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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1133474
審判番号 不服2004-1194  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-15 
確定日 2006-03-23 
事件の表示 特願2002- 11728「ディスク判別方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月27日出願公開、特開2002-279656〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許出願(以下「本願」という。)は、平成6年9月13日に出願した特願平6-218541号(以下「原出願」という。)の一部を平成14年1月21日付けで分割したものであって、平成15年12月10日付けで拒絶すべきものである旨の査定がなされたところ、平成16年1月15日付けで特許法121条第1項に基づき審判請求がなされるとともに、平成16年2月16日に明細書について手続補正書が提出されたものである。


II.平成16年2月16日付け手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成16年2月16日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1.本件補正について補正の内容
本件補正による補正内容は、特許請求の範囲において、請求項数を4から2にするとともに、【請求項1】においては、トラッキングエラー信号の振幅測定に関して、本件補正前「トラッキングエラー信号の振幅を測定し、」とあったものを、本件補正で「トラッキングエラー信号の上記光ディスクの偏心のみに依存する該光ディスク一回転周期に現れるピーク間の電圧を測定することにより振幅を測定し、」と、請求項2は「上記再生信号の包落線の上記光ディスクの偏心のみに依存する該光ディスク一回転周期に現れるピーク間の電圧を測定することにより振幅を測定し、」と、上記各下線部分の構成要件を附加するものである。
これは、審判請求書の【請求理由】で「ここで、上記補正された特許請求の範囲の請求項1は、元の(今回の補正前の)請求項1の内容に、元の請求項2の内容を付加して限定したものであり、補正された請求項2は、元の請求項3の内容に、元の請求項4の内容を付加して限定したものである。」と主張しているように各請求項に係る発明を限定するものと認められる。
また、本件補正の【発明の詳細な説明】は特許請求の範囲の補正に対応しての補正をするものである。

2.本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲においては、請求項2及び4を削除しつつ、トラッキングエラー信号の振幅を測定について、ないし、再生信号の包落線に基づく振幅測定について具体的に限定し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第4項第1項ないし第2号の規定を満たすものと認める。

3.独立特許要件
次に、本件補正の請求項1に記載された発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に違反するか)、について以下に検討する。

(3-1)本件補正後発明
本件補正の【請求項1】に記載された発明は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 光ディスク上に記録された信号を再生する光ディスク再生装置におけるディスク判別方法であって、
上記光ディスク再生装置に挿入された光ディスクを回転駆動するとともに、上記光ディスクからの再生信号より得られるフォーカスエラー信号に基づいて対物レンズのフォーカスサーボ制御を行い、
トラッキングサーボ制御を行わない状態で、ピックアップの径方向の移動を停止し、上記ピックアップからのレーザ光が上記光ディスク上の複数のトラックを横切るときの上記再生信号より得られるトラッキングエラー信号の上記光ディスクの偏心のみに依存する該光ディスク一回転周期に現れるピーク間の電圧を測定することにより振幅を測定し、
測定された上記トラッキングエラー信号の振幅が上記光ディスクの記録密度の違いによって変化することを利用して互いに記録密度の異なる光ディスクを判別すること
を特徴とするディスク判別方法。」(以下「本件補正後発明」という)

(3-2)先願発明
ところで本件補正後発明は、原出願である平成6年9月13日付けの特願平6-218541号(特開平8-83465号)からの分割出願であるところ、原出願の平成14年1月21日付け特許請求の範囲における、請求項1の引用形式請求項である請求項2に係る発明は以下のとおりのものである。
「【請求項1】 光ディスク上に記録された信号を再生する光ディスク再生装置において、
上記光ディスク上に記録された信号を光学的に読み取るピックアップと、
上記ピックアップを上記光ディスクの径方向の特定位置に移動させる移動制御手段と、
上記ピックアップによって上記光ディスクから再生された信号より得られるフォーカスエラー信号に基づいて対物レンズを駆動するフォーカスサーボ制御手段と、
上記ピックアップによって上記光ディスクから再生された信号より得られるトラッキングエラー信号に基づいて上記対物レンズを駆動するトラッキングサーボ制御手段と、
上記フォーカスサーボ制御手段及び上記トラッキングサーボ制御手段のうち、上記フォーカスサーボ制御手段のみ動作させた際に得られる上記トラッキングエラー信号の振幅を測定する振幅測定手段と、
測定された上記トラッキングエラー信号の振幅が上記光ディスクの記録密度の違いによって変化することを利用して記録密度の異なる光ディスクを判別する光ディスク判別手段と、
上記光ディスク判別手段の判別結果に応じて、上記移動制御手段の動作を制御するシーケンサと
を有することを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項2】 上記トラッキングエラー信号の振幅測定手段は、上記トラッキングエラー信号の上記光ディスク一回転周期に現れるピーク間の電圧を測定することを特徴とする請求項1記載の光ディスク再生装置。」(以下「原発明」という)

そして、本件補正後発明と原発明を比較すると、
(i)本件補正後発明は「ディスク判別方法」であり、原発明は手段を伴う「光ディスク再生装置」でカテゴリーは相違する。しかしながら、両発明間には、方法として表現したか、装置として表現したかの違いはあるとしても、以下で判断していくように、技術的思想として何ら差異はなく別個の発明を構成するものでない。
(ii)本件補正後発明の「光ディスク再生装置に挿入された光ディスクを回転駆動」であるが、これは原発明のものに記載してない事項であるが、当然の構成要件にすぎないもので実質的な相違にならない。
(iii)本件補正後発明の「トラッキングサーボ制御を行わない状態」であるが、これは原発明で「上記フォーカスサーボ制御手段及び上記トラッキングサーボ制御手段のうち、上記フォーカスサーボ制御手段のみ動作させた際」が対応するもので、実質的な相違でない。
(iv) 本件補正後発明の「径方向の移動を停止」であるが、これは原発明で「径方向の特定位置に移動させる移動制御手段」が対応し、実質的な相違ではない。
(v) 本件補正後発明の「レーザ光が上記光ディスク上の複数のトラックを横切るときの・・・トラッキングエラー信号」であるが、これは原発明では「上記フォーカスサーボ制御手段及び上記トラッキングサーボ制御手段のうち、上記フォーカスサーボ制御手段のみ動作させた際に得られる上記トラッキングエラー信号の振幅を測定」が対応し、実質的な相違ではない。
(vi)本件補正後発明の「光ディスクの偏心のみに依存」であるが、これは原発明で「径方向の特定位置に移動させる移動制御手段」の特に『特定位置に移動』、及び「トラッキングエラー信号の振幅測定手段は、上記トラッキングエラー信号の上記光ディスク一回転周期に現れる」の特に『トラッキングエラー信号の一回転周期』が対応し、実質的な相違ではない。
(vii)他方、原発明には「光ディスク判別手段の判別結果に応じて、上記移動制御手段の動作を制御するシーケンサ」の構成要件の記載があって、本願補正後発明にない。しかしながら、両者の発明の課題から、記載があるなしにかかわらず、移動手段の動作を制御するシーケンサを有していることは当然ないし自明の構成要件であって、実質的な相違ではない。

要するに、本件補正後発明を先願として、原発明を後願としたときに、原発明が本件補正後発明と実質同一で、かつ原発明を先願とし、本件補正後発明を後願としたときに本件補正後発明が原発明と実質同一であるから、両者は「同一発明」に該当する。

以上のとおり、両発明の間においては表現上若干の相違は認められるものの、相違構成は当然ないしは自明の範疇にすぎないもので、両発明は実質的に同一である。
(なお、原出願の経緯は、当審からの拒絶理由の通知に対して何ら応答されることなく、平成16年4月30日付けで審決が確定している。)

よって、本件補正後発明は、原発明と同一であるので、特許法第39条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


III.本願発明
1.本願発明
平成16年2月16日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項に係る各発明は、平成15年8月21日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち【請求項1】に係る発明は次のとおりのものである。
「【請求項1】 光ディスク上に記録された信号を再生する光ディスク再生装置において、
上記光ディスク上に記録された信号を光学的に読み取るピックアップと、
上記ピックアップを上記光ディスクの径方向の特定位置に移動させる移動制御手段と、
上記ピックアップによって上記光ディスクから再生された信号より得られるフォーカスエラー信号に基づいて対物レンズを駆動するフォーカスサーボ制御手段と、
上記ピックアップによって上記光ディスクから再生された信号より得られるトラッキングエラー信号に基づいて上記対物レンズを駆動するトラッキングサーボ制御手段と、
上記フォーカスサーボ制御手段及び上記トラッキングサーボ制御手段のうち、上記フォーカスサーボ制御手段のみ動作させた際に得られる上記トラッキングエラー信号の振幅を測定する振幅測定手段と、
測定された上記トラッキングエラー信号の振幅が上記光ディスクの記録密度の違いによって変化することを利用して記録密度の異なる光ディスクを判別する光ディスク判別手段と、
上記光ディスク判別手段の判別結果に応じて、上記移動制御手段の動作を制御するシーケンサと
を有することを特徴とする光ディスク再生装置。」(以下「本件発明」という。)

2.刊行物発明
原査定の拒絶理由で引用された特開平3-173936号公報(以下「刊行物1」という。)には、情報記録ディスク演奏装置についてのもので、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与。)
(2-1)「(1)情報記録ディスクの記録トラックに対する記録情報読取用スポットのディスク半径方向における偏倚量に応じたトラッキングエラー信号を生成し、このトラッキングエラー信号に基づいて前記記録情報読取用スポットをディスク半径方向に偏倚せしめるべく制御するトラッキングサーボループを含む情報記録ディスク演奏装置であって、
前記トラッキングサーボループの開状態において前記記録情報読取用スポットをディスク半径方向に移動させたときに得られる前記トラッキングエラー信号に基づいて前記情報記録ディスクのトラックピッチ検出回路を備えたことを特徴とする情報記録ディスク演奏装置。
(2)前記トラックピッチ検出回路は、前記トラッキングエラー信号の周期、振動若しくは零クロス近傍の傾き又は前記記録情報読取用スポットが一定時間若しくは一定距離だけ移動したときに横切った記録トラック数に基づいてトラックピッチを検出することを特徴とする請求項1記載の情報記録ディスク演奏装置。」(第1頁左下欄第5行〜右下欄第6行目)
(2-2)「[発明の目的]そこで、本発明は、記録密度(トラックピッチ)の異なるディスクを同一の装置で演奏可能な情報ディスク演奏装置を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第8行〜第12行目)
(2-3)「[発明の作用]本発明による情報記録ディスク演奏装置においては、トラッキングサーボループの開状態において記録情報読取用スポットをディスク半径方向に移動させ、このとき得られるトラッキングエラー信号に基づいてディスクのトラックピッチを検出する。」(第2頁右上欄第8行〜第13行目)
(2-4)「第1図は、本発明の一実施例を示すブロック図である。図において、レーザビームを収束せしめることによって得られる3つのビームスポット、即ち記録情報読取用スポットS1とこのスポットS1のディスクとの回転方向における相対的移動に際してそれぞれ先行及び後続する一対のトラッキング情報検出用スポットS2,S3とが図示の位置関係をもって、ピックアップ(図示せず)からディスクの記録トラックTに対して照射される。」(第2頁右上欄第17行〜左下欄第5行目)
(2-5)「ループスイッチ6のオン(閉)/オフ(開)制御はコントローラ10によってなされる。ループスイッチ6がオン状態にあるときがトラッキングサーボループのクローズ状態となり、このループクローズ状態において、トラッキングエラー信号レベルに応じてトラッキングサーボが行われるのである。コントローラ10は、例えばディスク回転開始時などの低速回転時においてループスイッチ6をオフ状態とすると共に、駆動電圧発生回路11に対して起動指令を発する。ループスイッチ6がオフ状態にあるループオープン状態では、駆動電圧発生回路11から起動指令に応答して記録情報読取用スポットS1を例えばディスク内周から外周方向に向けて定速度で移動せしめるための駆動電圧が発生され、この駆動電圧は加算器7及び駆動回路8を介してトラッキングアクチュエータ9に印加される。」(第2頁右下欄第15行〜第3頁左上欄第11行目)
(2-6)「第5図は、トラックピッチ検出回路12の第3の具体例を示すブロック図である。本例においては、零クロス検出回路21の出力の立上がり又は立下がりエッジに応答してカウントアップするカウンタ22を有し、このカウンタ22はワンショットマルチ25から発せられるトラッキングエラー信号の周期Tよりも大なる一定のパルス幅の単発パルスをカウント可(ENABLE)制御信号としている。このカウンタ22のカウントデータは単発パルスのパルス幅で決まる一定時間において記録情報読取用ビームスポットS1が横切った記録トラック数を表している。ここで、記録情報読取用スポットS1が記録トラックの横切る速度を一定とすれば、一定時間において記録情報読取用ビームスポットS1が横切るトラック数がトラックピッチに対応することになるから、第1の具体例の場合と同様に、比較回路24において基準データNrに対してカウンタ22のカウントデータの大小を比較することにより、ディスクのトラックピッチを判別できるのである。なお、本例では、一定時において記録情報読取用ビームスポットS1が横切るトラック数に基づいてトラックピッチを判別するとしたが、第6図に示す第4の具体例の場合のように、第1図における駆動電圧発生回路11から発生される駆動電圧をカウンタ22のカウンタ可(ENABLE)制御信号とし、記録情報読取用ビームスポットS1が一定距離だけ移動したときに横切った記録トラック数に基づいてトラックピッチを判別することも可能である。」(第3頁右下欄第17行〜第4頁右上欄第5行目)
(2-7)「以上説明したように、本発明による情報記録ディスク演奏装置においては、トラッキングサーボループの開状態において記録情報読取用スポットをディスク半径方向に移動させ、このとき得られるトラッキングエラー信号に基づいてディスクのトラックピッチを検出する構成となっており、これにより特別なセンサを付加することなくトラックピッチを検出して各種の切換えを自動的に行うことができるため、記録密度(トラックピッチ)の異なるディスクを同一の装置で演奏できることになる。」(第5頁左上欄第5行〜第15行目)

以上の記載を、図面を参照して整理すると、要するに、刊行物1には以下の発明が記載されているものと認める。
「情報記録ディスクの、
ピックアップからディスクの記録トラックTに対して照射され、
記録トラックに対する記録情報読取用スポットのディスク半径方向における偏倚量に応じたトラッキングエラー信号を生成し、このトラッキングエラー信号に基づいて前記記録情報読取用スポットをディスク半径方向に偏倚せしめるべく制御するトラッキングサーボループを含む情報記録ディスク演奏装置であって、
前記トラッキングサーボループの開状態において前記記録情報読取用スポットをディスク半径方向に移動させたときに得られる前記トラッキングエラー信号に基づいて前記情報記録ディスクのトラックピッチ検出回路を備え、
前記トラックピッチ検出回路は、前記トラッキングエラー信号の周期、振動若しくは零クロス近傍の傾き又は前記記録情報読取用スポットが一定時間若しくは一定距離だけ移動したときに横切った記録トラック数に基づてトラックピッチを検出することにより、記録密度(トラックピッチ)の異なるディスクを同一の装置で演奏可能な情報ディスク演奏装置。」(以下「刊行物発明」という。)

また、原査定の拒絶理由で引用された特開平5-266498号公報(以下「刊行物2」という。)には、光記録再生装置についてのもので、以下の記載がある。
(2-8)「【0008】このように、トラックピッチ等の異なる光記録媒体に対し、同一の光記録再生装置において記録、再生、あるいは消去を行うことができず、光記録媒体間の互換性が著しく損なわれていた。
【0009】本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、トラックピッチ検出手段とサーボ条件切換手段を設け、光記録媒体のトラックピッチに応じてトラッキングサーボゲイン等を切り換え、トラックピッチの異なる光記録媒体に対し、トラッキング等のサーボを安定して行うことができ、様々な高密度光記録媒体に対し、記録、再生、あるいは消去を行うことができる光記録再生装置を提供することにある。」
(2-9)「【0011】また、トラックピッチ検出手段は、集光レンズが光記録媒体の半径方向に移動あるいは振動するように駆動信号をレンズ駆動部に出力する駆動信号発生手段と、集光レンズの移動あるいは振動にともなって検出されるトラック横断信号を計数する計数手段とを有していてもよい。」
(2-10)「【0013】トラックピッチを検出するためには、駆動信号発生手段から駆動信号をレンズ駆動部に出力し、集光レンズを光記録媒体の半径方向に移動あるいは振動させてもよい。このとき、集光レンズの移動に伴い、光記録媒体上に照射されているレーザスポットがトラックを横断する毎にトラック横断信号が発生する。このトラック横断信号を計数し、あらかじめ所定の距離だけ集光レンズを移動させたときにレーザスポットが横断するトラック数を求めることにより、トラックピッチを検出することができる。すなわち、トラックピッチが狭いほどレーザスポットが横断するトラック数が多くなるため、このトラック数を基にサーボ条件を切り換えてもよい。」
(2-11)「【0021】この状態で、制御部24からトラック数の計数開始信号がトラックピッチ検出部32へ出力される。この計数開始信号により、トラックピッチ検出部32のカウンタ38をリセットすると同時に駆動信号発生部34から図5(a)のような掃引信号がレンズ駆動部22に出力され、集光レンズ20が光記録媒体10の半径方向に所定距離だけ移動する。この掃引信号の振幅と集光レンズ20の移動距離とはほぼ比例し、掃引信号の符号が反転すると集光レンズ20の移動方向も反転する。集光レンズ20の移動に伴い、記録面上に集光されたレーザスポットも、トラックを横断しながら移動するため、同図(b)のようなトラック横断信号が光学ヘッド12からトラックピッチ検出部32の波形整形部36へ出力される。このトラック横断信号はトラックピッチが広い場合は同図(b)のように信号振幅が大きく、また横断数は少なくなる。
【0022】一方、トラックピッチが狭い場合は同図(c)のように、信号振幅は小さくなり、また横断数は多くなる。従って、波形整形部36において、適当に基準レベル、例えば信号振幅がゼロになるレベルで2値化することにより同図(d)のような横断したトラック数に応じた数の矩形波パルスが得られる。従って、波形整形部36から出力されたパルスの数をカウンタ38で計数することによりトラックピッチを検出することができる。すなわち、光記録媒体10の記録面上をレーザスポットが移動する距離が例えば、80μmとなるように駆動信号の振幅が選ばれたときは、カウンタ38で計数されるトラック数は光記録媒体10のトラックピッチが1.6μmの場合は50であり、トラックピッチが1.0μmの場合は80である。このように、トラックピッチ検出部32ではトラックピッチ自体を検出する必要はなく、本実施例のようにトラックピッチに関する情報が得られる信号を検出すればよい。」

3.対比・判断
〔対比〕
本件発明と刊行物発明とを対比すると、いずれの発明も、光ディスクを判別する光ディスク再生装置で共通する。そして、
(i)刊行物発明の「情報記録ディスク演奏装置」は、本件発明の「光ディスク上に記録された信号を再生する光ディスク再生装置」に相当する。
(ii)刊行物発明の「ピックアップからディスクの記録トラックTに対して照射」は、本件発明の「光ディスク上に記録された信号を光学的に読み取るピックアップ」に相当する。
(iii)刊行物発明の「記録情報読取用スポットをディスク半径方向に偏倚せしめるべく制御」及び「記録情報読取用スポットをディスク半径方向に移動」等は、ピックアップの移動の構成に関して、本件発明の「ピックアップを上記光ディスクの径方向に移動させる移動制御手段」に相当する。
(iv)刊行物発明の「トラッキングサーボループ」は、本件発明の「ピックアップによって上記光ディスクから再生された信号より得られるトラッキングエラー信号に基づいて上記対物レンズを駆動するトラッキングサーボ制御手段」に相当する。
(v)刊行物発明の「トラッキングサーボループの開状態において前記記録情報読取用スポットをディスク半径方向に移動させたときに得られる前記トラッキングエラー信号に基づいて前記情報記録ディスクのトラックピッチ検出回路」及び「トラックピッチ検出回路は、前記トラッキングエラー信号の周期、振動・・・検出」等は、本件発明の「トラッキングエラー信号の振幅を測定する振幅測定手段」に相当する。
(vi)刊行物発明の「トラックピッチ検出回路は、前記トラッキングエラー信号の周期、振動・・・検出」及び「記録密度(トラックピッチ)の異なるディスクを同一の装置で演奏可能」等は、トラックピッチを検出し記憶密度の異なるディスクの識別であるから、本件発明の「測定された上記トラッキングエラー信号の振幅が上記光ディスクの記録密度の違いによって変化することを利用して記録密度の異なる光ディスクを判別する光ディスク判別手段」に相当する。

結局、本件発明と刊行物発明との[一致点]と[相違点]は以下のようになる。
[一致点]
「光ディスク上に記録された信号を再生する光ディスク再生装置において、
上記光ディスク上に記録された信号を光学的に読み取るピックアップと、
上記ピックアップを上記光ディスクの径方向に移動させる移動制御手段と、
上記ピックアップによって上記光ディスクから再生された信号より得られるトラッキングエラー信号に基づいて上記対物レンズを駆動するトラッキングサーボ制御手段と、
上記トラッキングサーボ制御手段の上記トラッキングエラー信号の振幅を測定する振幅測定手段と、
測定された上記トラッキングエラー信号の振幅が上記光ディスクの記録密度の違いによって変化することを利用して記録密度の異なる光ディスクを判別する光ディスク判別手段と、
を有することを特徴とする光ディスク再生装置」

[相違点]
イ.トラッキングエラー信号の検出であるが、本件発明はピックアップの径方向の「特定位置」であるが、刊行物発明のものは「記録情報読取用スポットをディスク半径方向に移動させたとき」というもので特定位置でない点で相違する。
ロ.ピックアップの対物レンズの制御について、本件発明は「上記ピックアップによって上記光ディスクから再生された信号より得られるフォーカスエラー信号に基づいて対物レンズを駆動するフォーカスサーボ制御手段」とフォーカスサーボ手段についても記載しているが、刊行物発明のものはフォーカスサーボ手段には言及していない点。
ハ.上記ロ.に関連して、測定について、本件発明は「フォーカスサーボ制御手段のみ動作させた際に得られる」トラッキング信号の振幅の測定であるが、刊行物発明のものはこの点までの言及がない点。
ニ.本件発明は「光ディスク判別手段の判別結果に応じて、上記移動制御手段の動作を制御するシーケンサ」を有しているものの、刊行物発明のものはこの点の言及がされていない点。

〔判断〕
相違点イ.に関して
トラックピッチの異なる光記録媒体において、光ディスクの判別手段としてトラックピッチを検出していく際、「トラックピッチが広い場合は信号振幅が大きく、横断数は少なくなる。」「トラックピッチが狭い場合は信号振幅は小さくなり、横断数は多くなる。」ことは刊行物2に記載がある。
また、光ディスクにおいては、「螺旋状又は環状のトラックの中心はディスクの回転中心と正確に一致するものでなく、偏心している。従ってピックアップ(情報検出点としてディスク上のスポット光)はトラックを横切ることになる。」ことでトラックッキングエラー信号が得られることは周知事項であるから(例:特開昭63-292454号公報を参照のこと。当該文献は原出願の拒絶理由で引用されている。そして、該文献は特許請求の範囲,第2頁左下上欄第15行〜左下欄第10行目,第2頁右下欄第6行〜第17行目等を参照のこと)、刊行物発明のものにおいても、上記刊行物2及び周知技術を採用して、上記相違点イ.のようにしていくことは当業者が適宜容易に想到し得るものである。
相違点ロ.ハ.に関しては
刊行物発明のものもトラッキングサーボ手段と共にフォーカスサーボ手段をともなって対物レンズを制御していることは技術常識であるから、刊行物発明のものにおいても、上記相違点ロ.ハ.の構成を有していることは自明である。
相違点ニ.に関して
刊行物発明のものにおいても、課題内容から、光ディスクク判別手段の結果に基づいての、移動手段の動作を制御するシーケンサを有していることは当然ないし自明の構成要件にすぎない。

結局、本件発明は、刊行物発明及び刊行物2ないし周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることがでないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に記載された発明は、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないとしてした原査定は妥当なものであり、本願はその余の請求項について言及するまでもなく、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-16 
結審通知日 2006-01-17 
審決日 2006-02-03 
出願番号 特願2002-11728(P2002-11728)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 肇  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 山澤 宏
片岡 栄一
発明の名称 ディスク判別方法  
代理人 小池 晃  
代理人 田村 榮一  
代理人 伊賀 誠司  

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