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審決分類 審判 一部申し立て 発明同一  H01M
審判 一部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1134360
異議申立番号 異議2003-73756  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-08-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2006-02-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3448568号「燃料電池電源システムにおける排熱回収装置及び方法」の請求項1、3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3448568号の請求項1、3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許特許第3448568号の手続きの経緯は次のとおりである。
特許出願 平成13年 1月15日
設定登録 平成15年 7月 4日
公報発行 平成15年 9月22日
特許異議申立 平成15年12月26日
(異議申立人:藤井良子)
取消理由通知 平成16年 9月10日付け
訂正請求 平成16年11月26日
(訂正請求取下 平成17年12月16日)
異議意見書 平成16年11月26日
審尋(対異議申立人) 平成16年12月 1日付け
回答書(異議申立人) 平成17年 2月 8日
取消理由通知 平成17年12月13日付け
訂正請求 平成17年12月16日

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
本件訂正請求の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち次の訂正事項a〜eのとおりに訂正するものである。

訂正事項a:
特許請求の範囲に、
「【請求項1】原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムであって、前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と熱交換を行う、少なくとも前記燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器と前記燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を含む複数の熱交換器と、前記貯湯タンクと前記複数の熱交換器とを管接続したループ状の管路と、を備えることを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収装置。」とあるのを、「【請求項1】原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムであって、前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記改質装置から排出される排ガスとの熱交換を行う第1の熱交換器と、前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換を行う第2の熱交換器と、前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換を行う第3の熱交換器と、前記貯湯タンクと前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器と前記第3の熱交換器とを管接続したループ状の管路と、を備え、前記第2の熱交換器を流通した水を前記第1の熱交換器に流通させ、前記第1の熱交換器を流通した該水を前記第3の熱交換器に流通させた後に前記貯湯タンクに戻すことを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収装置。」に訂正する。

訂正事項b:
特許請求の範囲に、
「【請求項2】請求項1の燃料電池電源システムにおいて、前記貯湯タンクと前記燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器を含む熱交換器とを管接続したループ状の管路と、該管路に設けられた第1の切替バルブと、該第1の切替バルブの上流側から分岐して前記燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を経て前記第1の切替バルブの下流側に至る分岐路と、該分岐路の前記燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器より上流側に設けられ、前記第1の切替バルブと切替る第2の切替バルブと、を備えることを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収装置。」とあるのを、
「【請求項2】原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムにおいて、前記貯湯タンクと前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器を含む熱交換器とを管接続したループ状の管路と、該管路に設けられた第1の切替バルブと、該第1の切替バルブの上流側から分岐して前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を経て前記第1の切替バルブの下流側に至る分岐路と、該分岐路の前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器より上流側に設けられ、前記第1の切替バルブと切替る第2の切替バルブと、を備えることを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収装置。」に訂正する。

訂正事項c:
特許請求の範囲に、
「【請求項3】原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムであって、前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と熱交換を行う、少なくとも前記燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器と前記燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を含む複数の熱交換器と、を備え、前記貯湯タンクと前記複数の熱交換器とを管接続してループ状の管路を形成し、前記管路を介して前記貯湯タンク内の水を前記熱交換器に対して順に通過させることで温水にすることを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収方法。」とあるのを、
「【請求項3】原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムにおいて、前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記改質装置から排出される排ガスとの熱交換を行う第1の熱交換器と、前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換を行う第2の熱交換器と、前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換を行う第3の熱交換器と、を備え、前記貯湯タンクと前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器と前記第3の熱交換器とを管接続してループ状の管路を形成し、前記管路を介して前記貯湯タンク内の水を前記熱交換器に対して順に通過させると共に、前記第2の熱交換器を流通した水を前記第1の熱交換器に流通させ、前記第1の熱交換器を流通した該水を前記第3の熱交換器に流通させた後に前記貯湯タンクに戻すことで温水にすることを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収方法。」に訂正する。

訂正事項d:
特許請求の範囲に、
「【請求項4】請求項1の燃料電池電源システムにおいて、前記貯湯タンクと前記燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器を含む熱交換器とを管接続したループ状の管路を形成すると共に、該管路に第1の切替バルブを設け、該第1の切替バルブの上流側から分岐して前記燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を経て前記第1の切替バルブの下流側に至る分岐路を形成し、該分岐路の前記燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器より上流側に第2の切替バルブを設け、燃料電池発電時において前記冷却水の水温が所定温度以上の場合には、前記第1の切替バルブを閉じ第2の切替バルブを開けて前記分岐路に水を通して前記冷却水から熱を回収し、前記冷却水の水温が所定温度以下になった場合には、前記第1の切替バルブを開き第2の切替バルブを閉じて前記分岐路に水を供給しない燃料電池電源システムにおける排熱回収方法。」とあるのを、
「【請求項4】原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムにおいて、前記貯湯タンクと前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器を含む熱交換器とを管接続したループ状の管路を形成すると共に、該管路に第1の切替バルブを設け、該第1の切替バルブの上流側から分岐して前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を経て前記第1の切替バルブの下流側に至る分岐路を形成し、該分岐路の前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器より上流側に第2の切替バルブを設け、燃料電池発電時において前記冷却水の水温が所定温度以上の場合には、前記第1の切替バルブを閉じ第2の切替バルブを開けて前記分岐路に水を通して前記冷却水から熱を回収し、前記冷却水の水温が所定温度以下になった場合には、前記第1の切替バルブを開き第2の切替バルブを閉じて前記分岐路に水を供給しない燃料電池電源システムにおける排熱回収方法。」に訂正する。

訂正事項e:
明細書段落【0007】に、
「この目的を達成するための手段として、本発明の請求項1及び3の燃料電池電源システムにおける排熱回収装置及び方法は、原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、この改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムであって、この燃料電池電源システム中に設けられ、貯湯タンク内の水と熱交換を行う、少なくとも燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器と燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を含む複数の熱交換器と、を備え、貯湯タンクと複数の熱交換器とを管接続してループ状の管路を形成し、この管路を介して前記貯湯タンク内の水を前記熱交換器に対して順に通過させることで温水にすることを特徴とする。
また、本発明の請求項2及び4の燃料電池電源システムにおける排熱回収装置及び方法は、請求項1の燃料電池電源システムにおいて、貯湯タンクと前記燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器を含む熱交換器とを管接続したループ状の管路を形成すると共に、この管路に第1の切替バルブを設け、その第1の切替バルブの上流側から分岐して燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を経て前記第1の切替バルブの下流側に至る分岐路を形成し、この分岐路の燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器より上流側に第2の切替バルブを設け、燃料電池発電時において前記冷却水の水温が所定温度以上の場合には、前記第1の切替バルブを閉じ第2の切替バルブを開けて前記分岐路に水を通して冷却水から熱を回収し、冷却水の水温が所定温度以下になった場合には、前記第1の切替バルブを開き第2の切替バルブを閉じて前記分岐路に水を供給しないことを特徴とする。
本発明では、貯湯タンクと複数の熱交換器との間を各別に接続して複数の循環路を形成するのではなく、複数の熱交換器を含む一連のループ状の管路を構成したので、貯湯タンクからの水の温度に変動があっても各熱交換器での熱効率を高めることができる。」とあるのを、
「この目的を達成するための手段として、本発明の請求項1及び3の燃料電池電源システムにおける排熱回収装置及び方法は、原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、この改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムにおいて、この燃料電池電源システム中に設けられ、貯湯タンク内の水と改質装置から排出される排ガスとの熱交換を行う第1の熱交換器と、燃料電池電源システム中に設けられ、貯湯タンク内の水と固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換を行う第2の熱交換器と、燃料電池電源システム中に設けられ、貯湯タンク内の水と固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換を行う第3の熱交換器と、を備え、貯湯タンクと第1の熱交換器と第2の熱交換器と第3の熱交換器とを管接続してループ状の管路を形成し、この管路を介して前記貯湯タンク内の水を前記熱交換器に対して順に通過させると共に、第2の熱交換器を流通した水を第1の熱交換器に流通させ、第1の熱交換器を流通した水を第3の熱交換器に流通させた後に貯湯タンクに戻すことで温水にすることを特徴とする。
また、本発明の請求項2及び4の燃料電池電源システムにおける排熱回収装置及び方法は、原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムにおいて、貯湯タンクと前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器を含む熱交換器とを管接続したループ状の管路を形成すると共に、この管路に第1の切替バルブを設け、その第1の切替バルブの上流側から分岐して固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を経て前記第1の切替バルブの下流側に至る分岐路を形成し、この分岐路の固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器より上流側に第2の切替バルブを設け、燃料電池発電時において前記冷却水の水温が所定温度以上の場合には、前記第1の切替バルブを閉じ第2の切替バルブを開けて前記分岐路に水を通して冷却水から熱を回収し、冷却水の水温が所定温度以下になった場合には、前記第1の切替バルブを開き第2の切替バルブを閉じて前記分岐路に水を供給しないことを特徴とする。
本発明では、貯湯タンクと複数の熱交換器との間を各別に接続して複数の循環路を形成するのではなく、複数の熱交換器を含む一連のループ状の管路を構成したので、貯湯タンクからの水の温度に変動があっても各熱交換器での熱効率を高めることができる。」に訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否

(ア)上記訂正事項aは、本件特許明細書の段落【0018】の「燃料電池3は固体高分子形」であるという記載に基づき、特許請求の範囲の請求項1における「燃料電池」を「固体高分子形燃料電池」に限定し、そして、本件特許明細書の段落【0022】、【0023】の「この第3の熱交換器H3では、燃料電池3の空気極から排出された未反応酸素ガスとの間で熱交換される・・・次いで、温水は第3の管路S3を経て第1の熱交換器H1に送り込まれ、この第1の熱交換器H1を通過する燃焼排ガスとの間で熱交換される。」という記載及び本件特許明細書の段落【0028】の「・・・貯湯タンクCの底部から取り出された水は、・・・第3の熱交換器H3、第1の熱交換器H1を順に通過し、更に分岐路を介して水タンク4を通過した後に貯湯タンクCに戻される。このようにして、貯湯タンクCの水を循環させることで水タンク4の熱を回収することができる。」という記載に基づき、訂正前の複数の熱交換器のひとつとして、「貯湯タンク内の水と改質装置から排出される排ガスとの熱交換を行う熱交換器」を加え、複数の熱交換器を区別できるように第1、第2、第3として、特許請求の範囲の請求項1における「前記貯湯タンク内の水と熱交換を行う、少なくとも前記燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器と前記燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を含む複数の熱交換器」を「前記貯湯タンク内の水と前記改質装置から排出される排ガスとの熱交換を行う第1の熱交換器と、前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換を行う第2の熱交換器と、前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換を行う第3の熱交換器」に訂正したものであり、さらに、本件特許明細書の段落【0028】の上記記載に基づき、特許請求の範囲の請求項1における「前記貯湯タンクと前記複数の熱交換器とを管接続したループ状の管路と、を備えること」を「前記貯湯タンクと前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器と前記第3の熱交換器とを管接続したループ状の管路と、を備え、前記第2の熱交換器を流通した水を前記第1の熱交換器に流通させ、前記第1の熱交換器を流通した該水を前記第3の熱交換器に流通させた後に前記貯湯タンクに戻すこと」と訂正し、「ループ状の管路」における各熱交換器の配置順序を限定するものである。 したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項のただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。

(イ)上記訂正事項bは、請求項2における「請求項1の燃料電池システム」という記載を、本件特許の訂正前の請求項1の記載に基づき、「原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システム」に明りょうにし、そして、本件特許明細書の段落【0018】の「燃料電池3は固体高分子形」であるという記載に基づき、「燃料電池」という記載を「固体高分子形燃料電池」に限定するものである。
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項のただし書き第1号及び第3号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものである。
また、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)上記訂正事項cは、上記(ア)の訂正事項aと同様に、特許請求の範囲の請求項3の発明特定事項を限定するものであり、そして、請求項3に係る発明の語尾である「・・・燃料電池電源システムにおける排熱回収方法」に適合するように、「燃料電池電源システムであって」という記載を「燃料電池電源システムにおいて」に明りょうにするものである。
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項のただし書き第1号及び第3号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものである。
また、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。

(エ)上記訂正事項dは、請求項4における「請求項1の燃料電池システム」という記載を、本件特許の訂正前の請求項1の記載に基づき、「原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システム」に明りょうにし、そして、本件特許明細書の段落【0018】の「燃料電池3は固体高分子形」であるという記載に基づき、「燃料電池」という記載を「固体高分子形燃料電池」に限定するものである。
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項のただし書き第1号及び第3号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものである。
また、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではない。

(オ)上記訂正事項eは、明細書の【0007】〜【0008】段落の記載を、上記訂正事項a〜dの特許請求の記載が訂正されるのに伴い、これに整合するように発明の詳細な説明の記載を訂正するものである。
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項のただし書き第3号に規定する「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものである。
また、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。

2-3.独立特許要件
訂正明細書の請求項2、4は、特許異議の申立てがされていない訂正前の請求項2、4に対応するものであって、訂正明細書の請求項2、4は、上記2-2.で述べたように、「特許請求の範囲の減縮」及び「明りょうでない記載の釈明」を目的として訂正されているといえるから、以下、訂正明細書の請求項2、4に係る発明の独立特許要件について検討する。
訂正明細書の請求項2に係る発明は、「前記貯湯タンクと前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器を含む熱交換器とを管接続したループ状の管路と、該管路に設けられた第1の切替バルブと、該第1の切替バルブの上流側から分岐して前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を経て前記第1の切替バルブの下流側に至る分岐路と、該分岐路の前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器より上流側に設けられ、前記第1の切替バルブと切替る第2の切替バルブと、を備える」ことを発明特定事項として含むものであり、特許異議申立人が提出したいずれかの刊行物に記載された発明であるとも、全刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができないし、その明細書の記載に不備があるとすることもできないから、訂正明細書の請求項2に係る発明は、特許異議申立人が提出したいずれかの刊行物に記載された発明であるとも、全刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができず、その明細書の記載に不備があるとすることもできない。
また、訂正明細書の請求項4に係る発明は、訂正明細書の請求項2に係る発明と同様の構成要件を含む方法であって、特許異議申立人が提出したいずれかの刊行物に記載された発明であるとも、全刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができないし、その明細書の記載に不備があるとすることもできないから、訂正明細書の請求項2に係る発明は、特許異議申立人が提出したいずれかの刊行物に記載された発明であるとも、全刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができず、その明細書の記載に不備があるとすることもできない。
したがって、訂正明細書の請求項2、4に係る発明は、出願の際、独立して特許を受けることができるものである。

2-4.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件訂正発明について
上記2.のとおり訂正を認容することができるから、訂正後の本件請求項1〜4に係る発明(以下、「本件訂正発明1〜4」という。)は、訂正明細書の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムであって、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記改質装置から排出される排ガスとの熱交換を行う第1の熱交換器と、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換を行う第2の熱交換器と、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換を行う第3の熱交換器と、
前記貯湯タンクと前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器と前記第3の熱交換器とを管接続したループ状の管路と、
を備え、
前記第2の熱交換器を流通した水を前記第1の熱交換器に流通させ、前記第1の熱交換器を流通した該水を前記第3の熱交換器に流通させた後に前記貯湯タンクに戻す
ことを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収装置。
【請求項2】
原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムにおいて、
前記貯湯タンクと前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器を含む熱交換器とを管接続したループ状の管路と、
該管路に設けられた第1の切替バルブと、
該第1の切替バルブの上流側から分岐して前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を経て前記第1の切替バルブの下流側に至る分岐路と、
該分岐路の前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器より上流側に設けられ、前記第1の切替バルブと切替る第2の切替バルブと、
を備えることを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収装置。
【請求項3】
原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムにおいて、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記改質装置から排出される排ガスとの熱交換を行う第1の熱交換器と、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換を行う第2の熱交換器と、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換を行う第3の熱交換器と、
を備え、
前記貯湯タンクと前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器と前記第3の熱交換器とを管接続してループ状の管路を形成し、前記管路を介して前記貯湯タンク内の水を前記熱交換器に対して順に通過させると共に、前記第2の熱交換器を流通した水を前記第1の熱交換器に流通させ、前記第1の熱交換器を流通した該水を前記第3の熱交換器に流通させた後に前記貯湯タンクに戻すことで温水にする
ことを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収方法。
【請求項4】
原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムにおいて、
前記貯湯タンクと前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器を含む熱交換器とを管接続したループ状の管路を形成すると共に、
該管路に第1の切替バルブを設け、
該第1の切替バルブの上流側から分岐して前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を経て前記第1の切替バルブの下流側に至る分岐路を形成し、
該分岐路の前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器より上流側に第2の切替バルブを設け、
燃料電池発電時において前記冷却水の水温が所定温度以上の場合には、前記第1の切替バルブを閉じ第2の切替バルブを開けて前記分岐路に水を通して前記冷却水から熱を回収し、
前記冷却水の水温が所定温度以下になった場合には、前記第1の切替バルブを開き第2の切替バルブを閉じて前記分岐路に水を供給しない
燃料電池電源システムにおける排熱回収方法。」

4.特許異議申立てについて
4-1.特許異議申立ての理由及び取消理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証〜甲第3号証を提出して、訂正前の本件請求項1及び3に係る発明に対し、次のとおり主張している。

(A)訂正前の本件請求項1及び3に係る発明は、甲第1号証(先願明細書)に記載された発明と同一であるから、訂正前の本件請求項1及び3に係る発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきである。

(B)訂正前の本件請求項1及び3に係る発明は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件請求項1及び3に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、取り消されるべきである。

当審が平成16年9月10日付けで通知した取消理由は、特許異議申立ての理由と同趣旨である。

4-2.証拠とその主な記載内容
特許異議申立人が提出した上記甲第1号証〜甲第3号証には、それぞれ次の事項が記載されている。

(1)甲第1号証:特願平11-327981号の願書に最初に添付した明細書又は図面(特開2001-143737号)
(1a)「【請求項1】燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行う高分子電解質型燃料電池と、前記燃料電池へ内部熱輸送媒体を循環させる内部循環回路と、前記内部熱輸送媒体を循環させる内部循環手段と、前記内部熱輸送媒体の熱を外部熱輸送媒体と熱交換する第1の熱交換手段と、前記燃料電池と前記内部循環回路と前記内部循環手段と前記第1の熱交換手段とを内蔵する燃料電池本体ユニットと、前記第1の熱交換手段によって熱交換された外部熱輸送媒体を廃熱回収配管を介して熱利用する熱利用手段と、を有する熱電併給装置。
【請求項2】前記第1の熱交換手段の前記廃熱回収配管上流側に、酸化剤ガスが前記燃料電池で化学反応した後の廃ガスの熱を外部熱輸送媒体と熱交換する第2の熱交換手段を有し、前記第2の熱交換手段を燃料電池本体ユニットに内蔵する請求項1記載の熱電併給装置。
【請求項3】前記外部熱輸送媒体を水とし、前記熱利用手段は貯湯タンクとし、さらに前記廃熱回収配管の経路中に外部熱輸送媒体循環手段を備え、前記外部熱輸送媒体循環手段の流量を制御することで貯湯タンク上部より積層状に湯を貯湯させる貯湯制御手段を有する請求項1または2記載の熱電併給装置。」(【特許請求項の範囲】)
(1b)「【発明の属する技術分野】本発明は、高分子電解質型の燃料電池を用いて発電と熱の供給を行う熱電併給装置に関するものである。」(段落【0001】)
(1c)「上記構成により、先に第2の熱交換手段によって、比較的低温側の燃料電池の空気側の廃熱を熱交換し、次に第1の熱交換手段より高温側の内部熱輸送媒体の廃熱を熱交換するため、熱利用手段へ搬送される廃熱の利用効率がさらに高効率になる。」(段落【0011】)
(1d)「上記構成により、外部熱輸送媒体循環手段の流量を制御し、貯湯タンク上部より積層状に湯を貯湯させる貯湯制御手段によって、貯湯タンク上部より常に積層状に湯を貯湯でき、給湯配管口を貯湯タンクの上部から取り出す通常の配管構成において、貯湯湯温が高温(60〜80℃)で確保でき、かつ貯湯タンク全量を使用し湯切れした場合においても短時間で必要最小限の貯湯量の確保できる。従って、タンク全量の水を一律に昇温させる場合に比べ、短時間で利用可能温度の湯が得られる。」(段落【0013】)
(1e)「なお、本実施の形態において、第1の熱交換手段の熱源として、燃料電池の酸化剤側廃ガスを用いたが、燃料電池の燃料側廃ガスを用いる構成を設けても同様の効果があった。」(段落【0037】)
(1f)「さらに、熱交換手段を燃料電池1に供給される酸化剤ガスとしての加湿空気が燃料電池で化学反応した後の酸化剤側廃ガスの熱をまず第2の熱交換手段21によって熱交換し、第2の熱交換手段21での熱交換後、燃料電池1の冷却水系の内部循環回路からの熱を第1の熱交換手段14によって熱交換するように接続したので、低温側の熱交換手段による熱交換の後でより高温側の熱交換を行うため、熱交換効率が向上し、熱利用手段へ搬送される廃熱の利用効率が極めて高効率になった。」(段落【0038】)

(2)甲第2号証:特開2000-82477号公報
(2a)「【請求項1】 アノードとカソードとを備え水素と空気中の酸素とから電気を発生させる燃料電池本体と、燃料を水素リッチの改質ガスに改質して前記アノードに供給すると共に、前記燃料電池本体における反応後の改質ガスの未反応水素を燃焼させて燃料排ガスとして排出する改質器と、前記カソードに空気を供給する空気供給装置と、前記燃料排ガス及び前記燃料電池本体における反応後の排空気に含まれる水蒸気を凝縮回収する排ガス用熱交換器とを備えた燃料電池発電プラントにおいて、
前記改質器から排出される前記燃料排ガスと、前記燃料電池本体における反応後の排空気とが供給され、それらの排熱を温水として回収すると共に、前記排熱の回収後の前記燃料排ガス及び前記排空気を前記排ガス用熱交換器に供給する排熱回収熱交換器と、前記温水を温水利用装置に供給する温水供給手段とを具備することを特徴とする燃料電池発電プラント。」
(2b)「【請求項3】 前記燃料電池本体内に冷却水を供給することによって該燃料電池本体を冷却する冷却器を備え、
前記温水供給手段は、前記温水を前記冷却器に供給し、該冷却器において前記燃料電池本体から回収された冷却水と熱交換させた後に、前記温水を前記温水利用装置に供給することを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池発電プラント。」(【特許請求の範囲】)
(2c)「【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池発電プラントに係り、特に、燃料電池本体からの排熱を温水として回収して冷凍機などの温水利用装置に供給する燃料電池発電プラントに関する。」(段落【0001】)
(2d)「このような燃料電池発電プラントの一例を、図5を用いて説明する。この図において、燃料電池本体1は、電解質としてのリン酸を含浸したマトリックス(図示しない)を、燃料ガスが供給される燃料極(アノード)1aと空気が供給される空気極(カソード)1bとで挟むことによって単位セルを形成し、この単位セルを多数枚積層して構成したものである。」(段落【0003】)
(2e)「また、燃料電池本体1において、発電と同時に反応熱が生じるため、燃料電池本体1の運転温度を約200℃程度に保つことを目的として、冷却板1cが設けられている。この冷却板1cは、電池冷却水7が供給されることによって冷却を行うようになっている。この電池冷却水7は、燃料電池本体1の出口では二相流となり、水蒸気分離器8によって蒸気と水とに分離される。そして、この水蒸気分離器8で蒸気が分離された電池冷却水7は、ポンプ9により加圧され、冷却器10で冷却された後に、燃料電池本体1に供給されるようになっている。」(段落【0005】)
(2f)「【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の燃料電池発電プラントにおいて使用されている排ガス凝縮器13は、燃料排ガス11及び排空気12中に含まれる水蒸気を凝縮して回収することを主目的としていた。そのため、二次冷却水16には一定の流量が必要であり、それを減少させることが困難であった。従って、排熱利用熱交換器17における排熱利用のための温水の温度を高くすることができないという問題があった。すなわち、従来の燃料電池発電プラントでは、燃料排ガス11及び排空気12からの熱回収を効率よく行うことが困難であった。」(段落【0008】)
(2g)「請求項1記載の発明によれば、改質器から排出される燃料排ガスと燃料電池本体から排出される排空気とを、排ガス用熱交換器に供給する前に排熱回収熱交換器に供給し、排熱回収熱交換器においてそれらの排熱を温水として回収するため、排熱利用のための温水の温度を上昇させるために温水の流量を減少させることができる。従って、排ガスからの熱回収を効率よく行うことができる。そして、温水の温度を適当な温度に調節する事によって、例えば単効用吸収式冷凍機などの温水利用装置に温水を供給して作動させることができる。」(段落【0011】)
(2h)「そして、これら燃料排ガス11及び排空気12は、排熱回収熱交換器19に供給され、この排熱回収熱交換器19において冷却された後、排ガス23として排ガス凝縮器13に供給される。上記排熱回収熱交換器19では、燃料排ガス11及び排空気12を高温熱源として85℃程度の温水20が取り出され、単効用吸収式冷凍機21に供給される。これによって、空調などに使用される単効用吸収式冷凍機21が作動する。
このように、本実施の形態では、燃料排ガス11及び排空気12からの排熱回収が排熱回収熱交換器19において行われるため、単効用吸収式冷凍機21に供給される温水20の流量を変更することができる。すなわち、従来のように排ガス凝縮器13において排熱利用のための排熱回収を行わず、二次冷却水16とは別に温水20を回収するため、温水20の流量を減少させることによって排熱利用のための温水20の温度を高くすることができる。
ここで、排熱回収熱交換器19において、燃料排ガス11及び排空気12側と温水20側との熱交換状態における温度差を適切とするため、排熱回収熱交換器19の出口で排ガス23中の水蒸気が凝縮しない程度に熱回収するように、温水20の流量を設定することが望ましい。そして、この温水20の流量を適切に設定することにより、取り出される温水20の温度を85℃程度として、単効用吸収式冷凍機21を作動させることができる。
以上のように、本実施の形態によれば、排熱回収熱交換器19を設けたことによって高温の温水20を取り出すことができ、これによって単効用吸収式冷凍機21を作動させることが可能となる。すなわち、燃料排ガス11及び排空気12からの熱回収を効率よく行うことができる。」(段落【0020】〜【0023】)
(2i)「[3.第3の実施の形態]図3は、本発明の第3の実施の形態による燃料電池発電プラントのシステム構成図である。本実施の形態による燃料電池発電プラントでは、図3に示すように、排熱回収熱交換器19から取り出された温水20が冷却器10に供給されるようになっている。この冷却器10は、従来から、燃料電池本体1の運転温度を適切な値に維持するために設けられた冷却板1cに対し、電池冷却水7を供給するために配置されている。本実施の形態において、この冷却器10は、燃料電池本体1において発生する排熱を回収した電池冷却水7から排熱を回収することによって、温水20の温度を上昇させた後、単効用吸収式冷凍機21に供給するようになっている。
以上のような構成による本実施の形態によれば、以下のような作用効果が得られる。すなわち、燃料電池本体1において、改質ガス4中の水素と反応用空気5の酸素とが反応して電気が発生する際に反応熱が生じるが、冷却板1cによって燃料電池本体1の運転温度が適正な値に保たれるようになっている。すなわち、冷却板1cに供給される電池冷却水7は、燃料電池本体1内の排熱を回収し、水蒸気分離器8によって蒸気と水とに分離される。そして、この蒸気が分離された電池冷却水7は、ポンプ9によって加圧された後、冷却器10によって冷却され、冷却板1cに供給される。」(段落【0028】、【0029】)

(3)甲第3号証:特開11-97044号公報
(3a)「【請求項1】 原燃料から水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、改質ガスの水素を燃料として発電を行なう燃料電池と、改質器と燃料電池の少なくとも一方の廃熱を回収して蓄熱タンクに供給する熱交換装置と、蓄熱タンクに水を通して蓄熱タンクで水を加熱させる送水機構と、蓄熱タンクで加熱された水を追い炊き加熱する加熱装置を具備して成ることを特徴とする燃料電池給湯コジェネレーションシステム。」(【特許請求の範囲】)
(3b)「【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、改質器や燃料電池の廃熱を効率良く利用して必要とする温度の給湯を行なうことができ、しかも小型化が可能な燃料電池給湯コジェネレーションシステムを提供することを目的とするものである。」(段落【0006】)
(3c)「・・・図2の実施の形態では、蓄熱材兼熱媒として水30を充填して蓄熱タンク3を貯湯タンクとして形成するようにしてある。水30は比熱が高く安全性に優れるために、水30を蓄熱材兼熱媒として用いることが好ましい。上記の熱交換装置4の熱媒往路管21は蓄熱タンク3の熱媒出口24に、熱媒復路管22は熱媒入口25にそれぞれ接続してある。」(段落【0014】)
(3d)「・・・一方、循環ポンプ23によって蓄熱タンク3の水が熱媒として熱交換装置4との間で循環されており、蓄熱タンク3から熱媒往路管21を通して熱交換装置4に送り出された水は、燃料電池2の冷却板17を通過する際に燃料電池2の廃熱を回収し、さらに改質器1の熱交換器18,19を通過する際に改質器1の廃熱を回収し、熱媒復路管22を通して蓄熱タンク3に返送される。このように蓄熱タンク3の水を熱交換装置4との間で循環させることによって、改質器1や燃料電池2の廃熱を回収して蓄熱タンク3に蓄熱することができるものであり、図2の蓄熱タンク3では改質器1や燃料電池2の廃熱は温水として蓄熱されるものである。」(段落【0016】)
(3e)「ここで、熱媒を熱交換装置4に通して改質器1や燃料電池2の廃熱を回収するにあたって、図1の実施の形態のように、熱媒が燃料電池2の廃熱を回収した後に改質器1の廃熱を回収するように循環経路を形成するのが好ましい。廃熱の温度は燃料電池2よりも改質器1のほうが高いので、先に温度の低い燃料電池2との間で熱交換させて熱媒に燃料電池2の廃熱を回収した後、温度の高い改質器1との間で熱交換させて熱媒に改質器1の廃熱を回収させるようにすることによって、効率高く廃熱の回収を行なうことができるものである。」(段落【0017】)
(3f)「【発明の効果】上記のように本発明は、原燃料から水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、改質ガスの水素を燃料として発電を行なう燃料電池と、改質器と燃料電池の少なくとも一方の廃熱を回収して蓄熱タンクに供給する熱交換装置と、蓄熱タンクに水を循環させて蓄熱タンクで水を加熱させる循環機構と、蓄熱タンクで加熱された水を追い炊き加熱する加熱装置を具備するので、改質器や燃料電池の廃熱を回収して蓄熱タンクに蓄熱することができ、改質器や燃料電池の廃熱量が少なくても蓄熱タンクに大きな熱量に蓄熱して、水を高温に加熱することができるものであり、しかも蓄熱タンクで加熱された水の温度が低いときには加熱装置で加熱して所定温度の湯として給湯することができ、改質器や燃料電池の廃熱を効率良く利用して必要とする温度の給湯を行なうことができると共に小型化が可能になるものである。」(段落【0028】)

4-3.当審の判断

(1)上記(A)の申立理由(特許法第29条の2違反)について
(i)本件訂正発明1
甲第1号証の先願明細書には、「燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行う高分子電解質型燃料電池と、前記燃料電池へ内部熱輸送媒体を循環させる内部循環回路と、前記内部熱輸送媒体を循環させる内部循環手段と、前記内部熱輸送媒体の熱を外部熱輸送媒体と熱交換する第1の熱交換手段と、前記燃料電池と前記内部循環回路と前記内部循環手段と前記第1の熱交換手段とを内蔵する燃料電池本体ユニットと、前記第1の熱交換手段によって熱交換された外部熱輸送媒体を廃熱回収配管を介して熱利用する熱利用手段と、を有し、前記第1の熱交換手段の前記廃熱回収配管上流側に、酸化剤ガスが前記燃料電池で化学反応した後の廃ガスの熱を外部熱輸送媒体と熱交換する第2の熱交換手段を有し、前記第2の熱交換手段を燃料電池本体ユニットに内蔵する熱電併給装置であって、前記外部熱輸送媒体を水とし、前記熱利用手段は貯湯タンクとし、さらに前記廃熱回収配管の経路中に外部熱輸送媒体循環手段を備え、前記外部熱輸送媒体循環手段の流量を制御することで貯湯タンク上部より積層状に湯を貯湯させる貯湯制御手段を有する熱電併給装置。」(1a)が記載されているが、本件訂正発明1の「貯湯タンク内の水と改質装置から排出される排ガスとの熱交換を行う第1の熱交換器」及び「貯湯タンクと第1の熱交換器と第2の熱交換器と第3の熱交換器とを管接続したループ状の管路とし、第2の熱交換器を流通した水を第1の熱交換器に流通させ、第1の熱交換器を流通した該水を第3の熱交換器に流通させた後に貯湯タンクに戻すこと」は記載されていない。
してみると、本件訂正発明1は、先願明細書(甲第1号証)に記載された発明と同一であるとすることができない。

(ii)本件訂正発明3
本件訂正発明3は、本件訂正発明1に係る「排熱回収装置」を用いた「排熱回収方法」であって、その発明特定事項は、本件訂正発明1の「排熱回収装置」と実質的に同一である。
してみると、本件訂正発明3は、上記(i)と同じ理由により、先願明細書(甲第1号証)に記載された発明と同一であるとすることができない。

(2)上記(B)の申立理由(特許法第29条第2項違反)について
(i)本件訂正発明1
甲第2号証には、燃料電池本体からの排熱を回収して温水利用装置に供給する燃料電池発電プラントに関し(2b)、従来の排ガス凝縮器13は、一定の流量の二次冷却水16を必要とし、排熱利用のための温水の温度を高くすることができないという課題(2f)を解決するために、排ガス凝縮器13の前段に、排熱回収熱交換器19を設けて、排熱回収熱交換器19を流れる水の量を減少させることで高温の温水を得ること(2a)、(2g)が記載されており、さらに、甲第2号証の実施例3(図3)の上記(2i)には、改質器3から排出される燃料排ガス11と燃料電池本体1における反応後の排空気12とが供給される排熱回収熱交換器19と、燃料電池本体1の電池冷却水7の熱を回収する冷却器10と、単効用吸収式冷凍機21と、をループ状の管路とすることが記載されており、上記(2c)の記載によれば、排熱を温水として回収する冷凍機は「温水利用装置」の一例であるから、これらの記載から把握される事項を本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第2号証には、次のとおりの発明が記載されているといえる。
「原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質器3と、前記改質器3から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる燃料電池本体1と、温水利用装置と、を含む燃料電池電源システムであって、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記温水利用装置内の水と前記改質器3から排出される燃料排ガス11及び燃料電池本体1から排出される排空気12との熱交換を行う排熱回収熱交換器19と、
前記燃料排ガス11及び前記排空気12が排熱回収熱交換器19において冷却された排ガス23が供給される排ガス凝縮器13と、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記温水利用装置内の水と前記燃料電池本体1へ供給される電池冷却水7との熱交換を行う冷却器10と、
前記温水利用装置と前記排熱回収熱交換器19と前記冷却器10とを管接続したループ状の管路と、
を備え、
前記排熱回収熱交換器19を流通した該水を前記冷却器10に流通させた後に前記温水利用装置に戻す
ことを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収装置。」(以下、「甲2号発明」という)
そこで、本件訂正発明1と甲2号発明とを対比すると、甲第2号証に記載の「改質器3」、「排空気12」、「燃料排ガス11」は、それぞれ本件訂正発明1の「改質装置」、「未反応酸素ガス」、「排ガス」に相当し、甲2号発明の「温水利用装置」は燃料電池システムの排熱を利用する手段(以下、「排熱利用手段」という)である点で本件訂正発明1の「貯湯タンク」に対応し、甲2号発明の「冷却器10」は排熱利用手段内の水と燃料電池へ供給する冷却水と熱交換を行う点で本件訂正発明1の「第3の熱交換器」に相当し、甲2号発明の「排熱回収熱交換器19」は、改質装置から排出される排熱ガス及び燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換を行う点で、本件訂正発明1の「第1の熱交換器」及び「第2の熱交換器」に対応するから、両者は、
「原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる燃料電池と、排熱利用手段と、を含む燃料電池電源システムであって、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、排熱利用手段内の水と改質装置から排出される排ガス及び燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換を行う熱交換器と、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記排熱利用手段内の水と前記燃料電池へ供給される冷却水との熱交換を行う第3の熱交換器と、
前記排熱利用手段と前記熱交換器と前記第3の熱交換器とを管接続したループ状の管路と、
を備え、
前記熱交換器を流通した該水を前記第3の熱交換器に流通させた後に前記排熱利用手段に戻す
ことを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収装置。」という点で一致し、次の点で相違している。
相違点:
(イ)本件訂正発明1は、排熱利用手段が「貯湯タンク」であるのに対して、甲2号発明は、排熱利用手段が「温水利用装置」である点
(ロ)本件訂正発明1は、「排熱利用手段内の水と改質装置から排出される排ガスとの熱交換を行う熱交換器」と「排熱利用手段内の水と固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換を行う熱交換器」が、それぞれ「第1の熱交換器」、「第2の熱交換器」と別個の熱交換器からなるのに対して、甲2号発明は、「排熱利用手段内の水と改質装置から排出される排ガス及び燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換を行う熱交換器」がひとつの熱交換器(「排熱回収熱交換器19」)からなり、その熱交換器から排出された排ガス23を凝縮する排ガス凝縮器13を備え、しかも燃料電池が固体高分子形燃料電池でない点
(ハ)本件訂正発明1は、「第2の熱交換器を流通した水を第1の熱交換器に流通させ、第1の熱交換器を流通した該水を第3の熱交換器に流通させた後に排熱利用手段に戻す」のに対して、甲2号発明は、「排熱回収熱交換器19を流通した該水を第3の熱交換器(「冷却器10」)に流通させた後に排熱利用手段に戻す」点

次に、これら相違点のうち特に相違点(ロ)及び(ハ)について検討する。
上記相違点(ロ)及び(ハ)に係る本件訂正発明1の技術的な意味は、本件訂正発明1の「第1の熱交換器」と「第2の熱交換器」と「第3の熱交換器」とを別個に設け貯湯タンクから各熱交換器に送り込まれる水の温度差との関係で熱交換効率が低下してしまう(段落【0005】)という課題を解決するために、温度レベルの低い熱交換器から徐々に温度レベルの高い熱交換器に順に貯湯タンクの水が通過するように第1〜3の熱交換器と貯湯タンクとを配列しループ状の管路となすことで、各熱交換器における熱交換効率を高めるとともに、さらに「第3の熱交換器」を通じて「起動時に温水を水タンク4内に送り込み」(段落【0030】)、「水タンク4内の水が温められると、・・・燃料電池3を短時間で温めて運転開始時期を早めることができる」(段落【0032】)という作用効果を奏することにあると認められるところ、甲2号発明は、上記(2d)〜(2g)の記載からみて、「燃料排ガス11及び排空気12中に含まれる高温の水蒸気を凝縮するととにも高温の温水を得る」ことを課題とする発明であり、甲2号発明の燃料電池本体1が排空気12中に凝縮すべき高温の水蒸気を含む燃料電池(例えばリン酸形燃料電池の場合は運転温度200℃程度)であるが故に、排ガス及び未反応酸素ガスの熱からひとつの熱交換器(排熱回収熱交換器19)にて高温の温水を回収した後に排ガス凝縮器13にて凝縮するのであって、燃料電池の排空気と改質器の排燃料ガスの両方から高温の水蒸気を凝縮することを前提とするものであるといえるから、甲第2号証には、固体高分子形燃料電池のように運転温度が高々100℃であって排空気に100℃を超える高温の水蒸気を含まない燃料電池を甲2号発明の燃料電池として適用することは示唆されているといえないし、甲2号発明の「冷却器10」は、上記(2i)によれば、「燃料電池本体1において発生する排熱を回収した電池冷却水7から排熱を回収することによって、温水20の温度を上昇させた後、単効用吸収式冷凍機21に供給するようになっている」のであって、甲第2号証のその他の記載を参酌しても、燃料電池の起動時に燃料電池の冷却水を温めて早期に立ち上げるという技術思想を示唆する記載もない。また、甲第3号証に記載の発明は、廃熱を効率良く利用して必要とする温度の給湯を行ない、小型化が可能な燃料電池給湯コジェネレーションシステムを提供することを課題(3b)とし、その解決手段として、燃料電池のシステム構成に、蓄熱タンクで加熱された水を追い炊き加熱する加熱装置を追加したものであり(3a)(3f)、解決しようとする課題やその解決手段及びその作用効果が、本件訂正発明1の上記課題や解決手段及び「燃料電池を短時間で温めて運転開始時期を早めることができる」という作用効果と全く異なるし、甲第3号証には、「熱媒を熱交換装置4に通して改質器1や燃料電池2の廃熱を回収するにあたって、図1の実施の形態のように、廃熱の温度が燃料電池2よりも改質器1のほうが高いので、先に温度の低い燃料電池2との間で熱交換させて熱媒に燃料電池2の廃熱を回収した後、温度の高い改質器1との間で熱交換させて熱媒に改質器1の廃熱を回収させるようにすることによって、効率高く廃熱の回収を行うことができる」(3e)ことが偶々記載されているが、その廃熱の回収方法は、上記(3d)の記載によれば、蓄熱タンク3を出た水が、先に燃料電池2の冷却板17を通り、その後、改質器1の廃熱を回収する経路によって行うのであって、本件訂正発明1に係る上記相違点(ハ)のように「第3の熱交換器(固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換を行う第3の熱交換器)に流通させた後に貯湯タンクに戻す」という構成と全く異なるのであるから、本件訂正発明1に係る上記相違点(ロ)及び(ハ)は、甲第2号証及び甲第3号証の記載から当業者が容易に想到することができたとはいえない。
また、本件訂正発明1に係る上記相違点(ロ)及び(ハ)が周知事項であるとする証拠も見当たらない。

なお、当審の審尋に対し特許異議申立人が提出した回答書に添付された甲第4号証(第29回・第30回新エネルギー講演会資料)の第4-14頁のシステム構成図は、貯湯タンクからの水をカソード排ガスと熱交換した後、改質器の排ガスで熱交換し、貯湯タンクに戻すことが示されているだけの証拠であり、同回答書に添付された甲第5号証(特許第2888621号公報)は、リン酸形燃料電池などにおいて、吸収式冷凍機の高温熱源として利用可能な60〜80℃の温水を得るために、水蒸気分圧が、燃料電池本体から排出される排ガスよりも、改質器から排出される排ガスの方が高いことに着目し、燃料電池の空気極から排出される排ガスと改質器から排出される排ガスとをそれぞれ別個の排熱回収熱交換器4,5にて熱交換することにより全体として回収熱量を増加させることが開示されているだけの証拠であって、これら甲第4号証及び甲第5号証さらに回答書に添付されたその他の甲第6〜8号証を参酌しても、「第1の熱交換器」と「第2の熱交換器」と「第3の熱交換器」と「貯湯タンク」とを本願訂正発明1のようにループ状の管路に接続することで、各熱交換器の熱交換効率を向上させつつ、固体高分子形燃料電池を短時間で温めて運転開始時期を早めることは何ら示唆されていない。

してみると、本件訂正発明1に係る少なくとも上記相違点(ロ)及び(ハ)は、甲第2号証及び甲第3号証さらに回答書に添付された甲第4〜8号証の記載から当業者が容易に想到することができたとはいえないから、本件訂正発明1は、その余の相違点について検討するまでもなく、甲第1号証及び甲第2号証さらに回答書に添付された甲第4〜8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(ii)本件訂正発明3
本件訂正発明3は、本件訂正発明1に係る「排熱回収装置」を用いた「排熱回収方法」であって、その発明特定事項は、本件訂正発明1の「排熱回収装置」と実質的に同一である。
してみると、本件訂正発明3は、上記(i)と同じ理由により、甲第2号証及び甲第3号証さらに回答書に添付された甲第4〜8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては訂正後の請求項1、3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の請求項1、3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
燃料電池電源システムにおける排熱回収装置及び方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムであって、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記改質装置から排出される排ガスとの熱交換を行う第1の熱交換器と、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換を行う第2の熱交換器と、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換を行う第3の熱交換器と、
前記貯湯タンクと前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器と前記第3の熱交換器とを管接続したループ状の管路と、
を備え、
前記第2の熱交換器を流通した水を前記第1の熱交換器に流通させ、前記第1の熱交換器を流通した該水を前記第3の熱交換器に流通させた後に前記貯湯タンクに戻す
ことを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収装置。
【請求項2】
原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムにおいて、
前記貯湯タンクと前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器を含む熱交換器とを管接続したループ状の管路と、
該管路に設けられた第1の切替バルブと、
該第1の切替バルブの上流側から分岐して前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を経て前記第1の切替バルブの下流側に至る分岐路と、
該分岐路の前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器より上流側に設けられ、前記第1の切替バルブと切替る第2の切替バルブと、
を備えることを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収装置。
【請求項3】
原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムにおいて、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記改質装置から排出される排ガスとの熱交換を行う第1の熱交換器と、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換を行う第2の熱交換器と、
前記燃料電池電源システム中に設けられ、前記貯湯タンク内の水と前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換を行う第3の熱交換器と、
を備え、
前記貯湯タンクと前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器と前記第3の熱交換器とを管接続してループ状の管路を形成し、前記管路を介して前記貯湯タンク内の水を前記熱交換器に対して順に通過させると共に、前記第2の熱交換器を流通した水を前記第1の熱交換器に流通させ、前記第1の熱交換器を流通した該水を前記第3の熱交換器に流通させた後に前記貯湯タンクに戻すことで温水にする
ことを特徴とする燃料電池電源システムにおける排熱回収方法。
【請求項4】
原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで科学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムにおいて、
前記貯湯タンクと前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器を含む熱交換器とを管接続したループ状の管路を形成すると共に、
該管路に第1の切替バルブを設け、
該第1の切替バルブの上流側から分岐して前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を経て前記第1の切替バルブの下流側に至る分岐路を形成し、
該分岐路の前記固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器より上流側に第2の切替バルブを設け、
燃料電池発電時において前記冷却水の水温が所定温度以上の場合には、前記第1の切替バルブを閉じ第2の切替バルブを開けて前記分岐路に水を通して前記冷却水から熱を回収し、
前記冷却水の水温が所定温度以下になった場合には、前記第1の切替バルブを開き第2の切替バルブを閉じて前記分岐路に水を供給しない
燃料電池電源システムにおける排熱回収方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ガス等の原燃料ガスを水素リッチガスに改質し、この改質ガスと空気とを燃料電池に供給して化学反応により起電力を生じさせるようにした燃料電池電源システムにおける排熱回収方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
家庭用として開発された燃料電池電源システムがあり、これは例えば図3のように燃料電池電源装置Aを屋外に隣接して設置し、都市ガス等の原燃料ガスを供給して発電し、インバータBで直流を交流に変換して屋内の電気機器に電力を供給できるようにしたものである。燃料電池電源装置Aは発電中に熱を排出するため、その排熱を利用して市水から温水を生成し、屋内の台所・洗面所・風呂場等の水回りに給湯することが行われている。そのため、燃料電池電源装置Aには貯湯タンクCが接続される。
【0003】
前記貯湯タンクCは底部内に市水が供給され、この市水の一部を燃料電池電源装置A内に配設された複数の熱交換器に送り込んで温水とし、この温水を貯湯タンクCの上部内に戻して貯湯し、給湯時には上部から温水を取り出して前記のように屋内の水回り箇所に給湯するようにしてある。
【0004】
貯湯タンクCの水と燃料電池電源装置A内の熱交換器との熱交換は、図4に示すように改質装置における改質器1のバーナ1aでの燃焼排ガスが通過する第1の熱交換器H1との間で行われる第1の循環路R1と、PGバーナ2での燃焼排ガスが通過する第2の熱交換器H2との間で行われる第2の循環路R2と、燃料電池3の空気極から排出される未反応酸素ガスが通過する第3の熱交換器H3との間で行われる第3の循環路R3とによっていた。つまり、第1の熱交換器H1〜第3の熱交換器H3内で、いずれも貯湯タンクCから送り込まれた水と、燃焼排ガス又は未反応酸素ガスとの間で熱交換されるようにしてある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記貯湯タンクCの底部には常温の市水層が存在し、上部には温められて軽くなった温水層が存在しているが、非給湯時には底部の市水が前記熱交換器により温められて上部に戻されるため、温水層が徐々に増大し延いては全部温水層になることもある。一方、給湯時には上部の温水が取り出されるため温水層が徐々に減少し、その給湯量に応じて底部には市水が補充されるため市水層は増大する。従って、貯湯タンクCの底部から熱交換器に送り込まれる水の温度は常時一定せず、熱交換器での熱交換効率に変動が生じることになる。前記3つの熱交換器H1〜H3を通過する燃焼排ガス又は未反応酸素ガスの温度もそれぞれ異なるため、貯湯タンクCから送り込まれた水の温度差との関係で熱交換効率に変動が生じ、この温度差が小さい場合は熱交換効率が低下してしまう。
【0006】
本発明は、このような従来の事態に鑑みなされたもので、貯湯タンクと燃料電池電源装置の複数の熱交換器との間で効率良く熱交換できるようにした燃料電池電源システムにおける排熱回収方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための手段として、本発明の請求項1及び3の燃料電池電源システムにおける排熱回収装置及び方法は、原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、この改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムにおいて、この燃料電池電源システム中に設けられ、貯湯タンク内の水と改質装置から排出される排ガスとの熱交換を行う第1の熱交換器と、燃料電池電源システム中に設けられ、貯湯タンク内の水と固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換を行う第2の熱交換器と、燃料電池電源システム中に設けられ、貯湯タンク内の水と固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換を行う第3の熱交換器と、を備え、貯湯タンクと第1の熱交換器と第2の熱交換器と第3の熱交換器とを管接続してループ状の管路を形成し、この管路を介して前記貯湯タンク内の水を前記熱交換器に対して順に通過させると共に、第2の熱交換器を流通した水を第1の熱交換器に流通させ、第1の熱交換器を流通した水を第3の熱交換器に流通させた後に貯湯タンクに戻すことで温水にすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2及び4の燃料電池電源システムにおける排熱回収装置及び方法は、原燃料ガスを水素リッチな改質ガスに改質する改質装置と、前記改質装置から供給される前記改質ガス中の水素ガスと外部から供給される空気中の酸素ガスとで化学反応を起こして起電力を生じる固体高分子形燃料電池と、温水を蓄える貯湯タンクと、を含む燃料電池電源システムにおいて、貯湯タンクと前記固体高分子形燃料電池から排出される未反応酸素ガスとの熱交換器を含む熱交換器とを管接続したループ状の管路を形成すると共に、この管路に第1の切替バルブを設け、その第1の切替バルブの上流側から分岐して固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器を経て前記第1の切替バルブの下流側に至る分岐路を形成し、この分岐路の固体高分子形燃料電池へ供給される冷却水との熱交換器より上流側に第2の切替バルブを設け、燃料電池発電時において前記冷却水の水温が所定温度以上の場合には、前記第1の切替バルブを閉じ第2の切替バルブを開けて前記分岐路に水を通して冷却水から熱を回収し、冷却水の水温が所定温度以下になった場合には、前記第1の切替バルブを開き第2の切替バルブを閉じて前記分岐路に水を供給しないことを特徴とする。
本発明では、貯湯タンクと複数の熱交換器との間を各別に接続して複数の循環路を形成するのではなく、複数の熱交換器を含む一連のループ状の管路を構成したので、貯湯タンクからの水の温度に変動があっても各熱交換器での熱効率を高めることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る燃料電池電源システムにおける排熱回収方法の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は燃料電池電源システムの構成を示すブロック図であり、前記のように改質装置と燃料電池3とを含み、PGバーナ2、水タンク4、貯湯タンクC等が組み込まれている。改質装置は脱硫器5と、改質器1と、CO変成器6と、CO除去器7とで構成され、改質器1にはバーナ1aが付設されている。
【0010】
又、改質器1のバーナ1aでの燃焼排ガスが通過する第1の熱交換器H1と、PGバーナ2での燃焼排ガスが通過する第2の熱交換器H2と、燃料電池3の空気極から排出される未反応酸素ガスが通過する第3の熱交換器H3とがそれぞれ配設されている。
【0011】
これら第1の熱交換器H1〜第3の熱交換器H3を通過した燃焼排ガス又は未反応酸素ガスは、ダクト8内に流入して燃料電池電源装置の排出孔から外部に排出されるが、その際ダクト8に設けられた第4の熱交換器H4を通過した後に排出される。
【0012】
第1の熱交換器H1〜第4の熱交換器H4は、貯湯タンクCと管接続されてループ状の管路が形成されている。即ち、貯湯タンクCの底部からポンプP1を介して取り出された水を第4の熱交換器H4に送り込む第1の管路S1と、第4の熱交換器H4から第3の熱交換器H3に送り込む第2の管路S2と、第3の熱交換器H3から第1の熱交換器H1に送り込む第3の管路と、第1の熱交換器H1から第2の熱交換器H2に送り込む第4の管路S4と、第2の熱交換器H2から貯湯タンクCの上部に送り込む第5の管路S5とから構成されている。
【0013】
又、前記第5の管路S5から分岐して水タンク4に送り込む第6の管路S6と、水タンク4からの復路で第5の管路S5に合流して貯湯タンクCの上部に送り込む第7の管路S7とが設けられ、分岐点付近の第5の管路S5には第1の切替バルブV1が、第6の管路S6には第2の切替バルブV2がそれぞれ取り付けられている。
【0014】
このように構成された燃料電池電源装置において、起動時には都市ガス等の原燃料ガスと空気ファンF1により取り込まれた空気が改質器1のバーナ1aに供給される。バーナ1aが点火されると、原燃料ガスが燃焼し改質器1内に充填されている触媒の温度を適温まで上昇させる。このバーナ1aでの燃焼排ガスは、前記のように第1の熱交換器H1を通過してダクト8内に流入する。
【0015】
改質器1の触媒が所定の温度まで上昇すると、前記脱硫器5で脱硫された原燃料ガスは改質器1内に供給され、その際気化器9(熱交換器)から水蒸気が混入される。これにより、水蒸気改質が行われて原燃料ガスから水素、二酸化炭素、及び一酸化炭素を含む改質ガスが生成される。気化器9には前記バーナ1aでの燃焼排ガスが通過するようにしてあり、且つ水タンク4からポンプP2により取り出された水が送り込まれ、この水と燃焼排ガスとの間で熱交換が行われることで水蒸気が生成される。
【0016】
改質器1で水蒸気改質された改質ガスは、前記CO変成器6に送り込まれて改質ガス中に含まれている一酸化炭素が二酸化炭素に変成される。次いで、変成されたガスはCO除去器7に送り込まれ、ここで空気ファンF2により取り込まれた空気中の酸素により選択酸化され、改質ガス中に含まれる一酸化炭素の濃度が10ppm以下に減少される。
【0017】
このようにしてCO濃度の低い水素リッチガスに生成された改質ガスは、起動時の段階では安定していないため燃料電池3に供給せず、前記PGバーナ2に送り込んで燃焼させる。このPGバーナ2での燃焼排ガスは、前記のように第2の熱交換器H2を通過してダクト8内に流入する。
【0018】
改質ガスが安定すると、PGバーナ2への供給は遮断され、以後は燃料電池3に供給されて発電が行われる。この場合、燃料電池3は固体高分子形であって改質ガスは燃料極に供給される。この燃料極に供給された改質ガス中の水素ガスと、空気極に供給される空気中の酸素ガスとで、固体高分子電解質膜を介して電気化学反応が起こり電気と水とが生成される。空気極への空気の供給は、空気ファンF4により取り込んだ空気を一旦水タンク4内に送り込み、ここで空気を湿潤させた後に空気極に供給するようにしている。これは固体高分子電解質膜を適度に湿潤させるためであり、湿潤が不充分であると燃料電池3の発電が正常になされない。場合によっては、燃料極に供給する改質ガスの方を湿潤させて供給し、固体高分子電解質膜を適度に湿潤させることもある。
【0019】
燃料電池3の空気極で未反応に終わった未反応酸素ガスは、前記のように第3の熱交換器H3を通過してダクト8内に流入する。一方、燃料電池3の燃料極で未反応に終わった改質ガスは、切替バルブによって前記改質器1のバーナ1a又はPGバーナ2に送り込まれて燃焼される。
【0020】
燃料電池3はほぼ80℃で正常に作動するが、電気化学反応に伴う発熱のため温度が上昇する。この温度上昇を防ぐために、前記水タンク4からポンプP3により燃料電池3の冷却部に水を供給することで冷却する。冷却後の水は水タンク4に戻すが、この水タンク4内の水量は徐々に減少するため適宜補充する。この補充は市水をイオン交換樹脂10により純水化し、その純水を溜めた補助タンク11からなされる。この補助タンク11には前記第3の熱交換器H3で生じた水分(未反応酸素ガス中の水分)が混入される。
【0021】
ところで、燃料電池電源装置の運転中に、前記貯湯タンクCではポンプP1によって底部の水(常温例えば20℃)が取り出され、前記第1の管路S1を経て第4の熱交換器H4に送り込まれる。この第4の熱交換器H4を通過する排ガスは、前記ダクト8内で合流した改質器バーナ1aからの燃焼排ガスと、PGバーナ2からの燃焼排ガスと、燃料電池3からの未反応酸素ガスとが合流したものである。改質器バーナ1aからの燃焼排ガスは途中で前記気化器9及び第1の熱交換器H1を通過しているためその温度は低下されており、PGバーナ2からの燃焼排ガスも途中で前記第2の熱交換器H2を通過しているためその温度は低下されている。燃料電池3からの未反応酸素ガスは、前記第3の熱交換器H3を通過しているため温度が低下されている。従って、第4の熱交換器H4を通過する合流ガスの温度レベルは低く約50〜60℃となっている。
【0022】
この第4の熱交換器H4で温められた水は、第2の管路S2を経て第3の熱交換器H3に送り込まれる。この第3の熱交換器H3では、燃料電池3の空気極から排出された未反応酸素ガスとの間で熱交換されるが、そこでの温度レベルは約70〜80℃である。
【0023】
次いで、温水は第3の管路S3を経て第1の熱交換器H1に送り込まれ、この第1の熱交換器H1を通過する燃焼排ガスとの間で熱交換される。この燃焼排ガスは改質器バーナ1aからの燃焼排ガスであるが、前記のように気化器9を通過しているため温度レベルは約100〜120℃程度である。
【0024】
更に、温水は第1の熱交換器H1から第4の管路S4を経て第2の熱交換器H2に送り込まれ、PGバーナ2からの燃焼排ガスとの間で熱交換される。この第2の熱交換器H2での温度レベルは約150〜180℃である。この第2の熱交換器H2から第5の管路S5を経て貯湯タンクCの上部に温水が供給される。この時、前記第1の切替バルブV1は開き、第2の切替バルブV2は閉じておく。
【0025】
PGバーナ2は、前記のように起動時に改質ガスが未だ安定しない段階で燃焼され、改質ガスの安定した後は燃焼が停止されるため、燃料電池3の発電中は第2の熱交換器H2での熱交換は行われない。一方、前記改質器1のバーナ1aは、燃料電池3の発電中も改質器1の内部に充填されている触媒を所定の温度に保持するために燃焼が続行される。それに必要な燃料供給は、前記のように燃料電池3の燃料極から排出される未反応改質ガスをバーナ1aに送り込むことでなされる。
【0026】
このようにして、貯湯タンクCの底部の水は、温度レベルの低い熱交換器から徐々に温度レベルの高い熱交換器を順に通過し、約60〜70℃の温水となって貯湯タンクCの上部に戻される。この場合、水の温度は徐々に上昇させられ、その温度に対応する温度レベルの熱交換器にて熱交換されることとなり、各熱交換器での熱交換効率を高めることができる。
【0027】
図2は、本発明に係る排熱回収方法の他の実施形態であって、図1における燃料電池電源システムの構成中、要部のみをブロック図で示したものである。
この場合、前記貯湯タンクCから第4の熱交換器H4、第3の熱交換器H3、第1の熱交換器H1をこの順に経て貯湯タンクCに戻るループ状の管路を形成し、この管路における第1の熱交換器H1と、貯湯タンクCとの間に第1の切替バルブV1を設ける。更に、第1の切替バルブV1と、第1の熱交換器H1との中間部から分岐して前記燃料電池3に冷却水を供給する水タンク4を経て貯湯タンクCに至る分岐路を形成し、この分岐路における水タンク4より上流側に第2の切替バルブV2を設ける構成としてある。
【0028】
燃料電池3の発電時において、前記水タンク4の水温が所定温度(例えば、80℃)以上の場合には、前記第1の切替バルブV1を閉じると同時に第2の切替バルブV2を開ける。ポンプP1により貯湯タンクCの底部から取り出された水は、第4の熱交換器H4、第3の熱交換器H3、第1の熱交換器H1を順に通過し、更に分岐路を介して水タンク4を通過した後に貯湯タンクCに戻される。このようにして、貯湯タンクCの水を循環させることで水タンク4の熱を回収することができる。
【0029】
水タンク4の水温が所定温度(例えば、76℃)以下になった場合には、先とは逆に第1の切替バルブV1を開くと同時に第2の切替バルブV2を閉じる。これにより、ポンプP1により貯湯タンクCの底部から取り出された水は、第4の熱交換器H4、第3の熱交換器H3、第1の熱交換器H1を順に通過して貯湯タンクCに戻され、分岐路を介して水タンク4へは供給されない。即ち、76℃以下の場合は水タンク4から熱を回収しない。
【0030】
燃料電池電源装置の運転停止時には、燃料電池3が冷却すると共に水タンク4内の水の温度が低下し、冬季においては水タンク4が凍結することもある。このような場合は、起動時に温水を水タンク4内に送り込む。水タンク4への温水の供給は、前記切替バルブV1を閉じ切替バルブV2を開いて温水を分岐路に導入し、水タンク4内に送り込むことでなされる。この後、温水は貯湯タンクCに戻される。
【0031】
燃料電池3の発電中に水タンク4内の水がある温度(例えば、76℃)まで上昇したら、前記切替バルブV2を閉じて切替バルブV1を開き、水タンク4への温水の供給を停止すると共に貯湯タンクCに送り込む。水タンク4内の水がある温度(例えば、80℃)まで上昇したら、前記切替バルブV2を開き切替バルブV1を閉じて水タンク4へ温水を供給し、水タンク4内の熱を回収すると共に、回収した熱を貯湯タンクCの上部へ送り込む。
【0032】
水タンク4内の水が温められると、前記のように水タンク4を通して燃料電池3の空気極に送り込む空気が温められることから、燃料電池3を短時間で温めて運転開始時期を早めることができる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、燃料電池電源システムの排熱を利用して貯湯タンクの水を温める場合に、貯湯タンクの底部から取り出した水を燃料電池電源装置内の複数の熱交換器に対しループ状に形成した一連の管路に沿って、しかも温度レベルの低い熱交換器から徐々に温度レベルの高い熱交換器内を通過させるようにしたので、各熱交換器での熱交換効率を向上させることができる。又、燃料電池の発電時、水タンクの水温によって2つの切替バルブを操作することで、水タンクから熱を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る燃料電池電源システムにおける排熱回収方法の実施形態を示すブロック図
【図2】
排熱回収方法の他の実施形態を示す熱回収ルート要部のブロック図
【図3】
燃料電池電源装置と貯湯タンクとの使用状態を示す説明図
【図4】
従来の燃料電池電源システムにおける排熱回収方法を示すブロック図
【符号の説明】
1…改質器
1a…バーナ
2…PGバーナ
3…燃料電池
4…水タンク
5…脱硫器
6…CO変成器
7…CO除去器
8…ダクト
9…気化器
10…イオン交換樹脂
11…補助タンク
C…貯湯タンク
H1…第1の熱交換器
H2…第2の熱交換器
H3…第3の熱交換器
H4…第4の熱交換器
S1…第1の管路
S2…第2の管路
S3…第3の管路
S4…第4の管路
S5…第5の管路
S6…第6の管路
S7…第7の管路
V1…第1の切替バルブ
V2…第2の切替バルブ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2006-01-27 
出願番号 特願2001-6482(P2001-6482)
審決分類 P 1 652・ 161- YA (H01M)
P 1 652・ 121- YA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ▲高▼岡 裕美  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 吉水 純子
高木 康晴
登録日 2003-07-04 
登録番号 特許第3448568号(P3448568)
権利者 三洋電機株式会社
発明の名称 燃料電池電源システムにおける排熱回収装置及び方法  
代理人 芝野 正雅  
代理人 芝野 正雅  
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