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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G01N
管理番号 1133159
審判番号 無効2005-80242  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-08-17 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-08-08 
確定日 2006-03-06 
事件の表示 上記当事者間の特許第3670959号発明「ガス検出装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3670959号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3670959号の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という)についての出願は、平成5年12月28日に出願した特願平5-336674号の一部を平成12年12月28日に新たな特許出願としたものであって、平成17年4月22日にその発明について特許の設定登録がされたところ、平成17年8月8日付けの審判請求書で無効審判の請求がされたものである。

2.請求人の主張
請求人は、証拠方法として甲第1-42号証を提出し、次の無効理由A,B,Cを主張し、本件特許を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求めている。

無効理由A
本件特許発明は、分割前の原特許出願に含まれていた発明とは技術的意義が異なり、平成6年改正前の特許法第44条第2項の適用(出願日の遡及効果)を受けることができず、原特許出願の公開公報から新規性もしくは進歩性を欠くから、特許法第123条第1項第2号により無効にすべきものである。

無効理由B
特許請求の範囲の記載は不明確であるから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に違反するから、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。

無効理由C
本件特許は、(i)甲第7号証の1と甲第8号証の1との組合せ、もしくは(ii)甲第7号証の1と甲第9号証の1との組み合わせ、もしくは(iii)甲第7号証の1と甲第8号証の1と甲第9号証の1と甲第10号証の1と甲第11号証の1と甲第29号証-甲第36号証の組み合わせから進歩性を欠き、特許法第29条第2項に違反するため、特許法第123条第1項2号に違反し、無効とすべきものである。

3.被請求人の主張
これに対し、被請求人は、本件特許は特許法第44条第1項の分割要件を満足するものであり、出願日の遡及が認められるものであると主張し、特許請求の範囲の記載は、平成2年改正法第36条第5項第2号の規定に違反するものでないと主張し、本件特許は、特許法第29条第2号の規定に該当するものでないと主張し、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。

4.無効理由Cについての検討
便宜上、無効理由Cについて最初に検討する。

4.1 本件特許発明
本件特許発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】ヒータ兼用電極コイルの中心透孔内に貫挿するよう検知電極を配置するとともに、ガス感応金属酸化物半導体内にヒータ兼用電極コイルと検知電極とを埋設して構成されたガスセンサを用い、ガス感応金属酸化物半導体外に導出したヒータ兼用電極コイルの両端間にマイナス極を回路のグランドに接続した単一の直流電源から供給されるヒータ電圧をグランドをマイナスとして印加するとともに、ヒータ電圧を制御することで高温状態期間と低温状態期間とを交互に作り出すものであって、ガス感応金属酸化物半導体外に導出した検知電極の一端に負荷抵抗を介して上記直流電源のプラス極を接続し、上記直流電源のマイナス極に接続されているヒータ兼用電極コイルの一端をグランドとして上記検知電極の電圧をガス検出信号として取り出すことを特徴とするガス検出装置。」

4.2 甲第1-42号証に含まれる刊行物
請求人が提出した甲第1-42号証には、次の刊行物が含まれている。

甲第7号証の1(以下で「刊行物1」という):パンフレット「tech 1
NEWLY-DEVELOPED GAS SENSORS "SB SERIES" 」version 2 1993年9月 エフアイエス株式会社発行 第1,2頁

甲第9号証の1(以下で「刊行物2」という):パンフレット「tech 5
LOW CURRENT(25mA) DRIVING CIRCUIT FOR FIS GAS SENSOR "SB SERIES" 」 version 2 1993年 9月 エフアイエス株式会社発行 第1,2頁

甲第30号証(以下で「刊行物3」という):特開昭63-121743号公報

そして、刊行物1,2に係るパンフレットが、本件の原出願の出願日である平成5年(1993年)12月28日の前に外国において頒布された刊行物であることは、次のaから認められ、bと整合する。
a)刊行物1,2の末尾にそれぞれ、「 version 2.September 1993」,「version2. September, 1993」という日付印刷があること。
b)刊行物1,2の発行者でもある本件被請求人が提出した乙第1号証「報告書 FIS英文技術資料作成と配布時期の経緯について」(村上伸明氏署名押印付き)の第2頁第2-4行において、報告者である村上伸明氏が、「甲第7号証(tech 1)および甲第9号証(tech 5)は可燃性ガスや溶剤を検出対象としたSBセンサに関する技術資料であり、1993年10月にドイツのニュルンベルグで開催されたSENSOR’93展示会にて頒布したものです。」と報告していること。

刊行物1には、日本語訳すると、
「概論 SBセンサは金属酸化物半導体ガスセンサである。ガス検知原理は、ガスが酸化物表面に接触すると、金属酸化物の抵抗値が変化するというものである。金属酸化物としては主として焼結スズ酸化物(SnO2)が用いられている。
図1はセンサ本体を示す。ヒータコイルがビーズ形状の酸化物内に埋設され、電極リードワイヤがコイル内を通過する。このコイルはヒータとして機能するのみでなく、リードワイヤに対する対向電極(opposed electrode)として機能する。このセンサ本体は図2に示されるハウジングに固定される。
一般に半導体ガスセンサはガス感度を増すために加熱する必要があり、このため内蔵ヒータが大きな電力を消費する。SBセンサでは遙かに小さな消費電力を実現し、在来のガスセンサの15%である。SBセンサではヒータコイルと電極の双方に直径20μの極細貴金属ワイヤを使用する。さらにセンサ本体は図1に示すように極めて小さく製造されている。」(第1頁左欄第9行-同頁中央欄第14行)、
「標準回路 図4はSBシリーズの標準回路を示す。センサ抵抗の変化をセンサ抵抗(Rs)と直列の固定もしくは可変の抵抗値(RL)の出力電圧として得ることができる。大きな出力電圧が得られるので、複雑な増幅回路が不要で、応用回路のコストを削減できる。標準的な回路条件を表1に示す。 注意:極性が必須(NOTE: Polarity is essenntial)」(第2頁第20-30行)、
が記載されており、
これらの記載から、SBガスセンサは、ヒータ兼用電極コイル[第1頁左欄第22-25行に「このコイルはヒータとして機能するのみでなく、リードワイヤに対する対向電極として機能する」と記載されているとおりである]の中心透孔内に貫挿するよう検知電極を配置するとともに、ガス感応金属酸化物半導体内にヒータ兼用電極コイルと検知電極とを埋設して構成されたガスセンサであること、図1からみて、SBガスセンサが、高さ0.5mmで、横幅0.3mmのラグビーボール状のものであることが明らかである。 そして、第4図及び表1(Table 1)には、ガス感応金属酸化物半導体外に導出したヒータコイルに電源(起電力Vc)のマイナス側をグランド電位として接続し、プラス側を負荷抵抗の一端に接続し、負荷抵抗両端間の電圧(VRL)をガス検出信号として取り出すようにする回路と、ヒータ電極間にヒータ電圧(VH)を印加する回路からなる構成が示されている。

刊行物2には、日本語訳すると
「概論 SBシリーズ半導体ガスセンサは小サイズ、低消費電力(標準回路で120mW)及び種々のガスへの高感度という独特の設計を備えている。このセンサと新開発のパルス駆動法を用いた駆動回路と組み合わせると、センサの応用(application)を5Vの電圧下で、僅か25mAの消費レベルで行うことができる。図1はSBシリーズのための……典型的な回路の設計図を示す(Fig1.shows a diagram of a typical circuit ……for the SB series.)。この設計図においてCMOSタイマ(IC555)は図2に示された5Vパルス電圧を得るために用いられ、そして、0.9mV電圧での連続稼働(continuous operation)と同じ効果をもたらす。」(第1頁左欄第1-末行)、
が記載され、
第2頁に「応用1:バッテリ駆動による回路(Battery operated circuit)」が示され、「応用1」の回路中にSBガスセンサや、抵抗両端間の電位差VRLが明示されている。
そして同頁に「応用2:自動空気品質制御システム」(回路図である)が示され、「注意(Remarks):SBガスセンサとIC-02マイクロコンピュータを空気品質制御のために用いた例。……」と注意書きがされており、ヒータ兼用電極コイルの一端(1)がグランド(GND)に接続され、検出電極の一端(2)の電圧を取り出すものが示されている。

4.3 刊行物2記載の発明
刊行物2の記載と、「応用1」及び「応用2」の回路図示からみて、刊行物2には、
SBガスセンサを用い、SBガスセンサ外に導出したヒータ兼用電極コイルの一端(1)を、そのマイナス極を回路のグランドに接続してなる単一の直流電源のマイナス極と接続するとともに、SBガスセンサ外に導出した検知電極の一端(2)に負荷抵抗を介して上記直流電源のプラス極を接続して、上記検知電極(2)の電圧をガス検出信号として取り出すものであって、 ヒータ電圧をトランジスタを用いて制御すると共に、前記単一の直流電源から供給されるヒータ電圧をヒータ兼用電極コイルの一端(1)をグランドをマイナスとして印加するようになっているガス検出装置、
の発明が記載されている。(以下で「刊行物2記載の発明」という)

4.4 対比・検討
本件特許発明と、刊行物2記載の発明を対比すると、両者は、
ヒータ兼用電極コイルを有するガスセンサを用い、該ガスセンサ外に導出したヒータ兼用電極コイルの両端間にマイナス極を回路のグランドに接続した単一の直流電源から供給されるヒータ電圧をグランドをマイナスとして印加するとともに、ヒータ電圧を制御するものであって、ガス感応金属酸化物半導体外に導出した検知電極の一端に負荷抵抗を介して上記直流電源のプラス極を接続し、上記直流電源のマイナス極に接続されているヒータ兼用電極コイルの一端をグランドとして上記検知電極の電圧をガス検出信号として取り出すことを特徴とするガス検出装置、
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本件特許発明のガスセンサが「ヒータ兼用電極コイルの中心透孔内に貫挿するよう検知電極を配置するとともに、ガス感応金属酸化物半導体内にヒータ兼用電極コイルと検知電極とを埋設して構成されたガスセンサ」であるのに対し、刊行物2記載の発明のガスセンサは、ヒータ兼用電極コイルを有するSBガスセンサである点。

相違点2
本件特許発明は、「ヒータ電圧を制御することで高温状態期間と低温状態期間とを交互に作り出す」のに対し、刊行物2記載の発明は、ヒータ電圧をトランジスタで制御し、SBガスセンサのヒータを加熱しているものである点。

前記相違点について検討すると、
相違点1について
刊行物2に記載・図示されたSBガスセンサと刊行物1に記載・図示されたSBガスセンサは、 "SB SERIES" という表記で同一であり、回路記号も同一であり、さらに刊行物2の「応用1」の検出電圧(VRL)の取り出し方と一致するところ、刊行物2には「応用1」の回路でも「応用2」の回路でもSBガスセンサの駆動及び検出が可能であることが記載・図示されているから、刊行物2の「応用1」ないし「応用2」の回路に使用されるSBガスセンサとして刊行物1に記載されたSBガスセンサを使用することに困難性はなく、相違点1は当業者が容易になしえたことである。

相違点2について
刊行物3には、刊行物1および刊行物2に記載図示されたSBガスセンサと同様の、ヒータ兼用電極コイル16の中心透孔内に貫挿するよう線状の検知電極14を配置して、該ヒータ兼用電極コイル16と、検知電極14の間を金属酸化物半導体18で充たしてなる構造のガスセンサ(第5図及び第2頁下段左欄第11-13行参照)、の使用方法として、「金属酸化物半導体の抵抗値の変化を利用したガスセンサの温度を高温域と低温域とに交互に変化させ、低温域でのガスセンサ出力から被検出ガスを検出する方法」(第1頁下段左欄第4-7行)が記載されており、タイマ回路を内蔵した制御回路40を用い、直流ヒータ電源32の電圧を最初の10秒間はスイッチを閉じてセンサを高温域に加熱し、次の10秒間はスイッチを解放して電圧を印加しないようにして、センサを低温域に保持する装置が記載されており(第6図及び第2頁下段右欄第7行-15行)、刊行物3のセンサと同様のSBガスセンサを使用した刊行物2記載の発明において、ヒータ電圧をトランジスタで制御してSBガスセンサのヒータを加熱していることは、高温状態を作り出すことであると解されるところ、ヒータ電圧をトランジスタで制御して高温状態を作り出せる以上、より低い電力効果もトランジスタの制御により作り出せることは当業者にとって明らかであり、したがって刊行物2記載の発明において、ヒータ電圧を制御することで高温状態期間と低温状態期間とを交互に作り出すようにすることは、当業者が容易に想到できた事項である。

したがって、本件特許発明は、刊行物1ないし3に記載された発明及び従来周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

5.むすび
以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、刊行物1ないし3に記載された発明および従来周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。
したがって、無効理由A,Bについての検討・判断結果にかかわらず、本件特許は無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 (備考)本件について、審理終結通知(発送日平成18年1月4日)の後、本件請求人は審理再開申立(平成18年1月16日に申立)をしたが、審理再開の必要は、認められない。

 
審理終結日 2005-12-21 
結審通知日 2006-01-04 
審決日 2006-01-24 
出願番号 特願2000-403097(P2000-403097)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 黒田 浩一  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 櫻井 仁
菊井 広行
登録日 2005-04-22 
登録番号 特許第3670959号(P3670959)
発明の名称 ガス検出装置  
代理人 森 厚夫  
代理人 西川 惠清  
代理人 塩入 明  
代理人 塩入 みか  

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