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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1132618
異議申立番号 異議2003-71865  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-08-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-28 
確定日 2006-02-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第3370124号「ブロー成形装置及びブロー成形方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3370124号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 【1】 手続の経緯
本件特許第3370124号の請求項1ないし4に係る発明については、平成5年1月28日に特許出願され、平成14年11月15日にその発明についての特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、特許異議申立人 株式会社青木固研究所より特許異議の申立てがなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成17年8月1日に特許異議意見書が提出され、再度の取消の理由が通知され、その指定期間内である平成17年11月29日に特許異議意見書が提出されたものである。

【2】 本件発明
本件の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件発明1ないし4」という。)は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された次のとおりのものである。

(本件発明1)
「ブローキャビティ型内に配置されたプリフォーム内にブローコア型を介してブローエアを導入して中空体を成形するブロー成形装置において、
前記ブローコア型を昇降する駆動源と、
この駆動源を前記ブローキャビティ型の上方位置に固定する固定ブロックと、
前記ブローコア型が取り付けられ、前記駆動源により駆動されて前記固定ブロックに昇降案内され、その下限位置に前記ブローコア型を前記プリフォームのネック部に挿入させる昇降ブロックと、
前記昇降ブロックを、その下限位置にて位置決めロックするロック装置と、
前記ロック装置のロック状態およびアンロック状態を検出する検出手段と、
前記検出手段でのロック状態の検出後に、前記ブローコア型からのブローエアの導入を開始制御する制御手段
と、
を有することを特徴とするブロー成形装置。」
(本件発明2)
「請求項1において、
前記昇降ブロックには被係合部が設けられ、前記ロック装置は、下限位置に到達した前記昇降ブロックの前記被係合部と対向する位置に固定配置され、かつ前記被係合部に向けて駆動されるロック部材を有することを特徴とするブロー成形装置。」
(本件発明3)
「ブローキャビティ型内に配置されたプリフォーム内にブローコア型を介してブローエアを導入して中空体を成形するブロー成形装置において、
前記ブローコア型を昇降する駆動源と、
この駆動源を前記ブローキャビティ型の上方位置に固定する固定ブロックと、
前記ブローコア型が取り付けられ、前記駆動源により駆動されて前記固定ブロックに昇降案内され、その下限位置に前記ブローコア型を前記プリフォームのネック部に挿入させる昇降ブロックと、
前記昇降ブロックを、その下限位置にて位置決めロックするロック装置と、
を有し、
前記ブローコア型は、前記プリフォームのネック部内壁に密着して挿入される所定長さの挿入先端部を有し、
前記ロック装置は、前記昇降ブロックに設けられた被係合部に向けて進退駆動されるロックピンを有し、
前記ロックピンと被係合部とは上下方向にて所定の遊び量をもって係合し、この遊び量は、ブローエアの導入中常に前記ブローコア型の前記挿入先端部の少なくとも一部が前記プリフォームのネック部内壁に密着している範囲内に設定されていることを特徴とするブロー成形装置。」
(本件発明4)
「ブローキャビティ型内に配置されたプリフォーム内にブローエアを導入して中空体を成形するブロー成形方法において、
ブロー動作を実施する機材を搭載した昇降ブロックを移動させて前記プリフォームの開口を密閉する工程と、
前記昇降ブロックを、その密閉位置にて位置決めロックする工程と、
前記昇降ブロックのロック状態を検出する工程と、
その検出後に、前記プリフォーム内にブローエアを導入をする工程と、
を有することを特徴とするブロー成形方法。」

【3】 特許異議申立てについて
1.当審による取消理由の概要
(1-1)理由
平成17年9月26日付け取消理由通知による取消の理由の概要は次のとおりのものである。

本件発明1ないし4は、その出願前日本国内において公然実施された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1ないし4についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
(1-2)証拠方法
上記取消理由通知書には、次の証拠方法が引用されている。
(証拠方法)
甲第5号証:(以下の甲第5号証の1ないし4)
甲第5号証の1:SBIII(正しくはローマン数字の大文字の3であるが、使用フォント制限のためアルファベットのIを並べて代用した。 以下同様。)―500―150に係る図面の複写物
甲第5号証の2:SB3-500Hに係る図面の複写物
甲第5号証の3:同上
甲第5号証の4:SB3-500LHに係る図面の複写物
甲第6号証:射出延伸ブロー成形機の商品カタログ 株式会社青木固研究所発行の複写物
甲第7号証:(以下の甲第7号証の1ないし2)
甲第7号証の1:製造命令書の複写物
甲第7号証の2:出荷指示書の複写物
甲第8号証:証明書及び写真 富士ポリ株式会社の複写物
甲第9号証:機種別出荷リスト抜粋の複写物

2.上記各甲号証に記載された事項
上記甲各号証の記載事項は以下のとおりである。
(1)甲第5号証
甲第5号証の1ないし4の図面には、それぞれ、型式の欄及び年月日の欄に、それぞれ順に、SBIII-500-150(SBIII-500H)及びJUN 4 89、SB3―500H及び89年4月17日、SB3―500H及び89年4月17日、SB3-500LH及び55年9月1日の記載がある。
(1-1)甲第5号証の1
甲第5号証の1には、図面とともに、図面符号24で示される部材、「STRETCH BLOCKGUIDE BASE70」、「STRETCH CYLINDER BASE71、LOCK CYLINDER78」及び「BUSHING80,81」が記載されている。
(1-2)甲第5号証の2
甲第5号証の2には、図面とともに、「LS24-1,LS24-2」、「LS25-1,LS25-2」が記載されているとともに、それらと関連して「BLOW CORE LOCK BW」及び「BLOW CORE LOCK FW」が記載されている。
(1-3)甲第5号証の3
甲第5号証の3には、図面とともに、四角で囲まれた「0」の記載に縦に続いて同じく四角に囲まれた1ないし19の記載があり、その0の記載の隣に LOCK UPの記載がある。
(1-4)甲第5号証の4
甲第5号証の4には、図面とともに、「BLOW CORE LOCK」及び「LOCK PIN」の記載があり、名称の欄に「AIR CIRCUIT」の記載がある。
(2)甲第6号証
甲第6号証には、3頁目にSBIII-500-150の写真が示されており、該写真に隣接して「・広口容器の専用器」の記載があり、最後のページに「Printed in Japan 1989-12-No.1T」の記載がある。
(3)甲第7号証
(3-1)甲第7号証の1
甲第7号証の1の製造命令書には、出荷予定日の欄、納入先の欄、機種の欄、機番の欄に、それぞれ「92年8月26日」、「富士ポリ株式会社」、「SBIII-500-150」、「9250037」の記載がある。
(3-2)甲第7号証の2
甲第7号証の2の出荷指示書には、書面の右上に、「平成4年8月22日」の記載が、注番の欄の1行目、USERの欄及び送先住所の欄にそれぞれ「SBIII―500―150 #37号機」、「富士ポリ株式会社」、「広島県大竹市元町3-13―4 富士ポリ株式会社」の記載がある。
(4)甲第8号証
甲第8号証の証明書には、「広島県大竹市元町3-13―4 富士ポリ株式会社 社長 平池勇秀」名で、添付写真は、富士ポリ株式会社が株式会社青木固研究所から購入し、1992年(平成4年)8月26日に納入され、現在も稼働中であるSBIII-500-150についてのものである旨、証明する等の記載があり、添付写真(1)には、成形機正面が、同(2)には機械銘板が、同(3)には、型の上方の比較的高い位置に台が位置している態様、同(4)には、型の上方の比較的低い位置に台が位置している態様が、同(5)にはピンとピン穴を含むものがそれぞれ示されている。
また、添付写真(2)の機械銘板中の表示内容として、「SERIAL NO.9250037」の記載、「DATE 1992 8 26」の記載、「AOKI TECHNICAL LABORATORY INC.」の記載がある。
(5)甲第9号証
(省略)
【4】対比・判断
(4-1)(SBIII―500―150発明)
甲第5号証の1ないし4、甲第6号証及び甲第8号証の記載事項、図面及び写真で示された内容をみると、延伸ブロー成形機SBIII-500―150は、ロック検知機構(LS24-1,LS24-2、LS25-1,LS25-2)を備え、ブローコアロックBWとブローコアロックFW状態を取り得るロック装置を備えてなるものであることは明らかであり、上記甲第5号証の1ないし4、甲第6号証及び甲第8号証には、それらの甲号証により特定される延伸ブロー成形機SBIII-500―150に関する次の発明(以下、「SBIII―500―150発明」という。)が記載されているものと認められる。

(SBIII―500―150発明)
「延伸ブロー成形機であって、ストレッチシリンダー24、ストレッチブロックガイドベース70、ストレッチシリンダーベース71、ロックシリンダー78及びブッシング80,81及びロック検知機構(LS24-1,LS24-2、LS25-1,LS25-2)を有しブローコアロックBWとブローコアロックFW状態を取り得るロック装置を備えた延伸ブロー成形機」
(4-2)SBIII―500―150発明が公然実施された発明であるか否かの検討
甲第6号証は、株式会社青木固研究所(本件異議申立人)等の発行した商品カタログであり、不特定の購入者に頒布されたものということができる。 また、甲第6号証は、その最後のページに「Printed in Japan 1989-12」の記載あることから、1989年12月に印刷されたものと推認され、商品カタログという性格から、その印刷からまもなく頒布されたものということができるから、上記本件特許の特許出願前には、頒布されていたものと認められる。
上記甲第6号証には、SBIII-500-150等のSBIIIシリーズの射出延伸ブロー成形機について、成型器の外観、延伸ブローステーションの図が示されている。
甲第7号証の1、甲第7号証の2、及び、甲第8号証によれば、成型機「機種SBIII-500-150」が、株式会社青木固研究所(本件異議申立人)から富士ポリ株式会社に出荷され、平成4年(1992年)8月26日に富士ポリ株式会社により購入されたものと認められる。
そうすると、成型機「機種SBIII-500-150」に係る発明は、本件特許の特許出願日前に、「譲渡」という形で「実施」されている発明ということができる。
そして、購入者は、成型機がどのような構成要素からなっているかは、当然に知りうる状態にあるといえるから、成型機「機種SBIII-500-150」に係る発明は、当業者がその発明の内容を容易に知りうる状態で、実施されたものということができる。
ところで、SBIII―500―150発明について、甲各号証の図面及び写真をみると、SBIII―500―150発明の装置構成の「ロック装置」における制御回路を除いたものは、全て外観から確認できるものであるといえる。
また、成型機「機種SBIII-500-150」は、運転のために計器板に制御信号を視認するための表示装置を備えるてなるものであり、制御回路も、購入者において保守、点検の際に直接確認することができるものといえる。
仮に、上記制御回路が封印されており、購入者において直接確認をすることができないものであっても、上記表示装置により制御信号の動作は確認できる。
そうであるから、上記制御回路の存在は少なくとも推認できるものといえる。
上記のことから、ロック装置の制御回路を含むSBIII―500―150発明は、本件出願前、日本国内において公然実施をされた発明であるといえる。
なお、特許権者は、上記平成17年11月29日付け特許異議意見書において、「審判長殿は、「購入者」や「オペレータ」が、不特定の者であることを認定していません。・・・(中略)・・・審判長の認定された「購入者」は甲第8号証における平池勇秀氏であり、「オペレータ」は富士ポリ株式会社の従業員であると思われますが、これらの者が秘密を保つべき義務の無い不特定の者であることが立証されていません。」(第4頁第11〜20行)と、主張している。
しかしながら、成型機「機種SBIII-500-150」が示された甲第6号証が商品カタログという性格であることからみて、成型機「機種SBIII-500-150」は、不特定の者に対しての販売を想定して製造されたものとみることが相当である。
そうすると、この成型機の「購入者(平池勇秀氏)」は、不特定の者でない、ということはできないから、特許権者の上記主張は採用できない。
(4-3)対比・判断
(4-3-1)本件発明1について
そこで、本件発明1と、SBIII-500―150発明とを対比すると、後者の「ストレッチシリンダー24」は、その機能及び構成からみて、前者の「ブローコア型を昇降する駆動源」に相当し、以下同様に、「ストレッチブロックガイドベース70」は「固定ブロック」に、「ストレッチシリンダーベース71」は「昇降ブロック」に、「ロック検知機構(LS24-1,24-2、LS25-1,25-2)」は「ロック装置のロック状態およびアンロック状態を検出する検出手段」に、それぞれ相当する。
そして、SBIII―500―150発明は、延伸ブロー成形機であるからブローキャビティ型内に配置されたプリフォーム内にブローコア型を介してブローエアを導入して中空体を成形するブロー成形装置であることは明らかである。
したがって、両者は、「ブローキャビティ型内に配置されたプリフォーム内にブローコア型を介してブローエアを導入して中空体を成形するブロー成形装置において、
前記ブローコア型を昇降する駆動源と、
この駆動源を前記ブローキャビティ型の上方位置に固定する固定ブロックと、
前記ブローコア型が取り付けられ、前記駆動源により駆動されて前記固定ブロックに昇降案内され、その下限位置に前記ブローコア型を前記プリフォームのネック部に挿入させる昇降ブロックと、
前記昇降ブロックを、その下限位置にて位置決めロックするロック装置と、
前記ロック装置のロック状態およびアンロック状態を検出する検出手段
と、
を有するブロー成形装置。」である点で一致しており、以下の点で相違している。

【相違点1】
検出手段でのロック状態の検出後における制御に関して、本件発明1では、ブローコア型からのブローエアの導入を開始制御する制御手段を有するものであるのに対して、SBIII―500―150発明では、かかる制御手段を有するか否かが明らかでない点。
そこで、この相違点1について検討する。
SBIII―500―150発明についてアンロック状態とロック状態の違いを検討すると、アンロック状態では、ブローコアが上方に移動することを許容し、ロック状態では反対にブローコアが上方に移動することは規制され、ロック状態では、何らかの力が作用してもブローコアが上方に移動しないことが理解される。
また、このロック状態が機能しなくてはならない時機は、型内の圧力が高まり上方への力が発生する運転時であるのは技術常識であるし、わざわざロック装置のロック状態およびアンロック状態を検出する検出手段が存在することからみると、ロック状態を確認後に、ブローコア型からのブローエアの導入を開始するのは、当然というべきである。
そして、当業者であれば、該開始の作動を上記ロック手段の検出信号とリンクさせるなどの制御手段を設けることは、格別、困難なこととはいえない。
したがって、本件発明1は、当業者が、本件出願前に日本国内で公然実施されたSBIII-500―150発明に基いて容易に発明することができたものといえる。
(4-3-2)本件発明2について
本件発明2と、SBIII―500―150発明とを対比すると、その機能及び構成からみて、後者の「ブッシング80,81」は、本件発明2の「被係合部」に相当する。
したがって、両者の相違点は、相違点1のみであり、相違点1については、上記(4-3-1)で検討したとおりであり、本件発明2は、当業者が、本件出願前に日本国内で公然実施されたSBIII-500―150発明に基いて容易に発明することができたものといえる。
(4-3-3)本件発明3について
本件発明3と、SBIII―500―150発明とを対比すると、以下の点で相違する。

【相違点2】
本件発明3では、「前記ブローコア型は、前記プリフォームのネック部内壁に密着して挿入される所定長さの挿入先端部を有し、
前記ロック装置は、前記昇降ブロックに設けられた被係合部に向けて進退駆動されるロックピンを有し、
前記ロックピンと被係合部とは上下方向にて所定の遊び量をもって係合し、この遊び量は、ブローエアの導入中常に前記ブローコア型の前記挿入先端部の少なくとも一部が前記プリフォームのネック部内壁に密着している範囲内に設定されている」ものであるのに対して、SBIII―500―150発明では、装置が、かかる遊び量に関する規定を有するか否かが明らかでない点。
そこで、相違点2について検討する。
一方の部材を他方の部材に挿入してロック状態を形成するような態様において、全く遊びのない状態、つまり、例えば一方の部材の外寸法と他方の部材の内寸法が完全に一致する状態では、挿入状態に支障を有することは明らかであるから、SBIII―500―150発明のロック装置においても多かれ少なかれ、遊び量は存在しているものといえる。
また、遊び量の設定は、本来の装置運転上、支障のない範囲で行うことは、当然のことであるが、相違点3に係る「この遊び量は、ブローエアの導入中常に前記ブローコア型の前記挿入先端部の少なくとも一部が前記プリフォームのネック部内壁に密着している範囲内に設定され」との規定は、そのような、遊び量の範囲を超えて装置を運転すると、超えた段階でブローコア型の底面に作用する圧力は一気に高まることの認識が技術常識であるといえることを考慮すると、上記支障のない範囲を単に規定したにすぎない。
したがって、当業者において、SBIII―500―150発明のロック装置に、適宜遊び量を設け、その際、運転上支障のない範囲として、相違点2に係る「ブローエアの導入中常に前記ブローコア型の前記挿入先端部の少なくとも一部が前記プリフォームのネック部内壁に密着している範囲」としたことは、当業者において、許容限度を考慮して、適宜なし得る設計的事項の範囲内のものといえる。
したがって、相違点2に係る本件発明3の構成は、当業者がSBIII―500―150発明に基いて容易に想到し得たものといえる。
上記のことから、本件発明3は、当業者が、本件出願前に日本国内で公然実施されたSBIII-500―150発明に基いて容易に発明することができたものといえる。
(4ー3-4)本件発明4について
本件発明1とSBIII-500―150発明との上記(4-3-1)での対比を踏まえて、本件発明4とSBIII-500―150発明とを対比する。
両者の機能及び構成からみて、前者の「昇降ブロック」に相当する後者の「ストレッチシリンダ-ベース71」は、前者の「ブロー動作を実施する機材を搭載した」構成に相当する構成を備えてなるものであることは明らかであり、前者の「ブローコア型を昇降する駆動源」に相当する後者の「ストレッチシリンダー24」は、それにより、「プリフォーム」の「ネック部」に「ブローコア型」を挿入するものといえる。
してみると、後者は、前者の「昇降ブロックを移動させて前記プリフォームの開口を密閉する工程」に対応する装置構成を備えてなるものといえる。
さらに、後者においては、「ストレッチシリンダーベース71」は、「ロック装置」により位置決めした場所で密閉することは明らかであり、該位置決めした場所を密閉位置ということができるとともに、「ロック検知機構(LS24-1,24-2、LS25-1,25-2)」は前者の「昇降ブロックのロック状態を検出」することができる機構といえる。
上記のことから、後者の装置は、結局、前者の「ブローキャビティ型内に配置されたプリフォーム内にブローエアを導入して中空体を成形するブロー成形方法」、「ブロー動作を実施する機材を搭載した昇降ブロックを移動させて前記プリフォームの開口を密閉する工程」、「前記昇降ブロックを、その密閉位置にて位置決めロックする工程」及び、「前記昇降ブロックのロック状態を検出する工程」に対応する装置構成を備えてなるものといえ、両者は、以下の点で相違する。

【相違点3】
本件発明4が、「ブローキャビティ型内に配置されたプリフォーム内にブローエアを導入して中空体を成形するブロー成形方法」であって、
該ブロー成形方法が、
「ブロー動作を実施する機材を搭載した昇降ブロックを移動させて前記プリフォームの開口を密閉する工程と、
前記昇降ブロックを、その密閉位置にて位置決めロックする工程と、
前記昇降ブロックのロック状態を検出する工程と、
その検出後に、前記プリフォーム内にブローエアを導入をする工程と、
を有する」ものであるのに対して、
SBIII-500―150発明では、「ブローキャビティ型内に配置されたプリフォーム内にブローエアを導入して中空体を成形するブロー成形」装置であって、
「ブロー動作を実施する機材を搭載した昇降ブロックを移動させて前記プリフォームの開口を密閉する」装置と、
「前記昇降ブロックを、その密閉位置にて位置決めロックする」装置と、 「前記昇降ブロックのロック状態を検出する」装置の3つの装置を有するものであるが、
該3つの装置が、それぞれ本件発明4のそれらに対応する工程を有するものか否か、及び上記「その検出後」に、「前記プリフォーム内にブローエアを導入する工程を有する」ものであるか否か、さらに、全体として、「ブローキャビティ型内に配置されたプリフォーム内にブローエアを導入して中空体を成形する」ブロー成形方法を構成するか否かが明らかでない点。
そこで、この相違点3について検討する。
先ず、該3つの装置が、それぞれ本件発明4のそれらに対応する工程を有するものか否かについて検討する。
SBIII-500―150発明は、装置に係る発明ではあるが、該装置を運転する際には、該装置の有する機能が実行されることは明らかであり、また、それらの機能が実行されることは、上記本件発明4の上記対応する3つの工程が実行されることに相当する。
したがって、該3つの装置が、それぞれ本件発明4のそれらに対応する工程を有するものといえる。
次に、前記プリフォーム内にブローエアを導入する工程について検討する。
検出手段でのロック状態の検出後に、ブローコア型からのブローエアの導入を開始制御する制御手段を設ける点が当業者において容易に想到し得たことであることは、上記(4-3-1)で相違点1についての検討でしたとおりであり、該制御手段の機能が実行されることは、その検出後に、前記プリフォーム内にブローエアを導入する工程が実行されることに相当するから、SBIII-500―150発明に基いて相違点3に係る上記「前記プリフォーム内にブローエアを導入する」工程を設けることは、当業者において容易に想到し得たことである。
そして、上記検討によれば、SBIII-500―150発明に基いて、「ブローキャビティ型内に配置されたプリフォーム内にブローエアを導入して中空体を成形する」ブロー成形方法を構成することは、当業者が容易に想到し得たことといえる。
したがって、本件発明4は、当業者が、本件出願前に日本国内で公然実施されたSBIII-500―150発明に基いて容易に発明することができたものといえる。

【5】 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし4は、日本国内で公然実施された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし4に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-12-27 
出願番号 特願平5-34225
審決分類 P 1 651・ 121- Z (B29C)
最終処分 取消  
特許庁審判長 増山 剛
特許庁審判官 鈴木 由紀夫
澤村 茂実
登録日 2002-11-15 
登録番号 特許第3370124号(P3370124)
権利者 日精エー・エス・ビー機械株式会社
発明の名称 ブロー成形装置及びブロー成形方法  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 井上 一  
代理人 布施 行夫  
代理人 加藤 宗和  

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