訂正する。

訂正事項c;
段落【0010】の記載につき、
「また、光造形により射出成形型そのものを光硬化性樹脂組成物によって直接作成する試みでは、型内部に冷却水を循環可能にする冷却通路の形成が不可欠とされ、低工程・低コストで、短納期かつ精度の高い型の製作を一層困難なものとしていた。
したがって、本発明は、低工程・低コストで作成でき、短納期かつ精度の高い簡易型、及び、その製造方法を提供することを目的とする。」とあるのを、
「本発明は、低工程・低コストで作成でき、短納期かつ精度の高い簡易型、及び、その製造方法を提供することを目的とする。」と訂正する。

訂正事項d;
段落【0016】から【0017】の記載につき、
「【0016】
本発明の簡易型中に分散配合する上記強化粒子は、無機材料粒子であり、その粒子の平均粒径が3〜70μmであり、その粒子の配合率が5〜70容量%としてよい。
【0017】
本発明の簡易型中に分散配合する上記強化粒子は、有機高分子材料粒子であり、その粒子の平均粒径が3〜70μmであり、その粒子の配合率が5〜70容量%としてよい。また、上記無機材料粒子及び有機高分子材料の両者が分散配合されていてもよい。」とあるのを、
「【0016】本発明の簡易型中に分散配合する強化粒子は、無機材料粒子である。
【0017】その粒子の平均粒径が3〜70μmであり、その粒子の配合率が5〜70容量%としてよい。」と訂正する。

訂正事項e;
段落【0022】から【0023】の記載につき、
「【0022】
本発明の光造形簡易型における強化粒子のその他の性質について説明する。透光性はあった方が良い。しかし必須の条件ではない。硬化用エネルギ線は、粒子の裏側へも反射等により、回り込むからである。粒子の形状は、滑らかな球状に近い方が良い。配合物の流動性が良くなるからである。
【0023】
強化粒子用の有機高分子材料の例としては以下を挙げることができる:架橋ポリスチレン系高分子、架橋型ポリメタアクリレート系高分子、ポリエチレン系高分子、ポリプロピレン等高分子。」とあるのを、
「【0022】本発明の光造形簡易型における強化粒子のその他の性質について説明する。透光性はあった方が良い。しかし必須の条件ではない。硬化用エネルギ線は、粒子の裏側へも反射等により、回り込むからである。
【0023】粒子の形状は、滑らかな球状に近い方が良い。配合物の流動性が良くなるからである。」と訂正する。

訂正事項f;
段落【0015】の記載につき、
「・・・、特に射出成形型等にような型内部から・・・」とあるのを、
「・・・、特に射出成形型等のような型内部から・・・」と訂正する。

訂正事項g;
段落【0063】の記載につき、
「・・・、特に射出成形型等にような型内部から外に熱を逃がしてやる必要のある型においても、型内部における冷却通路の形成を行うことなく型の作成が可能となり、また、射出成形時等における型内への冷却水流入操作も省略可能とすることができる。」とあるのを、
「・・・、特に射出成形型等のような型内部から外に熱を逃がしてやる必要のある型においても、型内部における冷却通路の形成を行うことなく型の作成が可能となり、射出成形時等における型内への冷却水流入操作を省略可能とすることができる。」と訂正する。

2-3-2.本件訂正の適否

(1)訂正事項b及びcについて

1)本訂正は、訂正前の明細書又は図面(以下、「訂正前明細書」という。)の段落【0007】から「また、所要の熱伝導性特性を備えさせることも困難であり、特に、射出成形型等にように型内から外に熱を逃がすことを必要とする型においては、型内部に冷却水を循環可能にする冷却通路の形成が不可欠となり、光造形による型の製作を一層困難なものとしていた。」の記載を、また、段落【0010】から「また、光造形により射出成形型そのものを光硬化性樹脂組成物によって直接作成する試みでは、型内部に冷却水を循環可能にする冷却通路の形成が不可欠とされ、低工程・低コストで、短納期かつ精度の高い型の製作を一層困難なものとしていた。したがって、」の記載を削除するものである。
しかしながら、これらを削除することが、明りょうでない記載の釈明、特許請求の範囲の減縮又は誤記の訂正の、いずれかを目的としているとする理由は見当たらない。

2)権利者は、段落【0007】から記載を削除する本訂正につき、本件訂正意見書及び本件訂正請求書において、削除される上記記載は、訂正前明細書において、その前後の記載との関係が明りょうでないからこれを削除するもので、本訂正は、明りょうでない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とするものである旨の主張をする。
訂正前明細書には、以下の記載が認められる。

「【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術の型作成工程では、光硬化樹脂はあまり硬く(強く)ないため、マスターモデルを光造形し、型そのものはモデルを転写するプロセス(上述の樹脂モールディングの他、石膏鋳込み、溶射デポジット等)を経て作られるのが一般的であった。また、所要の熱伝導性特性を備えさせることも困難であり、特に、射出成形型等にように型内から外に熱を逃がすことを必要とする型においては、型内部に冷却水を循環可能にする冷却通路の形成が不可欠となり、光造形による型の製作を一層困難なものとしていた。
【0008】
上述のように、従来の簡易型は転写プロセスを経て作られていたため、次のような問題があった。
1(決定注;下線数字は、丸数字を意味する。以下、同様。)マスターモデルが必要でその作成に手間がかかっていた。
2マスターモデルから転写して型を作る際に、転写に伴い寸法・形状精度が悪くなっていた。
【0009】
3マスターモデルの転写に手間がかかっていた。
4マスターモデルの転写には、熟練者の特別な技能を要していた。特別な技能とは、例えばパ-ティング面の決定や、見切り治具の作成、樹脂の温度管理、混合・脱泡などである。
5マスターモデル作成と転写作業のため型製作工程が長くなっていた。
【0010】
また、光造形により射出成形型そのものを光硬化性樹脂組成物によって直接作成する試みでは、型内部に冷却水を循環可能にする冷却通路の形成が不可欠とされ、低工程・低コストで、短納期かつ精度の高い型の製作を一層困難なものとしていた。
したがって、本発明は、低工程・低コストで作成でき、短納期かつ精度の高い簡易型、及び、その製造方法を提供することを目的とする。」(決定注;この段落【0007】の記載において、「上記従来技術の型作成工程では、」から「一般的であった。」までを「【0007】前段」といい、「また、所要の熱伝導性特性を」から「一層困難なものとしていた。」までを「【0007】後段」といい、また、段落【0010】の記載において、「また、光造形により」から「したがって、」までを「【0010】前段」といい、「本発明は、」から「を目的とする。」までを「【0010】後段」という。)

そこで検討すると、この記載は、【発明が解決しようとする課題】との表題の下、【0007】前段において、従来技術の型作成においては、マスターモデルを光造形し、該モデルを転写するプロセスを経て型を作成する手法が概説され、【0007】後段において、型内部に冷却通路の形成が不可欠の型の場合には、上述した手法により型を作成するには困難が伴うこと、そして、【0010】前段においては、光造形により型内部に冷却通路の形成が不可欠の型を直接作成することにも困難が伴うことが記載され、これらのことが従来技術の型作成についての一連の説明として記載されていることが、概ね、理解でき、【0007】後段の記載、即ち、本訂正によって削除される記載が、その前後の記載との関係で不明りょうであるとする理由は見当たらないから、権利者の主張に理由はない。なお、権利者は、その主張において、不明りょうであるとする根拠を具体的には挙げていない。
また、仮に、【0007】後段の記載に不明りょうな部分があったとしても、その部分を言い換えるなどして、明りょうにすることが、明りょうでない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とする訂正というべきもので、ただ闇雲に、【0007】後段の記載全てを削除することが明りょうでない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とする訂正ということはできないものである。いずれにしても、本訂正が、明りょうでない記載の釈明、特許請求の範囲の減縮又は誤記の訂正の、いずれかを目的としているとする理由は見当たらない。

3)また、権利者は、段落【0007】及び段落【0010】から記載を削除する本訂正につき、本件訂正意見書及び本件訂正請求書において、要するに、削除される上記記載の内容は事実にそぐわないから、該記載を削除するもので、本訂正は、明りょうでない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とするものである旨の主張をする。
しかしながら、段落【0007】後段、及び、段落【0010】前段、即ち、本訂正によって削除される記載は、先に「2)」で述べたことから明らかなように、型内部に冷却通路の形成が不可欠の型の場合、マスターモデルを光造形することから型を作成するには困難が伴うこと、及び、光造形により型を直接作成することにも困難が伴うことを、それぞれ、記載するものと理解でき、ここに記載の内容が、事実に照らして、全く相容れないものであるとする理由は、証拠上、見当たらないから、権利者の主張に理由はない。

(2)訂正事項d及びeについて

1)本訂正は、実質的には、訂正前明細書から「本発明の簡易型中に分散配合する上記強化粒子は、有機高分子材料粒子であり、その粒子の平均粒径が3〜70μmであり、その粒子の配合率が5〜70容量%としてよい。また、上記無機材料粒子及び有機高分子材料の両者が分散配合されていてもよい。」(訂正前明細書の段落【0017】、参照)及び「強化粒子用の有機高分子材料の例としては以下を挙げることができる:架橋ポリスチレン系高分子、架橋型ポリメタアクリレート系高分子、ポリエチレン系高分子、ポリプロピレン等高分子。」(訂正前明細書の段落【0023】、参照)の記載を削除するもの、すなわち、訂正前明細書の段落【0017】及び【0023】に記載されていた事項全てを削除するものである。
しかしながら、これらを削除することが、明りょうでない記載の釈明、特許請求の範囲の減縮又は誤記の訂正の、いずれかを目的としているとする理由は見当たらない。

2)この点に関し、権利者は、本件訂正意見書及び本件訂正請求書において、要するに、本件訂正において特許請求の範囲を訂正したことに伴って、発明の詳細な説明の記載を、訂正後明細書の特許請求の範囲に記載の発明と整合させるためのものであるから、本訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とする旨の主張をする。しかしながら、該主張に理由はない。以下に、詳述する。

2-1)訂正後の明細書又は図面(以下、「訂正後明細書」という。)の特許請求の範囲請求項1の記載は、以下のとおりである(「2-3-1」の訂正事項a、参照。)

「【請求項1】ロックウエル表面硬度がM-30以上および曲げ弾性率が400kg/mm2以上であり、かつ、熱伝導率が0.3kcal/m・Hr・℃以上である、無機材料強化粒子および/またはウイスカーを配合した光硬化樹脂材料から構成されていることを特徴とする光学的積層造形簡易型。」

そして、同項に係る発明は、上記記載の事項により特定されるものであって、光学的積層造形簡易型を構成する光硬化樹脂材料に有機高分子材料粒子からなる強化粒子を配合することを排除しないものとして特定されるものである。
なお、権利者は、これに対し、本件訂正意見書において、要するに、上記発明は、「熱伝導率が0.3kcal/m・Hr・℃以上である、」と記載された事項を発明を特定する事項としていることを根拠に、有機高分子材料粒子からなる強化粒子を配合することを排除する旨を主張するが、上記発明は、上記したように、請求項1に記載の事項により特定されるものであって、上記主張は、同項の記載に基づかない主張で、採用できない。

2-2)一方、訂正前明細書の段落【0017】は、「本発明の簡易型中に分散配合する上記強化粒子は、有機高分子材料粒子であり、その粒子の平均粒径が3〜70μmであり、その粒子の配合率が5〜70容量%としてよい。また、上記無機材料粒子及び有機高分子材料の両者が分散配合されていてもよい。」と記載され、段落【0017】の上記記載の「また、」以降には、少なくとも、光学的積層造形簡易型を構成する光硬化樹脂材料に無機材料強化粒子と共に有機高分子材料粒子からなる強化粒子を配合することを説明し、更に、段落【0023】は「強化粒子用の有機高分子材料の例としては以下を挙げることができる:架橋ポリスチレン系高分子、架橋型ポリメタアクリレート系高分子、ポリエチレン系高分子、ポリプロピレン等高分子。」と記載され、ここにおいて、無機材料強化粒子と共に配合される上記有機高分子材料粒子からなる強化粒子に関し、その有機高分子材料の例を説明していることがうかがえる。

2-3)そこで、検討するに、先に「2-1)」で述べたことから、訂正事項aは、請求項1に係る発明を、光学的積層造形簡易型を構成する光硬化樹脂材料に有機高分子材料粒子からなる強化粒子を配合することを排除しない発明とする訂正である。一方、先に「2-2)」で述べたことから、訂正前明細書の段落【0017】及び【0023】に記載されていた事項は、光学的積層造形簡易型を構成する光硬化樹脂材料に有機高分子材料粒子からなる強化粒子を配合することを説明しているものであって、上記請求項1に係る発明と整合がとられているものである。
したがって、訂正前明細書の段落【0017】及び【0023】に記載されていた事項全てを削除する本訂正は、本件訂正において特許請求の範囲を訂正したことに伴って、発明の詳細な説明の記載を、訂正後明細書の特許請求の範囲に記載の発明と整合させるためのものであるということはできない。

2-4)よって、権利者の主張に理由はない。

(3)まとめ
本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書に規定するいずれの目的にも適合していないから、拒絶すべきものである。

3.本件取消理由通知書の内容
本件取消理由通知書において示した取消理由は、以下のとおりである。

「本件請求項1〜6に係る特許は、特許法第17条第2項(決定注;ここにおける「特許法第17条第2項」は、本件取消理由通知書において「特許法第17条の2第3項」と記載されていたが、本件取消理由通知書の記載の趣旨からして、「特許法第17条の2第2項の規定により準用する同法第17条第2項」の誤記であったことは明らかである。)に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対して、また、同法第36条第5項に規定する要件を満たしていない明細書又は図面の記載が不備な特許出願に対して、特許とされたものである。

A.(決定注;ここにおける「A.」は、本件取消理由通知書において「1.」であったが、本決定の項番「1.」と区別するために変更している。以下、同様。)第17条の2第3項違反について
平成13年11月9日付け手続補正を、以下、本件補正という。

A-1.【特許請求の範囲】についての本件補正
補正後の【請求項1】乃至【請求項6】に記載された事項は、以下の理由から、「本件出願の願書に最初に添附した明細書又は図面」(以下、「当初明細書」という。)に記載があったとはいえず、本件補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

(一)補正後の【請求項1】に係る発明である光学的積層造形簡易型は、「強化粒子およびウイスカーを配合した光硬化樹脂材料から構成されている」を含むように特定されているが、このように特定されている光学的積層造形簡易型は当初明細書に記載がない。
特に、当初明細書の段落【0026】には、上記光学的積層造形簡易型において無機材料強化粒子及びウイスカーを配合したものが記載されているだけである。

(二)補正後の【請求項2】は【請求項1】を引用して記載されており、そして、先に「(一)」で述べたように補正後の【請求項1】に係る発明が当初明細書に記載がない以上、前記【請求項2】に係る発明は当初明細書に記載がない。
更に、補正後の【請求項2】に係る発明である光学的積層造形簡易型は、「強化粒子が有機高分子材料粒子である請求項1に記載の」を含むように特定されているが、このように特定されている光学的積層造形簡易型は当初明細書に記載がない。特に、当初明細書において、【請求項5】は、強化粒子が有機高分子材料粒子であることを特定事項として記載するものであるが、ここにおいては熱伝導率0.3kcal/m・Hr・℃以上であることを特定事項として記載する【請求項3】を引用して記載していないことからも、上述したように、上記光学的積層造形簡易型が当初明細書に記載のないことは明らかである。

(三)補正後の【請求項3】は【請求項1】又は【請求項2】を引用して記載されており、そして、先に「(一)」又は「(二)」で述べたように補正後の【請求項1】又は【請求項2】に係る発明が当初明細書に記載がない以上、前記【請求項3】に係る発明は当初明細書に記載がない。
更に、補正後の【請求項3】に係る発明である光学的積層造形簡易型は、「強化粒子の平均粒径が3〜70μmおよび配合率が5〜70容量%である請求項1または2に記載の」と特定されているが、このように特定されている光学的積層造形簡易型は当初明細書に記載がない。特に、上記【請求項3】は、「強化粒子およびウイスカーを配合した光硬化樹脂材料から構成されている」を特定事項としている【請求項1】を引用して記載しているが、強化粒子及びウイスカーを配合した光硬化樹脂材料から構成されている光学的積層造形簡易型において、強化粒子の配合率が5〜70容量%であるものは当初明細書に記載されていない。

(四)補正後の【請求項4】は【請求項1】を引用して記載されており、そして、先に「(一)」で述べたように補正後の【請求項1】に係る発明が当初明細書に記載がない以上、前記【請求項4】に係る発明は当初明細書に記載がない。

(五)補正後の【請求項5】は【請求項1】乃至【請求項4】を引用して記載されており、そして、先に「(一)」乃至「(四)」で述べたように補正後の【請求項1】乃至【請求項4】に係る発明が当初明細書に記載がない以上、前記【請求項5】に係る発明は当初明細書に記載がない。

(六)補正後の【請求項6】に係る発明である光学的積層造形簡易型を製造する方法は、先に「(一)」で述べた理由と同様の理由で、当初明細書に記載がない。

A-2.段落【0012】及び【0013】についての本件補正
本件補正は、先に「1-1」で述べたのと同様の理由で、当初明細書に記載がない。

A-3.段落【0007】、【0010】、【0015】及び【0063】についての本件補正
段落【0007】における「所要の熱伝導性特性を備えさせることも困難であり、特に、射出成形型等にように型内から外に熱を逃がすことを必要とする型においては、型内部に冷却水を循環可能にする冷却通路の形成が不可欠となり、光造形による型の製作を一層困難なものとしていた。」に、
段落【0010】における「光造形により射出成形型そのものを光硬化性樹脂組成物によって直接作成する試みでは、型内部に冷却水を循環可能にする冷却通路の形成が不可欠とされ、低工程・低コストで、短納期かつ精度の高い型の製作を一層困難なものとしていた。」に、
段落【0015】における「特に射出成形型等にような型内部から外に熱を逃がしてやる必要のある型においても、型内部における冷却通路の形成を行うことなく型の作成が可能となる。」に、
そして、段落【0063】における「本発明の光造形簡易型は、この簡易型を構成する材料を、熱伝導率0.3kcal/m・Hr・℃以上のものとしていることによって、特に射出成形型等にような型内部から外に熱を逃がしてやる必要のある型においても、型内部における冷却通路の形成を行うことなく型の作成が可能となり、また、射出成形時等における型内への冷却水流入操作も省略可能とすることができる。」に記載の事項は、当初明細書に記載がない。

B.第36条第5項違反について
【請求項5】には「・・・である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学的積層造形簡易型。」と記載があるが、請求項5を引用しており、不明確な記載である。」

4.当審の判断
本件取消理由通知書において示した取消理由の概要は、先に「3」で述べたとおりで、該取消理由は妥当である。
権利者は、本件異議意見書において、要するに、段落【0015】及び【0063】についての平成13年11月9日付け手続補正(以下、「本補正」という。)が特許法第17条第2項に規定する要件を満たしていないものであるという取消理由を除き、本件取消理由通知書において示した取消理由は、本件訂正が認められることにより、解消する旨の主張をするが、本件訂正は、先に「2」で述べたように、拒絶すべきものであるから、前記主張に理由はない。
そして、本補正が特許法第17条第2項に規定する要件を満たしている旨の主張において、権利者は、要するに、本件特許に係る特許出願の願書に最初に添附した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)における段落【0015】、【0045】、【0046】及び【0061】の記載をその主張の根拠にしているが、根拠とはならず、前記主張に理由はない。以下に詳述する。

1)本補正は、以下の補正事項A及びBからなるものである。
補正事項A;段落【0015】の記載を、
「また、本発明の光造形簡易型は、上記簡易型を構成する材料が、熱伝導率0.3kcal/m・Hr・℃以上であることが必要である。これによって、特に射出成形型等にような型内部から外に熱を逃がしてやる必要のある型においても、型内部における冷却通路の形成を行うことなく型の作成が可能となる。さらに成形速度を速くするためには、熱伝導率は0.4kcal/m・Hr・℃以上であることが好ましい。」と補正する。

補正事項B;段落【0063】の記載を、
「【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の光造形簡易型及びその製造方法は以下の効果を発揮する。
1マスターモデル作成の手間や、それを転写して型を作る手間がかからないので、低工数・低コストの型が得られる。また、納期も短い。
2転写工程無く製造可能なので、型の寸法・形状精度が良い。
3型としての耐久性、生産性も、簡易型レベルとして満足できる。
4本発明の光造形簡易型は、この簡易型を構成する材料を、熱伝導率0.3kcal/m・Hr・℃以上のものとしていることによって、特に射出成形型等にような型内部から外に熱を逃がしてやる必要のある型においても、型内部における冷却通路の形成を行うことなく型の作成が可能となり、また、射出成形時等における型内への冷却水流入操作も省略可能とすることができる。」と補正する。

2)補正事項Aは、「特に射出成形型等にような型内部から外に熱を逃がしてやる必要のある型においても、型内部における冷却通路の形成を行うことなく型の作成が可能となる。」の記載を明細書の記載として、また、補正事項Bは、「本発明の光造形簡易型は、この簡易型を構成する材料を、熱伝導率0.3kcal/m・Hr・℃以上のものとしていることによって、特に射出成形型等にような型内部から外に熱を逃がしてやる必要のある型においても、型内部における冷却通路の形成を行うことなく型の作成が可能となり、また、射出成形時等における型内への冷却水流入操作も省略可能とすることができる。」の記載を明細書の記載とする補正である。
そして、本補正は、当初明細書の発明の詳細な説明で説明しようとする簡易型に係る発明に関し、型内部から外に熱を逃がしてやる必要のある型においても型内部に冷却通路の形成を行うことなく型の作成が可能となる旨、更に、補正事項Bについては、加えて、型内への冷却水流入操作も省略可能とすることができる旨の作用効果或いは技術的意義に関する記載を明細書に記載するものである。

3)当初明細書における段落【0015】、【0045】、【0046】及び【0061】の記載は、以下のとおりである。

「【0015】
本発明の光造形簡易型は、上記簡易型を構成する材料が、熱伝導率0.3kcal/m・Hr・℃以上であることが望ましい。特に射出成形型等のように、型内から外へ熱を逃がしてやる必要のある型においては、このような熱伝導率特性を簡易型に付与することが望ましい。さらに、成形速度を速くするためには、熱伝導率は0.4Kcal/m・Hr・℃以上であることが好ましい。
【0045】
【実施例】
実施例1(強化粒子・ウイスカー入り)
以下、本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の一実施例に係る射出成形用の光造形簡易型の構造を示す図である。(A)はコア型の平面図、(B)はコア・キャビティ型の断面図である。
【0046】
この簡易型は、プラスチック射出成形用の型である。コア型1の下面中央部には、コア部11が設けられている。また、キャビティ型3の上面中央部には、キャビティ部31が設けられている。コア部11とキャビティ部31には、図の右側から、ゲート13、33が入っていおり、このゲート13、33からプラスチックが射出される。コア型1、キャビティ型3の四角には位置決め用のピン穴15、35が開けられている。この穴15、35には、位置決めピン(鋼製、図示されず)が通される。」
【0061】
(8) 射出成形:
光造形簡易型を用いてABS樹脂製品を50個射出成形した。成形条件は、温度170℃、圧力95Kgf/cm2 とした。この時点で型の損傷・変形は見られず、100個程度の成形は可能と判断された。また、成形品のバリも無かった。寸法精度も、図寸30mmに対して±0.1mm程度であった。全体として、簡易型としては満足のいくものであった。なお、上記各工程は、1週間以内に十分に行えるものであった。」

これらの記載をみると、簡易型に係る発明に関し、これと型内部における冷却通路の形成との関係について触れた作用効果或いは技術的意義といった記載は見当たらない。
そして、本補正は、先に「2)」で述べたとおり、簡易型に係る発明に関し、その作用効果或いは技術的意義に関する記載を明細書に記載するものであって、本補正が、段落【0015】、【0045】、【0046】及び【0061】の記載を根拠にしたものということはできない。

5.最後に
本件訂正は、訂正事項f及びgからして、段落【0015】及び【0063】について、実質的にその記載の趣旨を変更するような訂正をしていないことは明らかである。
そして、本補正、即ち、段落【0015】及び【0063】についての平成13年11月9日付け手続補正が特許法第17条第2項に規定する要件を満たしていないとする取消理由については、先に「4」で述べたように、妥当であって、仮に、本件訂正が認められるとしても、依然として、該取消理由は、解消されていないものである。

6.まとめ
本件特許に係る特許出願は、その特許出願の願書に添付した明細書又は図面についてした補正が特許法第17条の2第2項の規定により準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていないし、また、同法第36条第5項に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおりに決定する。
 
異議決定日 2005-12-12 
出願番号 特願平9-36923
審決分類 P 1 651・ 55- ZB (B29C)
P 1 651・ 832- ZB (B29C)
P 1 651・ 534- ZB (B29C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 大島 祥吾  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 野村 康秀
石井 克彦
登録日 2002-01-11 
登録番号 特許第3267888号(P3267888)
権利者 ナブテスコ株式会社
発明の名称 光造形簡易型及びその製造方法  
代理人 辻 良子  
代理人 辻 邦夫  
代理人 衡田 直行  
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