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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B22D
管理番号 1134342
異議申立番号 異議2003-72589  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-11-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-21 
確定日 2006-01-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3399627号「直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3399627号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.本件手続の経緯
本件特許第3399627号の請求項1に係る発明についての出願は、平成6年4月25日に特許出願され、平成15年2月21日にその特許権の設定登録がなされたものである。
これに対して、JFEスチール株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成17年7月25日付けで訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
本件訂正請求の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち次の訂正事項a乃至dのとおりに訂正するものである。
(1)訂正事項a:本件特許明細書の段落【0017】の「ラグフローライン」を「プラグフローライン」と訂正する。
(2)訂正事項b:本件特許明細書の段落【0024】の「サルファー点か」を「サルファー添加」と訂正する。
(3)訂正事項c:本件特許明細書の段落【0025】の「図1」を「図3」と訂正する。
(4)訂正事項d:本件の図3(a)中の「37mm」を「40mm」と訂正し、図3(b)中に、符号4と電磁コイルに相当する部分との間を結ぶ「引出線」を挿入する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項a乃至dは、いずれも特許明細書の誤記や明りょうでない記載の釈明に該当するものである。そして、上記訂正事項a乃至dは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

2-3.まとめ
したがって、上記訂正は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明1について
本件請求項1に係る発明は、特許明細書の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件発明1」という)。
「【請求項1】鋳型の幅方向にほぼ均一な磁束密度分布を有する直流磁界を鋳型の厚み方向に付与し、鋳型内に注入された溶鋼の流動を制御する直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法において、前記直流磁界を鋳型内で生成される凝固シェルの厚みが17〜40mmとなる領域の一部に加え、この直流磁場帯を溶鋼流が横切る際に誘導される電流のリターンパスを凝固シェル内に形成させることで、溶鋼プール内では一方向の電流を誘導し、溶鋼の流動を制御することを特徴とする直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法。」

4.特許異議申立てについて
4-1.取消理由の概要
当審で通知した取消理由の概要は、本件発明1は、引用例1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである、というものである。

4-2.引用例とその主な記載事項
取消理由において引用された引用例1乃至4とその主な記載事項は、次のとおりである。
(1)引用例1:「製鋼第19委員会第3分科会凝固現象協議会 第75回研究会資料」日本学術振興会、平成4年5月20日、「均一直流磁界による連鋳鋳型内流動制御(水銀モデル実験と電磁流体解析による基礎研究)」(甲第1号証)
(1a)「著者らは新しいタイプの直流磁界、すなわち鋳型の幅方向に均一な磁束密度を有する直流磁界を厚み方向に付与する方式(・・・;LMF)を提案し、その新しい機能について報告してきた。本論文では、水銀モデル実験及び電磁流体解析よりLMFの連鋳鋳型内流動に及ぼす影響を解析したのでその結果を以下に述べる。」(「1.緒言」の項)
(1b)「LMFの鋳型内流動に及ぼす影響を磁束密度、磁場コイル位置について調査した。・・・磁場コイル位置は、水銀プール表面から磁場コイル中心までの距離が(A)290mm、(B)135mmの2水準とした。それぞれ、(A)ノズル吐出流が短片に衝突する位置よりも下方に磁場を加えた場合、(B)ノズル吐出孔近傍に磁場を加えた場合に相当する。」(「2.2実験条件」の項)
(1c)「次に磁場コイル位置(A)の条件で、・・・容器がステンレスの場合、プール内をX方向に流れた電流の帰りが容器内に見られ、容器を介した電流ループが形成されていることがわかる。・・・絶縁体の場合、プール内両サイドでZ方向に流れる電流が大きくなっている。その結果、図13に示すように短片近傍下降流の制動効果は導電体の場合と比較して小さくなる。またこの違いは容器厚によっても変化するであろうことも容易に推察される。そのため、連鋳鋳型内流動の電磁制動を解析する際、電流ループの観点から凝固シェルの存在を考慮する必要があることは明らかである。」(「3.3解析結果」の項)
(1d)「(1)水銀モデル実験から、LMFの適用による鋳型内流動の制御性を確認した。また、磁場コイル位置により短片近傍での下降流の制動効果が大きく異なることを明らかにした。
(2)電磁流体解析から、磁場コイル位置による電磁制動効果の違いは、プール内でいかに効率良く電流ループを形成するかによるものと考えられる。また、連鋳鋳型内流動の電磁制動現象を解析する際、電流ループの観点から凝固シェルの存在を考慮する必要があることを示した。」(「4. 結言」の項)
(2)引用例2:「電磁気力による新しいプロセシングの可能性を求めて」日本鉄鋼協会 特基研究会材料電磁プロセシング部会、平成5年5月、「均一電磁ブレーキによる連鋳ストランドプール内流動制御」218頁乃至224頁(甲第2号証)
(3)引用例3:「材料とプロセス」(社)日本鉄鋼協会、vol.5(1992)No.1、CAMP-ISIJ「(29)均一磁界による電磁制動に関する数値解析」(甲第4号証)
(4)引用例4:「材料とプロセス」(社)日本鉄鋼協会、vol.4(1991)No.1、CAMP-ISIJ「(23)電磁気力によるメタルプール内の混合抑制」(甲第5号証)
(4a)「2.装置と方法
実験装置の概要をFig.1に示す。試験連鋳機の鋳型下部に、鋳片幅方向に均一な磁束密度を発生する直流電磁石を設置した。直流磁界の中心位置はメニスカスより900mm下である。鋳型サイズは100mm(厚)×600mm(幅)、鋳造長さは最大2.8mである。普通鋼(中炭材組成)」を溶製し、タンディッシュを通じて鋳造中にプール内(直流磁界よりも下部)にサルファーと燐を添加した。磁束密度は0.55T、および0T(比較用)、鋳造速度は0.7m/min.とした。溶鋼プール中に添加したサルファーと燐はストランド・プール内の混合(抑制)状況を調査するためのものであり、鋳造終了後に鋳片定常部よりC、L断面サンプルを切り出し、サルファー・プリント、マクロ・アナライザーによる濃度分布測定に供した。」
(4b)「3.結果
鋳造定常部の鋳片C断面サルファー・プリントの代表例をFig.2(a)、(b)に示す。Fig.2(a)は直流磁界を作用させなかった場合のサルファー濃度分布であるが、鋳片断面にほほ均一に分布していることがわかる。これはプール深部に添加したサルファーがプール上部、さらにはメニスカスまで混合していることを示している。一方、直流磁場を作用させた場合(Fig.2(b))、鋳片内部にサルファー濃度の高い部分が分離されており、混合抑制に及ぼす直流磁界の効果が顕著であることを示している。」

4-3.当審の判断
引用例の上記(1b)には、「LMF(鋳型の幅方向に均一な磁束密度を有する直流磁界を厚み方向に付与する方式)の鋳型内流動に及ぼす影響を磁束密度、磁場コイル位置について調査した。」と記載され、上記(1d)には、本件発明1でも用いた「水銀モデル実験機」において、「水銀モデル実験から、LMFの適用による鋳型内流動の制御性を確認した。」と記載されているから、引用例1には、「鋳型の幅方向にほぼ均一な磁束密度分布を有する直流磁界を鋳型の厚み方向に付与(LMF)し、鋳型内に注入された溶鋼の流動を制御する直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法」が記載されていると云える。また、この「直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法」では、上記(1c)の「磁場コイル位置(A)の条件で、・・・容器がステンレスの場合、プール内をX方向に流れた電流の帰りが容器内に見られ、容器を介した電流ループが形成されていることがわかる。」という記載に徴すれば、溶鋼プール内ではX方向(一方向)の電流を誘導し、その電流の帰り(リターンパス)を容器内に形成させることができると云える。
そうであれば、水銀モデル実験機の「容器」は、実際の鋳造機(実機)の場合の「凝固シェル」に相当すると認められるから、以上の記載を本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、「鋳型の幅方向にほぼ均一な磁束密度分布を有する直流磁界を鋳型の厚み方向に付与し、鋳型内に注入された溶鋼の流動を制御する直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法において、前記直流磁界を鋳型内で生成される凝固シェルの一部に加え、この直流磁場帯を溶鋼流が横切る際に誘導される電流の帰り(リターンパス)を凝固シェル内に形成させることで、溶鋼プール内では一方向(X方向)の電流を誘導し、溶鋼の流動を制御することを特徴とする直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法」という発明(以下、「引用例1発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件発明1と引用例1発明とを対比すると、両者は、「鋳型の幅方向にほぼ均一な磁束密度分布を有する直流磁界を鋳型の厚み方向に付与し、鋳型内に注入された溶鋼の流動を制御する直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法において、前記直流磁界を鋳型内で生成される凝固シェルの一部に加え、この直流磁場帯を溶鋼流が横切る際に誘導される電流のリターンパスを凝固シェル内に形成させることで、溶鋼プール内では一方向の電流を誘導し、溶鋼の流動を制御する直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法」という点で一致し、次の点で相違していると云える。
相違点:本件発明1は、直流磁界を「凝固シェルの厚みが17〜40mmとなる領域の一部に加える」のに対し、引用例1発明は、直流磁界を凝固シェルの領域の一部に加えるものの、その領域の凝固シェルの厚みまでは明らかでない点。
次に、この相違点について検討するに、引用例1の上記(1c)には、直流磁界による下降流の制動効果について、「その結果、図13に示すように短片近傍下降流の制動効果は導電体の場合と比較して小さくなる。またこの違いは容器厚によっても変化するであろうことも容易に推察される。そのため、連鋳鋳型内流動の電磁制動を解析する際、電流ループの観点から凝固シェルの存在を考慮する必要があることは明らかである。」と記載されているから、直流磁界による制動効果が水銀モデル実験機の場合の容器厚、実機の場合ではその「凝固シェル厚」によって変化することは当業者に容易に理解できることであり、また上記(1d)の「磁場コイル位置により短片近傍での下降流の制動効果が大きく異なることを明らかにした。」という記載に照らせば、「磁場コイル位置(直流磁界を加える領域)」によって変化することも明らかである。
そうすると、これら教示によれば、直流磁界による制動効果は、直流磁界を加える領域(磁場コイル位置)やその凝固シェル厚と相互に関係していると云えるから、直流磁界を加える領域をその凝固シェルの厚さとの関係によって定めることは当業者が容易に想到することができたと云うべきである。そして、その際にその領域を凝固シェルの厚みが「17〜40mm」の領域と定めることも、その直流磁界による制動効果(混合抑制による介在物等の鋳造欠陥が少ない等の効果)を確認する実験が例えば引用例4に記載されているとおり周知・慣用手段であると云えるから、この確認実験を繰り返すことによって当業者が容易になし得たことと云うべきである。
してみると、本件発明1の上記相違点は、引用例1のその余の上記記載や引用例4に記載の周知・慣用手段に基づいて当業者が容易に想到することができたと云えるから、本件発明1は、引用例1に記載された発明と引用例1のその余の記載や引用例4に記載された周知・慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたと云える。

5.むすび
したがって、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】鋳型の幅方向にほぼ均一な磁束密度分布を有する直流磁界を鋳型の厚み方向に付与し、鋳型内に注入された溶鋼の流動を制御する直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法において、前記直流磁界を鋳型内で生成される凝固シェルの厚みが17〜40mmとなる領域の一部に加え、この直流磁場帯を溶鋼流が横切る際に誘導される電流のリターンパスを凝固シェル内に形成させることで、溶鋼プール内では一方向の電流を誘導し、溶鋼の流動を制御することを特徴とする直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、鋼の連続鋳造方法において、鋳型に直流磁場を付与して、この鋳型内溶鋼の流動を制御する直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、例えば鋼の連続鋳造の分野では、鋳型内の溶鋼の流動が連続鋳造の操業性、鋳片の品質に大きく影響することが知られている。
【0003】
即ち、注入ノズルから鋳型内に注入された溶鋼の流れは、溶鋼中に介在するスラグ系あるいは脱酸酸化物系介在物をストランドプールの下方の奥深くまで持ち込むため、この介在物の持ち込まれる深さが深い程、介在物が凝固殻に捕捉され易くなり、鋳片欠陥を引き起こすため、この溶鋼の下降流の侵入の深さはできる限り浅くすることが望ましい。
一方、溶鋼表面においては、高速鋳造の場合のようにメニスカスでの溶鋼流速が早い場合には、溶鋼表面にあるパウダーが溶鋼内に巻き込まれ、溶鋼中の介在物の増加に加え、溶鋼面のレベル変動が大きくなり凝固殻の安定生成ができないため、鋳片の品質低下とともに、鋳造の操業性の低下は避けられない。
【0004】
また、低速鋳造の場合のようにメニスカスでの流速が遅い場合には、溶鋼表面でデッケルが形成され、鋳造操業に支障を来たしたり、介在物や気泡が凝固殻に捕捉され、清浄で安定した凝固殻の生成ができないため、鋳造の操業性の低下とともに鋳片の品質低下は避けられない。
このような観点から、高速鋳造の場合も低速鋳造の場合も、注入ノズルから鋳型に注入された、溶鋼の流動パターンを好ましい状態にして一定にする制御が求められている。
【0005】
このような鋳型内溶鋼の流動のパターンをノズルの形状や深さを調整することで制御することは困難なため、従来から直流磁界を用いて鋳型内溶鋼の流動を制御する方法が提案されている。
例えば、特公平2-20349号公報は直流磁界を用いて鋳型内溶鋼の流動を制御する方法に関する。
この方法は、浸漬ノズルaから吐出される溶鋼sの主たる流路の一部に直流磁界を作用させることで、溶鋼の主流smを減速させ、ストランドプールP奥深くに侵入する下降流を制御するとともに、主流を小さい流れso、st等に分割して、プールp内部での溶鋼の撹拌を狙ったものである。
【0006】
しかしながら、この方法では、鋳型mの幅方向の一部に直流磁界を形成するため(図5)、浸漬ノズルaからの吐出流がブレーキ帯を迂回する場合が生じる。すなわち、ブレーキの弱い箇所からプールp下部へと向かう流れ(下向流)siが生じ、介在物をプールp奥深くに持ち込むだけではなく、この現象が安定しないため、鋳型内流れも不安定になり、プールp上部での撹拌が安定しないという問題があった。このため、鋳片品質を向上させる技術とはなり得なかった。
【0007】
また、特開平2-284750号公報は、鋳型幅方向全域に直流磁界を加える方法であり、この技術によってブレーキ帯よりも下方の流れは制動できるものの、制動を加えたい場所に直流磁界を加えるものであって、メニスカス流速をも制動する場合には、図6(a),(b),図7にそれぞれ示すように、鋳型m全体に直流磁界を加えなければならなかったり、2段の直流磁界を加える必要があった。
また、浸漬ノズルの吐出孔より下方に直流磁界を加える方法もこの公報の中で開示されているが、後述するように直流磁界を加える部位の凝固シェル厚により、プール内流れの制御性が大きく異なるものの、その点に関する記述はなく依然として、不安定な技術であった。
【0008】
この理由を浸漬ノズルaからの溶鋼の主流が鋳型mの短辺ma,mbに衝突する位置よりも下方に直流磁界を加える場合(図8)を例にとって説明する。
この場合、浸漬ノズルcからの吐出流が短辺maに衝突した後、その下降流が直流磁場帯を横切る。その際に、プール内で一方の短辺maから他方の短辺mbに向かう電流が誘導されるため、バルクプール内では吐出流の下方への侵入を抑制するローレンツ力が作用する。
【0009】
しかしながら、短辺ma,mb近傍では電流は溶鋼中に流れるものと凝固シェル内に流れるものと分かれる。もし、大部分が溶鋼中に流れる場合、電流の方向が3次元的に大きく変化する。このことはローレンツ力の作用する方向が3次元的に変化することを意味し、短辺ma,mb近傍で下降流のブレーキが弱くなってしまう。
【0010】
その結果、図8(b)に示すように、溶鋼の下降流がブレーキ力の弱い短辺ma,mb近傍において、大きくなって不均一になるため、介在物をプールp奥深く持ち込むだけでなく、この現象は安定せず、鋳型内溶鋼の流れが不安定になる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、鋼の連続鋳造に際し、鋳型の幅方向にほぼ均一な磁束密度分布を有する直流磁界を厚み方向に加えて、鋳型内の溶鋼の流動を制御する場合に、直流磁界を加える位置の最適化を目指し、鋳型内溶鋼の流動パターンの安定化を図ることによって、得られる鋳片の品質を向上できる直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、鋳型の幅方向にほぼ均一な磁束密度分布を有する直流磁界を鋳型の厚み方向に付与し、鋳型内に注入された溶鋼の流動を制御する直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法において、前記直流磁界を鋳型内で生成される凝固シェルの厚みが17〜40mmとなる領域の一部に加え、この直流磁場帯を溶鋼流が横切る際に誘導される電流のリターンパスを凝固シェル内に形成させることで、溶鋼プール内では一方向の電流を誘導し、溶鋼の流動を制御することを特徴とする直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法である。
【0013】
【作用】
本発明においては鋼の連続鋳造に際して、鋳型内溶鋼の流動を制御するため、凝固シェル厚が17〜40mmになる領域の一部に、幅方向に均一な磁束分布を有する直流磁界を厚み方向に加える。
これによって、短辺近傍で電流の流れる方向が3次元的に変化するのを避け、溶鋼プール内では一方向の電流が誘導させるようにして、凝固シェルで誘導電流のリターンパスを形成する。
その結果、鋳型内溶鋼の流動を効率的かつ効果的にプラグフロー化することができ、得られる鋳片の品質を向上、安定化させることができる。
【0014】
本発明でいう直流磁界を加える位置とは、電磁コイルの上端位置を意味する。なお、本発明は、特にスラブ状の鋳片を連続鋳造する場合のように矩形鋳型を有し、吐出口が鋳型短辺側を向いて下向きに傾斜している注入ノズルを用いた連続鋳造方法に適用してより適性の高いものである。
【0015】
本発明者等は、鋼の連続鋳造に際して鋳型に直流磁場を加え、鋳型内溶鋼の流動を効率的かつ効果的にプラグフロー化して凝固シェルを安定生成させる最適条件について、種々実験、検討を重ねた結果、直流磁界を加える位置を変えると鋳片の品質も変化することを知見した。
【0016】
そこで、本発明者等は、この知見をより確かなものにするために、直流磁界発生装置を配設した実機の1/2サイズの水銀モデル実験機を用いて、凝固シェル厚の変化を凝固シェルに相当する容器の厚みの変化で置き換え、容器内に水銀を供給し、容器側壁近傍における水銀流速分布の変化を調べる実験を行った。
図1は、この実験で得られた容器厚と容器内側壁近傍の流速指数との関係を示し、併せてプラグフローライン(理想とする完全に均一な下降流)を示す。
【0017】
ここで、側壁近傍の流速指数とは、下降流速を(ノズルからの吐出量/プール水平断面積)で割った値であり、これが1になれば完全に均一な下降流、即ちプラグフローラインが得られることを示す。
これより、容器厚と容器側壁近傍の流速指数との間に密接な関係があり、容器厚が薄い場合には側壁近傍の流速指数が大きいが、容器厚をある一定の厚さ以上にすることで、側壁近傍の流速指数をプラグフローに近づけられることがわかる。
また、この現象についてプール内で誘導される電流を測定したところ、容器厚が薄い場合には側壁近傍で電流の方向が3次元的に変化するが、容器厚がある厚み以上の場合には、側壁近傍での電流の方向の変化は見られず、プール内には、一方の短辺から他方の短辺に向かう一方向の電流が誘導されることがわかった。
【0018】
次に、実際の連続鋳造において直流磁界を加える位置をいろいろ変化させて実験したところ、鋳片欠陥指数(磁粉探傷法によって調査した結果)と直流磁界を加える部位の凝固シェル厚との間には図2に示すような関係がある。
【0019】
このことから、直流磁界を加える位置を凝固シェル厚が17mm以上の位置にした場合に鋳片欠陥が減少することがわかった。
しかし、生成された凝固シェル厚が40mm以上の位置で直流磁界を加えた場合、凝固シェルが鋳片全厚みの1/3以上進行しており、直流磁界が鋳型内溶鋼の流動の制御に対して、顕著な作用力を発揮しなくなり、その存在意義を失ってしまう。
【0020】
本発明は、これらの知見に基づいて得られたものであり、連続鋳造方法において直流磁界を加えて溶鋼の流動制御を行う場合に、直流磁界を加える位置を生成される凝固シェル厚が17〜40mmの領域の一部に特定することを特徴としている。
【0021】
【実施例】
以下に本発明を溶鋼の連続鋳造方法において適用した場合の実施例を実施装置例とともに説明する。
【0022】
図3において、1は鋳型で、この鋳型内の中心部には、タンディッシュ2から溶鋼sを注入する浸漬ノズル3が配設されている。この浸漬ノズルは下端閉鎖型のもので、その下端部において鋳型の短辺側1bに向いて下向きに約45°傾斜する一対の吐出口3a,3bが設けられている。
【0023】
そして、この浸漬ノズル3の下方の鋳型長辺1a側の外周には、この鋳型内に直流磁磁界を加え鋳型内溶鋼の流動パターンを制御する、電磁コイル4とその外側に配設され一方の短辺側にウエブ部を有するコの字型の鉄芯5からなる直流磁場発生装置6が上下方向に位置調整可能に配設されている。
【0024】
本発明においては、直流磁界発生装置6の電磁コイル4を配設する位置(電磁コイルの上端を、鋳型内溶鋼の凝固シェルの生成厚みが17〜40mmである領域内の一部に特定することを特徴としており、この凝固シェル厚み領域がいずれの位置にあるかを確認する必要があるが、この位置の確認は、実測(例えば鋳型内サルファー添加を行い、鋳片のサルファープリントから凝固シェル厚の鋳造長さ方向変化を測定による方法によって、予め求めることができる。
この配設条件を満足させないと、連続鋳造時に鋳型1内において溶鋼の流動パターンを効果的に制御できず、鋳型内における溶鋼の凝固シェルの生成が不安定になり、鋳造の操業性が低下し鋳片の品質が低下する。
【0025】
【実験例】
この実験例は、図3に示したような構成を有する連続鋳造装置を用いた連続鋳造方法において本発明を適用した場合のものである。
【0026】
鋳造条件
鋳造鋳片:幅1120mm,厚さ254mmの断面(水平断面)のスラブ鋳片
材質:低炭アルミキルド鋼
鋳型:垂直部:2.4m
鋳造温度:1560〜1580℃
鋳造速度:1.5m/min
溶鋼面レベル:鋳型上端から下方へ100mmの位置
浸漬ノズルの吐出孔の上端位置:鋳型上端から下方へ300mmの位置
【0027】
この実験例では、上記の鋳造条件から、鋳型短辺における上下方向の生成凝固シェル厚分布を求め、直流磁界発生装置における電磁コイルの上端を凝固シェル厚が17mmの位置に位置させ、鋳型の厚み方向に3000ガウスの磁束密度を有する直流磁界を加えながら連続鋳造を行った。なお、電磁コイルは高さ200mmのものを用いた。
【0028】
この結果を、図4に直流磁界を加えない従来例および直流磁界を本発明の範囲外の位置で加えた比較例とともに示す。
この図に示すように、本発明の実施例においては、従来例および比較例に比し、鋳型内溶鋼の流動を各段に安定化(均一化)することができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明においては鋼の連続鋳造に際して、鋳型内溶鋼の流動を制御するため、鋳型に加える直流磁界を凝固シェル厚が17〜40mmの領域の一部に加えることにより、溶鋼プール内では一方向の電流を誘導し、凝固シェルで誘導電流のリターンパスを形成するため、鋳型内溶鋼の流動を効率的かつ効果的にプラグフロー化することができ、得られる鋳片の品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
水銀を用いたモデル実験から得られた直流磁界を加えた容器近傍の流速指数と容器厚みとの関係を示す説明図
【図2】
実際の鋳造実験から得られた直流磁界を加えた鋳型内の凝固シェル厚と鋳片欠陥指数との関係を示す説明図
【図3】
(a)図は、本発明を実施する連続鋳造設備例を示す縦断面概要説明図
(b)図は(a)図のAa-Ab矢視断面概要説明図
【図4】
(a)図は、本発明において直流磁界を加えた鋳型内溶鋼の流動(下降流、上昇流)パターンを示す説明図、(b)図は直流磁界を加えない従来の鋳型内溶鋼の流動パターンを示す説明図、(c)図は直流磁界を加えた鋳型内溶鋼の流動パターン(比較例)を示す説明図
【図5】
従来から知られている、鋳型に直流磁界を加える連続鋳造設備例を示す縦断面説明図。
【図6】
従来から知られている、鋳型に直流磁界を加える別の連続鋳造設備例を示し、(a)はその横断面説明図、(b)図は縦断面説明図。
【図7】
従来から知られている鋳型に直流磁界を加える、もう一つの連続鋳造設備例を示す縦断面説明図。
【図8】
(a)図は、従来の鋳型に直流磁界を加える、連続鋳造設備例を示す縦断面説明図。(b)図は、(a)図の連続鋳造設備例における鋳型内溶鋼の流動パターン例を示す説明図。
【符号の説明】
1 鋳型
1a 長辺
1b 短辺
2 タンディッシュ
3 浸漬ノズル
3a,3b 注入ノズルの吐出孔
4 電磁コイル
5 鉄心
6 直流磁場発生装置
7 直流電源
s 溶鋼
ss 凝固シェル
sm 溶鋼の主流
sa,st 分流
si 下向流
a 浸漬ノズル
ad 磁極
c 電磁コイル
f 鉄心
m 鋳型
ma,mb (鋳型)短辺
p プール
po 溶鋼の主流衝突位置
【図面】

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-11-22 
出願番号 特願平6-86840
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B22D)
最終処分 取消  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 酒井 美知子
平塚 義三
登録日 2003-02-21 
登録番号 特許第3399627号(P3399627)
権利者 新日本製鐵株式会社
発明の名称 直流磁界による鋳型内溶鋼の流動制御方法  
代理人 矢葺 知之  
代理人 矢葺 知之  
代理人 牧野 剛博  
代理人 津波古 繁夫  
代理人 高矢 諭  
代理人 松山 圭佑  
代理人 津波古 繁夫  
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