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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1133887
審判番号 不服2004-80  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-10-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-05 
確定日 2006-03-30 
事件の表示 平成 7年特許願第 91536号「光記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月11日出願公開、特開平 8-263871〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成7年3月24日の出願であって、最初の拒絶理由通知に応答して平成14年8月12日付で手続補正がなされたが、平成15年12月2日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月5日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、平成16年2月4日付で手続補正がなされたものであり、その後当審において、前記平成16年2月4日付手続補正が却下されるとともに平成17年10月13日付で最後の拒絶理由が通知され、平成17年12月19日付で手続補正がなされたものである。

II.平成17年12月19日付の手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成17年12月19日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】 基本層構成が基板/第1保護層/記録層/第2保護層/反射放熱層/紫外線硬化樹脂層、又は、紫外線吸収層/基板/第1保護層/記録層/第2保護層/反射放熱層/紫外線硬化樹脂層からなり、該記録層の構成元素が主にAg、In、Te、Sbであり、それぞれの組成比をα、β、γ、δ(原子%)としたとき、α-γ/2≦-8の関係を満たし、δが30〜60原子%、かつ、劣化の活性化エネルギーが1.1eV以上であることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】 前記記録層の構成元素が主にAg、In、Te、Sbで、それぞれの組成比α、β、γ、δ(原子%)は、0<α≦5、0<β≦20、15≦γ≦30、30≦δ≦60、α+β+γ+δ=100を満たす請求項1に記載の光記録媒体。」と補正された。

そして、本件補正前の特許請求の範囲は、平成14年8月12日付手続補正で補正された次のとおりである。
「【請求項1】 基本層構成が基板/第1保護層/記録層/第2保護層/反射放熱層/紫外線硬化樹脂層、又は、紫外線吸収層/基板/第1保護層/記録層/第2保護層/反射放熱層/紫外線硬化樹脂層からなり、該記録層はSbとTeの合計組成比が65原子%以上、かつSb>Teであり、Ag、In、Al、Ga、Se、Ge、Pd及びPbの中から選ばれる少なくとも2種の元素を含み、かつ、劣化の活性化エネルギーが1.1eV以上であることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】 前記記録層の構成元素が主にAg、In、Te、Sbで、それぞれの組成比α、β、γ、δ(原子%)は
0<α≦5
0<β≦20
15≦γ≦30
30≦δ≦60
α+β+γ+δ=100
であり、しかもα-γ/2≦-8の関係を充すことを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。」

してみると、本件補正は、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明に対応するものと認められるところ、本件補正によって該請求項1に係る発明に関し、少なくとも、記録層の構成元素について、「SbとTeの合計組成比が65原子%以上」及び「かつSb>Teであり」との構成を削除する補正を含むものである。

ところで、本件補正は、最初の拒絶の理由に応答する補正によって通知することが必要になった拒絶理由を通知する最後の拒絶理由通知に応答してなされたものであるから、平成6年改正前特許法第17条の2第1項第4号の「拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。」になされたものであり、同条第3項において特許請求の範囲についてする補正は同項第1号乃至第4号に掲げる事項を目的とするものに限るとされているので、即ち請求項の削除、特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに限られるので、本件補正はこれらの目的に合致するものかを検討する。

本件補正によって、「SbとTeの合計組成比が65原子%以上」及び「かつSb>Teであり」との必須の構成要件とされていた構成を削除することは、限定的構成を削除している点で明らかに発明を拡張しているから、限定的減縮にあたらないことが明白であり、更に、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことも明らかである。

したがって、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項各号に掲げる事項を目的とするものに該当しない。
よって、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

III.特許請求の範囲の記載
平成17年12月19日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1,2は、平成14年8月12日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載されたとおりのものであるところ、そのうち請求項1の記載は次のとおりのものである。
「【請求項1】 基本層構成が基板/第1保護層/記録層/第2保護層/反射放熱層/紫外線硬化樹脂層、又は、紫外線吸収層/基板/第1保護層/記録層/第2保護層/反射放熱層/紫外線硬化樹脂層からなり、該記録層はSbとTeの合計組成比が65原子%以上、かつSb>Teであり、Ag、In、Al、Ga、Se、Ge、Pd及びPbの中から選ばれる少なくとも2種の元素を含み、かつ、劣化の活性化エネルギーが1.1eV以上であることを特徴とする光記録媒体。」

IV.判断
これに対し、当審による平成17年10月13日付の最後の拒絶理由は、
『 << 最後の拒絶理由 >>
本願の平成14年8月12日付手続補正は、下記の点で、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反する。


平成14年8月12日付手続補正は、請求項1及びその項を引用する請求項2において、「該記録層はSbとTeの合計組成比が65原子%以上、かつSb>Teであり、Ag、In、Al、Ga、Se、Ge、Pd及びPbの中から選ばれる少なくとも2種の元素を含み」との構成を規定するものであるが、(1)「SbとTeの合計組成比が65原子%以上」、(2)「Sb>Teであり」、(3)「Ag、In、Al、Ga、Se、Ge、Pd及びPbの中から選ばれる少なくとも2種の元素を含み」との構成は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
なお、意見書を検討しても、かかる補正に関し何らの釈明もない。
ちなみに、
(1)の点に関しては、本願明細書の表1のデータを検討すると、実施例2ではSbとTeの合計量が65.4at%となるから、それを根拠とした可能性が推測されるが、そもそも格別の根拠もなく実施例から新しい概念を導き出すことは、自明とはいえず新たな発明を構成するものという他なく、まして、AgInTeSbの合計量が他の実施例、比較例では100at%となっているにもかかわらず、その実施例2では合計量が80at%であり、そのデータそのものが矛盾しているから、その推測は成立し得ない。
(2)の点に関しては、TeとSbが同量の30at%の場合もあり、仮に実施例においてSb>Teの関係にあることがたまたま言える可能性があるとしても、そもそも格別の根拠もなく実施例から新しい概念を導き出すことは、自明とはいえず新たな発明を構成するものという他ない。なお、「Sb>Te」とはその量比の大小関係と一応解したが、本来意味が不明な表現といえる。
(3)の点に関しては、例えば「PdとPb」の組合せのような場合にまで当初明細書に言及されていないことが明白である。

最後の拒絶理由通知とする理由
原審の最初の拒絶の理由に応答する補正によって通知することが必要になった拒絶の理由のみを通知する拒絶理由通知である。
なお、最後の拒絶理由であるから、補正する場合には請求項の削除、限定的減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに限られ、構成の削除や構成を差し替えるなどによって発明を拡張、変更することはそれらの目的に合致しないことに留意されたい。』
というものである。

これに応答する平成17年12月19日付意見書において、上記拒絶の理由に対し何ら具体的な反論はなされていない。 該意見書では、補正の根拠を示し、拒絶査定の理由と原審の最初の拒絶理由を引用し、それに対し縷々反論・主張しているけれども、それらは上記最後の拒絶理由に対するものではない。 なお、同日付の手続補正で特許請求の範囲を変更し、当初実施例2を削除するなどの補正がなされたが、該手続補正は前記II.で判断したように補正の却下がなされている。
そして、再度、願書に最初に添付した明細書又は図面の記載を検討しても、上記拒絶の理由を覆せる記載は見いだせない。

したがって、上記『平成14年8月12日付手続補正は、請求項1及びその項を引用する請求項2において、「該記録層はSbとTeの合計組成比が65原子%以上、かつSb>Teであり、Ag、In、Al、Ga、Se、Ge、Pd及びPbの中から選ばれる少なくとも2種の元素を含み」との構成を規定するものであるが、(1)「SbとTeの合計組成比が65原子%以上」、(2)「Sb>Teであり」、(3)「Ag、In、Al、Ga、Se、Ge、Pd及びPbの中から選ばれる少なくとも2種の元素を含み」との構成は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。』は、妥当な理由というべきである。

V.むすび
以上のとおり、平成14年8月12日付でした手続補正は、平成6年改正前許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていないから、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-27 
結審通知日 2006-01-31 
審決日 2006-02-17 
出願番号 特願平7-91536
審決分類 P 1 8・ 572- WZ (G11B)
P 1 8・ 55- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蔵野 雅昭  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 相馬 多美子
川上 美秀
発明の名称 光記録媒体  
代理人 廣田 浩一  

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