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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1134302
異議申立番号 異議2003-71624  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-05-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-24 
確定日 2005-11-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3360378号「セラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法」の請求項1、2、5、6、8ないし10、13ないし17に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3360378号の請求項1ないし16に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第3360378号の請求項1ないし18に係る発明についての出願は、平成 5年11月 9日に特許出願され、平成14年10月18日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1,2,5,6,8,9,10,13,14,15,16,17に係る発明の特許について、異議申立人寺尾健吾より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知された後、平成16年11月15日に訂正請求(後日、取り下げ)がされ、当該訂正請求に対する訂正拒絶の理由が通知され、その後再度の取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年 9月 7日に再度の訂正請求がされたものである。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
上記平成17年 9月 7日付け訂正請求書に添付された訂正明細書の記載によれば、特許権者が求めている訂正の内容は、以下の訂正を行うものと認められる。

(1)訂正事項aー1
【請求項1】を削除する。

(2)訂正事項aー2
【請求項12】について、
「セラミックス粉末が紫外線吸光剤により被覆されていることを特徴とする請求項10記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。」
とある記載を、
「以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とするセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。(1)セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物およびセラミックス粉末の表面を被覆した有機染料である紫外線吸光剤を含有するシートスラリー組成物を支持体上に塗布、乾燥し、セラミックス・グリーンシートを作製する工程、(2)該セラミックス・グリーンシートに紫外線の照射と、ヴィアホールの形成を行なう工程、(3)ヴィアホールの形成されたセラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを塗布、乾燥、選択的に露光、現像することによりパターンを形成する工程。」と訂正するとともに、これを【請求項1】とする。

(3)訂正事項b
【請求項18】について、
「シートスラリー組成物が、安定化剤を含有することを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。」
とある記載を、
「以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とするセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。(1)セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物および紫外線吸光剤、安定化剤を含有するシートスラリー組成物を支持体上に塗布、乾燥し、セラミックス・グリーンシートを作製する工程、(2)該セラミックス・グリーンシートに紫外線の照射と、ヴィアホールの形成を行なう工程、(3)ヴィアホールの形成されたセラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを塗布、乾燥、選択的に露光、現像することによりパターンを形成する工程。」と訂正するとともに、これを【請求項2】とする。

(4)訂正事項c
【請求項2】について、【請求項3】と項番を繰り下げる。

(5)訂正事項d
【請求項3】について、【請求項4】と項番を繰り下げる。

(6)訂正事項e
【請求項4】について、【請求項5】と項番を繰り下げる。

(7)訂正事項f
【請求項5】について、【請求項6】と項番を繰り下げる。

(8)訂正事項g
【請求項6】について、【請求項7】と項番を繰り下げるとともに、「・・・請求項5記載の・・・」とある記載を「・・・請求項6記載の・・・」と訂正する。

(9)訂正事項h
【請求項7】について、【請求項8】と項番を繰り下げるとともに、「・・・請求項5記載の・・・」とある記載を「・・・請求項6記載の・・・」と訂正する。

(10)訂正事項i
【請求項8】について、【請求項9】と項番を繰り下げるとともに、「・・・請求項5記載の・・・」とある記載を「・・・請求項6記載の・・・」と訂正する。

(11)訂正事項j
【請求項9】について、【請求項10】と項番を繰り下げるとともに、「・・・請求項5記載の・・・」とある記載を「・・・請求項6記載の・・・」と訂正する。

(12)訂正事項k
【請求項10】を削除する。

(13)訂正事項l
【請求項11】について、「・・・請求項10記載の・・・」とある記載を「・・・請求項1記載の・・・」と訂正する。

(14)訂正事項m
【請求項13】について、【請求項12】と項番を繰り上げる。

(15)訂正事項n
【請求項14】について、【請求項13】と項番を繰り上げる。

(16)訂正事項o
【請求項15】について、【請求項14】と項番を繰り上げる。

(17)訂正事項p
【請求項16】について、【請求項15】と項番を繰り上げる。

(18)訂正事項q
【請求項17】について、【請求項16】と項番を繰り上げる。

(19)訂正事項r
段落【0007】について、
「・・・(1)セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物および紫外線吸光剤を含有するシートスラリー組成物・・・」とある記載を「・・・(1)セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物およびセラミックス粉末の表面を被覆した有機染料である紫外線吸光剤を含有するシートスラリー組成物・・・」と訂正する。

(20)訂正事項s
段落【0007】について、
「・・・パターンを形成する工程。」とある記載を、
「・・・パターンを形成する工程、あるいは、以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする。(1)セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物および紫外線吸光剤、安定化剤を含有するシートスラリー組成物を支持体上に塗布、乾燥し、セラミックス・グリーンシートを作製する工程、(2)該セラミックス・グリーンシートに紫外線の照射と、ヴィアホールの形成を行なう工程、(3)ヴィアホールの形成されたセラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを塗布、乾燥、選択的に露光、現像することによりパターンを形成する工程。と訂正する。

(21)訂正事項t
段落【0031】について、
「・・・グリーンシートの厚みを20〜40mμに・・・」とある記載を「・・・グリーンシートの厚みを20〜40μm・・・」と訂正する。

(22)訂正事項u
段落【0031】について、
「・・・機械的強度がが向上しない。・・・」とある記載を「・・・機械的強度が向上しない。・・・」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aー1
訂正事項aー1は、【請求項1】を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2)訂正事項aー2
訂正事項aー2は、発明を構成する事項である「紫外線吸光剤」について、「セラミックス粉末の表面を被覆した有機染料」というものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)訂正事項b
訂正事項bは、発明を構成する事項である「シートスラリー組成物」について、「安定化剤を含有する」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(4)訂正事項cないしj
訂正事項cないしjは、上記訂正事項aー1,aー2,bとの整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(5)訂正事項k
訂正事項kは、【請求項10】を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(6)訂正事項l
訂正事項lは、上記訂正事項a-1,aー2,kとの整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(7)訂正事項mないしq
訂正事項mないしqは、上記訂正事項a-1,aー2,kとの整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(8)訂正事項r
訂正事項rは、上記訂正事項aー2との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(9)訂正事項s
訂正事項sは、上記訂正事項bとの整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(10)訂正事項t,u
訂正事項t,uは、明らかな誤記を訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3.独立特許要件の可否
(1)請求項1(訂正前の請求項12)に係る発明について
上記訂正事項aー2により訂正される請求項1に記載されている事項により構成される発明は、後記「第3.4.(1)」の項で検討されるとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(2)請求項2(訂正前の請求項18)に係る発明について
上記訂正事項bにより訂正される請求項2に記載されている事項により構成される発明は、後記「第3.4.(2)」の項で検討されるとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

4.むすび
したがって、上記各訂正は、平成15年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法改正前の同法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3.特許異議の申立てについての判断
1.申立ての理由の概要
異議申立人寺尾健吾は、請求項1,2,5,6,8,9,10,13,14,15,16,17に係る発明は、甲第1号証(特開平5-170517号公報)、甲第2号証(特公昭51-37562号公報)、甲第3号証(特開昭61-158861号公報)及び甲第4号証(特開昭62-220541号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから特許を取り消すべき旨、主張している。

2.本件発明
上記第2.訂正の適否についての判断で示したように上記各訂正が認められるから、本件の請求項1ないし16に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」ないし「本件発明16」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により構成される次のとおりのものである。

「【請求項1】 以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とするセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
(1)セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物およびセラミックス粉末の表面を被覆した有機染料である紫外線吸光剤を含有するシートスラリー組成物を支持体上に塗布、乾燥し、セラミックス・グリーンシートを作製する工程、(2)該セラミックス・グリーンシートに紫外線の照射と、ヴィアホールの形成を行なう工程、(3)ヴィアホールの形成されたセラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを塗布、乾燥、選択的に露光、現像することによりパターンを形成する工程。
【請求項2】 以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とするセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
(1)セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物および紫外線吸光剤、安定化剤を含有するシートスラリー組成物を支持体上に塗布、乾燥し、セラミックス・グリーンシートを作製する工程、(2)該セラミックス・グリーンシートに紫外線の照射と、ヴィアホールの形成を行なう工程、(3)ヴィアホールの形成されたセラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを塗布、乾燥、選択的に露光、現像することによりパターンを形成する工程。
【請求項3】 上記(2)工程において、紫外線の選択的な照射、現像によりヴィアホールを形成することを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項4】 上記(2)工程において、紫外線の照射により該セラミックス・グリーンシートの少なくとも表面を光硬化した後に、ヴィアホールを形成することを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項5】 上記(2)工程において、ヴィアホールを形成した後に、紫外線の照射によりセラミックス・グリーンシートの少なくとも表面を光硬化することを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項6】 感光性ペーストが、感光性導電ペースト、感光性抵抗体ペースト、感光性誘電ペーストおよび感光性絶縁ペーストの群から選ばれた少なくとも一種であること特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項7】 感光性導電ペーストが、導電体粉末および感光性樹脂組成物を含有することを特徴とする請求項6記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項8】 感光性抵抗体ペーストが、抵抗体粉末および感光性樹脂組成物を含有することを特徴とする請求項6記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項9】 感光性誘電ペーストが、誘電体粉末および感光性樹脂組成物を含有することを特徴とする請求項6記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項10】 感光性絶縁ペーストが、絶縁体粉末および感光性樹脂組成物を含有することを特徴とする請求項6記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項11】 有機染料がアゾ系染料であることを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項12】 紫外線吸光剤の350〜450nmにおける吸光度の積分値が10〜150であることを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項13】 紫外線吸光剤の350〜450nmにおける吸光度の積分値が20〜100であることを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項14】 シートスラリー組成物が、セラミックス粉末、側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物および光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項15】 セラミックス粉末が、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、コーディライト、スピネル、フォルステライト、アノーサイト、セルジアン、シリカおよび窒化アルミの群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項16】 セラミックス粉末が、酸化物換算表記で
SiO2 30〜70重量%
Al2 O3 5〜25重量%
CaO 5〜25重量%
MgO 0〜10重量%
B2 O3 3〜50重量%
TiO2 0〜15重量%
の組成範囲で、総量が95重量%以上となるガラス組成粉末40〜60重量%と、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、コーディライト、スピネル、フォルステライト、アノーサイト、セルジアン、シリカおよび窒化アルミの群から選ばれた少なくとも一種の無機フィラー粉末60〜40重量%との原料混合物であることを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。」

3.刊行物等
特許異議申立人が証拠として提出した刊行物1ないし4には、それぞれ、以下のような事項が記載されている。すなわち、

(1)刊行物1:甲第1号証(特開平5-170517号公報)には、以下の記載が認められる。
(イ)「【請求項1】セラミックス粉末と感光性樹脂組成物とを含有することを特徴とするセラミックス・グリ-ンシ-ト。
【請求項2】(a)セラミックス粉末、(b)側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、(c)光反応性化合物および(d)光重合開始剤を含有することを特徴とするセラミックス・グリ-ンシ-ト。
【請求項3】セラミックス粉末がアルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、コ-ディライト、スピネル、フォルステライト、アノ-サイト、セルジアンおよびシリカの群から選ばれた少なくとも一種である請求項1または2記載のセラミックス・グリ-ンシ-ト。
【請求項4】セラミックス粉末が酸化物換算表記で
SiO2 30〜70重量%
Al2 O3 5〜25重量%
CaO 5〜25重量%
MgO 0〜10重量%
B2 O3 3〜50重量%
TiO2 0〜15重量%
の組成範囲で、総量が95重量%以上となるガラス組成粉末40〜60重量%と、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、コ-ディライト、フォルステライト、スピネル、アノ-サイト、セルジアンおよびシリカの群から選ばれる少なくとも一種の無機フィラ-粉末60〜40重量%との原料混合物である請求項1〜3のいずれかであるセラミックス・グリ-ンシ-ト。」(【特許請求の範囲】)
(ロ)「【産業上の利用分野】
本発明は、焼成セラミックス基板などの形成に好適に用いられるセラミックス・グリ-シ-トに関するものであり、さらに詳しくは半導体素子を搭載それらを相互に配線した高密度実装などに好適に用いられる焼成セラミックス基板、特に多層セラミック基板に好適に用いるセラミックで作製したグリ-ンシ-トに関するものである。」(段落【0001】)
(ハ)「本発明のセラミック・グリ-ンシ-トの形成に用いられる感光性樹脂としては、従来から公知の感光性樹脂を適用することができる。これらの感光性樹脂からなる感光層は活性な光線を照射することにより不溶化または可溶化する層である。」(段落【0024】)
(ニ)「・・・スラリ-はドクタブレ-ドを用いてポリエステ
ルフィルム上に連続的に厚さ0.01mm〜0.5mmに成形する。この時、粉末の調合、成形工程では紫外線を遮断できるところで行なう必要がある。そうでないとグリ-ンシ-トが紫外線によって光硬化してしまい、本発明の効果を発揮できるシ-トが得られない。次いで80〜120℃の温度で加熱して溶媒類を蒸発させ、シ-トにする。」(段落【0042】)
(ホ)「続いて、得られたセラミックス・グリ-シ-トはフオトマスクパタ-ンを用いて露光、現像してヴィアホ-ル或いはスルホ-ル径0.005〜0.2mmの孔をヴィアホ-ルピッチ0.01〜5.0mmの間隔にあけた後、このヴィアホ-ル部に印刷、スキ-ジ、ディスペンサあるいはロ-ラなどの埋め込み法によって銅、銀、金などの導体ペ-ストを充填してヴィアホ-ル内に配線の層間隔接続用の導体を形成する。また必要に応じてシ-ト表面に所定の導体、絶縁体或いは抵抗体パタ-ンを印刷する。・・・」(段落【0043】)
(ヘ)「【発明の効果】本発明は上述の構成を有するため、ヴィアホールやスル-ホ-ルの形成が極めて容易にかつ精度よくできしかも微細な孔を確実に安価に形成できる利点がある。」(段落【0078】)

(2)刊行物2:甲第2号証(特公昭51-37562号公報)には、以下の記載が認められる。
(ト)「上記本発明の方法によると、・・・中略・・・したがって、染料の色は橙黄・緑となる。」(公報第2欄第26〜37行)
(チ)「半導体工業において、・・・中略・・・を第2図に示す。」(公報第3欄第3〜7行,第2図)
(リ)「感光性樹脂中に・・・中略・・・することが可能である。」(公報第3欄第29〜第4欄4行)

(3)刊行物3:甲第3号証(特開昭61-158861号公報)には、以下の記載が認められる。
(ヌ)「1)(a)・・・略・・・セラミック固体の微細粒子、および
(b)・・・略・・・無機結合剤の微細粒子・・・略・・・
(c)・・・略・・・からなる群から選択される有機重合体性結合剤・・・略・・・
および(d)光開始系
を含有する実質的に非酸化性雰囲気中で焼成可能な感光性セラミック被覆組成物.」(特許請求の範囲)
(ル)「本発明は感光性セラミック被覆組成物に関しそして更に詳しくはセラミック成分が誘電材料である該組成物に関する。」(公報第2頁左下欄2〜4行)
(ヲ)「しかし、本発明は誘電性固体例えばアルミナ、チタン酸塩、ジルコン酸塩およびすず酸塩の分散液を製造するのに特に適当である。」(公報第3頁右下欄14〜17行)

(4)刊行物4:甲第4号証(特開昭62-220541号公報)には、以下の記載が認められる。
(ワ)「(1) 次の混合物を包含し、弱酸化性雰囲気で焼付けることができる感光性導電性金属被覆組成物.
a.導電性金属の円滑な微細に分割された粒子,
・・・略・・・
c.アクリル重合体結合剤,
・・・略・・・
e.光開始系の
f.光硬化性単量体,・・・」(特許請求の範囲)

4.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と上記刊行物1ないし4に記載された各発明とを対比すると、前記各刊行物に記載された発明は、本件発明1を構成する事項である、セラミックス・グリーンシートを作製する工程において、「セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物およびセラミックス粉末の表面を被覆した有機染料である紫外線吸光剤を含有するシートスラリー組成物を支持体上に塗布、乾燥(する)」構成を備えておらず、当該事項により本件発明1は、「紫外線が効果的に吸収されてグリーンシートの下部まで達することができるので、シートの内部まで均一に光硬化されてグリーンシートの耐薬品性、寸法精度が向上し、さらに機械強度が大幅に向上する。」という明細書に記載の効果を奏するものであり、本件発明1が上記刊行物1ないし4に記載された各発明と同一であるとも、上記刊行物1ないし4に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとも言えない。

(2)本件発明2について
本件発明2と上記刊行物1ないし4に記載された各発明とを対比すると、前記各刊行物に記載された発明は、本件発明2を構成する事項である、セラミックス・グリーンシートを作製する工程において、「セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物および紫外線吸光剤、安定化剤を含有するシートスラリー組成物を支持体上に塗布、乾燥(する)」構成を備えておらず、当該事項により本件発明2は、「ゲル化反応を引き起こす金属や酸化物粉末との錯体化、あるいは酸官能基との塩形成などの効果のある化合物で粉末を表面処理し、感光性グリーンシートを安定化させる。」という明細書に記載の効果を奏するものであり、本件発明2が上記刊行物1ないし4に記載された各発明と同一であるとも、上記刊行物1ないし4に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとも言えない。

(3)本件発明3ないし16について
本件発明3ないし16と上記刊行物1ないし4に記載された各発明とを対比すると、請求項3ないし16が請求項1を引用するものであるから、本件発明3ないし16も、上記本件発明1の構成の一部と共通の構成を備えているものとなる。
したがって、上記(1)と同じ理由により、本件発明3ないし16は、刊行物1ないし4に記載された各発明と同一であるとも、上記刊行物1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも言えない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
セラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とするセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
(1)セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物およびセラミックス粉末の表面を被覆した有機染料である紫外線吸光剤を含有するシートスラリー組成物を支持体上に塗布、乾燥し、セラミックス・グリーンシートを作製する工程、(2)該セラミックス・グリーンシートに紫外線の照射と、ヴィアホールの形成を行なう工程、(3)ヴィアホールの形成されたセラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを塗布、乾燥、選択的に露光、現像することによりパターンを形成する工程。
【請求項2】以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とするセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
(1)セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物および紫外線吸光剤、安定化剤を含有するシートスラリー組成物を支持体上に塗布、乾燥し、セラミックス・グリーンシートを作製する工程、(2)該セラミックス・グリーンシートに紫外線の照射と、ヴィアホールの形成を行なう工程、(3)ヴィアホールの形成されたセラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを塗布、乾燥、選択的に露光、現像することによりパターンを形成する工程。
【請求項3】上記(2)工程において、紫外線の選択的な照射、現像によりヴィアホールを形成することを特徴とする請求項1記載のセラミッグス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項4】上記(2)工程において、紫外線の照射により該セラミックス・グリーンシートの少なくとも表面を光硬化した後に、ヴィアホールを形成することを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項5】上記(2)工程において、ヴィアホールを形成した後に、紫外線の照射によりセラミックス・グリーンシートの少なくとも表面を光硬化することを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項6】感光性ペーストが、感光性導電ペースト、感光性抵抗体ペースト、感光性誘電ペーストおよび感光性絶縁ペーストの群から選ばれた少なくとも一種であること特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項7】感光性導電ペーストが、導電体粉末および感光性樹脂組成物を含有することを特徴とする請求項6記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項8】感光性抵抗体ペーストが、抵抗体粉末および感光性樹脂組成物を含有することを特徴とする請求項6記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項9】感光性誘電ペーストが、誘電体粉末および感光性樹脂組成物を含有することを特徴とする請求項6記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項10】感光性絶縁ペーストが、絶縁体粉末および感光性樹脂組成物を含有することを特徴とする請求項6記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項11】有機染料がアゾ系染料であることを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項12】紫外線吸光剤の350〜450nmにおける吸光度の積分値が10〜150であることを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項13】紫外線吸光剤の350〜450nmにおける吸光度の積分値が20〜100であることを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項14】シートスラリー組成物が、セラミックス粉末、側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物および光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項15】セラミックス粉末が、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、コーディライト、スピネル、フォルステライト、アノーサイト、セルジアン、シリカおよび窒化アルミの群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【請求項16】セラミックス粉末が、酸化物換算表記で
SiO2 30〜70重量%
Al2O3 5〜25重量%
CaO 5〜25重量%
MgO 0〜10重量%
B2O3 3〜50重量%
TiO2 0〜15重量%
の組成範囲で、総量が95重量%以上となるガラス組成粉末40〜60重量%と、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、コーディライト、スピネル、フォルステライト、アノーサイト、セルジアン、シリカおよび窒化アルミの群から選ばれた少なくとも一種の無機フィラー粉末60〜40重量%との原料混合物であることを特徴とする請求項1記載のセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、焼成セラミックス基板などの形成に好適に用いられるセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法に関するものである。セラミックス・グリーンシートとは、半導体素子を搭載し、かつそれらを相互に配線した高密度実装などに好適に用いられる焼成セラミックス基板、特に多層セラミックス基板に好適に用いられるセラミックスで作製したグリーンシートであり、さらに、セラミックス多層基板の内層用電極の微細な回路パターンおよび微細なヴィアホール形成に有効なグリーンシートのことである。
【0002】
【従来の技術】
多層セラミックス基板は、主としてグリーンシート積層法によって作製されている。グリーンシート積層法は、導体を印刷し、ヴィアホール加工を済ませたグリーンシートを多数枚積層して熱圧着後、同時に焼成して多層基板とする方法である。
【0003】
従来のセラミックス・グリーンシートは、特開平1-232797号公報や特開平2-141458号公報に記載のごとく、通常、セラミックス粉末、有機バインダー、可塑剤、溶媒および必要に応じて分散剤などを適宜配合した後、混合してスラリーとした後、得られたスラリーをドクターブレード法などの公知の方法によってグリーンシートを形成している。得られたグリーンシートはカッターあるいは打抜き型によって所望の形状に加工した後、さらにヴィアホールやスルーホール(以下ヴィアホールで代表して説明する)を設けるためグリーンシートにパンチ・ダイによる金型やレーザでの穴あけ加工を行なう。つづいて、グリーンシートに通常のスクリーン印刷法によってヴィアホール内に導電ペーストを充填する。
【0004】
また、特開昭63-64953号公報および特開平2-204356号公報には、セラミックス原料、紫外線硬化型液状化合物および光重合開始剤を含有する組成物に紫外線を照射して硬化させたセラミックス・グリーンシートやガラスセラミックス・グリーンシートにビスアジド化合物を含むグリーンシートが提案されている。
【0005】
一方、従来グリーンシート上に導体パターンを形成するには、導電ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられてきたが、この方法ではL(線幅)/S(幅間隔)=80μm/80μm以下の微細パターンの形成は困難である。そこで、最近、フォトリソグラフィ(写真製版技術)法を利用して微細な導体パターン形成ができる感光性導電ペーストが提案されている。この感光性導電ペーストは銅、金あるいはタングステンなどの導電粉末、感光性樹脂、光重合開始剤、および溶媒などを含んだ組成物のペーストからなる。このペーストを焼成後のセラミックス基板などにスクリーン印刷法で塗布した膜を乾燥後、回路パターンを有するフォトマスクを用いて紫外線を照射し、露光部を硬化する。次に、現像液を用いて未露光部の硬化していない部分を除去してパターン形成する。しかしながら、焼成していないグリーンシート上に感光性導電ペーストを用いて導体パターンを形成しようとする場合には、グリーンシートの耐薬品性や耐溶解性が劣るため導電ペーストに含有する有機溶媒とグリーンシート中のポリマーバインダーとが反応し、現像時に未露光部の除去が非常に難しいという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、セラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを用いてフォトリソグラフィ法により良好なパターンを形成する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とするセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法により達成される。(1)セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物およびセラミックス粉末の表面を被覆した有機染料である紫外線吸光剤を含有するシートスラリー組成物を支持体上に塗布、乾燥し、セラミックス・グリーンシートを作製する工程、(2)該セラミックス・グリーンシートに紫外線の照射と、ヴィアホールの形成を行なう工程、(3)ヴィアホールの形成されたセラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを塗布、乾燥、選択的に露光、現像することによりパターンを形成する工程、あるいは、
以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする。(1)セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物および紫外線吸光剤、安定化剤を含有するシートスラリー組成物を支持体上に塗布、乾燥し、セラミックス・グリーンシートを作製する工程、(2)該セラミックス・グリーンシートに紫外線の照射と、ヴィアホールの形成を行なう工程、(3)ヴィアホールの形成されたセラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを塗布、乾燥、選択的に露光、現像することによりパターンを形成する工程。
【0008】
すなわち、本発明はセラミックスで作製したグリーンシート自体に感光性を付与せしめることが重要であり、感光性を付与したグリーンシートに紫外線を照射して光硬化させた後、グリーンシート上に感光性ペーストによりパターンを形成できるものである。
【0009】
本発明の(1)工程において使用されるシートスラリー組成物について説明する。シートスラリー組成物は、セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物および紫外線吸光剤を含有する。
【0010】
本発明において使用されるセラミックス粉末としては特に限定されず、低温焼成用など公知のセラミック絶縁材料がいずれも適用できる。
【0011】
本発明において使用されるセラミックス粉末としては、セラミックス粉末単独、ガラス-セラミックス複合系、結晶化ガラスなどがあげられる。
【0012】
セラミックス粉末単独で用いる場合の例としては、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、マグネシア(MgO)、ベリリア(BeO)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、コーディライト(5SiO2・2Al2O3・2MgO)、スピネル(MgO・Al2O3)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、アノーサイト(CaO・Al2O3・2SiO2)、セルジアン(BaO・Al2O3・2SiO2)、シリカ(SiO2)、クリノエンスタタイト(MgO・SiO2)、窒化アルミ(AlN)などの粉末、あるいは低温焼成セラミックス粉末があげられる。
【0013】
ガラス-セラミックス複合系の例としては、例えばSiO2、Al2O3、CaO、B2O3および必要に応じてMgOおよびTiO2などを含むガラス組成粉末と、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、コーディライト、スピネル、フォルステライト、アノーサイト、セルジアン、シリカおよび窒化アルミの群から選ばれる少なくとも一種の無機フィラー粉末との原料混合物があげられる。より好ましくはセラミックス粉末が酸化物換算表記で
SiO2 30〜70重量%
Al2O3 5〜25重量%
CaO 5〜25重量%
MgO 0〜10重量%
B2O3 3〜50重量%
TiO2 0〜15重量%
の組成範囲で、総量が95重量%以上となるガラス組成粉末40〜60重量%と、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、コーディライト、スピネル、フォルステライト、アノーサイト、セルジアン、シリカおよび窒化アルミの群から選ばれた少なくとも一種の無機フィラー粉末60〜40重量%との原料混合物である。すなわち、SiO2、Al2O3、CaO、MgO、B2O3、TiO2の組成範囲は、ガラス組成粉末中の割合であり、これらの成分がガラス組成粉末中で総量95重量%以上であることが好ましい。残りの5重量%はNa2O、K2O、BaO、PbO、Fe2O3、Mn酸化物、Cr酸化物、NiO、Co酸化物などを含有することができる。
【0014】
ガラス-セラミックス複合系の具体例としては、SiO2-B2O3系ガラス、PbO-SiO2-Al2O3-B2O3系ガラス、CaO-SiO2-Al2O3-B2O3系ガラスなどに、Al2O3、石英(SiO2)、ZrO2、コーディライトなどのセラミックス成分を加えたものがあげられる。
【0015】
ガラス組成粉末中のSiO2は30〜70重量%の範囲であることが好ましく、30重量%未満の場合はガラス層の強度や安定性が低下し、また誘電率や熱膨張係数が高くなり所望の値から外れやすい。また70重量%より多くなると焼成基板の熱膨張係数が高くなり、また1000℃以下の焼成が困難となる。
【0016】
Al2O3は5〜25重量%の範囲で配合することが好ましい。5重量%未満ではガラス相中の強度が低下するうえ、1000℃以下での焼成が困難となる。25重量%を越えるとガラス組成をフリット化する温度が高くなり過ぎる。
【0017】
CaOは5〜25重量%の範囲で配合するのが好ましい。5重量%より少なくなると所望の熱膨張係数が得られなくなり、また1000℃以下での焼成が困難となる。25重量%を越えると誘電率や熱膨張係数が大きくなり好ましくない。MgOは0〜10重量%の範囲で配合することが好ましく、これによりガラスの溶融温度の制御が容易になる。10重量%を越えると得られる基板の熱膨張係数が高くなる。
【0018】
B2O3はガラスフリットを1300〜1450℃付近の温度で溶解するため、およびAl2O3が多い場合でも誘電率、強度、熱膨張係数、焼結密度などの電気、機械および熱的特性を損なうことのないようにセラミックス焼成温度を800〜1000℃の範囲に制御するために配合することが好ましく、配合量としては3〜50重量%の範囲が好ましい。3重量%未満では、B2O3が多すぎるとセラミックスの強度が低下しやすく、また50重量%を越えると、ガラスの安定性が低下し、無機フィラー(結晶)とガラスとの反応による再結晶化が速くなり、また、多層基板とした場合にガラス相が滲み出る現象が起こり好ましくない。
【0019】
TiO2は0〜15重量%の範囲で配合することが好ましい。本発明の低温焼成セラミックス基板は焼成前には非晶質ガラスと無機フィラーとの混合物であるが、フィラーの種類によっては非晶質ガラスとセラミックスと結晶化ガラスの部分結晶化セラミックスとなっていると推定される。TiO2は結晶化ガラスの生成において有効な核形成物質として作用し、上記範囲にあることが好ましい。
【0020】
無機フィラー粉末は、基板の機械的強度の向上や熱膨張係数を制御するのに有効であり、とくにアルミナ、ジルコニア、ムライト、コーディライト、アノーサイトはその効果が優れている。無機フィラーの割合が60重量%を越えると焼結しにくくなり、1000℃以下で焼結することが困難になる。また40重量%未満では、熱膨張係数の制御や低誘電率の基板が得られにくくなる。したがって、無機フィラー粉末をこの範囲とすることによりセラミックスの焼成温度を800〜1000℃とし、強度、誘電率、熱膨張係数、焼結密度、体積固有抵抗、収縮率を所望の特性とすることができる。
【0021】
本発明で使用される無機フィラー粉末中、不純物として、0〜5重量%までのNa2O、K2O、BaO、PbO、Fe2O3、Mn酸化物,Cr酸化物,NiO,Co酸化物などを含有することができる。
【0022】
ガラス組成粉末の作製法としては、例えば、原料であるSiO2、Al2O3、CaO、MgO、B2O3、TiO2などを所定の配合組成となるように混合し、1250〜1450℃で溶融後、急冷し、ガラスフリットにしてから粉砕して0.5〜3μmの微細な粉末とする方法がある。原料としては、高純度の炭酸塩、酸化物、水酸化物などを使用できる。またガラス粉末の種類や組成によっては99.99%以上の超高純度なアルコキシドや有機金属の原料を使用し、ゾル・ゲル法で均質に作製した粉末を使用すると低誘電率で、緻密で、高強度なセラミックス基板が得られるので好ましい。
【0023】
結晶化ガラスの具体例としては、MgO-Al2O3-SiO2系やLi2O-Al2O3-SiO2系の結晶化ガラスなどが使用される。結晶化ガラスはたとえばMgO-Al2O3-SiO2にB2O3と核形成物質を加えて、900〜1000℃で焼成し、コーディライト結晶を析出させ高強度化を図ったものや、Li2O-Al2O3-SiO2にB2O3と核形成物質を加え、スポジュメンを析出させ、同じく高強度化を図ったものも使用される。
【0024】
上記において使用するセラミックス粉末の粒子径および比表面積は作製しようとするグリーンシートの厚みや焼成後の収縮率を考慮して選ばれるが、粉末の場合は粒子径0.2〜4μm、比表面積2〜30m2/gを同時に満たすことが好ましい。より好ましい範囲は粒子径0.5〜3μm、比表面積2〜20m2/gである。この範囲にあると紫外線露光時において光が十分透過し、上下の孔径差のない均一なヴィアホールが得られる。粉末粒子径が0.2μm未満の場合、または、比表面積が30m2/gを越える場合、粉末が細かくなりすぎて露光時において光が散乱されて未露光部分を硬化するようになる。このため現像時に真円度のあるヴィアホールが得られなくなる。また焼成後の収縮率が大きくなり高精度のグリーンシートが得られない。粉末の形状としては、球状であることが好ましく、粒度分布が鋭いと紫外線露光時に散乱の影響を低く抑制できるので好ましい。
【0025】
本発明のセラミックス・グリーンシートの形成に用いられる光硬化性樹脂としては、従来から公知の光硬化性樹脂を適用することができる。これらの光硬化性樹脂からなる感光層は活性な光線を照射することにより不溶化する層である。光硬化性物質の例としては、(1)1分子に不飽和基などを1つ以上有する官能性のモノマーやオリゴマーを適当なポリマーバインダーと混合したもの。
(2)芳香族ジアゾ化合物、芳香族アジド化合物、有機ハロゲン化合物などの感光性化合物を適当なポリマーバインダーと混合したもの。
(3)既存の高分子に感光性の基をペンダントさせることにより得られる感光性高分子あるいはそれを改質したもの。
(4)ジアゾ系アミンとホルムアルデヒドとの縮合物などいわゆるジアゾ樹脂といわれるもの。
などがあげられる。
【0026】
特に好ましい光硬化性樹脂組成物は、側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物および光重合開始剤を含有するものであり、この共重合体は不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物を共重合させて形成したアクリル系共重合体に、エチレン性不飽和基を側鎖に付加させることによって製造することができる。
【0027】
不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの酸無水物などがあげられる。一方、エチレン性不飽和化合物の具体的な例としては、メチルアクリラート、メチルメタアクリラート、エチルアクリラート、エチルメタクリラート、n-プロピルアクリラート、イソプロピルアクリラート、n-ブチルアクリラート、n-ブチルメタクリラート、sec-ブチルアクリラート、sec-ブチルメタクリラート、イソ-ブチルアクリラート、イソブチルメタクリラート、tert-ブチルアクリラート、tert-ブチルメタクリラート、n-ペンチルアクリラート、n-ペンチルメタクリラート、スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレンなどがあげられるが、これらに限定されない。これらのアクリル系主鎖ポリマの主重合成分として前記のエチレン性不飽和化合物の中から少なくともメタクリル酸メチルを含むことによって熱分解性の良好な共重合体を得ることができる。
【0028】
側鎖のエチレン不飽和基としてはビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基のようなものがある。このような側鎖をアクリル系共重合体に付加させる方法としては、アクリル系共重合体中のカルボキシル基にグリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライドを付加反応させて作る方法がある。
【0029】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどがあげられる。また、アクリル酸クロライド化合物としては、アクリル酸クロライド、メタアクリル酸クロライド、アリルクロライドなどがあげられる。これらのエチレン性不飽和化合物あるいはアクリル酸クロライドの付加量としては、アクリル系共重合体中のカルボキシル基に対して0.05〜1モル当量が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.8モル当量である。付加量が0.05モル当量未満では感光特性が不良となりパターンの形成が困難になるため好ましくない。また、付加量が1モル当量より大きい場合は、未露光部の現像液溶解性が低下したり、塗布膜の硬度が低くなり好ましくない。
【0030】
こうして得られた側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル重合体の酸価(AV)は50〜180が好ましく、より好ましくは70〜140である。さらに好ましくは80〜120の範囲である。酸価が50未満であるとエチレン性不飽和基の量が増加し、感光性を有するカルボキシル基の割合が低下するので現像許容幅が狭いうえ、ヴィアホールエッジの切れが悪くなる。また酸価が180を越えると未露光部の現像液に対する溶解性が低下するようになるため現像液濃度を濃くすると露光部まで剥がれが発生し、高精度を有するヴィアホールが得られにくくなる。またグリーンシートの硬度が低下する。また上記の好ましい酸価を有するポリマにおいてポリマの分子量分布が鋭いほど、現像特性が向上し、微細なヴィアホールが得られるので好ましい。
【0031】
これらの光硬化性樹脂は、ポリマーバインダーとして作用するものであるが、ポリマーバインダー成分として非感光性ポリマーを含有することが好ましい。ポリマーバインダー成分として非感光性ポリマーを含有すると露光前のグリーンシートの引っ張り強度や伸びを高くすることができるので好ましい。引っ張り強度が向上するとグリーンシートの厚みを20〜40μmに薄くすることができる。具体的には非感光性ポリマーとして、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体、-メチルスチレン重合体、ブチルメタクリレート樹脂などがあげられる。また感光性物質が感光性モノマのみを含む場合には、このような非感光性ポリマバインダーを含むことが機械的強度を向上させる上で重要である。このような非感光性ポリマバインダーの溶媒としてはアルコール、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、ブタノール、メチルイソブチルケトン、イソホロン、イソプロピルアルコールなどが適宜用いられる。また、ポリマバインダーは可塑剤や分散剤を含んでいても良い。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリンなどが用いられる。分散剤としては、ソルビタン酸エステル、アルキレングリコール、ポリカルボン酸類などが好ましく用いられる。非感光性ポリマーの含有量は感光性ポリマーバインダーの5〜80重量%であるのが好ましい。5重量%未満では、伸びの向上に対して効果が低く、80重量%を越えるとグリーンシートに紫外線を照射しても十分硬化されないのでグリーンシートの耐薬品性や耐溶解性や機械的強度が向上しない。後のヴィアホール形成をフォトリソグラフィー法で行なわない場合には、非感光性ポリマーバインダーの含有量は、6〜15重量%で十分である。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体、-メチルスチレン重合体、ブチルメタクリレート樹脂などがあげられる。
【0032】
本発明で使用される光反応性化合物は光反応性を有する炭素-炭素不飽和結合を含有する化合物で、その具体的な例としてアリルアクリラート、ベンジルアクリラート、ブトキシエチルアクリラート、ブトキシトリエチレングリコールアクリラート、シクロヘキシルアクリラート、ジシクロペンタニルアクリラート、ジシクロペンテニルアクリラート、2-エチルヘキシルアクリラート、グリセロールアクリラート、グリシジルアクリラート、ヘプタデカフロロデシルアクリラート、2-ヒドロキシエチルアクリラート、イソボニルアクリラート、2-ヒドロキシプロピルアクリラート、イソデキシルアクリラート、イソオクチルアクリラート、ラウリルアクリラート、2-メトキシエチルアクリラート、メトキシエチレングリコールアクリラート、メトキシジエチレングリコールアクリラート、オクタフロロペンチルアクリラート、フェノキシエチルアクリラート、ステアリルアクリラート、トリフロロエチルアクリラート、アリル化シクロヘキシルジアクリラート、ビスフェノールAジアクリラート、1,4-ブタンジオールジアクリラート、1,3-ブチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、トリエチレングリコールジアクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリラート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリラート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリラート、グリセロールジアクリラート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリラート、ネオペンチルグリコールジアクリラート、プロピレングリコールジアクリラート、ポリプロピレングリコールジアクリラート、トリグリセロールジアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラートおよび上記のアクリラートをメタクリラートに変えたもの、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1-ビニル-2-ピロリドンなどが挙げられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体は、光反応性化合物に対して、通常重量比で0.1〜10倍量、好ましくは0.5〜5倍量用いる。該アクリル系共重合体の量が少なすぎると、スラリーの粘度が小さくなり、スラリー中での分散の均一性が低下するおそれがある。一方、アクリル系共重合体の量が多すぎれば、未露光部の現像液への溶解性が不良となる。
【0033】
本発明で使用される光重合開始剤の具体的な例として、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4-ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4-ジクロロベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニル-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタノール、ベンジル-メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン、β-クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4-アジドベンザルアセトフェノン、2,6-ビス(p-アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6-ビス(p-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン、2-フェニル-1,2-ブタジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1,3-ジフェニル-プロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシ-プロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、ミヒラ-ケトン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N-フェニルチオアクリドン、4、4-アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホルフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン及びエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組合せなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0034】
光重合開始剤は、側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体と光反応性化合物の和に対し、0.1〜50重量%の範囲で添加され、より好ましくは、2〜25重量%である。重合開始剤の量が少なすぎると、光感度が不良となり、光重合開始剤の量が多すぎれば、露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0035】
本発明において、グリーンシートを紫外線によって効果的に硬化させることあるいはヴィアホール形成のために、シートスラリー組成物に紫外線(UV)吸光剤を添加することが重要である。紫外線吸収効果の高い吸光剤を添加することによって高解像度が得られる。
【0036】
すなわち、セラミックス粉末だけでは、紫外線がセラミックス粉末によって散乱されて余分な部分まで光硬化し、現像してもヴィアホールが良好に形成できない。この原因について本発明者らが鋭意検討を行った結果、散乱された紫外線光が吸収されてあるいは弱められて露光マスクによる遮光部分にまでまわり込むことが原因であることが判明した。したがって紫外線吸光剤を添加することによって散乱光のまわり込みがほぼ回避され、マスク部分の感光性樹脂の硬化を防ぎ、露光マスクに相当したパターンが形成されるようになる。またグリーンシートの下部まで光が吸収されることなく透過し、光硬化の機能を十分満足し、高精度なヴィアホールが形成できる。
【0037】
また、紫外線吸光剤がない場合、シートに紫外線を照射しても、セラミックス粉末によって反射、散乱されてシートの表面の一部しか硬化されないためグリーンシートの耐薬品性や機械強度の向上はほとんど認められず、また、紫外線照射後のグリーンシートに曲りや反りが発生し、高寸法精度が必要なグリーンシートが得られず、機械強度も低くなる。しかしながら吸光剤を添加した場合は、紫外線が効果的に吸収されてグリーンシートの下部まで達することができるので、シートの内部まで均一に光硬化されてグリーンシートの耐薬品性、寸法精度が向上し、さらに機械強度が大幅に向上する。特に引っ張り強度は通常2〜5倍増加する。
【0038】
紫外線吸光剤としては350〜450nmの波長範囲で高UV吸光度を有する有機染料が好ましく用いられる。有機染料としては、高い吸光度を有する種々の染料が使用できるが、アゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、アミノケトン系染料、アントラキノン系染料などが使用できる。これらの中でも特にアゾ系染料が好ましい。有機染料は、吸光剤として添加した場合にも焼成時に蒸発するため焼成後の基板中に残存しないので吸光剤による絶縁抵抗の低下がないので好ましい。
【0039】
アゾ系染料としての代表的なものとして、スダンブルー(Sudan Blue、C22H18N2O2=342.4)、スダンR(C17H14N2O2=278.31)、スダンII(C18H14N2O=276.34)、スダンIII(C22H16N4O=352.4)、スダンIV(C24H20N4O=380.45)、オイルオレンジSS(Oil Orange SS、CH3C6H4N:NC10H6OH=262.31)オイルバイオレット(Oil Violet,C24H21N5=379.46)、オイルイエローOB(Oil Yellow OB、CH3C4H4N:NC10H4NH2=261.33)などがあるが、250〜520nmで吸収することができる染料が使用できる。
【0040】有機染料の添加量は、▲1▼グリーンシートの光硬化が効果的になされて機械強度や耐薬品性や向上すること、▲2▼ヴィアホールの真円度が高く、ヴィアホール形成した後の上部と下部とのヴィアホール孔径差が少ないこと、▲3▼焼成後のセラミックス基板特性である曲げ強度、絶縁抵抗、誘電率、熱膨張特性などを低下させないことなどの条件を満たす範囲であり、セラミックス粉末に対して0.05〜2重量%が好ましい。0.05重量%未満では紫外線吸光剤の添加効果が減少し、2重量%を越えると吸光剤の量が多すぎて紫外線を照射した時に、下部に達するまでにセラミックス粉末によって吸収されてしまいヴィアホールの形成不良やグリーンシートが内部まで均一に光硬化されずに機械強度や耐薬品性が低下するので好ましくない。また焼成後の基板特性も低下するので好ましくない。より好ましくは0.10〜0.7重量%である。
【0041】
有機染料からなる紫外線吸光剤の添加方法としては、以下の方法によることが好ましい。すなわち、有機染料を予め有機溶媒に溶解した溶液を作製する。次に該有機溶媒中にセラミックス粉末を混合・攪拌しながら乾燥する。この方法によってセラミックス粉末の個々の粉末表面に均質に有機染料の膜をコートしたいわゆるカプセル状の粉末が作製できる。
【0042】
本発明において、好ましい吸光度の積分値(350〜450nm)の範囲がある。すなわち、吸光度の積分値は粉末の状態で測定されるもので、有機染料、あるいは無機粉末の表面を有機系染料でコートした粉末について測定される。
【0043】
本発明で、吸光度は下記のように定義される。すなわち、市販の分光光度計を使用して積分球の中で光を測定用試料に当て、そこで反射された光を集めて検出する。また積分球により検出された光以外は、すべて吸収光とみなして下記の式から求められる。
【0044】
対照光の光強度をIr(Irは試料の吸光度を測定する前に、積分球内面に塗布してある材料と同じ材料のBaSO3を試料台に取り付けて反射による光強度を測定したデータ)試料に入射した光の光強度をI、試料に当たった後、吸収分の光強度をIoとすると、試料からの反射分の光強度は(I-Io)で表わされ、吸光度は下記の(1)式ように定義される。上記で光強度の単位は、W/cm2で表わす。
【0045】
吸光度=-log((I-I0)/Ir) (1)
吸光度の測定は下記のようにして行う。
1.吸光剤を添加した粉末をプレス機で直径20mm、厚み4mmのサイズに成型する。
2.次に分光光度計を用いて積分球の反射試料の取り付け口に粉末の成型体を取り付けて、反射光による吸光度を波長範囲200〜650nmで測定すると図1のようなグラフが得られる。縦軸は(1)式の吸光度で、横軸は測定波長を示す。
3.次に図1で波長350〜450nmの範囲を10nm毎の10区間に分け、それぞれの区間毎の面積を求める。面積は次のように求められる。
【0046】
例えば、
350nmのときの吸光度を0.75
360nmのときの吸光度を0.80
370nmのときの吸光度を0.85


440nmのときの吸光度を0.60
450nmのときの吸光度を0.55として、
350〜360nmの部分の面積をAとし、台形とみなすとAは下記のように計算される。
面積A=(0.75+0.80)×10/2=7.75
同様に面積Bは
面積B=(0.80+0.85)×10/2=8.25


同様に面積Jは
面積J=(0.60+0.55)×10/2=5.75となる。10区間の面積の合計Sは下記のようにして求められる。
S=A+B+C+・・・・+J
上記の面積Sを、350〜450nmにおける吸光度の積分値として定義した。
【0047】
本発明でフォトリソグラフィ法でヴィアホールを形成した後に、感光性ペースト(感光性の導電ペースト、絶縁ペースト、誘電体ペーストあるいは抵抗体ペーストなど)でパターン形成する場合の吸光度の積分値の好ましい範囲は、20〜100であり、さらに好ましい範囲は30〜70である。吸光度の積分値が20未満であると紫外線露光時において光がグリーンシートの下まで十分透過する前に粉末によって散乱されて未露光部を硬化するようになり、真円度のあるヴィアホール形成ができなくなる。また吸光度が100を超えると光がグリーンシートの下部に達する前に粉末に吸収されてしまい、下部のシートまで光が透過しないため光硬化できなくなる。この結果、現像時に剥がれるようになり、ヴィアホールの形成が困難になる。
【0048】
本発明で超硬ドリルによるパンチング加工でヴィアホールを形成したグリーンシートを使用して感光性導電ペーストでパターン形成する場合は、吸光度の積分値は10〜150であることが好ましい。グリーンシートの表面層だけを紫外線の照射によって光硬化するのに十分であれば良いが、10未満であると紫外線が粉末によって反射、散乱されてしまい光硬化が十分に行われない。また150を越えると紫外線が表面の一部で吸収されてしまい耐薬品性や機械強度が向上しないので好ましくない。
【0049】
本発明においてセラミックス粉末に含まれるPb,Bi,Fe,Ni,Mn,Co,Mgなどの金属およびその酸化物が、ペースト中に含有する感光性ポリマーのカルボキシル基と反応してペーストが短時間でゲル化し、塊となりペーストとして印刷できなくなる場合がある。これはポリマーと上記の金属や酸化物粉末とののイオン架橋反応と推定されるが、このような架橋反応を防止するために感光性ポリマーには勿論のこと、光反応性化合物、光重合開始剤あるいは可塑剤などに悪い影響を与えない化合物(安定化剤)を添加してゲル化を防止することが好ましい。すなわち、ゲル化反応を引き起こす金属や酸化物粉末との錯体化、あるいは酸官能基との塩形成などの効果のある化合物で粉末を表面処理し、感光性グリーンシートを安定化させる。そのような安定化剤としては、トリアゾール化合物が好ましく使用できる。トリアゾール化合物の中でも特にベンゾトリアゾールが有効に作用する。また、ヘキサメチレンテトラミン、ナフテン酸リチウムなどもゲル化抑制に効果がある。
【0050】
ベンゾトリアゾールを用いてセラミックス粉末の表面処理をする方法は以下の通りである。すなわち、セラミックス粉末に対して所定の量のベンゾトリアゾールを酢酸メチル、酢酸エチル、エチルアルコール、メチルアルコールなどの有機溶媒に溶解し、これらの粉末が十分に浸ることができるように溶液中に1〜24時間浸漬する。浸漬後、好ましくは20〜30℃下で自然乾燥して溶媒を蒸発させてトリアゾール処理を行った粉末を作製する。
【0051】
本発明において使用される安定化剤の割合(安定化剤/セラミックス粉末)は0.2〜4重量%が好ましく、さらに0.4〜3重量%であることがより好ましい。0.2重量%未満ではポリマーの架橋反応を防止するのに効果がなく、短時間でゲル化する。また4重量%を越えると安定化剤の量が多くなり過ぎて非酸化性雰囲気中でのグリーンシートの焼成時においてポリマー、モノマーおよび安定化剤などの脱バインダーが困難となり、基板の特性が低下する。
【0052】
本発明においてセラミックス・グリーンシート中(シートスラリー組成物中)に、増感剤、増感助剤、熱重合禁止剤、可塑剤、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤などを添加することも好ましく行われる。
【0053】
増感剤は、感度を向上させるために添加される。増感剤の具体例として、2、4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6-ビス(4-ジメチルアミニベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4-ジメチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、ミヒラ-ケトン、4,4、-ビス(ジエチルアミノ)-ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)-イソナフトチアゾール、1,3-^ビス(4-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-カルボニル-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、N-フェニル-N-エチルエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、N-トリルジエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3-フェニル-5-ベンゾイルチオ-テトラゾ-ラゾール、1-フェニル-5-エトキシカルボニルチオ-テトラゾールなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。なお、増感剤の中には光重合開始剤としても使用できるものがある。増感剤を本発明のセラミックス・グリーンシートに添加する場合、その添加量は側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体と光反応性化合物の和に対して通常0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜15重量%である。増感剤の量が少なすぎれば光感度を向上させる効果が発揮されず、増感剤の量が多すぎれば露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0054】
熱重合禁止剤は、保存時の熱安定性を向上させるために添加される。熱重合禁止剤の具体的な例としては、ヒドロキノン、N-ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、p-t-ブチルカテコール、N-フェニルナフチルアミン、2,6-ジ-t-ブチル-p-メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールなどが挙げられる。熱重合禁止剤を添加する場合、その添加量は、側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体と光反応性化合物の和に対し、通常、0.1〜20重量%、より好ましくは、0.5〜10重量%である。熱重合禁止剤の量が少なすぎれば、保存時の熱的な安定性を向上させる効果が発揮されず、熱重合禁止剤の量が多すぎれば、露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0055】
可塑剤の具体的な例としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリンなどがあげられる。
【0056】
酸化防止剤は、保存時におけるアクリル系共重合体の酸化を防ぐために添加される。酸化防止剤の具体的な例としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-4-エチルフェノール、2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2-メチレン-ビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4-チビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)ブタン、ビス[3,3-ビス-(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)ブチリックアッシッド]グリコールエステル、ジラウリルチオジプロピオナート、トリフェニルホスファイトなどが挙げられる。酸化防止剤を添加する場合、その添加量は通常、セラミックス粉末、側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物および光重合開始剤の総和に対して0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜1重量%である。酸化防止剤の量が少なければ保存時のアクリル系共同重合体の酸化を防ぐ効果が得られず、酸化防止剤の量が多すぎれば露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0057】
本発明におけるシートスラリー組成物の組成としては、次の範囲で選択するのが好ましい。
【0058】
(a)セラミックス粉末;(a)、(b)の和に対して80〜94重量%
(b)側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体と光反応性化合物;(a)、(b)の和に対して20〜6重量%
(c)光重合開始剤;(b)に対して2〜25重量%
(d)紫外線吸光剤;(a)に対して0.05〜4重量%
上記においてより好ましくは、(a)、(b)および(d)成分の組成をそれぞれ84〜92重量%、16〜8重量%、および0.1〜1重量%の範囲に選択するのがよい。この範囲にあると露光時において紫外線が良く透過し、光硬化の機能が十分発揮され、後の現像時における耐薬品性や耐溶解性が向上して未露光部の残膜の発生をなくし、L(線幅)/S(幅間隔)=20μm/20μmの微細なパターン形成ができるようになる。また特に(b)成分である側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体と光反応性化合物の合計量をこの範囲とすることにより焼成後の焼結体が緻密になり、高強度のセラミックス基板が得られる利点がある。
【0059】
本発明のグリーンシート用のシートスラリー組成物は、側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体と光重合開始剤を光反応性化合物に溶解し、この溶液にセラミックス粉末と紫外線吸光剤とを分散させることによって製造することができる。側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体と光重合開始剤が光反応性化合物に溶解しない場合あるいは溶液の粘度を調整したい場合には該アクリル系共重合体、光重合開始剤及び光反応性化合物の混合溶液が溶解可能である有機溶媒を加えてもよい。この時使用される有機溶媒は側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光重合開始剤及び光反応性化合物の混合物を溶解しうるものであればよい。たとえばメチルセルソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ-ブチロラクトンなどやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0060】
さらに必要に応じて、有機溶媒、安定化剤、増感剤、熱重合禁止剤、可塑剤、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤などを添加し、ボールミルあるいはアトライターでたとえば12〜48時間粉砕・混合し、スラリーを作製する。また、スラリー中に気泡が残存するとシート成形後に欠陥となるので気泡を脱泡機を使用して除去することが好ましい。
【0061】
さらに、スラリーの粘度を調整するために必要に応じて上記の溶媒を添加する。好ましい粘度は1000から5000cps(センチ・ポイズ)であり、この範囲にあるとシートの膜厚の調整が均質にできる。スラリーはドクタブレードを用いてポリエステルフィルム上に連続的に厚さ10μm〜600μmに成形する。この時、粉末の調合、成形工程では紫外線を遮断できるところで行なう必要がある。そうでないとグリーンシートが紫外線によって光硬化してしまい、本発明の効果を発揮できるシートが得られない。次いで80〜120℃の温度で加熱して溶媒類を蒸発させ、シートにする。このシートを所定の形状に切断する。
【0062】
本発明のセラミックス・グリーンシートの厚みは通常、10から600μmの範囲であり、好ましくは30〜300μmである。600μmを越えると紫外線の露光に対して十分透過せず、光硬化の効果が薄れる。また、10μm未満であるとグリーンシートの取り扱いが難しくなったり、また焼成後緻密な基板ができにくくなり、セラミックス基板特性が低下するので好ましくない。この範囲にあると径0.01〜0.2mmを有するヴィアホールやスルホールを上下の孔径差がつかずに形成できる利点がある。またヴィアホールの解像度はグリーンシートの厚みによって異なるが、アスペクト比は1以下であるのが紫外線の透過が十分行われるので好ましい。40μm厚の場合は40μmのヴィアホールの形成が好ましい。
【0063】
つづいて、セラミックス・グリーンシートに紫外線の照射とヴィアホールの形成を行う。この工程は、紫外線の選択的な照射、現像によりヴィアホールを形成するフォトリソグラフィー法によってもよいし、超硬ドリルによるパンチング法でヴィアホールを形成し、その工程の前あるいは後に、紫外線の照射によりセラミックス・グリーンシートの少なくとも表面を光硬化してもよい。
【0064】
セラミックス・グリーンシートにヴィアホールをフォトリソグラフィー法により形成する場合は、露光に用いられる紫外線の光源としてはたとえば低圧水銀灯、高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらの中でも超高圧水銀灯が好適である。露光条件はグリーンシートの厚みによっても異なるが、5〜100mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて1〜30分間露光を行なうことが好ましい。露光の方式はグリーンシートの厚みによって適宜選択できるが、厚みが200μmを越え、アスペクト比(シートの厚み/ヴィアホール径)が0.2〜1の場合は、両面露光すると上下の孔径差のないヴィアホールが形成できるので好ましい。露光後、現像液を使用して現像を行う。現像は、浸漬法やスプレー法で行なう。現像液としては前記の側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物及び光重合開始剤の混合物が溶解可能である有機溶媒を使用できる。また該有機溶媒にその溶解力が失われない範囲で水を添加してもよい。またアクリル系共重合体の側鎖にカルボキシル基が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム水溶液などのような金属アルカリ水溶液を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリの具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜1重量%である。アルカリ濃度が低すぎれば未露光部が除去されずに、アルカリ濃度が高すぎれば、露光部の剥離を引き起こし、また腐食させるおそれがあり良くない。
【0065】
また、超硬ドリルによるパンチング法でヴィアホールを形成する場合に、その前あるいは後にグリーンシートを光硬化するが、その場合は、紫外線で全面露光し、少なくとも表面を光硬化する。光照射した後のグリーンシート表面の硬化層の厚みは少なくとも5μm以上あれば良い。好ましくは10μm以上である。5μm未満であると硬化層の厚みが薄いため耐薬品性が低下するため未露光部の現像不良が発生し、微細な導体パターン形成が困難になる。露光量は、フォトリソ法でヴィアホール形成の場合の20%以上あれば良い。露光量は、シートの厚み、紫外線吸光剤の含有割合によって異なるが、20〜1000mJ/cm2の範囲が好ましい。この範囲にあると光硬化後の引っ張り強度が2〜6倍増加し、シートの耐薬品性も向上するので好ましい。
【0066】
ヴィアホールの径は、0.005〜0.2mm程度であり、ヴィアホールピッチは、0.01〜5.0mm程度である。
【0067】
本発明のグリーンシートの調合、印刷、露光、現像工程は紫外線を遮断できるところで行う必要がある。そうでないとスラリーやグリーンシートが紫外線によって光硬化してしまい、本発明の効果を有するグリーンシートが得られない。
【0068】
このように、紫外線の照射とヴィアホールの形成を行った後、ヴィアホール部に印刷、スキージ、ディスペンサあるいはローラなどの埋め込み法あるいは、フォトリソグラフィー法により(この場合は、後の導体パターン形成と同時に行うこともできる)、銅、銀、金、銀-パラジウム、タングステン、モリブデンなどの導体ペーストを充填してヴィアホール内に配線の層間隔接続用の導体を形成する。
【0069】
このグリーンシートのヴィアホールに対する導体ペーストの埋め込みは層数ごとに繰り返し行う。
【0070】
本発明は、このようにしてヴィアホールの形成されたセラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを用いて、パターンを形成することを特徴とする。感光性ペーストとしては、感光性導電ペースト、感光性抵抗体ペースト、感光性誘電ペースト、感光性絶縁ペーストなどが使用される。これらは、それぞれ、導電体粉末、抵抗体粉末、誘電体粉末、絶縁体粉末と、感光性樹脂組成物を含有するものである。
【0071】
導電体粉末としては、Cu,Au,Ag,Pd,Pt,W,Moなどの金属あるいはこれらを含む合金などが挙げられる。
【0072】
Cu系導電体粉末としては、Cu(97-70)-Ag(30-30)、Cu(95-60)-Ni(5-40),Cu(90-70)-Ag(5-20)、Cr(3-15)(以上()内は重量%を表す。以下同様)などの2元系、3元系の混合金属粉末が好ましく用いられる。上記の中でCu-Ag粉末が好ましく、その中でもCuの表面を3〜30重量%のAgでコートした粉末がCuの酸化を抑えることができるので特に好ましい。
【0073】
Au,Ag,Pd,Pt系導電体粉末としては、Ag(30-80)-Pd(70-20)、Ag(40-70)-Pd(60-10)-Pt(5-20)、Ag(30-80)-Pd(60-10)-Cr(5-15)、Pt(20-40)-Au(60-40)-Pd(20)、Au(75-80)-Pt(25-20)、Au(60-80)-Pd(40-20)、Ag(40-95)-Pt(60-5)、Pt(60-90)-Rh(40-10)(以上()内は重量%を表す)などの2元系、3元系の混合貴金属粉末が好ましく用いられる。上記の中でCrやRhを添加したものは高温特性を向上できる点で特に好ましい。
【0074】
W,Mo系導電体粉末としては、W、W(92-98)-TiB2(8-2)、W(92-98)-ZrB2(2-8)、W-(92-98)-TiB2(1-7)-ZrB2(1-7)、W(95-60)-TiN(5-60)、W(90-60)-TiN(5-35)-TiO2(2-10)、W(90-60)-TiN(5-35)-TiO2(2-10)-Ni(1-10)、W(99.7-97)-AlN(0.3-3)、W(10-90)-Mo(90-10)、W(92-98)-Al2Y2O3(8-2)、Mo、Mo(92-98)-TiB2(8-2)、Mo(92-98)-ZrB2(8-2)、Mo(92-8)-TiB2(1-7)-ZrB2(1-7)、Mo-TiN、Mo(90-60)-TiN(5-35)-TiO2(2-10)、Mo(90-60)-TiN(5-35)-TiO2(2-10)-Ni(1-10)、Mo(99.7-97)-AlN(0.3-3)、Mo(60-90)-Mn(40-10)-SiO2(0-20)、W(30-90)-Mo(30-70)-Mn(3-30)などの2元系、3元系の混合金属粉末が好ましく用いられる。上記の中でTiB2、ZrB2、TiN、AlN、Ni、TiO2を添加したものは導体膜とアルミナ基板との接着強度を向上させ、導体膜の抵抗を下げる効果があるので特に好ましい。
【0075】
抵抗体粉末としては、RuO2、RuO2系、Al粉末およびB2O3を含有するガラス粉末、Al粉末、遷移金属粉末およびB2O3を含有するガラス粉末、In2O3系-ガラス粉末、RuO2-ガラス粉末、LaB6-ガラス粉末、SnO2添加品-ガラス粉末、珪化物-ガラス粉末、NiOとLi2O3-B2O3-SiO2-RO(RはMg、Ca、Sr、Baの中から選ばれる一種)などから構成されるガラス粉末などが挙げられる。
【0076】
RuO2は、無定形および結晶系、あるいはパイロクロール化合物と称されるCdBiRu2O7、BiRu2O7、BaRuO5、LaRuO3、SrRuO3、CaRuO3、Ba2RuO4などでもよい。RuO2系としては、RuO2-SiO2が使用できる。
【0077】
Al粉末およびB2O3を含有するガラス粉末としては、Alが4〜15重量%、B2O3を含有するガラス粉末が96〜85重量%である。B2O3を含有するガラス粉末としては、B2O3-BaO-SiO2-Ta2O5-Al2O3-CaO-MgO系などがあげられる。これにMoSi2、AlSi2、WSi2、TiSi2などの金属珪化物を含むこともできる。
【0078】
Al粉末、遷移金属粉末およびB2O3を含有するガラス粉末としては、上記のAl粉末およびB2O3を含有するガラス粉末に加えて、Nb、V、W、Mo、Zr、Ti、Niなどの遷移金属粉末を含有するものである。
【0079】
In2O3系-ガラス粉末は、30〜80重量%のIn2O3系と、70〜20重量%のガラス粉末からなるものがあげられる。In2O3系としては、ITO(SnをIn2O3にドープしたもの)、In2O3、SbをドープしたSnO2+SnO2などが含まれる。また、ガラス粉末としては、SiO2-Al2O3-MgO-ZnO-B2O3-BaO系などである。この中では、SiO2-B2O3系が低温焼結できるので好ましい。
【0080】
RuO2-ガラス粉末、LaB6-ガラス粉末、SnO2添加品-ガラス粉末あるいは珪化物-ガラス粉末に使用されるガラス粉末は、総量で90〜30重量%でその組成は、Al2O310〜30重量%、B2O36〜30重量%、SiO210〜45重量%、CaO5〜40重量%、ZnO15〜50重量%であり、残部が10〜70重量%のRuO2、LaB6、SnO2添加品あるいは珪化物である。
【0081】
誘電体粉末としては、▲1▼鉛を基準とした粉末、▲2▼チタン酸バリウムを基準とした粉末が挙げられるが、これらはTiO2を除けば、ほとんどがペロブスカイト構造と呼ばれるABO3型からなっており、組成を化学量論比で一定に制御できる特徴がある。
【0082】
▲1▼の鉛を基準とした粉末としては、チタン酸鉛PbTiO3、タングステン酸鉛PbWO3、亜鉛酸鉛PbZnO3、鉄酸鉛PbFeO3、マグネシウム酸鉛PbMgO3、ニオブ酸鉛PbZbO3、ニッケル酸鉛PbNiO3、ジルコン酸鉛PbZrO3、複合ペロブスカイト系誘電体、および酸化チタンTiO2などがあげられるが、代表的な誘電体粉末としては、Pb(FexW(1-x))O3-Pb(FeyNb(1-y))O3、PbTiO3-Pb(MgxNb(1-x))O3、Pb(ZnxNb(1-x))O3-BaTiO3,Pb(ZnxNb(1-x))O3-Pb(FeyW(1-y))O3-Pb(FezNb(1-z))O3,Pb(ZnxNb(1-x))O3-PbTiO3-BaTiO3,Pb(MgxW(1-x))O3-PbTiO3-PbZrO3,Pb(MgxNb(1-x))O3-PbTiO3-Pb(MgyW(1-y))O3、Pb(MgxW(1-x))O3-Pb(ZryTiO(1-y))O3+ZnO,Pb(MgxNb(1-x))O3-PbTiO3-PbO,Pb(FexNb(1-x))O3-Pb(MgyNb(1-y))O3、(1-Z)PbTiO3-Z(La2O3)などの2元系または3元系の複合ペロブスカイト化合物や(PbxBa(1-x))ZrO3,SrxPb(1-x)TiO3、PLZT{(Pb(1-x)Lax)(ZryTiz)(1-x/4)O3}などの化合物が挙げられる。
【0083】
▲2▼のチタン酸バリウムを基準とした粉末としては、チタン酸バリウムBaTiO3,チタン酸ストロンチウムSrTiO3,ジルコン酸カルシウムCaZrO3,チタン酸カルシウムCaTiO3などがあげられるが、代表的な誘電体粉末としては、(BaxSr(1-x))(SnyTi(1-y))O3,Ba(TixSn(1-x))O3,BaxSr(1-x)TiO3,BaTiO3-CaZrO3,BaTiO3-Bi4Ti3O12,(BaxCa(1-x))(ZryTiO(1-y))O3などの2元系、3元系の化合物が挙げられる。
【0084】
絶縁体粉末としては、本発明のセラミックス・グリーンシートに用いられるセラミックス粉末と同様の絶縁体粉末が好ましく使用される。
【0085】
感光性樹脂組成物としては、公知のものを使用しうるが、特に好ましいのは、前述の側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物および光重合開始剤を含有するものである。この組成の感光性樹脂組成物を含有する感光性ペーストを使用すると、フォトリソグラフィ法でL(線幅)/S(幅間隔)=20μm/20μmの微細パターンが形成できる。
【0086】
感光性ペーストを用いてセラミックス・グリーンシート上にパターンを形成するには、まず、感光性ペーストを通常のスクリーン印刷法あるいはスピンコート法でグリーンシート上に塗布し、乾燥する。次に、回路パターンを有するフォトマスクを用いて紫外線を選択的に照射して露光し、感光性ペーストを光硬化する。次に、未露光部を現像液で除去してマスク通りの微細なパターンを得る。露光、現像の工程は、前述のグリーンシートの場合と同様に行われる。
【0087】
グリーンシートのヴィアホールに導体を埋め込む場合に、超硬ドリルでヴィアホールを形成したグリーンシートには未硬化のシートが使用されるが、埋め込みの仕方は上述のごとくに行われる。
【0088】
このようにシート表面に所定の導体、抵抗体、誘電体あるいは絶縁体パターンを印刷する。またヴィアホールを形成するのと同様の方法でガイド穴をあける。次に必要な枚数のシートをガイド孔を用いて積み重ね、90〜130℃の温度で50〜200kg/cm2の圧力で接着し、多層基板からなるシートを作製する。
【0089】
次に、焼成炉にて上記のシートを焼成してヴィアホールに導体および導体などのパターンが形成されたセラミックス多層基板を作製する。焼成雰囲気や温度はセラミックス基板や導体の種類によって異なる。セラミックスあるいはガラス・セラミックスからなる低温焼成多層基板の場合は、850〜1000℃の温度で数時間保持して絶縁層を焼成する。アルミナや窒化アルミやムライト基板では、1600℃程度の温度で数時間かけて焼成する。Cu,W,Mo,W-Moなどの導体では、窒素などの中性や水素を含む還元性雰囲気で焼成する。焼成時にグリーンシート中に含まれる側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応量合性化合物、有機染料、安定化剤、可塑剤あるいは溶媒などの有機物の酸化、蒸発を可能にする雰囲気であればよい。そのようなものとして導体がCu,W,Mo,W-Moでは酸素を3〜100ppm含有し、残部が窒素あるいはアルゴンなどの中性ガスまたは水蒸気で制御した雰囲気中で焼成できる。焼成温度は有機バインダー完全に酸化、蒸発させる温度として300〜600℃で5分〜数時間保持した後、800〜1600℃の温度で数時間保持してからセラミックス多層基板を作製する。
【0090】
焼成後の多層基板中に残存する炭素量は250ppm以下であることが好ましい。残存する炭素量が多いと、多層基板の気孔率の低下、強度低下、誘電率の増加、誘電損失の増加、リーク電流の増加あるいは絶縁抵抗の低下などの問題を生ずる。また残存炭素量は100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。
【0091】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、以下の説明で濃度はとくに断らない限りすべて重量%で表わす。
【0092】
実施例1〜10
A.セラミックス成分
▲1▼99.5%純度のアルミナ粉末;平均粒子径1.7μm、比表面積1.1m2/gの球状粉末。
▲2▼コーディライト粉末;平均粒子径2.4μm、比表面積5.0m2/gの球状粉末。
▲3▼ガラス-セラミックス粉末;アルミナ(無機フィラー)粉末50%、ガラス粉末50%、(ガラス組成は、SiO2;60,CaO;20,Al2O3;20,MgO;5,B2O3;5,TiO2;3である。ガラス粉末は予めアトライターにて微粉末し、粉末の平均粒子径、2.2μm,比表面積、1.5m2/gの球状粉末を使用した。)
B.紫外線吸光剤
▲1▼有機染料;アゾ系染料;スダンIV(Sudan)
化学式;C24H20N4O,分子量;380.45
▲2▼有機染料;アゾ系染料;オイルイエローOB(Oil Yellow OB)
化学式;CH3C4H4N:NC10H4NH2,分子量;261.33
C.ポリマーバインダ
40%のメタアクリル酸(MAA)、30%のメチルメタアクリレート(MMA)および30%のスチレン(St)からなる共重合体のカルボキシル基(MAA)に対して0.4当量(40%に相当する)のグリシジルメタアクリレート(GMA)を付加反応させたポリマー。ポリマーの酸価は95であった。
【0093】
D.光反応性化合物(モノマー)
トリメチロール・プロパン・トリアクリラート
E.溶媒
イソプロピルアルコール(IPA)、ブチルアルコール(BA)およびメチルエチルケトン(MEK)の混合溶媒(16:2:82)
F.光重合開始剤
α-アミノ・アセトフェノンをポリマーとモノマーとの総和に対して20%添加した。
【0094】
G.増感剤
2、4-ジエチルチオキサントンをポリマーとモノマーとの総和に対して20%添加した。
【0095】
H.可塑剤
ジブチルフタレート(DBP)をポリマーとモノマーとの総和に対して30%添加した。
【0096】
I.分散剤
カチオンまたは“フローレン”(G-700、マレイン酸部分エステル系)をセラミックス粉末に対して1.5%添加した。
【0097】
<グリーンシートの作製>
A.有機ビヒクルの作製
溶媒およびポリマーバインダを混合し、攪拌しながら120℃まで加熱しすべてのポリマーバインダを均質に溶解させた。ついで溶液を室温まで冷却し、光重合開始剤を加えて溶解させた。その後この溶液を400メッシュのフィルターを用いて濾過し、有機ビヒクルを作製した。
【0098】
B.吸光剤添加粉末の作製
有機染料を所定の量(セラミックス粉末に対して0.5%)秤量し、イソプロピルアルコール(IPA)に溶解させた溶液にカチオン分散剤を加えてホモジナイザで均質に攪拌した。次にこの溶液中にセラミックス粉末を所定の量添加して均質に分散・混合しながらロータリエバポレータを用いて、150〜200℃の温度で乾燥し、IPAを蒸発させた。こうして有機染料の膜でセラミックスの表面を均質にコーティングした(いわゆるカプセル処理した)粉末を作製した。粉末の吸光度を表1および表2に示す。
【0099】
C.スラリー調製
スラリーの作製は上記の有機ビヒクルに光反応性化合物、吸光剤添加の粉末(有機染料でカプセル処理したセラミックス粉末)、フローレン分散剤、増感剤、可塑剤および溶媒を所定の組成となるように添加し、アトライターで24時間湿式混合し、調製した。さらに真空攪拌機にて24時間脱泡してスラリーを調整した。作製したスラリーの粘度は、ブルックフィールド粘度計(型式;RVDV-II+)で回転数50rpmで測定して2000cpsであった。
【0100】
スラリー組成を表1および表2に示す。
【0101】
D.グリーンシートの作製
成形は紫外線を遮断した室内でポリエステルのキャリアフィルムとブレードとのギャップを0.7mmとし、成形速度20cm/分でドクターブレード法によって行った。得られたグリーンシートの膜厚は145〜155μmであった。
【0102】
E.露光、現像
上記で作製したグリーンシートを130mm角に切断した後、温度90℃に40分加熱し、溶媒を蒸発させた。次にクロムマスクを用いて径60μmのヴィアホール数3000本を有するクロムマスクを用いて、上面から超高圧水銀灯を使用して露光量250mJ/cm2で紫外線露光した。次に25℃に保持したモノエタノールアミンの0.5重量%の水溶液に浸漬して現像し、その後スプレーを用いて光硬化していないヴィアホールを水洗浄した。
【0103】
F.ヴィアホールに導体埋め込み
次に、グリーンシートのヴィアホールにスクリーン印刷法でタングステン(セラミックス粉末▲1▼を用いたとき)、銀-パラジウム合金(セラミックス粉末▲2▼を用いたとき)または銅(セラミックス粉末▲3▼を用いたとき)の厚膜ペーストを埋め込み、配線の層間接続用の導体を形成した。
【0104】
G.導体パターン形成
上記Eでヴィアホールに導体を埋め込んだグリーンシートに感光性導電ペーストで信号用の導体パターンを形成した。感光性導電ペーストの作製およびこのペーストによるパターン形成は下記の方法で行った。また電源層用のパターン形成は市販の非感光性の銀、銅およびタングステンペーストを用いてスクリーン印刷法で行った。上記のセラミックス粉末のうち▲1▼のアルミナ粉末で作製したグリーンシートには感光性タングステンペーストを、▲2▼のコーディライトのグリーンシートには感光性銀ペーストを、▲3▼のガラス-セラミックスのグリーンシートについては感光性銅ペーストをそれぞれ使用した。
【0105】
1.感光性導電ペーストの作製
1-1 導電粉末
▲1▼銀-パラジウム合金粉末(パラジウム5%);球状の平均粒子径1.5μm,比表面積0.15m2/gを有する粉末を使用した。
【0106】
▲2▼銅粉末;多面体形状の平均粒子径3.0μm,比表面積0.32m2/gを有する粉末を使用した。
【0107】
▲3▼タングステン粉末;多面体形状の平均粒子径2.0μm,比表面積0.2m2/gを有する粉末を使用した。
【0108】
上記の導電粉末をそれぞれペースト組成として89%添加した。
【0109】
1-2 ポリマーバインダー
40%のメタアクリル酸(MAA)、30%のメチルメタアクリレート(MMA)および30%のスチレン(St)からなる共重合体のカルボキシル基(MAA)に対して0.4当量(40%に相当する)のグリシジルメタアクリレート(GMA)を付加反応させたポリマー。ポリマーの酸価は100であった。ポリマーを6%添加した。
【0110】
1-3 モノマー
トリメチロール・プロパン・トリアクリラートを4%添加した。
【0111】
1-5 ガラスフリット
酸化カルシウム(5.0)、酸化亜鉛(28.1)、酸化ホウ素(25.0)、二酸化ケイ素(22.8)、酸化ナトリウム(8.8)、酸化ジルコニウム(4.5)およびアルミナ(5.8)を含む組成のガラスフリットを1%添加した。
【0112】
1-4 溶媒
γ-ブチロラクトン
1-5 光重合開始剤
α-アミノ・アセトフェノンを2%添加した(ポリマーとモノマーとの総和に対して20%)。
【0113】
1-6 可塑剤
ジブチルフタレート(DBP)を0.6%添加した(ポリマーの10%)。
1-7 増感剤
2,4-ジエチルチオキサントンを2%添加した(光重合開始剤と同じ割合)。
【0114】
1-8 増感助剤
p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル(EPA)を2%添加した(光重合開始剤と同じ割合)。
【0115】
1-9有機ビヒクルの作製
溶媒およびポリマバインダーを混合し、攪拌しながら80℃まで加熱しすべてのポリマバインダーを均質に溶解させた。ついで溶液を室温まで冷却し、開始剤を加えて溶解させた。その後溶液を400メッシュのフィルターを通過して濾過した。
【0116】
1-10 導電ペースト作製
上記の有機ビヒクルに導電性粉末、モノマー、可塑剤、増感剤、増感助剤および溶媒を所定の組成となるように添加し、3本ローラで均一に混合・分散して3種類のペーストを作製した。ペーストの組成を表2に示す。
【0117】
1-11 印刷
上記のペーストを320メッシュのポリエステル製のスクリーンを用いてグリーンシートにベタに印刷し、80℃で40分間保持して乾燥した。乾燥後の塗布膜の厚みは導電性粉末の種類によって異なるが、およそ25μmであった。
【0118】
1-12 露光、現像
上記で作製した塗布膜に30〜50μmの微細な回路パターンを形成したクロムマスクを用いて上面から露光量、500mJ/cm2で紫外線露光した。次に25℃に保持したモノエタノールアミンの0.5重量%の水溶液に浸漬して現像し、その後スプレーを用いて未露光部を水洗浄した。
【0119】
H.積層
銀-パラジウム合金およびタングステン導体および電源回路を形成した5枚のグリーンシートをガイド穴を用いて積み重ね、120℃で、150kg/cm2の圧力で熱圧着し、5層からなる多層セラミックスグリーンシートを作製した。
【0120】
I.焼結
得られた5層の積層体について銀導体の場合は、500℃で空気中で1時間、銅導体の場合は、500℃で酸素を10ppm含む窒素ガス中で24時間保持して焼成を行い、バインダ、モノマ、可塑剤、増感剤を蒸発させた後、焼結し、多層基板を得た。焼結温度は、コーディライトのシートは950℃で、ガラス-セラミックスのシートは900℃で1.5時間保持して行った。
【0121】
タングステンを導体にしたグリーンシート(アルミナのシート)はH2(水素)ガスとN2(窒素)ガス雰囲気中で500℃で24時間の焼成を行い、脱バインダ後、1600℃の温度にて1.5時間保持して焼結し、多層セラミック基板を得た。
【0122】
J.グリーンシートの強度測定
上記Cで作製したアルミナ、コーディライトおよびガラス-セラミックスの3種類のグリーンシートについて露光量、500mJ/cm2で紫外線露光し、グリーンシートの露光前後の引っ張り強度を測定した。結果を表1に示した。
【0123】
K.評価
焼成後のセラミック多層基板についてリーク電流、ヴィアホール部からの断線不良発生の有無、ヴィアホールの抵抗の変化率および湿中負荷(THB)試験を行った。THB試験は初期の絶縁抵抗を調べ、さらに温度85℃,湿度85%の環境下で1500時間保持後、絶縁層間に50Vの直流電圧を印加して絶縁抵抗を測定した。結果を表1および表2に示した。導体膜の比抵抗は4端子法で測定した。
【0124】
このように光硬化性の樹脂を含むグリーンシートを用いてフォトリソグラフィー法によりヴィアホールを形成し、さらに感光性導電ペーストによりパターン形成を行って作製したセラミック多層基板は微細なヴィアホールと微細な導体パターンが形成できるため小形化、高密度化にとくに有利である。ヴィアホール形成のためのスクリーンが必要なく、セルフアライメントとなり、従来のような位置ズレがなくなった。また光硬化により均一なヴィアホールが形成でき、ヴィアホールが微細であるのでヴィア形成部でのポアーの発生もなく、断線がまったく認められなかった。この結果、高い信頼性を得ることができた。
【0125】
またヴィアホール径が2〜3倍である従来の多層基板に比較して信号伝播速度が大幅に減少した。
【0126】
さらにフォトリソグラフィ法で形成した導体パターンの断面形状は略矩形となるためCAD,CAMによるパターン設計が可能となり、導体回路間の電流の流れがスムーズになる。とくに100MHz以上の高周波領域で用いる場合に、ノイズの発生やクロストークの恐れが大幅に減少する。信頼性のあるセラミックス多層基板が得られる。
【0127】
また光硬化したグリーンシートは従来の未硬化のシートが1.4MPaに対して2.7〜10.0MPaに大きく増加した。強度が向上したことにより薄いシートでもヴィアホール加工ができるようになり、また取扱いも容易になるのでセラミックス多層基板の小形化が期待できる。
【0128】
【表1】

【表2】

実施例11〜16
感光性グリーンシートを下記の条件で作製した。
【0129】
A.コーディライト粉末
平均粒子径1.5μm,比表面積8m2/gを有する粉末を用いた。
【0130】
B 紫外線吸光剤
有機染料;アゾ系染料;スダンIV(Sudan)、化学式;C24H20N4O,分子量;380.45。
【0131】
C.ポリマーバインダー
非感光性のアクリルコポリマー(メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体)および感光性ポリマー。感光性ポリマーバインダーは上記実施例1のCで述べたポリマーを使用した。
【0132】
D.光反応性化合物(モノマー)
トリメチロール・プロパン・トリアクリラート
E.溶媒
メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)およびブタノールの混合溶媒(64:5:31)。
【0133】
F.光重合開始剤
α-アミノ・アセトフェノンを感光性ポリマーとモノマーとの総和の20%添加した。
【0134】
G.可塑剤
ジブチルフタレート(DBP)をポリマー(感光性および非感光性)とモノマーとの総和に対して30%添加した。
【0135】
H.分散剤
カチオンまたは“フローレン”(G-700)をセラミックス粉末に対して1.5%添加した。
【0136】
<グリーンシートの作製>
A.有機ビヒクルの作製
溶媒および非感光性および感光性のポリマーバインダを混合し、攪拌しながら120℃まで加熱しすべてのポリマーバインダを均質に溶解させた。ついで溶液を室温まで冷却し、光重合開始剤を加えて溶解させた。その後この溶液を400メッシュのフィルターを用いて濾過し、有機ビヒクルを作製した。
【0137】
B.吸光剤添加粉末の作製
有機染料を所定の量(セラミックス粉末に対して0.5%)秤量し、イソプロピルアルコール(IPA)に溶解させた溶液にカチオン分散剤を加えてホモジナイザで均質に攪拌した。次にこの溶液中にセラミックス粉末を所定の量添加して均質に分散・混合しながらロータリエバポレータを用いて、150〜200℃の温度で乾燥し、IPAを蒸発させた。こうして有機染料の膜でセラミックスの表面を均質にコーティングした粉末を作製した。粉末の吸光度を表3に示す。
【0138】
C.スラリー調製
スラリーの作製は上記の有機ビヒクルに光反応性化合物、吸光剤添加の粉末、フローレン分散剤、および可塑剤を所定の組成となるように添加し、ボールミルで24時間湿式混合し、調製した。さらに真空攪拌機にて24時間脱泡してスラリーを調整した。
【0139】
作製したスラリーの粘度は、ブルックフィールド粘度計(型式;RVDV-II+)で回転数50rpmで測定して2000cpsであった。
【0140】
スラリー組成を表3に示す。
【0141】
D.グリーンシートの作製
成形は紫外線を遮断した室内でポリエステルのキャリアフィルムを使用してブレードとのギャップを0.7mmとし、成形速度20cm/minでドクターブレード法で作製した。得られたグリーンシートの膜厚は150μmであった。次に130mm角のサイズの1枚のグリーンシートに金型によるパンチングプレスにてヴィアホール径100μmの穴を2000本加工した。
【0142】
E.ヴィアホールに導体穴埋め
上記ヴィアホールにスクリーン印刷法で銅の厚膜ペーストを埋め込み、80℃で40分間保持して溶媒を乾燥させた。
【0143】
F.露光
次にクロムマスクを用いて上面から露光量、200mJ/cm2で超高圧水銀灯で紫外線露光し、グリーンシートを光硬化させた。
【0144】
G.導体パターン印刷
上記の実施例1のFと同じように上記露光後のシートに感光性銅ペーストでベタ印刷し、80℃で40分間保持して乾燥した。乾燥後の塗布厚みは25μmであった。
【0145】
H.露光、現像
上記でシートに作製した塗布膜に20〜40μmの範囲で20μm間隔のファインパターンを形成したクロムマスクを用いて、上面から800mJ/cm2で紫外線露光した。次に25℃に保持したモノエタノールアミンの0.5重量%の水溶液に浸漬して現像し、さらにスプレーを用いて未露光部を水洗浄した。
【0146】
I.焼成
グリーンシート上に微細パターンを形成した塗布膜を酸素10ppm含有する窒素ガス中で、500℃で30分保持してポリマーバインダー、モノマー、増感剤および可塑剤などを蒸発させた後、900℃にて1時間焼結させ、銅導体膜を作製した。シートは表面を研磨した高純度のアルミナ基板にアルミナの敷粉を引き、さらにシートに軽く重しをかけて焼成した。
【0147】
J.評価
焼成後の銅導体膜ついて膜厚、解像度、比抵抗を測定し、評価した。膜厚はマイクロメータで測定した。解像度は導体膜を顕微鏡観察し、20〜40μmのラインが直線で重なりなくかつ再現性が得られるライン間隔を最も微細なライン間隔として決定した。比抵抗は4端子法で30mAの電流下で起電力を測定して抵抗を求めた。結果を表3に示す。
【0148】
このように光硬化性の樹脂を含む導電性のペーストを用いてフォトリソグラフィー法により線幅/線間隔が30μm/30μm以下の微細パターンでかつ低抵抗の回路パターンが得られるのでとくにセラミックス多層基板の内層用導体ペーストとしてとくに使用できる。この結果、セラミックス多層基板の小形化、高密度化を一層可能にするものである。
【0149】
【表3】

比較例1
下記の条件で非感光性のグリーンシートを作製した。使用したスラリー組成は下記の通り。
【0150】
A.セラミックス粉末
コーディライト粉末;平均粒子径2.4μm,比表面積5.0m2/gの球状粉末。
【0151】
B.ポリマーバインダ
アクリレート樹脂
C.可塑剤
ジブチルフタレート
D.溶媒
メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールおよびブタノールの混合溶媒(64:5:31)
E.分散剤
フローレン
<グリーンシートの作製>
A.スラリーの作製
溶媒にポリマーバインダーを溶解させた有機ビヒクルを用いて最終的なスラリー組成としてコーディライト粉末、バインダー、分散剤および可塑剤および溶媒をそれぞれ62、15、1,3および19%添加し、アトライターで24時間湿式混合して調整した。さらに真空攪拌機にて脱泡してシート成形用スラリーを作製した。
【0152】
B.グリーンシート作製
上記のスラリーを用いてポリエステルのキャリアフィルムとブレードとのギャップ0.8mmで、成形速度20cm/分の条件でドクターブレード法により成形した。得られたグリーンシートの厚みは、150μmであった。
【0153】
次にグリーンシートに上記実施例1の感光性銅ペーストを使用して導体パターン形成を試みた。しかしながら、露光後現像条件をいろいろ変えて検討したが、未露光部が除去できず、パターン形成ができなかった。
【0154】
比較例2
下記の感光性のグリーンシートを作製した。すなわち、紫外線吸光剤を添加しない以外は実施例2と同じ条件で厚み160μmのアルミナのグリーンシートを作製した。このグリーンシートに露光量、500mJ/cm2の条件で紫外線露光した。次に、比較例1と同じように感光性銅ペーストを用いて導体パターン形成を試みたが、未露光部が現像できずパターン形成ができなかった。また、露光後のシートには曲りやそりが認められ、引っ張り強度を測定したが、紫外線吸光剤を添加したシートと比較して0.8MPaと低強度であった。
【0155】
【発明の効果】
従来の非感光性のセラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを用いてパターン形成をしようとしても、焼成前の生のシートに含まれる有機ポリマー、可塑剤、溶媒あるいは各種の添加剤と感光性ペーストに含まれる有機溶媒とが反応し、現像時に未露光部が殆ど除去できないため、パターン形成は困難であった。また、従来の感光性セラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを用いてパターン形成をしようとしても、グリーンシートの紫外線硬化が不充分で、非感光性のグリーンシートと同様の問題が起こり、パターン形成は困難であった。本発明においては、セラミックス・グリーンシート中に紫外線吸光剤を含有するので、感光性ペーストを用いてシート上に良好なパターンを形成できるものである。これは、シートの紫外線硬化が十分になされる結果、シートの耐薬品性や耐溶剤性が向上し、感光性ペースト中の有機溶媒との反応が殆ど起こらなくなり、未露光部の除去が完全になされることに基づく。紫外線硬化は、この他にも、シートの寸法精度、機械的強度の向上などの効果を与える。特に引っ張り強度は飛躍的に向上する。
【0156】
このように、セラミックス・グリーンシート上に感光性ペーストを用いてパターン形成できるので、L/S=30μm/30μmの微細な導体、抵抗体、誘電体、絶縁体パターン形成が可能となり、かつ低抵抗の導体パターンが得られ、セラミックス多層基板の内層用導体の形成が可能になる。また、シートの引っ張り強度が大幅に向上するのでグリーンシートの薄膜化に有効である。これらの結果、セラミックス多層基板の小形化、高密度化を一層可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】測定波長と吸光度の関係を表すグラフである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-10-20 
出願番号 特願平5-279880
審決分類 P 1 652・ 121- YA (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 大野 覚美
特許庁審判官 鈴木 久雄
藤井 俊明
登録日 2002-10-18 
登録番号 特許第3360378号(P3360378)
権利者 東レ株式会社
発明の名称 セラミックス・グリーンシート上にパターンを形成する方法  

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