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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1133373
審判番号 不服2005-2839  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-17 
確定日 2006-03-16 
事件の表示 平成10年特許願第 44562号「投影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月27日出願公開、特開平10-288757〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年2月10日の出願(優先権主張平成9年2月13日)であって、平成17年1月5日付で平成16年8月30日付手続補正が補正却下されるとともに、同日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年2月17日付で拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成17年3月18日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。

2.平成17年3月18日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年3月18日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】複数の画像表示素子と、光源からの光で前記複数の画像表示素子を照明する照明光学系とを有する投影装置であって、前記照明光学系が、光源からの光を収斂光に変換する楕円ミラーと、前記収斂光を平行な状態に変換する凹レンズと、正の屈折力を有する複数の第1レンズを含み、前記凹レンズからの光を複数の光束に分割する第1レンズアレイと、前記第1レンズアレイの集光位置近傍に、前記複数の第1レンズに対応して配置された、正の屈折力を有する複数の第2レンズを有する第2レンズアレイと、前記第2レンズアレイからの複数の光束各々を受光する複数の受光部を含み、前記複数の光束各々を特定の方向に偏光した直線偏光光に変換する偏光変換素子アレイとを有しており、前記凹レンズの前記光源側の面が平面であり、前記凹レンズの前記第1レンズ側の面が凹面であることを特徴とする投影装置。」
とする補正を含むものである。

上記補正は、集光光学系、コリメート光学系をさらに具体的に限定しようとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(2)刊行物記載の発明
原査定の拒絶理由に引用したこの出願前公知の引用例1:特開平8-304739号公報には、下記の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、偏光方向を揃えた偏光光を用いて矩形の照明領域などを均一に照明する偏光照明装置に関するものである。また、本発明は、この偏光照明装置から出射された偏光光を液晶ライトバルブにより変調して映像をスクリーン上に拡大表示する投写型表示装置に関するものである。」
「【0028】(実施例1)図1は、実施例1の偏光照明装置の要部を平面的にみた概略構成図である。本例の偏光照明装置1はシステム光軸Lに沿って配置した光源部2、第1のレンズ板3、第2のレンズ板4から大略構成されている。光源部2から出射された光は、第1のレンズ板3により第2のレンズ板4内に集光され、第2のレンズ板4を通過する過程においてランダムな偏光光は偏光方向が揃った1種類の偏光光に変換され、照明領域5に至るようになっている。
【0029】光源部2は、光源ランプ201と、放物面リフレクター202から大略構成されている。光源ランプ201から放射されたランダムな偏光光は、放物面リフレクター202によって一方向に反射されて、略平行な光束となって第1のレンズ板3に入射される。ここで、放物面リフレクター202に代えて、楕円面リフレクター、球面リフレクターなども用いることができる。光源光軸Rはシステム光軸Lに対して一定の角度だけ傾斜させてある。」、
「【0030】図2には第1のレンズ板3の外観を示してある。・・・第1のレンズ板3に入射した光は、矩形集光レンズ301の集光作用により、システム光軸Lと垂直な平面内に矩形集光レンズ301の数と同数の集光像を形成する。この複数の集光像は光源ランプの投写像に他ならないため、以下では2次光源像と呼ぶものとする。
【0031】次に、再び図1を参照して本例の第2のレンズ板4について説明する。第2のレンズ板4は、集光レンズアレイ410、偏光分離プリズムアレイ420、λ/2位相差板430、及び出射側レンズ440から構成される複合積層体であり、
【0032】集光レンズアレイ410は第1のレンズ板3とほぼ同様な構成となっている。即ち、第1のレンズ板3を構成する矩形集光レンズ301と同数の集光レンズ411を複数配列したものであり、第1のレンズ板3からの光を集光する作用がある。集光レンズアレイ410は、インテグレータ光学系の第2のレンズ板に相当するものである。」、
「【0034】図3には偏光分離プリズムアレイ420の外観を示してある。この図に示すように、偏光分離プリズムアレイ420は、内部に偏光分離膜を備えた四角柱状のプリズム合成体からなる偏光ビームスプリッター421と、同じく内部に反射膜を備えた四角柱状のプリズム合成体からなる反射ミラー422とからなる対を基本構成単位とし、その対を平面的に複数配列(2次光源像が形成される平面内に配列される)したものである。集光レンズアレイ410を構成する集光レンズ411に対して1対の基本構成単位が対応するように規則的に配置されている。・・・
【0036】図1および図3を参照して説明すると、偏光分離プリズムアレイ420に入射したランダムな偏光光は偏光ビームスプリッター421により偏光方向の異なるP偏光光とS偏光光の2種類の偏光光に分離される。P偏光光は進行方向を変えずに偏光ビームスプリッター421をそのまま通過する。他方、S偏光光は偏光ビームスプリッター421の偏光分離膜423で反射して進行方向を約90度変え、隣接する反射ミラー422(対をなす反射ミラー)の反射面424で反射して進行方向を約90度変え、最終的にはP偏光光とほぼ平行な角度で偏光分離プリズムアレイ420より出射される。
【0037】偏光分離プリズムアレイ420の出射面には、λ/2位相差膜431が規則的に配置されたλ/2位相差板430が設置されている。すなわち、偏光分離プリズムアレイ420を構成する偏光ビームスプリッター421の出射面部分にのみλ/2位相差膜431が配置され、反射ミラー422の出射面部分にはλ/2位相差膜431は配置されていない。この様なλ/2位相差膜431の配置状態により、偏光ビームスプリッター421から出射されたP偏光光は、λ/2位相差膜431を通過する際に偏光面の回転作用を受けS偏光光へと変換される。他方、反射ミラー422から出射されたS偏光光はλ/2位相差膜431を通過しないので、偏光面の回転作用は一切受けず、S偏光光のままλ/2位相差板430を通過する。以上をまとめると、偏光分離プリズムアレイ420とλ/2位相差板430により、ランダムな偏光光は1種類の偏光光(この場合はS偏光光)に変換されたことになる。」、
「【0079】(実施例1の偏光照明装置を用いた投写型表示装置)図11には、実施例1ないし6の偏光照明装置のうち、図5に示した偏光照明装置100が組み込まれた投写型表示装置の例を示してある。・・・
【0081】この偏光照明装置100から出射された光束は、まず、青色緑色反射ダイクロイックミラー3401において、赤色光が透過し、青色光および緑色光が反射する。赤色光は、反射ミラー3402で反射され、第1の液晶ライトバルブ3403に達する。一方、青色光および緑色光のうち、緑色光は、緑色反射ダイクロイックミラー3404によって反射され、第2の液晶ライトバルブ3405に達する。
【0082】・・・すなわち、青色光は・・・出射側レンズ3410に導かれ、しかる後に、第3の液晶ライトバルブ3411に達する。ここで、第1乃至第3の液晶ライトバルブ3403、3405、3411は、それぞれの色光を変調し、各色に対応した映像情報を含ませた後に、変調した色光をダイクロイックプリズム3413(色合成手段)に入射する。ダイクロイックプリズム3413には、赤色反射の誘電体多層膜と青色反射の誘電体多層膜とが十字状に形成されており、それぞれの変調光束を合成する。ここで合成された光束は、投写レンズ3414(投写手段)を通過してスクリーン3415上に映像を形成することになる。」

(3)対比
本願補正発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
(イ)引用例1の「第1乃至第3の液晶ライトバルブ3403、3405、3411」,「偏光照明装置」,「投写型表示装置」,「楕円面リフレクター」,「矩形集光レンズ301」,「集光レンズアレイ410」,「偏光分離プリズムアレイ420」は、それぞれ本願補正発明の「複数の画像表示素子」,「画像表示素子を照明する照明光学系」,「投影装置」,「楕円ミラー」,「第1レンズアレイ」,「第2レンズアレイ」,「偏光変換素子アレイ」に相当する。
(ロ)引用例1には、「【0032】集光レンズアレイ410は・・・第1のレンズ板3を構成する矩形集光レンズ301と同数の集光レンズ411を複数配列したものであり、第1のレンズ板3からの光を集光する作用がある。」と記載されており、これから引用例1は、「前記複数の第1レンズに対応して配置された、正の屈折力を有する複数の第2レンズを有する第2レンズアレイ」に相当する技術的事項を有する。
よって、引用例1には、「複数の画像表示素子と、光源からの光で前記複数の画像表示素子を照明する照明光学系とを有する投影装置であって、前記照明光学系が、楕円ミラーと、正の屈折力を有する複数の第1レンズを含み、複数の光束に分割する第1レンズアレイと、前記第1レンズアレイの集光位置近傍に、前記複数の第1レンズに対応して配置された、正の屈折力を有する複数の第2レンズを有する第2レンズアレイと、前記第2レンズアレイからの複数の光束各々を受光する複数の受光部を含み、前記複数の光束各々を特定の方向に偏光した直線偏光光に変換する偏光変換素子アレイとを有している投影装置」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができるから、両者は、上記の点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
本願補正発明は、楕円ミラーが「光源からの光を収斂光に変換する」ものであることから、「前記収斂光を平行な状態に変換する凹レンズ」を有しており、該凹レンズが、「前記凹レンズの前記光源側の面が平面であり、前記凹レンズの前記第1レンズ側の面が凹面である」のに対して、引用発明は、このような凹レンズを有していない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
引用例1に「放物面リフレクター202によって一方向に反射されて、略平行な光束となって第1のレンズ板3に入射される。」と記載されているように、引用例1の放物面リフレクター202から出射する光は平行光として出射させることが前提であるから、該リフレクターとして光が収斂するようなものを用いた場合においては、当然に出射光を平行にするような光学系を介在させることが必要なことになる。
そして、プロジェクタ用の照明系において、光源の反射ミラーによる収斂光を凹レンズにより平行光にすることは周知(必要であれば、実願昭63-99718号(実開平2-21681号)のマイクロフィルム及び特開平6-18842号公報参照。なお、凹レンズの凹面の向きについても、上記周知文献に記載されている。)のことにすぎず、これを引用発明に適用する困難性はなんら存在しない。
よって、周知のプロジェクタ用の照明系における上記周知の光学系を引用発明に適用することにより、本願補正発明の構成とすることは、当業者が適宜設定し得る程度のことにすぎない。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用例1記載の事項及び周知技術から予測し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成17年3月18日付の手続補正は上記のとおり却下され、また平成16年8月30日付手続補正は既に却下されているので、本願の請求項に係る発明は、平成16年5月6日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜11に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は次のものである。
「【請求項1】複数の画像表示素子と、光源からの光で前記複数の画像表示素子を照明する照明光学系とを有する投影装置であって、
前記照明光学系が、
光源からの光を収斂光に変換する集光光学系と、
前記収斂光を互いに平行な状態に変換するコリメート光学系と、
正の屈折力を有する複数の第1レンズを含み、前記コリメート光学系からの光を複数の光束に分割する第1レンズアレイと、
前記第1レンズアレイの集光位置近傍に配置され、前記複数の第1レンズに対応する、正の屈折力を有する複数の第2レンズを有する第2レンズアレイ、
前記第2レンズアレイからの複数の光束各々を特定の方向に偏光した直線偏光光に変換する偏光変換素子アレイとを有することを特徴とする投影装置。」(以下、「本願発明」という。)

(2)刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用したこの出願前公知の引用例1:特開平8-304739号には、上記2.(2)刊行物記載の発明に摘記した事項がそれぞれ記載されている。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明に比べて、楕円ミラー及び凹レンズが、集光光学系及びコリメート光学系と上位概念化され、その結果凹レンズの形状に関する具体的な規定を欠くものである。
したがって、本願発明は、上記本願補正発明に対するとほぼ同様の理由により当業者が容易に想到し得たものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-16 
結審通知日 2006-01-17 
審決日 2006-02-02 
出願番号 特願平10-44562
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 治企  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 吉田 禎治
吉野 三寛
発明の名称 投影装置  
代理人 高梨 幸雄  

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