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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  B65D
管理番号 1133391
審判番号 無効2005-80110  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-05-08 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-04-07 
確定日 2006-03-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第3238920号発明「盗難防止用ケース」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3238920号の請求項1及び3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3238920号の発明についての出願は、平成11年10月22日に特許出願され、平成13年10月5日に特許の設定登録がなされた。
そして、請求人である株式会社ジャストコーポレーションより、平成17年4月7日に本件特許無効審判の請求がなされ、平成17年7月20日に口頭審理及び証人尋問が行われ、被請求人より、平成17年9月20日に答弁書の提出とともに訂正請求がなされた。
当審より平成17年11月1日に訂正拒絶理由が通知された。

2.訂正の可否について
(1)平成17年9月20日付の訂正請求は、請求項1において、「ガイド手段をケース内に設け」を「溝型のガイド手段をケース内に設け」と減縮を目的として訂正すると共に、請求項3、5、6及び7の「適宜のガイド手段をケース内に設け」を「溝型のガイド手段をケース内に設け」と減縮を目的として訂正するものである。
その結果、請求項1を引用しその全部を構成要件とする請求項2と、請求項3を引用しその全部を構成要件とする請求項4と、さらに請求項1、4、5、7及び8を引用しその全部を構成要件とする請求項9についても減縮を目的として訂正されることとなるものである。
そして、本件無効審判の請求においては、無効が請求されているのは請求項1及び3のみであるから、上記訂正は、特許無効審判の請求がされていない請求項2、4、5、6、7及び9を減縮する訂正を含むものである。
そして、上記訂正は、上述のとおり、特許無効審判の請求がされていない請求項2、4、5、6、7及び9を減縮する訂正を含むものであるから、上記訂正の適否については、特許法第134条の2第5項で「第1項ただし書き第1号又は第2号」とあるのは「特許無効審判の請求がされていない請求項に係る第1項ただし書き第1号又は第2号」と読み替えて準用される同法第126条第5項の規定(独立特許要件)に適合しているか否かが判断される。

(2)訂正発明
上記訂正の訂正明細書の請求項2、4、5、6、7及び9に係る発明(以下、「訂正発明2、4、5、6、7及び9」という。)は、次の特許請求の範囲の請求項2、4、5、6、7及び9に記載されたとおりのものと認める(請求項2、4及び9の内容が明らかとなるように、その他の請求項も記載する)。
「【請求項1】 未包装の商品を収納する貸出し或いは販売用の専用ケースにおいて、このケースに抜き差し自在に差し込むスライダの溝形のガイド手段をケース内に設け、このガイド手段にスライダを差し込み、上記スライダに固有のIDコードをもち、ショップの出入口を通過の際前記出入口に設置の高周波電磁界の発生により共振回路が共振して固有のIDコードの発信にともない前記高周波電磁界を変調させるような盗難防止用のタグを設けたことを特徴とする盗難防止用ケース。
【請求項2】 前記のガイド手段が、別部品により形成され、かつケースに適宜の取付け手段を介し取付けたことを特徴とする請求項1に記載の盗難防止用ケース。
【請求項3】 未包装の商品を収納する貸出し或いは販売用の専用ケースにおいて、このケースに溝形のガイド手段をケース内に設けて、このガイド手段に抜き差し自在にスライダを差し込むと共に、上記ケース或いはガイド手段と上記スライダとの対向面に前記スライダの差し込みにともない押し戻され、かつ差し込み終了にともない係合関係になるような係止手段を設けたことを特徴とする盗難防止用ケース。
【請求項4】 前記のスライダに固有のIDコードをもち、ショップの出入口を通過の際前記出入口に設置の高周波電磁界の発生により共振回路が共振して固有のIDコードの発信にともない前記高周波電磁界を変調させるような盗難防止用のタグを設けたことを特徴とする請求項3に記載の盗難防止用ケース。
【請求項5】 未包装の商品を収納する貸出し或いは販売用の専用ケースにおいて、このケースに溝形のガイド手段をケース内に設けて、このガイド手段に抜き差し自在にスライダを差し込むと共に、上記ケース或いはガイド手段と上記スライダとの対向面に前記スライダの差し込みにともない押し戻され、かつ差し込み終了にともない係合関係になるような係止手段を設け、この係止手段の係合関係を解除する係合解除具の差し込み通路を設け、上記スライダに固有のIDコードをもち、ショップの出入口を通過の際前記出入口に設置の高周波電磁界の発生により共振回路が共振して固有のIDコードの発信にともない前記高周波電磁界を変調させるような盗難防止用のタグを設けたことを特徴とする盗難防止用ケース。
【請求項6】 一面に未包装の商品の出し入れ用の開口を有する貸出し或いは販売用の専用ケースにおいて、このケースに溝形のガイド手段をケース内に設けて、このガイド手段に抜き差し自在にスライダを差し込むと共に、上記ケース或いはガイド手段と上記スライダとの対向面に前記スライダの差し込みにともない押し戻され、かつ差し込み終了にともない係合関係になるような係止手段を設けたことを特徴とする盗難防止用ケース。
【請求項7】 一面に未包装の商品の出し入れ用の開口を有する貸出し或いは販売用の専用ケースにおいて、このケースに溝形のガイド手段をケース内に設けて、このガイド手段に抜き差し自在にスライダを差し込むと共に、上記ケース或いはガイド手段と上記スライダとの対向面に前記スライダの差し込みにともない押し戻され、かつ差し込み終了にともない係合関係になるような係止手段を設け、この係止手段の係合関係を解除する係合解除具の差し込み通路を設け、上記スライダに前記スライダの差し込み終了時に上記ケース内の収納商品の抜き取り防止用のストッパを設け、上記スライダに固有のIDコードをもち、ショップの出入口を通過の際前記出入口に設置の高周波電磁界の発生により共振回路が共振して固有のIDコードの発信にともない前記高周波電磁界を変調させるような盗難防止用のタグを設けたことを特徴とする盗難防止用ケース。
【請求項8】 商品に適宜の取付け手段を介し取付ける取付け部材と、この取付け部材に設けた適宜のガイド手段に抜き差し自在にスライダを差し込むと共に、上記取付け部材或いはガイド手段と上記スライダとの対向面に前記スライダの差し込みにともない押し戻され、かつ差し込み終了にともない係合関係になるような係止手段を設け、この係止手段の係合関係を解除する係合解除具の差し込み通路を設け、上記スライダに固有のIDコードをもち、ショップの出入口を通過の際前記出入口に設置の高周波電磁界の発生により共振回路が共振して固有のIDコードの発信にともない前記高周波電磁界を変調させるような盗難防止タグを設けたことを特徴とする商品の盗難防止装置。
【請求項9】 前記スライダにスライダ成形の際固有のIDコードをもち、ショップの出入口を通過の際前記出入口に設置の高周波電磁界の発生により共振回路が共振して固有のIDコードの発信にともない前記高周波電磁界を変調させるような盗難防止タグを埋め込んだことを特徴とする請求項1,4,5,7及び8に記載の盗難防止ケース及び装置。」

(3)各引用例の記載事項
本件特許出願前の1999年(平成11年)4月1日に頒布された東京都中央区八丁堀4丁目6番5号所在の日之出出版株式会社が1999年4月1日に発行(1999年3月1日発売)した「月刊ビデオ・ビズ VIDEOBIZ 4月号」裏表紙(無効審判請求における甲第3号証、以下「引用例1」という)には、カギ付きクリアケースが記載されており、このケースはビデオテープ等の商品を貸出し或いは販売に用いるケースと認められ、また、ケースに抜き差し自在に差し込むスライダが設けられており、そのスライダには盗難防止用のタグが貼付されている。
また、実用新案登録第3052834号公報(無効審判請求における甲第8号証、以下「引用例2」という)には、上部を開口した陳列用ケースに入れてその上端部を開口から突出した状態で棚に配列する貸出ケースにおいて、該貸出ケースはビデオテープが入る箱形本体と蓋からなり、本体下面にはロックを設けると共に蓋の下面にはスリット溝を形成し、蓋を閉じた状態で防犯タグシールを貼着したロックプレートをスリット溝に嵌めて上記本体のロックにツメを係合して固定することで、蓋が開かないようにロックすることを特徴とするビデオテープ等のロック付き貸出ケースが記載されている(請求項2、図1〜5)。
また、実用新案登録第3027324号公報(無効審判請求における甲第10号証、以下「引用例3」という)には、テープカセット等の収納本体と、該収納本体にヒンジ等で開閉自在に取り付けられた蓋体と、該蓋体に着脱自在に装着された施錠部と、前記蓋体を閉じた際に該施錠部と係合する前記収納本体の一部に形成された一対の係止片とを備えたことを特徴とするテープカセット等の収納容器であって、前記施錠部は、前記蓋体の略中央に形成された収納凹部に着脱自在に装着されることが記載されている(請求項1及び3、図1〜5)。

(4)対比及び判断
請求項2(訂正発明2)について。
貸出し用のケースに収納されるビデオテープ等は通常未包装であるので、この点を考慮して、訂正発明2と引用例1に記載の発明を対比すると、
未包装の商品を収納する貸出し或いは販売用の専用ケースにおいて、このケースに抜き差し自在に差し込むスライダを差し込み、上記スライダに盗難防止用のタグを設けたことを特徴とする盗難防止用ケース
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:訂正発明2では、スライダを差し込むための溝形のガイド手段をケース内に設けているのに対し、引用例1の発明ではスライダを差し込むためのガイド手段の有無が明らかでない点。
相違点2:訂正発明2では、盗難防止用タグについて、固有のIDコードをもち、ショップの出入口を通過の際前記出入口に設置の高周波電磁界の発生により共振回路が共振して固有のIDコードの発信にともない前記高周波電磁界を変調させるような機能を有する旨記載されているのに対し、引用例1の発明では盗難防止用タグの機能については記載がない点。
相違点3:訂正発明2では、ガイド手段が、別部品により形成され、かつケースに適宜の取付け手段を介し取付けているのに対し、引用例1の発明ではこのような記載はない点。

[相違点についての判断]
・相違点1について
引用例1のカギ付クリアケースの写真を見ると、黒色のスライダが差し込まれた両側にはスジ状の構造が認められる。この構造の機能については記載がなく明らかではないが、スライダなど何らかの部材を差し込んだり引き抜いたりする場合、抜き差しが円滑にできるように、ガイドを設けることは分野を問わず広く行われていることであるし、引用例3に記載されている収納凹部もガイドとしての機能を有しているものである。
そして、ガイドを設ける箇所について、スライダがケース内に差し込まれる場合にはガイドもまたケース内に設けられることは当然のことであるし、ガイドの形状を溝形とする点についても引用例3の収納凹部も溝形となっているようにガイドの形状としては何ら特別な形状ではなく通常採用されている形状であるにすぎない。
・相違点2について
訂正発明2で用いられている盗難防止用タグは、例えば特公昭47-25943号公報(無効審判請求における甲第9号証)に記載されているように本出願前において公知の共振回路を有する検知装置であり、相違点2に係る構成は、公知の盗難防止用タグが当然有している機能を単に記載したものにすぎない。
・相違点3について
ケースにガイド手段を設ける際に、ケース自体に一体化した構造として設けるか、別部品として形成し適宜取り付けるかは当業者が容易に定め得る設計事項にすぎない。
したがって、訂正発明2は、引用例1から3に記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許受けることができないものである。
よって、上記訂正は、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第5項に適合しない訂正事項を含む訂正であるから、訂正請求は認められない。

3.本件特許発明について
上記のとおり訂正請求は認められないので、本件特許発明は訂正前の特許明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりであって、本件無効審判請求において無効が請求されている請求項1及び3に記載された発明(以下、「本件特許発明1」及び「本件特許発明3」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】 未包装の商品を収納する貸出し或いは販売用の専用ケースにおいて、このケースに抜き差し自在に差し込むスライダのガイド手段をケース内に設け、このガイド手段にスライダを差し込み、上記スライダに固有のIDコードをもち、ショップの出入口を通過の際前記出入口に設置の高周波電磁界の発生により共振回路が共振して固有のIDコードの発信にともない前記高周波電磁界を変調させるような盗難防止用のタグを設けたことを特徴とする盗難防止用ケース。

【請求項3】 未包装の商品を収納する貸出し或いは販売用の専用ケースにおいて、このケースに適宜のガイド手段をケース内に設けて、このガイド手段に抜き差し自在にスライダを差し込むと共に、上記ケース或いはガイド手段と上記スライダとの対向面に前記スライダの差し込みにともない押し戻され、かつ差し込み終了にともない係合関係になるような係止手段を設けたことを特徴とする盗難防止用ケース。」

4.請求人の主張
請求人は以下の以下の3点を主張し、下記の証拠を提出している。
(1)主張1:本件特許の訂正された請求項1に係る発明は、甲第3号証ないし甲第9号証に記載され、又は甲第10号証に記載され、請求項3に係る発明は、甲第3号証ないし甲第9号証に記載されたものであり、両者は特許法第29条1項に違反して特許されており、同法第123条第1項第2号によって無効とすべきである。
(2)主張2:請求項1及び請求項3に係る発明は、甲第3号証ないし甲第11号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条2項に違反して特許されており、同法第123条第1項第2号によって無効とすべきである。
(3)主張3:請求項1及び請求項3に係る発明は、目的とする課題を解決することができず、かつ作用効果も奏さないものであり、未完成発明又は記載に不備があり、特許法第29条1項柱書き、同法第36条4項1号又は同6項に違反しており、同法第123条第1項第2号、4号によって無効とすべきである。

請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。なお、甲第1号証は、本件特許第3238920号登録原簿、甲第2号証の1は特許第3238920号公報、甲第2号証の2は特許第3238920号訂正明細書である。

甲第3号証:東京都中央区八丁堀4丁目6番5号所在 日之出出版株式会社 1999年4月1日発行(1999年3月1日発売)「月刊ビデオ・ビズ VIDEOBIZ 4月号」裏表紙
甲第3号証の2:甲第3号証の裏表紙内側広告の拡大
甲第4号証:株式会社ジャストコーポレーションの商品カタログ(RESPEC)
甲第4号証の2:甲第4号証の4頁
甲第5号証:「クリアロックケース」写真
甲第6号証の1:「クリアロックケース」納品書控
甲第6号証の2:「クリアロックケース」納品書控
甲第6号証の3:「クリアロックケース」納品書控
甲第7号証:株式会社ジャストコーポレーションの代表者滝波正志作成の陳述書
甲第8号証:実用新案登録第3052834号公報
甲第9号証:特公昭47-25943号公報
甲第10号証:実用新案登録第3027324号公報
甲第11号証:特開平7-137779号公報

5.被請求人の主張
被請求人は、本件特許明細書の訂正を請求し、訂正後の本件特許の請求項1及び3に係る発明は、請求人主張の公然実施発明と同一ではなく、また、その発明に基づいて容易に発明をすることはできないものであるから、本件特許を無効とすることはできない、さらに、請求人主張の公然実施発明と甲第10号証に記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもないと主張している。
また、請求人が主張するような発明未完成、記載不備でもないと主張している。

6.無効理由の検討
無効審判請求人は3つの理由を挙げて無効を主張しているが、まず主張2について検討する。

[主張2について]
(1)引用文献の記載事項
甲第3号証(東京都中央区八丁堀4丁目6番5号所在 日之出出版株式会社 1999年4月1日発行(1999年3月1日発売)「月刊ビデオ・ビズ VIDEOBIZ 4月号」裏表紙)
記載事項a:株式会社ジャストコーポレーションの広告の上部左側には、防犯対策商品としてカギ付きクリアケースの写真が掲載されており、上部右側には、カギ付きクリアケースのロックを解除するための解除キーの写真が掲載されており、その写真には解除キーと共にケースに差し込む黒色のスライダーが記載され、そのスライダーにはタグが貼付されている。
そして、スライダーは解除キーによって解除されることによりケースから取り外すことができるものと認められるし、カギ付きクリアケースは防犯対策商品であることを考慮すればスライダーに貼付されているタグは盗難を防止する目的で貼付されているものと認められる。
また、証人滝波正志の証言によれば、広告に掲載されているカギ付きクリアケースはビデオテープやDVD等の貸出し用のケースであって、スライダーは抜き差し自在であり、スライダーにはタグが貼付されており、そのまま店外へ持ち出そうとすると店の出入り口でブザーが鳴るようになっているものである。
上記の事項から、甲第3号証には、ビデオテープやDVD等の商品を収納する貸出し用の専用ケースにおいて、このケースに抜き差し自在に差し込むスライダに盗難防止用のタグを設けた盗難防止用ケース、が記載されているものと認められる。

甲第8号証(実用新案登録第3052834号公報、平成10年10月9日発行)
記載事項b:上部を開口した陳列用ケースに入れてその上端部を開口から突出した状態で棚に配列する貸出ケースにおいて、該貸出ケースはビデオテープが入る箱形本体と蓋からなり、本体下面にはロックを設けると共に蓋の下面にはスリット溝を形成し、蓋を閉じた状態で防犯タグシールを貼着したロックプレートをスリット溝に嵌めて上記本体のロックにツメを係合して固定することで、蓋が開かないようにロックすることを特徴とするビデオテープ等のロック付き貸出ケース(請求項2、図1〜5)。

甲第9号証(特公昭47-25943号公報)
記載事項c:この発明は物体検知装置とくにLC共振回路を附されるかもしくはそれからなる物体の検知を行うための装置に関する。この種の装置の実現はスーパーマーケットなどにおける万引防止に効果を発揮する。(第1頁左欄20〜24行)
記載事項d:1は例えば値段表の形態として商品に取付けられたカードで、周波数f0HZのLC共振回路2を顧客に見えないように埋設してある。(第1頁右欄4〜6行、第1図)
記載事項e:送信コイル6aと受信コイル7aとの間にカード1が存在しないときには受信器7から第2図cで示すような定振幅の出力がでているが、共振回路2を持つカード1がコイル6a、7a間に存在すると第2図dに示すように掃引周波数がf0HZになった時点で共振回路2の共振周波数f0HZと同調し、その結果受信器7出力にΔeの変化分を生ずる。(第1頁右欄23行〜30行、第2図)

甲第10号証(実用新案登録第3027324号公報、平成8年8月9日発行)
記載事項f:テープカセット等の収納本体と、該収納本体にヒンジ等で開閉自在に取り付けられた蓋体と、該蓋体に着脱自在に装着された施錠部と、前記蓋体を閉じた際に該施錠部と係合する前記収納本体の一部に形成された一対の係止片とを備えたことを特徴とするテープカセット等の収納容器(請求項1、図1〜5)
記載事項g:前記施錠部は、前記蓋体の略中央に形成された収納凹部に着脱自在に装着されることを特徴とする請求項1記載のテープカセット等の収納容器(請求項3、図1〜5)。

(2)対比・判断
[請求項1について]
貸出し用のケースに収納されるビデオテープ等は通常未包装であるので、この点を考慮して本件特許発明1と甲第3号証に記載の発明を対比すると、

未包装の商品を収納する貸出し或いは販売用の専用ケースにおいて、このケースに抜き差し自在に差し込むスライダを差し込み、上記スライダに盗難防止用のタグを設けたことを特徴とする盗難防止用ケース
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本件特許発明1では、スライダを差し込むためのガイド手段がケース内に設けられているのに対し、甲第3号証に記載の発明ではスライダを差し込むためのガイド手段の有無が明らかでない点。
相違点2:本件特許発明1では、盗難防止用タグについて、固有のIDコードをもち、ショップの出入口を通過の際前記出入口に設置の高周波電磁界の発生により共振回路が共振して固有のIDコードの発信にともない前記高周波電磁界を変調させるような機能を有する旨記載されているのに対し、甲第3号証に記載の発明では盗難防止用タグの機能については記載がない点。
上記相違点について判断する。
・相違点1について
甲第3号証のカギ付クリアケースの写真を見ると、黒色のスライダが差し込まれた両側にはスジ状の構造が認められる。この構造の機能については記載がなく、また証人滝波正志の証言によっても明らかではないが、スライダなど何らかの部材を差し込んだり引き抜いたりする場合、抜き差しが円滑にできるように、ガイドを設けることは分野を問わず広く行われていることであるし、甲第10号証に記載されているテープカセット等の収納容器における収納凹部も施錠部のガイドとしての機能を有しているものであるから、スライダーの抜き差しが円滑にできるようにガイドを設けることは当業者が容易になし得ることである。
そして、ガイドを設ける箇所について、スライダがケース内に差し込まれる場合にはガイドもまたケース内に設けられることは当然のことであり、当業者が容易になし得ることにすぎない。

・相違点2について
本件特許発明1で用いられている盗難防止用タグは特定の機能を有するタグであるように記載されているが、そのタグは甲第9号証に記載されているように本出願前において公知の共振回路を有する検知装置と同様のものであり、相違点2に係る構成は、公知の盗難防止用タグが当然有している機能を単に記載したものにすぎない。

[請求項3について]
本件特許発明3と甲第3号証に記載の発明を対比すると、
未包装の商品を収納する貸出し或いは販売用の専用ケースにおいて、このケースに抜き差し自在に差し込むスライダを差し込み、上記スライダに盗難防止用のタグを設けたことを特徴とする盗難防止用ケース
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本件特許発明3では、ケース或いはガイド手段とスライダとの対向面にスライダの差し込みにともない押し戻され、かつ差し込み終了にともない係合関係になるような係止手段を設けているのに対し、引用例1の発明ではそのような手段が設けられていない点。
相違点2:本件特許発明3では、スライダを差し込むためのガイド手段がケース内に設けられているのに対し、甲第3号証に記載の発明ではスライダを差し込むためのガイド手段の有無が明らかでない点。

上記相違点について判断する。
・相違点1について
スライダのような抜き差しする部材において、容易には引き抜くことができないように差し込まれた際に係合関係になるような係止手段を設けることは、甲第8号証の記載事項bのロックプレートにツメが設けられているように公知の技術事項である。そして、甲第8号証はビデオテープ等のロック付き貸出ケースにおける技術に関するものであるから、その技術を甲第3号証の発明に適用することに何ら困難性は認められない。

・相違点2について
相違点2については、本件特許発明1の相違点1の判断で示したのと同様の理由により当業者が容易になし得ることにすぎないものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1及び3は甲第3、8、9及び10号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1及び3は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、請求人の主張する他の理由について検討するまでもなく、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-24 
結審通知日 2006-01-27 
審決日 2006-02-08 
出願番号 特願平11-338353
審決分類 P 1 123・ 121- ZB (B65D)
最終処分 成立  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
溝渕 良一
登録日 2001-10-05 
登録番号 特許第3238920号(P3238920)
発明の名称 盗難防止用ケース  
代理人 平崎 彦治  
代理人 鳥居 和久  
代理人 安原 正之  
代理人 佐藤 治隆  
代理人 鷹見 雅和  
代理人 小林 郁夫  

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