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審決分類 審判 全部無効 発明同一 訂正を認める。無効としない B29C
管理番号 1133136
審判番号 無効2003-35135  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-05-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-04-10 
確定日 2006-01-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3051381号「積層方法」の特許無効審判事件についてされた平成16年5月31日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成17年(行ケ)第10075号、平成17年7月21日判決言渡。)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3051381号に係る出願は、平成10年11月6日に特許出願され、平成12年3月31日に設定登録されたものである。
請求人である株式会社名機製作所は、平成15年4月10日に本件特許を無効にすることについて審判を請求し、審判合議体は、これを無効2003-35135号事件として審理し、平成16年2月9日付け無効理由通知書が被請求人に送達され、被請求人より平成16年3月15日付け訂正請求書が提出されたもので、審判合議体は、平成16年5月31日に「特許第3051381号の請求項1〜8に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との結論の審決をし、その謄本は当事者に送達された。
被請求人はこの審決を不服として提訴し、知的財産高等裁判所は、これを平成17(行ケ)年第10075号事件として審理し、平成17年7月21日に「特許庁が無効2003-35135号事件について平成16年5月31日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との主文の判決(以下、単に「判決」という。)を言い渡し、この判決は確定した。
そして、この判決の言い渡し後に、請求人は、平成17年8月29日付け及び同年10月26日付け上申書を提出している。

2.判決の内容
判決の主文は、先に「1」で述べたとおりである。
審決は、平成16年3月15日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)について、これは、特許法第134条第2項ただし書きに規定するいずれの目的にも適合していないし、また、同条第5項において準用する第126条第2項に規定する要件に違反するものでもあるから、拒絶すべきものである、との判断をしたものであるが、判決は、この判断は誤りであるから、審決を取り消す、というものである。

3.当事者の主張

3-1.請求人の主張
請求人は、無効審判請求書によれば、「特許第3051381号の明細書の特許請求の範囲請求項1〜8に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めており、その無効とする理由の概要は、以下のとおりのものと認める。

「願書に添付した明細書の特許請求の範囲請求項1〜8に係る発明は、甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であるから、これら発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反して特許を受けたものである。」

また、本件訂正後の、願書に添付した明細書の特許請求の範囲請求項1〜7に係る発明についての特許についても、平成17年8月29日付け及び同年10月26日付け上申書によれば、以下の甲第1〜4号証を証拠方法として、無効とする理由を主張しており、その概要は以下のとおりのものと認める。

「願書に添付した明細書の特許請求の範囲請求項1〜7に係る発明は、甲第2〜4号証を参照すれば、先願明細書に記載された発明と同一であるから、これら発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反して特許を受けたものである。」

甲第1号証;特開平11-129431号公報
甲第2号証;特開平8-332646号公報
甲第3号証;特開平8-132531号公報
甲第4号証;特開昭63-299895号公報

3-2.被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めており、本件訂正後の、願書に添付した明細書の特許請求の範囲請求項1〜7に係る発明は、先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえないから、これら発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反して特許を受けたものではない旨、主張しているものと認める。

4.本件訂正の適否

4-1.本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項a〜jからなるものと認める。

訂正事項a;
【特許請求の範囲】の記載につき、
「【請求項1】 凹凸を有する基板1に、フィルム状樹脂2を積層するに当たり、真空積層装置3を用いて積層した後、真空状態を解放した状態でラミネーターロール4又は平面プレス装置4′により加熱加圧処理することを特徴とする積層方法。
【請求項2】 上部プレート5及び下部プレート6を有し、上部プレート5及び下部プレート6の対向面にそれぞれ膜体7、8を載置し、上部プレート5の膜体7と下部プレート6の膜体8の間に狭持されるように凹凸を有する基板1とフィルム状樹脂2を載置し、下部プレート6を持ち上げて上部プレート5と密封係合状態にして、真空状態にした後、上部より大気を入れて積層する真空積層装置3を用いることを特徴とする請求項1記載の積層方法。
【請求項3】 真空積層装置3による真空度が2hPa以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の積層方法。
【請求項4】 上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2及び下部プレート6の膜体8と基板1の間にそれぞれフィルム13、14を設けることを特徴とする請求項2あるいは3記載の積層方法。
【請求項5】 上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2及び下部プレート6の膜体8と基板1の間にそれぞれ設けたフィルム13、14が連続走行可能なフィルムであることを特徴とする請求項4記載の積層方法。
【請求項6】 上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2及び下部プレート6の膜体8と基板1の間にそれぞれ設けたフィルム13、14がポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、フッ素化オレフィンフィルムのいずれかであることを特徴とする請求項4又は5記載の積層方法。
【請求項7】 ラミネーターロール4による加熱加圧処理条件が圧力1〜10kg/cm2、温度20〜200℃、又は平面プレス装置4′による加熱加圧処理条件が圧力1〜50kg/cm2、温度20〜200℃であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の積層方法。
【請求項8】 フィルム状樹脂2が絶縁材料であること特徴とする請求項1〜7いずれか記載の積層方法。」とあるのを、
「【請求項1】凹凸を有する基板1に、フィルム状樹脂2を積層するに当たり、真空積層装置3を用いて積層した後、真空状態を解放した状態でラミネーターロール4又は平面プレス装置4′により加熱加圧処理する積層方法において、該真空積層装置3として、上部プレート5及び下部プレート6を有し、上部プレート5及び下部プレート6の対向面にそれぞれ膜体7、8を載置し、上部プレート5の膜体7と下部プレート6の膜体8の間に狭持されるように凹凸を有する基板1とフィルム状樹脂2とを、上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間及び下部プレート6の膜体8と基板1との間にそれぞれフィルム13、14を介在させて載置し、真空状態にした後、積層する真空積層装置を使用することを特徴とする積層方法。
【請求項2】 上部プレート5及び下部プレート6を有し、上部プレート5及び下部プレート6の対向面にそれぞれ膜体7、8を載置し、上部プレート5の膜体7と下部プレート6の膜体8の間に狭持されるように凹凸を有する基板1とフィルム状樹脂2を載置し、下部プレート6を持ち上げて上部プレート5と密封係合状態にして、真空状態にした後、上部より大気を入れて真空状態を解放し積層を完了する真空積層装置3を用いることを特徴とする請求項1記載の積層方法。
【請求項3】真空積層装置3内の真空度が2hPa以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の積層方法。
【請求項4】 上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間及び下部プレート6の膜体8と基板1との間にそれぞれ設けたフィルム13,14が連続走行可能なフィルムであることを特徴とする請求項2又は3記載の積層方法。
【請求項5】 上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間及び下部プレート6の膜体8と基板1との間にそれぞれ設けたフィルム13、14がポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、フッ素化オレフィンフィルムのいずれかであることを特徴とする請求項2〜4いずれか記載の積層方法。
【請求項6】 ラミネーターロール4による加熱加圧処理条件が圧力1〜10kg/cm2、温度20〜200℃、又は平面プレス装置4′による加熱加圧処理条件が圧力1〜50kg/cm2、温度20〜200℃であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の積層方法。
【請求項7】 フィルム状樹脂2が電気的絶縁材料であること特徴とする請求項1〜6いずれか記載の積層方法。」と訂正する。

訂正事項b;段落【0006】の記載につき、
「・・・加熱加圧処理する積層方法が上記目的に合致することを見いだし、本発明を完成した。」とあるのを、
「・・・加熱加圧処理する積層方法において、該真空積層装置3として、上部プレート5及び下部プレート6を有し、上部プレート5及び下部プレート6の対向面にそれぞれ膜体7、8を載置し、上部プレート5の膜体7と下部プレート6の膜体8の間に狭持されるように凹凸を有する基板1とフィルム状樹脂2とを、上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間及び下部プレート6の膜体8と基板1との間にそれぞれフィルム13、14を介在させて載置し、真空状態にした後、積層する真空積層装置を使用することが上記目的に合致することを見いだし、本発明を完成した。」と訂正する。

訂正事項c;段落【0007】の記載につき、
「・・・、上部より大気を入れて積層する真空積層装置3を用いることが高真空性、高追従性の点で好ましい。」とあるのを、
「・・・、上部より大気を入れて真空状態を解放し積層を完了する真空積層装置3を用いることが高真空性、高追従性の点で好ましい。」と訂正する。

訂正事項d;段落【0013】の記載につき、
「・・・、それぞれフィルム13、14を設けることが好ましく、・・・。」とあるのを、
「・・・、それぞれフィルム13、14が設けられ、・・・。」と訂正する。

訂正事項e;段落【0020】の記載につき、
「・・・。
実施例1・・・。」とあるのを、
「・・・。
基本例・・・。」と訂正する。

訂正事項f;段落【0022】の記載につき、
「実施例2
実施例1において、・・・。」とあるのを、
「実施例1
基本例において、・・・。」と訂正する。

訂正事項g;段落【0024】の記載につき、
「比較例1
実施例1において、・・・。」とあるのを、
「比較例1
基本例において、・・・。」と訂正する。

訂正事項h;段落【0025】の記載につき、
「比較例2
実施例1において、・・・。」とあるのを、
「比較例2
基本例において、・・・。」と訂正する。

訂正事項i;段落【0026】の記載につき、
「・・・加熱加圧処理を施すため、フィルム状樹脂の追従性がよく、・・・。」とあるのを、
「・・・加熱加圧処理を施す積層方法において、該真空積層装置3として、上部プレート5及び下部プレート6を有し、上部プレート5及び下部プレート6の対向面にそれぞれ膜体7、8を載置し、上部プレート5の膜体7と下部プレート6の膜体8の間に狭持されるように凹凸を有する基板1とフィルム状樹脂2とを、上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間及び下部プレート6の膜体8と基板1との間にそれぞれフィルム13、14を介在させて載置し、真空状態にした後、積層する真空積層装置を使用するため、フィルム状樹脂の追従性がよく、・・・。」と訂正する。

訂正事項j;段落【発明の簡単な説明】の記載につき、
「【図1】本発明の積層装置の主要部の構造図である。
【図2】本発明の積層装置の主要部の構造図である。
【図3】本発明の好ましい積層装置の主要部の構造図である。
【図4】本発明の好ましい積層装置の主要部の構造図である。」とあるのを、
「【図1】本発明の積層装置の主要部の基本的構造図である。
【図2】本発明の積層装置の主要部の基本的構造図である。
【図3】本発明の積層装置の主要部の構造図である。
【図4】本発明の積層装置の主要部の構造図である。」と訂正する。

4-2.判断
ここでは、「願書に添付した明細書又は図面」を「訂正前明細書」という。また、訂正前の【請求項1】については旧【請求項1】といい、また、訂正後の【請求項1】については新【請求項1】といい、他の請求項についても同様とする。

4-2-1.訂正の目的の適否、新規事項の有無について

(1)訂正事項aについて
本訂正は、旧【請求項4】を削除すると共に、旧【請求項1】〜旧【請求項3】、旧【請求項5】〜旧【請求項8】を新【請求項1】〜新【請求項7】に訂正するもので、この削除することは、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当するものである。
新【請求項1】〜新【請求項7】とする訂正については、以下に判断する。

1)新【請求項1】とする訂正について
新【請求項1】は、旧【請求項1】を由来とするものである。
そして、本訂正は、旧【請求項1】に係る発明を特定する事項、即ち、該発明の発明特定事項であった真空積層装置3につき、これを「上部プレート5及び下部プレート6を有し、上部プレート5及び下部プレート6の対向面にそれぞれ膜体7、8を載置し、上部プレート5の膜体7と下部プレート6の膜体8の間に狭持されるように凹凸を有する基板1とフィルム状樹脂2とを、上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間及び下部プレート6の膜体8と基板1との間にそれぞれフィルム13、14を介在させて載置し、真空状態にした後、積層する真空積層装置」と技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当するといえる。
また、新【請求項1】に記載された発明における真空積層装置は、判決により、訂正前明細書に記載されたものと判示され、本訂正は、訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

2)新【請求項2】とする訂正について
新【請求項2】は、旧【請求項2】を由来とするものである。
そして、本訂正は、旧【請求項2】に記載されていた「上部より大気を入れて積層する真空積層装置3」を「上部より大気を入れて真空状態を解放し積層を完了する真空積層装置3」と訂正するもので、訂正前の記載において、「上部より大気を入れて」と「積層する」との記載事項間の技術的関連が不明りょうであったものを、前者が、これにより真空状態を解放することであり、後者が、この解放の後に真空積層装置3における積層を完了することを明らかにし、上述した不明りょうさを解消するもので、本訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
また、訂正前明細書には、「本発明で好ましく用いられる真空積層装置では、下部プレート6の膜体8上に凹凸を有する基板1及びフィルム状樹脂2を載置し、下部プレート6を持ち上げて上部プレート5と密封係合し、上下の真空引き吸引口10より吸引し、2hPa以下、好ましくは1hPa以下の状態まで真空にした後、上部より大気を中に入れて真空状態を解放し、下部プレート6を上部プレート5から離して下方に移動させ、該基板1とフィルム状樹脂2の積層が完了するのである。」(段落【0010】)との記載が認められ、本訂正は、この記載を根拠に訂正するもので、訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

3)新【請求項3】とする訂正について
本訂正は、旧【請求項3】に記載されていた「真空積層装置3による真空度が2hPa以下である」を「真空積層装置3内の真空度が2hPa以下である」と訂正するもので、判決は、旧【請求項3】の「真空積層装置3による真空度が2hPa以下であること」及び新【請求項3】の「真空積層装置内の真空度が2hPa以下であること」は、いずれも真空積層装置3において真空が適用される空間の真空度が2hPa以下であることを意味するものであり、新【請求項3】は、この真空が適用される空間が、真空積層装置内にあることを、より明確に表現したものと認められると判示しており、本訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
また、新【請求項3】に記載された発明における真空積層装置、即ち、真空積層装置内の真空度が2hPa以下である真空積層装置は、判決により、訂正前明細書に記載されたものと判示され、本訂正は、訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

4)新【請求項4】とする訂正について
新【請求項4】は、旧【請求項5】を由来とするものである。
そして、本訂正は、まず、旧【請求項5】が引用して記載していた旧【請求項4】が、先に「(1)」の冒頭で述べたように、削除され、更に、旧【請求項4】が引用して記載していた旧【請求項2】と旧【請求項3】が、それぞれ、新【請求項2】と新【請求項3】に訂正されたのに伴い、新【請求項4】において引用して記載する新【請求項】を、新【請求項2】又は新【請求項3】とするもので、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
更に、本訂正は、旧【請求項5】に記載されていた「上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2及び下部プレート6の膜体8と基板1の間」を、「上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間及び下部プレート6の膜体8と基板1との間」と訂正するものであり、判決は、この訂正が明りょうでない記載の釈明を目的とすると判示し、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
また、本訂正は、訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

5)新【請求項5】とする訂正について
新【請求項5】は、旧【請求項6】を由来とするものである。
そして、本訂正は、まず、旧【請求項6】が引用して記載していた旧【請求項4】が、先に「(1)」の冒頭で述べたように、削除され、更に、旧【請求項4】が引用して記載していた旧【請求項2】と旧【請求項3】が、それぞれ、新【請求項2】と新【請求項3】に訂正され、更に、旧【請求項6】が引用して記載していた旧【請求項5】が新【請求項4】に訂正されたのに伴い、新【請求項5】において引用して記載する新【請求項】を、新【請求項2】〜新【請求項4】のいずれかとするもので、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
更に、本訂正は、旧【請求項6】に記載されていた「上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2及び下部プレート6の膜体8と基板1の間」を、「上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間及び下部プレート6の膜体8と基板1との間」と訂正するものであり、判決は、この訂正が明りょうでない記載の釈明を目的とすると判示し、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
また、本訂正は、訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

6)新【請求項6】とする訂正について
新【請求項6】は、旧【請求項7】を由来とするものである。
そして、本訂正は、旧【請求項7】が引用して記載していた旧【請求項4】が、先に「(1)」の冒頭で述べたように、削除され、更に、旧【請求項7】が引用して記載していた旧【請求項1】〜旧【請求項3】、旧【請求項5】及び旧【請求項6】が、新【請求項1】〜新【請求項3】、新【請求項4】及び新【請求項5】に訂正されたのに伴い、新【請求項6】において引用して記載する新【請求項】を、新【請求項1】〜新【請求項5】のいずれかとするもので、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
また、本訂正は、訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

7)新【請求項7】とする訂正について
新【請求項7】は、旧【請求項8】を由来とするものである。
そして、本訂正は、まず、旧【請求項8】が引用して記載していた旧【請求項4】が、先に「(1)」の冒頭で述べたように、削除され、更に、旧【請求項8】が引用して記載していた旧【請求項1】〜旧【請求項3】、旧【請求項5】〜旧【請求項7】が、新【請求項1】〜新【請求項3】、新【請求項4】〜新【請求項6】に訂正されたのに伴い、新【請求項7】において引用して記載する新【請求項】を、新【請求項1】〜新【請求項6】のいずれかとするもので、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当し、訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
更に、本訂正は、旧【請求項8】に記載されていた「フィルム状樹脂2が絶縁材料」を、「フィルム状樹脂2が電気的絶縁材料」と訂正するもので、前者記載の材料が、どのような観点での絶縁なのかが不明りょうであったものを、その観点が電気的なものと明りょうにするもので、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。また、訂正前明細書には、「【発明の属する技術分野】本発明は、プリント回路基板の製造において、凹凸を有する基板にフィルム状樹脂を積層する方法に関するものであり、更に詳しくはフィルム状樹脂の追従性がよく、積層後の樹脂表面平滑性に優れ、ビルドアップ工法に有用な積層方法に関するものである。
【従来の技術】近年、電子機器の小型化、高性能化に伴いプリント回路基板の高密度化、多層化が進行している。かかるプリント回路基板の多層化においては、熱硬化型樹脂組成物又は感光性樹脂組成物を絶縁層として使用し、予め形成した内層回路の上に該熱硬化型樹脂組成物又は感光性樹脂組成物を塗布し、あるいは該熱硬化型樹脂組成物又は感光性樹脂組成物からなるフィルム状樹脂を積層し、更に銅メッキを施した後、再度フォトレジストフィルムを用いて光によるパターニングを行い、回路を形成する方法、いわゆるビルドアップ工法が有効に用いられている。」(段落【0001】〜【0002】)の記載が認められ、この記載によれば、本発明は、プリント回路基板の製造において、凹凸を有する基板にフィルム状樹脂を積層する方法に関するものであり、該フィルム状樹脂はプリント回路基板に積層されるもので、プリント回路基板が電気製品であることは明らかで、「フィルム状樹脂2が絶縁材料」と記載された場合、この絶縁の観点が電気的なものにあることは明らかであって、この訂正は、この記載を、少なくとも、根拠にするもので、訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

(2)訂正事項b〜jについて
これら訂正は、訂正事項aにより、特許請求の範囲が訂正されたのに伴い、これと整合を図るために発明の詳細な説明の記載を訂正するもので、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当し、訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

4-2-2.訂正の拡張・変更の存否について
本件訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるとする理由は見当たらない。

4-2-3.まとめ
本件訂正は、特許法第134条第2項及び同条第5項において準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、これを認める。

5.当審の判断

5-1.本件発明
本件発明は、本件訂正が認められることから、訂正後の明細書の特許請求の範囲請求項1〜請求項7に記載されている事項により特定されるものと認める(審決注;訂正後の明細書の特許請求の範囲請求項1〜請求項7については、先の「4-1」の「訂正事項a」を参照。この請求項1〜請求項7に係る発明を、以下、本件発明1〜7という。)

5-2.各甲号証の記載

甲第1号証:特開平11-129431号公報

(甲1ア);「【請求項3】 連続したフィルム状の搬送体上に被積層材と積層材とを載置し、前記連続したフィルム状の搬送体を引っ張ることにより送り前記被積層材と積層材とを相対向して設けられた熱板間に位置させ、前記被積層材と積層材とを加熱および加圧する積層方法であって、
前記熱板間で加熱および加圧された前記被積層材と積層材とを、前記熱板と前記搬送手段との間に相対向して設けられ熱変形温度以下に調整された冷却板間により加圧することを特徴とする積層方法。
【請求項5】 冷却板の温度を、熱変形温度のうち、附型温度からガラス転移温度に変化させることを特徴とする請求項3に記載の積層方法。」

(甲1イ);「【0019】請求項5の積層方法に係る発明では、熱板間で加熱・加圧された被積層材と積層材は、熱変形温度のうち、当初附型温度に調整された冷却板に加圧され、その後加圧を維持した状態でガラス転移温度以下に冷却されて安定した状態となる。確実に附型温度で加圧されるため、附型による積層材の表面の状態が向上する。」

(甲1ウ);「この実施の形態においては、連続したフィルム状の積層材を搬送体3bとして使用し(以下、搬送体を積層材3bという)、積層材3aを積層材3bと同様に連続したフィルム状に形成されたものを使用する場合により説明する。また、被積層材5としては、回路基板等が使用され、これに積層するための積層材としては、フィルム支持体の一方の面に接着されたフォトレジスト形成層等が使用される。そして、被積層材5の一方の面のみに積層材を積層する場合には、積層材3a,3bのうちの一方に離型フィルムあるいはキャリアフィルムが使用される。また、他の例としては、被積層材としてICチップ等が使用され、積層材としてポリエチレンテレフタレートあるいは塩化ビニル樹脂等からなるフィルムが使用される。」(段落【0020】、抜粋。)

(甲1エ);「【0021】上側の熱板(上板)1aと下側の熱板(下板)1bは、相対向して相対的に近接遠退移動可能に設けられている。上板1aと下板1bの少なくとも一方には、その対向面に膜体(図示を省略した)が設けられ、上板1aと下板1bの相対的な近接移動により膜体を介して対向面の間で挟持されて積層空間を形成する枠体(図示を省略した)を備えている。また、上板1aおよび/または下板1bには、その対向面に設けられた膜体を加圧、吸引することにより対向面に密着させ、あるいは膨張させるための加圧吸引手段(図示を省略した)が接続され、また、積層空間を形成した際に積層空間内を減圧するための減圧手段(図示を省略した)が接続されている。これらの構成により、この実施の形態における積層装置1は、積層材3a,3bと被積層材5とを真空雰囲気下で加熱・加圧する真空積層装置として機能することが可能となっている。」

(甲1オ);「【0033】次に、本発明の積層方法の別の実施の形態について説明する。なお、この説明では、上述した実施の形態と異なる工程についてのみを説明することとし、同様の工程については説明を省略する。この積層方法の概要は、上部板9aと下部板9bの対向面の温度を、上述したようにガラス転移温度以下の一定の温度に保持する実施の形態と異なり、熱変形温度のうち、附型温度からガラス転移温度に変化させるものである。
【0034】積層材3a,3bおよび被積層材5を上下の熱板1a,1bで約160度に加熱してから、積層空間を開放して上部板9aと下部板9bとの間で加圧されるまでの間に、その温度が降下することは上述したとおりであるが、この温度が積層材3a,3bによっては、その表面を平滑に附型するのに適する温度以下に降下する場合もあり得る。また、積層材3a,3bと被積層材5との熱容量が異なる場合、例えば、被積層材5がICチップである場合において、このICチップ5の熱容量が積層材3a,3bよりも大きいため、ICチップ5の温度降下が積層材3a,3bよりも遅くなり、ICチップ5の周辺における積層材3a,3bが収縮することによりひけたり表面が荒れることとなる。
【0035】この実施の形態においては、上部板9aと下部板9bの対向面の温度は、温調溝10に循環供給される温調流体や棒状ヒーター等により、積層材3a,3bおよび被積層材5への加圧を開始する時点でICチップ5に積層される積層材3a,3bである塩化ビニル樹脂の附型に適した温度(この実施の形態の場合、約95度)に調節されている。そして、上部板9aと下部板9bの対向面の温度は、積層材3a,3bおよび被積層材5への加圧を開始した後、所定のプログラムにしたがって約80度(ガラス転移温度)以下まで変化するように制御される。これにより、積層材3a,3bの表面は、加圧開始時点で軟化して、平滑となるように整形、すなわち附型されつつガラス転移温度を下回り安定した状態となるまで所定の速度で冷却されることとなる。」

(甲1カ);「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る積層装置の一実施の形態を示す全体図である。」及び【図1】

甲第2号証:特開平8-332646号公報

(甲2ア);「【0044】本発明に係る真空積層装置は、図1に示すように概略、相対向して近接遠退可能に配設された上板 1および下板 2と、この上板 1および下板 2の対向面にそれぞれ設けられた膜体 3,4と、下板 2の膜体 4上に載置され、上板 1と下板 2を近接させることによって膜体 3,4に挟持され、連続した被成形材Hが収容されるチャンバ 5を形成する枠体 6と、形成されたチャンバ 5(図4)内を真空引きする吸引手段と、膜体 4を下板 2の対向面に固定し、または上板 1の膜体 3側に膨らませる吸引・加圧手段とを備えている。」

(甲2イ);「【0050】次に、このように構成された本発明に係る真空積層装置を用いた一例として、被成形材Hとして回路基板40の表面に支持体フィルムおよび感光層からなる連続したフィルム状フォトレジスト形成層41を積層する場合について説明する。この場合においては、図1に示すように、真空積層装置の被成形材Hの送入側(図面右側)には位置決め作業支持台42が配置され、フィルム状フォトレジスト形成層41を巻いたロール43、および回路基板40が載置されるフィルム44を巻いたロール45が設けられている。フィルム44は、回路基板40の片面のみフォトレジストを積層する場合にはキャリヤフィルムが用いられ、回路基板40の両面にフォトレジストを積層する場合にはフィルム状フォトレジスト形成層41と同様のものが用いられる。位置決め作業支持台42は、回路基板40を複数(例えば2枚)載置できる幅(図1の左右方向)を有している。なお、ロール43の近傍には、フィルム状フォトレジスト形成層41の感光層に貼られた保護フィルムを剥して巻き取るためにテイクアップロールが設けられている(図示を省略した)。
【0051】真空積層装置の積層された成形品の送出側(図面左側)には成形品支持台50が配置され、被成形材Hとして回路基板40の表面に支持体フィルムおよび感光層からなるフィルム状フォトレジスト形成層41を加熱加圧した、連続した成形品を引っ張って送出するチャック等を備えた送出手段が設けられている(図示を省略した)。」

(甲2ウ);「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る真空積層装置を、回路基板の表面に連続したフィルム状フォトレジスト形成層を積層するために用いた場合の一実施を示す縦断正面図である。」及び【図1】

甲第3号証:特開平8-132531号公報

(甲3ア);「【0027】先ず、図1及び図2には、本発明の一実施例としての真空積層プレス装置10が、示されている。かかるプレス装置10は、全体として略中空の矩形ボックス形状を有するケース12を備えており、該ケース12の長手方向一方の側端部に設けられた第一及び第二の送入口14,16を通じて、被着基材としての回路基板18と接着シート材としてのカバーフィルム20を、それぞれ送り込み、ケース12内で積層プレス加工して一体的に被着せしめた後、ケース12の長手方向他方の側端部に設けられた送出口22を通じて、かかるプレス成形品24を取り出すようになっている。
【0028】より詳細には、ケース12は、それぞれ略厚肉の矩形板形状を有する上板26と底板28が、矩形枠体形状を有するスペーサ30を挟んで、重ね合わされた構造とされており、上板26と底板28の間にスペーサ30で囲まれた密閉空間32が画成されている。なお、図面上に明示はされていないが、スペーサ30を挟んで重ね合わされた上板26と下板28は、適当な固定手段により、重ね合わせ方向に圧力が及ぼされた状態で固定されるようになっていると共に、スペーサ30の上下面で開閉可能とされている。更に、この密閉空間32の内部には、シリコーンゴム等からなる可撓性膜34が配設されており、該可撓性膜34の外周縁部が、上板26と該上板26にボルト固定された枠体状の押え枠金具36との間で、全周に亘って挟持されることにより、密閉空間32が、かかる可撓性膜32を挟んで、上板26側の作用室38と、下板28側の処理室40とに、気密に二分されている。」

(甲3イ);「【0031】また一方、下板28には、処理室40に面する部分の略全面に亘って広がる大きさで、該処理室40側に開口する矩形状の凹所52が、略一定の深さで形成されており、この凹所52内に、断熱材層54を介して、ヒータ56が組み付けられた加熱板58が収容配置されている。」

(甲3ウ);「【0044】すなわち、本実施例の真空積層プレス装置82においては、離型フィルムロール84から送り出されたシート状の離型フィルム86が、第二の送入口16から処理室40に送入され、処理室40を経て、送出口22から外部に送出された後、フィルム巻取ロール88によって巻き取られるようになっている。なお、この離型フィルム86としては、加熱,プレス処理によってもカバーフィルム20に対して接着されない材質で且つ十分な耐久性を有するものが望ましく、一般に、カバーフィルム20と略同一の幅を有するものが用いられる。これにより、かかる離型フィルム86は、第二の送入口16においてカバーフィルム20の表面(回路基板18に対する接着面とは反対側の面)に対して非接着に重ね合わされて、該カバーフィルム20と共に処理室40に送り込まれ、プレス加工が行われた後、送出口22において、カバーフィルム20(プレス成形品24)から引き離されて単独で回収されることとなる。」

(甲3エ);「【0045】このような離型フィルム86を採用すれば、カバーフィルム20の表面が離型フィルム86で覆われて、カバーフィルム20の表面が直接にプレス加圧時に可撓性膜34に接触したり、送出時に送出口22に接触したりすることがないことから、例えば、回路基板18に印刷された回路配線の端子を露出させてはんだ付け等するための孔がカバーフィルム20に予め設けられている場合でも、カバーフィルム20の回路基板18への加圧接着時に、かかる孔部から滲み出した溶融樹脂等が、可撓性膜34等に直接に接触することが防止され得、それによって、溶融樹脂等の可撓性膜34への付着に起因する可撓性膜34の耐久性の低下等が効果的に回避され得るのである。」

(甲3オ);「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としての真空積層プレス装置を示す縦断面図である。
【図2】図1におけるII-II断面図である。
・・・。
【図5】本発明の別の実施例としての真空積層プレス装置を示す縦断面図である。」並びに【図1】、【図2】及び【図5】

甲第4号証:特開昭63-299895号公報

(甲4ア);「2.特許請求の範囲
(1)被成形物を移送する移送手段と、この移送手段の中間部に開閉駆動可能に配置され、上記被成形物をその移送過程で加熱・加圧して一体成形する真空チャンバーと、この真空チャンバーを開閉駆動するチャンバー開閉手段と、上記真空チャンバーを加熱する加熱機構とを備えた真空プレス装置。
(2)上記移送手段は、被成形物が搭載される連続シートを繰り出して上記被成形物を上記真空チャンバー内に供給する連続シート供給装置と、上記連続シートを上記真空チャンバー内から引き出すシート引出装置とからなっていることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の真空プレス装置。
(3)上記連続シート供給装置は、上側連続シート供給装置と下側連続シート供給装置とからなり、それらの上側および下側連続シート供給装置から繰り出された上下の連続シートで上記被成形物を挟み込んで移送することを特徴とする特許請求の範囲第2項記載の真空プレス装置。」

(甲4イ);「5は被成形物であり、この被成形物5は、熱硬化性材料を或る程度加熱して熱硬化反応を途中まで行った半硬化状態のAステージ材料5aと、上記熱硬化性材料を完全硬化させたBステージ材料5bとの組合せからなっている。」(2頁左上欄11〜16行)

(甲4ウ);「【発明が解決しようとする問題点】
従来のプレス装置は以上のように構成されているので、被成形物5のプレス成形時に、Aステージ材料5aとBステージ材料5bとの間に生じる気泡を取り除くために、加圧装置1で高圧力(例えば40〜45Kg/cm2)をかけなければならず、このため、装置全体が頗る大型化し、コスト的にも相当な費用を要するなどの問題点があった。」(2頁右上欄6〜13行)

(甲4エ);「そして、上記シート引出装置8と上記連続シート供給装置6は、上記下側連続シート7a上に搭載された被成形物5を上側連続シート7bで挟み込んで移送する移送手段を構成している。10は上記連続シート供給装置6と上記シート引出装置8との間に配置され且つ加熱機構4で加熱される開閉駆動可能な真空チャンバーであり、この真空チャンバー10は、下部の可動側チャンバ10aと上部の固定側チャンバー10bとからなっている。11aは上記可動側チャンバー10aの内部に張設された耐熱性の下側ラバーシート、11bは上記固定側チャンバー10bの内部に張設された耐熱性の上側ラバーシート、12aおよび12bは上記可動側チャンバ10aの上端および上記固定側チャンバー10bの下端にそれぞれ設けられたOリング等のシール部材であり、これらのシール部材12a、12bおよび上記下側ラバーシート11aと上記上側ラバーシート11bは、上記真空チャンバー10の閉時に真空室を形成する。」(2頁右下欄11行〜3頁左上欄10行)

(甲4オ);「これにより、上記真空チャンバー10は閉じ、その内部の下側ラバーシート11aと上側ラバーシート11bとの間に密閉された真空室が形成され、この真空室には真空ポンプ14で負圧(吸引力)が作用し、かつ、上記可動側チャンバー10aと固定側チャンバー10bが加熱機構4で加熱されていることにより、上記Bステージ材料5bとAステージ材料5aが加熱・加圧され一体成形される。」(3頁右上欄下から7行〜左下欄2行)

(甲4カ);「4.図面の簡単な説明
第1図はこの発明の一実施例に係る真空プレス装置の概略正面図、」及び第1図

5-3.本件発明1について

1)甲第1号証には、記載(甲1ア)によれば、「連続したフィルム状の搬送体上に被積層材と積層材とを載置し、前記搬送体を引っ張ることにより送り、前記被積層材と積層材とを相対向して設けられた熱板間に位置させ、前記被積層材と積層材とを加熱及び加圧する積層方法であって、前記熱板間で加熱及び加圧された前記被積層材と積層材とを、前記熱板と前記搬送手段との間に相対向して設けられ熱変形温度以下に調整された冷却板間により加圧する積層方法において、冷却板の温度を、熱変形温度のうち、附型温度からガラス転移温度に変化させる積層方法」(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
そして、甲1発明は、記載(甲1イ)によれば、熱板間で加熱及び加圧された被積層材と積層材は、当初、附型温度に調整された冷却板に加圧されるもので、更に、甲1発明についての記載であることが明らかな記載(甲1オ)によれば、冷却板を、上述したように、当初、附型温度に調整する目的は、前記した積層材が、冷却板間により加圧される前までに、その加圧による附型に適する温度以下に降下した場合に、これを附型に適する温度にすることにあり、冷却板を棒状ヒーター等により加熱して、この降下した積層材を加熱し、これを被積層材と共に加圧し始めていることがうかがえる。
また、記載(甲1ウ)によれば、甲1発明の具体的態様として、その被積層材として回路基板を、積層材としてフォトレジスト形成層が接着されたフィルムを使用することがうかがえ、また、その被積層材としてICチップを、積層材としてポリエチレンテレフタレート或いは塩化ビニル樹脂からなるフィルムを使用することもうかがえ、記載(甲1カ)によれば、これら被積層材と積層材は、被積層材を下にして、フィルム状の搬送体上に載置されるものであり、この積層材は、連続物のものとして意図されていることもうかがえる。
更に、記載(甲1エ)によれば、甲1発明の「被積層材と積層材とを相対向して設けられた熱板間に位置させ、前記被積層材と積層材とを加熱及び加圧する」工程の具体的態様として、上側の熱板(上板)1a及び下側の熱板(下板)1bを有し、熱板(上板)1a及び熱板(下板)1bの対向面には、それぞれ、膜体が設けられ、これら膜体の間に狭持されるように積層空間を形成する枠体を備え、熱板(上板)1a及び/又は熱板(下板)1bには、その対向面に設けられた膜体を加圧、吸引することにより対向面に密着させ、あるいは膨張させるための加圧吸引手段が接続され、また、上記積層空間を形成した際に積層空間内を減圧するための減圧手段が接続されている真空積層装置を使用して行うことがうかがえ、該真空積層装置は、被積層材と積層材とを、上記した膜体の間に載置し、真空雰囲気下で加熱及び加圧して積層するものであることがうかがえる。
してみると、先願明細書には、甲第1号証によれば、甲1発明が記載され、更に、上で述べたとおりの具体的態様を有する甲1発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。

2)そこで、本件発明1と先願発明とを対比すると、後者発明の「回路基板」及び「フォトレジスト形成層が接着されたフィルム」は、前者発明の「基板1」及び「フィルム状樹脂2」に対応しているか、或いは、後者発明の「ICチップ」及び「ポリエチレンテレフタレート或いは塩化ビニル樹脂からなるフィルム」は、前者発明の「基板1」及び「フィルム状樹脂2」に対応しているものである。更に、後者発明の「上側の熱板(上板)1a」、「下側の熱板(下板)1b」及び「フィルム状の搬送体」は、前者発明の「上部プレート5」、「下部プレート6」及び「下部プレート6の膜体8と基板1との間に介在するフィルム」に対応し、本件発明1は、少なくとも、以下の点aで相違しているものと認められ、そうである以上、本件発明1は先願発明と同一であるということはできない。

a.本件発明1は、「上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間にフィルムを介在させている」点、即ち、先願発明の相当する構成で言い換えれば、「上側の熱板(上板)1aの対向面に設けられた膜体とフォトレジスト形成層が接着されたフィルムとの間にフィルムを介在させており、或いは、前記膜体とポリエチレンテレフタレート或いは塩化ビニル樹脂からなるフィルムとの間にもフィルムを介在させている」点で、これに対し、先願発明は、「上側の熱板(上板)1aの対向面に設けられた膜体とフォトレジスト形成層が接着されたフィルムとの間にフィルムを介在させておらず、或いは、前記膜体とポリエチレンテレフタレート或いは塩化ビニル樹脂からなるフィルムとの間にもフィルムを介在させていない」点(以下、「相違点a」という。)。

3)これに対し、請求人は、甲第2〜4号証を示し、要するに、相違点aは、先願発明として実質的に先願明細書に記載されていたに等しい旨を主張するが、理由はない。以下に、述べる。

3-1)甲第2号証には、記載(甲2イ)及び(甲2ウ)によれば、概ね、「連続したキャリヤフィルム44上に回路基板40、その上に支持体フィルム及び感光層からなる連続したフィルム状フォトレジスト形成層41を載置し、回路基板40とフィルム状フォトレジスト形成層41とを真空積層装置において加熱及び加圧することにより積層する積層方法」が記載され、更に、記載(甲2ア)及び(甲2ウ)によれば、該積層方法における真空積層装置として、上板 1及び下板 2を有し、上板 1及び下板 2の対向面にそれぞれ膜体3,4を設け、上板 1の膜体3と下板 2の膜体4の間に狭持されるように回路基板40とフィルム状フォトレジスト形成層41とを載置する構造のものが記載されているものと認められる。
しかしながら、甲第2号証には、上板 1の膜体3とフィルム状フォトレジスト形成層41との間にフィルムを介在させる構造のものは記載されていないから、甲第2号証を根拠に、先願発明において、「上側の熱板(上板)1aの対向面に設けられた膜体とフォトレジスト形成層が接着されたフィルムとの間にフィルムを介在させている」ことが、実質的に先願明細書に記載されていたに等しいということはできないし、「上側の熱板(上板)1aの対向面に設けられた膜体とポリエチレンテレフタレート或いは塩化ビニル樹脂からなるフィルムとの間にフィルムを介在させている」ことが、実質的に先願明細書に記載されていたに等しいということはできない。

3-2)また、甲第3号証には、記載(甲3ア)及び(甲3オ)によれば、概ね、「連続した回路基板18、その上方にカバーフィルム20を設け、回路基板18とカバーフィルム20とを真空積層プレス装置10において加熱及び加圧することにより積層する積層方法」が記載され、更に、記載(甲3イ)及び(甲3ウ)をも参酌すれば、該積層方法における真空積層プレス装置として、上板26及び下板28を有し、上板26の対向面に可撓性膜34が配設され、可撓性膜34と下板28に収容配置されている加熱板58との間に狭持されるように回路基板18とカバーフィルム20とを、可撓性膜34とカバーフィルム20との間にシート状の離型フィルム86を介在させて載置する構造のものが記載されているものと認められる。
そして、先願発明との関係でいえば、上記真空積層プレス装置10は、先願発明の「真空積層装置」に対応しており、上記離型フィルム86は、「上側の熱板(上板)1aの対向面に設けられた膜体とフォトレジスト形成層が接着されたフィルムとの間、或いは前記膜体とポリエチレンテレフタレート或いは塩化ビニル樹脂からなるフィルムとの間に介在しているフィルム」に対応していると認められる。
しかしながら、上記離型フィルム86を介在させる趣旨は、記載(甲3エ)によれば、回路基板18に印刷された回路配線の端子を露出させてはんだ付けするための孔がカバーフィルム20に予め設けられている場合でも、カバーフィルム20の回路基板18への加圧接着時に、かかる孔部から滲み出した溶融樹脂が、可撓性膜34に直接に接触することを防止することにあり、上記離型フィルム86は、孔が設けられているカバーフィルム20を上記真空積層プレス装置によって積層される対象とする場合に、設けられるのである。これに対し、先願発明において、真空積層装置によって積層される対象は、回路基板とフォトレジスト形成層が接着されたフィルムや、ICチップとポリエチレンテレフタレート或いは塩化ビニル樹脂からなるフィルムであって、上記真空積層プレス装置が対象とする孔が設けられているカバーフィルム20ではないから、甲第3号証を根拠に、先願発明において、「上側の熱板(上板)1aの対向面に設けられた膜体とフォトレジスト形成層が接着されたフィルムとの間にフィルムを介在させている」ことが、実質的に先願明細書に記載されていたに等しいということはできないし、「上側の熱板(上板)1aの対向面に設けられた膜体とポリエチレンテレフタレート或いは塩化ビニル樹脂からなるフィルムとの間にフィルムを介在させている」ことが、実質的に先願明細書に記載されていたに等しいということはできない。

3-3)更に、甲第4号証には、記載(甲4ア)によれば、「被成形物を移送する移送手段と、この移送手段の中間部に開閉駆動可能に配置され、上記被成形物をその移送過程で加熱及び加圧して一体成形する真空チャンバーと、この真空チャンバーを開閉駆動するチャンバー開閉手段と、上記真空チャンバーを加熱する加熱機構とを備えた真空プレス装置において、上記移送手段は、被成形物が搭載される連続シートを繰り出して上記被成形物を上記真空チャンバー内に供給する連続シート供給装置と、上記連続シートを上記真空チャンバー内から引き出すシート引出装置とからなっており、上記連続シート供給装置は、上側連続シート供給装置と下側連続シート供給装置とからなり、それらの上側及び下側連続シート供給装置から繰り出された上下の連続シートで上記被成形物を挟み込んで移送する真空プレス装置」が記載され、ここにおける真空チャンバーとして、記載(甲4エ)を合わせ見れば、上部の固定側チャンバー10b及び下部の可動側チャンバー10aを有し、固定側チャンバー10bの内部及び可動側チャンバー10aの内部にそれぞれ上側ラバーシート11b及び下側ラバーシート11aが張設され、上側ラバーシート11bと被成形物との間及び下側ラバーシート11aと被成形物との間にそれぞれ上側連続シート7b及び下側連続シート7aを介在させて載置する構造のものが記載されているものと認められる。
そして、先願発明との関係でいえば、上記真空チャンバーは、先願発明の「真空積層装置」に対応しており、上側連続シート7bは、「上側の熱板(上板)1aの対向面に設けられた膜体とフォトレジスト形成層が接着されたフィルムとの間、或いは前記膜体とポリエチレンテレフタレート或いは塩化ビニル樹脂からなるフィルムとの間に介在しているフィルム」に対応していると認められる。
しかしながら、真空チャンバーで加熱及び加圧して一体とする物、即ち、被成形物は、その対象として、記載(甲4イ)、(甲4ウ)及び(甲4オ)によれば、Aステージ材料5aとBステージ材料5bといった熱硬化性材料の組み合わせからなるものを念頭に置いていることが分かり、更に、記載(甲4カ)によれば、これら被成形物は、非連続のものとして意図されていることが分かるのに対し、真空チャンバーに対応する先願発明の真空積層装置で加熱及び加圧して積層する対象、即ち、被積層材と積層材は、回路基板と連続物として意図されているフォトレジスト形成層が接着されたフィルムや、ICチップと連続物として意図されているポリエチレンテレフタレート或いは塩化ビニル樹脂からなるフィルムで、加熱及び加圧する対象を異にし、更に、上側連続シート7bは、フィルムとは、必ずしもいえないから、甲第4号証を根拠に、先願発明において、「上側の熱板(上板)1aの対向面に設けられた膜体とフォトレジスト形成層が接着されたフィルムとの間にフィルムを介在させている」ことが、実質的に先願明細書に記載されていたに等しいということはできないし、「上側の熱板(上板)1aの対向面に設けられた膜体とポリエチレンテレフタレート或いは塩化ビニル樹脂からなるフィルムとの間にフィルムを介在させている」ことが、実質的に先願明細書に記載されていたに等しいということはできない。

3-4)そして、甲第2〜4号証から把握される技術的事項についてこれまで述べてきたが、これら技術的事項を根拠に、相違点が先願発明として実質的に先願明細書に記載されていたに等しいということはできないのであるから、これら技術的事項が、先願明細書に係る特許出願の出願当時において周知技術や技術常識であったとしても、そのことから相違点aが先願発明として実質的に先願明細書に記載されていたに等しいということができないのは明らかである。
請求人は、加えて、平成17年8月29日付け上申書において、要するに、上下に膜体を有する真空積層装置といえるものにおいて、甲第2号証には積層される対象物と下方の膜体との間にフィルムが介在させる態様が、甲第3号証には対象物と上方の膜体との間にフィルムが介在させる態様が、そして、甲第4号証には対象物と上方の膜体との間及び下方の膜体との間にフィルムが介在させる態様が、それぞれ、記載されていることから、上記真空積層装置といえるものにおいて、対象物と上方の膜体との間にフィルムを介在させることは設計的事項であるとし、これを根拠に、相違点aは先願発明として実質的に先願明細書に記載されていたに等しい旨を主張するが、甲第2〜4号証は、全て、特許公開公報であって、各公報に、それぞれ、上で述べたように各態様が記載されているからといって、これら態様から対象物と上方の膜体との間にフィルムが介在させることは設計的事項であるとまではいえないし、甲第4号証についていえば、対象物と上方の膜体との間に介在しているのはシートであって、フィルムとはいえないから、これらのことからしても、請求人の主張に理由はない。
また、これまで述べた視点以外から、甲第2〜4号証を検討しても、相違点aが、先願発明として実質的に先願明細書に記載されていたに等しいとする理由は見あたらない。

4)上述したとおり、本件発明1は、先願発明と同一であるとはいえないし、また、他に先願明細書に記載された発明と同一であるとする理由も見あたらない。

5-4.本件発明2〜7について
本件発明2〜7は、本件発明1を技術的に限定するものであって、本件発明1が、「5-3」で述べたように、先願明細書に記載された発明と同一であるといえない以上、本件発明2〜7も先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。

6.結論
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明の特許を無効とすることはできない。
また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
積層方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】凹凸を有する基板1に、フィルム状樹脂2を積層するに当たり、真空積層装置3を用いて積層した後、真空状態を解放した状態でラミネーターロール4又は平面プレス装置4′により加熱加圧処理する積層方法において、該真空積層装置3として、上部プレート5及び下部プレート6を有し、上部プレート5及び下部プレート6の対向面にそれぞれ膜体7、8を載置し、上部プレート5の膜体7と下部プレート6の膜体8の間に狭持されるように凹凸を有する基板1とフィルム状樹脂2とを、上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間及び下部プレート6の膜体8と基板1との間にそれぞれフィルム13、14を介在させて載置し、真空状態にした後、積層する真空積層装置を使用することを特徴とする積層方法。
【請求項2】上部プレート5及び下部プレート6を有し、上部プレート5及び下部プレート6の対向面にそれぞれ膜体7、8を載置し、上部プレート5の膜体7と下部プレート6の膜体8の間に狭持されるように凹凸を有する基板1とフィルム状樹脂2を載置し、下部プレート6を持ち上げて上部プレート5と密封係合状態にして、真空状態にした後、上部より大気を入れて真空状態を解放し積層を完了する真空積層装置3を用いることを特徴とする請求項1記載の積層方法。
【請求項3】真空積層装置3内の真空度が2hPa以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の積層方法。
【請求項4】上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間及び下部プレート6の膜体8と基板1との間にそれぞれ設けたフィルム13、14が連続走行可能なフィルムであることを特徴とする請求項2又は3記載の積層方法。
【請求項5】上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間及び下部プレート6の膜体8と基板1との間にそれぞれ設けたフィルム13、14がポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、フッ素化オレフィンフィルムのいずれかであることを特徴とする請求項2〜4いずれか記載の積層方法。
【請求項6】ラミネーターロール4による加熱加圧処理条件が圧力1〜10kg/cm2、温度20〜200℃、又は平面プレス装置4′による加熱加圧処理条件が圧力1〜50kg/cm2、温度20〜200℃であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の積層方法。
【請求項7】フィルム状樹脂2が電気的絶縁材料であること特徴とする請求項1〜6いずれか記載の積層方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント回路基板の製造において、凹凸を有する基板にフィルム状樹脂を積層する方法に関するものであり、更に詳しくはフィルム状樹脂の追従性がよく、積層後の樹脂表面平滑性に優れ、ビルドアップ工法に有用な積層方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴いプリント回路基板の高密度化、多層化が進行している。かかるプリント回路基板の多層化においては、熱硬化型樹脂組成物又は感光性樹脂組成物を絶縁層として使用し、予め形成した内層回路の上に該熱硬化型樹脂組成物又は感光性樹脂組成物を塗布し、あるいは該熱硬化型樹脂組成物又は感光性樹脂組成物からなるフィルム状樹脂を積層し、更に銅メッキを施した後、再度フォトレジストフィルムを用いて光によるパターニングを行い、回路を形成する方法、いわゆるビルドアップ工法が有効に用いられている。
【0003】
特に絶縁層として用いる熱硬化型樹脂組成物又は感光性樹脂組成物層の積層において、フィルム状樹脂を用いる場合は、特開平5-200880号公報に記載の如き真空積層装置が用いられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平5-200880号公報に記載の装置を用いて、凹凸を有する基板とフィルム状樹脂を積層する場合、該基板にフィルム状樹脂を追従させるようにすると、該基板の凹凸が反映し、積層樹脂表面に凹凸が生じる。該積層樹脂表面の凹凸は、次工程の回路形成時に密着不良や追従性不良、外観不良等の問題が生じることになる。最近の多層化に伴う技術の高度化を考慮すると、良好な追従性及び基板とフィルム状樹脂間に生じる小さな気泡(マイクロボイド)の抑制が重量であり、更にビルドアップ工法においては積層後の表面平滑性が重量である。
【0005】
そこで、本発明はこのような背景下において、プリント回路基板の高密度化、多層化に伴い、ビルドアップ工法において、追従性に優れ、マイクロボイドの発生しない、更に積層後の表面平滑性に優れた良好なプリント回路基板を得る積層方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【問題を解決するための手段】
そこで本発明者は、かかる事情に鑑み、鋭意研究をした結果、凹凸を有する基板1に、フィルム状樹脂2を積層するに当たり、真空積層装置3を用いて積層した後、真空状態を解放した状態でラミネーターロール4又は平面プレス装置4′により加熱加圧処理する積層方法において、該真空積層装置3として、上部プレート5及び下部プレート6を有し、上部プレート5及び下部プレート6の対向面にそれぞれ膜体7、8を載置し、上部プレート5の膜体7と下部プレート6の膜体8の間に狭持されるように凹凸を有する基板1とフィルム状樹脂2とを、上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間及び下部プレート6の膜体8と基板1との間にそれぞれフィルム13、14を介在させて載置し、真空状態にした後、積層する真空積層装置を使用することが上記目的に合致することを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
特に本発明では、上部プレート5及び下部プレート6を有し、上部プレート5及び下部プレート6の対向面にそれぞれ膜体7、8を載置し、上部プレート5の膜体7と下部プレート6の膜体8の間に狭持されるように凹凸を有する基板1とフィルム状樹脂2を載置し、下部プレート6を持ち上げて上部プレート5と密封係合状態にして、真空状態にした後、上部より大気を入れて真空状態を解放し積層を完了する真空積層装置3を用いることが高真空性、高追従性の点で好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を図1、図2、図3及び図4を参考にして詳細に述べる。但し、これに限定されるわけではない。図1、図2は本発明の積層方法に用いる装置の主要部の構造図であり、1は凹凸を有する基板、2はフィルム状樹脂、3は真空積層装置、4はラミネートロール、4′は平面プレス装置であり、更に5は上部プレート、6は下部プレート、7は上部プレート5の膜体、8は下部プレート6の膜体である。9は上部プレート5と下部プレート6とを密封係合するためのシールであり、10は上部プレート5と下部プレート6を密封係合した後に、該密封内を真空状態にするための真空引き吸引口である。11は平面プレス装置4′の金属平面プレートで、12は油圧シリンダーである。
【0009】
本発明で用いられる真空積層装置は、熱、真空及び機械的圧力を組み合わせて自動的に加え、回路基板とフィルム状樹脂との間の空気を全て完全に取り除き、小さな気泡(マイクロボイド)を抑制することができ、エッチングした回路トレースのまわりにフィルム状樹脂を確実に形状一致させるようにするものである。膜体7及び8は耐熱性のものであれば特に限定されないが、例えばシリコンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0010】
本発明で好ましく用いられる真空積層装置では、下部プレート6の膜体8上に凹凸を有する基板1及びフィルム状樹脂2を載置し、下部プレート6を持ち上げて上部プレート5と密封係合し、上下の真空引き吸引口10より吸引し、2hPa以下、好ましくは1hPa以下の状態まで真空にした後、上部より大気を中に入れて真空状態を解放し、下部プレート6を上部プレート5から離して下方に移動させ、該基板1とフィルム状樹脂2の積層が完了するのである。
【0011】
本発明では上記真空積層工程後、真空状態を解放した状態で、かかる基板1とフィルム状樹脂2の積層板をラミネーターロール4又は平面プレス装置4′により加熱加圧処理する必要があり、かかる加熱加圧処理により基板の凹凸に起因する積層表面の凹凸を平滑にすることができ、後工程である回路形成時の密着不良をなくすことができるのである。該ラミネーターロール4又は平面プレス装置4′による加熱加圧処理は、真空積層の後、真空状態を解放した状態であれば、どの工程で行われてもよいが、特にはラミネーターロール4又は平面プレス装置4′を真空積層工程の次工程として設置し、加熱加圧処理を行うことが好ましい。
【0012】
かかるラミネーターロールによる加熱加圧処理条件は、圧力1〜10kg/cm2であることが好ましく、特に好ましくは5〜10kg/cm2である。温度は20〜200℃であることが好ましく、特に好ましくは130〜150℃である。又、平面プレス装置4′による加熱加圧処理条件は、圧力1〜50kg/cm2であることが好ましく、特に好ましくは20〜30kg/cm2である。温度は20〜200℃であることが好ましく、特に好ましくは100〜150℃である。
【0013】
更に本発明では、図3、図4に示す如く、上記の真空積層装置において、上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2及び下部プレート6の膜体8と基板1の間に、更に必要に応じ上下ラミネーターロール4と基板1とフィルム状樹脂2の積層体の間、平面プレス装置4′の上下プレスプレートと基板1とフィルム状樹脂2の積層体の間に、それぞれフィルム13、14が設けられ、特には該フィルム13、14が連続走行可能なフィルムであることが好ましい。ここで、図3、図4中の15及び16はフィルム13、14を連続走行させるためのフィルムの巻だしロールと巻き取りロールである。
【0014】
フィルム13及び14は特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、フッ素化オレフィンフィルムのいずれかであることが好ましい。膜厚は10〜100μmであることが好ましく、更には20〜50μmが好ましい。
【0015】
上記積層装置を用いて基板1とフィルム状樹脂2を積層する場合、回路基板への追従性の向上やマイクロボイド発生の抑制を行うために、積層時の温度を5〜120℃、好ましくは70〜100℃で行うことが好ましいが、かかる温度で積層を行うと、フィルム状樹脂端部から樹脂成分が滲みだしてくるが、本発明では、かかるフィルム13及び14を設けることにより、かかる滲みだした樹脂成分をフィルム13及び14に付着させ、該フィルム13及び14を取り除くことにより、良好な回路基板が形成できるのである。
【0016】
上記フィルム13及び14は、必要に応じて、使用後は汚染部分を取り除き再利用することもできるし、又、汚染部分を取り除く工程を設け、回転式に連続に供給して再利用することもできる。
【0017】
尚、本発明では、上記フィルム状樹脂2は特に制限されないが、特に絶縁材料である時に有用であり、かかるフィルム状樹脂としては、主にエポキシ樹脂からなる熱硬化型樹脂組成物、又は高分子有機ポリマー、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤からなる感光性樹脂組成物と支持体フィルムからなることが好ましい。
【0018】
支持体フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムや、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム等が挙げられる。
【0019】
かくして本発明は、凹凸を有する基板1とフィルム状樹脂2を積層するに際して、真空積層後、真空状態を解放した状態でラミネーターロール4又は平面プレス装置4′により加熱加圧処理を施すため、フィルム状樹脂の追従性がよく、更に積層板の表面平滑性に優れるので、多層回路基板を製造するためのビルドアップ工法に非常に有用な積層方法である。
【0020】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
基本例
図1に示す如き真空積層装置3を用い、基板1とフィルム状樹脂2の積層を行った。基板1は凹凸段差が35μmの回路基板で、フィルム状樹脂は熱硬化型樹脂組成物層(厚さ45μm)とポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)からなる積層体で、熱硬化型樹脂組成物層面が基板に接している。
【0021】
下部プレート6を持ち上げ、上部プレート5と密封係合して、2hpaまで真空状態にし、50秒後上部より大気を中に入れて真空を解放し、基板1とフィルム状樹脂2の積層を行った(積層時の温度は95℃であった。)。その後、引き続いて、真空状態を解放した状態でラミネーターロール4により、温度140℃、圧力5.5kg/cm2、搬送速度0.5m/minの条件で加熱加圧処理を行った。得られた回路基板は、追従性に優れ、マイクロボイドの発生しない回路基板で、更に、回路の凹凸段差が3μm以下という非常に表面平滑性に優れたものであり、上記操作を繰り返し行い、多層回路基板を形成しても密着性や追従性に劣るものは得られなかった。又、図2に示す如く真空積層後、引き続いて、真空状態を解放した状態で平面プレス装置4′により、温度130℃、圧力20kg/cm2の条件で加熱加圧処理を行った。得られた回路基板は追従性に優れ、マイクロボイドの発生しない回路基板で、更に、回路の凹凸段差が2μm以下という非常に表面平滑性に優れたものであり、上記操作を繰り返し行い、多層回路基板を形成しても密着性や追従性に劣るものは得られなかった。
【0022】
実施例1
基本例において、真空積層装置3として、図3、図4に示す如き真空積層装置3を用いた以外は同様に行い、回路基板を製造した。得られた回路基板は、追従性に優れ、マイクロボイドの発生しない回路基板で、更に、回路の凹凸段差がラミネーターロール処理の場合3μm以下、平面プレス装置処理の場合2μm以下という非常に表面平滑性に優れたものであり、上記操作を繰り返し行い、多層回路基板を形成しても密着性や追従性に劣るものは得られなかった。
【0023】
又、上記積層装置を用いることにより、レジスト端部より滲みだす樹脂成分をフィルム13及び14が連続的に取り除くため、積層操作を繰り返し行っても基板を汚染することなく、追従性に優れ、マイクロボイドの発生しない回路基板を得ることができた。
【0024】
比較例1
基本例において、基板1とフィルム状樹脂2を真空積層した後、真空状態を解放した状態でラミネーターロール4又は平面プレス装置4′による加熱加圧処理を行わなかった以外は同様に行い、回路基板を製造した。得られた回路基板は、追従性については優れるものの、回路の凹凸段差が10μmで、表面平滑性の劣るものであり、上記操作を繰り返し行い、多層回路基板を形成した場合では密着性や追従性に劣るものが得られた。
【0025】
比較例2
基本例において、真空積層装置3の代わりに、ラミネーターロールを用いて温度140℃、圧力5.5kg/cm2、搬送速度0.5m/minの条件で基板1とフィルム状樹脂2の積層を行なった以外は同様に行い、回路基板を製造した。得られた回路基板は、積層後更にラミネーターロールで加熱加圧処理を行った場合、追従性不足で多数のマイクロボイドが発生しており、回路凹凸段差も10〜15μmと大きなものであった。又は積層後更に平面プレス装置で加熱加圧処理を行った場合、回路段差は3μm以下と優れているが、追従性不足で多数のマイクロボイドが発生しているものであった。
【0026】
【発明の効果】
本発明の積層方法は、凹凸を有する基板1とフィルム状樹脂2を積層するに際して、真空積層後、真空状態を解放した状態で、ラミネーターロール4又は平面プレス装置4′により加熱加圧処理を施す積層方法において、該真空積層装置3として、上部プレート5及び下部プレート6を有し、上部プレート5及び下部プレート6の対向面にそれぞれ膜体7、8を載置し、上部プレート5の膜体7と下部プレート6の膜体8の間に狭持されるように凹凸を有する基板1とフィルム状樹脂2とを、上部プレート5の膜体7とフィルム状樹脂2との間及び下部プレート6の膜体8と基板1との間にそれぞれフィルム13、14を介在させて載置し、真空状態にした後、積層する真空積層装置を使用するため、フィルム状樹脂の追従性がよく、更に積層板の表面平滑性に優れるので、多層回路基板を製造するためのビルドアップ工法に非常に有用な積層方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の積層装置の主要部の基本的構造図である。
【図2】
本発明の積層装置の主要部の基本的構造図である。
【図3】
本発明の積層装置の主要部の構造図である。
【図4】
本発明の積層装置の主要部の構造図である。
【符号の説明】
1・・・基板
2・・・フィルム状樹脂
3・・・真空積層装置
4・・・ラミネーターロール
4′・・・平面プレス装置
5・・・上部プレート
6・・・下部プレート
7・・・上部プレートの膜体
8・・・下部プレートの膜体
9・・・シール
10・・・真空引き吸引口
11・・・金属平面プレート
12・・・油圧シリンダー
13・・・上部プレートの膜体とフィルム状樹脂の間に設けたフィルム
14・・・下部プレートの膜体と基板の間に設けたフィルム
15・・・フィルム巻だしロール
16・・・フィルム巻き取りロール
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-05-14 
結審通知日 2004-05-18 
審決日 2004-05-31 
出願番号 特願平10-332043
審決分類 P 1 112・ 161- YA (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 康秀  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 松井 佳章
澤村 茂実
鴨野 研一
芦原 ゆりか
登録日 2000-03-31 
登録番号 特許第3051381号(P3051381)
発明の名称 積層方法  
代理人 西藤 征彦  
代理人 萼 経夫  
代理人 西藤 征彦  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 小野塚 薫  
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