ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B24B |
---|---|
管理番号 | 1133150 |
審判番号 | 訂正2006-39001 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-03-07 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2006-01-06 |
確定日 | 2006-02-17 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2957571号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第2957571号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.請求の要旨 本件審判請求の要旨は、特許第2957571号発明(平成10年8月27日特許出願、平成11年7月23日設定登録、平成13年3月28日訂正請求)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記(1)〜(3)のとおり訂正することを求めるものである。 (1)特許請求の範囲の請求項1の記載を、 「シリコン、石英、セラミック等の硬質材料の切断、スライス用に用いられるソーワイヤであって、径サイズが0.06〜0.32mmφで、ワイヤ表面から15μmの深さまでの 内部応力が0±40kg/mm2 (+側は引張応力、-側は圧縮応力)の範囲に設定されていることを特徴とするソーワイヤ用ワイヤ。」から 「シリコン、石英、セラミック等の硬質材料の切断、スライス用に用いられるソーワイヤであって、径サイズが0.06〜0.32mmφで、ワイヤ表面から15μmの深さまでの層除去の前後におけるソーワイヤの曲率変化から求めた内部応力が0±40kg/mm2 (+側は引張応力、-側は圧縮応力)の範囲に設定されていることを特徴とするソーワイヤ用ワイヤ。」と訂正する。(以下、「訂正事項1」という。) (2)段落【0005】の記載を、 「【課題を解決するための手段】 本発明は前記した課題を達成するため、内部応力を数値化し且つその範囲を制限することにより、実使用上におけるワイヤへの負荷が大きくなっても、スライス面精度を低下させないソーワイヤ用のワイヤを完成したものである。 具体的には、ワイヤの径サイズが0.06〜0.32mmφで、ワイヤ表面から15μmの深さまでの 内部応力を0±40kg/mm2 (+側は引張応力、-側は圧縮応力)の範囲に設定してあることを特徴とする。」から 「【課題を解決するための手段】 本発明は前記した課題を達成するため、内部応力を数値化し且つその範囲を制限することにより、実使用上におけるワイヤへの負荷が大きくなっても、スライス面精度を低下させないソーワイヤ用のワイヤを完成したものである。具体的には、ワイヤの径サイズが0.06〜0.32mmφで、ワイヤ表面から15μmの深さまでの層除去の前後におけるソーワイヤの曲率変化から求めた内部応力を0±40kg/mm2 (+側は引張応力、-側は圧縮応力)の範囲に設定してあることを特徴とする。」と訂正する。(以下、「訂正事項2」という。) なお、請求人は、 平成13年3月28日付け訂正請求に係る訂正明細書の段落【0007】には、 「尚、内部応力は層除去法により数値化した。即ち、ワイヤの片面を所定厚さにエッチングして除去(図3参照)し、そのエッチング前後におけるワイヤの曲率変化(図2参照)を測定した。この時、中立軸に対するエッチング除去部分の曲げモーメントとエッチング前後のワイヤの曲率の変化から計算される曲げモーメントが等しいことから、エッチング除去部分の応力を算出した。 このワイヤ表面から15μmの深さまでの内部応力が0±40kg/mm2であるワイヤは、製造時における最終伸線工程において、適切な潤滑剤、ダイススケジュール、ダイスの種類、形状を設定することにより得られる。例えば、エマルジョンタイプの湿式潤滑剤中において、各減面率を15〜20%に設定したダイスを20枚前後通過させる。この時ダイスのベアリング長さをその径の30乃至60%、リダクション角度を8乃至12°とすることで得られる。 さらには、最終伸線後のワイヤに適切な熱処理や機械的な繰り返し曲げを施すことによっても得られる。例えば、ワイヤを温度500℃付近で保持したり、6〜12mmφの矯正ローラーを用いて繰り返し曲げを与える方法がある。」と記載されているが、上記記載中の下線部分である「μm」が、異議2000-71370に係る特許決定公報中の特許訂正明細書には「m」と記載されていることから、 段落【0007】の記載を、誤記の訂正を目的として、 「尚、内部応力は層除去法により数値化した。即ち、ワイヤの片面を所定厚さにエッチングして除去(図3参照)し、そのエッチング前後におけるワイヤの曲率変化(図2参照)を測定した。この時、中立軸に対するエッチング除去部分の曲げモーメントとエッチング前後のワイヤの曲率の変化から計算される曲げモーメントが等しいことから、エッチング除去部分の応力を算出した。このワイヤ表面から15μmの深さまでの内部応力が0±40kg/mm2であるワイヤは、製造時における最終伸線工程において、適切な潤滑剤、ダイススケジュール、ダイスの種類、形状を設定することにより得られる。例えば、エマルジョンタイプの湿式潤滑剤中において、各減面率を15〜20%に設定したダイスを20枚前後通過させる。この時ダイスのベアリング長さをその径の30乃至60%、リダクション角度を8乃至12°とすることで得られる。さらには、最終伸線後のワイヤに適切な熱処理や機械的な繰り返し曲げを施すことによっても得られる。例えば、ワイヤを温度500℃付近で保持したり、6〜12mmφの矯正ローラーを用いて繰り返し曲げを与える方法がある。」と訂正することを求めている。 しかしながら、平成13年3月28日付け訂正請求に係る訂正明細書の段落【0007】の記載は、本件訂正請求で求める段落【0007】の訂正後の記載とまったく同一であるから、段落【0007】の記載に係る訂正事項は存在しない。 2.当審の判断 上記訂正事項1、2について、以下検討する。 願書に最初に添付した明細書の段落【0007】には、「尚、内部応力は層除去法により数値化した。即ち、ワイヤの片面を所定厚さにエッチングして除去(図3参照)し、そのエッチング前後におけるワイヤの曲率変化(図2参照)を測定した。・・・」と記載されている。そうすると、訂正事項1、2は、上記の記載に基づき、内部応力が層除去の前後におけるソーワイヤの曲率変化から求めたものであることを明確化するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第1項第3号に掲げる事項を目的とし、同条第2項及び第3項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ソーワイヤ用ワイヤ (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】シリコン、石英、セラミック等の硬質材料の切断、スライス用に用いられるソーワイヤであって、径サイズが0.06〜0.32mmφで、ワイヤ表面から15μmの深さまでの層除去の前後におけるソーワイヤの曲率変化から求めた内部応力が0±40kg/mm2(+側は引張応力、-側は圧縮応力)の範囲に設定されていることを特徴とするソーワイヤ用ワイヤ。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ソーマシンに使われるソーワイヤ用のワイヤに係わり、その用途はシリコン、石英、セラミック等の硬質材料の切断、スライス用に用いられるものである。 【0002】 【従来の技術】 ソーワイヤは、スライス面を平滑にすること、またスライス厚さを均一に加工する必要性から、ソーワイヤには高精度の線径公差及びソーマシン内で真直な姿勢を維持する性状が求められる。この点、従来のソーワイヤには、砥粒混入液を流しながらワイヤでスライスするタイプのもの、予めダイヤモンド等の砥粒を固着したワイヤでスライスするタイプのもの、その他がある。そして、通常その径は0.06〜0.32mmφで、例えば、1〜6kgの張力下で遊離砥粒を介して、シリコン、石英、セラミック等の硬質材料のスライスを行っている。高引張り強度及び耐摩耗性の面から通常は高炭素鋼スチールワイヤが使用され、また、高精度な線径公差が必要なことから、また、伸線性の面からも、その表面には銅、亜鉛及びその合金のプラスをメッキしたスチールワイヤが多く用いられている。 【0003】 近年、経済的な面から、新線の供給量を減少させたり、使用ワイヤを再使用する等、ソーワイヤ1本当たりのスライス量を増す要請がある。このようなワイヤへの負荷を大きくした状況下で使用されたソーワイヤはフリーサークル径が小さくなったり、場合によっては小波状となることがある。フリーサークル径が極端に小さくなったソーワイヤ、また、特に小波状となったソーワイヤは、ソーマシン内で一定のワイヤ張力下においても、完全な真直姿勢を維持出来ずにスライス面精度を低下させる問題がある。そして、このようなスライス面精度を低下させるフリーサークル径の減径及び小波の発生は、主にワイヤの偏磨耗とワイヤ表面の内部応力に起因することをつきとめた。すなわち、図1に示す通り、通常、ワイヤ表面は引っ張り応力となっているため、ワイヤが偏磨耗すると磨耗側を外側にして湾曲するためであることを確認した。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 解決しようとする課題は、ワイヤへの負荷を大きくした状況下で使用されても、使用後にフリーサークル径が極端に小さくなったり、又、小波状となるようなことがなく、ソーマシン内で真直な姿勢を維持可能なソーワイヤ用ワイヤを提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】 本発明は前記した課題を達成するため、内部応力を数値化し且つその範囲を制限することにより、実使用上におけるワイヤへの負荷が大きくなっても、スライス面精度を低下させないソーワイヤ用のワイヤを完成したものである。具体的には、ワイヤの径サイズが0.06〜0.32mmφで、ワイヤ表面から15μmの深さまでの層除去の前後におけるソーワイヤの曲率変化から求めた内部応力を0±40kg/mm2(+側は引張応力、-側は圧縮応力)の範囲に設定してあることを特徴とする。 【0006】 本発明におけるワイヤの径サイズは0.06〜0.32mmφであるが、通常使用されるワイヤサイズを対象とする。そして、内部応力を求める深さをワイヤ表面から15μmの深さまでに設定し得たのは、実使用における使用済みワイヤの片側最大磨耗が15μmであることを確認したことによるものである。また、内部応力値の範囲は、実使用において使用線に小波の発生がなかったことを確認したことによるものである。また、この範囲では、従来例に比較し、使用線のフリーサークル径が明らかに大きくなっていることを確認した。 【0007】 尚、内部応力は層除去法により数値化した。即ち、ワイヤの片面を所定厚さにエッチングして除去(図3参照)し、そのエッチング前後におけるワイヤの曲率変化(図2参照)を測定した。この時、中立軸に対するエッチング除去部分の曲げモーメントとエッチング前後のワイヤの曲率の変化から計算される曲げモーメントが等しいことから、エッチング除去部分の応力を算出した。このワイヤ表面から15μmの深さまでの内部応力が0±40kg/mm2であるワイヤは、製造時における最終伸線工程において、適切な潤滑剤、ダイススケジュール、ダイスの種類、形状を設定することにより得られる。例えば、エマルジョンタイプの湿式潤滑剤中において、各減面率を15〜20%に設定したダイスを20枚前後通過させる。この時ダイスのベアリング長さをその径の30乃至60%、リダクション角度を8乃至12°とすることで得られる。さらには、最終伸線後のワイヤに適切な熱処理や機械的な繰り返し曲げを施すことによっても得られる。例えば、ワイヤを温度500℃付近で保持したり、6〜12mmφの矯正ローラーを用いて繰り返し曲げを与える方法がある。 【0008】 【発明の実施の形態】 本発明のソーワイヤ用ワイヤの実施の1形態を説明する。ワイヤは、径サイズが0.06〜0.32mmφで、ワイヤ表面から15μmの深さまでの内部応力を0±40kg/mm2の範囲に設定してある。 【0009】 <具体例1> ▲1▼径サイズ:0.18mmφ ▲2▼内部応力(平均値):35kg/mm2 ▲3▼フリーサークル径:240mmφ <具体例2> ▲1▼径サイズ:0.18mmφ ▲2▼内部応力(平均値):32kg/mm2 ▲3▼フリーサークル径:180mmφ <具体例3> ▲1▼径サイズ;0.18mmφ ▲2▼内部応力(平均値):30kg/mm2 ▲3▼フリーサークル径:370mmφ <具体例4> ▲1▼径サイズ:0.18mmφ ▲2▼内部応力(平均値):25kg/mm2 ▲3▼フリーサークル径:600mmφ <具体例5> ▲1▼径サイズ:0.18mmφ ▲2▼内部応力(平均値):23kg/mm2 ▲3▼フリーサークル径:1000mmφ 【0010】 【表1】 ![]() 【0011】 上記の表1により、本発明の具体例1〜5のワイヤと従来の比較例1〜5のワイヤが、そのワイヤの実使用後のワイヤ形状について、本発明の具体例1〜5のワイヤでは、ワイヤ表面の内部応力が小さく、使用線のフリーサークル径及び小波等についての直線形状が著しく向上していることがわかる。 【0012】 【発明の効果】 A.請求項1により、ワイヤ表面から15μmの深さまでの内部応力を0±40kg/mm2の範囲に設定してあるため、ワイヤへの負荷を大きくした状況下で使用しても、使用後にフリーサークル径が極端に小さくなったり、又、小波状となるようなことがなく、ソーマシン内で真直な姿勢を維持することができる。また、その表面の内部応力が小さいことにより、荷重-伸び曲線における弾性変形領域が大きくなる。この面からも、ワークとの接触による曲げ応力に対しても癖がつきにくい特性を有する。 【図面の簡単な説明】 【図1】ワイヤ断面の内部応力分布図。 【図2】エッチング前後のワイヤ形状の変化を示す概略図。 【図3】エッチング後のワイヤ断面形状を示す断面図。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2006-02-07 |
出願番号 | 特願平10-242066 |
審決分類 |
P
1
41・
853-
Y
(B24B)
|
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
西川 恵雄 |
特許庁審判官 |
佐々木 正章 鈴木 孝幸 |
登録日 | 1999-07-23 |
登録番号 | 特許第2957571号(P2957571) |
発明の名称 | ソーワイヤ用ワイヤ |
代理人 | 角田 嘉宏 |
代理人 | 角田 嘉宏 |