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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  C08L
管理番号 1134368
異議申立番号 異議2003-71963  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-01-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-04 
確定日 2006-03-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第3374152号「高い剛性および硬度のポリオレフィン成形用組成物」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3374152号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。 
理由
[1]手続の経緯

本件特許第3374152号は、平成5年3月29日(優先権主張 平成4年3月31日 ドイツ)に特許出願され、平成14年11月29日に特許権の設定登録がなされ、特許異議の申立てがなされ、特許異議申立て上申書が提出され、取消理由を通知したところ、その指定期間内に訂正請求がなされると共に特許異議意見書が提出され、その後、訂正拒絶理由を通知したところ、その指定期間内に訂正請求書に対する補正がなされると共に特許異議意見書が提出されたものである。

[2]訂正の適否

1.訂正請求書に対する補正の適否
訂正請求書に対する補正(以下「本件補正」という。)は、補正の対象が訂正明細書及び訂正請求書であり、訂正明細書に対する補正の内容は以下の補正1〜4のとおりである。
補正1:訂正明細書の【請求項1】中の「100,000ないし498,000g/ モルの」を、「100,000より大きく498,000g/ モルまでの」と補正する。(6.補正の内容の(1)○2(原文は丸数字の2である。以下、同様に表記する。)を参照。)
補正2:訂正明細書の段落【0007】中の「100,000ないし498,000g/ モルの」を、「100,000より大きく498,000g/ モルまでの」と補正する。(同(1)○3を参照。)
補正3:訂正明細書の【請求項4】中の「一つまたはそのいずれか」を、「いずれか一つ」と補正する。(同(2)○1を参照。)
補正4:訂正明細書の【請求項5】及び【請求項6】中の「いずれかに一つ」を、それぞれ「いずれか一つに」と補正する。(同(2)○1を参照。)
そこで判断するに、本件訂正請求は特許明細書を訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであるところ、上記補正1〜4は訂正明細書の記載を当初の訂正明細書の記載とは異なる記載に補正するものである。そして、補正前の記載が補正後の記載の誤記であるとは認められない。
したがって、補正1〜4は、訂正請求書の要旨を変更するものと認める。
ゆえに、本件補正は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合せず、したがって、本件補正は採用できない。

2.訂正拒絶理由とそれに対する判断
当審が通知した訂正拒絶理由は下記のとおりであり、該訂正拒絶理由は妥当なものと判断されるから、本件訂正は認められない。
「本件訂正は、下記の点で、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、及び、同条第2項の規定に適合しない。

1.訂正事項1には、b)成分について、「>10,000のg/モルの分子量Mw」と記載されていたものを、「10,000ないし498,000g/モルの分子量Mw」とする訂正が含まれている。
この訂正は、訂正前にはb)成分として範囲外であった、分子量Mwが10,000g/モルの場合を、b)成分の範囲内に含めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするとは認められない。また、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするとも認められない。
さらに、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張するものでもある。
2.本件訂正請求には、以下の(1)、(2)の訂正事項が含まれている。
(1)請求項4中の「一つまたはそれ以上」を、「一つまたはそのいずれか」と訂正する。
(2)訂正前の請求項7(新請求項5)及び訂正前の請求項8(新請求項6)中の「一つまたはそれ以上」を、「いずれかに一つ記載」と訂正する。
なお、訂正請求書の訂正事項3には、新請求項4〜6中の「一つまたはそれ以上」を「いずれか一つ」と訂正する旨の記載があるが、訂正事項3の訂正後の記載は訂正明細書の記載と一致していないので、訂正事項3には誤記が存在すると認める。
そして、上記訂正事項(1)、(2)による訂正後の記載は、日本語として意味が不明りょうであるから、これらは明りょうでない記載の釈明を目的とするとは認められない。また、特許請求の範囲の減縮や誤記の訂正を目的とするとも認められない。」

[3]本件発明

本件訂正が認められないことは上記のとおりであるから、本件の請求項1〜8の記載は、特許明細書の請求項1〜8に記載された下記のとおりである。
「【請求項1】 a) 式Ra -CH=CH-Rb (式中、Ra およびRb は同一または異なっていて、そして水素またはC1 〜C15-アルキルであるかまたはRa およびRb はこれらと結合する原子と一緒になって環を形成する)で表される少なくとも3個の炭素原子をを有するオレフィンから誘導され、1000ないし50,000g/モルの分子量Mw 、1.8ないし4.0の分子量分散度Mw /Mn 、2ないし50cm3 /gの粘度指数および120ないし160℃の融点を有するポリオレフィンワックスおよびb) a)で記載したオレフィンから誘導され、>100,000のg/モルの分子量Mw 、1.8ないし4.0の分子量分散度Mw /Mn 、>80cm3 /gの粘度指数および120ないし160℃の融点を有するポリオレフィンあるいはb)の代わりにc) 式Ra -CH=CH-Rb (式中、Ra およびRb は同一または異なっていて、そして水素またはC1 〜C15-アルキルであるかまたはRa およびRb はこれらと結合する原子と一緒になって環を形成する)で表される少なくとも2種類の異なるオレフィンから誘導され、>100,000のg/モルの分子量Mw、1.8ないし4.0の分子量分散度Mw /Mn 、>80cm3 /gの粘度指数および90ないし160℃の融点を有するオレフィンコポリマーから本質的になるポリオレフィン成形用組成物。
【請求項2】 成分a)がポリプロピレンワックスである請求項1記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項3】 成分b)がポリプロピレンである請求項1または2記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項4】 成分c)がエチレン-プロピレンコポリマーである請求項1ないし3の一つまたはそれ以上に記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項5】 20ないし99重量%の請求項1ないし4の1つまたはそれ以上の成形用組成物および1ないし80重量%の-20℃以下のガラス転移温度を有するゴム類から本質的になるポリオレフィン成形用組成物。
【請求項6】 安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、光保護剤、金属失活剤、フリーラジカル補捉剤、フィラーおよび強化剤、相溶化剤、可塑剤、滑剤、乳化剤、蛍光増白剤、難燃化剤、顔料、帯電防止剤および発泡剤を付加的に含んでなる請求項1ないし5の一つまたはそれ以上に記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項7】 請求項1ないし6の一つまたはそれ以上に記載のポリオレフィン成形用組成物を成形体の製造に使用する方法。
【請求項8】 請求項1ないし6の一つまたはそれ以上に記載のポリオレフィン成形用組成物から製造された成形体。」

[4]取消理由と判断

当審が通知した取消理由のうち、理由3は、本件の請求項1〜8に係る特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項、第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである、というものであり、理由3で指摘した(1)、(3)は、それぞれ、下記a、bのとおりである。
a:請求項1には、「粘度指数」が記載されており、その単位はcm3/gである。しかし、「粘度指数」とは潤滑油の粘度の温度依存性を表わす量であり、無名数で表現されるものである(化学大辞典編集委員会編「化学大辞典6」縮刷版 1963年12月15日 共立出版株式会社発行 p.902〜903の粘度指数の項を参照)。したがって、請求項1でいう粘度指数は、本来の意味を持つものとは言えず、その意味が不明である。ゆえに、請求項1の記載は不明瞭であり、これを引用する請求項2〜8の記載も不明瞭である。(理由3の(1))
b:請求項5には「請求項1ないし4の1つまたはそれ以上の」との記載があるから、2つ以上の請求項を同時に引用する場合(請求項の引用が択一的でない場合)が含まれる。そして、そのような場合の請求項の記載は意味が不明瞭である。
請求項6〜8にも「またはそれ以上」との記載があり、これらの請求項も同様に意味が不明瞭である。(理由3の(3))
そこで判断するに、請求項1〜8の記載は、上記a、bの点で不備と認められるから、本件の請求項1〜8に係る特許は、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
なお、aの点に対して、特許権者は、本件特許明細書でいう「粘度指数」は、本来ドイツ語原文が誤った英語に訳され、それが、そのまま日本語に訳されたものであり、本来は「粘度数」と翻訳されるべきであったと主張しているが、このような翻訳上の事情は、特許明細書の記載そのものとは無関係である。したがって、この特許権者の主張によって、上記判断を覆すことはできない。

[5]むすび

以上のとおりであるから、本件の請求項1〜8についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-10-26 
出願番号 特願平5-70542
審決分類 P 1 651・ 534- ZB (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 三谷 祥子  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 石井 あき子
船岡 嘉彦
登録日 2002-11-29 
登録番号 特許第3374152号(P3374152)
権利者 バーゼル・ポリオレフィン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
発明の名称 高い剛性および硬度のポリオレフィン成形用組成物  
代理人 三原 恒男  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 奥村 義道  
代理人 小島 隆  
代理人 江崎 光史  

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