• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1133508
審判番号 不服2003-14110  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-09-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-24 
確定日 2006-03-14 
事件の表示 平成8年特許願第71135号「ツーピースソリッドゴルフボール」拒絶査定不服審判事件〔平成9年9月16日出願公開、特開平9-239067〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成8年3月1日の出願であって、平成15年6月18日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年7月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月22日付で手続補正がなされた。

【2】平成15年8月22日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年8月22日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正
本件補正は、請求項1を次のとおりに補正することを含むものである。
「直径が37mm〜41mmのソリッドコアにカバーを被覆し、該カバー表面に多数のディンプルを形成してなるツーピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアがJIS-C型硬度計での測定でコア表面の硬度が85度以下であり、コア中心の硬度がコア表面の硬度より10度以上17度以下の範囲で軟らかく、かつコア表面から5mm以内の硬度がコア表面の硬度より8度以内の範囲で軟らかくなるような硬度分布を有し、カバーの上記硬度は77〜86度の範囲であると共に、上記コア表面の硬度より2〜5度硬く、かつ厚さが1.5〜1.95mmであり、ディンプル数が360〜450個であることを特徴とするツーピースソリッドゴルフボール。」(以下、「補正発明」という。)
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、その特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された、特開平6-98949号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載がある。(なお、丸付き数字は、下線付き数字に置き換えた。)
「【請求項1】基剤ゴム、共架橋剤および有機過酸化物を含有するゴム組成物から形成されたコアと、カバーとからなるツーピースゴルフボールにおいて、該コアがJIS-C型硬度計による表示において以下の硬度分布を有し、
1中心硬度 :58〜73
2中心から5〜10mmでの硬度:68〜78
3中心から15mmでの硬度 :76〜88
4表面硬度 :78〜88
[硬度分布において、硬度2が硬度範囲内で一定で、かつ、誤差が±3であり、その他が1<2<3≦4なる関係を満足する]かつ、初荷重10kgから終荷重130kgをかけた時の圧縮変形量2.8〜3.5mmを有し、該カバーが1.5〜2.1mmの厚さを有することを特徴とするツーピースゴルフボール。」
「【0012】本発明のゴルフボールのコアは、その硬度分布が、JIS-C型硬度計による表示において、1中心で58〜73、2中心から5〜10m/mの間で68〜78で、3中心から15m/mで76〜88、4表面で78〜88の条件を満たすのが好ましい。特に、硬度2は硬度にばらつきがなく一定で誤差は±3以内である。このように硬度分布を特定する技術は特開昭60-90575号公報に記載されている。」
「【0015】かくして得られたゴルフボールのコアに厚さ1.5〜2.1mmのカバーを被覆することによりツーピースゴルフボールが得られる。カバーとしては通常アイオノマー樹脂を主材とし、必要により、着色の目的で充填剤(例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム等)を含有させたものが使用される。カバーの厚さが1.5mmより薄くなるとスピンがかかりやすくなり、また、フィーリング面でもワンピースボールの感触に近づき好ましくない。2.1mmを越えると硬く、悪いフィーリングとなる。」
「【0019】表1に示すカバーの配合で常法により得たカバーを前記コアに被覆した。その時のカバーの曲げ剛性および厚さを表1に示す。」
そして、【表1】には、各実施例・比較例の共通のカバーとして、アイオノマー樹脂である、「ハイミラン1076(注:「1706」の明白な誤記と認める。)」と「ハイミラン1605」とを1:1の割合で配合したものが記載されている。
また、カバー表面に多数のディンプルが形成されていることが当業者に明らかであるから、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「コアにカバーを被覆し、該カバー表面に多数のディンプルを形成してなるツーピースゴルフボールにおいて、
上記コアがJIS-C型硬度計での測定でコア表面が78〜88度であり、コア中心の硬度がコア表面の硬度より5度以上30度以下の範囲で軟らかく、かつコア表面から5mm以内の硬度がコア表面の硬度より0〜2度以内の範囲で軟らかくなるような硬度分布を有し、
カバーが、ハイミラン1706とハイミラン1605とを1:1の割合で配合したアイオノマー樹脂からなり、その厚さが1.5〜2.1mmである、
ツーピースゴルフボール。」

(3)対比・判断
補正発明と、上記刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「コア」、及び「ツーピースゴルフボール」は、補正発明の「ソリッドコア」、及び「ツーピースソリッドゴルフボール」にそれぞれ相当するから、両者は、
「ソリッドコアにカバーを被覆し、該カバー表面に多数のディンプルを形成してなるツーピースソリッドゴルフボールにおいて、
上記コアがJIS-C型硬度計での測定でコア表面が78〜85度であり、コア中心の硬度がコア表面の硬度より10度以上17度以下の範囲で軟らかく、かつコア表面から5mm以内の硬度がコア表面の硬度より2度以内の範囲で軟らかくなるような硬度分布を有し、
カバーの厚さが1.5〜1.95mmである、
ツーピースソリッドゴルフボール。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:補正発明は、ソリッドコアの直径が37〜41mmで、ディンプル数が360〜450個であるのに対し、刊行物記載の発明は、それらが不明な点
相違点2:補正発明は、カバーの硬度がJIS-C型硬度計での測定で77〜86度の範囲であると共に、コア表面の硬度より2〜5度硬くされているのに対し、刊行物記載の発明は、それらが不明な点

上記各相違点について検討する。

<相違点1について>
補正発明における、上記ソリッドコアの直径及びディンプル数は、ツーピースソリッドゴルフボールとしてよく知られたものであり、相違点1に係る補正発明の構成に格別な技術的意義は認められず、当業者が適宜選択し得る数値範囲にすぎない。

<相違点2について>
刊行物記載の発明におけるカバーは、上記のとおり、ハイミラン1706とハイミラン1605とを1:1の割合で配合したアイオノマー樹脂からなるものであり、JIS-C型硬度計で測定した場合の硬度が93度であることは、請求人も認めるところである。そうすると、刊行物記載の発明におけるコア表面硬度は78〜88度であるから、カバーの硬度はコア表面の硬度より5〜15度硬くされていることとなり、補正発明と刊行物記載の発明とは、カバーの硬度がコア表面の硬度より5度硬くされている点では一致している。
また、本願の当初明細書には、次の記載がある。
「【0025】次に、本発明のツーピースソリッドゴルフボールのカバーは、JIS-C型硬度計での測定で上記コア表面の硬度より1〜15度、特に2〜5度硬くなるようにしたものである。この場合、コア表面の硬度とカバー硬度との差が1度より小さいと反発性が低下し、飛距離が低下する。また、10度より大きいと打感が悪くなる(鈍い打感となる)。
【0026】カバー硬度は上記コア表面の硬度との硬度差を満たせば特に制限されるものではないが、JIS-C型硬度計での測定硬度が75〜90度、特に77〜86度であることが好ましく、硬度が75度未満であると、反発性が低下し、また90度を超えると打感が鈍く感じられる。
【0027】本発明において、上記硬度を有するカバーは、厚さ1.5〜1.95mm、特に1.55〜1.90mmに形成する。カバーの厚さが1.5mmより小さいと、ハーフトップに打撃した時の耐カット性が低下し、また1.95mmより大きいと反発性の低下がみられたり、打感が鈍くなる場合がある。」
上記記載によれば、コア表面の硬度よりカバー硬度を2〜5度硬くした点に格別の臨界的意義は認められない。また、カバー硬度が「90度を超えると打感が鈍く感じられる。」とされているが、【0027】の記載を参酌すれば、「打感」は、単にカバー硬度だけではなく、その厚さも重要なファクターであることが窺える。
一方、上記刊行物には、【表1】に「実施例3」として、コアの表面硬度80度のものが記載され、そのカバー硬度は上記のとおり93度であり、【表2】にはこの「実施例3」のものの「フィーリング評価」が「軽くソフトで良好○」と記載されており、「【0026】【発明の効果】本発明のツーピースゴルフボールは……飛行性能および打球感共に優れたものである。」とも記載されている。
そうすると、引用刊行物記載の発明と比較した場合に、補正発明が、カバー硬度を77〜86度とした点に格別の技術的意義があるとは認められず、当業者が適宜選択し得る値にすぎないといわざるを得ない。

そして、補正発明が奏する作用効果も、当業者が予期し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、補正発明は、上記刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によりその特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のように、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
(1)本願発明
本願の各請求項に係る発明は、平成15年8月22日付手続補正が上記のとおり却下されたので、平成14年6月7日付手続補正書により補正された明細書、及び、図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】直径が37mm〜41mmのソリッドコアにカバーを被覆し、該カバー表面に多数のディンプルを形成してなるツーピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアがJIS-C型硬度計での測定でコア表面の硬度が85度以下であり、コア中心の硬度がコア表面の硬度より10度以上17度以下の範囲で軟らかく、かつコア表面から5mm以内の硬度がコア表面の硬度より8度以内の範囲で軟らかくなるような硬度分布を有し、カバーの上記硬度は77〜86度の範囲であると共に、上記コア表面の硬度より1〜15度硬く、かつ厚さが1.5〜1.95mmであり、ディンプル数が360〜450個であることを特徴とするツーピースソリッドゴルフボール。
【請求項2】(記載を省略)
【請求項3】(記載を省略)」
(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)

(2)引用刊行物
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物、及び、その記載事項は、上記【2】(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明と上記【2】で検討した補正発明とは、カバーの硬度を、本願発明が「コア表面の硬度より1〜15度硬く」したのに対し、補正発明が「コア表面の硬度より2〜5度硬く」した点でのみ相違する。
そうすると、補正発明が上記【2】(3)に記載したとおり、刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その補正発明を含む本願発明も、同様の理由により、刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-28 
結審通知日 2005-03-02 
審決日 2005-03-15 
出願番号 特願平8-71135
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
P 1 8・ 575- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 山 田 忠 夫
特許庁審判官 木 原 裕
田 中 弘 満
発明の名称 ツーピースソリッドゴルフボール  
代理人 小島 隆司  
代理人 小林 克成  
代理人 重松 沙織  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ